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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082895
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】粘着シートおよび液晶表示部材
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/30 20180101AFI20230608BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230608BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20230608BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230608BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20230608BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20230608BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20230608BHJP
   G02F 1/1347 20060101ALI20230608BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
C09J7/30
C09J201/00
C09J11/08
B32B27/00 M
B32B27/20 Z
B32B7/023
B32B27/00 L
B32B7/06
G02F1/1347
G02F1/1335
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196888
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】浦川 広太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 洋一
(72)【発明者】
【氏名】福島 裕貴
【テーマコード(参考)】
2H189
2H291
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
2H189AA21
2H189AA64
2H189HA16
2H189LA07
2H189LA17
2H291FA22X
2H291FA22Z
2H291FA46X
2H291FA46Z
2H291FA95X
2H291FA95Z
2H291FB02
2H291FB03
2H291FB04
2H291FB12
2H291FB23
2H291FD35
2H291GA23
2H291LA28
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK51A
4F100AK51B
4F100AK52A
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100BA02
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100CA02A
4F100CA02B
4F100CB05A
4F100CB05B
4F100DE01A
4F100GB41
4F100JA07
4F100JK06
4F100JL13A
4F100JL13B
4F100JL14C
4F100JL14D
4F100JN01B
4F100JN10A
4F100JN18
4J004AA01
4J004AA10
4J004AB01
4J004AB07
4J004BA02
4J004CE01
4J004DB01
4J004EA05
4J004EA06
4J004FA08
4J040DF041
4J040DF061
4J040FA131
4J040JA09
4J040JB08
4J040JB09
4J040KA03
4J040LA10
4J040MA05
4J040MB05
4J040NA17
4J040PA23
4J040PA32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】2枚の液晶セルを使用しても、モアレが発生し難く、また、高い輝度を実現することのできる粘着シートおよび液晶表示部材を提供する。
【解決手段】粘着剤層2を厚さ1.1mmのソーダライムガラスに貼付したサンプルのソーダライムガラス側から測定光線を透過させたときに、サンプルの法線から15°における輝度のサンプルの正面0°における輝度に対する輝度比が0.003以上であり、以下の式(1)および式(2)によって算出される偏光解消度が、2.20%以下である粘着シート1。
偏光度(%)={(パラレルニコルの透過率(%)-クロスニコルの透過率(%)/(パラレルニコルの透過率(%)+クロスニコルの透過率(%))}×100…(1)
偏光解消度(%)={(基準透明粘着剤層の偏光度(%)-当該粘着剤層の偏光度(%))/(基準透明粘着剤層の偏光度(%))}×100…(2)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも粘着剤層を備えた粘着シートであって、
前記粘着剤層を厚さ1.1mmのソーダライムガラスに貼付したものをサンプルとし、前記ソーダライムガラス側から測定光線を透過させたときに、前記サンプルの法線から15°における輝度の、前記サンプルの正面0°における輝度に対する輝度比が、0.003以上であり、
以下の式(1)および式(2)によって算出される偏光解消度が、2.20%以下である
ことを特徴とする粘着シート。
偏光度(%)={(パラレルニコルの透過率(%)-クロスニコルの透過率(%)/(パラレルニコルの透過率(%)+クロスニコルの透過率(%))}×100 …(1)
偏光解消度(%)={(基準透明粘着剤層の偏光度(%)-当該粘着剤層の偏光度(%))/(基準透明粘着剤層の偏光度(%))}×100 …(2)
パラレルニコルの透過率:パラレルニコルの2枚の偏光板で粘着剤層を挟持したサンプルの透過率(%)
クロスニコルの透過率:クロスニコルの2枚の偏光板で粘着剤層を挟持したサンプルの透過率(%)
【請求項2】
前記粘着剤層が、光拡散微粒子を含有する光拡散粘着剤層と、光拡散微粒子を含有しない透明粘着剤層とを備えた複合型粘着剤層であることを特徴とする請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
2枚の液晶セルを貼合するために用いられることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
2枚の剥離シートと、
前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された前記粘着剤層と
を備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項5】
第1の液晶セルと、
第2の液晶セルと、
前記第1の液晶セルおよび前記第2の液晶セルを互いに貼合する粘着剤層と
を備えた液晶表示部材であって、
前記粘着剤層が、請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着シートの粘着剤層である
ことを特徴とする液晶表示部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚の液晶セルを貼合するのに好適な粘着シート、および2枚の液晶セルを粘着剤層によって貼合してなる液晶表示部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイの一種として、2枚の液晶セルを重ねた構造の液晶表示装置が知られている。かかる液晶表示装置によれば、コントラスト比を大幅に向上できる。また、各液晶セルにおける画像の輝度を操作したり、両目にそれぞれ異なる光の情報を送ることにより、映像を立体的に表示することが可能である。
【0003】
一方、上記のような液晶表示装置においては、液晶セル同士の干渉に伴ってモアレが発生し易く、表示画像が見難くなるという問題が生じる。そこで、特許文献1では、2枚の液晶セル間に光拡散層を設けることにより、モアレ現象を緩和しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-310376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、通常、液晶セルにはそれぞれ偏光板が配置される。上述したようなモアレを解消するため、液晶セル間に光拡散性の部材を配置する場合、当該光拡散性の部材により、一部の透過光の偏光軸が変化するという現象が観察される。偏光軸が変化した透過光は、その後通過する、液晶セルに配置された偏光板により、遮断されることになる。そのため、液晶セル間に光拡散性の部材を配置する場合、バックライト光の損失が増大し、高精細な画像表示に必要な輝度の確保が困難になるという問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたものであり、2枚の液晶セルを使用しても、モアレが発生し難く、また、高い輝度を実現することのできる粘着シートおよび液晶表示部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、少なくとも粘着剤層を備えた粘着シートであって、前記粘着剤層を厚さ1.1mmのソーダライムガラスに貼付したものをサンプルとし、前記ソーダライムガラス側から測定光線を透過させたときに、前記サンプルの法線から15°における輝度の、前記サンプルの正面0°における輝度に対する輝度比が、0.003以上であり、以下の式(1)および式(2)によって算出される偏光解消度が、2.20%以下であることを特徴とする粘着シートを提供する(発明1)。
偏光度(%)={(パラレルニコルの透過率(%)-クロスニコルの透過率(%)/(パラレルニコルの透過率(%)+クロスニコルの透過率(%))}×100 …(1)
偏光解消度(%)={(基準透明粘着剤層の偏光度(%)-当該粘着剤層の偏光度(%))/(基準透明粘着剤層の偏光度(%))}×100 …(2)
パラレルニコルの透過率:パラレルニコルの2枚の偏光板で粘着剤層を挟持したサンプルの透過率(%)
クロスニコルの透過率:クロスニコルの2枚の偏光板で粘着剤層を挟持したサンプルの透過率(%)
【0008】
上記発明(発明1)においては、斜め15°輝度の正面0°輝度に対する輝度比が上記のように大きいことにより、当該粘着シートの粘着剤層を介して2枚の液晶セルを貼合したときに、モアレが発生し難くなる。また、偏光解消度が上記のように小さいことにより、液晶セルの輝度を高く維持することができる。
【0009】
上記発明(発明1)においては、前記粘着剤層が、光拡散微粒子を含有する光拡散粘着剤層と、光拡散微粒子を含有しない透明粘着剤層とを備えた複合型粘着剤層であることが好ましい(発明2)。
【0010】
上記発明(発明1,2)においては、2枚の液晶セルを貼合するために用いられることが好ましい(発明3)。
【0011】
上記発明(発明1~3)においては、2枚の剥離シートと、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された前記粘着剤層とを備えたことが好ましい(発明4)。
【0012】
第2に本発明は、第1の液晶セルと、第2の液晶セルと、前記第1の液晶セルおよび前記第2の液晶セルを互いに貼合する粘着剤層とを備えた液晶表示部材であって、前記粘着剤層が、前記粘着シート(発明1~4)の粘着剤層であることを特徴とする液晶表示部材を提供する(発明5)。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る粘着シートおよび液晶表示部材によれば、2枚の液晶セルを使用しても、モアレが発生し難く、また、高い輝度を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る粘着シートの断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る液晶表示部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔粘着シート〕
本発明の一実施形態に係る粘着シートは、少なくとも粘着剤層を備える。本実施形態に係る粘着シートは、2枚の液晶セルを貼合するために用いられることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0016】
本実施形態に係る粘着シートにおいては、粘着剤層を厚さ1.1mmのソーダライムガラスに貼付したものをサンプルとし、上記ソーダライムガラス側から測定光線を透過させたときに、上記サンプルの法線から15°における輝度の、上記サンプルの正面0°における輝度に対する輝度比が、0.003以上であることが好ましく、また、偏光解消度が、2.20%以下であることが好ましい。なお、輝度の測定は、サンプルなしのブランクでの正面0°輝度が100となるよう校正して行われる。本明細書における上記輝度の測定方法の詳細は、後述する試験例に示す通りである。
【0017】
また、本明細書における偏光解消度は、以下のようにして算出することができる。パラレルニコルの2枚の偏光板(直線偏向を示す偏光板)で粘着剤層を挟持したサンプルの透過率(パラレルニコルの透過率;%)およびクロスニコルの2枚の偏光板で粘着剤層を挟持したサンプルの透過率(クロスニコルの透過率;%)から、以下の式(1)に基づいて偏光度(%)を算出する。また、基準とする透明粘着剤層(基準透明粘着剤層)についても、上記と同様にして各透過率(%)を測定し、偏光度(%)を算出する。
偏光度(%)={(パラレルニコルの透過率(%)-クロスニコルの透過率(%)/(パラレルニコルの透過率(%)+クロスニコルの透過率(%))}×100 …(1)
次に、上記で得られた偏光度(%)から、以下の式(2)に基づいて偏光解消度(%)を算出する。
偏光解消度(%)={(基準透明粘着剤層の偏光度(%)-当該粘着剤層の偏光度(%))/(基準透明粘着剤層の偏光度(%))}×100 …(2)
【0018】
基準透明粘着剤層は、光拡散微粒子を含有しない非光拡散性のアクリル系粘着剤からなる粘着剤層であればよく、特に制約されない。物性的には、ヘイズ1%未満、全光線透過率99%以上のアクリル系粘着剤からなる粘着剤層を使用することが好ましい。具体的な一例として、リンテック社製の「Opteria(登録商標) MO-3015」、厚さ250μmを使用することができる。なお、詳細な測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0019】
本実施形態に係る粘着シートでは、斜め15°輝度の正面0°輝度に対する輝度比が上記のように大きいことにより、当該粘着シートの粘着剤層を介して2枚の液晶セルを貼合したときに、モアレが発生し難くなる。また、偏光解消度が上記のように小さいことにより、液晶セルを2枚使用しても、当該粘着シートによる輝度損失が少なく、文字や画像を視認性よく認識することができる。視認性の評価は、例えば、パラレルニコルの2枚の偏光板で上記粘着剤層を挟持し、その積層体越しに所定の文字や図形を観察することにより行うことができる。
【0020】
上記モアレ発生抑制の観点から、上記輝度比は、0.003以上であることが好ましく、0.006以上であることがより好ましく、特に0.050以上であることが好ましく、さらには0.100以上であることが好ましい。上記輝度比の上限値は、特に限定されないが、1.00以下であることが好ましく、0.99以下であることがより好ましく、特に0.50以下であることが好ましい。
【0021】
また、上記高輝度実現の観点から、上記偏光解消度は、2.20%以下であることが好ましく、1.80%以下であることがより好ましく、特に1.60%以下であることが好ましく、さらには1.20%以下であることが好ましい。上記偏光解消度の下限値は、特に限定されないが、0.00%以上であることが好ましく、0.01%以上であることがより好ましく、特に0.10%以上であることが好ましい。
【0022】
上記正面0°輝度の下限値は、直進方向の輝度を高くする観点から、0.01以上であることが好ましく、0.10以上であることがより好ましく、特に0.20以上であることが好ましく、さらには0.30以上であることが好ましい。また、上記正面0°輝度の上限値は、200以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、特に50以下であることが好ましく、さらには5以下であることが好ましい。これにより、上記輝度比が満たされ易くなる。
【0023】
上記斜め15°輝度の下限値は、0.01以上であることが好ましく、0.10以上であることがより好ましく、特に0.30以上であることが好ましく、さらには0.60以上であることが好ましい。これにより、上記輝度比が満たされ易くなるとともに、高輝度をより実現し易くなる。一方、上記斜め15°輝度の上限値は、特に制限されないが、通常は100以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、特に5以下であることが好ましく、さらには1以下であることが好ましい。
【0024】
本実施形態に係る粘着シートにおける粘着剤層のヘイズ値は、30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、特に50%以上であることが好ましく、さらには60%以上であることが好ましい。これにより、上記の光学物性が満たされ易くなる。また、当該ヘイズ値は、100%以下であることが好ましく、99%以下であることがより好ましく、特に97%以下であることが好ましく、さらには95%以下であることが好ましい。これにより、液晶セルによる表示画像の視認性が確保される。なお、本明細書におけるヘイズ値は、JIS K7136:2000に準じて測定した値とする。
【0025】
本実施形態に係る粘着シートにおける粘着剤層の全光線透過率は、下限値として80%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましく、さらには99%以上であることが好ましい。粘着剤層の全光線透過率が上記であることにより、表示体としての視認性が良好なものとなる。一方、粘着剤層の全光線透過率の上限値は特に限定されないが、通常、100%以下である。なお、本明細書における全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に準じて測定した値とする。
【0026】
本実施形態に係る粘着シートの粘着剤層は、単層からなってもよいし、複数層からなってもよいが、少なくとも光拡散性を有する光拡散粘着剤層を備えていることが好ましい。具体的に、本実施形態に係る粘着シートの粘着剤層は、光拡散微粒子を含有する光拡散粘着剤層の単層からなってもよいが、光拡散微粒子を含有する光拡散粘着剤層と、光拡散微粒子を含有しない透明粘着剤層とを備えた複合型粘着剤層であることが好ましい。
【0027】
本実施形態に係る粘着シートの粘着剤層が光拡散粘着剤層を有することにより、上記の光学物性を満たし易いものとなる。また、本実施形態に係る粘着シートの粘着剤層が光拡散微粒子を含有する光拡散粘着剤層と、光拡散微粒子を含有しない透明粘着剤層とを備えた複合型粘着剤層であると、2枚の硬質板である液晶セルの圧縮に対する粘着剤層の応力を、上記透明粘着剤層で緩和させることができるものと推定される。これにより、硬質板同士を良好に貼合することができ、また、表示画像にムラが発生することを抑制することができる。
【0028】
上記の場合、粘着剤層は、光拡散粘着剤層および透明粘着剤層の2層からなってもよいし、透明粘着剤層、光拡散粘着剤層および透明粘着剤層をその順に積層してなる3層からなってもよい。本実施形態における粘着剤層の好ましい一例は、光拡散粘着剤層および透明粘着剤層の2層からなるものであり、以下、図面を参照して説明する。
【0029】
図1に示すように、本実施形態に係る粘着シート1は、2枚の剥離シート3a,3bと、それら2枚の剥離シート3a,3bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート3a,3bに挟持された粘着剤層2とから構成される。ただし、粘着シート1において剥離シート3a,3bは必須の構成要素ではなく、粘着シート1の使用時に剥離・除去されるものである。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0030】
本実施形態における粘着剤層2は、剥離シート3aに接する光拡散粘着剤層21と、剥離シート3bに接する透明粘着剤層22との2層からなる。
【0031】
1.各要素
1-1.粘着剤層
光拡散粘着剤層21は、光拡散微粒子を含有する粘着剤から構成されることが好ましい。一方、透明粘着剤層22は、光拡散微粒子を含有しない粘着剤から構成されることが好ましい。なお、「光拡散微粒子を含有しない」とは、「光拡散微粒子を実質的に含有しない」の意味であり、光拡散微粒子を全く含有しない他、本実施形態における効果を損なわない量で光拡散微粒子を含有する場合も含まれる。その量は、0.1質量%以下であることが好ましく、特に0.01質量%以下であることが好ましく、さらには0.001質量%以下であることが好ましく、0質量%であることが最も好ましい。
【0032】
本実施形態に係る粘着シート1の光拡散粘着剤層21および透明粘着剤層22を構成する粘着剤の種類は、特に限定されない。例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等のいずれであってもよい。また、当該粘着剤は、エマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれでもよく、架橋タイプまたは非架橋タイプのいずれであってもよい。それらの中でも、粘着物性、光学特性等に優れるアクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤としては、架橋タイプのものが好ましく、さらには熱架橋タイプのものが好ましい。また、アクリル系粘着剤は、活性エネルギー線硬化性であってもよいし、活性エネルギー線非硬化性であってもよい。
【0033】
光拡散粘着剤層21を構成する粘着剤および透明粘着剤層22を構成する粘着剤は、互いに同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよいが、いずれもアクリル系粘着剤であることが好ましい。また、光拡散粘着剤層21を構成する粘着剤および透明粘着剤層22を構成する粘着剤は、一方が活性エネルギー線硬化性のアクリル系粘着剤であり、他方が活性エネルギー線非硬化性のアクリル系粘着剤であってもよいが、両方とも活性エネルギー線硬化性のアクリル系粘着剤であるか、両方とも活性エネルギー線非硬化性のアクリル系粘着剤であることが好ましい。
【0034】
以下、光拡散粘着剤層21を構成する粘着剤および透明粘着剤層22を構成する粘着剤が、いずれもアクリル系粘着剤である場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0035】
光拡散粘着剤層21を構成する粘着剤および透明粘着剤層22を構成する粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを含有する粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)を架橋してなるものであることが好ましい。光拡散粘着剤層21の場合には、粘着性組成物Pは、さらに光拡散微粒子(C)を含有する。粘着性組成物Pは、所望により、活性エネルギー線硬化性成分(D)を含有することも好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
【0036】
(1)粘着性組成物の成分
(1-1)(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)
本実施形態における(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、架橋剤(B)と反応する反応性基を分子内に有する反応性基含有モノマーを含むことが好ましい。この反応性基含有モノマー由来の反応性基が架橋剤(B)と反応して、架橋構造(三次元網目構造)が形成され、所望の凝集力を有する粘着剤が得られる。
【0037】
上記反応性基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられる。これらの中でも、架橋剤(B)との反応性に優れる水酸基含有モノマーまたはカルボキシ基含有モノマーが好ましい。
【0038】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)における水酸基の架橋剤(B)との反応性および他の単量体との共重合性の点から、炭素数が1~4のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが好ましい。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が好ましく挙げられ、特に、アクリル酸2-ヒドロキシエチルまたはアクリル酸4-ヒドロキシブチルが好ましく挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)におけるカルボキシ基の架橋剤(B)との反応性および他の単量体との共重合性の点からアクリル酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルアミノエチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、このアミノ基含有モノマーからは、後述の窒素原子含有モノマーは除かれる。
【0041】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性基含有モノマーを、下限値として5質量%以上含有することが好ましく、特に10質量%以上含有することが好ましく、さらには15質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性基含有モノマーを、上限値として40質量%以下含有することが好ましく、特に30質量%以下含有することが好ましく、さらには25質量%以下含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)がモノマー単位として上記の量で反応性基含有モノマーを含有すると、得られる粘着剤において良好な架橋構造が形成される。また、光拡散微粒子(C)を含有する場合、得られる粘着剤中における光拡散微粒子(C)の分散性が良好になる傾向がある。
【0042】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシ基含有モノマーを含まないことも好ましい。カルボキシ基は酸成分であるため、カルボキシ基含有モノマーを含有しないことにより、粘着剤の貼付対象に、酸により不具合が生じるもの、例えばスズドープ酸化インジウム(ITO)等の透明導電膜や金属膜などが存在する場合にも、酸によるそれらの不具合(腐食、抵抗値変化等)を抑制することができる。ただし、かかる不具合が生じない程度に、カルボキシ基含有モノマーを所定量含有することは許容される。具体的には、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に、モノマー単位として、カルボキシ基含有モノマーを0.1質量%以下、好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは0.001質量%以下の量で含有することが許容される。
【0043】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましい。これにより、良好な粘着性を発現することができる。アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状であってもよい。
【0044】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、粘着性の観点から、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が4~8の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、または(メタ)アクリル酸イソオクチルが特に好ましく、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、またはアクリル酸イソオクチルがさらに好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを40質量%以上含有することが好ましく、特に50質量%以上含有することが好ましく、さらには75質量%以上含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量の下限値が上記であると、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は好適な粘着性を発揮することができる。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と光拡散微粒子(C)との屈折率差を小さく抑えることができる。一方、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを95質量%以下含有することが好ましく、90質量%以下含有することがより好ましく、特に85質量%以下含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量の上限値が上記であると、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に反応性官能基含有モノマー等の他のモノマー成分を好適な量導入することができる。
【0046】
上記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、分子内に脂環式構造を有するモノマー(脂環式構造含有モノマー)を含有することも好ましい。脂環式構造含有モノマーは、重合体のガラス転移温度を上昇させ、得られる粘着剤の貯蔵弾性率を増加させる。また、脂環式構造含有モノマーは嵩高いため、これを重合体中に存在させることにより、重合体同士の間隔を広げるものと推定され、得られる粘着剤を段差追従性に優れたものとすることができる。
【0047】
脂環式構造含有モノマーにおける脂環式構造の炭素環は、飽和構造のものであってもよいし、不飽和結合を一部に有するものであってもよい。また、脂環式構造は、単環の脂環式構造であってもよいし、二環、三環等の多環の脂環式構造であってもよい。得られる粘着剤の段差追従性発揮の観点から、上記脂環式構造は、多環の脂環式構造(多環構造)であることが好ましい。さらに、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と他の成分との相溶性を考慮して、上記多環構造は、二環から四環であることが特に好ましい。また、脂環式構造の炭素数(環を形成している部分の全ての炭素数をいい、複数の環が独立して存在する場合には、その合計の炭素数をいう)は、通常5以上であることが好ましく、7以上であることが特に好ましい。一方、脂環式構造の炭素数の上限は特に制限されないが、上記と同様の観点から、15以下であることが好ましく、10以下であることが特に好ましい。
【0048】
上記脂環式構造含有モノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等が挙げられ、中でも、より優れた段差追従性を発揮する、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル(脂環式構造の炭素数:10)、(メタ)アクリル酸アダマンチル(脂環式構造の炭素数:10)または(メタ)アクリル酸イソボルニル(脂環式構造の炭素数:7)が好ましく、特に(メタ)アクリル酸イソボルニルが好ましく、さらにアクリル酸イソボルニルが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として脂環式構造含有モノマーを含有する場合、当該脂環式構造含有モノマーを1質量%以上含有することが好ましく、特に5質量%以上含有することが好ましく、さらには10質量%以上含有することが好ましい。また、当該含有量は、30質量%以下であることが好ましく、特に25質量%以下であることが好ましく、さらには20質量%以下であることが好ましい。脂環式構造含有モノマーの含有量が上記範囲にあることにより、前述した光学物性を好ましい範囲に調節し易くなる。
【0050】
上記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、窒素原子含有モノマーを含有することも好ましい。窒素原子含有モノマーを構成単位として重合体中に存在させることにより、粘着剤に所定の極性を付与し、ガラスのようなある程度の極性を有する被着体に対しても、親和性に優れたものとすることができる。上記窒素原子含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)に適度な剛性を持たせる観点から、窒素含有複素環を有するモノマーが好ましい。また、構成される粘着剤の高次構造中で上記窒素原子含有モノマー由来部分の自由度を高める観点から、当該窒素原子含有モノマーは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を形成するための重合に使用される1つの重合性基以外に反応性不飽和二重結合基を含有しないことが好ましい。
【0051】
窒素含有複素環を有するモノマーとしては、例えば、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルアジリジン、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピラジン、1-ビニルイミダゾール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルフタルイミド等が挙げられ、中でも、より優れた粘着力を発揮するN-(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく、特にN-アクリロイルモルホリンが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として窒素原子含有モノマーを含有する場合、当該窒素原子含有モノマーを1質量%以上含有することが好ましく、特に2質量%以上含有することが好ましく、さらには4質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、当該窒素原子含有モノマーを24質量%以下含有することが好ましく、特に16質量%以下含有することが好ましく、さらには8質量%以下含有することが好ましい。窒素原子含有モノマーの含有量が上記の範囲内にあると、得られる粘着剤が、ガラスに対する優れた粘着力を十分に発揮することができる。
【0053】
上記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、分子内に芳香環構造を有するモノマー(芳香環含有モノマー)を含有することも好ましい。かかる芳香環含有モノマーを使用することにより、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を高屈折率化することができる。
【0054】
芳香環含有モノマーとしては、芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ビフェニル環、フルオレン環等が挙げられるが、中でもベンゼン環が好ましい。ベンゼン環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ベンジルオキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコール、エチレンオキサイド変性(メタ)アクリル酸クレゾール、エチレンオキサイド変性(メタ)アクリル酸ノニルフェノール、(メタ)アクリル酸ビフェニルオキシエチルエステル、スチレン等が挙げられ、中でも(メタ)アクリル酸ベンジルおよび(メタ)アクリル酸フェノキシエチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として芳香環含有モノマーを含有する場合、当該芳香環含有モノマーを1質量%以上含有することが好ましく、特に10質量%以上含有することが好ましく、さらには26質量%以上含有することが好ましい。また、当該含有量は、60質量%以下であることが好ましく、特に50質量%以下であることが好ましく、さらには40質量%以下であることが好ましい。芳香環含有モノマーの含有量が上記範囲にあることにより、屈折率の高い光拡散微粒子(C)を使用しても、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と微粒子(C)との屈折率差を所望の範囲に調節し易くなる。
【0056】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、反応性官能基含有モノマーの前述した作用を阻害しないためにも、反応性官能基を含有しないモノマーが好ましい。かかるモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、直鎖状のポリマーであることが好ましい。直鎖状のポリマーであることにより、分子鎖の絡み合いが起こりやすくなり、凝集力の向上が期待できる。
【0058】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、溶液重合法によって得られた溶液重合物であることが好ましい。溶液重合物であることにより、高分子量のポリマーが得られやすくなり、凝集力の向上が期待できる。
【0059】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0060】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、20万以上であることが好ましく、30万以上であることがより好ましく、40万以上であることが特に好ましい。これにより、耐久性および高温高湿条件下での段差追従性がより優れたものとなる。また、当該重量平均分子量は、50万以上であることがさらに好ましい。これにより、光拡散微粒子(C)を含有する粘着剤においても十分な凝集力を発揮する程度に、高い貯蔵弾性率を得ることができる。加えて、光拡散微粒子(C)の粘着剤中への分散性を良好にできる傾向がある。
【0061】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、上限値として150万以下であることが好ましく、120万以下であることがより好ましく、特に100万以下であることが好ましく、さらには80万以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の上限値が上記であると、初期の段差追従性がより優れたものとなる。本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0062】
なお、粘着性組成物Pにおいて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
(1-2)架橋剤(B)
架橋剤(B)としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性基と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。上記の中でも、水酸基との反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤(B)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0064】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0065】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が挙げられる。中でもカルボキシ基との反応性の観点から、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンが好ましい。
【0066】
粘着性組成物P中における架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、特に1質量部以下であることが好ましく、さらには0.4質量部以下であることが好ましい。架橋剤(B)の含有量が上記範囲にあることで、得られる粘着剤の貯蔵弾性率、ゲル分率、粘着力等が好適なものとなり易い。
【0067】
(1-3)光拡散微粒子(C)
光拡散微粒子(C)は、粘着剤層2(光拡散粘着剤層21)が前述した物性を満たすことができるものであればよい。
【0068】
光拡散微粒子(C)としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、二酸化チタン等の無機系微粒子;アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂等の有機系の透光性微粒子;シリコーン樹脂のような無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子(例えばモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製のトスパールシリーズ)などが挙げられる。中でも、シリコーン樹脂からなる微粒子が好ましい。これにより、(メタ)アクリル酸エステル(A)との屈折率差を後述の範囲に収めやすくなる。以上の光拡散微粒子(C)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
光拡散微粒子(C)の形状としては、光拡散が均一な球状の微粒子が好ましい。光拡散微粒子(C)の遠心沈降光透過法による平均粒径は、下限値として1.0μm以上であることが好ましく、特に2.0μm以上であることが好ましく、さらには3.0μm以上であることが好ましい。上記平均粒径の下限値が上記であると、斜め15°輝度が好ましい範囲に入り易くなる。一方、上記平均粒径は、上限値として10μm以下であることが好ましく、特に8μm以下であることが好ましく、さらには6μm以下であることが好ましい。上記平均粒径の上限値が上記であると、正面0°輝度が好ましい範囲に入り易くなり、また、高精細な表示画像を良好に表示することができる。
【0070】
なお、上記遠心沈降光透過法による平均粒径は、微粒子1.2gとイソプロピルアルコール98.8gとを十分に撹拌したものを測定用試料とし、遠心式自動粒度分布測定装置(堀場製作所社製,CAPA-700)を使用して測定したものである。
【0071】
光拡散微粒子(C)の屈折率は、1.20以上であることが好ましく、1.30以上であることがより好ましく、特に1.40以上であることが好ましい。また、光拡散微粒子の屈折率は、1.80以下であることが好ましく、1.60以下であることがより好ましく、特に1.54以下であることが好ましい。光拡散微粒子の屈折率が上記範囲にあることにより、前述した光学物性がより満たされ易くなる。
【0072】
なお、光拡散微粒子の屈折率は、例えば次の方法により測定することができる。すなわち、スライドガラス上に微粒子を載せ、屈折率標準液を微粒子上に滴下し、カバーガラスを被せ試料を作製する。当該試料を顕微鏡で観察し、微粒子の輪郭が最も見づらくなった屈折率標準液の屈折率を微粒子の屈折率とする。
【0073】
光拡散微粒子(C)の屈折率と、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の屈折率との差(屈折率差)の絶対値は、0.004以上であることが好ましく、0.008以上であることがより好ましく、特に0.010以上であることが好ましく、さらには0.020以上であることが好ましい。また、当該屈折率差の絶対値は、0.100以下であることが好ましく、0.090以下であることがより好ましく、特に0.070以下であることが好ましく、さらには0.050以下であることが好ましい。上記屈折率差の絶対値が上記の範囲にあることにより、前述した光学物性が満たされ易くなる。
【0074】
なお、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の屈折率は、測定波長589nm、測定温度23℃の条件で、アッベ屈折率計(例えば、アタゴ社製)を使用して測定することができる。
【0075】
粘着性組成物P中における光拡散微粒子(C)の含有量は、前述した物性を満たすことができる量であればよい。具体的には、光拡散微粒子(C)の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、特に10質量%以上であることが好ましい。また、光拡散微粒子(C)の含有量は、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、特に20質量%以下であることがより好ましく、さらには15質量%以下であることが好ましい。光拡散微粒子(C)の含有量が上記の範囲にあることで、前述した光学物性が満たされ易くなる。
【0076】
(1-4)活性エネルギー線硬化性成分(D)
光拡散粘着剤層21を構成する粘着剤または透明粘着剤層22を構成する粘着剤を活性エネルギー線硬化性の粘着剤にする場合、粘着性組成物Pは、さらに活性エネルギー線硬化性成分(D)を含有することが好ましい。
【0077】
活性エネルギー線硬化性成分(D)を含有する粘着性組成物Pを架橋してなる粘着剤を活性エネルギー線硬化した粘着剤においては、活性エネルギー線硬化性成分(D)が互いに重合し、その重合した活性エネルギー線硬化性成分(D)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の架橋構造(三次元網目構造)に絡み付くものと推定される。かかる高次構造を有する粘着剤は、耐久性および高温高湿条件下での段差追従性に特に優れたものとなる。
【0078】
活性エネルギー線硬化性成分(D)は、活性エネルギー線の照射によって硬化し、上記の効果が得られる成分であれば特に制限されず、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれであってもよいし、それらの混合物であってもよい。中でも、耐久性により優れる多官能アクリレート系モノマーを好ましく挙げることができる。
【0079】
多官能アクリレート系モノマーとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等の2官能型;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能型;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能型;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能型;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能型などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性の観点から、多官能アクリレート系モノマーは、分子量1000未満のものが好ましい。
【0080】
粘着性組成物P中における活性エネルギー線硬化性成分(D)の含有量は、耐久性および段差追従性向上の観点から、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、下限値として1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることが特に好ましく、6質量部以上であることがさらに好ましい。一方、上記含有量は、活性エネルギー線照射後の粘着剤の粘着力の観点から、上限値として30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることが特に好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。
【0081】
(1-5)光重合開始剤(E)
光拡散粘着剤層21を構成する粘着剤または透明粘着剤層22を構成する粘着剤を活性エネルギー線硬化性の粘着剤にする場合において、粘着剤を硬化させる活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、粘着性組成物Pは、さらに光重合開始剤(E)を含有することが好ましい。このように光重合開始剤(E)を含有することにより、活性エネルギー線硬化性成分(D)を効率良く重合させることができ、また重合硬化時間および活性エネルギー線の照射量を少なくすることができる。
【0082】
このような光重合開始剤(E)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリ-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
上記の中でも、紫外線吸収剤を含有する材料越しに紫外線照射した場合でも、開裂し易く、粘着剤を確実に硬化させ易い、フォスフィンオキサイド系の光重合開始剤が好ましい。具体的には、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が好ましい。
【0084】
粘着性組成物P中における光重合開始剤(E)の含有量は、活性エネルギー線硬化性成分(D)100質量部に対して、下限値として0.1質量部以上であることが好ましく、特に1質量部以上であることが好ましく、さらには5質量部以上であることが好ましい。また、上限値として30質量部以下であることが好ましく、特に20質量部以下であることが好ましく、さらには12質量部以下であることが好ましい。
【0085】
(1-6)各種添加剤
粘着性組成物Pには、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えばシランカップリング剤、帯電防止剤、防錆剤、紫外線吸収剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、屈折率調整剤などを添加することができる。なお、後述の重合溶媒や希釈溶媒は、粘着性組成物Pを構成する添加剤に含まれないものとする。
【0086】
粘着性組成物Pは、上記の中でもシランカップリング剤を含有することが好ましい。これにより、被着体の材料がプラスチックであっても、ガラスであっても、当該被着体との密着性が向上し、耐久性および高温高湿条件下での段差追従性がより優れたものとなる。
【0087】
シランカップリング剤としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性がよく、光透過性を有するものが好ましい。
【0088】
かかるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有ケイ素化合物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、あるいはこれらの少なくとも1つと、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有ケイ素化合物との縮合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
粘着性組成物P中におけるシランカップリング剤の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、1.2質量部以下であることが好ましく、特に0.8質量部以下であることが好ましく、さらには0.4質量部以下であることが好ましい。
【0090】
帯電防止剤としては、例えば、イオン性化合物、ノニオン性化合物等が挙げられるが、中でもイオン性化合物が好ましい。イオン性化合物としては、含窒素オニウム塩、含硫黄オニウム塩、含リンオニウム塩、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が好ましく、耐久性の観点から、特に含窒素オニウム塩またはアルカリ金属塩が好ましい。含窒素オニウム塩は、含窒素複素環カチオン(例えばピリジン環、イミダゾール環等)とその対アニオン(例えばハロゲン化リン酸アニオン、スルホニルイミド系アニオン等)とから構成されるイオン性化合物であることが好ましい。
【0091】
ピリジン環およびスルホニルイミド系アニオンを有する含窒素オニウム塩の具体例としては、1-デシルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-エチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-ブチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-へキシルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-ブチル-4-メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-へキシル-3-メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-ブチル-3,4-ジメチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、4-メチル-1-オクチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0092】
粘着性組成物P中における帯電防止剤の含有量は、0.01~30質量%であることが好ましく、特に0.1~10質量%であることが好ましく、さらには1~8質量%であることが好ましい。
【0093】
(2)粘着性組成物の調製
粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを混合するとともに、所望により活性エネルギー線硬化性成分(D)、光重合開始剤(E)、添加剤等を加えることで製造することができる。光拡散粘着剤層21の場合には、さらに光拡散微粒子(C)を配合する。
【0094】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法により行うことが好ましい。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、無溶剤にて重合してもよい。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0095】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。
【0096】
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0097】
なお、上記重合工程において、2-メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
【0098】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の溶液に、架橋剤(B)、ならびに所望により希釈溶剤、光拡散微粒子(C)、活性エネルギー線硬化性成分(D)、光重合開始剤(E)、添加剤等を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物P(塗布溶液)を得る。なお、上記各成分のいずれかにおいて、固体状のものを用いる場合、あるいは、希釈されていない状態で他の成分と混合した際に析出を生じる場合には、その成分を単独で予め希釈溶媒に溶解もしくは希釈してから、その他の成分と混合してもよい。
【0099】
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0100】
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物Pの濃度が10~60質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物Pがコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布溶液となる。
【0101】
(3)粘着剤層の形成
本実施形態における光拡散粘着剤層21および透明粘着剤層22は、それぞれ、粘着性組成物P(の塗布層)を架橋した粘着剤からなることが好ましい。粘着性組成物Pの架橋は、通常は加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、所望の対象物に塗布した粘着性組成物Pの塗布層から希釈溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
【0102】
加熱処理の加熱温度は、50~150℃であることが好ましく、特に70~120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、10秒~10分であることが好ましく、特に50秒~2分であることが好ましい。
【0103】
加熱処理後、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1~2週間程度の養生期間を設けてもよい。この養生期間が必要な場合は、養生期間経過後、養生期間が不要な場合には、加熱処理終了後、粘着剤が形成される。
【0104】
上記の加熱処理(及び養生)により、架橋剤(B)を介して(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が十分に架橋される。
【0105】
本実施形態における粘着剤層2は、光拡散粘着剤層21および透明粘着剤層22を積層することにより得ることができる。積層のタイミングは、各粘着剤層を養生する前であってもよいし、養生した後であってもよい。ただし、光拡散粘着剤層21および透明粘着剤層22の密着性をより高くするためには、各粘着剤層を養生する前に積層することが好ましい。
【0106】
1-2.剥離シート
剥離シート3a,3bは、粘着シート1の使用時まで粘着剤層2を保護するものであり、粘着シート1(粘着剤層2)を使用するときに剥離される。本実施形態に係る粘着シート1において、剥離シート3a,3bの一方または両方は必ずしも必要なものではない。
【0107】
剥離シート3a,3bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0108】
上記剥離シート3a,3bの剥離面(特に粘着剤層2と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。
【0109】
剥離シート3a,3bの厚さについては特に制限はないが、通常20~150μm程度である。
【0110】
2.粘着シートの製造
粘着シート1の一製造例としては、一方の剥離シート3aの剥離面に、透明粘着剤層22を形成するための粘着性組成物Pの塗布溶液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート3aを得る。また、他方の剥離シート3bの剥離面に、光拡散粘着剤層21を形成するための粘着性組成物Pの塗布溶液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート3bを得る。そして、塗布層付きの剥離シート3aと塗布層付きの剥離シート3bとを、両塗布層が互いに接触するように貼り合わせる。ここで、塗布層付きの剥離シートを複数作製し、その塗布層を所望の数、所望の積層順で貼合してもよい。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記の積層された塗布層が粘着剤層2となる。これにより、光拡散粘着剤層21と透明粘着剤層22との積層体である粘着剤層2を有する上記粘着シート1が得られる。加熱処理および養生の条件については、前述した通りである。
【0111】
なお、透明粘着剤層22を形成するための塗布層および光拡散粘着剤層21を形成するための塗布層は、それぞれ2枚の剥離シートによって挟持されてもよく、透明粘着剤層22を形成するための塗布層と光拡散粘着剤層21を形成するための塗布層とを貼合するときに、それぞれの片方の剥離シートを剥離してもよい。
【0112】
上記粘着性組成物Pの塗布溶液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
【0113】
3.物性
(1)厚さ
粘着剤層2の総厚、本実施形態では、光拡散粘着剤層21および透明粘着剤層22の合計厚さは、下限値として、50μm以上であることが好ましく、特に75μm以上であることが好ましく、さらには100μm以上であることが好ましく、200μm以上であることが最も好ましい。粘着剤層2の総厚の下限値が上記であることにより、前述した光学物性を満たし易くなるとともに、2枚の硬質板である液晶セルの圧縮に対する粘着剤層の応力を緩和させ易くなり、硬質板貼合性および画像表示ムラの防止性がより向上する。一方、粘着剤層2の総厚は、上限値として、1000μm以下であることが好ましく、特に700μm以下であることが好ましく、さらには500μm以下であることが好ましい。粘着剤層2の総厚の上限値が上記であることにより、得られる液晶表示部材が不要に厚くなることを防止することができる。
【0114】
光拡散粘着剤層21の厚さは、10μm以上であることが好ましく、特に25μm以上であることが好ましく、さらには50μm以上であることが好ましい。また、光拡散粘着剤層21の厚さは、200μm以下であることが好ましく、特に150μm以下であることが好ましく、さらには100μm以下であることが好ましい。光拡散粘着剤層21の厚さが上記の範囲にあることにより、前述した光学物性値を満たし易くなる。
【0115】
また、透明粘着剤層22の厚さは、下限値として、25μm以上であることが好ましく、特に50μm以上であることが好ましく、さらには100μm以上であることが好ましい。透明粘着剤層22の厚さの下限値が上記であることにより、2枚の硬質板である液晶セルの圧縮に対する粘着剤層の応力を緩和させ易くなり、硬質板貼合性および画像表示ムラの防止性がより向上する。一方、透明粘着剤層22の厚さは、上限値として、800μm以下であることが好ましく、特に550μm以下であることが好ましく、さらには400μm以下であることが好ましい。透明粘着剤層22の厚さの上限値が上記であることにより、得られる液晶表示部材が不要に厚くなることを防止することができる。
【0116】
(2)ゲル分率
粘着剤層2を構成する粘着剤のゲル分率は、耐久性および高温高湿条件下での段差追従性の観点から、30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、特に45%以上であることが好ましく、さらには50%以上であることが好ましい。また、上記ゲル分率は、90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、特に70%以下であることが好ましく、さらには65%以下であることが好ましい。これにより、液晶セルに対する貼付性がより優れたものとなる。なお、本明細書における粘着剤のゲル分率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0117】
上記粘着剤層2(光拡散粘着剤層2および透明粘着剤層22の少なくとも一方)を構成する粘着剤が活性エネルギー線硬化性の場合、当該粘着剤の活性エネルギー線硬化後のゲル分率は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、特に75%以上であることが好ましい。これにより、耐久性および高温高湿条件下での段差追従性がより優れたものとなる。また、上記活性エネルギー線硬化後のゲル分率は、95%以下であることが好ましく、85%以下であることがより好ましく、特に80%以下であることが好ましい。これにより、良好な粘着力が発現し、被着体との接着性がより優れたものとなる。
【0118】
(3)粘着力
本実施形態に係る粘着シート1の粘着剤層2における光拡散粘着剤層21側のソーダライムガラスに対する粘着力は、耐久性および高温高湿条件下での段差追従性の観点から、5N/25mm以上であることが好ましく、10N/25mm以上であることがより好ましく、特に20N/25mm以上であることが好ましく、さらには25N/25mm以上であることが好ましい。また、上記粘着力は、100N/25mm以下であることが好ましく、80N/25mm以下であることがより好ましく、特に60N/25mm以下であることが好ましく、さらには50N/25mm以下であることが好ましい。これにより、良好なリワーク性が得られ、貼合ミスが生じた場合でも被着体の再利用が可能となる。
【0119】
光拡散粘着剤層21が活性エネルギー線硬化性の場合、粘着剤層2における光拡散粘着剤層21側の活性エネルギー線照射後におけるソーダライムガラスに対する粘着力は、10N/25mm以上であることが好ましく、20N/25mm以上であることがより好ましく、特に40N/25mm以上であることが好ましく、さらには60N/25mm以上であることが好ましい。これにより、耐久性および高温高湿条件下での段差追従性がより優れたものとなる。また、上記粘着力は、100N/25mm以下であることが好ましく、90N/25mm以下であることがより好ましく、特に80N/25mm以下であることが好ましく、さらには75N/25mm以下であることが好ましい。
【0120】
本実施形態に係る粘着シート1の粘着剤層2における透明粘着剤層22側のソーダライムガラスに対する粘着力は、耐久性および高温高湿条件下での段差追従性の観点から、5N/25mm以上であることが好ましく、10N/25mm以上であることがより好ましく、特に20N/25mm以上であることが好ましく、さらには25N/25mm以上であることが好ましい。また、上記粘着力は、100N/25mm以下であることが好ましく、80N/25mm以下であることがより好ましく、特に60N/25mm以下であることが好ましく、さらには50N/25mm以下であることが好ましい。これにより、良好なリワーク性が得られ、貼合ミスが生じた場合でも被着体の再利用が可能となる。
【0121】
透明粘着剤層22が活性エネルギー線硬化性の場合、粘着剤層2における透明粘着剤層22側の活性エネルギー線照射後におけるソーダライムガラスに対する粘着力は、10N/25mm以上であることが好ましく、20N/25mm以上であることがより好ましく、特に40N/25mm以上であることが好ましく、さらには60N/25mm以上であることが好ましい。これにより、耐久性および高温高湿条件下での段差追従性がより優れたものとなる。また、上記粘着力は、100N/25mm以下であることが好ましく、90N/25mm以下であることがより好ましく、特に80N/25mm以下であることが好ましく、さらには75N/25mm以下であることが好ましい。
【0122】
ここで、本明細書における粘着力は、基本的にはJIS Z0237:2009に準じた180度引き剥がし法により測定した粘着力をいうが、測定サンプルは25mm幅、100mm長とし、当該測定サンプルを被着体に貼付し、0.5MPa、50℃で20分加圧した後、常圧、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、剥離速度300mm/minにて測定するものとする。
【0123】
〔液晶表示部材〕
本発明の一実施形態に係る液晶表示部材は、第1の液晶セルと、第2の液晶セルと、それらを互いに貼合する粘着剤層とを備えて構成される。この粘着剤層は、前述した実施形態に係る粘着シートの粘着剤層であり、前述した光学物性を満たすものである。かかる液晶表示部材は、当該粘着剤層の作用によって、モアレが発生し難く、また、高い輝度を実現することができる。
【0124】
本実施形態における粘着剤層の好ましい一例は、光拡散粘着剤層および透明粘着剤層の2層からなるものであり、以下、図面を参照して説明する。
【0125】
図2に示すように、本実施形態に係る液晶表示部材4は、第1の液晶セル5aと、第2の液晶セル5bと、それらを互いに貼合する粘着剤層2とを備えて構成される。本実施形態における粘着剤層2は、第1の液晶セル5aに接する光拡散粘着剤層21と、第2の液晶セル5bに接する透明粘着剤層22との2層からなる。
【0126】
光拡散粘着剤層21および透明粘着剤層22は、前述した粘着シート1における光拡散粘着剤層21および透明粘着剤層22であり、その構成の詳細は前述した通りである。
【0127】
第1の液晶セル5aおよび第2の液晶セル5bは、液晶(LCD)ディスプレイ、特に立体画像を表示する、あるいは、4Kや8Kの高精細画像を表示する液晶ディスプレイにおいて通常使用されるものであり、特に限定されるものではない。なお、「液晶セル」は、「液晶パネル」、「液晶モジュール」、「液晶表示素子」等と称されることもある。
【0128】
第1の液晶セル5aおよび第2の液晶セル5bは、通常は硬質体であり、その厚さは、通常、0.5~5.0mm程度であり、好ましくは1.0~3.0mm程度である。
【0129】
上記液晶表示部材4を製造するには、最初に、粘着シート1から剥離シート3aを剥離し、光拡散粘着剤層21を露出させ、その露出した光拡散粘着剤層21を第1の液晶セル5aの一方の面に貼付する。このとき、粘着シート1において、液晶セル5aに接する面と反対側の面は、柔軟性を有する剥離シート3bが貼付された状態を維持している。したがって、液晶セル5aへの貼付時に発生した光拡散粘着剤層21の応力は直ぐに解消されることとなる。また、液晶セル5aへの貼付時には透明粘着剤層22がクッション材の役割を果たし、液晶セル5aに過剰な圧力がかかるのを抑制することができる。これらの作用により、本段階における、液晶表示部材4形成時の画像表示ムラの原因となる液晶セル5aの配向の乱れを防止することができる。
【0130】
次に、第1の液晶セル5aに貼付した粘着シート1(粘着剤層2)から剥離シート3bを剥離し、透明粘着剤層22を露出させ、その露出した透明粘着剤層22に第2の液晶セル5bを貼合する。ここで、液晶セル5bとの貼合により、粘着剤層2には応力が発生する。しかしながら、粘着剤層2が透明粘着剤層22を有することから、上記応力は緩和され、液晶セル5aや液晶セル5bへ当該応力が作用することが防止される。さらには、液晶セル5b貼合時の過剰な圧力も、透明粘着剤層22により調整されることとなる。このようにして得られる液晶表示部材4では、粘着剤層2の残留応力やそれによる反発力のムラにより液晶セル5a,5bの配向が乱れることが防止され、もって表示画像のムラの発生が抑制されて、良好に表示画像が表示される。また、透明粘着剤層22のクッション性により、硬質板である液晶セル5a,5b同士を貼合するときに、界面にエアを噛んで気泡ができることを抑制することができる。
【0131】
粘着剤層2(光拡散粘着剤層21および/または透明粘着剤層22)が活性エネルギー線硬化性の場合には、上記のように第1の液晶セル5aおよび第2の液晶セル5bを貼合した後、第1の液晶セル5aまたは第2の液晶セル5b越しに、粘着剤層2に対して活性エネルギー線を照射して、粘着剤層2を硬化させる。これにより、粘着剤層2の耐久性および段差追従性がより優れたものとなる。
【0132】
活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、具体的には、紫外線や電子線などが挙げられる。活性エネルギー線の中でも、取扱いが容易な紫外線が特に好ましい。
【0133】
紫外線の照射は、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプ等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度が50~1000mW/cm程度であることが好ましく、100~500mW/cm程度であることが好ましい。また、光量は、50~10000mJ/cmであることが好ましく、200~7000mJ/cmであることがより好ましく、500~3000mJ/cmであることが特に好ましい。一方、電子線の照射は、電子線加速器等によって行うことができ、電子線の照射量は、10~1000krad程度が好ましい。
【0134】
上記液晶表示部材4は、前述した光学物性を満たす粘着剤層2の作用によって、モアレが発生し難く、高輝度の表示画像を得ることができる。
【0135】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0136】
例えば、粘着シート1における粘着剤層2は、3層以上の構造を有するものであってもよい。また、粘着シート1における剥離シート3a,3bのいずれか一方は省略されてもよい。
【実施例0137】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0138】
〔実施例1〕
1.光拡散粘着剤層用の粘着性組成物の調製
アクリル酸n-ブチル27.5質量部、アクリル酸2-エチルヘキシル27.5質量部、アクリル酸イソボルニル15質量部、N-アクリロイルモルホリン5質量部、およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル25質量部を溶液重合法により共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を以下の方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)50万であった。
【0139】
上記重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC-8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL-H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0140】
上記で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製,製品名「BHS8515」)0.2質量部と、光拡散微粒子(C)としてのシリコーン樹脂(無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物)からなる微粒子(C1;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製,製品名「トスパール145」,平均粒径:4.5μm,屈折率:1.43)13.5質量部と、シランカップリング剤としての3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.13質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、光拡散粘着剤層用の粘着性組成物の塗布溶液を得た。
【0141】
2.透明粘着剤層用の粘着性組成物の調製
光拡散微粒子(C)を配合しない以外、光拡散粘着剤層用の粘着性組成物と同様にして透明粘着剤層用の粘着性組成物を調製した。
【0142】
3.光拡散粘着剤層の形成
上記工程1.で調製した光拡散粘着剤層用の粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET382120」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布した。そして、その塗膜を90℃で1分間加熱処理して、厚さ50μmの光拡散粘着剤層を形成した。
【0143】
4.透明粘着剤層の形成
上記工程2.で調製した透明粘着剤層用の粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET752150」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布した。そして、その塗膜を90℃で1分間加熱処理し、厚さ50μmの透明粘着剤層を形成した。
【0144】
また、同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET382120」)の剥離処理面に、厚さ50μmの透明粘着剤層を形成し、これを3枚作成した。この軽剥離型剥離シート上の透明粘着剤層を上記重剥離型剥離シート上の透明粘着剤層に積層し、当該軽剥離型剥離シートを剥離した。この工程を繰り返し、重剥離型剥離シート上に厚さ200μmの透明粘着剤層を形成した。
【0145】
5.粘着シートの製造
上記工程3.で得られた軽剥離型剥離シート上の光拡散粘着剤層と、上記工程4.で得られた重剥離型剥離シート上の透明粘着剤層とを貼り合わせた後、23℃、50%RHの条件下で7日間養生し、軽剥離型剥離シートと、光拡散粘着剤層(厚さ50μm)と、透明粘着剤層(厚さ200μm)と、重剥離型剥離シートとがその順に積層してなる粘着シートを得た。なお、各粘着剤層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG-02」)を使用して測定した値である。
【0146】
ここで、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を100質量部(固形分換算値)とした場合の粘着性組成物の各配合(固形分換算値)を表1に示す。なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)]
BA:アクリル酸n-ブチル
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
IBXA:アクリル酸イソボルニル
ACMO:N-アクリロイルモルホリン
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
PhEA:アクリル酸フェノキシエチル
[光拡散微粒子]
C1:平均粒径4.5μmのシリコーン樹脂(無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物)からなる微粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製、製品名「トスパール145」、屈折率1.43)
C2:平均粒径3μmの真球状有機微粒子(積水化成品工業社製、製品名「SSX-103」、屈折率1.49)
C3:平均粒径3μmの真球状ポリメタクリル酸メチル-ポリスチレン共重合体微粒子(積水化成品工業社製、製品名「XX-22LA」、屈折率1.53)
【0147】
〔実施例2~11,比較例1~5〕
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する各モノマーの種類および割合、架橋剤(B)の配合量、光拡散微粒子(C)の種類および配合量、シランカップリング剤の配合量、ならびに光拡散粘着剤層および透明粘着剤層の厚さを表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。実施例9および10においては、光拡散粘着剤層のみで粘着剤層を構成した。
【0148】
なお、実施例6においては、光拡散粘着剤層用の粘着性組成物の調製および透明粘着剤層用の粘着性組成物の調製にて、さらに、活性エネルギー線硬化性成分(D)としてε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(新中村化学社製,製品名「NKエステル A-9300-1CL」)8質量部、および光重合開始剤(E)として2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド0.8質量部を添加し、光拡散粘着剤層および透明粘着剤層を活性エネルギー線硬化性の粘着剤層とした。
【0149】
また、実施例7においては、光拡散粘着剤層用の粘着性組成物の調製および透明粘着剤層用の粘着性組成物の調製にて、さらに、帯電防止剤として、イオン性液体である4-メチル-1-オクチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド5質量部をそれぞれ添加した。
【0150】
〔試験例1〕(屈折率の測定)
実施例および比較例で調製した(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の屈折率を、測定波長589nm、測定温度23℃の条件で、アッベ屈折率計(アタゴ社製)を使用して測定した。結果を表1に示す。
【0151】
また上記の結果に基づき、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の屈折率と光拡散微粒子(C)の屈折率との差分である、屈折率差の絶対値を算出した。結果を表2に示す。
【0152】
〔試験例2〕(ゲル分率の測定)
実施例および比較例で製造した粘着シートを80mm×80mmのサイズに裁断して、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
【0153】
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。これにより、粘着剤のゲル分率(UV前;%)を導出した。結果を表2に示す。
【0154】
また、実施例6で製造した粘着シートの粘着剤層に対して、軽剥離型剥離シート越しに、下記の条件で活性エネルギー線(紫外線;UV)を照射し、粘着剤層を硬化させて硬化後粘着剤層とした。この硬化後粘着剤層の粘着剤について、上記と同様にしてゲル分率(UV後;%)を導出した。結果を表2に示す。
【0155】
<活性エネルギー線照射条件>
・高圧水銀ランプ使用
・照度200mW/cm,光量1000mJ/cm
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製「UVPF-A1」を使用
【0156】
〔試験例3〕(全光線透過率の測定)
実施例および比較例で製造した粘着シートの粘着剤層をガラスに貼合して、これを測定用サンプルとした。ガラスでバックグラウンド測定を行った上で、上記測定用サンプルについて、JIS K7361-1:1997に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「SH-7000」)を用いて全光線透過率(%)を測定した。結果を表2に示す。
【0157】
〔試験例4〕(ヘイズ値の測定)
実施例および比較例で製造した粘着シートの粘着剤層をガラスに貼合して、これを測定用サンプルとした。ガラスでバックグラウンド測定を行った上で、上記測定用サンプルについて、JIS K7136:2000に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「SH-7000」)を用いてヘイズ値(%)を測定した。結果を表2に示す。
【0158】
〔試験例5〕(輝度の測定)
実施例および比較例で製造した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、厚さ1.1mmのソーダライムガラスに貼付した。次いで、当該粘着剤層から重剥離型剥離シートを剥がすことにより、サンプルを得た。当該サンプルを、小型散乱測定器(ライトテック社製,製品名「Mini-Diff V2」)に、測定光線(100(単位なし)の白色光)がソーダライムガラス側から入射するよう設置した。そして、23℃、50%RHの環境下、測定波長622nmにて、サンプルの正面0°(サンプルの真正面)およびサンプルの法線から15°(斜め15°)のそれぞれの角度から、輝度を測定した。なお、輝度測定は、サンプルを設置しないブランク測定での正面0°輝度が100となるように校正して行った。
【0159】
また、上記の測定結果から、斜め15°における輝度(斜め15°輝度)の、正面0°における輝度(正面0°輝度)に対する輝度比(斜め15°輝度/正面0°輝度)を算出した。それぞれの結果を表2に示す。
【0160】
〔試験例6〕(偏光解消度の測定)
実施例および比較例で製造した粘着シートから、その両面の剥離シートを剥がし、2枚の偏光板(直線偏向を示す偏光板)の偏光軸が揃うように(パラレルニコル)、当該2枚の偏光板を粘着剤層の両面に貼付することにより、サンプルAを用意した。また、実施例および比較例で製造した粘着シートから、その両面の剥離シートを剥がし、2枚の偏光板の偏光軸が直交するように(クロスニコル)、当該2枚の偏光板を粘着剤層の両面に貼付することにより、サンプルBを用意した。
【0161】
一方、基準とする透明粘着剤層(リンテック社製,製品名「Opteria MO-3015」,厚さ:250μm)についても、上記と同様にしてサンプルAおよびサンプルBを作製した。なお、サンプルAおよびサンプルBの作製に当たっては、各例の粘着剤層と、基準透明粘着剤層とを、同一の偏光板に並べて配置し、積層した。これにより、各例の粘着剤層と基準透明粘着剤層とで、偏光板の配置が完全に一致することとなる。
【0162】
次に、紫外可視近赤外(UV-Vis-NIR)分光光度計(島津製作所社製,製品名「UV-3600」)を使用し、波長550nmにて、サンプルAの透過率(パラレルニコルの透過率;%)およびサンプルBの透過率(クロスニコルの透過率;%)を測定した。得られた各透過率を基に、以下の式(1)から偏光度(%)を算出した。
偏光度(%)={(パラレルニコルの透過率(%)-クロスニコルの透過率(%)/(パラレルニコルの透過率(%)+クロスニコルの透過率(%))}×100 …(1)
【0163】
上記で得られた偏光度(%)に基づき、以下の式(2)から各例の偏光解消度(%)を算出した。結果を表2に示す。
偏光解消度(%)={(基準透明粘着剤層の偏光度(%)-各例の偏光度(%))/(基準透明粘着剤層の偏光度(%))}×100 …(2)
【0164】
〔試験例7〕(粘着力の測定)
実施例および比較例で製造した粘着シートから透明粘着剤層側の剥離シートを剥離し、露出した透明粘着剤層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製,製品名「PET A4300」,厚さ:100μm)の易接着層に貼合し、剥離シート/粘着剤層/PETフィルムの積層体を得た。得られた積層体を25mm幅、100mm長に裁断した。
【0165】
23℃、50%RHの環境下にて、上記積層体から拡散粘着剤層側の剥離シートを剥離し、露出した拡散粘着剤層をソーダライムガラス(日本板硝子社製)に貼付したのち、栗原製作所社製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。その後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置して、これをサンプルとした。そして、引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロン」)を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で拡散粘着剤層側の粘着力(UV前;N/25mm)を測定した。ここに記載した以外の条件はJIS Z0237:2009に準拠して、測定を行った。また、上記と同様にして、透明粘着剤層側の粘着力(UV前;N/25mm)についても測定した。
【0166】
実施例6においては、上記サンプルに対し、PETフィルム越しに、試験例2と同様の条件で活性エネルギー線を照射し、粘着剤層を硬化させて硬化後粘着剤層とした。その硬化後粘着剤層について、上記と同様にして粘着力(UV後;N/25mm)を測定した。結果を表2に示す。
【0167】
〔試験例8〕(モアレの評価)
実施例および比較例で製造した粘着シートにおける透明粘着剤層側の剥離シートを剥離し、露出した透明粘着剤層を、タブレット端末(アップル社製,製品名「iPad(登録商標)」,解像度:264ppi)の表示画面の表面に貼付した。次いで、上記粘着シートにおける光拡散粘着剤層側の剥離シートを剥離し、露出した光拡散粘着剤層に対し、20ppi~180ppi(20ppi刻み)の格子を有する液晶マスクを貼合し、液晶表示体を得た。
【0168】
上記タブレット端末の画面を全面緑色表示(RGB値(R,G,B)=0,255,0)にして、上記液晶表示体について、液晶マスク側における画面の法線から60度の方向より目視で見たモアレの程度を、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
◎:全ての液晶マスクに係る液晶表示体でモアレが発生しなかった。
〇:大半の液晶マスクに係る液晶表示体でモアレが発生しなかった。
△:大半の液晶マスクに係る液晶表示体でモアレが発生した。
×:全ての液晶マスクに係る液晶表示体でモアレが発生した。
【0169】
〔試験例9〕(輝度・視認性の評価)
実施例および比較例で製造した粘着シートの粘着剤層を、パラレルニコルの2枚の偏光板で挟持し、この積層体をサンプルとした。
【0170】
黒色背景中に灰色文字(「LINTEC」との文字,フォントサイズ32,MS Pゴシック体)を表示した視認対象物(A4サイズ)をサンプルから1cmの位置に設置し、上記サンプルを通して上記視認対象物を視認した。なお、視認者は、780lx(ルクス)の明るさの環境下にて、サンプルから50cm離れた位置にてサンプルを視認した。そして、以下の基準に基づいて、輝度・視認性の評価を行った。結果を表2に示す。
◎:文字が鮮明に認識できた。
〇:文字が認識できた。
△:文字がぼやけて見えた。
×:文字が認識できなかった。
【0171】
〔試験例10〕(耐久性の評価)
実施例および比較例で製造した粘着シートの粘着剤層を、2枚のソーダライムガラス板(日本板硝子社製,厚さ:0.7mm)で挟持した。そして、50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理し、常圧、23℃、50%RHにて24時間放置した。
【0172】
得られた積層体を、60℃、95%RHの高温高湿条件下にて1000時間保管した。そして、粘着剤層と被着体(ソーダライムガラス板)との界面における状態を目視により確認し、以下の基準により耐久性を評価した。結果を表2に示す。
〇…気泡の発生が確認されなかった。
×…気泡の発生が確認された。
【0173】
〔試験例11〕(段差追従性の評価)
ガラス板(NSGプレシジョン社製,製品名「コーニングガラス イーグルXG」,縦90mm×横50mm×厚み0.5mm)の表面に、紫外線硬化型インク(帝国インキ社製,製品名「POS-911墨」)を額縁状(外形:縦90mm×横50mm,幅5mm)にスクリーン印刷した。次いで、紫外線を照射(80W/cm,メタルハライドランプ2灯,ランプ高さ15cm,ベルトスピード10~15m/分)して、印刷した上記紫外線硬化型インクを硬化させ、印刷による段差(段差の高さ:5μm、10μm、15μmおよび20μm)を有する段差付ガラス板を作製した。
【0174】
実施例および比較例で得られた粘着シートから光拡散粘着剤層側の剥離シートを剥がし、露出した光拡散粘着剤層を、ソーダライムガラス板(日本板硝子社製,厚さ:0.7mm)に貼合した。次いで、透明粘着剤層側の剥離シートを剥がし、透明粘着剤層を表出させた。そして、ラミネーター(フジプラ社製,製品名「LPD3214」)を用いて、粘着剤層(複合型粘着剤層)が額縁状の印刷全面を覆うように上記積層体を各段差付ガラス板にラミネートした。その後、50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理し、常圧、23℃、50%RHにて24時間放置した。
【0175】
次に、85℃、85%RHの湿熱条件下にて250時間保管した(耐久試験)。その後、以下の基準に基づいて段差追従性を評価した。結果を表2に示す。
〇:全ての高さの段差において、気泡や浮き・剥がれがなかった。
×:いずれかの段差において、気泡や浮き・剥がれが発生した。
【0176】
なお、実施例6においては、上記耐久試験の前に、上記ソーダライムガラス板越しに、試験例2と同様の条件で活性エネルギー線を照射し、粘着剤層を硬化させて硬化後粘着剤層としたその硬化後粘着剤層について、上記と同様にして段差追従性を評価した。結果を表2に示す。
【0177】
【表1】
【0178】
【表2】
【0179】
表2から分かるように、実施例で製造した粘着シートによれば、得られた液晶表示体においてモアレの発生を抑制できた。また、実施例で製造した粘着シートの粘着剤層は、偏光板で挟持されたときに視認性が高く、すなわち高い輝度を実現できるものであった。さらに、実施例で製造した粘着シートは、耐久性および段差追従性にも優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明に係る粘着シートおよび液晶表示部材は、2枚の液晶セルを使用した表示装置に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0181】
1…粘着シート
2…粘着剤層
21…光拡散粘着剤層
22…透明粘着剤層
3a,3b…剥離シート
4…液晶表示部材
5a…第1の液晶セル
5b…第2の液晶セル
図1
図2