IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

特開2023-82896運転状態判定装置、運転状態判定システム、及び、運転状態判定方法
<>
  • 特開-運転状態判定装置、運転状態判定システム、及び、運転状態判定方法 図1
  • 特開-運転状態判定装置、運転状態判定システム、及び、運転状態判定方法 図2
  • 特開-運転状態判定装置、運転状態判定システム、及び、運転状態判定方法 図3
  • 特開-運転状態判定装置、運転状態判定システム、及び、運転状態判定方法 図4
  • 特開-運転状態判定装置、運転状態判定システム、及び、運転状態判定方法 図5
  • 特開-運転状態判定装置、運転状態判定システム、及び、運転状態判定方法 図6
  • 特開-運転状態判定装置、運転状態判定システム、及び、運転状態判定方法 図7
  • 特開-運転状態判定装置、運転状態判定システム、及び、運転状態判定方法 図8
  • 特開-運転状態判定装置、運転状態判定システム、及び、運転状態判定方法 図9
  • 特開-運転状態判定装置、運転状態判定システム、及び、運転状態判定方法 図10
  • 特開-運転状態判定装置、運転状態判定システム、及び、運転状態判定方法 図11A
  • 特開-運転状態判定装置、運転状態判定システム、及び、運転状態判定方法 図11B
  • 特開-運転状態判定装置、運転状態判定システム、及び、運転状態判定方法 図12
  • 特開-運転状態判定装置、運転状態判定システム、及び、運転状態判定方法 図13
  • 特開-運転状態判定装置、運転状態判定システム、及び、運転状態判定方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082896
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】運転状態判定装置、運転状態判定システム、及び、運転状態判定方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 49/02 20060101AFI20230608BHJP
   F24F 11/38 20180101ALI20230608BHJP
   F24F 11/58 20180101ALI20230608BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20230608BHJP
   F24F 11/49 20180101ALI20230608BHJP
   F24F 110/12 20180101ALN20230608BHJP
   F24F 140/20 20180101ALN20230608BHJP
   F24F 140/12 20180101ALN20230608BHJP
【FI】
F25B49/02 510C
F25B49/02 510F
F25B49/02 510Z
F25B49/02 520Z
F24F11/38
F24F11/58
F24F11/64
F24F11/49
F24F110:12
F24F140:20
F24F140:12
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196889
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横塚 誠
(72)【発明者】
【氏名】三井 健太郎
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB02
3L260BA57
3L260BA75
3L260CA32
3L260CB13
3L260CB17
3L260EA03
3L260EA07
3L260GA15
3L260GA17
3L260GA18
3L260JA12
(57)【要約】
【課題】圧縮機等の冷凍回路の仕様に関係なく容易な構成で冷凍回路の運転状態を適切に判定できる運転状態判定装置を提供すること。
【解決手段】運転状態判定装置は、凝縮器と絞り部を接続する第2配管及び蒸発器と圧縮機を接続する第4配管のそれぞれの内部の冷媒の温度及び圧力、並びに、外気温度の計測結果に基づいて、圧縮機と凝縮器を接続する第1配管及び絞り部と蒸発器を接続する第3配管の少なくとも一方の内部の冷媒の推定物理量及び外気温度の関係を推定する推定部と、第1冷凍条件情報と推定物理量の閾値及び外気温度の関係を表す閾値情報とが関連付けられた複数の判定基準情報のうち、判定対象の冷凍回路の設定冷却温度及び冷媒の種類を表す第1冷凍条件情報に関連付けられた判定基準情報の閾値情報と推定物理量及び外気温度の関係とに基づいて、判定対象の冷凍回路の運転状態を判定する判定部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、絞り部、蒸発器、前記圧縮機と前記凝縮器を接続する第1配管、前記凝縮器と前記絞り部を接続する第2配管、前記絞り部と前記蒸発器を接続する第3配管、及び、前記蒸発器と前記圧縮機を接続する第4配管を備える冷凍回路の運転状態を判定する運転状態判定装置であって、
前記第2配管内の冷媒の温度及び圧力の計測結果、前記第4配管内の冷媒の温度及び圧力の計測結果、並びに、外気温度の計測結果に基づいて、前記第1配管及び前記第3配管のうち少なくとも一方の配管内の冷媒の物理量である推定物理量及び外気温度の関係を推定する推定部と、
冷凍回路の設定冷却温度及び冷媒の種類を表す第1冷凍条件情報と、前記推定物理量の閾値及び外気温度の関係を表す閾値情報とが関連付けられた複数の判定基準情報の中から、判定対象の冷凍回路の設定冷却温度及び冷媒の種類を表す前記第1冷凍条件情報に関連付けられた前記判定基準情報を選出し、当該選出された判定基準情報に関連付けられた前記閾値情報と、前記推定物理量及び前記外気温度の関係とに基づいて、前記判定対象の冷凍回路の運転状態を判定する判定部と、を備える、
運転状態判定装置。
【請求項2】
前記判定部は、
前記推定物理量が、当該推定物理量に対応する外気温度における前記閾値以上か否かに基づいて、前記冷凍回路の運転状態として、前記冷凍回路内の冷媒量の異常を判定する、
請求項1に記載の運転状態判定装置。
【請求項3】
前記判定部は、
前記推定物理量と当該推定物理量に対応する外気温度における前記閾値との差に基づいて、前記冷凍回路内の冷媒量を正常な量にするための冷媒の調整量を判定する、
請求項2に記載の運転状態判定装置。
【請求項4】
前記判定部における判定結果を報知部で報知させる報知制御部を更に備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の運転状態判定装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記温度、前記圧力及び前記外気温度の計測日時に基づいて、前記運転状態の判定結果の信頼性及び信頼性の低下要因のうち少なくとも前記信頼性を判定する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の運転状態判定装置。
【請求項6】
前記推定部は、複数の日時における前記温度、前記圧力及び前記外気温度の計測結果に基づいて、前記推定物理量の推移を推定し、
前記判定部は、前記推定物理量の推移に基づいて、前記運転状態の判定結果の信頼性及び信頼性の低下要因のうち少なくとも前記信頼性を判定する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の運転状態判定装置。
【請求項7】
前記推定部は、
所定期間の複数の日時における前記温度、前記圧力及び前記外気温度の計測結果に基づいて、前記複数の日時における前記推定物理量及び前記外気温度の関係を推定し、
前記判定部は、
それぞれの日時における前記推定物理量と、当該推定物理量に対応する外気温度における閾値との関係に基づいて、前記推定物理量を正常値と異常値とに分類し、
前記正常値と前記異常値との関係に基づいて、前記冷凍回路の運転状態として、前記所定期間全体にわたる前記冷凍回路の異常の有無を択一的に判定する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の運転状態判定装置。
【請求項8】
前記温度、前記圧力及び前記外気温度の計測結果に基づいて、前記第2配管内及び前記第4配管内の冷媒の物理量である演算物理量及び外気温度の関係を演算する演算部を更に備え、
前記判定部は、
冷凍回路の設定冷却温度及び冷媒の種類を表す第2冷凍条件情報と、前記演算物理量の理想値及び外気温度の関係を表す第1理想値情報と、前記推定物理量の理想値及び外気温度の関係を表す第2理想値情報とが関連付けられた複数の理想状態情報の中から、前記判定対象の冷凍回路の設定冷却温度及び冷媒の種類を表す前記第2冷凍条件情報に関連付けられた前記理想状態情報を選出し、当該選出された理想状態情報に関連付けられた前記第1理想値情報及び前記第2理想値情報と、前記演算物理量及び前記外気温度の関係と、前記推定物理量及び前記外気温度の関係とに基づいて、前記冷凍回路の運転状態として、前記冷凍回路のパフォーマンス及び当該パフォーマンスの改善方法のうち少なくとも一方を判定する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の運転状態判定装置。
【請求項9】
前記複数の判定基準情報及び前記複数の理想状態情報を格納するデータベースを更に備え、
前記判定部は、前記判定基準情報及び前記理想状態情報を、前記データベースに格納された前記複数の判定基準情報及び前記複数の理想状態情報の中から、それぞれ選出する、
請求項8に記載の運転状態判定装置。
【請求項10】
前記複数の判定基準情報を格納するデータベースと、
前記データベース内の前記判定基準情報に関連付けられた前記閾値情報を更新する更新部と、を更に備え、
前記判定部は、前記判定基準情報を、前記データベースに格納された前記複数の判定基準情報の中から選出し、前記冷凍回路の運転状態として、前記冷凍回路の異常の有無を判定し、
前記更新部は、
最新の前記異常の有無の判定結果と、過去に行われた前記異常の有無の判定結果とに基づいて、前記閾値及び前記外気温度の関係を再計算し、
前記データベース内の前記選出された判定基準情報に関連付けられた前記閾値情報の内容を、前記再計算された前記閾値及び前記外気温度の関係に更新する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の運転状態判定装置。
【請求項11】
前記判定基準情報は、前記冷凍回路を有する冷凍装置の機種を表す機種情報を更に含み、
前記判定部は、
前記複数の判定基準情報の中から、前記判定対象の冷凍回路の設定冷却温度及び冷媒の種類を表す前記第1冷凍条件情報、並びに、前記判定対象の冷凍回路を有する冷凍装置の機種を表す前記機種情報に関連付けられた前記判定基準情報を選出し、
当該選出された判定基準情報に関連付けられた前記閾値情報と、前記推定物理量及び前記外気温度の関係とに基づいて、前記異常の有無を択一的に判定する、
請求項10に記載の運転状態判定装置。
【請求項12】
前記判定部は、
前記選出された判定基準情報に関連付けられた前記閾値情報の信頼性が低いと判定した場合、前記判定対象の冷凍回路を有する冷凍装置の機種とは異なる機種を表す前記機種情報に関連付けられた前記判定基準情報であって、前記判定対象の冷凍回路の設定冷却温度及び冷媒の種類を表す前記第1冷凍条件情報に関連付けられ、且つ、前記閾値情報の信頼性が高い前記判定基準情報を再選出し、
前記信頼性が高い前記閾値情報における前記閾値及び前記外気温度の関係を、前記信頼性が低い前記閾値情報における前記閾値及び前記外気温度の関係に基づいて補正し、
当該補正された前記閾値及び前記外気温度の関係と、前記推定物理量及び前記外気温度の関係とに基づいて、前記異常の有無を択一的に判定し、
前記更新部は、
最新の前記異常の有無の判定結果と、過去に行われた前記異常の有無の判定結果とに基づいて、前記信頼性が低いと判定された前記閾値及び前記外気温度の関係を再計算し、
前記データベース内の前記選出された判定基準情報に関連付けられた前記信頼性が低いと判定された前記閾値情報の内容を、前記再計算された前記閾値及び前記外気温度の関係に更新する、
請求項11に記載の運転状態判定装置。
【請求項13】
計測部と、
データベースと、
前記計測部及び前記データベースにネットワークを介して接続された請求項1から7のいずれか一項に記載の運転状態判定装置と、を備え、
前記計測部は、前記第2配管内の冷媒の温度及び圧力、前記第4配管内の冷媒の温度及び圧力、並びに、前記温度及び前記圧力の計測時における外気温度を計測し、計測結果を表す計測情報を前記ネットワークを介して前記運転状態判定装置へ出力し、
前記データベースは、前記複数の判定基準情報を格納し、
前記運転状態判定装置の推定部は、前記計測部から出力された前記計測情報に基づいて、前記推定物理量及び前記外気温度の関係を推定し、
前記判定部は、前記判定基準情報を、前記データベースに格納された前記複数の判定基準情報の中から選出する、
運転状態判定システム。
【請求項14】
計測部と、
データベースと、
前記計測部及び前記データベースにネットワークを介して接続された請求項8に記載の運転状態判定装置と、を備え、
前記計測部は、前記第2配管内の冷媒の温度及び圧力、前記第4配管内の冷媒の温度及び圧力、並びに、前記温度及び前記圧力の計測時における外気温度を計測し、計測結果を表す計測情報を前記ネットワークを介して前記運転状態判定装置へ出力し、
前記データベースは、前記複数の判定基準情報及び前記複数の理想状態情報を格納し、
前記運転状態判定装置の推定部は、前記計測部から出力された前記計測情報に基づいて、前記推定物理量及び前記外気温度の関係を推定し、
前記判定部は、前記判定基準情報及び前記理想状態情報を、前記データベースに格納された前記複数の判定基準情報及び前記複数の理想状態情報の中から、それぞれ選出する、
運転状態判定システム。
【請求項15】
計測部と、
前記計測部にネットワークを介して接続された請求項9から12のいずれか一項に記載の運転状態判定装置と、を備え、
前記計測部は、前記第2配管内の冷媒の温度及び圧力、前記第4配管内の冷媒の温度及び圧力、並びに、前記温度及び前記圧力の計測時における外気温度を計測し、計測結果を表す計測情報を前記ネットワークを介して前記運転状態判定装置へ出力し、
前記運転状態判定装置の推定部は、前記計測部から出力された前記計測情報に基づいて、前記推定物理量及び前記外気温度の関係を推定する、
運転状態判定システム。
【請求項16】
圧縮機、凝縮器、絞り部、蒸発器、前記圧縮機と前記凝縮器を接続する第1配管、前記凝縮器と前記絞り部を接続する第2配管、前記絞り部と前記蒸発器を接続する第3配管、及び、前記蒸発器と前記圧縮機を接続する第4配管を備える冷凍回路の運転状態を判定する運転状態判定装置が行う運転判定方法であって、
前記運転状態判定装置は、
前記第2配管内の冷媒の温度及び圧力の計測結果、前記第4配管内の冷媒の温度及び圧力の計測結果、並びに、外気温度の計測結果に基づいて、前記第1配管及び前記第3配管のうち少なくとも一方の配管内の冷媒の物理量である推定物理量及び外気温度の関係を推定し、
冷凍回路の設定冷却温度及び冷媒の種類を表す第1冷凍条件情報と、前記推定物理量の閾値及び外気温度の関係を表す閾値情報とが関連付けられた複数の判定基準情報の中から、判定対象の冷凍回路の設定冷却温度及び冷媒の種類を表す前記第1冷凍条件情報に関連付けられた前記判定基準情報を選出し、当該選出された判定基準情報に関連付けられた前記閾値情報と、前記推定物理量及び前記外気温度の関係とに基づいて、前記判定対象の冷凍回路の運転状態を判定する、
運転状態判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運転状態判定装置、運転状態判定システム、及び、運転状態判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を含む冷凍回路の異常を診断する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の構成では、圧縮機の入口、圧縮機の出口、凝縮器の出口及び蒸発器の入口の4箇所の温度を測定する。次に、圧縮機の仕様に基づいて決定される特性パラメータと、温度の測定結果とを利用して、冷媒の流量を求める。そして、冷媒の流量に基づき冷凍回路の各構成要素における熱流を算出し、当該熱量に基づいて、冷凍回路の異常の有無を診断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-143817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような構成では、例えば、圧縮機が特性パラメータが異なる別の圧縮機に変更された場合、診断に用いる特性パラメータも変更する必要がある。このため、利用され得る圧縮機の種類に相当する特性パラメータを準備する必要がある。また、新規に利用を開始する圧縮機に対しては、特性パラメータを新たに定義し直す必要がある。
【0005】
本開示は、圧縮機等の冷凍回路の仕様に関係なく容易な構成で冷凍回路の運転状態を適切に判定することができる運転状態判定装置、運転状態判定システム、及び、運転状態判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の運転状態判定装置は、圧縮機、凝縮器、絞り部、蒸発器、前記圧縮機と前記凝縮器を接続する第1配管、前記凝縮器と前記絞り部を接続する第2配管、前記絞り部と前記蒸発器を接続する第3配管、及び、前記蒸発器と前記圧縮機を接続する第4配管を備える冷凍回路の運転状態を判定する運転状態判定装置であって、前記第2配管内の冷媒の温度及び圧力の計測結果、前記第4配管内の冷媒の温度及び圧力の計測結果、並びに、外気温度の計測結果に基づいて、前記第1配管及び前記第3配管のうち少なくとも一方の配管内の冷媒の物理量である推定物理量及び外気温度の関係を推定する推定部と、冷凍回路の設定冷却温度及び冷媒の種類を表す第1冷凍条件情報と、前記推定物理量の閾値及び外気温度の関係を表す閾値情報とが関連付けられた複数の判定基準情報の中から、判定対象の冷凍回路の設定冷却温度及び冷媒の種類を表す前記第1冷凍条件情報に関連付けられた前記判定基準情報を選出し、当該選出された判定基準情報に関連付けられた前記閾値情報と、前記推定物理量及び前記外気温度の関係とに基づいて、前記判定対象の冷凍回路の運転状態を判定する判定部と、を備える。
【0007】
本開示の運転状態判定システムは、計測部と、データベースと、前記計測部及び前記データベースにネットワークを介して接続された上述された運転状態判定装置と、を備え、前記計測部は、前記第2配管内の冷媒の温度及び圧力、前記第4配管内の冷媒の温度及び圧力、並びに、前記温度及び前記圧力の計測時における外気温度を計測し、計測結果を表す計測情報を前記ネットワークを介して前記運転状態判定装置へ出力し、前記データベースは、前記複数の判定基準情報を格納し、前記運転状態判定装置の推定部は、前記計測部から出力された前記計測情報に基づいて、前記推定物理量及び前記外気温度の関係を推定し、前記判定部は、前記判定基準情報を、前記データベースに格納された前記複数の判定基準情報の中から選出する。
【0008】
本開示の運転状態判定方法は、圧縮機、凝縮器、絞り部、蒸発器、前記圧縮機と前記凝縮器を接続する第1配管、前記凝縮器と前記絞り部を接続する第2配管、前記絞り部と前記蒸発器を接続する第3配管、及び、前記蒸発器と前記圧縮機を接続する第4配管を備える冷凍回路の運転状態を判定する運転状態判定装置が行う運転判定方法であって、前記運転状態判定装置は、前記第2配管内の冷媒の温度及び圧力の計測結果、前記第4配管内の冷媒の温度及び圧力の計測結果、並びに、外気温度の計測結果に基づいて、前記第1配管及び前記第3配管のうち少なくとも一方の配管内の冷媒の物理量である推定物理量及び外気温度の関係を推定し、冷凍回路の設定冷却温度及び冷媒の種類を表す第1冷凍条件情報と、前記推定物理量の閾値及び外気温度の関係を表す閾値情報とが関連付けられた複数の判定基準情報の中から、判定対象の冷凍回路の設定冷却温度及び冷媒の種類を表す前記第1冷凍条件情報に関連付けられた前記判定基準情報を選出し、当該選出された判定基準情報に関連付けられた前記閾値情報と、前記推定物理量及び前記外気温度の関係とに基づいて、前記判定対象の冷凍回路の運転状態を判定する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の運転状態判定装置、運転状態判定システム、及び、運転状態判定方法によれば、圧縮機等の冷凍回路の仕様に関係なく容易な構成で冷凍回路の運転状態を適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1~第4実施形態に係る冷凍システムの概略構成を示すブロック図
図2】第1~第3実施形態に係る判定基準情報の構成を散布図を用いて説明する図
図3】第1,第3,第4実施形態に係る冷凍回路のモリエル線図
図4】第1,第4実施形態に係る運転状態判定処理のメインルーチンのフローチャート
図5】第1,第2,第4実施形態に係る運転状態判定処理のサブルーチンのフローチャート
図6】第1,第4実施形態に係る運転状態判定処理のサブルーチンのフローチャート
図7】第2実施形態に係る冷凍回路のモリエル線図
図8】第2実施形態に係る運転状態判定処理のメインルーチンのフローチャート
図9】第2実施形態に係る運転状態判定処理のサブルーチンのフローチャート
図10】第3実施形態に係る運転状態判定処理のメインルーチンのフローチャート
図11A】第4実施形態に係る第1機種の基準冷凍装置の判定基準情報の構成を散布図を用いて説明する図
図11B】第4実施形態に係る第2機種の基準冷凍装置の判定基準情報の構成を散布図を用いて説明する図
図12】第4実施形態に係る運転状態判定処理のサブルーチンのフローチャート
図13】第1変形例に係る冷凍システムの概略構成を示すブロック図
図14】第2変形例に係る冷凍システムの概略構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態]
本開示の実施形態について説明する。
【0012】
<第1実施形態>
まず、本開示の第1実施形態について説明する。
【0013】
(冷凍システムの構成)
まず、冷凍システムの構成について説明する。図1は、冷凍システムの概略構成を示すブロック図である。図2は、判定基準情報の構成を散布図を用いて説明する図である。図3は、冷凍回路のモリエル線図である。
【0014】
図1に示される冷凍システム1は、冷凍装置2と、運転状態判定システム3と、を備える。
【0015】
冷凍装置2は、例えば、図示されない店舗に配置され、店舗の商品を冷やす。冷凍装置2は、圧縮機21、凝縮器22、絞り部23及び蒸発器24を含む冷凍回路20を備える。
【0016】
圧縮機21は、例えばロータリコンプレッサである。圧縮機21には、配管201の一端が接続されている。圧縮機21は、冷媒を圧縮して配管201に送る。凝縮器22には、配管201の他端と、配管202の一端とが接続されている。凝縮器22は、圧縮機21で圧縮された冷媒を冷やして配管202に送る。絞り部23は、例えば電動膨張弁である。絞り部23には、配管202の他端と、配管203の一端とが接続されている。絞り部23は、凝縮器22で冷やされた冷媒を絞って配管203に送る。蒸発器24には、配管203の他端と、配管204の一端とが接続されている。蒸発器24は、絞り部23で絞られた冷媒と空気との熱交換を行い、熱交換後の冷媒を配管204に送る。蒸発器24における熱交換により冷却された空気により、商品等の冷却対象が冷却される。配管204の他端は圧縮機21に接続されており、蒸発器24から送られた冷媒は、圧縮機21に戻される。配管201、配管202、配管203及び配管204は、それぞれ、本開示の第1配管、第2配管、第3配管及び第4配管の一例である。
【0017】
冷凍回路20の冷媒としては、二酸化炭素、炭化水素、アンモニア、空気、水を例示することができる。冷凍回路20の設定冷却温度としては、冷蔵温度(-5℃以上+10℃以下)及び冷凍温度(-30℃以上-20℃以下)を例示することができる。なお、冷蔵温度又は冷凍温度は、上述された温度に限られない。また、3個以上の設定冷却温度が設定されても良い。
【0018】
運転状態判定システム3は、冷凍回路20の運転状態の判定処理として、冷凍回路20の冷媒量の異常の有無及び冷媒調整量の判定処理を行う。冷凍回路20の冷媒量が上限量を超える場合、冷媒量が異常であると判定される。冷媒調整量とは、冷凍回路20の冷媒量を上限量以下の所定量に戻すために、冷凍回路20から取り出される冷媒の量である。つまり、冷媒調整量とは、冷凍回路20内の冷媒量を正常な量にするための冷媒量である。運転状態判定システム3は、計測部4と、運転状態判定装置5と、を備える。
【0019】
計測部4は、冷凍回路の所定の計測位置における温度及び圧力を計測する。計測部4は、温度及び圧力の計測時における冷凍装置2の周囲の気温(外気温度)を計測する。計測部4は、第1位置計測部41と、第2位置計測部42と、第3位置計測部43と、を備える。
【0020】
第1位置計測部41及び第2位置計測部42は、それぞれ温度センサ及び圧力センサを備える。第1位置計測部41は、冷凍機入口P1における冷媒の温度(冷凍機入口温度)及び圧力(冷凍機入口圧力)を計測し、計測結果を表す計測情報を運転状態判定装置5へ送信する。冷凍機入口P1は、圧縮機21と蒸発器24とを接続する配管204内の所定の計測位置である。第2位置計測部42は、凝縮器出口P2における冷媒の温度(凝縮器出口温度)及び圧力(凝縮器出口圧力)を計測し、計測結果を表す計測情報を運転状態判定装置5へ送信する。凝縮器出口P2は、凝縮器22と絞り部23とを接続する配管202内の所定の計測位置である。
【0021】
第3位置計測部43は、温度センサを備える。第3位置計測部43は、外気温度を計測し、計測結果を表す計測情報を運転状態判定装置5へ送信する。例えば、圧縮機21が屋外に設置されている場合、第3位置計測部43は、圧縮機21近傍の屋外の温度を外気温度として計測する。
【0022】
運転状態判定装置5は、例えば、冷凍装置2と同じ図示されない店舗に配置されている。運転状態判定装置5は、操作部51と、報知部52と、記憶部53と、データベース54と、制御部55と、を備える。
【0023】
操作部51は、制御部55との間で各種信号を送受信できるように構成されている。操作部51は、運転状態判定装置5のユーザにより操作される。操作部51は、操作に応じた信号を制御部55に出力する。例えば、操作部51は、冷凍回路20の運転状態の判定処理を開始する旨の操作を受け付けると、その旨の信号を制御部55に出力する。
【0024】
報知部52は、制御部55の制御に基づいて、冷凍装置2に関する情報をユーザに報知する。報知部52は、表示部、発光部および音出力部のうち、少なくともいずれか1つを含む。
【0025】
記憶部53は、メモリ又はハードディスク等により構成されている。記憶部53は、運転状態判定装置5の制御に必要な各種情報を保存する。記憶部53は、冷凍回路20の運転状態の判定処理に用いられる物理量情報を保存する。物理量情報は、計測部4における計測結果に基づいて、制御部55により生成される。物理量情報は、制御部55により推定された圧縮機出口比エンタルピー値と、計測部4における計測日時と、計測部4で計測された外気温度とを表す情報を備える。圧縮機出口比エンタルピー値は、推定物理量の一例であり、圧縮機出口P3における冷媒の比エンタルピー値である。圧縮機出口P3は、圧縮機21と凝縮器22とを接続する配管201内の所定の未計測位置である。物理量情報は、運転状態の判定処理及び判定基準情報の更新処理に用いられた後、記憶部53から削除される。
【0026】
データベース54は、設定冷却温度及び冷媒のうち少なくとも一方が互いに異なる基準冷凍装置(以下、「基準冷凍装置」と言う場合がある)に関する複数の判定用情報を格納する。設定冷却温度及び冷媒のうち少なくとも一方が互いに異なる基準冷凍装置としては、冷媒が二酸化炭素であり設定冷却温度が冷蔵温度である第1の基準冷凍装置、冷媒が炭化水素であり設定冷却温度が冷蔵温度である第2の基準冷凍装置を例示することができる。各判定用情報は、それぞれ複数の判定基準情報と、冷媒調整量情報と、を備える。
【0027】
各判定基準情報は、計測日時と、外気温度と、圧縮機出口比エンタルピー値と、圧縮機出口比エンタルピー値の閾値と、異常の有無との関係を表す。各判定基準情報は、冷凍回路の設定冷却温度及び冷媒の種類を表す第1冷凍条件情報と、推定物理量の閾値及び外気温度の関係を表す閾値情報とが関連付けられた情報と言うこともできる。閾値は、外気温度毎、又は、所定の温度範囲毎に設定されている。閾値は、運転状態の判定処理において、物理量情報の圧縮機出口比エンタルピー値と比較される。物理量情報の圧縮機出口比エンタルピー値が、閾値以上か否かに基づいて、冷媒量の異常の有無が判定される。物理量情報の圧縮機出口比エンタルピー値が閾値以上の場合、冷媒量が上限量以下であるため正常であると判定され、当該圧縮機出口比エンタルピー値が閾値未満の場合、冷媒量が上限量を超えるため異常であると判定される。閾値は、物理量情報に基づいて更新される。
【0028】
例えば、第1の基準冷凍装置の判定基準情報は、図2に示される散布図として表わすことができるように構成されている。図2において、縦軸は圧縮機出口比エンタルピー値、横軸は外気温度を表す。薄い灰色の丸で示される点は、運転状態が正常であると判定された圧縮機出口比エンタルピー値を表す。濃い灰色の丸で示される点は、運転状態が異常であると判定された圧縮機出口比エンタルピー値を表す。閾値が外気温度の所定範囲毎に設定されている場合、閾値は、散布図内の横軸に平行な線(図2では、実線で示される)として表される。なお、運転状態が正常であると判定された圧縮機出口比エンタルピー値の分布を「正常分布」といい、運転状態が異常であると判定された圧縮機出口比エンタルピー値の分布を「異常分布」という場合がある。
【0029】
このように、データベース54に、設定冷却温度及び冷媒のうち少なくとも一方が互いに異なる冷凍装置に関する複数の判定用情報を格納しておくことにより、1台の運転状態判定装置5を用いて、設定冷却温度及び冷媒のうち少なくとも一方が互いに異なる複数の冷凍回路20の運転状態を判定することができる。
【0030】
冷媒調整量情報は、運転状態に異常が有ると判定された場合における冷媒調整量の判定に用いられる。冷媒調整量情報は、外気温度毎の、閾値から物理量情報の圧縮機出口比エンタルピー値を減じることにより得られる差(比エンタルピー差)と、冷媒調整量との関係を表す。冷媒調整量は、比エンタルピー差が大きいほど、多くなるように設定されている。冷媒調整量情報は、比エンタルピー差と冷媒調整量との関係を示すテーブル構造の情報であっても良いし、冷媒調整量を算出するための関数を表す情報であっても良い。
【0031】
制御部55は、CPU(Central Processing Unit)を有し、記憶部53に保存された運転状態判定プログラムをCPUが実行することにより、制御部55の機能を実現する。制御部55は、取得部551と、演算部552と、推定部553と、判定部554と、更新部555と、報知制御部556と、を備える。
【0032】
取得部551は、計測部4から計測情報を取得する。
【0033】
演算部552は、計測情報に基づいて、冷凍機入口比エンタルピー値、冷凍機入口比エントロピー値、凝縮器出口比エンタルピー値を演算する。冷凍機入口比エンタルピー値及び冷凍機入口比エントロピー値は、それぞれ冷凍機入口P1における冷媒の比エンタルピー値及び比エントロピーの値である。凝縮器出口比エンタルピー値は、凝縮器出口P2における冷媒の比エンタルピー値である。
【0034】
推定部553は、計測情報に基づいて、圧縮機出口比エンタルピー値を推定する。例えば、推定部553は、図3に示される冷凍回路20のモリエル線図に基づいて、冷凍機入口比エントロピー値に基づき得られる等比エントロピー線と、凝縮器出口圧力とを用いて、圧縮機出口比エンタルピー値を推定する。推定部553は、圧縮機出口比エンタルピー値と、計測日時と、外気温度とを関連付けて、物理量情報として記憶部53に保存する。なお、図3及び後述される図7において、黒塗りの丸印は、計測位置の計測結果及び演算結果を表し、白抜きの丸印は、推定部553により推定された未計測位置の推定結果を表す。
【0035】
判定部554は、計測情報と、冷凍回路20の設定冷却温度及び冷媒を表す対象回路情報と、対象回路情報により表される設定冷却温度及び冷媒に対応する判定用情報とに基づいて、冷凍回路20の運転状態として、冷媒量の異常の有無及び冷媒調整量を判定する。対象回路情報は、冷凍装置2の図示されない操作部の操作に基づき生成され、冷凍装置2から運転状態判定装置5に送信されても良いし、運転状態判定装置5の操作部51の操作に基づき生成されたものであっても良い。
【0036】
ここで、冷凍回路20には、設定冷却温度及び冷媒が決定されると、所定の計測位置における温度及び圧力に基づき得られる物理量の適正値が決定される関係(以下、「冷凍条件及び物理量の相関関係」という場合がある)がある。当該適正値は、設定冷却温度及び冷媒に大きく依存するが、圧縮機21等の冷凍回路20の仕様にほとんど依存しない。判定部554は、計測情報と、対象回路情報と、判定用情報の判定基準情報とに基づいて、冷凍回路20の運転状態を判定する。なお、判定基準情報は、冷凍条件及び物理量の相関関係の一例を表す情報と言うこともできる。このように、判定部554は、例えば、利用され得る圧縮機21の種類に相当する特性パラメータを用いることなく、運転状態を判定するため、冷凍回路20の仕様に関係なく容易な構成で冷凍回路20の運転状態を適切に判定することができる。
【0037】
更新部555は、最新の異常の有無の判定結果と、過去に行われた異常の有無の判定結果とに基づいて、判定基準情報の閾値を更新する。このように、異常の有無の判定を行う毎に判定基準情報の閾値を更新することにより、冷凍装置2の仕様に適合する閾値を設定することができ、当該冷凍装置2の仕様に適合する閾値に基づいて、異常の有無を適切に判定することができる。
【0038】
報知制御部556は、報知部52を制御して、判定部554における冷媒量の異常の有無及び冷媒調整量の判定結果を報知する。このように、冷媒調整量が報知されることにより、ユーザは、冷凍回路20の冷媒量を容易に調整することができる。
【0039】
(冷凍システムの動作)
次に、冷凍システムの動作を、図4図6に示されるフローチャートに基づいて説明する。図4は、運転状態判定処理のメインルーチンのフローチャートである。図5及び図6は、運転状態判定処理のサブルーチンのフローチャートである。
【0040】
図4に示されるように、運転状態判定装置5の制御部55は、物理量情報の収集処理を行う(ステップS1)。次に、制御部55は、物理量情報に基づいて、運転状態の判定処理を行う(ステップS2)。この後、制御部55は、判定の結果を報知する(ステップS3)。最後に、制御部55は、判定基準情報を更新する(ステップS4)。以下、各処理の詳細な内容について説明する。なお、制御部55は、ステップS4の処理を行ってからステップS3の処理を行っても良い。
【0041】
まず、ステップS1における物理量情報の収集処理について説明する。計測部4は、例えば定期的に又は所定時刻に計測を行い、計測結果に対応する計測情報を制御部55へ出力する(ステップS11)。図5に示されるように、制御部55の取得部551は、計測部4から、冷凍機入口温度、冷凍機入口圧力、凝縮器出口温度、凝縮器出口圧力及び外気温度を表す計測情報を取得する(ステップS11)。次に、演算部552は、冷凍機入口温度と冷凍機入口圧力とに基づいて、冷凍機入口比エンタルピー値及び冷凍機入口比エントロピー値を演算する(ステップS12)。次に、演算部552は、凝縮器出口温度と凝縮器出口圧力とに基づいて、凝縮器出口比エンタルピー値を演算する(ステップS13)。なお、演算部552は、ステップS13の処理を行ってからステップS12の処理を行っても良い。
【0042】
次に、推定部553は、圧縮機出口比エンタルピー値を推定する(ステップS14)。推定部553は、図示されない計時部から計測日時を取得し、圧縮機出口比エンタルピー値と、計測日時と、外気温度とを関連付けて、物理量情報として記憶部53に保存する(ステップS15)。
【0043】
判定部554は、判定処理を開始するか否かを判定する(ステップS16)。判定部554が判定処理を開始しないと判定した場合(ステップS16:NO)、取得部551は、前回の計測とは異なる時刻に行われた計測の結果を表す計測情報を、計測部4から取得する(ステップS11)。ステップS11~ステップS15の処理が行われる毎に、異なる日時における計測結果に基づく物理量情報が、記憶部53に保存される。一方、判定部554は、判定処理を開始すると判定した場合(ステップS16:YES)、物理量情報の収集処理を終了する。なお、判定部554は、ユーザによる操作部51の操作を検出した場合、判定処理を開始すると判定しても良いし、記憶部53に保存された物理量情報の個数が設定個数に達した場合、判定処理を開始すると判定しても良い。
【0044】
次に、ステップS2における判定処理について説明する。図6に示されるように、判定部554は、対象回路情報を取得し、当該対象回路情報により表される設定冷却温度及び冷媒に対応する判定用情報、つまり設定冷却温度及び冷媒が冷凍装置2と同じ基準冷凍装置に関する判定用情報をデータベース54から選出する(ステップS21)。
【0045】
次に、判定部554は、記憶部53に保存された全ての物理量情報の圧縮機出口比エンタルピー値の分布が、正常分布と異常分布のどちらに近いかを判定する(ステップS22)。例えば、判定部554は、物理量情報の圧縮機出口比エンタルピー値と、判定基準情報に含まれる閾値であって当該物理量情報の外気温度に対応する閾値とを比較する。判定部554は、所定期間における複数回の計測結果にそれぞれ対応する複数の物理量情報が記憶部53に保存されている場合、全ての物理量情報に対して上述の比較処理を行う。判定部554は、閾値以上であると判定された圧縮機出口比エンタルピー値の個数が、閾値未満であると判定された圧縮機出口比エンタルピー値の個数よりも多い場合、圧縮機出口比エンタルピー値の分布が正常分布に近いと判定する。一方、判定部554は、閾値以上であると判定された圧縮機出口比エンタルピー値の個数が、閾値未満であると判定された圧縮機出口比エンタルピー値の個数よりも少ない場合、圧縮機出口比エンタルピー値の分布が異常分布に近いと判定する。なお、圧縮機出口比エンタルピー値の分布が正常分布と異常分布のどちらに近いかを判定する方法は、上述された方法に限られない。
【0046】
判定部554は、ステップS22において、圧縮機出口比エンタルピー値の分布が正常分布に近いと判定した場合、冷媒量が正常であるため、運転状態が正常であると判定する(ステップS23)。一方、判定部554は、ステップS22において、圧縮機出口比エンタルピー値の分布が異常分布に近いと判定した場合、冷媒量が過多であるため、運転状態が異常であると判定する(ステップS24)。つまり、判定部554は、ステップS23又はステップS24の処理により、閾値以上であると判定された圧縮機出口比エンタルピー値の分布と、閾値未満であると判定された圧縮機出口比エンタルピー値の分布とに基づいて、所定期間全体にわたる異常の有無を択一的に判定する。このように、所定期間における異常の有無を、複数の計測結果に基づく圧縮機出口比エンタルピー値毎に判定するのではなく、複数の計測結果に基づく圧縮機出口比エンタルピー値に基づいて択一的に判定することにより、異常の有無の判定処理の負荷を低減することができる。
【0047】
ここで、図2に示されるように、圧縮機出口比エンタルピー値の閾値(適正値)は、外気温度により異なる場合がある。判定部554は、物理量情報の圧縮機出口比エンタルピー値と、物理量情報の外気温度に対応する閾値とを比較する。このため、例えば、外気温度が変化しやすい場所に冷凍装置2が設置されている場合、外気温度に対応する閾値と圧縮機出口比エンタルピー値とを比較することにより、異常の有無を適切に判定することができる。また、閾値と比較される圧縮機出口比エンタルピー値として、圧縮機出口P3における冷媒の温度及び圧力の計測結果に基づき得られる演算値を用いるのではなく、冷凍機入口P1及び凝縮器出口P2における計測結果に基づき得られる推定値を用いる。このため、判定部554は、最低限の計測位置における計測結果に基づいて、異常の有無を適切に判定することができる。
【0048】
判定部554は、運転状態が異常であると判定すると(ステップS24)、冷媒調整量を算出する(ステップS25)。例えば、判定部554は、任意の計測日時に対応する物理量情報を用いて、当該物理量情報の圧縮機出口比エンタルピー値を、当該物理量情報の外気温度に対応する閾値から減じて、比エンタルピー差を算出する。判定部554は、算出された比エンタルピー差と、冷媒調整量情報とに基づいて、冷媒調整量を算出する。なお、冷媒調整量の算出方法は、上述された方法に限られない。例えば、判定部554は、計測部4の計測により得られた全ての外気温度のそれぞれについて、物理量情報の圧縮機出口比エンタルピー値を、当該物理量情報の外気温度に対応する閾値から減じて比エンタルピー差を算出し、算出された比エンタルピー差の平均値と、冷媒調整量情報とに基づいて、冷媒調整量を算出しても良い。また、判定部554は、ステップS25の処理を行ってからステップS24の処理を行っても良い。
【0049】
ステップS23又はステップS25の処理が行われると、ステップS2の判定処理が終了する。
【0050】
次に、ステップS3における判定の結果を報知処理について説明する。報知制御部556は、判定処理において、ステップS23の処理が行われた場合、運転状態が正常である旨を報知部52を用いて報知し、ステップS24,S25の処理が行われた場合、運転状態が異常である旨及び冷媒調整量を報知部52を用いて報知する。なお、報知制御部556は、冷媒調整量の代わりに、又は、冷媒調整量と共に、現在の冷媒量に対する冷媒調整量の比率を算出して、運転状態の判定結果として報知しても良い。
【0051】
次に、ステップS4における判定基準情報の更新処理について説明する。更新部555は、設定冷却温度及び冷媒が冷凍装置2と同じ基準冷凍装置に関する判定基準情報を更新する。更新部555は、冷凍回路20の運転状態が正常であると判定された場合、物理量情報の圧縮機出口比エンタルピー値が、当該物理量情報の外気温度に対応する閾値以上か否かに関係なく、物理量情報と、異常が無い旨の情報とを関連付けた更新用情報を生成する。一方、更新部555は、運転状態が異常であると判定された場合、物理量情報の圧縮機出口比エンタルピー値が、当該物理量情報の外気温度に対応する閾値以上か否かに関係なく、物理量情報と、異常が有る旨の情報とを関連付けた更新用情報を生成する。
【0052】
次に、更新部555は、最新の異常の有無の判定結果を含む更新用情報と、過去に行われた異常の有無の判定結果を含む判定基準情報とに基づいて、外気温度毎に閾値を算出する。閾値の算出方法としては、更新用情報及び判定基準情報を含む情報群における、運転状態に異常が無いと判定される適合率が99%以上の圧縮機出口比エンタルピー値、又は、運転状態に異常が無いと判定された圧縮機出口比エンタルピーの99%パーセンタイル値を、閾値として算出する方法を例示することができる。閾値の他の算出方法としては、再現率、又は、正答率に基づいて、閾値を算出する方法を例示することができる。
【0053】
更新部555は、判定基準情報に含まれる外気温度毎の閾値を、新たに算出された外気温度毎の閾値に更新する。更新部555は、更新用情報に、当該更新用情報の外気温度に対応する新たな閾値を関連付けた情報を、判定基準情報に追加する。なお、閾値が外気温度の所定範囲毎に設定されている場合、上述された処理は、外気温度の所定範囲毎に行われる。更新部555は、記憶部53に保存された物理量情報を削除する。なお、判定基準情報の更新方法は、上述された方法に限られない。
【0054】
<第2実施形態>
次に、本開示の第2実施形態について説明する。
【0055】
(冷凍システムの構成)
まず、冷凍システムの構成について、図1及び図7を用いて説明する。なお、第1実施形態の冷凍システム1と同じ構成については、同一名称及び同一符号を付し、説明を簡略にする、又は、説明を省略する。図7は、冷凍回路のモリエル線図である。
【0056】
図1に示されるように、第2実施形態の冷凍システム1Aは、運転状態判定装置5Aの構成が、第1実施形態の運転状態判定装置5の構成と異なる。運転状態判定装置5Aは、冷凍回路20の運転状態の判定処理として、冷凍回路20の冷凍パフォーマンスの評価処理と、冷凍パフォーマンスの改善方法の判定処理と、冷媒量の異常の有無の判定処理と、を行う。
【0057】
第2実施形態の運転状態判定装置5Aと第1実施形態の運転状態判定装置5との相違点は、記憶部53A及びデータベース54Aに記憶される情報、及び、制御部55Aを構成する推定部553A、判定部554A及び報知制御部556Aの処理内容である。
【0058】
記憶部53Aは、運転状態判定装置5Aの制御に必要な各種情報と、物理量情報と、を保存する。物理量情報は、制御部55Aにより推定された圧縮機出口比エンタルピー値及び蒸発器入口比エンタルピー値と、制御部55Aにより演算された冷凍機入口比エンタルピー値と、計測日時とを表す情報を備える。蒸発器入口比エンタルピー値は、図1に示される蒸発器入口P4における冷媒の比エンタルピー値である。蒸発器入口P4は、絞り部23と蒸発器24を接続する配管203内の所定の未計測位置である。物理量情報は、運転状態の判定処理に用いられた後、記憶部53Aから削除される。
【0059】
データベース54Aに格納された複数の判定用情報は、第1実施形態の判定用情報と同様に、設定冷却温度及び冷媒のうち少なくとも一方が互いに異なる基準冷凍装置に関する情報である。各判定用情報は、それぞれ判定基準情報と、冷媒評価情報と、理想状態情報と、パフォーマンス情報と、を備える。
【0060】
各判定基準情報は、第1実施形態の判定基準情報と同じ構成を有し、冷媒量の異常判定に利用される。判定基準情報に含まれる閾値は、外気温度毎、又は、所定の温度範囲毎に設定されている。例えば、判定基準情報は、閾値を図7のモリエル線図と共に表わすことができるように構成されている。
【0061】
冷媒評価情報は、判定基準情報に基づく冷媒量の異常の判定結果と、冷媒量の改善方法との関係を表す。
【0062】
理想状態情報は、冷凍機入口比エンタルピー値、凝縮器出口比エンタルピー値、圧縮機出口比エンタルピー値及び蒸発器入口比エンタルピー値の理想値を表す情報である。冷凍機入口比エンタルピー値は、本開示の演算物理量の一例である。圧縮機出口比エンタルピー値及び蒸発器入口比エンタルピー値は、本開示の推定物理量の一例である。当該理想値は、外気温度毎、又は、所定の温度範囲毎に設定されている。例えば、理想状態情報は、図7に点線で示されるモリエル線図として表わすことができるように構成されている。なお、図7に示される実測値又は後述される実測値とは、計測部4における計測結果に基づき得られる演算値又は推定値である。理想状態情報は、冷凍回路の設定冷却温度及び冷媒の種類を表す第2冷凍条件情報と、演算物理量の理想値及び外気温度の関係を表す第1理想値情報と、推定物理量の理想値及び外気温度の関係を表す第2理想値情報とが関連付けられた情報と言うこともできる。
【0063】
パフォーマンス情報は、冷凍効果評価情報と、第1省エネルギー性(省エネ性)評価情報と、第2省エネルギー性(省エネ性)評価情報と、を備える。
【0064】
冷凍効果評価情報は、冷凍効果差Aと、冷凍効果の評価及び冷凍効果の改善方法との関係を表す。冷凍効果差Aは、以下の式(1),(2),(3)により算出される値である。冷凍機入口比エンタルピー値と蒸発器入口比エンタルピー値との差は、冷凍効果を表す指標である。
冷凍効果差A=冷凍効果実測値Am-冷凍効果理想値Ai … (1)
冷凍効果実測値Am=Erm-Eem … (2)
Erm:冷凍機入口比エンタルピー値の実測値
Eem:蒸発器入口比エンタルピー値の実測値
冷凍効果理想値Ai=Eri-Eei … (3)
Eri:冷凍機入口比エンタルピー値の理想値
Eei:蒸発器入口比エンタルピー値の理想値
冷凍効果の評価は、冷凍効果差Aが小さくなるほど、高くなるように設定されている。冷凍効果の改善方法は、冷凍効果を理想の状態(最も高い冷凍効果が得られる状態)にするための方法である。
【0065】
第1省エネ性評価情報は、第1省エネ性能差Bと、第1省エネ性の評価及び第1省エネ性の改善方法との関係を表す。第1省エネ性能差Bは、以下の式(4),(5),(6)により算出される値である。圧縮機出口比エンタルピー値と冷凍機入口比エンタルピー値との差は、圧縮機21の圧縮機動力に大きな影響を及ぼすパラメータである。
第1省エネ性能差B
=第1省エネ性能実測値Bm-第1省エネ性能理想値Bi … (4)
第1省エネ性能実測値Bm=Ecm-Erm … (5)
Ecm:圧縮機出口比エンタルピー値の実測値
第1省エネ性能理想値Bi=Eci-Eri … (6)
Eci:圧縮機出口比エンタルピー値の理想値
第1省エネ性の評価は、第1省エネ性能差Bが小さくなるほど、高くなるように設定されている。第1省エネ性の改善方法は、省エネ性を理想の状態(最も高い省エネ性が得られる状態)にするための方法である。
【0066】
第2省エネ性評価情報は、第2省エネ性能差Cと、第2省エネ性の評価及び第2省エネ性の改善方法との関係を表す。第2省エネ性能差Cは、以下の式(7)により算出される値である。
第2省エネ性能差C=Eem-Eei … (7)
第2省エネ性の評価は、第2省エネ性能差Cが小さくなるほど、高くなるように設定されている。第2省エネ性の改善方法は、省エネ性を理想の状態にするための方法である。
【0067】
推定部553Aは、計測情報に基づいて、圧縮機出口比エンタルピー値及び蒸発器入口比エンタルピー値を推定する。例えば、推定部553Aは、図7に実線で示される冷凍回路20のモリエル線図に基づいて、第1実施形態と同様の処理により圧縮機出口比エンタルピー値を推定する。推定部553Aは、冷凍機入口圧力と、凝縮器出口比エンタルピー値を用いて、蒸発器入口比エンタルピー値を推定する。推定部553Aは、圧縮機出口比エンタルピー値と、蒸発器入口比エンタルピー値と、冷凍機入口比エンタルピー値と、計測日時と、外気温度とを関連付けて、物理量情報として記憶部53Aに保存する。物理量情報を構成する圧縮機出口比エンタルピー値、蒸発器入口比エンタルピー値及び冷凍機入口比エンタルピー値は、図7における実測値にそれぞれ相当する。
【0068】
判定部554Aは、計測情報と、冷凍回路20の設定冷却温度及び冷媒を表す対象回路情報と、対象回路情報により表される設定冷却温度及び冷媒に対応する判定用情報とに基づいて、冷凍回路20の運転状態として、冷凍回路20の冷凍パフォーマンスの評価と、冷凍パフォーマンスの改善方法と、冷媒量の異常の有無とを判定する。
【0069】
報知制御部556Aは、報知部52を制御して、判定部554Aにおける冷凍パフォーマンスの評価、冷凍パフォーマンスの改善方法、及び、冷媒量の異常の有無の判定結果を報知する。このように、冷凍パフォーマンスの評価及び改善方法、及び、冷媒量の異常の有無が報知されることにより、ユーザは、冷凍回路20の冷凍パフォーマンスの評価、冷凍パフォーマンスの改善方法、冷媒量を異常の有無を容易に認識することができ、冷凍回路20を適切に動作させるための措置をとることができる。
【0070】
(冷凍システムの動作)
次に、冷凍システムの動作を、図5図8及び図9に示されるフローチャートに基づいて説明する。なお、第1実施形態の冷凍システム1と同じ動作については、同一名称及び同一符号を付し、説明を簡略にする、又は、説明を省略する。図8は、運転状態判定処理のメインルーチンのフローチャートである。図9は、運転状態判定処理のサブルーチンのフローチャートである。
【0071】
図8に示されるように、運転状態判定装置5Aの制御部55Aは、物理量情報の収集処理を行う(ステップS31)。次に、制御部55Aは、物理量情報に基づいて、運転状態の判定処理を行う(ステップS32)。この後、制御部55Aは、判定の結果を報知する(ステップS33)。以下、各処理の詳細な内容について説明する。なお、第2実施形態では、物理量情報に基づいて、判定基準情報の更新処理を行わないが、第1実施形態のステップS4と同じような判定基準情報の更新処理を行っても良い。
【0072】
まず、ステップS31における物理量情報の収集処理について説明する。図5に示されるように、制御部55Aは、第1実施形態と同様のステップS11~S13の処理を行った後、未計測位置の物理量として、圧縮機出口比エンタルピー値及び蒸発器入口比エンタルピー値を推定する(ステップS41)。推定部553Aは、圧縮機出口比エンタルピー値と、蒸発器入口比エンタルピー値と、冷凍機入口比エンタルピー値と、計測日時とを関連付けて、物理量情報として記憶部53Aに保存する(ステップS42)。
【0073】
判定部554Aは、運転状態の判定処理を開始するか否かを判定する(ステップS16)。制御部55Aは、ステップS16における判定の結果に基づく処理を行う。
【0074】
次に、ステップS32における判定処理について説明する。図9に示されるように、判定部554Aは、設定冷却温度及び冷媒が冷凍装置2と同じ基準冷凍装置に関する判定用情報をデータベース54Aから選出する(ステップS21)。
【0075】
判定部554Aは、物理量情報と、判定用情報の冷凍効果評価情報とに基づいて、冷凍効果の評価及び改善方法を判定する(ステップS51)。判定部554Aは、物理量情報と上記式(1)~(3)とに基づいて、冷凍効果差Aを算出する。判定部554Aは、算出された冷凍効果差Aと、冷凍効果評価情報とに基づいて、冷凍効果の評価及び改善方法を判定する。
【0076】
なお、判定部554Aは、ステップS51の処理において、任意の計測日時に対応する物理量情報に基づき冷凍効果差Aを算出し、当該算出された冷凍効果差Aに基づいて、冷凍効果の評価及び改善方法を判定しても良い。判定部554Aは、全ての物理量情報の外気温度にそれぞれ対応する冷凍効果差Aを算出し、これら冷凍効果差Aの平均値に基づいて、冷凍効果の評価及び改善方法を判定しても良い。
【0077】
判定部554Aは、物理量情報と、判定用情報の第1省エネ性情報及び第2省エネ性評価情報とに基づいて、省エネ性の評価及び改善方法を判定する(ステップS52)。判定部554Aは、物理量情報と上記式(4)~(6)とに基づいて、第1省エネ性能差Bを算出する。判定部554Aは、物理量情報と上記式(7)とに基づいて、第2省エネ性能差Cを算出する。判定部554Aは、算出された第1,第2省エネ性能差B,Cと、第1,第2省エネ性評価情報とに基づいて、省エネの評価及び改善方法を判定する。
【0078】
なお、判定部554Aは、ステップS52の処理において、任意の計測日時に対応する物理量情報に基づき第1,第2省エネ性能差B,Cを算出し、当該算出された第1,第2省エネ性能差B,Cに基づいて、省エネ性の評価及び改善方法を判定しても良い。判定部554Aは、全ての物理量情報の外気温度にそれぞれ対応する第1,第2省エネ性能差B,Cを算出し、これら第1省エネ性能差Bの平均値及び第2省エネ性能差Cの平均値に基づいて、省エネ性の評価及び改善方法を判定しても良い。
【0079】
このように、判定部554Aは、2つの計測位置(冷凍機入口P1及び凝縮器出口P2)における計測結果により得られた、3つの位置(冷凍機入口P1、圧縮機出口P3及び蒸発器入口P4)の物理量(比エンタルピー値)に基づいて、冷凍効果及び省エネ性の評価、並びに、冷凍効果及び省エネ性の改善方法を判定する。したがって、判定部554Aは、最低限の計測位置における計測結果に基づいて、様々な評価を行うことができる。
【0080】
判定部554Aは、物理量情報と、判定用情報の判定基準情報とに基づいて、冷媒量の異常及び改善方法を判定する(ステップS53)。判定部554Aは、物理量情報の圧縮機出口比エンタルピー値が、当該物理量情報の外気温度に対応する閾値以上の場合、冷媒量が正常であると判定し、閾値未満の場合、冷媒量が異常(過多)であると判定する。判定部554Aは、冷媒量の異常の判定結果と、冷媒評価情報とに基づいて、冷媒量の改善方法を判定する。
【0081】
なお、判定部554Aは、ステップS53の処理において、任意の計測日時に対応する物理量情報と、当該物理量情報に含まれる外気温度に対応する閾値とに基づいて、冷媒量の異常を判定しても良い。判定部554Aは、全ての物理量情報について、圧縮機出口比エンタルピー値と、各物理量情報に含まれる外気温度に対応する閾値とに基づき冷媒量の異常を判定し、異常であると判定された物理量情報の数が正常であると判定された物理量情報の数よりも多い場合、異常であると判定し、その逆の場合、正常であると判定しても良い。
【0082】
ステップS53の処理が行われると、判定部554Aは、記憶部53Aから物理量情報を削除する。以上により、ステップS33の運転状態の判定処理が終了する。なお、上述の理想値及び閾値が外気温度の所定範囲毎に設定されている場合、上述されたステップS51~S53の処理は、外気温度の所定範囲毎に行われる。また、ステップS51~S53の処理順序は、上述された順序に限られない。
【0083】
次に、ステップS33における判定の結果を報知処理について説明する。報知制御部556Aは、報知部52を制御して、運転状態判定処理の結果を報知する。第2実施形態では、報知制御部556Aは、冷凍効果の評価及び改善方法、省エネ性の評価及び改善方法、冷媒量の異常の有無を報知する。報知制御部556Aは、例えば、図7に示されるような実測値に基づく判定部554Aの判定結果に応じて、以下のような報知を行う。
【0084】
判定部554Aは、冷凍効果差Aが負の値になるため、冷凍効果の評価が小レベルのマイナス評価であると判定する。この場合、報知制御部556Aは、以下に示す冷凍効果の評価を報知する一方で、評価があまり低くないため改善方法を報知しない。
(冷凍効果の評価)
「現状問題はないが、若干の冷凍効果低下が見られる。より暑い時期の冷却状況を注視。」
【0085】
判定部554Aは、第1省エネ性能差Bが負の値になるため、第1省エネ性能差Bに基づく省エネ性の評価が小レベルのマイナス評価であると判定する。判定部554Aは、第2省エネ性能差Cが正の値であり、凝縮器22の図示されないファンの回転数が高く、凝縮器出口温度が高くなっているため、第2省エネ性能差Cに基づく省エネ性の評価が中レベルのマイナス評価であると判定する。これらの場合、報知制御部556Aは、これらの省エネ性の評価結果に基づいて、以下に示す省エネ性の評価及び改善方法を報知する。
(省エネ性の評価)
「特に凝縮器温度が高く、凝縮ファンが高回転または動作不良になっている疑いあり。」
(省エネ性の改善方法)
「凝縮器と凝縮ファンの状態を要確認。凝縮器が汚れている場合は清掃。」
【0086】
報知制御部556Aは、判定部554Aにおける冷媒量の異常が有るとの判定結果に基づいて、以下に示す改善方法を報知する。
(冷媒量の改善方法)
「冷媒過多のため、冷媒パージを推奨。」
【0087】
<第3実施形態>
次に、本開示の第3実施形態について説明する。
【0088】
(冷凍システムの構成)
まず、冷凍システムの構成について、図1を用いて説明する。なお、第1実施形態の冷凍システム1と同じ構成については、同一名称及び同一符号を付し、説明を簡略にする、又は、説明を省略する。
【0089】
図1に示されるように、第3実施形態の冷凍システム1Bは、運転状態判定装置5Bの構成が、第1実施形態の運転状態判定装置5の構成と異なる。運転状態判定装置5Bは、冷凍回路20の運転状態の判定処理として、第1実施形態と同様の、冷媒量の異常の有無及び冷媒調整量の判定処理を行うとともに、判定結果の信頼性の判定処理を行う。つまり、第3実施形態の運転状態判定装置5Bは、第1実施形態の運転状態判定装置5に、運転状態の判定結果に対する信頼性の判定処理を行う機能が追加された構成を有する。なお、第2実施形態の運転状態判定装置5Aに、運転状態の判定結果に対する信頼性の判定処理を行う機能を追加しても良い。
【0090】
第3実施形態の運転状態判定装置5Bと第1実施形態の運転状態判定装置5との相違点は、制御部55Bを構成する判定部554B、更新部555B及び報知制御部556Bの処理内容である。
【0091】
判定部554Bは、計測情報により表される計測日時、及び、圧縮機出口比エントロピー値の推移のうち少なくとも一方に基づいて、異常の有無及び冷媒調整量を判定すると共に、当該判定結果の信頼性及び信頼性の低下要因のうち少なくとも信頼性を判定する。
【0092】
更新部555Bは、判定部554Bにおける判定結果の信頼性に基づいて、判定基準情報を更新する。更新部555Bは、判定結果の信頼性が高いと判定された場合、当該判定に用いられた情報に基づいて、判定基準情報を更新する。一方、更新部555Bは、判定結果の信頼性が低いと判定された場合、判定基準情報を更新しない。
【0093】
報知制御部556Bは、報知部52を制御して、判定部554Bにおける上述された判定結果を報知する。このように、異常の有無及び冷媒調整量の判定結果の少なくとも信頼性が報知されることにより、ユーザは、判定部554Bにおける判定結果を、どのくらい信じるべきかを容易に判断することができる。
【0094】
(冷凍システムの動作)
次に、冷凍システムを、図10に示されるフローチャートに基づいて説明する。なお、第1実施形態の冷凍システム1と同じ動作については、同一名称及び同一符号を付し、説明を簡略にする、又は、説明を省略する。図10は、運転状態判定処理のメインルーチンのフローチャートである。
【0095】
図10に示されるように、運転状態判定装置5Bは、第1実施形態と同様の物理量情報の収集処理(ステップS1)と、運転状態の判定処理(ステップS2)とを行う。次に、運転状態判定装置5Bの制御部55Bは、運転状態の判定結果の信頼性を判定する(ステップS61)。この後、制御部55Bは、運転状態の判定結果及び信頼性を報知する(ステップS62)。次に、制御部55Bの更新部は、判定結果の信頼性が高いか否かを判定する(ステップS63)。制御部55Bは、判定結果の信頼性が高いと判定した場合(ステップS63:YES)、判定基準情報を更新する(ステップS4)。一方、制御部55Bは、判定結果の信頼性が低いと判定した場合(ステップS63:NO)、判定基準情報を更新しない。以下、各処理の詳細な内容について説明する。なお、制御部55Bは、ステップS61又はステップS62の処理の前に、ステップS63,S4の処理を行っても良い。
【0096】
まず、ステップS61における判定結果の信頼性判定処理について説明する。判定部554Bは、ステップS2における運転状態の判定処理に用いた物理量情報の内容に基づいて、信頼性を判定する。
【0097】
例えば、判定部554Bは、複数の物理量情報を得るための計測期間(複数の物理量情報に含まれる計測日時のうち、最も古い日時から最も新しい日時までの期間)が所定期間より短い場合、信頼性が低いと判定し、前記所定期間より長い場合、信頼性が高いと判定しても良い。計測期間が所定期間より短い場合に信頼性が低いと判定する理由は、正確でない計測結果が一時的に得られた場合、運転状態判定処理に用いるデータ数が少ないため、その正確でない計測結果が、運転状態の判定結果に影響を及ぼしやすくなるからである。このような観点から、判定部554Bは、物理量情報が所定数より少ない場合、信頼性が低いと判定し、前記所定数より多い場合、信頼性が高いと判定しても良い。
【0098】
例えば、判定部554Bは、複数の物理量情報における圧縮機出口比エンタルピー値の推移状況に基づいて、特異点が所定数より多い場合、信頼性が低いと判定し、前記所定数より少ない場合、信頼性が高いと判定しても良い。特異点が所定数より多い場合に信頼性が低いと判定する理由は、冷凍装置2又は計測部4に一時的なトラブルが発生した可能性があるため、現状はトラブルから復旧している場合でも、一時的なトラブルに基づく正確でない計測結果が運転状態の判定結果に影響を及ぼしやすくなるからである。例えば、記憶部53に、冷凍装置2が非常停止されたこと、冷凍装置2のメンテナンス又は霜取りが行われたことを保存しておき、計測期間内に、このような非常停止等があった場合、判定部554Bは、信頼性が低いと判定しても良い。なお、特異点が所定数より多い場合、或いは、非常停止等があった場合、特異点、或いは、非常停止等があったときの計測結果を除外して、運転状態を再判定しても良い。信頼性は、3段階以上のランクで評価されても良いし、ポイントにより評価されても良い。
【0099】
次に、ステップS62における運転状態の判定結果及び信頼性の報知処理について説明する。制御部55Bは、報知部52を制御して、第1実施形態と同様の判定結果と、信頼性とを報知する。報知される信頼性は、信頼性の高さと、信頼性の低下要因とを含んでも良い。信頼性の低下要因としては、計測期間が所定期間よりも短いこと、又は、圧縮機出口比エンタルピー値の推移に特異点が所定数より多く存在すること、冷凍装置2のメンテナンス又は霜取りが行われたことを例示することができる。
【0100】
<第4実施形態>
次に、本開示の第4実施形態について説明する。
【0101】
(冷凍システムの構成)
まず、冷凍システムの構成について、図1図11A及び図11Bを用いて説明する。なお、第1実施形態の冷凍システム1と同じ構成については、同一名称及び同一符号を付し、説明を簡略にする、又は、説明を省略する。図11Aは、第1機種の基準冷凍装置の判定基準情報の構成を散布図を用いて説明する図である。図11Bは、第2機種の基準冷凍装置の判定基準情報の構成を散布図を用いて説明する図である。
【0102】
図1に示されるように、第4実施形態の冷凍システム1Cは、運転状態判定装置5Cの構成が、第1実施形態の運転状態判定装置5の構成と異なる。運転状態判定装置5Cは、冷凍装置2の機種に応じた判定用情報を用いて、第1実施形態と同様の冷媒量の異常の有無及び冷媒調整量の判定処理を行う。運転状態判定装置5Cは、冷凍装置2の機種に応じた判定基準情報に含まれる閾値の信頼性が低いと判定した場合、冷凍装置2の機種に応じた判定基準情報と、他の機種の判定基準情報であって閾値の信頼性が高い判定基準情報とに基づいて、冷媒量の異常の有無の判定処理を行う。つまり、第4実施形態の運転状態判定装置5Cは、第1実施形態の運転状態判定装置5に、冷凍装置2の機種に応じた判定用情報を用いて運転状態を判定する機能と、冷凍装置2の機種に応じた判定基準情報に含まれる閾値の信頼性が低い場合、他の機種の判定基準情報を用いて運転状態を判定する機能とが追加された構成を有する。なお、第2,第3実施形態の運転状態判定装置5A,5Bに、これらの機能を追加しても良い。また、機種が互いに異なる冷凍装置とは、冷凍回路の構成要素(圧縮機、凝縮器、絞り部、蒸発器、又は、配管等)の型式、大きさ、又は、形状等が互いに異なる冷凍装置のことである。
【0103】
第4実施形態の運転状態判定装置5Cと第1実施形態の運転状態判定装置5との相違点は、記憶部53C及びデータベース54Cに記憶される情報、及び、制御部55Cを構成する推定部553C、判定部554C及び更新部555Cの処理内容である。
【0104】
記憶部53Cは、運転状態判定装置5Cの制御に必要な各種情報と、物理量情報と、を保存する。物理量情報は、制御部55Cにより推定された圧縮機出口比エンタルピー値と、計測部4で計測された外気温度と、計測部4の計測日時と、冷凍装置2の機種を表す情報とを備える。物理量情報は、運転状態の判定処理及び判定基準情報の更新処理に用いられた後、記憶部53Cから削除される。
【0105】
データベース54Cは、冷凍装置2の機種、冷媒及び設定冷却温度のうち少なくとも1つが互いに異なる基準冷凍装置に関する複数の判定用情報を格納する。各判定用情報は、それぞれ第1実施形態と同様の構成を有する、判定基準情報と、冷媒調整量情報と、を備える。
【0106】
例えば、第1機種の基準冷凍装置の判定基準情報は、図11Aに示される散布図として表わすことができるように構成されている。第2機種の基準冷凍装置の判定基準情報は、図11Bに示される散布図として表わすことができるように構成されている。なお、第1機種及び第2機種の基準冷凍装置における設定冷却温度及び冷媒は、互いに同じである。図11A及び図11Bの散布図の薄い灰色の丸及び濃い灰色の丸で表される点の意味は、図2の散布図における各点の意味と同じである。また、散布図内の横軸に平行な線は、閾値を表す。
【0107】
推定部553Cは、圧縮機出口比エンタルピー値と、外気温度と、計測日時と、機種とを関連付けて、物理量情報として記憶部53Cに保存する。なお、推定部553Cは、例えば、ユーザによる操作部51の入力操作に基づいて、冷凍装置2の機種を特定しても良い。
【0108】
判定部554Cは、冷凍装置2の機種、設定冷却温度及び冷媒に応じた判定用情報に基づいて、冷媒量の異常の有無及び冷媒調整量を判定する。
【0109】
更新部555Cは、冷凍装置2の機種、設定冷却温度及び冷媒に応じた判定基準情報の閾値を更新する。
【0110】
(冷凍システムの動作)
次に、冷凍システムの動作を、図4図6及び図12のフローチャートに基づいて説明する。なお、第1実施形態の冷凍システム1と同じ動作については、同一名称及び同一符号を付し、説明を簡略にする、又は、説明を省略する。図12は、運転状態判定処理のサブルーチンのフローチャートである。
【0111】
図4に示されるように、運転状態判定装置5Cの制御部55Cは、物理量情報の収集処理(ステップS71)を行う。次に、制御部55Cは、運転状態の判定処理(ステップS72)とを行う。この後、制御部55Cは、第1実施形態と同様に、運転状態の判定結果を報知する(ステップS3)。最後に、制御部55Cは、運転状態の判定対象の機種(対象機種)の判定基準情報を更新する(ステップS73)。以下、各処理の詳細な内容について説明する。なお、制御部55Cは、ステップS3の処理の前に、ステップS73の処理を行っても良い。
【0112】
まず、ステップS71における物理量情報の収集処理について説明する。図5に示されるように、制御部55Cは、第1実施形態と同様のステップS11~S14の処理を行う。その後、推定部553Cは、圧縮機出口比エンタルピー値と、外気温度と、計測日時と、機種とを関連付けて、物理量情報として記憶部53Cに保存する(ステップS81)。
【0113】
次に、ステップS72における判定処理について説明する。図12に示されるように、判定部554Cは、機種、冷媒及び設定冷却温度が冷凍装置2と同じ基準冷凍装置に関する判定用情報を、対象機種の判定用情報としてデータベース54Cから選出する(ステップS91)。
【0114】
判定部554Cは、選出された対象機種の判定用情報に含まれる、判定基準情報の信頼性が高いか否かを判定する(ステップS92)。
【0115】
ここで、互いに異なる機種の冷凍装置の設定冷却温度及び冷媒が同じであれば、これらの冷凍装置の冷凍回路における所定位置の物理量(例えば、圧縮機出口比エントロピー値)の適正値は、ほぼ同じになる。しかし、図11A及び図11Bに示される例では、一部の温度範囲における圧縮機出口比エントロピー値の分布と閾値が、互いに異なる。このような場合、図11A及び図11Bに示される例のうち、一方の例における圧縮機出口比エントロピー値の分布及び閾値の信頼性が低いと考えられる。
【0116】
例えば、判定部554Cは、図11Aに示されるように、各温度範囲において、正常分布を構成するほとんどの圧縮機出口比エンタルピー値が閾値よりも大きく、かつ、異常分布を構成するほとんどの圧縮機出口比エンタルピー値が閾値よりも小さいと見なせる場合、対象機種の判定基準情報の信頼性が高いと判定する。一方、判定部554Cは、図11Bに示されるように、少なくとも一部の温度範囲(図11Bでは低温側の温度範囲)において、異常分布を構成するほとんどの圧縮機出口比エンタルピー値が閾値よりも小さいと見なせない場合、又は、図示はされないが、正常分布を構成するほとんどの圧縮機出口比エンタルピー値が閾値よりも大きいと見なせない場合、対象機種の判定基準情報の信頼性が低いと判定する。
【0117】
判定部554Cは、対象機種の判定基準情報の信頼性が高いと判定した場合(ステップS92:YES)、対象機種の判定基準情報を、判定処理に用いる判定基準情報として選択する(ステップS93)。一方、判定部554Cは、対象機種の判定基準情報の信頼性が低いと判定した場合(ステップS92:NO)、機種、冷媒及び設定冷却温度のうち機種のみが冷凍装置2と異なる基準冷凍装置に関する判定用情報(非対象機種の判定用情報)を選出する(ステップS94)。判定部554Cは、選出された非対象機種の判定基準情報の信頼性が高いか否かを判定する(ステップS95)。なお、ステップS95における判定方法は、ステップS92における判定方法と同じである。
【0118】
判定部554Cは、非対象機種の判定基準情報の信頼性が低いと判定した場合(ステップS95:NO)、再度、ステップS94の処理を行う。なお、ステップS94の処理を2回以上行う場合、判定部554Cは、各処理において、互いに異なる機種の判定用情報を選出する。一方、判定部554Cは、非対象機種の判定用情報の信頼性が高いと判定した場合(ステップS95:YES)、ステップS95で信頼性が高いと判定された非対象機種の判定基準情報の閾値を、ステップS91で選出された対象機種の判定基準情報に基づき補正した、補正判定基準情報を生成する(ステップS96)。
【0119】
ステップS96における補正判定基準情報の生成処理において、判定部554Cは、例えば、対象機種の判定基準情報及び非対象機種の判定基準情報における、圧縮機出口比エンタルピー値の正常分布と異常分布の傾向を表す統計的指標の差を算出する。ここで用いる統計的指標としては、各外気温度、又は、所定の温度範囲における圧縮機出口比エンタルピー値の平均値、標準偏差、中央値を含む各パーセンタイル値を例示することができる。判定部554Cは、算出された統計的指標の差に基づいて、非対象機種の判定基準情報における閾値を補正することにより補正判定基準情報を生成する。例えば、図11Aが非対象機種の判定基準情報で表される分布(非対象機種の分布)を示し、図11Bが対象機種の判定基準情報で表される分布(対象機種の分布)を示す場合、低温側の温度範囲において、対象機種の閾値は、非対象機種の閾値よりも大きくなっている。この場合、図11Aに示されるように、非対象機種の判定基準情報の当該温度範囲における閾値を、大きくするように補正する(実線で示される閾値を一点鎖線で示される閾値に補正する)ことにより補正判定基準情報を生成する。
【0120】
判定部554Cは、生成された補正判定基準情報を、判定処理に用いる判定基準情報として選択する(ステップS97)。判定部554Cは、ステップS93又はステップS97の処理において、判定処理に用いる判定基準情報を選択すると、選択された対象機種の判定基準情報又は補正判定基準情報を用いて、図6に示されるステップS22~S25の処理を行う。ステップS23又はステップS25の処理が行われると、ステップS72における判定処理が終了する。
【0121】
このように、判定部554Cは、対象機種の判定基準情報に含まれる閾値の信頼性が低いと判定した場合、非対象機種の判定基準情報に含まれる信頼性が高い閾値を、対象機種の信頼性が低い閾値に基づき補正した補正判定基準情報を生成し、当該補正判定基準情報に基づいて、運転状態を判定する。このため、判定部554Cは、対象機種の判定基準情報の信頼性が低い場合でも、補正判定基準情報に基づいて、運転状態を適切に判定することができる。
【0122】
報知制御部556は、ステップS3の処理において、第1実施形態と同様に、ステップS23、又は、ステップS24,S25の処理結果を報知する。
【0123】
次に、ステップS73における対象機種の判定基準情報の更新処理について説明する。更新部555Cは、第1実施形態と同様に、対象機種の計測結果に基づく更新用情報を生成する。次に、更新部555Cは、更新用情報と、対象機種の判定基準情報とに基づいて、第1実施形態で例示した方法を用いて外気温度毎に閾値を算出する。更新部555Cは、対象機種の判定基準情報に含まれる外気温度毎の閾値を、新たに算出された外気温度毎の閾値に更新する。更新部555Cは、更新用情報に、当該更新用情報の外気温度に対応する閾値を関連付けた情報を、対象機種の判定基準情報に追加して、更新処理を終了する一方で、記憶部53Cに保存された物理量情報を削除する。
【0124】
[実施形態の変形例]
本開示は、これまでに説明した実施形態に示されたものに限られないことはいうまでもなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の変形を加えることができる。また、上記実施形態及び以下に示される変形例は、正常に機能する限り、どのように組み合わせても良い。
【0125】
<第1変形例>
冷凍システムの運転状態判定システムによる運転状態の判定対象の冷凍装置として、図13に示される、いわゆる二段圧縮式の冷凍装置6を適用しても良い。冷凍装置6は、低段圧縮機61、中間冷却器62、高段圧縮機63、凝縮器64、第1絞り部65、気液分離機66、第2絞り部67及び蒸発器24を含む冷凍回路60を備える。低段圧縮機61は、配管609から導入される低圧の冷媒を中間圧まで昇圧して配管601に送る。中間冷却器62は、低段圧縮機61からの中間圧の冷媒を冷却して配管602に送る。高段圧縮機63は、中間冷却器62からの中間圧の冷媒を高圧まで昇圧して配管603に送る。凝縮器64は、高段圧縮機63からの高圧の冷媒を冷却して配管604に送る。第1絞り部65は、凝縮器64で冷やされた冷媒を絞って、気液混合状態にして配管605に送る。気液分離機66は、第1絞り部65からの気液混合状態の冷媒を一時的にため込み、気液混合状態の冷媒を重力によって気体と液体に分離させる。気体の冷媒は、配管606を介して配管602に送られ、中間圧の冷媒と合流する。一方、液体の冷媒は、配管607を介して、第2絞り部67に送られる。第2絞り部67は、気液分離機66からの液体の冷媒を絞って配管608に送る。蒸発器24は、第2絞り部67で絞られた冷媒と空気とを熱交換して、熱交換後の冷媒を配管609に送る。蒸発器24から送られた冷媒は、低段圧縮機61に戻される。配管601,602,603は、本開示の第1配管の一例である。配管604は、本開示の第2配管の一例である。配管605,607,608は、本開示の第3配管の一例である。配管609は、本開示の第4配管の一例である。
【0126】
運転状態判定システム3Dは、計測部4と、運転状態判定装置5Dと、を備える。第1変形例において、計測部4の第1位置計測部41は、冷凍機入口P11における冷媒の温度(冷凍機入口温度)及び圧力(冷凍機入口圧力)を計測し、計測結果を表す計測情報を運転状態判定装置5Dへ送信する。冷凍機入口P11は、低段圧縮機61と蒸発器24とを接続する配管609内の所定の計測位置である。第2位置計測部42は、凝縮器出口P12における冷媒の温度(凝縮器出口温度)及び圧力(凝縮器出口圧力)を計測し、計測結果を表す計測情報を運転状態判定装置5Dへ送信する。凝縮器出口P12は、凝縮器64と第1絞り部65とを接続する配管604内の所定の計測位置である。
【0127】
運転状態判定装置5Dは、第1実施形態の運転状態判定装置5と同様の構成を備え、運転状態判定装置5と同様の処理を行うことにより、冷凍回路60の冷媒量の過多を判定しても良い。具体的に、運転状態判定装置5Dは、冷凍機入口P11における冷媒の温度及び圧力の計測結果と、凝縮器出口P12における冷媒の温度及び圧力の計測結果とに基づいて、高段圧縮機出口比エンタルピー値、又は、凝縮器出口比エンタルピー値を求め、これらの求められた比エンタルピー値に基づいて、冷媒量の過多を判定しても良い。高段圧縮機出口比エンタルピー値は、配管603内の高段圧縮機出口P13における冷媒の比エンタルピー値である。凝縮器出口比エンタルピー値は、凝縮器出口P12における冷媒の比エンタルピー値である。
【0128】
運転状態判定装置5Dは、冷凍機入口P11における冷媒の温度及び圧力の計測結果と、凝縮器出口P12における冷媒の温度及び圧力の計測結果とに基づいて、低段圧縮機出口比エンタルピー値(一段圧縮後の比エンタルピー値)と、中間冷却器出口比エンタルピー値(二段圧縮前の比エンタルピー値)とを求め、これらの求められた比エンタルピー値の差(比エンタルピー差)に基づいて、冷媒量の過多を判定しても良い。低段圧縮機出口比エンタルピー値は、配管601内の低段圧縮機出口P14における冷媒の比エンタルピー値である。中間冷却器出口比エンタルピー値は、配管602内の中間冷却器出口P15における冷媒の比エンタルピー値である。
【0129】
運転状態判定装置5Dは、高段圧縮機出口比エンタルピー値、凝縮器出口比エンタルピー値及び比エンタルピー差のうち、少なくとも2個のパラメータに基づいて、冷媒量の過多を判定しても良い。この場合、運転状態判定装置5Dは、以下のいずれかの場合に、冷媒量が過多であると判定しても良い。
(A)N(本例示ではN=3)個のパラメータのうち、M個以上のパラメータが異常であると判定された場合
(B)特定の組み合わせのパラメータが異常であると判定された場合
(C)所定の温度における特定のパラメータが異常であると判定された場合(例えば、外気温度が10℃以下の場合は、第1パラメータ及び第2パラメータが異常であると判定された場合。外気温度が10℃を超え且つ25℃以下の場合は、第1パラメータが異常であると判定された場合。外気温度が25℃を超える場合は、第2パラメータ及び第3パラメータが異常であると判定された場合。)
(D)例えば、N個のパラメータの異常度(外気温度がT℃のときに実際に異常であると判定された確率に基づき定義された値(>0)。パラメータが正常であると判定された場合の異常度は0)の合計値が所定値以上の場合(例えば、外気温度が10℃のときに、第1パラメータ及び第2パラメータが異常であり、かつ、第3パラメータが正常であると判定された場合、第1パラメータの異常度(>0)、第2パラメータの異常度(>0)、第3パラメータの異常度(=0)の合計値が、所定値以上の場合)
【0130】
なお、運転状態判定装置5Dは、凝縮器出口比エンタルピー値のみを用いて冷媒量の過多を判定する場合、凝縮器出口P12以外の位置における計測を行わなくてもよい。また、運転状態判定装置5Dは、冷凍機出口比エンタルピー値に基づいて、冷媒量の不足を判定しても良い。冷凍機出口比エンタルピー値は、配管607内の冷凍機出口P16における比エンタルピー値である。
【0131】
<第2変形例>
冷凍システムの運転状態判定システムによる運転状態の判定対象の冷凍装置として、運転状態判定装置から離れた位置に配置された少なくとも1台の冷凍装置を対象としても良い。図14に示されるように、運転状態判定システム3Eは、店舗X,Y,Zの冷凍装置2にそれぞれ配置された計測部4と、インターネット等のネットワークNを介して計測部4に接続された1台の運転状態判定装置5と、を備える。計測部4の計測位置は、第1実施形態の計測位置と同じである。運転状態判定装置5は、例えば遠隔監視室に配置されている。運転状態判定装置5は、第1実施形態と同じように、各計測部4からの計測情報に基づいて、各店舗の冷凍装置2の運転状態を判定する。なお、運転状態の判定結果を報知する報知部は、遠隔監視室に配置されても良いし、各店舗に配置されても良い。
【0132】
<他の変形例>
第1~第4実施形態において、圧縮機出口比エンタルピー値のみに基づいて冷媒量の異常を判定したが、圧縮機出口比エンタルピー値、冷凍機入口比エンタルピー値、凝縮器出口比エンタルピー値、蒸発器入口比エンタルピー値のうち少なくともいずれか1個のパラメータに基づいて、冷媒量の異常、凝縮器22の異常、液戻り、又は、冷凍回路20全体としての異常を判定しても良い。凝縮器22の異常としては、凝縮器22の汚れ、又は、凝縮ファン故障等により、凝縮器22での熱交換がうまくいかず、冷媒が液体にならないことを例示することができる。液戻りとは、着霜や絞り部23の異常等により、蒸発器24でうまく冷媒が蒸発されず、液体あるいは気液混合の状態の冷媒が圧縮機21で圧縮される現象のことである。複数のパラメータに基づいて、冷凍回路20の異常を判定する場合、第1変形例で例示した(A)~(D)の方法を用いることができる。
【0133】
第1~第4実施形態において、冷凍回路20の運転状態の判定に用いる物理量として比エンタルピー値を用いたが、温度、圧力、比エントロピー値を用いても良い。
【0134】
第1~第4実施形態において、データベース54,54A,54Cを、運転状態判定装置5,5A,5B,5Cとは異なる建物等に配置し、ネットワークを介して制御部55,55A,55B,55Cに接続するようにしても良い。
【0135】
第1~第4実施形態において、圧縮機出口比エントロピー値を、冷凍機入口P1及び凝縮器出口P2における計測結果に基づいて推定したが、計測部により圧縮機出口P3における冷媒の温度及び圧力を計測し、当該計測結果に基づいて、圧縮機出口比エントロピー値を算出しても良い。
【0136】
第1~第4実施形態において、判定基準情報が、外気温度毎、又は、所定の温度範囲毎に設定された閾値を含む構成を例示したが、例えば、冷凍装置2が外気温度がほとんど変化しない場所に設置されている場合、当該場所の外気温度に対応する1つの閾値を含めるようにしても良い。外気温度、又は、所定の温度範囲毎に設定される閾値は、2個以上存在していても良く、この場合、冷凍回路20の運転状態を3段階以上のレベルで判定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本開示は、運転状態判定装置、運転状態判定システム、及び、運転状態判定方法に適用できる。
【符号の説明】
【0138】
1,1A,1B,1C 冷凍システム
2,6 冷凍装置
3,3D,3E 運転状態判定システム
4 計測部
5,5A,5B,5C,5D 運転状態判定装置
20,60 冷凍回路
21 圧縮機
22,64 凝縮器
23 絞り部
24 蒸発器
41 第1位置計測部
42 第2位置計測部
43 第3位置計測部
51 操作部
52 報知部
53,53A,53C 記憶部
54,54A,54C データベース
55,55A,55B,55C 制御部
61 低段圧縮機
62 中間冷却器
63 高段圧縮機
65 第1絞り部
66 気液分離機
67 第2絞り部
201,202,203,204,601,602,603,604,605,606,607,608,609 配管
551 取得部
552 演算部
553,553A,553C 推定部
554,554A,554B,554C 判定部
555,555B,555C 更新部
556,556A,556B 報知制御部
N ネットワーク
P1,P11 冷凍機入口
P2 凝縮器出口
P3 圧縮機出口
P4 蒸発器入口
P12 凝縮器出口
P13 高段圧縮機出口
P14 低段圧縮機出口
P15 中間冷却器出口
P16 冷凍機出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14