(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082906
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】測距センサ
(51)【国際特許分類】
G01C 3/06 20060101AFI20230608BHJP
G01S 7/481 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
G01C3/06 110A
G01S7/481 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196910
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000143031
【氏名又は名称】コーデンシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】三木谷 聡太
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AA06
2F112BA06
2F112BA20
2F112CA12
2F112DA04
2F112DA26
2F112DA28
2F112GA10
5J084AA05
5J084AD07
5J084BA02
5J084BA33
5J084BB02
5J084DA05
5J084DA07
5J084EA32
5J084EA33
(57)【要約】
【課題】周囲環境の変動による距離特性の変動を低減できる測距センサを提供する。
【解決手段】対象物に向けて発光素子から光を出射し、その反射光を受光素子で検出することにより前記対象物までの距離を測定する測距センサであって、前記発光素子と前記受光素子とを保持する素子保持部材と、投光レンズ及び受光レンズを前記発光素子及び受光素子の前方の所定位置でそれぞれ保持するレンズ保持部材と、前記投光レンズ及び前記受光レンズの周囲を取り囲む遮光部材とを備え、前記遮光部材と前記レンズ保持部材とが別体として設けられている測距センサ。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に向けて発光素子から光を出射し、その反射光を受光素子で検出することにより前記対象物までの距離を測定する測距センサであって、
前記発光素子と前記受光素子とを保持する素子保持部材と、
投光レンズ及び受光レンズを前記発光素子及び受光素子の前方の所定位置でそれぞれ保持するレンズ保持部材と、
前記投光レンズ及び前記受光レンズの周囲を取り囲む遮光部材とを備え、
前記遮光部材と前記レンズ保持部材とが別体として設けられている測距センサ。
【請求項2】
前記素子保持部材の熱膨張率と前記レンズ保持部材の熱膨張率の差が20ppm/℃以下である請求項1に記載の測距センサ。
【請求項3】
前記素子保持部材と前記レンズ保持部材とが同一の材料により構成されている請求項1又は2に記載の測距センサ。
【請求項4】
前記遮光部材が導電性材料により構成され、前記素子保持部材及び前記レンズ保持部材が絶縁性材料により構成されている請求項1~3のいずれか一項に記載の測距センサ。
【請求項5】
前記遮光部材と前記レンズ保持部材とが構造的に干渉しないように構成されている請求項4に記載の測距センサ。
【請求項6】
前記レンズ保持部材に対する前記各レンズの位置決めを行う位置決め機構を更に備え、
前記位置決め機構が、前記各レンズ又は前記レンズ保持部材の一方に形成された複数の凹部と、前記各レンズ又は前記レンズ保持部材の他方に形成され、前記複数の凹部に対応する複数の凸部とを有し、
前記各レンズに形成された複数の凹部又は凸部が、前記各レンズにおいて光軸を挟んで対向するように配置されている請求項1~5のいずれか一項に記載の測距センサ。
【請求項7】
前記投光レンズと前記受光レンズとが一体成型されたものであり、
前記投光レンズと前記受光レンズとを一体的に連結する連結部が、前記投光レンズ及び前記受光レンズの一方から他方に向かう方向に沿って弾性変形可能に構成されている請求項1~6のいずれか一項に記載の測距センサ。
【請求項8】
前記連結部が、前記投光レンズと前記受光レンズのそれぞれの光軸を結ぶ仮想線を対称軸として略線対称となるように形成されている請求項7に記載の測距センサ。
【請求項9】
前記測距センサが三角測量方式のものである請求項1~8のいずれか一項に記載の測距センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物までの距離を測定する光学式の測距センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物に向けて発光素子から光を出射し、その反射光を受光素子で検出することにより、対象物までの距離を測定するようにした光学式の測距センサが知られている。このような測距センサとして、例えば特許文献1には、所謂三角測量の原理を用いて対象物までの距離を測定するものが記載されている。この特許文献1に記載の測距センサは、発光素子及び受光素子の前方に投光レンズと受光レンズを配置し、この投光レンズと受光レンズとを遮光性を備えるケーシングで保持するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に示すような測距センサでは、発光素子や受光素子を搭載して保持する基板は、短絡を防止するために絶縁性の樹脂で構成される一方で、レンズを保持するケーシングは、外部からの電磁ノイズを除去する目的で導電性の樹脂により構成されることがある。この場合、各レンズを保持するケーシングと、各素子を保持する基板との材質が大きく異なるため、例えば周囲の温度や湿度が変化した場合、互いに異なる割合で膨張(又は収縮)してしまう。その結果、各素子間の距離と各レンズ間の距離との関係性が変動することで、センサが備える距離特性が変動してしまい、測定精度が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、周囲環境の変動による距離特性の変動を低減できる測距センサを提供することを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る測距センサは、対象物に向けて発光素子から光を出射し、その反射光を受光素子で検出することにより前記対象物までの距離を測定するものであって、前記発光素子と前記受光素子とを保持する素子保持部材と、投光レンズ及び受光レンズを前記発光素子及び受光素子の前方の所定位置でそれぞれ保持するレンズ保持部材と、前記投光レンズ及び前記受光レンズの周囲を取り囲む遮光部材とを備え、前記遮光部材と前記レンズ保持部材とが別体として設けられていることを特徴とする。
【0007】
このような構成であれば、遮光部材とレンズ保持部材とを別体として設けているので、レンズ保持部材の材質を、導電性を備える遮光部材の材質に合わせる必要がなく自由に選択できるようになる。そのため、例えばレンズ保持部材の材質として、その熱膨張率や吸湿膨張率が、素子保持部材の熱膨張率や吸湿膨張率に近いものを採用することができ、周囲の温度や湿度等の環境が変化した際の素子保持部材とレンズ保持部材の長さや体積の変化量(膨張量又は収縮量)の差を小さくできる。これにより、周囲温度や湿度が変動した際の、発光素子と受光素子間の距離(以下、素子間距離ともいう)と、投光レンズと受光レンズのそれぞれの光軸間の距離(以下、レンズ間距離ともいう)との比率の変動を小さくでき、距離特性の変動を抑制することができる。
【0008】
前記測距センサは、前記素子保持部材の熱膨張率と前記レンズ保持部材の熱膨張率の差が20ppm/℃以下であるのが好ましく、10ppm/℃以下であるのがより好ましい。
なお、本明細書で言う「熱膨張率」とは、温度の上昇に対応して、発光素子と受光素子の一方から他方に向かう方向に沿って変化する長さの割合(すなわち線膨張率)を意味する。
【0009】
前記測距センサは、前記素子保持部材と前記レンズ保持部材とが同一の材料により構成されているものが好ましい。
このようにすれば、素子間距離とレンズ間距離との比率の温度変化による変動をより一層小さくできる。また湿度変化による素子保持部材とレンズ保持部材の膨張率を同程度にすることができ、湿度変化による各距離の比率の変動を小さくできる。
【0010】
また前記測距センサは、前記遮光部材が導電性材料により構成され、前記素子保持部材及び前記レンズ保持部材が絶縁性材料により構成されているものが好ましい。
このようにすれば、遮光部材を導電性材料により構成することで電磁的なノイズを吸収することができ、測定精度の低下を抑制できる。しかも、遮光部材とレンズ保持部材とを分けることで、レンズ保持部材の材料を素子保持部材の材料に合わせることができるので、上記したように、温度変化による距離特性の変動を防止することができる。
なお本実施形態において、“導電性材料”とは、抵抗率が例えば1[Ω・m]以下である材料を意味し、“絶縁性材料”とは、抵抗率が例えば10×1011[Ω・m]以上である材料を意味する。
【0011】
またこの場合、前記遮光部材と前記レンズ保持部材とが構造的に干渉しないように構成されているのが好ましい。
このようにすれば、遮光部材とレンズ保持部材が互いに接触することなく構造的に干渉しないようにしているので、温度変化による遮光部材の熱膨張の影響がレンズ保持部材に及ぶことを抑制でき、温度変化や湿度変化による距離特性の変動をより一層抑制することができる。
【0012】
また前記測距センサは、前記レンズ保持部材に対する前記各レンズの位置決めを行う位置決め機構を更に備え、前記位置決め機構が、前記各レンズ又は前記レンズ保持部材の一方に形成された複数の凹部と、前記各レンズ又は前記レンズ保持部材の他方に形成され、前記複数の凹部に対応する複数の凸部とを有し、前記各レンズに形成された複数の凹部又は凸部が、前記各レンズにおいて光軸を挟んで対向するように配置されているのが好ましい。
このようにすれば、レンズ保持部材に対する各レンズの位置決めを各レンズの光軸(レンズ中心)を基準として行っているので、温度変化や湿度変化があった際に、各レンズをその光軸位置を基準にして膨張(又は収縮)させることができる。このため、温度変化や湿度変化があった際の、素子間距離とレンズ間距離との比率の変動をより小さくでき、距離特性の変動をより一層抑制することができる。
【0013】
また前記測距センサは、前記投光レンズと前記受光レンズとが一体成型されたものであり、前記投光レンズと前記受光レンズとを一体的に連結する連結部が、前記投光レンズ及び前記受光レンズの一方から他方に向かう方向に沿って弾性変形可能に構成されているのが好ましい。
このようにすれば、投光レンズと受光レンズとが一体成型されているので、これらを別々に成型するよりも製造コストを抑えることができる。さらに、投光レンズと受光レンズとを連結する連結部を弾性変形可能に構成しているので、温度変化や湿度変化によりレンズ保持部材が膨張(又は収縮)した際に、投光レンズと受光レンズがこれに追随して変位できる。そのため、製造コストを低減しながら、温度変化や湿度変化があった際の距離特性の変動をより一層抑制することができる。
【0014】
この場合、前記連結部が、前記投光レンズと前記受光レンズのそれぞれの光軸を結ぶ仮想線を対称軸として略線対称となるように形成されているのが好ましい。
このようにすれば、連結部が弾性変形した際に、投光レンズと受光レンズとを仮想線に沿って真っすぐに変位させることができるので、温度変化や湿度変化があった際の距離特性の変動を効果的に抑制することができる。
【0015】
三角測量方式の測距センサでは、素子間距離とレンズ間距離との比率が測定精度に大きく寄与する。そのため、本発明の効果を顕著に奏する態様としては、前記測距センサが三角測量方式のものが挙げられる。
【発明の効果】
【0016】
このようにした本発明によれば、周囲環境の変動による距離特性の変動を低減できる測距センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる測距センサの全体構成を示す斜視図である。
【
図2】同実施形態の測距センサの各部材を分離して示す分解図である。
【
図3】同実施形態の測距センサの遮光部材とその他の部材とを分離して示す分解図である。
【
図4】同実施形態の投光レンズ及び受光レンズの構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施形態に係る測距センサ100について図面を参照して説明する。
【0019】
この測距センサ100は、例えばロボット、自動販売機、ATM、複合機、温水洗浄便座等に内蔵され、人や物体等の対象物までの距離を測定するためのものである。具体的にこの測距センサ100は、対象物に対して発光素子1aから光を出射し、対象物で反射した光(反射光)を受光素子1bでセンシングすることにより対象物との間の距離を測定するように構成された光学式のものである。より具体的にこの測距センサ100は、
図1及び
図2に示すように、発光素子1a及び受光素子1bと、各素子を保持する素子保持部材1と、発光素子1a及び受光素子1bの前方に設けられた投光レンズ21及び受光レンズ22と、各レンズ21、22を保持するレンズ保持部材3と、各レンズ21、22の周囲を取り囲む遮光部材4と、情報処理部5とを備えている。なお本実施形態の測距センサ100は、所謂三角測量方式のものである。以下、各部について説明する。
【0020】
発光素子1aは、具体的には発光ダイオード(LED)である。本実施形態の発光素子1aは、赤外光を発するようにその波長が設定されている。
【0021】
受光素子1bは、例えばフォトダイオードやフォトトランジスタ等の光起電力効果を利用するものであり、受光面で受光した光量に比例した信号を出力するように構成されたものである。本実施形態の受光素子1bは、受光面における光の入射位置を検出できるものであり、具体的にはPSD(Position Sensitive Detector、位置検出素子)である。受光素子1bは、1次元PSD、2次元PSDのどちらであってもよい。
【0022】
素子保持部材1は、概略板状をなし、例えばABS、LCP、PC、PEEK、PMMA、POM、PPA、PPS等の絶縁性を有する樹脂材料により構成されており、その表面にリードフレーム(図示しない)がインサート成型されて構成されたものである。発光素子1aと受光素子1bは、互いに所定の距離を離し、かつ同一方向を向くようにして、配線パターンを介して素子保持部材1上の所定位置に搭載されて、保持されている。
【0023】
投光レンズ21は、発光素子1aから出た光を効率よく対象物に導くものである。この投光レンズ21は、発光素子1aの光出射方向の前方に設けられて、発光素子1aから出た光を集光して略平行光にし、対象物に向けて出射する。受光レンズ22は、対象物からの反射光を効率よく受光素子1bに導くためのものである。この受光レンズ22は、受光素子1bの前方に設けられて、対象物からの反射光を受光素子1bの受光面上に集光させる。
【0024】
本実施形態の投光レンズ21と受光レンズ22は一体成型されたレンズユニットとして構成されている。この投光レンズ21と受光レンズ22と連結部23は、例えばPC、PMMA、ガラス等の樹脂材料により構成された連結部23によりその間が連結されている。
【0025】
この連結部23は、投光レンズ21及び受光レンズ22の一方の光軸から他方の光軸に向かう方向(基線方向ともいう)に沿って弾性変形可能(伸縮可能ともいう)に構成されている。具体的にこの連結部23は、
図4に示すように、投光レンズ21から受光レンズ22に向かって左右に複数回折れ曲がることで、ジグザグ状を成すように形成されている。投光レンズ21と受光レンズ22は、各レンズ21、22のそれぞれの光軸21a、21bを結ぶ仮想線Lを挟んで離間した複数の連結部23により連結されている。そして各連結部23は、投光レンズ21の光軸21aに直交する平面内において、仮想線Lを対称軸として略線対称となるように形成されている。
【0026】
レンズ保持部材3は、投光レンズ21及び受光レンズ22と素子保持部材1との間に設けられ、投光レンズ21と受光レンズ22を、発光素子1aと受光素子1bのそれぞれ前方の所定位置で、その光軸21a、22aがいずれも発光素子1aの主光線軸と平行になるように保持するものである。なおこのレンズ保持部材3は、図示しない連結機構を介して素子保持部材1に連結されている。
【0027】
このレンズ保持部材3は、その内側壁3sと底壁3bにより囲まれて形成された出射光通過空間31と反射光通過空間32とを備えている。出射光通過空間31は、発光素子1aの前方に位置するように形成され、発光素子1aから出射された光を投光レンズ21に向けて通過させるものである。反射光通過空間32は、受光素子1bの前方に位置するように形成され、受光レンズ22からの光を受光素子1bに向けて通過させるものである。出射光通過空間31と反射光通過空間32は、いずれもその光出射方向の前方側が開口しており、この開口を塞ぐように、投光レンズ21と受光レンズ22がそれぞれ取り付けられている。
【0028】
そして投光レンズ21と受光レンズ22は、
図2及び
図3に示すように、接合機構6を介してレンズ保持部材3に取付けられる。この接合機構6は、各レンズ21、22とレンズ保持部材3とを機械的に接合するものでもよく、化学的に接合するものであってもよい。本実施形態の接合機構6は、各レンズ21、22の外縁部とレンズ保持部材3の側壁の一方に形成された取付け用凸部61と、その他方に設けられ、取付け用凸部61が嵌め込まれる取付け用凹部62とを有するものであり、例えばスナップフィット等である。
【0029】
また各レンズ21、22は、
図2及び
図3に示すように、位置決め機構7により、レンズ保持部材3に対してその光軸21a、22aが位置決めされている。具体的にこの位置決め機構7は、各レンズ21、22の外縁端又はレンズ保持部材3の側壁の一方に形成された複数の位置決め用凹部71と、その他方に形成され、複数の位置決め用凹部71に対応する複数の位置決め用凸部72とを有している。位置決め用凸部72と、対応する位置決め用凹部71とは、基線方向に沿ってガタつくことなくピッタリと嵌め合わされるように、その寸法が設定されている。また各レンズ21、22において、複数の位置決め用凹部71又は位置決め用凸部72は、光軸方向から視てその光軸21a、21bを対称軸として略点対称の位置になるようにレンズの外縁端に設けられており、ここではさらに、仮想線Lを対称軸として略線対称の位置になるようにレンズの外縁端に設けられている。
【0030】
遮光部材4は、投光レンズ21及び受光レンズ22に入射する外乱光を遮光するためのものである。この遮光部材4は、外部からの電磁ノイズを除去する目的で、例えば、ABS、LCP、PC、PEEK、PMMA、POM、PPA、PPS等の導電性の樹脂材料によりその全体が構成されている。
【0031】
具体的にこの遮光部材4は、投光レンズ21、受光レンズ22、レンズ保持部材3及び素子保持部材1を収容する収容空間がその内側に形成された箱状をなすものである。遮光部材4は、投光レンズ21への外乱光を遮光する投光側遮光部41と、受光レンズ22への外乱光を遮光する受光側遮光部42とを備えている。各遮光部41,42は、投光レンズ21及び受光レンズ22の周囲をそれぞれ取り囲む内側壁4sにより形成されている。またこの遮光部材4は、レンズ保持部材3及び各レンズ21、22に構造的に干渉しないように構成されている。具体的にこの遮光部材4は、各レンズ21、22及びレンズ保持部材3を保持しておらず、配線基板に設けられた図示しない接続機構(例えば圧入式、接着式、又はスナップフィット等)に接続されている。
【0032】
情報処理部5は、CPU、メモリ及び入出力インターフェース等を備えた汎用又は専用のコンピュータであり、メモリの所定領域に格納された所定プログラムに従ってCPUや周辺機器を協働させることによりその機能が実現されるものである。当該情報処理部5は、素子保持部材1上に搭載され、発光素子1aの点灯を制御する点灯制御部としての機能と、受光素子1bから出力された信号に基づいて対象物までの距離を算出する距離算出部としての機能を少なくとも発揮する。
【0033】
しかして、本実施形態の測距センサ100は、温度や湿度等の周囲環境の変動による距離特性の変動を低減できるように、レンズ保持部材3と遮光部材4とが別体(すなわち、別々の成型品)として設けられており、素子保持部材1とレンズ保持部材3とが少なくとも熱膨張率が互いに略同一である材料により構成されている。
【0034】
ここでいう「熱膨張率」とは、温度の上昇に対応して、基線方向に沿って長さが変化する割合(すなわち線膨張率)である。「レンズ保持部材の熱膨張率」とは、保持している投光レンズ21と受光レンズ22の光軸間の長さが温度の上昇に対応して変化する割合を意味する。また「素子保持部材の熱膨張率」とは、保持している発光素子1aと受光素子1bとの間の長さが温度の上昇に対応して変化する割合を意味する。
【0035】
この「略同一の熱膨張率」の範囲には、互いの熱膨張率が等しい場合だけでなく、互いの熱膨張率の差が20ppm/℃以下までが含まれる。素子保持部材1とレンズ保持部材3の熱膨張率の差の割合は、10ppm/℃以下が好ましい。
【0036】
また本実施形態の測距センサ100は、素子保持部材1とレンズ保持部材3とが、熱膨張率のみならず吸湿による膨張率(吸湿膨張率ともいう)が互いに略同一である材料により構成されている。
【0037】
具体的に、レンズ保持部材3は、例えばABS、LCP、PC、PEEK、PMMA、POM、PPA、PPS等の絶縁性の樹脂材料により構成されており、素子保持部材1と同一の材料により構成されているのが好ましい。
【0038】
このように構成された本実施形態の測距センサ100によれば、遮光部材4とレンズ保持部材3とを別体として設けているので、レンズ保持部材3の材質を、導電性を備える遮光部材3の材質に合わせる必要がなく自由に選択することができる。そのため、例えばレンズ保持部材3の材質として、その熱膨張率や吸湿膨張率が、素子保持部材1の熱膨張率や吸湿膨張率に近いものを採用することができ、周囲の温度や湿度等の環境が変化した際の素子保持部材1とレンズ保持部材3の長さや体積の変化量(膨張量又は収縮量)の差を小さくできる。これにより、周囲温度や湿度が変動した際の、発光素子1aと受光素子間1bの距離(以下、素子間距離ともいう)と、投光レンズ21と受光レンズ22間の距離との比率の変動を小さくでき、センサ100の距離特性の変動を抑制することができる。
【0039】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0040】
例えば、前記実施形態では測距センサ100は三角測量方式のものであったがこれに限らない。他の実施形態では、測距センサ100はTOF(Time-Of-Flight)方式のものであってもよい。
【0041】
また前記実施形態の発光素子1aは赤外光を発するものであったが、これに限らず他の波長の光を発するものであってもよい。また発光素子1aはLEDに限らず、例えばレーザダイオード等のレーザー光を発するものであってもよい。また前記実施形態において受光素子1bはPSD方式であったがこれに限らず、CCD方式やCMOS方式のものであってもよい。
【0042】
前記実施形態では投光レンズ21と受光レンズ22が一体成型されたものであったがこれに限らない。他の実施形態では、投光レンズ21と受光レンズ22は別々に成型されてよく、連結部23で連結されることなく互いに分離していてもよい。
【0043】
また前記実施形態では、素子保持部材1とレンズ保持部材3とが熱膨張率が略同一である材料により構成されていたが、これに限らず互いの熱膨張率の差が20ppm/℃を超える材料から構成されていてもよい。同様に、素子保持部材1とレンズ保持部材3とが吸湿膨張率が略同一である材料により構成されなくてもよい。
【0044】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0045】
100・・・測距センサ
1a ・・・発光素子
1b ・・・受光素子
1 ・・・素子保持部材
21 ・・・投光レンズ
22 ・・・受光レンズ
3 ・・・レンズ保持部材
4 ・・・遮光部材