(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082907
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】土壌改良材
(51)【国際特許分類】
C09K 17/08 20060101AFI20230608BHJP
C09K 17/18 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
C09K17/08 H
C09K17/18 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196911
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】須藤 進
【テーマコード(参考)】
4H026
【Fターム(参考)】
4H026AA01
4H026AA09
4H026AB04
(57)【要約】
【課題】
断熱性に優れるとともに害虫忌避効果を奏し、かつ使用時の手間がかかり難い土壌改良材を提供する。
【解決手段】
土壌改良材は、粒状物である土壌改良材であって、熱伝導率が1W/(m・K)未満である粒子本体と、当該粒子本体の表面の少なくとも一部に表出している金属部と、を備えて構成される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状物である土壌改良材であって、
熱伝導率が1W/(m・K)未満である粒子本体と、
前記粒子本体の表面の少なくとも一部に表出している金属部と、
を備えることを特徴とする土壌改良材。
【請求項2】
前記粒子本体が、発泡樹脂部材を含み、
前記発泡樹脂部材が前記金属部を直接または間接に担持している請求項1に記載の土壌改良材。
【請求項3】
前記発泡樹脂部材が硬質ポリウレタンフォームを含み、
前記金属部がアルミニウム箔を含む請求項2のいずれか一項に記載の土壌改良材。
【請求項4】
嵩密度が、0.01g/cm3以上0.95g/cm3以下の範囲である請求項1から3のいずれか一項に記載の土壌改良材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌改良材に関し、詳しくは断熱性および害虫忌避効果を奏する土壌改良材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物の生育を促進させ、緑化を図り、あるいは農作物の栽培を十分に行う等のために種々の土壌改良手段が提案されている。
【0003】
たとえば特許文献1には、発泡ポリウレタン粒状物を容量比で50%以上含有する園芸用培養土の発明が開示されている。上記園芸用培養土は、培養土の通気性や保水性を改善するために、発泡ポリウレタン粒状物を砂や粘土に容量比で50%以上混合することにより得られる土壌改良材の一種である。
【0004】
また特許文献2には、オレフィン系樹脂に金属アルミニウム粉末および結晶化抑制材を添加、製膜して製造されるシルバーマルチフィルムの発明が開示されている。上記シルバーマルチフィルムは、圃場表面を覆うよう設置することで地温上昇を抑制し、また添加された金属アルミニウム粉末の反射特性により害虫忌避効果を発揮しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-28179号公報
【特許文献2】特開平7-70339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで一般的に発泡ポリウレタンは、土壌よりも熱伝導性が低い。したがって、かかる発泡ポリウレタンからなる粒状物が土壌に混合されてなる上記園芸用培養土は、混合前の土壌よりも断熱性が高いものと推察される。このような断熱性の向上は、植物の生育、特には植物の初期の生育を良好に促進するために好ましい。しかしながら、上記園芸用培養土は、害虫忌避効果を何ら発揮するものではない。そのため、せっかく植物の生育が促進されたとしても害虫が付いてしまうことで植物の状態が悪くなり、あるいは人為的な農薬の散布を余技なくされるという問題があった。
【0007】
一方、上記シルバーマルチフィルムは、樹脂フィルムで圃場等を覆うことで土壌の断熱性を高めるとともに、フィルムに添加された金属アルミニウムの反射特性により害虫忌避効果を奏しうる。しかしながら、シルバーマルチフィルムは、圃場等に設置する際に手間がかかり、また公園などの人の多く集まる領域の緑化を促進する際には、外観上好まれない場合があった。
【0008】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明は、断熱性に優れるとともに害虫忌避効果を奏し、かつ使用時の手間がかかり難い土壌改良材の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の土壌改良材は、粒状物である土壌改良材であって、熱伝導率が1W/(m・K)未満である粒子本体と、上記粒子本体の表面の少なくとも一部に表出している金属部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記構成を有する本発明の土壌改良材は、土壌表面または土壌下層に積層させ、あるいは土壌に混合するといった簡易な作業で使用される。本発明の土壌改良材は、土壌に用いられることで、優れた断熱性および害虫忌避効果を奏し、これによって植物の生育を良好に促進し、また生育した植物にアブラムシなどの害虫が付着することを抑制する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の土壌改良材は、粒子本体と、当該粒子本体の表面の少なくとも一部に表出している金属部と、を有する粒状物である。一般的な土壌の断熱性を勘案し、本発明に用いられる上記粒子本体は、熱伝導率が1W/(m・K)未満となるよう構成される。したがって、かかる粒子本体を備える本発明の土壌改良材が用いられた土壌は、当該土壌改良材が用いられる前の土壌より断熱性が向上する。
【0012】
上述のとおり上記粒子本体の表面の少なくとも一部には、金属部が設けられている。そのため、本発明の土壌改良材を含む土壌表面に対し照射された光の一部は、上記金属部によって反射し反射光となる。これにより、害虫忌避効果が発揮されるため、生育した植物に対し、人為的なの農薬散布を行わないか、あるいは回数を少なくすることができる。
しかも従来のシルバーマルチフィルムのようなシート状物と違い、本発明における金属部は、粒状物である土壌改良材の表面に設けられているため、土壌表面に照射された光を乱反射させることが可能である。したがって、本発明は、シート状物であるシルバーマルチフィルムの害虫忌避効果よりも高い効果を発揮しうる。さらに、本発明は、シルバーマルチフィルムのように土壌表面をシートで覆うことなく害虫忌避効果を発揮することができるため外観にも優れ、たとえば公園などの人の集まる領域における緑化などにも好適である。尚、本発明における害虫忌避効果は、特定の昆虫の忌避に限定されるものではないが、たとえば、強い光を嫌うとともに植物の茎や葉の裏に密集しやすいアブラムシ等に対し優れた忌避効果を発揮する。
以下に本発明の土壌改良材についてさらに詳細に説明する。
【0013】
(粒状物)
上述のとおり本発明の土壌改良材は粒状物である。ここで粒状物とは、球形、立方体、直方体、円筒体などの定形の粒子状に限定されず、不定形の小片であってもよい。土壌改良材に含まれる粒状物は1種の形状の粒子に統一されていてもよく、または2種以上の形状の粒子の混合であってもよい。
粒状物である土壌改良材の寸法は特に限定されないが、土壌に用いられた際、風雨で流出し難く、また土壌中に沈み込み過ぎないという観点からは、土壌改良材の最大長部分の平均寸法が0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましく、1.5mm以上であることがさらに好ましい。また、土壌と混合した際に混合状態が良く植物の根が生育しやすいという観点からは土壌改良材の最大長部分の平均寸法は10mm以下であることが好ましく、9mm以下であることがより好ましく、8mm以下であることがさらに好ましい。
なお、土壌改質材の粒子本体が後述する独立気泡を備える発泡樹脂部材の場合は、独立気泡による浮力を得て土壌下に沈み込みにくくするために、土壌改質材の大きさとしては、当該独立気泡の大きさ以上であることが必要である。また、独立気泡の大きさよりも土壌改質材が大きいほど、側面において開口する気泡からなる微小の凹部が多数存在することとなり、当該凹部に土壌が付着しやすく、土壌への保持がしやすくなる。例えば、硬質ポリウレタンフォームからなる粒子であって、熱伝導率が1W/(m・K)未満のものを得たい場合には、当該粒子の独立気泡の大きさ(平均寸法)がおよそ0.4mm以下となるよう調整されることが好ましい。したがって、独立気泡を備える発泡樹脂部材からなる土壌改質材は、たとえば、粒子内部に存在する独立気泡の平均寸法が0.05mm以上0.4mm以下であって、かつ、土壌改質剤自体の平均寸法が0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましく、1.5mm以上であることがさらに好ましい。
【0014】
上述する粒子の最大長部分の平均寸法は、土壌改良材から無作為に選択された粒状物30個についてそれぞれ最大長部分を実測し、実測値を算術平均することにより求めることができる。また発泡樹脂部材からなる粒子の内部に存在する独立気泡の平均寸法は、粉砕前の発泡樹脂部材の独立気泡の平均寸法で示すことができ、例えば、発泡樹脂部材から、200mm×200mm×50mmの試験片を切り出し、該試験片の厚み方向において、1mm間隔で50箇所それぞれのセル(その各箇所における1mm2当たりに含まれる全てのセル)の径を市販の走査型電子顕微鏡(日本電子社製、商品名「JSM-6700F」)を用いて倍率30倍で独立気泡の長径を実測する。得られた実測値を算術平均することにより独立気泡の平均寸法を求めることができる。
上記実測の方法は特に限定されず、肉眼で行ってもよいし、顕微鏡を使用してもよい。
なお、土壌改良材は、予め任意の目の大きさのフィルターなどによって分級されたものを使用することができる。これによって概ね粒径の揃った粒子群を得ることができる。
【0015】
(粒子本体)
上述する粒状物である土壌改良材は、粒子本体を備える。
本発明において粒子本体は、熱伝導率が1W/(m・K)未満であり、より優れた断熱性を発揮させるという観点からは、熱伝導率は、0.5W/(m・K)以下であることが好ましく、0.1W/(m・K)以下であることがより好ましい。一方、熱伝導率の下限は、特に限定されないが、使用可能な部材などを勘案すると概ね0.01W/(m・K)程度である。
【0016】
粒子本体の熱伝導率は、当該粒子本体を構成する部材の熱伝導率を指し、たとえば当該部材が発泡樹脂部材である場合には、その発泡樹脂部材からなる所定形状の試験片を用い、JIS A 9521:2017に示される熱流計法に倣い、平均温度23℃で測定することができる。
ただし、土壌改良材から粒子本体の熱伝導率を測定することが困難である場合には、土壌改良材自体の熱伝導率を測定し、その値が1W/(m・K)未満であれば、当該土壌改良材を構成する粒子本体の熱伝導率も1W/(m・K)未満であると判断することができる。
土壌改良材の熱伝導率は、厚さ0.02mmのポリエチレンフィルムからなる袋体に、厚さ50mm、縦300mm、横300mm角の大きさになるよう土壌改良材を充填した状態で、熱流計により測定することができる。
【0017】
粒子本体を構成する部材は、上述する範囲の熱伝導率を示し断熱性に優れるとともに金属部を担持可能な部材から適宜選択することができる。たとえば、粒子本体を構成する部材の具体例としては、硬質ポリウレタンフォームなどのポリウレタンフォーム、ポリフェノールフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム等の発泡樹脂部材、木粉やセルローズファイバーなどの木製部材、およびグラスウール、ロックウール、シリカゲルナノ発泡体などの断熱部材が例示される。粒子本体を構成する部材は、本発明の土壌改良材が使用される環境や季節などを勘案して適宜選択するとよい。
【0018】
断熱性に優れるとともに、軽量性および保水性を良好に併せ持つという観点からは、上記部材として、内部に独立気泡を備える発泡樹脂部材が選択されることが好ましく、粒子本体100質量%において当該発泡樹脂部材が80質量%以上含有されることがより好ましく、90質量%以上含有されることがさらに好ましい。独立気泡を有する発泡樹脂部材は、断熱性および軽量性に特に優れる上、側面において開口する気泡からなる微小の凹部が多数存在するため、この凹部に水分を一時的に保持することができることから保水性にも優れる。特に断熱性および軽量性と、保水性を良好に併せ持つとともに、土壌成分と馴染みやすく、木製部材と同程度に時間の経過とともに土壌中で分解されるという観点からは、独立気泡を有する発泡樹脂部材の中でも、硬質ポリウレタンフォームおよび/またはポリフェノールフォームが選択されることがより好ましく、特に硬質ポリウレタンフォームが好ましい。尚、上記硬質ポリウレタンフォームとは、ポリウレタン系樹脂から構成される発泡樹脂部材であって、かさ密度が0.02g/cm3以上0.15g/cm3以下の範囲のものを指す。また上記ポリフェノールフォームとは、フェノールが多数連結したフェノール樹脂構造を備えるとともに発泡した樹脂を指す。
【0019】
また、特に優れた保水性を示すという観点からは、上記部材として、セルローズファイバーなどの木製部材が選択されることが好ましい。木製部材は内部に導管を有し、周囲の水分を吸い上げる能力に優れるとともに、吸い上げた水分を保持する能力に優れるためである。上記セルローズファイバーとは、セルロース繊維の集合体を指し、たとえば、木粉または小径の木片などの形態が挙げられる。
【0020】
粒子本体を構成する部材は、1種であってもよいし、2種以上の混合部材であってもよい。当該混合部材は、2種以上の発泡樹脂部材からなる態様、1種以上の発泡樹脂部材と1種以上の発泡樹脂部材以外の部材からなる態様、など適宜に組み合わせることができる。また本発明の土壌改良材は、1種の部材から構成された粒子本体を備える粒状物の集合物であってもよいし、1種の部材から構成された粒子本体を備える粒状物と、それとは異なる部材から構成された粒子本体を備える粒状物の混合物であってもよい。
【0021】
(金属部)
次に金属部について説明する。本発明における金属部は、任意の金属から構成され、粒子本体の表面の少なくとも一部に表出するよう設けられる。上記金属部を備えることによって、土壌表面に位置する土壌改良材に光が照射された際、当該金属部によって乱反射を生じさせることができ、これによって高い害虫忌避効果が発揮される。
【0022】
金属部の形態は特に限定されないが、良好な反射効果を示すとともに軽量性に優れた土壌改良材を提供するという観点からは、金属層であることが好ましい。金属層とは、たとえば、金属箔が粒子本体の表面に積層されてなる金属箔層、粒子本体の表面に金属が蒸着されてなる金属蒸着層などが挙げられる。本発明では粒子本体によって金属部を担持させることができるため、金属部の表面積を確保しつつ、当該金属部の重量を抑えるよう、薄厚みの層として金属部を構成することが可能である。
【0023】
金属部は、粒子本体の表面に対し直接または間接に設けられてよい。換言すると、金属部は粒子本体に直接または間接に担持される。粒子本体に対し金属部が直接に担持されているとは、粒子本体を構成する部材の表面に直接に金属部を構成する金属が存在する態様を指す。一方、粒子本体に対し金属部が間接的に設けられる態様とは、具体的には当該粒子本体と当該金属部との間に任意の中間層が設けられた態様を指す。中間層としては、紙層および/または樹脂層などが挙げられる。上記紙層としては、たとえば、クラフト紙、ライナー紙、市販の紙などが例示される。また上記樹脂層としては、ポリエチレンフィルムやポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、あるいは接着層などが例示される。中間層を設けることで、金属箔層や金属蒸着層などの薄厚みの金属層を粒子本体の表面に対し安定して積層させることができ、金属部の剥がれ、脱離などを良好に防止することができる。また、光の反射効果を損ねなければ、金属部表面にも透明性のプラスチックフィルムを積層してもよく、かかる積層により金属部の腐食防止や錆防止になるため好ましい。尚、ここでいう透明性とは、透明または半透明を含み、金属部によって反射された反射光が通過可能な程度の透明性をさす。
中でも、粒子本体が発泡樹脂部材を含み、当該発泡樹脂部材が前記金属部を直接または間接に担持している態様は、本発明の好ましい態様の一つといえる。軽量性に優れる発泡樹脂部材を含んで構成された粒子本体を備える土壌改良材は、土壌下に沈み込みにくい。そのため、土壌表面に配置された土壌改良材は、土壌下に沈み込むことなく、当該土壌表面において光の反射効果を継続しやすい。
【0024】
金属部を構成する金属は、上述する反射効果が発揮される範囲において適宜選択して用いることができるが、金属箔層や金属蒸着層を構成しやすいという観点からアルミニムが好適である。
【0025】
たとえば、粒子本体が発泡樹脂部材を含み、かつ金属部がアルミニウム箔を含む土壌改良材は、本発明の好ましい態様の一つであり、特に粒子本体が硬質ポリウレタンフォームを含み、かつ金属部がアルミニウム箔を含む土壌改良材は、より好ましい態様の一つである。またアルミニウム箔の剥離、錆、腐食などを防止するという観点から、上記アルミニウム箔を覆う透明性のプラスチックフィルムが積層されていることがさらに好ましい。
かかる態様の土壌改良材は、断熱性、軽量性および保水性に優れ、かつ金属部がアルミニウム箔であるため、光の反射による害虫忌避効果を持続させやすい。
【0026】
(土壌改良材のかさ密度)
上述する土壌改良材のかさ密度は特に限定されないが、より優れた軽量性を示すという観点からは、0.01g/cm3以上0.95g/cm3以下の範囲であることが好ましく、0.10g/cm3以上0.80g/cm3以下の範囲であることがより好ましく、0.15g/cm3以上0.40g/cm3以下であることがさらに好ましい。
土壌改良材が適度な軽量性を示すことの第一の有利な点は、土壌に用いられた土壌改良材が、時間の経過とともに土壌下に沈み込みにくいという点にある。これにより、土壌表面に土壌改良材が存在する状態を保つことができ、金属部による光の乱反射によって害虫忌避効果を持続させることができる。
【0027】
土壌改良材のかさ密度(g/cm3)の測定は、日本粉体工業技術協会規格SAP01-79(制定1979年)に規定される造粒物のかさ密度測定方法に準拠して実施される。具体的には、直円筒容器に試料(土壌改良材)を充填し、山盛りとなったところですり切った一定容積の試料重量を測定し、この重量と容器容積の比を求めることにより実施される。
【0028】
また土壌改良材が適度な軽量性を示すことの第二の有利な点は、屋上緑化に好適に使用されるという点にある。即ち、近年、ヒートアイランドによる外気温度上昇や局所的なゲリラ豪雨の発生を抑制し、また住民等に癒しを与える等の観点から都市部の屋上緑化の取り組みが活発である。しかし屋上緑化は、建築物の最上階天井スラブ屋外面や屋根面において施工されるため、法令(建築基準法施行令条)によって重量制限が設けられている。具体的には、屋上緑化の用土の重量は法令基準で60~180kg/m3と定められており、この基準を満たすために土壌の埋設高さを薄くせざるを得ない。そのため、植物の十分な成長を促すことが難しい場合があり、また使用できる植物の種類にも制限があった。これに対し、上述の範囲のかさ密度を示す土壌改良材を土壌に用いた改良土壌であれば、単位体積当たりの重量を小さく抑えることができるため、植物の成長に十分な環境を提供することが可能であり、しかも土壌改良材の断熱性および害虫忌避効果も発揮されるため、十分に屋上緑化を促進することができる。
【0029】
土壌全体の重量(かさ密度)を押さえつつ、植物の生育を良好に促進可能であるという観点からは、土壌1kgに対し、本発明の土壌改良材を100g以上1200g以下の範囲で用いることが好ましく、300g以上900g以下の範囲で用いることがより好ましい。ここで土壌に土壌改良材を用いるとは、所定量の土壌に対し当該土壌と当該土壌改良材を混錬して用いる態様だけではなく、所定の量の土壌に対し、その一部または全部の土壌の下層または表層に土壌改良材を積層させまたは配置させる態様を含む。
【0030】
(土壌改良材の保水性)
本発明の土壌改良材は、上述するとおり、土壌の保水性の向上にも寄与し得る。特に粒子本体を構成する部材として、発泡樹脂部材および/または木製部材を含む土壌改良材は優れた保水性を示し得る。保水性の評価はたとえば土壌改良材の重量吸水率(W%(24h))で判断することができる。保水性の観点からは、土壌改良材の重量吸水率は、100(W%(24h))以上であることが好ましく、140(W%(24h))以上であることがより好ましく、150(W%(24h))以上であることがさらに好ましい。土壌改良材の重量吸水率の上限は保水性の観点からは特に制限されないが、保水時の重量が大きくなることで土壌改良材が土壌中に沈み込むことを回避するという観点からは、500(W%(24h))以下であることが好ましく、420(W%(24h))以下であることがより好ましい。
【0031】
土壌改良材の重量吸水率(W%(24h))は、JIS K 7223-1996に規定される高吸水性樹脂の吸水量試験方法に準拠して実施される。具体的には、常温の状態にある試料である土壌改良材および試験液を準備した。試験液には、脱イオン水を用いた。上記土壌改良材を約0.5g採取し、その重量(重量a)を小数第3位まで測定した後、ティーバッグ(ナイロン製225メッシュ、10cm×20cm)に充填した。上記試験液1Lを入れたビーカーに、土壌改良材が充填された上記ティーバッグの下部約150mmを浸漬させ、その状態を24時間維持した。その後、ティーバッグの底を傾斜させた状態で10分間吊るして水切りした後、直ちに当該ティーバッグの重量b(g)を小数第3位まで計測した。
また試料を含まない上記ティーバッグのみも、上述と同様に試験液に浸漬させた後水切りし、重量c(g)を小数第3位まで計測した。そして、以下の式(1)により吸水量Wを算出した。この試験を5セット行い、得られた吸水量Wを算術平均することによって重量吸水率(W%(24h))とした。
[数1]
W=((重量b-重量c―重量a)÷重量a)×100・・・(1)
【0032】
(土壌改良材の製造方法)
本発明の土壌改良材の製造方法は特に限定されず、上述する構成の粒状物を得られる範囲において適宜に製造することができる。
たとえば本発明の土壌改良材は、発泡樹脂部材、木製部材、グラスウールおよびロックウールなどの断熱性の高い部材から選択された1種以上の部材を用いて構成された板状体などの表面に金属層が積層された断熱体を粉砕するなどして小片化することで製造される。このように製造された土壌改良材は、全ての小片が、断熱性の高い部材を含む粒子本体と上記金属層からなる金属部とを有する粒状物であってもよいし、あるいは、一部の小片が断熱性の高い部材を含む粒子本体と上記金属層からなる金属部とを有する粒状物であるとともに他の小片が金属部を有しない粒子本体のみの態様であってもよい。
【0033】
上述する断熱体は、本発明の土壌改良材を製造するために新たに製造されてもよいが、たとえば、使用済みの断熱ボードおよび断熱ボード製造時に発生する端材や不良品(以下、断熱体廃棄物ともいう)を上記断熱体として用いることもできる。断熱体廃棄物は、従来、産業廃棄物として埋め立てや焼却などにより処理されていた。かかる断熱体廃棄物が本発明を製造するための材料として用いられることによって、産業廃棄物を有効利用することができ、これによって産業廃棄物の廃棄量の低減および廃棄処理費用の削減を図ることができる。即ち、断熱体廃棄物からなる態様の本発明の土壌改良材は、緑化促進を図ることができるだけでなく、産業廃棄物の有効利用を実現可能とするため社会的貢献度が高く望ましい。
【0034】
また、異なる製造方法として、まず、小片の粒子本体を準備し、当該粒子本体に対し蒸着やスパッタなどにより金属を付与して粒子本体表面の一部または全部に金属部を成膜することで本発明の土壌改良材を得ることもできる。
【0035】
(土壌改良材の使用方法および使用環境)
本発明の土壌改良材の使用方法は特に限定されないが、たとえば土壌改良材は、土壌と混練(混合)されてもよく、土壌の下層または表層に積層されてもよく、あるいは土壌表面に散布されてもよい。本発明の土壌改良材は、金属部における光の反射によって害虫忌避効果を発揮するという観点からは、土壌改良材の少なくとも一部は土壌表面に存在することが好ましい。
また本発明の土壌改良材の使用環境は特に限定されないが、圃場、プランター、屋上緑化スペース、公園、裸地などの植物を生育させることを目的とするスペースが例示される。尚、本発明の土壌改良材が用いられる土壌とは、屋外において地盤を構成する砂、土、粘度等であってもよいし、培養土などの人工的に調製された土壌であってもよく、植物が生育する地盤となり得る土壌を広く含む。
【実施例0036】
以下に本発明の実施例について説明する。ただし以下に示す実施例は本発明を何ら制限するものではない。
【0037】
(土壌改良材の製造)
厚み約15mmの板状体である硬質ポリウレタンフォームの両面にクラフト紙とアルミニウム箔が接着剤層を介して順に積層されてなる断熱ボード(アキレスボードALN、アキレス株式会社製)を準備した。上記断熱ボードを粉砕機にて数cmの大きさに粉砕し(1次粉砕)、次いで3mm以下になるよう細かく粉砕(2次粉砕)したものを、フィルターに通して3mm以下の粒状物をふるい分ける方法で粉砕し平均粒子径3mmの、実施例1、2に用いる土壌改良材を得た。
上述する測定方法により、上述のとおり得られた土壌改良材のかさ密度(g/cm3)、熱伝導率(W/(m・K))、重量吸水率(W%(24h))を測定した。測定結果は、表1に示す。尚、土壌改良材の熱伝導率が0.06(W/(m・K))であったことから、当該土壌改良材における粒子本体の熱伝導率も0.06(W/(m・K))以下であることが確認された。
【0038】
(実施例1)
ポリプロピレン製である縦390mm、横500mm、高さ170mmの上端開口のケースを準備した。上記ケースにまず上述のとおり得た土壌改良材を厚さ15mmとなるよう敷き詰め、次いでその上に、土壌を厚さ25mmとなるよう敷き詰めて植物の生育用土壌を準備しこれを実施例1とした。尚、土壌は、株式会社ビバフォーム製の培養土(商品名;プランター培養土)を用いた。
そして上記生育用土壌にクローバーの種(株式会社サカタのタネ製)を10g/m2、表面に均等となるように播種し、ケースを日当たりの良い屋外に設置しクローバーを栽培した。尚、上述するクローバーの栽培は、2月から3月中旬までの1か月半実施した。
【0039】
(実施例2)
実施例1に用いた土壌改良材と培養土を混錬したこと以外は実施例1と同様の方法で生育用土壌を準備しこれを実施例2とした。実施例1と同様に、実施例2にクローバーの種を播種し、ケースを屋外に設置した。
【0040】
(比較例1)
比較例1として、実施例1に用いたものと同様の培養土を、厚さ40mmとなるようにケースに敷き詰めたこと以外は実施例1と同様に生育用土壌を準備し、実施例1と同様にクローバーの種を播種し、ケースを屋外に設置した。
【0041】
(植生評価)
上述する実施例1、2および比較例1に関し、播種後一か月半経過した日に、クローバーの生育状態を目視観察し以下のとおり評価した。評価結果は表1に示す。
◎:一枚一枚の葉が十分に大きく上方に盛り上がるようにクローバーが活発に生育していることが確認された。
○:一枚一枚の葉が大きくクローバーが良好に生育していることが確認された。
×:一枚一枚の葉が小さく上面視した際に土壌の露出部分が多かった。
表1に示すとおり、培養土のみを用いた比較例1では、クローバーの生育は十分ではなかったのに対し、土壌改良材を用いた実施例1、2ではクローバーが良好に生育した。これは、断熱性の高い土壌改良材を培養土とともに用いた各実施例は、2月から3月の気温の低い季節においても生育用土壌の温度が下がり過ぎることを防止し、クローバーの成長に好ましい環境を提供できたものと思われた。
【0042】
(実施例3)
クローバーを繁茂させたプランターを準備し、これを日当たりの良い屋外に設置して、自然に飛来したアブラムシ(羽虫)を当該クローバーで繁殖させ、試験用のアブラムシを得た。試験用のアブラムシが同程度付着したプランターを3つ準備した。
7月上旬に、上述する実施例2と同様に生育用土壌を準備しクローバーを播種し、ケースを日当たりの良い屋外に設置するとともに、上述するアブラムシが繁殖したクローバーが植えられたプランター1つを並列して設置した。
【0043】
(比較例2)
上述する比較例1と同様に生育用土壌を準備しクローバーを播種した。その後、培養土の表面全体をシルバーマルチフィルム(日栄産業株式会社製、商品名;三層シルバーマルチ)で覆った。シルバーマルチフィルムにはところどころに穴をあけて、クローバーの芽が上方に伸長可能とした。そして比較例2のケースを実施例3のケースの隣に設置するとともに、上述するアブラムシが繁殖したクローバーが植えられたプランター1つを並列して設置した。
【0044】
(比較例3)
上述する比較例1と同様に生育用土壌を準備しクローバーを播種した。そして比較例3のケースを実施例3のケースの隣に設置するとともに、上述するアブラムシが繁殖したクローバーが植えられたプランター1つを並列して設置した。
【0045】
(害虫忌避評価)
上述する実施例3、比較例2、3に関し、播種後三か月半経過した日に、クローバーに付いたアブラムシの幼虫、成虫(羽なし)と、成虫(羽あり)をそれぞれカウントした。結果は表2に示す。
表2に示されるとおり、培養土のみを用いた比較例3では、多数のアブラムシが発生していることが確認された。一方、培養土の表面をシルバーマルチフィルムで覆った比較例2におけるアブラムシの発生は、比較例3の半分程度に抑えられた。これに対し、土壌改良材を用いた実施例3では、シルバーマルチフィルムを用いた比較例2に比べて顕著にアブラムシの発生が抑えられた。以上のことから、光の反射効果が発揮される実施例3および比較例2では、害虫忌避効果が有意に確認されるとともに、本発明の土壌改良材を用いた実施例3は、シルバーマルチフィルムよりも顕著に優れた害虫忌避効果を発揮することが確認された。
【0046】
【0047】
【0048】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)粒状物である土壌改良材であって、
熱伝導率が1W/(m・K)未満である粒子本体と、
前記粒子本体の表面の少なくとも一部に表出している金属部と、
を備えることを特徴とする土壌改良材。
(2)前記粒子本体が、発泡樹脂部材を含み、
前記発泡樹脂部材が前記金属部を直接または間接に担持している請求項1に記載の土壌改良材。
(3)前記発泡樹脂部材が硬質ポリウレタンフォームを含み、
前記金属部がアルミニウム箔を含む請求項2のいずれか一項に記載の土壌改良材。
(4)嵩密度が、0.01g/cm3以上0.95g/cm3以下の範囲である請求項1から3のいずれか一項に記載の土壌改良材。