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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082921
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】ICタグ付き地盤アンカー
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/80 20060101AFI20230608BHJP
【FI】
E02D5/80 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196935
(22)【出願日】2021-12-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】390029012
【氏名又は名称】株式会社エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100124316
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】加来 哲也
(72)【発明者】
【氏名】早川 道洋
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041GA01
2D041GB01
2D041GC12
2D041GC14
(57)【要約】
【課題】地盤アンカーの頭部に装着されたICタグの固有の識別情報を、頭部を被覆するキャップの外部からリーダで読み取る上で、電波の送受信障害を回避し、読み取りの感度を良好にする。
【解決手段】地中に埋設される緊張材2の地表面側の頭部に接続され、外周面に雄ねじが形成され、地上に配置された金属製の定着板7に金属製のナット8で定着される金属製の頭部定着体4と、頭部定着体4を被覆し、定着板6に接触しながら、頭部定着体4に接続される金属製のキャップ5から地盤アンカー1を構成し、頭部定着体4にICタグ6を固定し、内周面に雌ねじが形成され、外周面に雄ねじが形成された非金属製のキャップナット9を頭部定着体4の雄ねじに螺合させ、キャップナット9にキャップ5を螺合させたときに、脚部5の雌ねじ部5aの下端部をナット8に接触させない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊張力を付与された状態で地中に埋設される緊張材と、この緊張材の前記地中側の先端部に接続され、前記地中に定着されるアンカー体と、前記緊張材の地表面側の頭部に接続され、外周面に雄ねじが形成され、地上に露出した状態で地上に配置された金属製の定着板に金属製のナットで定着される金属製の頭部定着体と、前記頭部定着体を被覆し、前記定着板に周方向に連続して接触しながら、前記頭部定着体に接続される金属製のキャップとを備え、
内周面に雌ねじが形成され、外周面に雄ねじが形成された非金属製のキャップナットが前記頭部定着体の前記雄ねじの、前記ナットより上側に螺合し、このキャップナットの前記雄ねじに、前記キャップの内周側に形成された雌ねじが螺合し、前記キャップナットの前記雄ねじに螺合する前記キャップの雌ねじ部の下端部は前記ナットには接触せず、前記頭部定着体にICタグが固定されていることを特徴とするICタグ付き地盤アンカー。
【請求項2】
前記キャップの前記雌ねじ部の上端部に、前記キャップナットの上面に下向きに係止し得るフランジが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のICタグ付き地盤アンカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地盤アンカーの頭部に装着されたICタグの固有の識別情報を、頭部を被覆するキャップの外部からリーダで読み取る上で、電波の送受信障害を回避し、読み取りの感度を良好にした構造のICタグ付き地盤アンカーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
先端部のアンカー体が地中に埋設された状態で設置される地盤アンカーの形式、長さ、付与した緊張力、設置年月日等の、各地盤アンカー固有の情報を設置後に確認する目的で、予め地盤アンカーにICタグを装着しておけば、設置後の確認時にリーダで情報を読み取ることができる。その結果、設置済みの地盤アンカーの耐用年数が到来したか否か等の判断を効率的にすることが可能になる(特許文献1、2参照)。
【0003】
この場合のICタグはリーダによるICタグからの反射波の受信上、地上に露出する地盤アンカーの頭部であるマンション等の頭部定着体に装着されることになる。図5に示すようにリーダでのICタグの情報の読み取り時、リーダのアンテナから発せられる電波をICタグが受けることで、記録されている情報をリーダに送り、リーダが読み取った情報を専用の端末に送信することで、端末やクラウドサーバ等での情報の一括管理が可能になる。
【0004】
リーダは頭部定着体を被覆しているキャップの外部にあり、リーダから発せられる電波は鋼材等の金属を通じてICタグに伝わるため、リーダからの電波を最初に受け取るキャップには基本的に地盤アンカーの他の構成材と同様に鋼材等の金属材料が使用されることになる。
【0005】
キャップの下端は、頭部定着体がナット等の定着材で定着される定着板(アンカープレート)に突き当たった状態で定着板に固定されるため、リーダからの往路の電波はキャップ→定着板→定着材(ナット)→頭部定着体→ICタグの順に伝わると考えられる。ICタグからの復路の反射波は同じ経路でリーダまで戻る。
【0006】
一方、頭部定着体を定着板に定着させるナットとは別に、頭部定着体に螺合させた金属製のキャップナットの雄ねじにキャップの内周面に形成された雌ねじを螺合する場合に(特許文献3参照)、頭部定着体にICタグを固定した状況を考えると、リーダからの往路の電波は定着体を経由する経路の他、キャップ→キャップナット→頭部定着体→ICタグの経路でも伝わり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-224654号公報(請求項1、段落0013~0017、0030~0044、図1図6
【特許文献2】特開2016-17354号公報(請求項1、段落0016~0022、図1図4
【特許文献3】特開2009-46817号公報(段落0018~0020、図4図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3の頭部定着体にICタグを固定した場合のように、リーダからの往路の電波と、ICタグからの復路の電波が2経路、生じ得るような場合には、特に復路の電波に、反射(乱反射)、あるいは遮蔽等の現象による減衰の影響が表れ、リーダによる受信の感度が低下する傾向にあることが確認されている。
【0009】
また特許文献3のようにキャップの雌ねじがキャップナットの雄ねじに単純に螺合する場合、雌ねじの雄ねじへの螺合のためにキャップ自体を軸回りに回転させたときに、キャップの締め過ぎが制限されていなければ、締め過ぎによりキャップの雌ねじ部分が頭部定着体を定着しているナットに接触する可能性がある。
【0010】
この場合に、キャップの締め過ぎによる雌ねじ部分のナットへの接触が生ずれば、上記したように電波が定着体を経由する経路とキャップナットを経由する経路の2経路で伝わり得るため、キャップナットとナットの接触に起因し、電波の反射や閉塞による減衰の影響がより顕著に表れると想像される。
【0011】
本発明は上記背景より、ICタグの情報をリーダで読み取る上で、データ送受信障害を回避し、読み取りの感度を良好にした構造のICタグ付き地盤アンカーを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明のICタグ付き地盤アンカーは、緊張力を付与された状態で地中に埋設される緊張材と、この緊張材の前記地中側の先端部に接続され、前記地中に定着されるアンカー体と、前記緊張材の地表面側の頭部に接続され、外周面に雄ねじが形成され、地上に露出した状態で地上に配置された金属製の定着板に金属製のナットで定着される金属製の頭部定着体と、前記頭部定着体を被覆し、前記定着板に周方向に連続して接触しながら、前記頭部定着体に接続される金属製のキャップとを備え、
内周面に雌ねじが形成され、外周面に雄ねじが形成された非金属製のキャップナットが前記頭部定着体の前記雄ねじの、前記ナットより上側に螺合し、このキャップナットの前記雄ねじに、前記キャップの内周側に形成された雌ねじが螺合し、前記キャップナットの前記雄ねじに螺合する前記キャップの雌ねじ部の下端部は前記ナットには接触せず、前記頭部定着体にICタグが固定されていることを構成要件とする。
【0013】
頭部定着体4は元々、スリーブ状の形状をし、図3に示すようにPC鋼材、繊維強化プラスチック等の緊張材2の地表面側の端部に、圧着等の手段で一体化することで、緊張材2の地表面側の頭部に接続される。頭部定着体4は外周面に雄ねじ(雄ねじ部4a)が形成されることで、地上に配置された定着板7に定着材としてのナット8で定着される。頭部定着体4の雄ねじが形成された区間が「雄ねじ部4a」である。
【0014】
「キャップナットが頭部定着体の、ナットより上側で雄ねじに螺合し」とは、図1に示すようにナット8が頭部定着体4を定着板7に定着したときに、頭部定着体4の、ナット8より上側に雄ねじ区間(雄ねじ部4a)が露出(突出)し、この露出した雄ねじ区間にキャップナット9の雌ねじ(雌ねじ部9a)が螺合することを言う。「ナットより上側」は、頭部定着体4を軸方向に見たときの相対的な上側を指す。地盤アンカー1は軸方向を鉛直方向に向けて設置されるとは限らないため、上側は鉛直方向の上側とは限らない。キャップナット9の雌ねじが形成された区間が「雌ねじ部9a」である。
【0015】
ICタグ6は頭部定着体4の上端(上面)等、雄ねじ区間(雄ねじ部4a)のナット8とキャップナット9が螺合した区間を外した部分に固定される。「キャップナットがナットより上側で頭部定着体の雄ねじに螺合すること」には、頭部定着体4の上端寄りの、ナット8より上側にキャップナット9を接続するための雄ねじ区間が確保されることと、後述のように頭部定着体4に、キャップナット9を介して間接的に接続したときのキャップ5の雌ねじ部5aの下端部をナット8に接触させないようにすることの意味がある。「雌ねじ部5a」はキャップ5の雌ねじが形成された区間を指す。
【0016】
キャップナット9の材料である「非金属製」は金属でなければ、材料を問わない趣旨である。但し、キャップナット9には図1に示すように頭部定着体4の雄ねじ部4aに螺合するための雌ねじ(雌ねじ部9a)と、キャップ5が螺合するための雄ねじ(雄ねじ部9b)がそれぞれ内周側と外周側に形成され、螺合時に生じる捩りモーメント等の応力に対し、双方との螺合状態を維持できるだけの硬さと剛性を持つ必要から、樹脂製、特に硬質プラスチック等の使用が適する。「双方」は頭部定着体4とキャップ5を指す。キャップナット9の雄ねじが形成された区間が「雄ねじ部9b」である。
【0017】
頭部定着体4とこれが定着される定着板7、並びに頭部定着体4を定着板7に定着するナット8、及び頭部定着体4とナット8を被覆するキャップ5には電波の伝播をし易くするために、鋼材、アルミニウムその他の金属材料が使用される。
【0018】
「キャップナットの雄ねじに螺合するキャップの雌ねじ部の下端部はナットには接触せず」とは、キャップ5をキャップナット9に螺合により接続し、キャップ5内部の空間を閉塞するためにキャップ5の下端部分を定着板7の上面に密着させたときに、図1に示すようにキャップ5の雌ねじ部5aの下端部分とナット8の上面等、表面との間に空隙が生じた状態にあることを言う。「雌ねじ部5aの下端部」は主に下端面であるが、必ずしもその必要はなく、下端寄りの内周面等であることもある。「ナットの上面等」は鉛直方向の上面であるとは限らず、ナット8の下面より相対的に上側を向いた面を指す。
【0019】
キャップ5は鋼製等、金属製であるから、雌ねじ部5aがナット8に接触することに起因する、特にICタグからの復路の電波に反射等による減衰の現象を生じさせないよう、キャップ5の雌ねじ部5aの下端部はナット8には接触しない状態に保たれる。キャップ5の雌ねじ部5aの下端部がナット8に接触しなければよく、非金属製のキャップナット9の下端面等がナット8に接触するか否かは問われない。
【0020】
例えばキャップナットが金属製である場合、特許文献3のようにキャップナットに鋼製のキャップが螺合したとき、キャップの外側にあるリーダからの往路と、ICタグからの復路の電波の流れとして、キャップ→定着板→ナット→頭部定着体を経由する経路の他、キャップ→キャップナット→頭部定着体を経由する経路の2経路が発生する。結果として前記のように復路の頭部定着体から伝わる電波に反射や遮蔽による減衰の影響が生じ、ICタグからの反射波のリーダによる読み取りの感度が低下する可能性がある。
【0021】
それに対し、本発明ではキャップ5を頭部定着体4に直接、螺合させるのではなく、頭部定着体4の雄ねじ部4aに螺合させたキャップナット9の雄ねじ部9bにキャップ5の雌ねじ部5aを螺合させる構造を採用した上で、キャップナット9を非金属製にすることで、キャップナット9を経由する電波の流れを生じさせなくするため、特に復路の電波に反射等による減衰が生じなくなるか、生じにくくなり、図5に示すリーダ11による読み取りの感度が良好になる。
【0022】
ICタグ6の「固定」は接着、嵌合、吸着、溶接等、地盤アンカー1の設置状態で頭部定着体4から離脱しない程度に拘束された状態に装着されることを言う。キャップ5は頭部定着体4とナット8を覆い、下端において定着板7の上面に密着した状態で、頭部定着体4に螺合したキャップナット9に雌ねじ部5aにおいて螺合する。
【0023】
「キャップナット9の雄ねじ部9bに螺合するキャップ5の雌ねじ部5aの下端部がナット8に接触しない状態」は、図1図2に示すようにキャップ5の雌ねじ部5aの上端部に、キャップナット9の上面に下向きに係止し得るフランジ5bを形成しておくことで(請求項2)、確実に得られる。「下向き」は地盤アンカーの軸方向の下方向きの意味であり、鉛直方向下方とは限らない。「キャップナット9の上面」はフランジ5bと鉛直方向等、地盤アンカーの軸方向に対向する位置にある上面であり、キャップナット9の上端面であることもある。
【0024】
「係止し得る」とは、フランジ5bの下面がキャップナット9の上面に係止する場合の他、キャップ5のキャップナット9への接続作業上、キャップ5の雌ねじ部5aをキャップナット9の雄ねじ部9bに螺合させ、キャップ5をキャップナット9に接続した状態にしたときに、フランジ5bの下面がキャップナット9の上面に係止しない場合を含む趣旨であり、フランジ5bの下面はキャップナット9の上面に必ずしも係止しなくてもよい。
【0025】
雌ねじ部5aのフランジ5bはキャップ5の内周面に周回して(連続して)形成されている必要はなく、図2に示すように周方向に部分的に、間隔を置いて形成されることもある。雌ねじ部5aの下端部を周方向に均等にナット8に接触させないようにする上では、少なくとも図4-(c)に示すように軸に直交する断面上、中心に関して対称位置に2箇所、形成されていればよい。
【0026】
キャップ5の頭部定着体4への接続は、キャップ5の雌ねじ部5aをキャップナット9の雄ねじ部9aに螺合させながら、キャップ5の下端が定着板7に密着した状態を確認することで、完了させることができる。但し、キャップ5下端が定着板7上面に接触しただけでは、両者間での水密(液密)性が十分でないこともあり、キャップ5内に充填される防錆剤の漏れを防止する上で不完全なこともある。
【0027】
そこで、水密性が十分に確保されるまで、キャップ5下端を定着板7に密着させようとすると、キャップナット9への螺合のためのキャップ5の回転が過剰になることがあり、結果的にキャップ5の雌ねじ部5aの下端部がナット8に接触する可能性がある。キャップ5の下端部がナット8に接触すれば、上記のように復路の電波の反射等による減衰によりリーダ11による読み取りの感度が低下する原因になる。
【0028】
それに対し、上記のようにキャップ5の雌ねじ部5aの上端部に、ストッパとして機能し得るフランジ5bが形成されていることで(請求項2)、キャップ5を、一定回転数を超えて回転させようとしても、キャップ5の軸方向下向きへの移動が阻止され、回転を阻止することができる。この結果、キャップ5の過剰な回転によるキャップ5の雌ねじ部5a下端部の、ナット8への接触が回避され、リーダ11による読み取りの感度への影響が回避される。フランジ5bはこのように、キャップ5下端を定着板7に密着させようとするときに、キャップ5の過剰な回転を確実に防止する意味がある。
【0029】
キャップ5の一定量を超える回転(締め過ぎ)が防止されることで、キャップ5下端の定着板7上面への過剰な密着状態も回避されるため、密着状態でのキャップ5本体への過剰な変形(撓み)と過大な応力の発生も回避される。「過剰な密着状態」はキャップ5下端と定着板7上面とが互いに過大な圧縮力を及ぼし合った状態を言う。特許文献3ではキャップナットを有するものの、キャップの締め過ぎを防止する構造にはなっていないため、キャップの雌ねじがナットに接触することを回避する効果と、キャップの撓みを防止する効果は期待されない。
【0030】
請求項2ではキャップ5下端の定着板7上面への過剰な密着状態が回避されることで、フランジ5bの形成位置を調整(設定)しておくことで、キャップ5下端を定着板7上面に適度の圧力で密着させることが可能になる。この結果、キャップ5本体の変形と過大応力が防止され、キャップ5自体の寿命を長期化させることも可能になる。
【発明の効果】
【0031】
内周面に雌ねじが形成され、外周面に雄ねじが形成された非金属製のキャップナットを頭部定着体の雄ねじの、ナットより上側に螺合させ、キャップナットの雄ねじに、キャップの内周側に形成された雌ねじ部を螺合させたときに、キャップナットの雄ねじに螺合するキャップの雌ねじ部の下端部をナットには接触させないため、キャップナットを経由する電波の流れを生じさせなくすることができる。この結果、特に復路の電波に反射による減衰が生じなくなるか、生じにくくなるため、リーダによる読み取りの感度を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】ICタグ付き地盤アンカーの頭部定着体を定着板に定着し、キャップで被覆した様子を示した縦断面図である。
図2図1のキャップの一部を切り欠き、キャップの内部を示した斜視図である。
図3】地盤アンカーの地中への設置状態を示した斜視図である。
図4】(a)は図1に示す地盤アンカーのキャップの製作例を示した立面図、(b)は(a)の底面図、(c)は(a)のx-x線断面図、(d)は(c)のy-y線断面図である。
図5】地盤アンカーのICタグの情報をリーダで読み取り、リーダがICタグから読み取った情報を専用の端末やクラウドサーバ等に送信する状況を示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1図3に示すように緊張力を付与された状態で地中に埋設されるPC鋼材等の緊張材2と、緊張材2の地中側の先端部に接続され、地中に定着されるアンカー体3と、緊張材2の地表面側の頭部に接続され、ICタグ6が固定された金属製の頭部定着体4と、頭部定着体4を被覆する金属製のキャップ5とを備えたICタグ付き地盤アンカー1の頭部定着体4寄りの部分の構成例を示す。
【0034】
頭部定着体4は基本的に円柱形状をし、外周面には雄ねじが形成され、頭部定着体4は地上に露出した状態で地上に配置された金属製の定着板7に金属製のナット8で定着される。頭部定着体4の雄ねじが形成された軸方向の区間が雄ねじ部4aである。頭部定着体4と定着板7、並びにナット8とキャップ5は主に鋼製であるが、接触する部材間での電波の伝播状態が低下しない限り、金属の材料は問われない。
【0035】
定着板7は図1図3に示すように地表に面する状態で構築、もしくは設置される鉄筋コンクリート造、またはプレキャストコンクリート製等の、ブロック状の構造体10、または版状の構造材の表面に設置される。ICタグ6は図1に示すように頭部定着体4の上面等、頭部定着体4の、ナット8とキャップナット9が螺合する区間以外の部分に接着その他の手段で固定されている。
【0036】
頭部定着体4の雄ねじ部4aには、図1に示すように内周面に雌ねじが形成され、外周面に雄ねじが形成された、樹脂製等の非金属製のキャップナット9がナット8より上側に螺合する。キャップナット9内周面の雌ねじの形成区間が雌ねじ部9aであり、外周面の雄ねじの形成区間が雄ねじ部9bである。
【0037】
キャップナット9の雄ねじ部9bに、キャップ5の内周側に形成された雌ねじ部5aが螺合する。キャップ5の雌ねじ部5aはキャップ5の下端が定着板7の上面に密着したときに、キャップナット9の雄ねじ部9bの区間に対応した区間に形成される。
【0038】
頭部定着体4の雄ねじ部4aは定着板7より上面側へ突出し、ナット8が螺合する区間から、少なくともキャップナット9が螺合する区間まで形成されていればよい。キャップ5の雌ねじ部5aがキャップナット9の雄ねじ9aに螺合しきり、キャップ5がキャップナット9に完全に接続されたとき、雌ねじ部5aの下端部はナット8には接触しない。
【0039】
キャップ5は図1図4-(c)に示すように軸方向の一方側が開放しながら、他方側が閉塞した、内部が空洞の筒形状をし、開放した下端部が定着板7の上面に密着したときに、内部にナット8とキャップナット9が収容される。キャップ5内周面の、キャップナット9の雄ねじ部9bの形成区間に対応した区間に、雄ねじ部9bに螺合する雌ねじ部5aが形成される。キャップナット9の雄ねじ9bと、キャップ5の雌ねじ部5aは軸方向の全長に形成されている必要はない。
【0040】
図2は周方向と軸方向の一部に切り欠いたキャップ5の内部を示している。ここではキャップ5の雌ねじ部5aがキャップナット9の雄ねじ部9bに完全には螺合しておらず、キャップ9の下端が定着板7の上面には密着していない状況を示している。図2ではまた、頭部定着体4にICタグ6は固定されていない。
【0041】
キャップ5の下端部には、定着板7の上面に密着し、キャップ5の内部に充填される防錆剤の漏れを防止する水密材51が周方向に連続して装着されるための溝5cが、図4-(b)、(c)に示すように下方が開放した状態で形成されている。また(c)に示すようにキャップ5のキャップナット9との接続区間を除いた部分の下方寄りに、内部に防錆剤を注入するための注入口5dが形成され、上端等、上方寄りに内部に充填された防錆剤を排出するための排出口5eが形成される。
【0042】
図4に示すキャップ5の製作例では注入口5dを軸方向の雌ねじ部5aの区間に近い部分に形成している関係で、(b)、(d)に示すように軸に直交する断面上、中心を通る線(中心線)に関して線対称に2箇所、注入口5dを通らない位置に雌ねじ部5a、5aを形成している。
【0043】
この場合、雌ねじ部5a、5aは中心を挟んだ位置に、キャップ5の回転方向である周方向に連続した周長を持って形成されることで、キャップナット9に対して安定させた状態でキャップ5を回転させ、キャップナット9の雄ねじ部9bに雌ねじ部5aを螺合させることができる。
【0044】
キャップ5の雌ねじ部5aがキャップナット9の雄ねじ9bに螺合しきり、キャップ5がキャップナット9に接続されたとき、雌ねじ部5aの下端部がナット8に接触しないよう、雌ねじ部5aの下端部の位置が決められる。
【0045】
キャップナット9は非金属製であるため、キャップナット9の下端部がナット8に接触するか否かは問われない。但し、キャップナット9の下端部がナット8に接触する場合に、キャップ5の雌ねじ部5aがキャップナット9の雄ねじ部9bに上側から螺合する場合、キャップ5の雌ねじ部5aの区間はキャップナット9の雄ねじ部9bの区間より短く、雌ねじ部5aの下端部はナット8に接触しない状態になる。
【0046】
キャップ5は軸回りに回転させられることで、雌ねじ部5aがキャップナット9の雄ねじ部9bに螺合するが、キャップ5が過剰に回転させられる結果として、キャップ5の雌ねじ部5aから下方の区間を曲げ変形させ、キャップ5に過大な応力を生じさせる可能性がある。このような事態を回避するために、キャップ5が過剰に回転させられないよう、図1図2に示すように雌ねじ部5aの上端部に、キャップナット9の上端面等、上面に下向きに係止し得る、ストッパとして機能するフランジ5bが形成されている。
【0047】
前記のように雌ねじ部5a、5aが軸に直交する断面上、中心を挟んだ線対称位置の2箇所に形成された場合、雌ねじ部5aが周方向に連続して周回する場合より、雌ねじ部5a、5aを雄ねじ部9bに合致させ易いため、雄ねじ部9bに螺合させ易くなり、螺合の確実性と正確性が増す。この結果、間接的ではあるが、キャップ5の雌ねじ部5aの下端部をナット8に接触させない状況を確実に、正確に得ることができる。
【0048】
図5は頭部定着体4に固定されたICタグ6の情報をキャップ5の外部からリーダ11が読み取り、読み取った情報を専用の端末12に送信し、端末12からクラウドサーバに送信し、クラウドサーバで情報を一括管理する状況を示している。端末12とクラウドサーバとの間ではデータの送受信が可能で、クラウドサーバに蓄積されたデータを端末12で読み取り、個別に確認することもできる。
【符号の説明】
【0049】
1……地盤アンカー、
2……緊張材、3……アンカー体、4……頭部定着体、4a……雄ねじ部、
5……キャップ、5a……雌ねじ部、5b……フランジ、5c……溝、51……水密材、5d……注入口、5e……排出口、
6……ICタグ、
7……定着板、8……ナット、
9……キャップナット、9a……雌ねじ部、9b……雄ねじ部、
10……構造体、
11……リーダ、12……端末。
図1
図2
図3
図4
図5