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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082927
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/2746 20220101AFI20230608BHJP
【FI】
H02K1/2746
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196944
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】津田 敏宏
(72)【発明者】
【氏名】深見 正
(72)【発明者】
【氏名】加藤 史也
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA01
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA09
5H622CA14
5H622CB05
5H622PP03
5H622PP19
(57)【要約】
【課題】自己始動可能な低コストの回転電機を提供する。
【解決手段】回転電機2は、ステータ10と、ステータ10に対して回転するロータ12と、を備える。ステータ10は、P極および2P極の回転磁界を発生させるための巻線22,24を含む。ロータ12は、そのロータコア30により構成される周方向に並ぶP個の磁気的突極を有するとともに、周方向に並ぶ2P個の磁極を有する。ロータコア30は、塊状ロータコアである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、
前記ステータに対して回転するロータと、
を備え、
前記ステータは、P極および2P極の回転磁界を発生させるための巻線を含み、
前記ロータは、そのロータコアにより構成される周方向に並ぶP個の磁気的突極を有するとともに、周方向に並ぶ2P個の磁極を有し、
前記ロータコアは、塊状ロータコアである回転電機。
【請求項2】
ステータと、
前記ステータに対して回転するロータと、
を備え、
前記ステータは、P極および2P極の回転磁界を発生させるための巻線を含み、
前記ロータは、円環部と、当該円環部から延びる周方向に並ぶP個の突極とを有するロータコアを含むとともに、周方向に並ぶ2P個の磁極を有し、
前記円環部は、積層体であり、
前記突極は、塊状突極、または、積層数が前記円環部よりも少ない積層体である回転電機。
【請求項3】
前記ロータは、マグネットによって形成されるP個の磁極と、前記ロータコアによって形成されるP個の磁極とを有するコンシクエントポール型のロータである請求項1または2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記マグネットは、前記ロータコアの表面に配置され、
前記マグネットと対向する前記ロータコアの表面の部分には、切り欠きが形成される請求項3に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導電動機と同期電動機の特性を併せ持ち、インバータを用いずに電源から始動できる自己始動形の回転電機が知られている。従来では、ロータがかご形導体を備え、そこに誘導電流を流すことによってロータを始動させる回転電機が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-37126号公報
【特許文献2】特開平10-336927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の回転電機では、ロータがかご形導体を備えており、ロータの構造が複雑となっている。これは、ロータひいては回転電機の製造コストの低減の妨げとなる。
【0005】
本発明はかかる状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、自己始動可能な低コストの回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の回転電機は、ステータと、ステータに対して回転するロータと、を備える。ステータは、P極および2P極の回転磁界を発生させるための巻線を含む。ロータは、そのロータコアにより構成される周方向に並ぶP個の磁気的突極を有するとともに、周方向に並ぶ2P個の磁極を有する。ロータコアは、塊状ロータコアである。
【0007】
本発明の別の態様もまた、回転電機である。この回転電機は、ステータと、ステータに対して回転するロータと、を備える。ステータは、P極および2P極の回転磁界を発生させるための巻線を含む。ロータは、円環部と、当該円環部から延びる周方向に並ぶP個の突極とを有するロータコアを含むとともに、周方向に並ぶ2P個の磁極を有する。円環部は、積層体であり、突極は、塊状突極、または、積層数が円環部よりも少ない積層体である。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のある態様によれば、自己始動可能な低コストの回転電機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る回転電機システムの模式図である。
図2図1の回転電機の始動特性のシミュレーション結果を示す図である。
図3図1の回転電機の回転速度に対するトルク変化のシミュレーション結果を示す図である。
図4】変形例に係る回転電機システムの模式図である。
図5図4のA-A線断面図である。
図6】別の変形例に係る回転電機システムの模式図である。
図7】さらに別の変形例に係る回転電機のロータの断面図である。
図8図8(a)、(b)はそれぞれ、図7のロータを備える回転電機の断面図である。
図9】さらに別の変形例に係る回転電機202の断面図である。
図10図9のロータを軸方向に見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して示す。
【0012】
図1は、実施の形態に係る回転電機システム1の模式図である。回転電機システム1は、特に限定されないが、例えば、ファン、ポンプ、コンプレッサ、その他の一般産業機械に使用される。回転電機システム1は、自己始動型の回転電機2と、回転電機2を制御する制御装置4と、を備える。回転電機2は、回転軸Rに垂直な断面が示されている。
【0013】
回転電機2は、ステータ10と、ステータ10に対して回転軸Rを中心として回転するロータ12と、を備える。
【0014】
以降、ロータ12の回転軸Rに平行な方向を軸方向とし、回転軸Rに垂直な平面上で回転軸Rを通る任意の方向を径方向とし、径方向において回転軸Rに近い側を内周側、遠い側を外周側とし、回転軸Rに垂直な平面上において回転軸Rを中心とする円の円周に沿った方向を周方向として説明する。
【0015】
ステータ10は、ステータコア20と、始動用の巻線である第1巻線22と、同期運転用の巻線である第2巻線24と、を含む。ステータコア20は、円環部26とそこから径方向内側に延びる複数(ここでは48)のティース28とを含む。ステータコア20は、例えば、複数枚の電磁鋼板を積層することにより形成される。
【0016】
周方向に隣り合うティース28の間のスロット29には、分布巻または集中巻により第1巻線22および第2巻線24が配置される。第1巻線22は、特に限定されないが3相巻線であり、P(P≧2)極(例えば4極)の回転磁界を発生するよう結線されている。第2巻線24は、特に限定されないが3相巻線であり、2P極(例えば8極)の回転磁界を発生するよう結線されている。
【0017】
第1巻線22と第2巻線24の径方向の位置関係は特に問わない。したがって、図示の例のように第1巻線22が第2巻線24よりも径方向外側に配置されてもよいし、図示の例とは異なり第1巻線22が第2巻線24よりも径方向内側に配置されてもよい。
【0018】
ロータ12は、ロータコア30と、P(ここでは4)個のマグネット32と、を含む。ロータコア30は、いわゆる塊状鉄心である。つまり、ロータコア30は塊状体である。本明細書において「塊状体」は、継ぎ目の無いひと塊の部材をいう。したがって、塊状体は、非積層体であり、非接合体でもある。ロータコア30は、磁性を有する材料、例えばS45Cなどの炭素鋼で形成される。ロータコア30は、円環部34とそこから径方向外側に突出するP個の突部36と、を含む。P個すなわち複数の突部36は、周方向に等間隔に設けられる。ロータコア30の中心部には、回転軸6がはめ込まれている。
【0019】
マグネット32は永久磁石である。マグネット32は、断面が円弧状の板状に形成される。マグネット32は、突部36と突部36の間におけるロータコア30の外周面(すなわち円環部34の外周面34a)に例えば接着剤により固定される。マグネット32は、ステータコア20のティース28と径方向に対向する。マグネット32がロータコア30の外周面(すなわち表面)に固定されるため、そうではない場合と比べて製造は容易である。
【0020】
突部36およびマグネット32は、特に限定しないが、回転軸Rを中心とする同一曲率半径の円弧状の外周面を有する。すなわち、突部36の外周面とマグネット32の外周面は面一になっている。
【0021】
ロータコア30は、空気より高い透磁率を有する。永久磁石であるマグネット32は、一般的に、空気とほぼ同じ透磁率を有する。したがって、ロータコア30は、径方向外側に向かって磁束が流れやすい部分であるP個の磁気的突極であって、突部36により構成されるP個の磁気的突極を有する。
【0022】
P個のマグネット32は、外周側が互いに同一の極性(ここではN極)となるように着磁されている。マグネット32の磁束は、円環部34を経由して突部36に流入し、径方向外側に向かって突部36を通過する。これにより、突部36は、マグネット32の外周側とは反対の極性(ここではS極)の磁極として機能する。つまり、本実施の形態のロータ12は、突部36をマグネット32の外周側とは反対の極性の磁極として機能させたコンシクエントポール型のロータであり、マグネット32によるP個の磁極と突部36によるP個の磁極との計2P個の磁極を有する。
【0023】
マグネット32と径方向に対向するロータコア30の円環部34の外周面(表面)34aには、1つまたは複数の切り欠き(溝)34bが形成される。切り欠き34bは、好ましくは、図示のように軸方向に延在する。切り欠き34bが設けられることにより、円環部34の外周面34aに渦電流が発生するのを抑止でき、マグネット32が発熱するのを抑止できる。
【0024】
制御装置4は、回転電機2に駆動電流を供給してロータ12の回転を制御する。具体的には、制御装置4は、ステータ10の第1巻線22および第2巻線24に駆動電流を供給する。制御装置4は、典型的には駆動回路を含みうる。制御装置4はインバータを含んでもよい。いずれにせよ、制御装置4の構成は特に限定されない。
【0025】
以上が回転電機システム1の基本構成である。続いてその動作を説明する。制御装置4は、ロータ12が停止している状態において、第1巻線22への駆動電流の供給を開始する。駆動電流が第1巻線22を流れることにより、ティース28に沿ってP極の回転磁界が発生する。このP極の回転磁界により突部36の外周面36aに渦電流が流れて誘導トルクが発生し、ロータ12が始動する。
【0026】
制御装置4は、ロータ12の回転速度がP極の回転磁界の回転速度の半分程度に達すると、第1巻線22への電力の供給を停止してP極の回転磁界の発生を停止させる一方で、第2巻線24への駆動電流の供給を開始する。駆動電流が第2巻線24を流れることにより、ティース28に沿ってさらに2P極の回転磁界が発生する。この2P極の回転磁界によってマグネット32および突部36にトルクが与えられ、ロータ12は同期速度で回転する。第1巻線22への駆動電流の供給の停止と、第2巻線24への駆動電流の供給の開始とは、実質的に同時に行われてもよいし、第1巻線22への駆動電流の供給を停止してから遅滞なく第2巻線24への駆動電流の供給を開始してもよいし、第2巻線24への駆動電流の供給を開始してから遅滞なく第1巻線22への駆動電流の供給を停止してもよい。
【0027】
続いて本発明者らは、本実施の形態に係る回転電機システム1によれば自己始動可能であり、かつ、安定して同期化できることを確かめるため、以下の条件でシミュレーションを行った。
<ステータ10>
・ステータコア20の外径:160mm
・ステータコア20の内径:100mm
・ステータコア20とロータコア30との間の空隙:0.40mm
・ステータコア20のスタック長(軸方向長さ):50.0mm
・ステータコア20のスロット29の数:48
<ロータ12>
・ロータコア30の外径:99.2mm
・ロータコア30の内径:38.0mm
・マグネット32の外周面の周方向の長さ:4.30
・ロータコア30のスタック長(軸方向長さ):50.0mm
【0028】
図2は、回転電機2の始動特性のシミュレーション結果を示す図である。図2において、横軸は時間であり、縦軸は回転電機2のロータ12の回転速度である。
【0029】
図2により、ロータ12が停止している状態において第1巻線22に通電してP極の回転磁界を発生させると、ロータ12は回転し始めることが分かる。
【0030】
また、ロータ12の回転速度がP極の回転磁界の回転速度の半分程度(ここでは900min-1)に達するタイミングで第1巻線22によるP極の回転磁界から第2巻線24による2P極の回転磁界に切り替えると、その直後はロータ12の回転速度が多少は変動するが、次第に同期速度に向かって収束していくことが分かる。
【0031】
図3は、回転電機2の回転速度に対するトルク変化のシミュレーション結果を示す図である。図3において、横軸は回転電機2のロータ12の回転速度であり、縦軸はロータ12に発生する誘導トルクである。図3より、誘導トルクは回転速度が0~900min-1の範囲で20Nm以上であり、ロータ12を加速するのに十分な誘導トルクが得られていることが分かる。
【0032】
以上説明した本実施の形態によれば、自己始動可能な回転電機2であって、従来の回転電機のようなかご形導体を有しない簡素な構造の回転電機2を実現できる。これにより、回転電機2の製造コストを低減できる。
【0033】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下変形例を示す。
【0034】
(変形例1)
図4は、変形例に係る回転電機システム1の模式図である。図4図1に対応する。実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0035】
本変形例では、ロータコア30のP個の突部36は、円環部34とは別体として形成され、円環部34に接合されている。接合方法は、特に限定されず、例えば機械的に接合されてもよい。図示の例では、突部36の内周側に設けられた断面が略T字状の係合突起36bが、円環部34の外周側に設けられた穴34cにスライド嵌合することにより、接合されている。穴34cは、係合突起36bに対応する形状(すなわち相補的な形状)を有していればよい。
【0036】
図5は、図4のA-A線断面図である。円環部34は積層体である。特に限定されないが、図示の例では積層数が24である。円環部34は、例えば複数枚の電磁鋼板を積層することにより形成される。
【0037】
突部36は、図示のように円環部34よりも積層数が少ない積層体、あるいは塊状体(積層数が1の積層体と捉えることもできる)である。特に限定されないが、図示の例では積層数が3である。
【0038】
突部36の外周面36aには、周方向に延びる溝36cが設けられていてもよい。これにより、突部36に外周面36aに流れる電流を制限して過熱を防止できる。なお、溝36cは、図示の例には限定されない。
【0039】
本変形例によれば、突部36を円環部34と同じ積層数の積層体にする場合と比べて、突部36の外周面36aにより多くの渦電流が流れ、したがって、より高い誘導トルクが発生し、ロータ12を始動させることができる。
【0040】
また、マグネット32の内側にまで渦電流が流れるとマグネット32が加熱され、例えばマグネット32が接着剤でロータコア30に固定されている場合にはマグネット32が外れるおそれがある。これに対し、本変形例では、円環部34は積層体であるため、円環部34の外周面34aに渦電流が発生するのを抑止でき、マグネット32が加熱されるのを抑止できる。
【0041】
(変形例2)
図6は、別の変形例に係る回転電機システム1の模式図である。図6図1に対応する。実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0042】
ロータ12は、ロータコア30と、P(ここでは4)組のマグネット32と、を含む。ロータコア30は、円環状に形成される。ロータコア30には、径方向に2重に並んだマグネット収容孔30aのセットが、周方向に間隔をあけてP組形成されている。
【0043】
マグネット32は、断面が矩形状の軸方向に長い板状に形成される。マグネット32は、ロータコア30のマグネット収容孔30aに収容され、例えば接着剤によりそこに固定される。なおマグネット32の形状は特に限定されず、断面が円弧状に形成されてもよい。
【0044】
マグネット収容孔30aの両端部30bは、ロータコア30の外周面に向かって延びており、隣り合うマグネット32の間の漏れ磁束を抑制するフラックスバリアを構成している。
【0045】
再掲するが、ロータコア30は、空気より高い透磁率を有し、永久磁石であるマグネット32は、一般的に、空気とほぼ同じ透磁率を有する。したがって、ロータコア30の外周側における、マグネット収容孔30aが形成されていない周方向の領域(点線で囲んだ領域)30cは、マグネット収容孔30aが形成されている周方向の領域(一点鎖線で囲んだ領域)30dよりも磁束が流れやすくなっており、磁気的突極を構成する。つまり、本変形例のロータ12も周方向にP個の磁気的突極を有する。
【0046】
本変形例では、駆動電流が第1巻線22を流れることによりティース28に沿ってP極の回転磁界が発生すると、ロータコア30の外周面30eのうち、磁気的突極を構成する領域30dの外周側の部分に渦電流が流れて誘導トルクが発生し、ロータ12が始動する。
【0047】
本変形例によれば、実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。また、本変形例によれば、マグネット32をロータコア30に埋め込んだことにより、遠心力によってマグネット32がロータコア30から剥がれるのを抑止できる。また、マグネット32の外周面に渦電流が発生するのを抑止でき、マグネット32が発熱するのを抑止できる。
【0048】
なお図6では、マグネット収容孔30aおよびマグネット32がそれぞれ径方向に2重に並んだ例を説明したが、さらなる変形例として、マグネット収容孔30aおよびマグネット32は径方向には1つのみ設けられてもよいし、3重以上並んでもよい。
【0049】
(変形例3)
図7は、さらに別の変形例に係る回転電機2のロータ12の断面図である。図7は、ロータ12を回転軸Rを含む平面で切断した断面図である。図7ではステータ10の表示を省略している。図8(a)、(b)はそれぞれ、回転電機2の断面図であり、図7のB-B線断面図、C-C線断面図に相当する。
【0050】
本変形例のロータ12は、軸方向に並ぶ、第1ロータ部112Aと、第2ロータ部112Bと、を含む。
【0051】
第1ロータ部112Aは、第1ロータコア130Aを含む。第1ロータコア130Aは、円環部134Aと、そこから径方向外側に突出するP(例えば4)個の突部136Aと、を含む。P個すなわち複数の突部136Aは、周方向に等間隔に設けられる。第1ロータコア130Aは、実施の形態のロータコア30と同様に、塊状体である。あるいは、第1ロータコア130Aは、変形例1のロータコア30と同様に、円環部134Aと突部136Aとが別体として形成され、円環部134Aは積層体であり、突部136Aは円環部よりも積層数が少ない積層体である。
【0052】
第2ロータ部112Bは、第2ロータコア130Bと、2P個のマグネット32と、を含む。第2ロータコア130Bは円環状に形成される。2P個のマグネット32は、外周側の磁極が周方向に交互に変わるように着磁されている。なお、2P個のマグネット32は、第2ロータコア130Bに埋め込まれてもよい。いずれにせよ、第2ロータ部112Bは、磁気的突極を有しないように構成される。第2ロータコア130Bは、例えば、複数枚の電磁鋼板を積層することにより形成される。
【0053】
本変形例のステータ10は、軸方向に並ぶ、第1ステータ部10Aと、第2ステータ部10Bと、を含む。第1ステータ部10Aは、第1ステータコア20Aと、第1巻線22と、を含む。第1ステータコア20Aは、第1円環部26Aとそこから径方向内側に延びる複数(ここでは48)の第1ティース28Aとを含む。第1ステータコア20Aは、例えば、複数枚の電磁鋼板を積層することにより形成される。第1巻線22は、特に限定されないがここでは3相巻線であり、P極の回転磁界を発生するよう結線されている。
【0054】
第2ステータ部10Bは、第2ステータコア20Bと、第2巻線24と、を含む。第2ステータコア20Bは、第2円環部26Bとそこから径方向内側に延びる複数(ここでは48)の第2ティース28Bとを含む。第2ステータコア20Bは、例えば、複数枚の電磁鋼板を積層することにより形成される。第2巻線24は、特に限定されないがここでは3相巻線であり、2P極の回転磁界を発生するよう結線されている。
【0055】
本変形例では、ロータ12が停止している状態において第1ステータ部10Aの第1巻線22に駆動電流を供給してP極の回転磁界を発生させると、第1ステータ部10Aの第1ステータコア20Aの突部136Aの外周面に渦電流が流れて誘導トルクが発生し、第1ロータ部12Aひいてはロータ12が始動する。ロータ12の回転速度がP極の回転磁界の回転速度の半分程度まで加速した状態において第2巻線24に駆動電流を供給して2P極の回転磁界を発生させると、その2P極の回転磁界と第2ロータ部12Bの2P個の磁極との磁気的な相互作用により、第2ロータ部12Bひいてはロータ12が同期速度で回転する。
【0056】
本変形例によれば、実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0057】
なお、本変形例では、ステータ10およびロータ12をそれぞれ軸方向に2つに分割したが、軸方向に3つ以上に分割してもよい。例えば、ステータ10およびロータ12を軸方向に3つに分割してもよく、その場合、軸方向における中央のロータ部を第1ロータ部12Aと同様に構成し、その両側のロータ部を第2ロータ部12Bと同様に構成してもよい。もちろん、中央のロータ部を第2ロータ部12Bと同様に構成し、その両側のロータ部を第1ロータ部12Aと同様に構成してもよい。
【0058】
(変形例4)
図9は、さらに別の変形例に係る回転電機202の断面図である。図9は、回転電機202を回転軸Rを含む平面で切断した断面図である。図10は、図9のロータ212を軸方向に見た図である。本変形例の回転電機202は、いわゆるアキシャルギャップ型の回転電機である。回転電機202は、2つのステータ210と、2つのステータ210の間に設けられるロータ212と、を備える。
【0059】
ステータ210には、図示しない巻線が配置されており、P極および2P極の回転磁界を発生させる。なお、巻線が分布巻きであるか集中巻きであるかは問わない。
【0060】
ロータ212は、円環状のロータコア230と、複数のマグネット232と、を含む。ロータコア230は、実施の形態のロータコア30に対応する。具体的には、ロータコア230は、いわゆる塊状鉄心であり、磁性を有する材料、例えばS45Cなどの炭素鋼で形成される。ロータコア230には、軸方向にロータコア230を貫通する複数のマグネット収容孔230aが周方向に等間隔に形成されている。マグネット232は、マグネット収容230aに収容される。複数のマグネット232の着磁方向は軸方向であり、着磁の向きはすべて同一である。マグネット収容孔230aが形成されていない周方向の領域(点線で囲んだ領域)230cは、マグネット収容孔230aが形成されている周方向の領域よりも磁束が流れやすくなっており、磁気的突極を構成する。
【0061】
本変形例によれば、実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0062】
(変形例5)
実施の形態および変形例1、2では、ステータ10が第1巻線22および第2巻線24を備える場合、すなわちの巻線が二重巻線である場合について説明したが、これには限定されず、巻線は単一巻線であってもよい。この場合、接続を切り替えることで、発生させる回転磁界の極数を切り替えればよい。巻線が単一巻線である場合、構造がよりシンプルになる。
【0063】
(変形例6)
実施の形態および上述の変形例では、いわゆるインナーロータ型の回転電機について説明したが、これに限られず、いわゆるアウターロータ型の回転電機に本実施の形態および上述の変形例の技術思想を適用してもよい。
【0064】
上述した実施の形態および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0065】
1 回転電機システム、 10 ステータ、 12 ロータ、 22 第1巻線、 24 第2巻線。
図1
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