(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082949
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】複層フィルム、粘着フィルム、および半導体製造工程用粘着フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20230608BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230608BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20230608BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20230608BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/00 M
C09J7/38
C09J7/29
H01L21/78 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196989
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】503048338
【氏名又は名称】ダイヤプラスフィルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】川口 祐二
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
5F063
【Fターム(参考)】
4F100AK04B
4F100AK06B
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK12B
4F100AL09B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CB05C
4F100GB41
4F100JA04A
4F100JK07
4F100JK08
4F100YY00A
4F100YY00B
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA03
4J004CA04
4J004CB03
4J004CC03
4J004CE01
4J004FA08
5F063AA07
5F063AA13
5F063AA18
5F063DD67
5F063EE02
5F063EE04
5F063EE05
5F063EE07
5F063EE08
5F063EE13
5F063EE22
5F063EE27
5F063EE42
5F063EE44
5F063EE73
(57)【要約】
【課題】
本発明の課題は、十分な耐熱性を有し、取扱い性や柔軟性にも優れる複層フィルムを提供することにある。
【解決手段】
表層にポリプロピレン系樹脂を含有し、表層に隣接する層にポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂およびスチレン系エラストマーを含有し、以下の条件を満たし、且つ引張弾性率が200MPa以下であることを特徴とする複層フィルム。
<条件>
表層を構成する樹脂100質量%中のポリプロピレン系樹脂の含有量>表層に隣接する層を構成する樹脂100質量%中のポリプロピレン系樹脂の含有量
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層にポリプロピレン系樹脂を含有し、
表層に隣接する層にポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂およびスチレン系エラストマーを含有し、
以下の条件を満たし、且つ引張弾性率が200MPa以下であることを特徴とする複層フィルム。
<条件>
表層を構成する樹脂100質量%中のポリプロピレン系樹脂の含有量>表層に隣接する層を構成する樹脂100質量%中のポリプロピレン系樹脂の含有量
【請求項2】
前記ポリエチレン系樹脂が低密度ポリエチレンである、請求項1に記載の複層フィルム。
【請求項3】
前記スチレン系エラストマーのスチレン成分含有率が20質量%以下である、請求項1又は2に記載の複層フィルム。
【請求項4】
表層に含まれるポリプロピレン系樹脂の結晶融解ピークが120℃以上である、請求項1~3のいずれかに記載の複層フィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の複層フィルムの少なくとも片方の面に粘着層を有する、粘着フィルム。
【請求項6】
請求項5に記載の粘着フィルムを用いた半導体製造工程用粘着フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程で使用される粘着フィルム(テープ)、看板、自動車等へ意匠性を付与するために貼り付けされるステッカー、ラベル及びマーキングフィルム等の化粧用粘着フィルム(テープ)、又は化粧シート等の基材として好適に用いられる複層フィルム、当該複層フィルムを用いた粘着フィルム及び半導体製造工程用粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工程で使用される粘着フィルム(テープ)、看板、自動車等へ意匠性を付与するために貼り付けされるステッカー、ラベル及びマーキングフィルム等の化粧用粘着フィルム(テープ)、化粧シート等には、着色性、加工性、耐傷付き性、耐候性等が優れるポリ塩化ビニル樹脂製のフィルム(以下、「PVC系フィルム」ともいう。)が基材として多用されてきた。
【0003】
上記PVC系フィルムは、それ自体剛性を有しているが、粘着フィルムとして機能し得るよう、柔軟性付与の目的で可塑剤が添加される。しかしながら、用いる可塑剤によっては、粘着剤との相溶性が悪く、粘着フィルムとした場合に安定性が悪く、可塑剤のブリードアウトが著しくなるという問題がある。また、可塑剤の使用自体に規制が強まる傾向もある。
そこで、PVC系フィルムに代わる材料として、ポリオレフィン系樹脂フィルムが広く用いられてきている。
【0004】
また、半導体を製造する工程においても、半導体ウエハやパッケージ等を切断する際に半導体ウエハ加工用の粘着フィルムが用いられており、上記のような問題からポリオレフィン系樹脂フィルムが用いられるケースが増加している。
このような半導体製造工程用のフィルムとして、PVC系、ポリオレフィン系樹脂を用いたフィルムが開発されている(例えば特許文献1)。
【0005】
近年、半導体素子の小型化・薄型化が進み、フィルムに取扱い性やエキスパンド時に求められる柔軟性だけでなく、チップの破損やエキスパンド時のチップの紛失を抑制するために、ウエハと粘着フィルムを加熱して貼り合わせより強固に密着させる、ダイシング後のエキスパンド工程を加熱して行うといった、加熱する工程が想定されることから、半導体製造工程用フィルムに耐熱性も求められるケースがある。
【0006】
特許文献2には、低温でもエキスパンド性を維持するためにポリエチレン系樹脂を用いたダイシング用基体フィルムが開示されている。
また、特許文献3には、帯電防止性能の付与および柔軟性と耐熱性に優れた、ホモポリプロピレン、高分子型帯電防止剤、及び熱可塑性エラストマーを所定の配合比で含有する樹脂組成物からなる半導体製造工程用基材フィルムが開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載のフィルムには比較的融点の低いポリエチレン系樹脂のみが使用されており、低温のエキスパンド性には優れると思われるものの、耐熱性には改善の余地があると考えられる。また、特許文献3に記載されているフィルムでは、帯電防止性能や耐熱性には優れるものの、フィルムの引張弾性率が高く、より柔軟性が求められる用途に対しては改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09-008111号公報
【特許文献2】特開2018-125521号公報
【特許文献3】特開2020-84143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑みて、半導体製造工程に加熱を行う工程が想定される場合でも十分な耐熱性を有し、取扱い性や柔軟性にも優れる複層フィルムを提供することを目的とする。また、本発明は、該複層フィルムに粘着剤層を設けることで、半導体製造工程用に好適に用いることができる粘着フィルムを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、各層に特定のポリオレフィン系樹脂を用いることで、耐熱性、取扱い性および柔軟性に優れた複層フィルムを鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]
表層にポリプロピレン系樹脂を含有し、表層に隣接する層にポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂およびスチレン系エラストマーを含有し、以下の条件を満たし、且つ引張弾性率が200MPa以下である複層フィルム。
<条件>
表層を構成する樹脂100質量%中のポリプロピレン系樹脂の含有量>表層に隣接する層を構成する樹脂100質量%中のポリプロピレン系樹脂の含有量
[2]
前記ポリエチレン系樹脂が低密度ポリエチレンである、[1]に記載の複層フィルム。
[3]
前記スチレン系エラストマーのスチレン成分含有率が20%質量%以下である、[1]又[2]に記載の複層フィルム。
[4]
表層に含まれるポリプロピレン系樹脂の結晶融解ピークが120℃以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の複層フィルム。
[5]
[1]~[4]のいずれか1項に記載の複層フィルムの少なくとも片方の面に粘着層を有する、粘着フィルム。
[6]
[5]に記載の粘着フィルムを用いた半導体製造工程用粘着フィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明の複層フィルムを用いることで、半導体製造工程に加熱を行う工程が想定される場合でも十分な耐熱性を有し、取扱い性や柔軟性にも優れる複層フィルム、粘着層を備えた粘着フィルム、粘着フィルムを用いた半導体工程用粘着フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明について詳述するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。尚、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
【0014】
本発明の複層フィルムは、表層にポリプロピレン系樹脂を含有し、表層に隣接する層にポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂およびスチレン系エラストマーを含有し、以下の条件を満たし、且つ引張弾性率が200MPa以下であることを特徴とする。
<条件>
表層を構成する樹脂組成物100質量%中のポリプロピレン系樹脂の含有量>
表層に隣接する層を構成する樹脂組成物100質量%中のポリプロピレン系樹脂の含有量
【0015】
本発明の複層フィルムの表層には、ポリプロピレン系樹脂が含有される。ポリプロピレン系樹脂を用いることで、得られる複層フィルムに耐熱性と適度な柔軟性を付与することが可能となる。
【0016】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレンを主成分とするプロピレンと共重合可能な他の単量体との共重合体、これらの混合物等が例示できる。
前記プロピレンを主成分とするプロピレンと共重合可能な他の単量体との共重合体としては、プロピレンとエチレンまたは他のα-オレフィンとのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)やブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、ゴム成分を含むブロック共重合体あるいはグラフト共重合体等が挙げられる。
前記プロピレンと共重合可能な他の単量体として用いられるα-オレフィンとしては、炭素原子数が4~12のものが好ましく、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、1-デセン等が挙げられ、その1種または2種以上の混合物が用いられる。
【0017】
ポリプロピレン系樹脂の結晶融解ピークとしては、120℃以上を示すことが好ましい。120℃以上の結晶融解ピークを有することで、得られる複層フィルムに十分な耐熱性を付与することが可能となる。より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上である。
入手のし易さ、耐熱性および柔軟性付与の観点から、上記のポリプロピレン系樹脂の中でもホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレンを用いることが好ましく、ランダムポリプロピレンを用いることがより好ましい。
【0018】
ランダムポリプロピレンの市販品としては、例えば、ノバテックPP「FW4BA」、ノバテックPP「FX3B」(以上、日本ポリプロ社製)、PC630A、PC630S(以上、サンアロマー社製)、F-730NV、F-744NP(以上、プライムポリプロ社製)等が挙げられる。
上記ポリプロピレン系樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。熱可塑性樹脂フィルムを得る際の製膜性や、得られるフィルムの柔軟性や取扱い性、エキスパンド性を考慮し、必要に応じて適宜選択することができる。
【0019】
表層と隣接する層には、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂およびスチレン系エラストマーが含まれる。ポリエチレン系樹脂とスチレン系エラストマーを用いることで、得られる複層フィルムの耐熱性、エキスパンド性、柔軟性を適切な範囲に調整することが可能となる。
表層と隣接する層に含まれるポリプロピレン系樹脂の詳細については、表層に含まれるポリプロピレン系樹脂について詳述したのと同様である。
【0020】
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレンの単独重合体、エチレンを主成分とするエチレンと共重合可能な他の単量体との共重合体(低密度ポリエチレン(LDPE)、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン系触媒を用いて重合して得られるエチレン系共重合体(メタロセン系ポリエチレン)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体の金属イオン架橋樹脂(アイオノマー)等が挙げられる。
中でも入手のし易さや樹脂の取り扱い性、得られるフィルムへの柔軟性の調整が容易であるとの観点から、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることが好ましく、低密度ポリエチレン(LDPE)がより好ましい。
【0021】
低密度ポリエチレンの市販品としては、例えば、ノバテックLD「LC500」、ノバテックLD「LC520」、ノバテックLD「LC720」(以上、日本ポリエチレン社製)、F224N、F324C、F522N(以上、宇部丸善ポリエチレン社製)等が挙げられる。
上記ポリエチレン系樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。複層フィルムを得る際の製膜性や、得られるフィルムの柔軟性や取扱い性、エキスパンド性を考慮し、必要に応じて適宜選択することができる。
【0022】
ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂のメルトフローレートは、その適用する成形方法や用途により適宜選択されるものの、190℃もしくは230℃の温度条件下、荷重2.16kgで測定した値が0.1~50g/10分であることが好ましい。0.1g/10分以上であればフィルムの成形性が良好となり、50g/10分以下であればフィルムの厚み精度を良好に保つことが可能となる。より好ましくは0.5~40g/10分、さらに好ましくは1.0~30g/10分である。
【0023】
ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂の強度については、それらの樹脂単独で得られるフィルムの引張弾性率が50~2000MPaの範囲内であることが好ましい。引張弾性率が50~2000MPaの範囲内であれば、本発明のフィルムに適度な柔軟性を付与することが可能となる。より好ましくは50~1500MPaの範囲内、さらに好ましくは50~1000MPaの範囲内である。
【0024】
スチレン系エラストマーとしては、下記式(I)または(II)で表されるブロック共重合体であることが好ましい。
X-(Y-X)n …(I)
(X-Y)n …(II)
一般式(I)および(II)におけるXはスチレンに代表される芳香族ビニル重合体ブロック(以下、スチレン成分)で、式(I)においては分子鎖両末端で重合度が同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、Yとしてはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、ブタジエン/イソプレン共重合体ブロック、水添されたブタジエン重合体ブロック、水添されたイソプレン重合体ブロック、水添されたブタジエン/イソプレン共重合体ブロック、部分水添されたブタジエン重合体ブロック、部分水添されたイソプレン重合体ブロックおよび部分水添されたブタジエン/イソプレン共重合体ブロックの中から選ばれた少なくとも1種である。また、nは1以上の整数である。
【0025】
スチレン系エラストマーの具体例としては、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-ブテン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、スチレン-水添ブタジエンジブロック共重合体、スチレン-水添イソプレンジブロック共重合体、スチレン-ブタジエンジブロック共重合体、スチレン-イソプレンジブロック共重合体等が挙げられ、その中でもスチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-ブテン-スチレン共重合体が好適である。また、スチレン-エチレン・ブチレン-結晶性オレフィン共重合体であるブロック共重合体を用いることもできる。
【0026】
スチレン系エラストマーのメルトフローレート(230℃の温度条件下、荷重2.16kgで測定した値)は、0.1~10g/10分であることが好ましく、0.15~9g/10分であることがより好ましく、0.2~8g/10分であることが特に好ましい。スチレン系エラストマーのメルトフローレートが0.1g/10分以上、10g/10分以下であれば、他樹脂との相溶性がよく、製膜性の点で好ましい。
前記スチレン系エラストマーにおけるスチレン成分の含有量は20質量%以下であることが好ましい。スチレン成分の含有量が20質量%以下であれば、得られるフィルムに柔軟性を付与することが可能となる。好ましくは18質量%以下、より好ましくは16質量%以下である。
スチレン成分の含有量およびそれ以外の成分の含有量は、1H-NMRや13C-NMRを用いることにより測定することができる。ここで、「スチレン成分の含有量」とは、スチレン系エラストマーの質量を基準としてスチレンに代表される芳香族ビニル重合体ブロックの含有割合(質量%)をいう。
【0027】
スチレン成分の含有量が20質量%以下であるスチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、タフテックH1221、タフテックH1062、タフテックH1521、タフテックH1052(以上、旭化成社製)、セプトン2004F、セプトン2063、ハイブラー7311、ハイブラー7311F、ハイブラー7125F、ハイブラー5127、ハイブラー5125(以上、クラレ社製)、ダイナロン1320P、ダイナロン4600P、ダイナロン8300P(以上、JSR社製)等が挙げられる。
上記スチレン系エラストマーは、1種類のエラストマーを単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。熱可塑性樹脂フィルムを得る際の製膜性や、得られるフィルムの柔軟性や取扱い性、エキスパンド性を考慮し、必要に応じて適宜選択することができる。
【0028】
<その他の樹脂>
本発明の複層フィルムに用いられる樹脂としては、前述したポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、スチレン系エラストマー以外にも耐熱性や柔軟性を損なわない範囲でその他の樹脂を添加することができる。その他の樹脂としては、オレフィン系エラストマー、環状オレフィン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂等が挙げられる。
【0029】
オレフィン系エラストマーとは、ポリオレフィン系樹脂とゴム成分とを含んでなる軟質樹脂であり、ポリオレフィン系樹脂にゴム成分が分散しているものでもよいし、互いが共重合されているものでもよい。
【0030】
オレフィン系エラストマーの具体例としては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体エラストマー、エチレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-1-ヘキセン共重合体エラストマー、エチレン-1-オクテン共重合体エラストマー、エチレン-スチレン共重合体エラストマー、エチレン-ノルボルネン共重合体エラストマー、プロピレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体エラストマー、エチレン-1-ブテン-非共役ジエン共重合体エラストマー、及びエチレン-プロピレン-1-ブテン-非共役ジエン共重合体エラストマー等のオレフィンを主成分とする無定型の弾性共重合体、その誘導体及び酸変性誘導体等を挙げることができる。
【0031】
環状オレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体、ノルボルネン系単量体とエチレン等のα-オレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体等が挙げられる。また、これらの水素添加物も用いることができる。
【0032】
ポリメチルペンテン系樹脂としては、メチルペンテンをモノマーとする単独重合体またはその他のモノマーとの共重合体を用いることが好ましい。具体例としては、ポリプロピレン系樹脂についてプロピレンと共重合可能な他の単量体として例示したα-オレフィンと4-メチルペンテン-1との共重合体を挙げることができる。
ポリメチルペンテン系樹脂が、共重合体である場合は、共重合に用いられるα-オレフィン成分の含有量が20質量%以下であることが好ましい。20質量%以下とすることで、結晶融解ピークの低下を抑制することが可能となる。より好ましくは10質量%以下である。
【0033】
<その他の成分>
本発明の複層フィルムには帯電防止性や耐熱性、耐候性等を付与するために各種添加剤を配合することができる。
具体例としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、中和剤、滑剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、染顔料、結晶核剤、紫外線吸収剤、充填剤、剛性を付与する無機フィラー、及び柔軟性を付与するために前述したもの以外のエラストマー等を、本発明の効果を阻害しない範囲において用いてもよい。
【0034】
高分子型帯電防止剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、疎水性ブロックと親水性ブロックとのブロック共重合体を用いることができる。高分子型帯電防止剤は、疎水性ブロックと親水性ブロックとが、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合及びウレア結合等によってブロック共重合体を形成している。
【0035】
紫外線吸収剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等を挙げることができる。
【0036】
光安定剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤等を挙げることができる。
【0037】
滑剤やアンチブロッキング剤としては、前述したポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等との相溶性に優れ、得られるフィルムの表面へのブリードアウトによる不具合や長期的な耐傷付き性や滑り性の付与を可能にすることから、シリコーン-オレフィン共重合体を用いることが好ましい。
【0038】
<複層フィルム>
本発明の複層フィルムは、表層にポリプロピレン系樹脂を含有し、表層に隣接する層にポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂およびスチレン系エラストマーを含有し、以下に記載の条件を満たしつつ且つ引張弾性率が200MPa以下であることを特徴とする複層フィルムである。
<条件>
表層を構成する樹脂100質量%中のポリプロピレン系樹脂の含有量>表層に隣接する層を構成する樹脂100質量%中のポリプロピレン系樹脂の含有量
【0039】
前述したポリプロピレン系樹脂を表層に含有することで耐熱性と適度な柔軟性を付与することが可能となり、表層に隣接する層にポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂およびスチレン系エラストマーを含有することで、耐熱性を損なうことなく柔軟性を付与することが可能となる。
【0040】
また、表層を構成する樹脂100質量%中のポリプロピレン系樹脂の含有量を、表層に隣接する層を構成する樹脂100質量%中のポリプロピレン系樹脂の含有量よりも多く配合させることにより、フィルムの表層に耐熱性を付与することができ、加熱される工程があった場合でも、フィルム表層の溶融を抑制することが容易となり、フィルム形状を十分に保持することが可能となる。
【0041】
表層を構成する樹脂100質量%中のポリプロピレン系樹脂の含有量は30質量%以上100質量%以下であることが好ましい。30質量%以上100質量%以下とすることで、得られる複層フィルムに十分な耐熱性を付与することが可能となる。より好ましくは40質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは50質量%以上100質量%以下である。
【0042】
表層に隣接する層を構成する樹脂100質量%中のポリプロピレン系樹脂の含有量は表層を構成する樹脂に含まれるポリプロピレン系樹脂よりも少ないことが必要となる。当該層に用いられるポリプロピレン系樹脂は表層に含まれるものと異なっていても、同一のものでもよいが、同一のものであることが好ましい。また、複数のポリプロピレン系樹脂が用いられる場合は、複数のポリプロピレン系樹脂の総含有量が表層に用いられるポリプロピレン系樹脂の総含有量よりも少ないことが好ましく、さらに、いずれの種類のポリプロピレン系樹脂の含有量が表層に用いられるポリプロピレン系樹脂の含有量よりも少ないことがより好ましい。
【0043】
表層に隣接する層を構成する樹脂100質量%中のポリエチレン系樹脂とスチレン系エラストマーの含有量については、得られる複層フィルムの柔軟性や耐熱性を考慮し適宜決定することができるが、スチレン系エラストマーの含有量は50質量%以下とすることが好ましい。スチレン系エラストマーを50質量%以下とすることで、得られる複層フィルムが柔軟になりすぎることが抑制でき、フィルムの取扱い性が向上する。より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0044】
積層フィルムが3層以上の構成を有する場合に表裏のいずれか一方の面の側にのみポリプロピレン系樹脂を含有する層を設けるか、表裏の両面の側ともにポリプロピレン系樹脂を含有する層を設けるかは適宜用途に応じて決めることができる。複層フィルムに要求される耐熱性により、表裏のいずれか一方の面とするか両面ともにするかを選択することができる。
【0045】
本発明の複層フィルムの基本的な構成は次の通りである。
(1)ポリプロピレン系樹脂を含有する層、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂およびスチレン系エラストマーを含有する層を備える2層フィルムの構成。
(2)ポリプロピレン系樹脂を含有する層(表層)、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂およびスチレン系エラストマーを含有する層(中間層)、ポリプロピレン系樹脂を含有する又は含有しない層(裏層)を備える3層フィルムの構成。
ここで、(2)の3層フィルムの構成において、表層が含有するポリプロピレン系樹脂と、裏層が含有することができるポリプロピレン系樹脂は、同じ組成であっても、異なる組成であってもよい。
また、(2)の構成においては、中間層が2以上の多層から構成されていてもよい。その場合には、(2)の構成は、3層以上からなるフィルム構成も包含する。
中間層が単層の場合は、中間層が表層に隣接する層である。
中間層が2層以上の多層から構成される場合の場合は、表層に隣接する層と、表層に隣接しない層からなる。表層に隣接する層と、表層に隣接しない層は、同じ組成であっても、異なる組成であってもよい。
【0046】
本発明の複層フィルムの厚みは、30~250μmであることが好ましい。30μm以上であればフィルムを生産する際の製膜性や得られるフィルムの取り扱い性が良好となり、250μm以下であれば該フィルムに印刷層や粘着層を積層する工程におけるフィルムの取り扱い性や工程通過性を良好に保つことが可能となる。本発明のフィルムの厚みは、より好ましくは40~230μm、さらに好ましくは50~210μmである。
【0047】
本発明の複層フィルムの引張弾性率は、200MPa以下であることが必要となる。200MPa以下であればフィルムが柔軟すぎず、取扱い性を良好に保つことが可能となる。より好ましくは180MPa以下、さらに好ましくは160MPa以下である。
【0048】
本発明の複層フィルムの引張破断伸度は、300%以上を示すものであることが好ましい。300%以上を示すものであればフィルムに粘着加工等を施す場合においても破断による不具合が抑制され、さらに半導体製造工程におけるエキスパンド工程においても、エキスパンド時の破断が起きにくくなることから好ましい。より好ましくは400%以上、さらに好ましくは500%以上である。
【0049】
本発明のフィルムの成形方法としては、公知の方法を用いることができるが、溶融押出成形法を用いることが好ましい。溶融押出成形法の中でも、Tダイを有する押出機より溶融状態の樹脂を押出し、冷却固化させてフィルムを得るTダイ成形法がより好ましい。
【0050】
フィルムを得るためには、複数の押出機を利用した共押出Tダイ成形法とすることが好ましい。複数の押出機を利用した共押出Tダイ成形法を用いることで、複層のフィルムを得ることが可能となり、本発明の表層に用いられる樹脂組成物を表裏の一方の面のみとすることも、表裏の両面とすることも可能となる。
【0051】
共押出Tダイ成形法としては、マルチマニホールドダイを用いて、複数の樹脂層をフィルム状としたのち、Tダイ内で接触させて複層化させフィルムを得る方法と、フィードブロックと称する溶融状態の樹脂を合流させる装置を用い、複数の樹脂を合流させ密着した後、複層のフィルムを得る方法が挙げられる。
【0052】
フィルムには必要に応じて、片面または両方の面にプラズマ処理やコロナ処理、オゾン処理および火炎処理等の方法による表面処理を行ってもよい。得られるフィルムの用途に応じて、片面または両方の面に表面処理を行うかを選択することができる。
また、表層の厚みは、フィルム全体の厚みの1~50%の範囲内とすることが好ましい。1~50%の範囲内とすることで、得られる複層フィルムの柔軟性を損なわずに十分な耐熱性を付与することが可能となる。表層の厚みは、より好ましくはフィルム全体の厚みの1~40%、さらに好ましくは1~30%の範囲内である。
【0053】
<粘着フィルム>
本発明の複層フィルムには、表裏の少なくとも片方の面に粘着剤層を設けることで、粘着フィルムとすることができる(以下「本発明の粘着フィルム」ともいう)。
【0054】
粘着剤層に用いられる粘着剤は特に限定されないが、例えば、天然ゴム系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等の各種粘着剤が用いられる。また粘着剤層の上にさらに接着剤層や熱硬化性樹脂層等の機能層を設けてもよい。
【0055】
粘着剤層を設けるには、複層フィルム上に粘着剤を直接コーティングすることにより設けることもできる。また、離型層を有するセパレータ等に粘着剤層を積層し、その粘着剤層側を本発明の複層フィルムの表層に貼り合わせ、粘着剤層を転写することにより設けることもできる。
【0056】
本発明の粘着フィルムにおいて、粘着剤層を設ける前のフィルムの片面もしくは両方の面に、前述した表面処理を行ってもよい。また、フィルムと粘着剤層の間には、必要に応じて、プライマー層を設けてもよい。
粘着剤層やプライマー層の厚さは、必要に応じて適宜決めることができる。
【0057】
本発明のフィルムは、十分な耐熱性を有し、取扱い性や柔軟性にも優れる複層フィルムである。
さらに、該フィルムに粘着剤層を積層することで粘着フィルムを得ることも可能であり、該粘着フィルムを半導体製造工程用にも好適に用いることができる。
【実施例0058】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して、具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例で使用した材料、評価した特性の測定方法等は、次の通りである。
【0059】
[使用材料]
熱可塑性樹脂としてポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、スチレン系エラストマーを以下に示す通り用いた。
<ポリプロピレン系樹脂>
サンアロマー社製、「PC630A」(ランダムポリプロピレン、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレート:7.5g/10分、結晶融解ピーク:135℃、単独フィルムの引張弾性率:600MPa)
<ポリエチレン系樹脂>
日本ポリエチレン社製、「ノバテックLC500」(低密度ポリエチレン、190℃、2.16kgにおけるメルトフローレート:4.0g/10分、結晶融解ピーク:106℃、単独フィルムの引張弾性率:140MPa)
<スチレン系エラストマー>
旭化成社製、「タフテックH1221」(230℃、2.16kgにおけるメルトフローレート:4.5g/10分、スチレン成分含有量:12質量%、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体)
【0060】
<樹脂組成物の調製>
上記の熱可塑性樹脂を合計で100質量部となるように配合を行った。また、2種類以上を用いる際はドライブレンドにより混合し、目視にて均一に混合できていることを確認した。
【0061】
<フィルムの製膜方法>
3台の東芝機械製単軸押出機(表層用:35φmm,L/D=25mm、中間層用:50φmm,L/D=32、裏層用:35φmm,L/D=25mm)のそれぞれのホッパーに各樹脂組成物を投入し、各押出機の押出機温度を1900~230℃に設定し、フィードブロック部にて、表層/中間層/裏層の3層構成に合流させ、650mm幅Tダイ(温度設定210~230℃、リップ開度0.5mm)から押し出した。厚み構成は、表1に記載の厚みとなるよう各押出機回転数を設定した。
ここでは、3層構成なので、中間層が表層に隣接する層である。
押出された溶融樹脂は、鏡面状の冷却ロールを備えた巻き取り機(冷却ロール700mm幅×φ350mm、ロール温度約30℃)にて冷却固化後、両面にコロナ処理を実施し巻き取りを行い、厚みが約80μmの1種3層もしくは2種3層となる複層のフィルムを得た。
また、本発明では、得られたフィルムの鏡面上の冷却ロール側の面を表層と表現している。
【0062】
[各層の厚み]
各押出機から押し出される樹脂の吐出量から計算し、各層の厚みを設定した。
【0063】
[フィルムの総厚み]
接触式厚み計を用いてフィルムの中央部、両端部の厚みの測定を行い、所定の厚みになっていることを確認した。
【0064】
[引張弾性率]
得られた複層フィルムから、JISK6732に準じて作製されたダンベル「SDK-600」を使用して試験片を採取し、JISK7127を参照した次の条件、23℃、50%RHの雰囲気下、オートグラフ(島津製作所製AGS-X)を用いて、引張速度50mm/分にて引張弾性率(MPa)を測定した。引張弾性率の測定は、フィルムの押出方向(MD)で測定を行った。
【0065】
[引張破断伸度]
得られたフィルムから、JISK6732に準じて作製されたダンベル「SDK-600」を使用して試験片を採取し、23℃、50%RHの雰囲気下、小型卓上試験機(島津製作所製EZ-L)を用いて、引張速度300mm/分にて引張破断伸度(%)を測定した。
引張破断伸度の測定は、フィルムの押出方向(MD)で測定を行った。
【0066】
[結晶融解ピーク]
示差走査熱量測定装置(メトラー・トレド社製 DSC823e)を用い、実施例、比較例に用いた各原料単独の約5mgを、昇温速度10℃/分で25℃から230℃まで昇温した後、冷却速度10℃/分で25℃まで降温し、再度、昇温速度10℃/分で230℃まで昇温した際に測定されたチャートから結晶融解ピークを算出した。
【0067】
[実施例1]
表層および裏層の熱可塑性樹脂として、ランダムポリプロピレンを用いた。中間層の熱可塑性樹脂として、ランダムポリプロピレン、低密度ポリエチレンおよびスチレン系エラストマーを表1に記載の配合量とし、樹脂組成物を調製した。
上記の表層および裏層用の樹脂組成物と、中間層用の樹脂組成物を用い、前述した製膜方法にて2種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
本フィルムの表層側はランダムポリプロピレンで構成されており、結晶融解ピークは135℃を示すことから、良好な耐熱性を有することが確認された。
引張弾性率は160MPa、引張破断伸度は770%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
よって、本フィルムは十分な耐熱性と良好な柔軟性と破断特性を備えたフィルムであることが確認された。
【0068】
[実施例2]
中間層の熱可塑性樹脂として、ランダムポリプロピレン、低密度ポリエチレンおよびスチレン系エラストマーを表1に記載の配合量とした以外は、実施例1と同様に行った。
2種3層からなる総厚みが80μmのフィルムが得られ、各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
本フィルムの表層側はランダムポリプロピレンで構成されており、結晶融解ピークは135℃を示すことから、良好な耐熱性を有することが確認された。
引張弾性率は145MPa、引張破断伸度は800%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
よって、本フィルムは十分な耐熱性と良好な柔軟性と破断特性を備えたフィルムであることが確認された。
【0069】
[比較例1]
表層および中間層に用いる熱可塑性樹脂として、低密度ポリエチレンを用いた以外は、実施例1と同様に行った。
1種3層からなる総厚みが80μmのフィルムが得られ、各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
本フィルムの表層側はポリプロピレン系樹脂を含んでおらず、低密度ポリエチレンで構成されており、結晶融解ピークは106℃を示すものであったことから、耐熱性に劣るものであることが確認された。
引張弾性率は140MPa、引張破断伸度は620%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
よって、本フィルムは柔軟性と破断特性は良好であるものの、表層にポリプロピレン系樹脂を含有しておらず耐熱性に劣るフィルムであった。
【0070】
[比較例2]
表層および中間層に用いる熱可塑性樹脂として、ランダムポリプロピレンを用いた以外は、実施例1と同様に行った。
1種3層からなる総厚みが80μmのフィルムが得られ、各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
本フィルムの表層側はランダムポリプロピレンで構成されており、結晶融解ピークは135℃を示すことから、良好な耐熱性を有することが確認された。
しかしながら、引張弾性率は520MPa、引張破断伸度は730%を示し、弾性率が200MPa以上となり、フィルムの柔軟性が低いものであることが確認された。
よって、本フィルムは耐熱性が十分であるものの、柔軟性に劣るものであった。
【0071】
【0072】
[実施例3]
アクリル系粘着剤(綜研化学(株)製SKダイン1502C)をセパレータ上にコンマコート法にて、乾燥後の粘着剤層の厚みが25μmになるように塗工し、80℃の熱風乾燥機にて5分間乾燥させた後、粘着剤層を形成した。
作製したセパレータの粘着剤層側の面を実施例1で得られたフィルムの表層側の面に貼り合わせることで本発明のフィルムと粘着剤層とが積層された粘着フィルムを得た。
また、粘着剤との密着性に優れ、且つ帯電防止性能に優れる本粘着フィルムを半導体製造工程用粘着フィルムとして用いることで、粘着剤がフィルムから剥離することによって発生する不良を抑制することが可能となると推察される。
本発明により、半導体製造工程に加熱を行う工程が想定される場合でも十分な耐熱性を有し、取扱い性や柔軟性にも優れる複層フィルムを得ることが可能となり、該複層フィルムを半導体製造工程用に好適に用いることができる。また、該複層フィルムに粘着剤層を設けることで、半導体製造工程用に好適に用いることができる粘着フィルムを提供することも可能となる。