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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082950
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20230608BHJP
   H01L 23/467 20060101ALI20230608BHJP
   G06F 1/20 20060101ALI20230608BHJP
   G06F 1/16 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
H05K7/20 J
H05K7/20 B
H01L23/46 C
G06F1/20 B
G06F1/20 C
G06F1/20 D
G06F1/16 312E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196991
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 武志
(72)【発明者】
【氏名】中島 雄二
(72)【発明者】
【氏名】矢口 裕一朗
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AB10
5E322BB03
5E322BB05
5E322BB06
5F136BA03
5F136BB18
5F136CA03
5F136CA17
(57)【要約】
【課題】より不都合が少なくなるよう改善された新規な構成の電子機器を得る。
【解決手段】実施形態の電子機器は、筐体と、集積回路と、複数の軸流ファンと、制御回路と、を備える。筐体は、吸気口と、吸気口と第一方向に間隔をあけて配置された排気口と、を有する。集積回路は、吸気口と排気口との間に配置され、ヒートシンクが取り付けられる。複数の軸流ファンは、吸気口から排気口に向かう空気流を発生させ、吸気口とヒートシンクとの間に配置される第一ファンと、吸気口とヒートシンクとの間に配置されない第二ファンと、を含む。制御回路は、筐体に収容され、第二ファンの回転数を第一ファンの回転数より小さくする制御信号を出力し、複数の軸流ファンを制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口と、前記吸気口と第一方向に間隔をあけて配置された排気口と、を有する筐体と、
前記吸気口と前記排気口との間に配置され、ヒートシンクが取り付けられる集積回路と、
前記吸気口から前記排気口に向かう空気流を発生させ、前記吸気口と前記ヒートシンクとの間に配置される第一ファンと、前記吸気口と前記ヒートシンクとの間に配置されない第二ファンと、を含む複数の軸流ファンと、
前記筐体に収容され、前記第二ファンの回転数を前記第一ファンの回転数より小さくする制御信号を出力し、複数の前記軸流ファンを制御する制御回路と、
を備える電子機器。
【請求項2】
前記第一方向から見たときに、複数の前記軸流ファンが並べられる第二方向に並ぶ複数の前記集積回路を備える、
請求項1に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中央演算処理装置および補助記憶装置等の発熱部品が収容された筐体と、筐体に取り付けられたファンと、筐体に収容され発熱部品に向けてファンの冷却風を案内するガイド部材(ダクトなど)と、を備えた電子機器が、知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-067888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の電子機器では、より不都合が少なくなるよう改善された新規な構成が得られれば、有益である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の電子機器は、筐体と、集積回路と、複数の軸流ファンと、制御回路と、を備える。筐体は、吸気口と、吸気口と第一方向に間隔をあけて配置された排気口と、を有する。集積回路は、吸気口と排気口との間に配置され、ヒートシンクが取り付けられる。複数の軸流ファンは、吸気口から排気口に向かう空気流を発生させ、吸気口とヒートシンクとの間に配置される第一ファンと、吸気口とヒートシンクとの間に配置されない第二ファンと、を含む。制御回路は、筐体に収容され、第二ファンの回転数を第一ファンの回転数より小さくする制御信号を出力し、複数の軸流ファンを制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、電子機器の例示的かつ模式的な平面図である。
図2図2は、実施形態の電子機器による冷却風の風量の例を説明するための図である。
図3図3は、比較例の電子機器による冷却風の風量の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、並びに、当該構成によってもたらされる作用および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0008】
なお、本明細書では、序数は、部品、部材、部位、位置、および、方向等を区別するためだけに用いられており、順番および優先度を示すものではない。
【0009】
図1は、電子機器1の例示的かつ模式的な平面図である。なお、以下の各図では、便宜上、互いに直交する三方向であるX方向、Y方向およびZ方向が定義されている。
【0010】
電子機器1は、例えばラックマウント型の産業用コンピュータである。電子機器1は、筐体2と、ファンユニット3a、3b、3cと、電源装置4a、4bと、メインボード5と、中央演算処理装置(CPU:central processing unit)7a、7bと、メモリーカード8a、8b、8cと、ヒートシンク9a、9bと、拡張カードホルダ11a、11bと、PCH(platform controller hub)12と、を備えている。なお、電子機器1は、この例には限定されず、デスクトップ型のパーソナルコンピュータ、および、ノートブック型のパーソナルコンピュータ等であってもよい。
【0011】
筐体2は、例えば、Z方向に薄い直方体状の箱型に構成される。筐体2は、底壁(不図示)、天壁(不図示)、前壁2c、左壁2d、後壁2eおよび右壁2f等の複数の壁部を有する。前壁2c、左壁2d、後壁2e、右壁2fは、側壁の一例である。底壁は、下壁等とも称され、天壁は、上壁等とも称される。
【0012】
底壁および天壁は、Z方向と直交するXY平面と平行に、Z方向に間隔をあけて設けられている。底壁は、筐体2の下端部を構成し、天壁は、筐体2の上端部を構成している。底壁の下面には、筐体2を不図示の棚や、机、台等の載置部から離間した状態に支持する複数のゴム脚等が設けられうる。
【0013】
左壁2dおよび右壁2fは、Y方向と直交するXZ平面と平行に、Y方向に間隔をあけて設けられている。左壁2dは、底壁および天壁のY方向の一端部の間に亘り、右壁2fは、底壁および天壁のY方向の他端部の間に亘っている。左壁2dは、筐体2の左端部を構成し、右壁2fは、筐体2の右端部を構成している。
【0014】
前壁2cおよび後壁2eは、X方向と直交するYZ平面と平行に、X方向に間隔をあけて設けられている。前壁2cは、底壁および天壁のX方向の他端部の間に亘り、後壁2eは、底壁および天壁のX方向の一端部の間に亘っている。前壁2cは、筐体2の前端部を構成し、後壁2eは、筐体2の後端部を構成している。
【0015】
筐体2の前壁2cには、略全域に亘って吸気口2rが設けられる。前壁2cの内側には、複数のファンユニット3a、3b、3cが取り付けられている。なお、前壁2cの内側には、LED(Light Emitting Diode)ボードおよびドライブユニットなどの構成要素が配置されてもよい。X方向は、第一方向の一例である。
【0016】
ファンユニット3a、3b、3cは、電子機器1に対して着脱可能に構成される。ファンユニット3a、3b、3cの着脱方法はどのような方法であってもよいが、例えば、ファンユニット3a、3b、3cを着脱するためのファンホルダ14を電子機器1が備えるように構成することができる。
【0017】
例えば、ファンユニット3a、3b、3cは、ファンホルダ14に対して活線挿抜可能なファン、ファンを回転させるためのモータをそれぞれ有する。ファンは、吸気口2rから、後壁2eに設けられる排気口2pに向かう空気流を発生させる。ファンは、例えば、回転軸がX方向に向く軸流ファンである。ファンユニット3a、3b、3cは、それぞれのファンの回転軸回りの回転によって、筐体2内に空気を導入可能である。
【0018】
ファンユニット3a、3b、3cは、Y方向に並んで配置される。ファンユニット3aは、吸気口2rとヒートシンク9aとの間に、X方向にヒートシンク9aと並べて配置される。ファンユニット3bは、吸気口2rとヒートシンク9bとの間に、X方向にヒートシンク9bと並べて配置される。ファンユニット3cは、吸気口2rとヒートシンク9a、9bとの間に配置されない。ファンユニット3a、3bが備えるファンは、第一ファンの一例である。ファンユニット3cが備えるファンは、第二ファンの一例である。ファンユニット3a、3b、3cは、同様の構成を備えるため、区別する必要がない場合はファンユニット3という。
【0019】
ファンホルダ14は、例えば、筐体2の底板上に配置され、複数のファンユニット3をそれぞれ保持する複数のポケット部を有する。ポケット部は、例えば電源装置4bと電気的に接続される。ポケット部は、ファンユニット3の活線挿抜用のコネクタが着脱可能に接続される相手側コネクタが設けられてもよい。相手側コネクタは、ケーブル等を介して筐体2内の電源装置4bと電気的に接続される。例えば、ファンユニット3a、3b、3cそれぞれに対応する三つのポケット部の相手側コネクタは、それぞれケーブル13a、13b、および、13cにより、電源装置4bと電気的に接続される。
【0020】
ケーブル13a、13b、および、13cは、筐体2の右壁2f側に集めて、長さが最短となるように配置される。これにより、ケーブル13a、13b、および、13cによる冷却風(空気流)に対する抵抗を抑制可能となる。
【0021】
筐体2の後壁2eには、略全域に亘って排気口2pが設けられる。排気口2pは、電源装置4a、4b、中央演算処理装置7a、7b、メモリーカード8a、8b、8c、および、ヒートシンク9a、9b等の発熱体と熱交換を行ったファンユニット3からの冷却風を筐体2外に排出可能である。Y方向は、第二方向の一例である。
【0022】
電源装置4a、4bは、複数のファンユニット3のうちY方向の右端部に位置されたファンユニット3cとX方向に間隔をあけて並んでおり、ファンユニット3cによって冷却される。電源装置4a、4bは、発熱体の一例である。
【0023】
メインボード5は、筐体2の底壁(X方向およびY方向)と平行に設けられた板状に構成されている。メモリ容量の増加などの電子機器1の高性能化のために、メインボード5は、より大きな実装面積が要求される場合がある。実装面積をより大きくするため、本実施形態のメインボード5は、ファンホルダ14と後壁2eとの間に亘る領域と、左壁2dおよび右壁2fの間に亘る領域と、を含むように構成される。
【0024】
メインボード5の上面には、中央演算処理装置7a、7b、メモリーカード8a、8b、8c、拡張カードホルダ11a、11b、および、PCH12等の複数の電子部品が実装されている。メインボード5内の配線とこれら複数の電子部品とによって、電子機器1の制御回路が構成される。メインボード5は、メイン基板、マザーボード、回路基板、および、制御基板等とも称されうる。
【0025】
また、中央演算処理装置7a、7bの上面には、それぞれヒートシンク9a、9bが取り付けられている。中央演算処理装置7a、7bは、吸気口2rと排気口2pとの間に配置され、ヒートシンクが取り付けられる集積回路の一例である。集積回路は、中央演算処理装置7a、7bに限られず、GPU(Graphics Processing Unit)などの、他のどのような回路であってもよい。中央演算処理装置7とヒートシンク9とのペアは、ダクトによって覆われてもよい。この場合、ヒートシンク9a、9bは、それぞれダクトを介してファンユニット3a、3bと接続される。
【0026】
ヒートシンク9a、9bは、Y方向に互いに間隔をあけて並んだ複数のフィンを有し、当該複数のフィンの間を流れるファンユニット3a、3bからの冷却風との熱交換によって中央演算処理装置7a、7bを冷却可能である。ヒートシンク9a、9bは、発熱体の一例である。
【0027】
各部(電源装置4a、4b、中央演算処理装置7a、7b、メモリーカード8a、8b、8c、ヒートシンク9a、9b、拡張カードホルダ11a、11b、PCH12)の個数は、図1に記載の個数に限られない。また、複数備えられる構成について、区別する必要がない場合は共通の符号で表す場合がある。例えば、電源装置4a、4bは区別する必要がない場合は電源装置4という。中央演算処理装置7a、7bは、区別する必要がない場合は中央演算処理装置7という。メモリーカード8a、8b、8cは、区別する必要がない場合はメモリーカード8という。ヒートシンク9a、9bは、区別する必要がない場合はヒートシンク9という。拡張カードホルダ11a、11bは、区別する必要がない場合は拡張カードホルダ11という。
【0028】
本実施形態では、メインボード5には、X方向から見たときに、Y方向に互いに間隔をあけて並ぶ二つの中央演算処理装置7a、7bが実装されている。中央演算処理装置7aとヒートシンク9aとのペアが、Z方向から見たときに、ファンユニット3aとX方向に間隔をあけてファンユニット3aと並べて配置されており、ファンユニット3aによって冷却される。中央演算処理装置7bとヒートシンク9bとのペアが、Z方向から見たときに、ファンユニット3bとX方向に間隔をあけて並べて配置されており、ファンユニット3bによって冷却される。中央演算処理装置7は、発熱体の一例である。
【0029】
ヒートシンク9をファンユニット3とX方向に並べて配置することにより、中央演算処理装置7に対する冷却性能をより向上させることができる。なお、中央演算処理装置7の個数、および、ヒートシンク9とX方向に並べて配置するファンユニット3の個数はそれぞれ2個に限られず、1個または3個以上であってもよい。また、ファンユニット3とX方向に並べて配置される発熱体は中央演算処理装置7に接続されるヒートシンク9に限られない。
【0030】
メモリーカード8は、メインボード5に設けられたスロットに装着されている。メモリーカード8は、ファンユニット3とX方向に間隔をあけて並んでおり、ファンユニット3によって冷却される。メモリーカード8は、発熱体の一例である。
【0031】
電子機器1は、ヒートシンク9aへの風量を増加させるためにファンユニット3aとヒートシンク9aとをダクトで接続し、ヒートシンク9bへの風量を増加させるためにファンユニット3bとヒートシンク9bとをダクトで接続してもよい。これにより、電子機器1は、周囲に冷却風を分散させない構造となる。ヒートシンク9のみに送風すると筐体2全体の発熱を冷却できない場合がある。このため、電子機器1は、筐体2全体を冷却するためのファンユニット3cを備えている。なお、ファンユニット3a、3bによる冷却風の流路は、冷却風がそれぞれヒートシンク9a、9bに向かうように構成されるとともに、ダクトにより狭くなっているため、ファンユニット3cによる冷却風の流路より、冷却風に対する抵抗が大きい。
【0032】
このように、複数のファンユニット3は、ヒートシンク9と吸気口2rとの間に配置されるか否かにより、排出する冷却風に対する抵抗が変わりうる。
【0033】
図1では、三つのファンユニット3のうち、二つのファンユニット3a、3bは、発熱体(中央演算処理装置7a、7b、ヒートシンク9a、9b)に向けて冷却風を排出するため、冷却風に対する抵抗が相対的に大きい。また、ファンユニット3cは、発熱体に向けて冷却風を排出せず、中央演算処理装置7が構成されていない領域に向けて冷却風を排出するため、冷却風に対する抵抗が相対的に小さい。
【0034】
そこで、本実施形態の電子機器1は、冷却風に対する抵抗を考慮して、複数のファンユニット3それぞれが排出する風量を調整する。なお、吸気口2rに入る空気の量(吸気量)、および、排気口2pから出る空気の量(排気量)は同じ値である。吸気量を一定とした場合、例えばあるファンユニット3から排出される冷却風の風量を増加させると、他のファンユニット3から排出される冷却風の風量は減少する。すなわち、各ファンユニット3から排出される冷却風の風量の合計は一定である。電子機器1は、吸気量を一定としたときの各ファンユニット3から排出される風量の配分を調整することにより、電子機器1全体の冷却性能を向上させる。
【0035】
なお、冷却風の風量を調整する方法としては、例えば、筐体2の幅方向(Y方向)に冷却風を案内するガイド部材を備える方法がありうる。しかし、このようなガイド部材を配置するスペースを筐体2内に確保できない場合があるため、ガイド部材などを用いない方法で冷却性能を向上させることが望ましい。
【0036】
そこで、本実施形態の電子機器1は、各ファンユニット3を同じように制御するのではなく、発熱体に対する冷却性能を増加させるために各ファンユニット3に対して異なる制御を行う。
【0037】
図2は、各ファンユニット3に対して異なる制御が行われる場合の冷却風の風量の例を示す。なお図2の上向きの矢印は、空気流の流れる方向を示す。また、矢印の太さは、風量の大きさを示す。すなわち、矢印が太いほど風量が大きいことを示す。上記のように、吸気量、排気量、および、各ファンユニット3から排出される冷却風の風量の合計、は同じ値である。
【0038】
本実施形態では、例えば、ファンユニット3cのファンの回転数が、ファンユニット3a、3bのファンの回転数より小さくなるように制御される。これにより、筐体2全体に向けて冷却風が流れる流路の風量を減らし、ヒートシンク9a、9bへの風量を増加させることができる。そして、ファンユニット3cのファンの回転数を適切に設定すれば、電子機器1の全体の冷却性能を向上させることができる。
【0039】
上記の機能を実現するため、本実施形態では、ファンの回転数を変更可能なファンユニット3が用いられる。例えばファンユニット3は、入力するPWM(Pulse Width Modulation)信号のデューティー比を変化させることにより、回転数を変更可能である。
【0040】
ファンユニット3それぞれのファンの回転数は、例えば、メインボード5等により実現される制御回路により制御される。制御回路は、ファンユニット3cのファンの回転数が、ファンユニット3a、3bのファンの回転数より小さくなるように、各ファンユニット3を制御する。すなわち、制御回路は、ファンユニット3cのファンの回転数をファンユニット3a、3bのファンの回転数より小さくする制御信号(PWM信号など)を出力する。
【0041】
例えば制御回路は、PWM信号(制御信号の一例)のデューティー比を変化させることにより、各ファンユニット3のファンの回転数を所望の値となるように制御する。各ファンユニット3のファンの回転数は、例えばメインボード5のBIOS(Basic Input Output System)を用いて設定される。制御回路は、BIOSで設定された回転数となるように、各ファンユニット3のファンの回転数を制御する。
【0042】
回転数の設定値はどのような方法で設定されてもよい。例えば、回転数の最大値に対する割合により設定値を設定する方法を適用することができる。例えば、ファンユニット3a、3b、3cのファンの回転数は、それぞれ最大値の60%、60%および30%となるように設定される。
【0043】
正常動作時と異常検出時とで異なる回転数の設定値を設定可能としてもよい。例えば、電子機器1が、周囲の温度(外気温度)または発熱体の温度などを検出する温度センサを備え、検出された温度が閾値を超えたことなどにより、異常を検出する機能を備えてもよい。異常検出時の回転数の設定値は、正常動作時と異なる値に設定される。例えば、ファンユニット3a、3b、3cの異常検出時の回転数は、それぞれ最大値の100%、100%および40%となるように設定される。制御回路は、温度センサの検出結果から異常が検出された場合に、異常検出時の回転数の設定値に従い、各ファンユニット3のファンの回転数を制御する。
【0044】
回転数は、シミュレーションまたは実機を用いた測定により得られる空気の圧力分布または風量などに基づいて、適切な値を決定することができる。決定された回転数がBIOSなどに設定され、制御回路により参照可能とされる。
【0045】
図3は、本実施形態とは異なり、複数のファンユニットを同じように制御する比較例の電子機器による冷却風の風量の例を示す。同じように制御するとは、例えば、回転数が同じとなるように制御することを表す。
【0046】
比較例の電子機器は、例えば、複数の中央演算処理装置101a、101bなどの発熱体を含む高発熱領域110と、複数のファンユニット102a、102b、102c、102dと、を備える。比較例では、実施形態の電子機器1より多い4個のファンユニット102a、102b、102c、102dが、Y方向に隙間なく並べられる。
【0047】
吸気口から入る空気は、同じ回転数により回転されるファンユニット102a、102b、102c、102dにそれぞれ流入するが、各ファンユニットから排出される冷却風に対する通風抵抗に応じて、各ファンユニットから排出される冷却風の風量が変動する。例えば、Z方向から見たときに高発熱領域110とX方向に並べて配置されていないファンユニット102dは、高発熱領域110とX方向に並べて配置されているファンユニット102a、102b、102cと比較して、排出される冷却風に対する通風抵抗が小さい。このため、ファンユニット102dは、相対的に風量が大きくなり、ファンユニット102a、102b、102cは、相対的に風量が小さくなる。この結果、高発熱領域110に対する冷却能力が確保できないおそれがある。
【0048】
これは、各ファンユニット102a、102b、102c、102dから排出される風量の配分が、各ファンユニット102a、102b、102c、102dの下流側の通風抵抗の変動に応じてばらつくことに起因する。このため、ファンユニットの個数を増やすとともに、例えば各ファンユニットのファンの回転数をそれぞれ最大となるように制御したとしても、風量を十分に確保することができず、高発熱領域110が適切に冷却できない状況が生じうる。
【0049】
本実施形態では、各ファンユニット3から排出される風量の配分が適切に調整されるように、各ファンユニット3のファンの回転数を制御する。これにより、中央演算処理装置7に対する冷却性能を向上させるとともに、電子機器1全体の冷却性能を向上させることができる。
【0050】
なお、冷却性能を向上させるためには、ファンの回転数を上げる方法もあるが、回転数を上げると動作音が増大するおそれがある。これに対して本実施形態では、一部のファンユニット3のファンの回転数を相対的に小さくする。このため、冷却性能を向上させつつ、静音性を高めることができる。
【0051】
以上のように、本実施形態では、電子機器1は、吸気口2rと、吸気口2rとX方向(第一方向)に間隔をあけて配置された排気口2pと、を有する筐体2と、吸気口2rと排気口2pとの間に配置され、ヒートシンク9が取り付けられる中央演算処理装置7(集積回路)と、吸気口2rから排気口2pに向かう空気流を発生させ、吸気口2rとヒートシンク9との間に配置されるファンユニット3a、3b(第一ファン)と、吸気口2rとヒートシンク9との間に配置されないファンユニット3c(第二ファン)と、を含む複数の軸流ファンと、筐体2に収容され、ファンユニット3cの回転数をファンユニット3a、3bの回転数より小さくする制御信号を出力し、複数の軸流ファンを制御する制御回路と、を備える。
【0052】
このような構成によれば、ヒートシンク9とX方向に並べて配置されるファンユニット3に対する風量を増加させ、中央演算処理装置7に対する冷却性能を増加させることが可能となる。また、ファンユニット3のファンの回転数を適切に設定すれば、電子機器1全体に対する冷却性能を維持することが可能となる。これにより、小型で高性能のハイエンド機においても電源装置4、中央演算処理装置7、および、メモリーカード8等の発熱体の冷却性がより高まりやすい電子機器1を得ることができる。
【0053】
また、ファンユニット3は個別に活線挿抜可能であるため、ファンユニット3のメンテナンス作業等を、より容易に、または、より円滑に行うことができる。具体的には、複数のファンユニット3のうちいずれか一つにメンテナンスが必要な場合に、その他のファンユニット3を駆動したままの状態、すなわち電源装置4、中央演算処理装置7、および、メモリーカード8等の発熱体をその他のファンユニット3からの冷却風によって冷却したままの状態で、メンテナンス作業を行うことができる。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0055】
また、各構成および形状等のスペック(構造、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、および、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 電子機器
2 筐体
3 ファンユニット
4 電源装置
5 メインボード
7 中央演算処理装置
8 メモリーカード
9 ヒートシンク
11 拡張カードホルダ
12 PCH
13 ケーブル
14 ファンホルダ
図1
図2
図3