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特開2023-82957加硫ゴム用接着剤組成物、及び、タイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082957
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】加硫ゴム用接着剤組成物、及び、タイヤ
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/10 20060101AFI20230608BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20230608BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230608BHJP
   C09J 163/02 20060101ALI20230608BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20230608BHJP
   C09J 171/02 20060101ALI20230608BHJP
   C08G 59/02 20060101ALI20230608BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
C09J201/10
C09J163/00
C09J11/06
C09J163/02
C09J133/04
C09J171/02
C08G59/02
B60C19/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197001
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】岡松 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】秋山 寿江
【テーマコード(参考)】
3D131
4J036
4J040
【Fターム(参考)】
3D131LA06
3D131LA20
4J036AA02
4J036AD08
4J036AD09
4J036AD21
4J036AE05
4J036AF05
4J036AF06
4J036AF08
4J036AF19
4J036DC05
4J036FA14
4J036FB03
4J036FB12
4J036GA09
4J036GA28
4J036HA12
4J036JA06
4J036JA15
4J040DF021
4J040DJ031
4J040EC061
4J040EC062
4J040EE011
4J040GA31
4J040HC01
4J040HD32
4J040HD42
4J040JA13
4J040JB04
4J040KA14
4J040KA16
4J040KA42
4J040LA06
4J040MA12
4J040NA16
4J040PA09
(57)【要約】
【課題】接着性が優れる加硫ゴム用接着剤組成物を提供する。
【解決手段】アルコキシシリル基を有する有機重合体と、芳香族炭化水素基を有するエポキシ樹脂と、シランカップリング剤とを含有し、上記有機重合体の含有量Rと上記エポキシ樹脂の含有量Eとの質量比(R:E)が、95:5~50:50であり、上記シランカップリング剤の含有量Sが、上記含有量R及び上記含有量Eの合計100質量部に対して、1.5~10質量部である、加硫ゴム用接着剤組成物、及び、加硫されたタイヤと部品とが上記加硫ゴム用接着剤組成物で接着されたタイヤ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコキシシリル基を有する有機重合体と、
芳香族炭化水素基を有するエポキシ樹脂と、
シランカップリング剤とを含有し、
前記有機重合体の含有量Rと前記エポキシ樹脂の含有量Eとの質量比(R:E)が、95:5~50:50であり、
前記シランカップリング剤の含有量Sが、前記含有量R及び前記含有量Eの合計100質量部に対して、1.5~10質量部である、加硫ゴム用接着剤組成物。
【請求項2】
硬化物の25℃条件下での引張弾性率が、1.0×105~900×105Paである、請求項1に記載の加硫ゴム用接着剤組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂を含む、請求項1又は2に記載の加硫ゴム用接着剤組成物。
【請求項4】
更に、有機錫触媒を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の加硫ゴム用接着剤組成物。
【請求項5】
更に、水を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の加硫ゴム用接着剤組成物。
【請求項6】
更に、第3級アミンを含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の加硫ゴム用接着剤組成物。
【請求項7】
更に、フィラーを含有し、
前記フィラーの含有量Fが、前記含有量R及び前記含有量Eの合計100質量部に対して、10~120質量部である、請求項1~6のいずれか1項に記載の加硫ゴム用接着剤組成物。
【請求項8】
前記有機重合体の主骨格が、(メタ)アクリレート系モノマーによる繰り返し単位及び/又はアルキレンオキシド単位を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の加硫ゴム用接着剤組成物。
【請求項9】
アルコキシシリル基を有する有機重合体と、芳香族炭化水素基を有するエポキシ樹脂と、シランカップリング剤と、有機錫触媒とを含み、
前記有機重合体の含有量R1と前記エポキシ樹脂の含有量E1との質量比(R1:E1)が、95:5~50:50であり、
前記シランカップリング剤の含有量S1が、前記含有量R1及び前記含有量E1の合計100質量部に対して、3.0~10質量部である、1液型の加硫ゴム用接着剤組成物。
【請求項10】
A剤とB液とを有する2液型であり、
前記A剤が、アルコキシシリル基を有する有機重合体と、第3級アミンと、シランカップリング剤とを含み、
前記B剤が、芳香族炭化水素基を有するエポキシ樹脂と、有機錫触媒と、水とを含み、
前記有機重合体の含有量R2と前記エポキシ樹脂の含有量E2との質量比(R2:E2)が、95:5~50:50であり、
前記シランカップリング剤の含有量S2が、前記含有量R2及び前記含有量E2の合計100質量部に対して、1.5~3.5質量部である、2液型の加硫ゴム用接着剤組成物。
【請求項11】
加硫されたタイヤと部品とが請求項1~10のいずれか1項に記載の加硫ゴム用接着剤組成物で接着されたタイヤ。
【請求項12】
前記部品が、センサーを内蔵するゴム製のコンテナである、請求項11に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫ゴム用接着剤組成物、及び、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IoT(Internet of Things)を利用し、自動車に装着されたタイヤの情報(例えば、空気圧等)を監視するシステムがある。上記システムにおいては、タイヤはその内部に、タイヤの情報を監視するためのセンサー(検知器)等の機器を収容する容器(コンテナ)を有する。通常、上記コンテナはタイヤ(例えば、インナーライナー)に接着剤で固定されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2020-514148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようななか、本発明者らは特許文献1を参考にして接着剤組成物を調製し、加硫済みのインナーライナーの表面に上記接着剤組成物を塗布して、部品(例えば、センサーを収容するゴム製コンテナ)を接着させたところ、上記接着剤組成物と加硫済みのゴム(上記のインナーライナー及び/又はコンテナ)との接着性は必ずしも十分ではないことが明らかになった。
【0005】
そこで、本発明は、上記実情を鑑みて、接着性が優れる加硫ゴム用接着剤組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、部品を接着したタイヤを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、接着剤組成物がエポキシ化合物として芳香族炭化水素基を有するエポキシ樹脂を含有することによって所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0007】
[1]
アルコキシシリル基を有する有機重合体と、
芳香族炭化水素基を有するエポキシ樹脂と、
シランカップリング剤とを含有し、
上記有機重合体の含有量Rと上記エポキシ樹脂の含有量Eとの質量比(R:E)が、95:5~50:50であり、
上記シランカップリング剤の含有量Sが、上記含有量R及び上記含有量Eの合計100質量部に対して、1.5~10質量部である、加硫ゴム用接着剤組成物。
[2]
硬化物の25℃条件下での引張弾性率が、1.0×105~900×105Paである、[1]に記載の加硫ゴム用接着剤組成物。
[3]
上記エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂を含む、[1]又は[2]に記載の加硫ゴム用接着剤組成物。
[4]
更に、有機錫触媒を含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の加硫ゴム用接着剤組成物。
[5]
更に、水を含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の加硫ゴム用接着剤組成物。
[6]
更に、第3級アミンを含有する、[1]~[5]のいずれかに記載の加硫ゴム用接着剤組成物。
[7]
更に、フィラーを含有し、上記フィラーの含有量Fが、上記含有量R及び上記含有量Eの合計100質量部に対して、10~120質量部である、[1]~[6]のいずれかに記載の加硫ゴム用接着剤組成物。
[8]
上記有機重合体の主骨格が、(メタ)アクリレート系モノマーによる繰り返し単位及び/又はアルキレンオキシド単位を有する、[1]~[7]のいずれかに記載の加硫ゴム用接着剤組成物。
【0008】
[9]
アルコキシシリル基を有する有機重合体と、芳香族炭化水素基を有するエポキシ樹脂と、シランカップリング剤と、有機錫触媒とを含み、
上記有機重合体の含有量R1と上記エポキシ樹脂の含有量E1との質量比(R1:E1)が、95:5~50:50であり、
上記シランカップリング剤の含有量S1が、上記含有量R1及び上記含有量E1の合計100質量部に対して、3.0~10質量部である、1液型の加硫ゴム用接着剤組成物。
[10]
A剤とB液とを有する2液型であり、
上記A剤が、アルコキシシリル基を有する有機重合体と、第3級アミンと、シランカップリング剤とを含み、
上記B剤が、芳香族炭化水素基を有するエポキシ樹脂と、有機錫触媒と、水とを含み、
上記有機重合体の含有量R2と上記エポキシ樹脂の含有量E2との質量比(R2:E2)が、95:5~50:50であり、
上記シランカップリング剤の含有量S2が、上記含有量R2及び上記含有量E2の合計100質量部に対して、1.5~3.5質量部である、2液型の加硫ゴム用接着剤組成物。
【0009】
[11]
加硫されたタイヤと部品とが[1]~[10]のいずれかに記載の加硫ゴム用接着剤組成物で接着されたタイヤ。
[12]
上記部品が、センサーを内蔵するゴム製のコンテナである、[11]に記載のタイヤ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、接着性に優れる、加硫ゴム用接着剤組成物を提供することができる。
また、本発明は、部品を接着したタイヤを提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレートまたはメタクリレートを表し、(メタ)アクリルはアクリルまたはメタクリルを表す。
また、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその製造方法について特に制限されない。例えば、従来公知の方法が挙げられる。
本明細書において、接着性がより優れることを、本発明の効果がより優れるということがある。
【0012】
[加硫ゴム用接着剤組成物]
本発明の加硫ゴム用接着剤組成物(本発明の接着剤組成物)は、
アルコキシシリル基を有する有機重合体と、
芳香族炭化水素基を有するエポキシ樹脂と、
シランカップリング剤とを含有し、
上記有機重合体の含有量Rと上記エポキシ樹脂の含有量Eとの質量比(R:E)が、95:5~50:50であり、
上記シランカップリング剤の含有量Sが、上記含有量R及び上記含有量Eの合計100質量部に対して、1.5~10質量部である、加硫ゴム用接着剤組成物である。
以下、本発明の接着剤組成物に含有される各成分について詳述する。
【0013】
[有機重合体]
本発明の接着剤組成物は、アルコキシシリル基を有する有機重合体を含有する。上記有機重合体は、アルコキシシリル基を有する有機系のポリマーである。
【0014】
〔アルコキシシリル基〕
本発明において、上記有機重合体は、アルコキシシリル基を有する。
アルコキシシリル基は、ケイ素にアルコキシ基が結合した基である。
1個のケイ素に結合するアルコキシ基の数は、1~3個である。ケイ素に結合するアルコキシ基の数は、本発明の効果がより優れ、得られる硬化物の引張弾性率が適正な範囲となりうるという観点から、2~3個が好ましい。
ケイ素に結合するアルコキシ基の数が1~2個である場合、ケイ素に結合する残りの基は特に制限されない。例えば炭化水素基が挙げられる。
【0015】
アルコキシシリル基としては、例えば、メトキシシリル基(モノメトキシ、ジメトキシ、トリメトキシのいずれであってもよい。以下の各種アルコキシシリル基についても同様)、エトキシシリル基、プロポキシシリル基が挙げられる。
【0016】
(主骨格)
上記有機重合体は、アルコキシシリル基を有し、主骨格が有機重合体であることが好ましい態様として挙げられる。
上記有機重合体の主骨格としては、例えば、ビニル系重合体、ポリオキシアルキレン系重合体が挙げられる。
上記有機重合体の主骨格は、例えば、ホモポリマー、コポリマーのいずれであってもよい。また、上記有機重合体の主骨格は、例えば、ブロックポリマー、ランダムポリマー、テーパーを有するポリマーのいずれであってもよい。
【0017】
上記有機重合体の主骨格を構成しうるビニル系モノマーは、二重結合を有するモノマーであれば特に限定されない。例えば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸フェニル(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリレート系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等のスチレン系モノマーが挙げられる。
【0018】
上記有機重合体の主骨格を構成しうるアルキレンオキシド単位は特に制限されない。例えば、エチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位が挙げられる。
【0019】
上記有機重合体の主骨格は、本発明の効果がより優れ、得られる硬化物の引張弾性率が適正な範囲となりうるという観点から、(メタ)アクリレート系モノマーによる繰り返し単位及び/又はアルキレンオキシド単位を有することが好ましい。
【0020】
(アルコキシシリル基の結合位置)
上記有機重合体において、アルコキシシリル基は、有機重合体の末端及び/又は側鎖に結合することができる。アルコキシシリル基は有機重合体の末端に結合することが好ましい態様として挙げられる。
アルコキシシリル基は、有機重合体の主骨格と直接又は連結基を介して結合することができる。連結基は特に制限されない。
【0021】
(アルコキシシリル基の数)
上記有機重合体は、本発明の効果がより優れ、得られる硬化物の引張弾性率が適正な範囲となりうるという観点から、1分子中にアルコキシシリル基を平均で2~4個有することが好ましい。
【0022】
[エポキシ樹脂]
本発明の接着剤組成物は、芳香族炭化水素基を有するエポキシ樹脂を含有する。上記エポキシ樹脂は、芳香族炭化水素基と、複数のエポキシ基を有する化合物である。
【0023】
〔芳香族炭化水素基〕
上記エポキシ樹脂が有する芳香族炭化水素基は特に制限されない。例えば、ベンゼン環が挙げられる。
【0024】
〔エポキシ基〕
上記エポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を複数有する。
上記エポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を2~3個有することが好ましい。
上記エポキシ樹脂において、上記芳香族炭化水素基と、上記エポキシ基とは、直接又は連結基を介して結合することができる。上記連結基は特に制限されない。
【0025】
(具体例)
上記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールC型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;水添ビスフェノール型ジグリシジルエーテル(例えば水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂);フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物等のノボラック型エポキシ化合物;ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、が挙げられる。
【0026】
上記エポキシ樹脂は、本発明の効果がより優れ、得られる硬化物の引張弾性率が適正な範囲となりうるという観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂を含むことが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。
なお、エポキシ樹脂は、官能基がエポキシ基であるシランカップリング剤を含まない。
【0027】
(重量平均分子量)
上記エポキシ樹脂の重量平均分子量は、本発明の効果がより優れ、得られる硬化物の引張弾性率が適正な範囲となりうるという観点から、200以上700未満であることが好ましい。
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を使用するゲルパーミュエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算値とすることができる。
【0028】
[質量比(R:E)]
本発明において、上記有機重合体の含有量Rと上記エポキシ樹脂の含有量Eとの質量比(R:E)は、95:5~50:50である。
質量比(R:E)が上記の範囲であることによって、本発明の効果が優れる。
質量比(R:E)は、本発明の効果がより優れ、得られる硬化物の引張弾性率が適正な範囲となりうるという観点から、95:5~60:40であることが好ましく、95:5~85:20がより好ましい。
【0029】
[シランカップリング剤]
本発明の接着剤組成物は、シランカップリング剤を含有する。
シランカップリング剤は、官能基と加水分解性シリル基とを有する化合物であれば特に限定されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
シランカップリング剤が有する加水分解性シリル基は、上述した有機重合体と反応することができる。
【0030】
(官能基)
シランカップリング剤が有する官能基としては、例えば、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、カルボキシル基、ビニル基、イソシアネート基、イソシアヌレート、ハロゲンが挙げられる。官能基は、加水分解性シリル基を含まないことが好ましい態様の1つとして挙げられる。
上記官能基がエポキシ基と反応可能である場合(例えば、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、カルボキシル基、ビニル基)、エポキシ基と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤は、上述したエポキシ樹脂と反応することができる。シランカップリング剤がエポキシ基と反応可能な官能基を有する場合、上記のようなシランカップリング剤は、得られる硬化物中で、上記有機重合体と上記エポキシ樹脂とを連結させることができ、本発明の効果がより優れ、得られる硬化物の引張弾性率が適正な範囲となりうるという観点から、好ましい。
【0031】
(加水分解性シリル基)
シランカップリング剤が有する加水分解性シリル基としては、例えばアルコキシシリル基が挙げられる。アルコキシシリル基は、例えば、上記有機重合体が有するアルコキシシリル基と同様とできる。
【0032】
シランカップリング剤において、上記官能基と上記加水分解性シリル基とは連結基を介して結合することができる。連結基は特に制限されない。
【0033】
(具体例)
シランカップリング剤としては、例えば、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシランのようなイソシアネート基含有シランカップリング剤;
γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-γ-アミノプロピルトリエトキシシランのようなアミノ基含有シランカップリング剤;
γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなメルカプト基含有シランカップリング剤;
γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランのようなエポキシ基含有シランカップリング剤;
β-カルボキシエチルトリエトキシシランのようなカルボキシ基含有シランカップリング剤が挙げられる。
【0034】
(ケチミン系シランカップリング剤)
また、シランカップリング剤として、例えば、潜在性シランカップリング剤を使用することができる。
潜在性シランカップリング剤は、一般的に、上述したシランカップリング剤が有する官能基が、保護基で保護されており、例えば、水によって上記官能基から保護基が外れて、シランカップリング剤が発生しうる化合物を指す。
潜在性シランカップリング剤としては、例えば、ケチミン系シランカップリング剤が挙げられる。
ケチミン系シランカップリング剤としては、例えば、上記のアミノ基含有シランカップリング剤と例えばメチルイソブチルケトン等のケトン化合物との反応によって得られる化合物が挙げられる。
【0035】
シランカップリング剤は、本発明の効果がより優れ、得られる硬化物の引張弾性率が適正な範囲となりうるという観点から、アミノ基含有シランカップリング剤又はケチミン系シランカップリング剤を含むことが好ましく、3-アミノプロピルトリメトキシシラン又は3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミンを含むことがより好ましい。
【0036】
[シランカップリング剤の含有量S]
本発明において、シランカップリング剤の含有量Sは、上記有機重合体の含有量R及び上記エポキシ樹脂の含有量Eの合計100質量部に対して、1.5~10質量部である。
上記含有量Sが上記の範囲であることによって、本発明の効果が優れる。
上記含有量Sは、本発明の効果がより優れ、得られる硬化物の引張弾性率が適正な範囲となりうるという観点から、含有量R及び含有量Eの合計100質量部に対して、2.0~9.0質量部であることが好ましい。
【0037】
(有機錫触媒)
本発明の接着剤組成物は、本発明の効果がより優れ、得られる硬化物の引張弾性率が適正な範囲となりうるという観点から、更に、有機錫触媒を含有することが好ましい。
有機錫触媒は、加水分解性シリル基の反応性を促進することができる。
【0038】
・具体例
有機スズ触媒としては、例えば、ジアルキル錫ジカルボキシレート類、ジアルキル錫アルコキシド類、ジアルキル錫の分子内配位性誘導体類、ジアルキル錫オキシドとエステル化合物との反応物、ジアルキル錫オキシドとシリケート化合物との反応物のような4価のスズ化合物類;2価のスズ化合物類が挙げられる。
なかでも、有機スズ触媒は、本発明の効果がより優れ、得られる硬化物の引張弾性率が適正な範囲となりうるという観点から、ジアルキル錫ジカルボキシレート類を含むことが好ましく、ジラウリル酸ジブチル錫を含むことがより好ましい。
【0039】
・含有量
有機スズ触媒の含有量は、本発明の効果がより優れ、得られる硬化物の引張弾性率が適正な範囲となりうるという観点から、上記有機重合体の含有量R及び上記エポキシ樹脂の含有量Eの合計100質量部に対して、0.05~2.0質量部であることが好ましい。
【0040】
(水)
本発明の接着剤組成物は、本発明の効果がより優れ、得られる硬化物の引張弾性率が適正な範囲となりうるという観点から、更に、水を含有することが好ましい。
水は、加水分解性シリル基の反応性を促進することができる。
水は特に制限されない。例えば、水道水、蒸留水が挙げられる。
【0041】
・含有量
水の含有量は、本発明の効果がより優れ、得られる硬化物の引張弾性率が適正な範囲となりうるという観点から、上記有機重合体の含有量R及び上記エポキシ樹脂の含有量Eの合計100質量部に対して、0.1~1.0質量部であることが好ましい。
【0042】
(第3級アミン)
本発明の接着剤組成物は、本発明の効果がより優れ、得られる硬化物の引張弾性率が適正な範囲となりうるという観点から、更に、第3級アミンを含有することが好ましい。
第3級アミンは、上述したエポキシ樹脂の硬化剤として機能することができる。
第3級アミンは、3つの炭化水素基が結合した窒素原子(第3級アミノ基)を有する化合物である。上記炭化水素基は特に制限されない。例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組合せが挙げられる。脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基は特に制限されない。
第3級アミンは、第3級アミノ基を構成する窒素原子を2個以上有することが好ましく、3個有することがより好ましい。
第3級アミンは、更にOH基を有してもよい。
【0043】
・具体例
第3級アミンとしては、例えば、(CH32N(CH2nN(CH32(式中nは1~10の整数)で示される直鎖状の第3級ジアミン(芳香族炭化水素は含まない);
(CH32-N(CH2n-CH3(式中nは0~10の整数)、N{(CH2nCH33(式中nは1~10の整数)で示されるアルキル第3級モノアミン(芳香族炭化水素は含まない);
ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の脂肪芳香族アミン類が挙げられる。
第3級アミンは、本発明の効果がより優れ、得られる硬化物の引張弾性率が適正な範囲となりうるという観点から、脂肪芳香族アミン類を含むことが好ましく、トリス(ジアルキルアミノアルキル)フェノールを含むことがより好ましく、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールを含むことがより好ましい。
第3級アミンとしての上記脂肪芳香族アミン類は、炭化水素基として、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基、又は、これらの組合せを有することができる。脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基は特に制限されない。
上記脂肪芳香族アミン類は、第3級アミノ基を構成する窒素原子を2個以上有することが好ましく、3個有することがより好ましい。
上記脂肪芳香族アミン類は、更にOH基を有してもよい。
【0044】
・含有量
第3級アミンの含有量は、本発明の効果がより優れ、得られる硬化物の引張弾性率が適正な範囲となりうるという観点から、上記有機重合体の含有量R及び上記エポキシ樹脂の含有量Eの合計100質量部に対して、0.5~5.0質量部であることが好ましい。
【0045】
(フィラー)
本発明の接着剤組成物は、本発明の効果がより優れ、得られる硬化物の引張弾性率が適正な範囲となりうるという観点から、更に、フィラーを含有することが好ましい。
フィラーとしては、例えば、カーボンブラック、シリカ、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、クレー、タルク、酸化チタン、酸化第二鉄が挙げられる。
フィラーは、例えば脂肪酸、脂肪酸エステルのような表面処理剤によって表面処理されていてもよい。
フィラーは、本発明の効果がより優れ、得られる硬化物の引張弾性率が適正な範囲となりうるという観点から、炭酸カルシウムを含むことが好ましい。
【0046】
・含有量
フィラーの含有量Fは、本発明の効果がより優れ、得られる硬化物の引張弾性率が適正な範囲となりうるという観点から、上記有機重合体の含有量R及び上記エポキシ樹脂の含有量Eの合計100質量部に対して、10~120質量部であることが好ましい。
【0047】
(任意成分)
本発明の接着剤組成物は、上述した成分以外の成分(任意成分)を更に含有していてもよい。任意成分としては、例えば、可塑剤、バルーン(中空体)、老化防止剤、酸化防止剤、溶剤、チクソトロピー剤が挙げられる。
【0048】
(形態)
本発明の接着剤組成物は、1液型又は2液型とすることができる。
【0049】
(1液型の加硫ゴム用接着剤組成物)
本発明の接着剤組成物が1液型である場合、
アルコキシシリル基を有する有機重合体と、芳香族炭化水素基を有するエポキシ樹脂と、シランカップリング剤と、有機錫触媒とを含み、
上記有機重合体の含有量R1と上記エポキシ樹脂の含有量E1との質量比(R1:E1)が、95:5~50:50であり、
上記シランカップリング剤の含有量S1が、上記含有量R1及び上記含有量E1の合計100質量部に対して、3.0~10質量部である、1液型の加硫ゴム用接着剤組成物が好ましい態様として挙げられる。
【0050】
アルコキシシリル基を有する有機重合体、芳香族炭化水素基を有するエポキシ樹脂、シランカップリング剤、有機錫触媒は、それぞれ、上記と同様である。含有量R1は上記含有量Rに、含有量E1は上記含有量Eに、含有量S1は上記含有量Sにそれぞれ対応する。
【0051】
・シランカップリング剤
本発明の接着剤組成物が1液型である場合、シランカップリング剤は、潜在性シランカップリング剤を含むことが好ましい。
本発明の接着剤組成物が1液型である場合、シランカップリング剤の含有量S1は、本発明の効果がより優れ、得られる硬化物の引張弾性率が適正な範囲となりうるという観点から、上記含有量R1及び上記含有量E1の合計100質量部に対して、5.0~10質量部であることが好ましい。
【0052】
・有機錫触媒の含有量
本発明の接着剤組成物が1液型である場合、有機錫触媒の含有量は、本発明の効果がより優れ、得られる硬化物の引張弾性率が適正な範囲となりうるという観点から、有機重合体の含有量R1及び上記エポキシ樹脂の含有量E1の合計100質量部に対して、0.05~0.5質量部であることが好ましい。
【0053】
(2液型の加硫ゴム用接着剤組成物)
本発明の接着剤組成物が、A剤とB剤とを有する2液型である場合、
A剤が、アルコキシシリル基を有する有機重合体と、第3級アミンと、シランカップリング剤とを含み、
B剤が、芳香族炭化水素基を有するエポキシ樹脂と、有機錫触媒と、水とを含み、
上記有機重合体の含有量R2と上記エポキシ樹脂の含有量E2との質量比(R2:E2)が、95:5~50:50であり、
上記シランカップリング剤の含有量S2が、上記含有量R2及び上記含有量E2の合計100質量部に対して、1.5~3.5質量部である、2液型の加硫ゴム用接着剤組成物が好ましい態様として挙げられる。
【0054】
アルコキシシリル基を有する有機重合体、第3級アミン、シランカップリング剤、芳香族炭化水素基を有するエポキシ樹脂、有機錫触媒、水は、それぞれ、上記と同様である。含有量R2は上記含有量Rに、含有量E2は上記含有量Eに、含有量S2は上記含有量Sにそれぞれ対応する。
【0055】
・シランカップリング剤
本発明の接着剤組成物が2液型である場合、シランカップリング剤は、潜在性シランカップリング剤以外であってもよい。
本発明の接着剤組成物が2液型である場合、シランカップリング剤の含有量S2は、本発明の効果がより優れ、得られる硬化物の引張弾性率が適正な範囲となりうるという観点から、上記含有量R2及び上記含有量E2の合計100質量部に対して、2.0~3.0質量部であることが好ましい。
【0056】
・有機錫触媒の含有量
本発明の接着剤組成物が2液型である場合、有機錫触媒の含有量は、本発明の効果がより優れ、得られる硬化物の引張弾性率が適正な範囲となりうるという観点から、有機重合体の含有量R2及び上記エポキシ樹脂の含有量E2の合計100質量部に対して、0.05~2.0質量部であることが好ましい。
【0057】
[製造方法]
本発明の接着剤組成物を製造する方法は特に限定されない。例えば、1液型の場合は、上述した各成分を混合する方法等が挙げられる。2液型の場合は、A剤及びB剤それぞれについて、上述した各成分を混合する方法等が挙げられる。
なお、2液型の場合は、使用時にA剤とB剤とを混合すればよい。
【0058】
[用途]
本発明の接着剤組成物は、加硫ゴム(例えば、タイヤ(特にインナーライナー))に他の材料(例えば、機器を収容するゴム製コンテナ)を固定するための接着剤として有用である。
【0059】
[使用方法]
本発明の接着剤組成物は、例えば、5~40℃の条件下で硬化することができる。本発明の接着剤組成物を硬化させる際、本発明の接着剤組成物を加熱しなくともよい。
本発明の接着剤組成物の使用方法としては、加硫ゴム及び/又は他の材料に本発明の接着剤組成物を塗布し、両者を張り合わせ、例えば、室温(例えば、5~40℃)条件下に置くことによって、本発明の接着剤組成物が硬化し、両者を接着させることができる。
【0060】
本発明の接着剤組成物を硬化させて得られる硬化物の25℃条件下での引張弾性率は、本発明の効果がより優れ、得られる硬化物の引張弾性率が適正な範囲であるという観点から、1.0×105~900×105Paであることが好ましい。引張弾性率が上記範囲である場合、応力(例えばタイヤの回転による応力)に対する硬化物のひずみ(変形)がより大きくなりうるので、応力がかかる環境下においても本発明の効果が優れると考えられる。
【0061】
[タイヤ]
本発明のタイヤは、加硫されたタイヤと部品とが本発明の加硫ゴム用接着剤組成物で接着されたタイヤである。
【0062】
〔加硫されたタイヤ〕
本発明のタイヤに使用される、加硫されたタイヤは、加硫後(加硫済み)のタイヤであれば特に制限されない。
〔接着剤組成物〕
本発明のタイヤに使用される、接着剤組成物は本発明の加硫ゴム用接着剤組成物であれば特に制限されない。
【0063】
〔部品〕
本発明のタイヤに使用される部品としては、例えば、センサーを内蔵するゴム製のコンテナが挙げられる。
(コンテナ)
上記コンテナ(の外部)は、ゴム製である。上記コンテナを形成するゴムは加硫されていることが好ましい。
上記コンテナを形成するゴムは特に制限されない。上記コンテナを形成するゴムはゴム成分として天然ゴムを含むことが好ましい。
(センサー)
上記コンテナに内蔵されるセンサーは特に制限されない。例えば、タイヤの空気圧、タイヤの磨耗状況、路面状況のような情報を取得する目的のセンサーが挙げられる。
【0064】
上記コンテナは、タイヤの例えばインナーライナー上に接着されることが好ましい態様として挙げられる。
【実施例0065】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
【0066】
[接着剤組成物の製造]
〔2液型の接着剤組成物〕
第1表に示されるA剤及びB剤それぞれについて、各成分を同表に示される割合(質量部)で混合することで2液型の接着剤組成物(A剤、B剤)を製造した。
2液型の接着剤組成物を使用する際、A液とB液とを混合した。
【0067】
〔1液型の接着剤組成物〕
第2表の各成分を同表に示す割合(質量部)で用いて、これらを撹拌機で混合し、1液型の接着剤組成物を製造した。
【0068】
[評価]
上記のとおり製造された各接着剤組成物を用いて以下の評価を行った。結果を各表に示す。
【0069】
〔接着性〕
上記のとおり製造された各接着剤組成物を用いて、以下の接着性(加硫ゴムに対する接着性)の評価を行った。
【0070】
加硫ゴム接着性の評価にあたり、まず、以下のとおり加硫ゴム1,2を調製した。
・加硫ゴム1の調製
以下の「加硫ゴム1用ゴム組成物」に示す成分から、硫黄、加硫促進剤を除く成分を1.8Lの密閉型ミキサーで5分間混練し放出しマスターバッチとした。得られたマスターバッチに、硫黄、加硫促進剤を加えてオープンロールで混合することにより、加硫ゴム1用ゴム組成物を調製した。
上記のとおり調製された加硫ゴム1用ゴム組成物を使用して所定形状の金型中で、170℃、10分間加硫して加硫ゴム1(25mm幅、長さ10cm、厚さ2mm)を作製した。
【0071】
((加硫ゴム1用ゴム組成物))
・ハロゲン化ブチルゴム100質量部(臭素化イソブチレンイソプレンラバー、EXXON CHEMICAL社製)
・カーボンブラック25質量部(新日化カーボン社製ニテロン#GN、N2SAが35m2/g
・酸化亜鉛3質量部(正同化学工業社製酸化亜鉛3種)
・硫黄3質量部(鶴見化学工業社製サルファックス5)
・加硫促進剤2質量部(大内新興化学工業社製DM-PO)
【0072】
・加硫ゴム2の調製
以下の「加硫ゴム2用ゴム組成物」に示す成分から、硫黄、加硫促進剤を除く成分を1.8Lの密閉型ミキサーで5分間混練し放出しマスターバッチとした。得られたマスターバッチに、硫黄、加硫促進剤を加えてオープンロールで混合することにより、加硫ゴム2用ゴム組成物を調製した。
上記のとおり調製された加硫ゴム2用ゴム組成物を使用して所定形状の金型中で、170℃、10分間加硫して加硫ゴム2(25mm幅、長さ10cm、厚さ2mm)を作製した。
【0073】
((加硫ゴム2用ゴム組成物))
・天然ゴム100質量部
・カーボンブラック25質量部(新日化カーボン社製ニテロン#GN、N2SAが35m2/g
・酸化亜鉛3質量部(正同化学工業社製酸化亜鉛3種)
・硫黄3質量部(鶴見化学工業社製サルファックス5)
・加硫促進剤2質量部(大内新興化学工業社製DM-PO)
【0074】
・試験体の調製
・・適用工程
上記のとおり製造された各接着剤組成物を、上記加硫ゴム1に塗布(塗布量:2~5g/cm2)し、上記加硫ゴム2と張り合わせ、積層体を得た。
【0075】
・・硬化工程
上記のとおり得られた各積層体を25℃、50%相対湿度の条件下に10分間置いて養生させ、加硫ゴム1、2の間に接着剤組成物による接着層(厚さ1mm)を有する試験体を得た。
【0076】
・引張試験
上記のとおり得られた各試験体を用いて、JIS K6854-3:1999(接着剤-剥離接着強さ試験方法 第3部:T系はく離)に準じて、25℃、引張速度50mm/分の条件下で剥離接着強さを測定した。
【0077】
・評価基準
上記のとおり測定された剥離接着強さから各下記基準で接着性を評価した。
本発明において、剥離接着強さが8N/m以上であった場合、接着性が優れると評価した。
一方、剥離接着強さが8N/m未満であった場合、接着性が悪いと評価した。
接着性の評価結果を以下のように示す。
・◎:25N/m以上
・○:20N/m以上25N/m未満
・△:8N/m以上20N/m未満
・×:8N/m未満
実用上、◎、○又は△であることが好ましく、◎又は○であることがより好ましく、◎であることがさらに好ましい。
【0078】
〔硬化物の引張弾性率〕
・測定方法
上記のとおり製造された各接着剤組成物を25℃、相対湿度60%の条件下に24時間置いて、硬化物を調製した。
調製された各硬化物を厚さ2mmのダンベル状(ダンベル状3号形)に切り出して試験片とした。
得られた各試験片について、JIS K6251:2017に準じ、25℃、50mm/分の引張り速度で試験を行い、各硬化物の引張弾性率[Pa]を測定した。
【0079】
・評価基準
上記のとおり測定された引張弾性率は、接着性がより優れるという観点から、1.0×105~900×105Paであることが好ましく、上記の範囲で引張弾性率がより小さいことがより好ましい。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。第2表も同様である。
((A剤))
(有機重合体)
・有機重合体1:カネカ社製サイリルMA490。末端にトリメトキシシリル基を有するポリ(メタ)アクリレート。1分子中のアルコキシシリル基の数は平均で2.5個
・有機重合体2:カネカ社製サイリルS400。末端にトリメトキシシリル基を有するポリ(メタ)アクリレート。1分子中のアルコキシシリル基の数は平均で3個
【0083】
(シランカップリング剤)
・シランカップリング剤1:3-アミノプロピルトリメトキシシラン。KBM-903、信越化学工業社製。
【化1】
・シランカップリング剤2:3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン。KBE-9103P、信越化学工業社製。
【化2】
【0084】
・第3級アミン:2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール。DMP30、和光純薬社製。
【化3】
【0085】
・フィラー1、3:重質炭酸カルシウム。スーパーS、丸尾カルシウム社製
・フィラー2、4:表面処理炭酸カルシウム。カルファイン200、丸尾カルシウム社製
【0086】
・有機錫触媒:ジラウリル酸ジブチル錫、東京化成工業社製
【0087】
(エポキシ樹脂)
・エポキシ樹脂1:ビスA型エポキシ樹脂。エピコート828、JER社製。重量平均分子量380、エポキシ当量190g/eq
・エポキシ樹脂2:ビスF型エポキシ樹脂。エピコート807、JER社製。重量平均分子量367、エポキシ当量183g/eq。
・(比較)エポキシ化植物油:エポキシ化大豆油、和光純薬社製。芳香族炭化水素基を有さない。
【0088】
・水:蒸留水
【0089】
各表に示す結果から明らかなように、本発明の接着剤組成物は、接着性が優れた。
【0090】
一方、質量比(R:E)が95:5~50:50を外れる、第1表の比較例1,2,4、第2表の比較例1,2は、接着性が悪かった。
シランカップリング剤の含有量Sが1.5質量部未満であった第1表の比較例3,4は、接着性が悪かった。
シランカップリング剤の含有量Sが10質量部を超えた第2表の比較例3は、接着性が悪かった。
芳香族炭化水素基を有するエポキシ樹脂を含まない、第1表の比較例5は、接着性が悪かった。
芳香族炭化水素基を有するエポキシ樹脂の代わりに芳香族炭化水素基を有さないエポキシ樹脂を含有する、第1表の比較例6、第2表の比較例4は、接着性が悪かった。