(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082964
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】単相電力変換装置及びそれを備えた電磁振動機
(51)【国際特許分類】
H02M 5/257 20060101AFI20230608BHJP
【FI】
H02M5/257 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197016
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】村田 裕彦
【テーマコード(参考)】
5H750
【Fターム(参考)】
5H750AA04
5H750AA09
5H750BA01
5H750CC02
5H750CC06
5H750DD07
5H750EE01
(57)【要約】
【課題】交流電源からコイルに対して単相の電力を供給する単相電力変換装置において、コンデンサを用いずに、コンパクトで且つ長寿命な構成を実現する。
【解決手段】単相電力変換装置1は、交流電源2からコイル3に対して単相の電力を供給する単相電力変換装置である。単相電力変換装置1は、交流電源2からコイル3に対して一方向に流れて周期的に変化する電流を供給するように、交流電源2及びコイル3に対して電気的に接続された複数のスイッチング素子SW1~SW4を有するスイッチング回路10と、複数のスイッチング素子SW1~SW4の駆動を制御する駆動制御部20と、を有する。駆動制御部20は、入力される電流指令の変化傾向及び前記電流指令とコイル3に流れる電流との差に基づいて、複数のスイッチング素子SW1~SW4の駆動を制御することにより、スイッチング回路10を力行動作、回生動作及び還流動作のいずれかで動作させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源からコイルに対して単相の電力を供給する単相電力変換装置において、
前記交流電源から前記コイルに対して一方向に流れて周期的に変化する電流を供給するように、前記交流電源及び前記コイルに対して電気的に接続された複数のスイッチング素子を有するスイッチング回路と、
前記複数のスイッチング素子の駆動を制御する駆動制御部と、
を有し、
前記駆動制御部は、入力される電流指令の変化傾向及び前記電流指令と前記コイルに流れる電流との差に基づいて、前記複数のスイッチング素子の駆動を制御することにより、前記スイッチング回路を力行動作、回生動作及び還流動作のいずれかで動作させる、
単相電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の単相電力変換装置において、
前記駆動制御部は、
前記電流指令が増加傾向であり且つ前記コイルに流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合には、前記スイッチング回路を力行動作させるように前記複数のスイッチング素子の駆動を制御し、
前記電流指令が減少傾向であり且つ前記コイルに流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合には、前記スイッチング回路を回生動作させるように前記複数のスイッチング素子の駆動を制御し、
前記電流指令が増加傾向であり且つ前記コイルに流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合、または、前記電流指令が減少傾向であり且つ前記コイルに流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合には、前記スイッチング回路を還流動作させるように前記複数のスイッチング素子の駆動を制御する、
単相電力変換装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の単相電力変換装置において、
前記複数のスイッチング素子は、それぞれ電気的に直列に接続された一対のスイッチング素子を2組含み、
前記2組の一対のスイッチング素子は、前記コイルに対して電気的に並列に接続されているとともに、それぞれの中点が前記交流電源に電気的に接続されている、
単相電力変換装置。
【請求項4】
請求項3に記載の単相電力変換装置において、
前記駆動制御部は、前記スイッチング回路が力行動作または回生動作で動作している際に、前記交流電源から出力される電圧の極性に応じて、前記2組の一対のスイッチング素子において一対のスイッチング素子のうちオン状態にするスイッチング素子をそれぞれ決定する、
単相電力変換装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の単相電力変換装置と、
前記単相電力変換装置によって一方向に周期的な電流が供給される前記コイルと、
前記コイルへの通電によって弾性変形を生じて振動を発生する弾性変形部と、
を有する、
電磁振動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電源からコイルに対して単相の電力を供給する単相電力変換装置及びそれを備えた電磁振動機に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電源からコイルに対して単相の電力を供給する単相電力変換装置が知られている。このような単相電力変換装置として、例えば特許文献1に開示される電磁振動機用単相インバータ回路が知られている。
【0003】
前記電磁振動用単相インバータ回路は、2個のスイッチング手段及び2個のダイオードがブリッジ接続された逆変換回路を有する。前記逆変換回路の入力側は、直流電源に接続されていて、前記逆変換回路の出力側は、電磁振動機用励磁コイルの入力端子に接続されている。このような回路構成により、前記電磁振動用単相インバータ回路は、一方向のみに断続的に電流を供給する単相インバータを構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1に開示されている電磁振動用単相インバータ回路では、直流電源を用いている。前記直流電源は、例えば、交流電源とコンデンサを有する整流回路とによって、負荷に対して直流電力を供給するように構成されている。また、前記特許文献1に開示されている電磁振動用単相インバータ回路のように、誘導性負荷であるコイルに対して電力を供給する回路では、前記コイルに電力を供給する力行動作と、前記コイルから電源側に電力を戻す回生動作とを繰り返す。
【0006】
上述のようにコンデンサを有する整流回路を用いて、誘導性負荷であるコイルに電力を供給する場合、上述のような力行動作及び回生動作によって、前記コンデンサに流れる電流が変動するため、前記整流回路の電圧が変動する。この電圧変動を適正範囲内に抑えるためには、前記コンデンサの静電容量を大型化する必要があり、このような要件を満たすコンデンサとして電解コンデンサが用いられるのが一般的である。
【0007】
前記コンデンサは、単相インバータ回路の力行動作及び回生動作によって生じる電流変動により、発熱する。上述のように前記コンデンサとして電解コンデンサを用いた場合、前記電流変動や周囲温度による自己発熱によって劣化するため、他の部品に比べて寿命が短くなる可能性がある。
【0008】
このように、前記整流回路のコンデンサによって、電力変換装置全体のサイズが大きくなるとともに、電力変換装置の寿命が決まることになる。
【0009】
本発明の目的は、交流電源からコイルに対して単相の電力を供給する単相電力変換装置において、コンデンサを用いずに、コンパクトで且つ長寿命な構成を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係る単相電力変換装置は、交流電源からコイルに対して単相の電力を供給する単相電力変換装置である。この単相電力変換装置は、前記交流電源から前記コイルに対して一方向に流れて周期的に変化する電流を供給するように、前記交流電源及び前記コイルに対して電気的に接続された複数のスイッチング素子を有するスイッチング回路と、前記複数のスイッチング素子の駆動を制御する駆動制御部と、を有する。前記駆動制御部は、入力される電流指令の変化傾向及び前記電流指令と前記コイルに流れる電流との差に基づいて、前記複数のスイッチング素子の駆動を制御することにより、前記スイッチング回路を力行動作、回生動作及び還流動作のいずれかで動作させる(第1の構成)。
【0011】
スイッチング回路によって、交流電源からコイルに対して一方向に流れて周期的に変化する電流を供給できるとともに、電流指令の変化傾向及び前記電流指令と前記コイルに流れる電流との差に基づいて、前記スイッチング回路を、誘導性負荷である前記コイルに対して、力行動作、回生動作及び還流動作のいずれかで動作させることができる。よって、コンデンサを有する整流回路を用いることなく、前記交流電源から前記コイルに対して一方向に流れて周期的に変化する電流を供給して、前記コイルを含む回路において力行動作、回生動作及び還流動作を実現できる。
【0012】
したがって、交流電源からコイルに対して単相の電力を供給する単相電力変換装置において、コンデンサを用いる必要がないため、コンパクトで且つ長寿命な構成を実現できる。
【0013】
前記第1の構成において、前記駆動制御部は、前記電流指令が増加傾向であり且つ前記コイルに流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合には、前記スイッチング回路を力行動作させるように前記複数のスイッチング素子の駆動を制御し、前記電流指令が減少傾向であり且つ前記コイルに流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合には、前記スイッチング回路を回生動作させるように前記複数のスイッチング素子の駆動を制御し、前記電流指令が増加傾向であり且つ前記コイルに流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合、または、前記電流指令が減少傾向であり且つ前記コイルに流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合には、前記スイッチング回路を還流動作させるように前記複数のスイッチング素子の駆動を制御する(第2の構成)。
【0014】
これにより、電流指令が増加していてコイルに流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合には、スイッチング回路を力行動作させることにより、交流電源から前記コイルに電力を供給することができる。一方、前記電流指令が減少していて前記コイルに流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合には、前記スイッチング回路を回生動作させることにより、前記コイルから前記交流電源に電力を戻すことができる。また、前記電流指令が増加していて前記コイルに流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合、または、前記電流指令が減少していて前記コイルに流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合には、前記スイッチング回路を還流動作させることにより、前記スイッチング回路で電流を還流させることができる。これにより、スイッチング回路を構成するスイッチング素子のスイッチング回数を減らしつつ、前記コイルに流れる電流を前記電流指令に近づけることができる。
【0015】
以上のように、上述の構成により、第1の構成における駆動制御部の動作を実現することができる。よって、上述の構成により、交流電源からコイルに対して単相の電力を供給する単相電力変換装置において、コンデンサを用いる必要がないため、コンパクトで且つ長寿命な構成を実現できる。
【0016】
前記第1または第2の構成において、前記複数のスイッチング素子は、それぞれ電気的に直列に接続された一対のスイッチング素子を2組含む。前記2組の一対のスイッチング素子は、前記コイルに対して電気的に並列に接続されているとともに、それぞれの中点が前記交流電源に電気的に接続されている(第3の構成)。
【0017】
上述の構成により、第1の構成におけるスイッチング回路の構成を実現することができる。よって、上述の構成により、交流電源からコイルに対して単相の電力を供給する単相電力変換装置において、コンデンサを用いる必要がないため、コンパクトで且つ長寿命な構成を実現できる。
【0018】
前記第3の構成において、前記駆動制御部は、前記スイッチング回路が力行動作または回生動作で動作している際に、前記交流電源から出力される電圧の極性に応じて、前記2組の一対のスイッチング素子において一対のスイッチング素子のうちオン状態にするスイッチング素子をそれぞれ決定する(第4の構成)。
【0019】
これにより、交流電源から出力される電圧の極性に応じて、2組の一対のスイッチング素子において一対のスイッチング素子のうち一方のスイッチング素子をオン状態にして、スイッチング回路に力行動作または回生動作を行わせることができる。
【0020】
本発明の一実施形態に係る電磁振動機は、前記第1から第4の構成のうちいずれか一つの構成を有する単相電力変換装置と、前記単相電力変換装置によって一方向に流れて周期的に変化する電流が供給される前記コイルと、前記コイルへの通電によって弾性変形を生じて振動を発生する弾性変形部と、を有する(第5の構成)。
【0021】
これにより、コンパクトで且つ長寿命な電磁振動機を実現することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一実施形態に係る単相電力変換装置は、交流電源からコイルに対して一方向に流れて周期的に変化する電流を供給するように、前記交流電源及び前記コイルに対して電気的に接続された複数のスイッチング素子を有するスイッチング回路と、前記複数のスイッチング素子の駆動を制御する駆動制御部と、を有する。前記駆動制御部は、入力される電流指令の変化傾向及び前記電流指令と前記コイルに流れる電流との差に基づいて、前記複数のスイッチング素子の駆動を制御することにより、前記スイッチング回路を力行動作、回生動作及び還流動作のいずれかで動作させる。
【0023】
これにより、コンデンサを有する整流回路を用いることなく、前記交流電源から前記コイルに対して一方向に流れて周期的に変化する電流を供給して、前記コイルを含む回路において力行動作、回生動作及び還流動作を実現できる。したがって、前記交流電源から前記コイルに対して単相の電力を供給する単相電力変換装置において、コンデンサを用いる必要がないため、コンパクトで且つ長寿命な構成を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、実施形態に係る単相電力変換装置の概略構成を示す回路図である。
【
図2】
図2は、交流電源から出力される電圧の極性が正で且つスイッチング回路が力行動作を行っている場合の電流の流れを示す図である。
【
図3】
図3は、交流電源から出力される電圧の極性が負で且つスイッチング回路が力行動作を行っている場合の電流の流れを示す図である。
【
図4】
図4は、交流電源から出力される電圧の極性が正で且つスイッチング回路が回生動作を行っている場合の電流の流れを示す図である。
【
図5】
図5は、交流電源から出力される電圧の極性が負で且つスイッチング回路が回生動作を行っている場合の電流の流れを示す図である。
【
図6】
図6は、スイッチング回路が還流動作を行っている場合の電流の流れを示す図である。
【
図7】
図7は、スイッチング回路が還流動作を行っている場合の電流の流れを示す図である。
【
図8】
図8は、スイッチング回路が上述の各動作を行った場合にコイルに流れる電流の波形の一例を示す
【
図9】
図9は、
図8の各タイミングにおけるスイッチング素子のスイッチングパターンの一覧を示す図である。
【
図10】
図10は、単相電力変換装置の駆動時において、電流指令、交流電源の出力電流、コイルに流れる電流、スイッチング素子のスイッチングパターンなどの関係を示す図である。
【
図11】
図11は、単相電力変換装置及びコイルを備えた電磁振動機の一例の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0026】
(単相電力変換装置の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る単相電力変換装置1の概略構成を示す図である。この単相電力変換装置1は、交流電源2からコイル3に対して、一方向に流れて周期的に変化する電流を供給する。すなわち、単相電力変換装置1は、コイル3に対して電流を一方向に流すとともに、コイル3に流れる電流を周期的に変化させる(後述する
図10(d)参照)。コイル3は、例えば、電磁振動機で用いられる電磁振動機用コイルである。前記電磁振動機の構成は、後述する。
【0027】
単相電力変換装置1は、スイッチング回路10と、駆動制御部20とを有する。スイッチング回路10は、複数のスイッチング素子SW1~SW4と、ダイオードD1~D4とを有する。
【0028】
複数のスイッチング素子SW1~SW4のうちスイッチング素子SW1,SW2は、電気的に直列に接続されている。よって、スイッチング素子SW1,SW2は、第1スイッチングレグ11を構成する。なお、スイッチング素子SW1,SW2は、本発明における一対のスイッチング素子である。
【0029】
複数のスイッチング素子SW1~SW4のうちスイッチング素子SW3,SW4は、電気的に直列に接続されている。よって、スイッチング素子SW3,SW4は、第2スイッチングレグ12を構成する。なお、スイッチング素子SW3,SW4は、本発明における一対のスイッチング素子である。
【0030】
以上のように、スイッチング回路10は、第1スイッチングレグ11と、第2スイッチングレグ12とを有する。すなわち、スイッチング回路10は、2組の一対のスイッチング素子を有する。
【0031】
第1スイッチングレグ11及び第2スイッチングレグ12は、コイル3に対して電気的に並列に接続されている。具体的には、第1スイッチングレグ11及び第2スイッチングレグ12の一端はコイル3の他端に接続され、第1スイッチングレグ11及び第2スイッチングレグ12の他端はコイル3の一端に接続されている。
【0032】
第1スイッチングレグ11におけるスイッチング素子SW1,SW2の中点、及び、第2スイッチングレグ12におけるスイッチング素子SW3,SW4の中点は、それぞれ、交流電源2に電気的に接続されている。具体的には、第1スイッチングレグ11におけるスイッチング素子SW1,SW2の中点は、交流電源2の一方の端子に電気的に接続され、第2スイッチングレグ12におけるスイッチング素子SW3,SW4の中点は、交流電源2の他方の端子に電気的に接続されている。
【0033】
ダイオードD1~D4は、スイッチング素子SW1~SW4とコイル3との間で、スイッチング素子SW1~SW4に対して電気的に直列に接続されている。具体的には、ダイオードD1は、スイッチング素子SW1とコイル3との間に、コイル3からスイッチング素子SW1に電流が流れるように設けられている。ダイオードD2は、スイッチング素子SW2とコイル3との間に、スイッチング素子SW2からコイル3に電流が流れるように設けられている。ダイオードD3は、スイッチング素子SW3とコイル3との間に、コイル3からスイッチング素子SW3に電流が流れるように設けられている。ダイオードD4は、スイッチング素子SW4とコイル3との間に、スイッチング素子SW4からコイル3に電流が流れるように設けられている。
【0034】
上述のようにスイッチング回路10にダイオードD1~D4を設けることにより、スイッチング素子SW1~SW4に逆方向に電流が流れるのを防止できる。よって、スイッチング素子SW1~SW4に、耐圧があまり高くないスイッチング素子を用いることができる。しかも、スイッチング回路10内での電流の流れを確保するために、スイッチング素子SW1~SW4をスイッチング動作させる際に全てオン状態にする場合でも、スイッチング素子SW1~SW4に逆方向に電流が流れるのをダイオードD1~D4によって防止できる。
【0035】
駆動制御部20は、入力される電流指令に応じてスイッチング素子SW1~SW4の駆動を制御する。駆動制御部20は、入力される電流指令の変化傾向及び前記電流指令とコイル3に流れる電流との差に基づいて、例えば、スイッチング素子SW1~SW4に対して、スイッチング素子SW1~SW4をオン状態にする駆動信号を出力する。前記電流指令の変化傾向は、例えば、前記電流指令の時間当たりの変化量が増加している場合には増加傾向であり、前記電流指令の時間当たりの変化量が減少している場合には減少傾向である。
【0036】
具体的には、駆動制御部20は、前記電流指令が増加傾向であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合には、スイッチング回路10を後述する力行動作させるようにスイッチング素子SW1~SW4の駆動を制御する。また、駆動制御部20は、前記電流指令が減少傾向であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合には、スイッチング回路10を後述する回生動作させるようにスイッチング素子SW1~SW4の駆動を制御する。また、駆動制御部20は、前記電流指令が増加傾向であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合、または、前記電流指令が減少傾向であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合には、スイッチング回路10を後述する還流動作させるようにスイッチング素子SW1~SW4の駆動を制御する。
【0037】
詳しくは後述するが、前記力行動作は、スイッチング素子SW1~SW4の駆動により、スイッチング回路10が交流電源2からコイル3に対して電力を供給する動作である。前記回生動作は、スイッチング素子SW1~SW4の駆動により、スイッチング回路10がコイル3から交流電源2に電力を戻す動作である。前記還流動作は、スイッチング素子SW1~SW4の駆動により、スイッチング回路10及びコイル3によって構成される回路内で電流を還流させる動作である。
【0038】
以上のような構成を有するスイッチング回路10では、駆動制御部20によるスイッチング素子SW1~SW4の駆動により、交流電源2からコイル3に対して、一方向に流れて周期的に変化する電流を供給することができる。しかも、スイッチング素子SW1~SW4の駆動により、スイッチング回路10を、力行動作、回生動作及び還流動作のいずれかで動作させることができる。以下で、スイッチング回路10の各動作について説明する。
【0039】
(力行動作)
まず、スイッチング回路10の力行動作について、
図2及び
図3を用いて説明する。スイッチング回路10の力行動作は、上述のとおり、電流指令が増加傾向であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合に行われる動作である。スイッチング回路10の力行動作では、交流電源2から出力される電圧の極性に応じて、スイッチング素子SW2,SW3がオン状態、または、スイッチング素子SW1,SW4がオン状態である。
【0040】
なお、以下の説明において、交流電源2から第1スイッチングレグ11に電流が流れるような電圧の極性を正として、交流電源2から第2スイッチングレグ12に電流が流れるような電圧の極性を負とする。交流電源2から出力される電圧の極性が正でスイッチング素子SW2,SW3がオン状態の場合の電流の流れを
図2に示す。交流電源2から出力される電圧の極性が負でスイッチング素子SW1,SW4がオン状態の場合の電流の流れを
図3に示す。
【0041】
前記力行動作において、交流電源2から出力される電圧の極性が正でスイッチング素子SW2,SW3がオン状態の場合には、スイッチング素子SW1,SW4はオフ状態である。この場合、
図2に実線矢印で示すように、交流電源2から、スイッチング素子SW2、ダイオードD2、コイル3、ダイオードD3及びスイッチング素子SW3の順に回路内に電流が流れる。
【0042】
一方、前記力行動作において、交流電源2から出力される電圧の極性が負でスイッチング素子SW1,SW4がオン状態の場合には、スイッチング素子SW2,SW3はオフ状態である。この場合、
図3に実線で示すように、交流電源2から、スイッチング素子SW4、ダイオードD4、コイル3、ダイオードD1及びスイッチング素子SW1の順に回路内に電流が流れる。
【0043】
図2及び
図3のいずれの場合でも、スイッチング回路10によって、交流電源2からコイル3に対して一方向に周期的な電流を供給することができる。すなわち、交流電源2からコイル3に対して電力が供給される。
【0044】
(回生動作)
スイッチング回路10の回生動作について、
図4及び
図5を用いて説明する。スイッチング回路10の回生動作は、上述のとおり、電流指令が減少傾向であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合に行われる動作である。スイッチング回路10の回生動作では、交流電源2から出力される電圧の極性に応じて、スイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW4がオン状態、または、スイッチング素子SW2及びスイッチング素子SW3がオン状態である。交流電源2から出力される電圧の極性が正でスイッチング素子SW1,SW4がオン状態の場合の電流の流れを
図4に示す。交流電源2から出力される電圧の極性が負でスイッチング素子SW2,SW3がオン状態の場合の電流の流れを
図5に示す。
【0045】
前記回生動作において、交流電源2から出力される電圧の極性が正でスイッチング素子SW1,SW4がオン状態の場合には、スイッチング素子SW2,SW3はオフ状態である。この場合、誘導性負荷であるコイル3には電流が一方向に流れ続けるため、
図4に実線矢印で示すように、コイル3から、ダイオードD1、スイッチング素子SW1、交流電源2、スイッチング素子SW4及びダイオードD4の順に回路内に電流が流れる。すなわち、コイル3から交流電源2に向かって回路内に電流が流れる。
【0046】
一方、前記回生動作において、交流電源2から出力される電圧の極性が負でスイッチング素子SW2,SW3がオン状態の場合には、スイッチング素子SW1,SW4はオフ状態である。この場合、誘導性負荷であるコイル3には電流が一方向に流れ続けるため、
図5に実線矢印で示すように、コイル3から、ダイオードD3、スイッチング素子SW3、交流電源2、スイッチング素子SW2及びダイオードD2の順に回路内に電流が流れる。すなわち、コイル3から交流電源2に向かって回路内に電流が流れる。
【0047】
図4及び
図5のいずれの場合でも、スイッチング回路10によって、コイル3から交流電源2に対して電流を流すことができる。すなわち、コイル3から交流電源2に対して電力が戻される。
【0048】
(還流動作)
スイッチング回路10の還流動作について、
図6及び
図7を用いて説明する。スイッチング回路10の還流動作は、上述のとおり、電流指令が増加傾向であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合、または、前記電流指令が減少傾向であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合に、行われる動作である。スイッチング回路10の還流動作では、交流電源2から出力される電圧の極性に関係なく、スイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW2がオン状態、または、スイッチング素子SW3及びスイッチング素子SW4がオン状態である。スイッチング素子SW1,SW2がオン状態の場合の電流の流れを
図6に示す。スイッチング素子SW3,SW4がオン状態の場合の電流の流れを
図7に示す。
【0049】
前記還流動作において、スイッチング素子SW1,SW2がオン状態の場合には、スイッチング素子SW3,SW4はオフ状態である。この場合、誘導性負荷であるコイル3には電流が一方向に流れ続けるため、
図6に実線矢印で示すように、コイル3から、ダイオードD1、スイッチング素子SW1、スイッチング素子SW2及びダイオードD2の順に回路内に電流が流れる。
【0050】
一方、前記還流動作において、スイッチング素子SW3,SW4がオン状態の場合には、スイッチング素子SW1,SW2はオフ状態である。この場合、誘導性負荷であるコイル3には電流が一方向に流れ続けるため、
図7に実線矢印で示すように、コイル3から、ダイオードD3、スイッチング素子SW3、スイッチング素子SW4及びダイオードD4の順に回路内に電流が流れる。
【0051】
次に、スイッチング回路10が上述の各動作を行った場合に、コイル3に流れる電流の一例を説明する。
図8は、スイッチング回路10が上述の各動作を行った場合にコイル3に流れる電流の波形の一例を示す図である。なお、
図8には、説明のために、交流電源2から出力される交流電流の波形も細実線で示す。
【0052】
スイッチング回路10が上述の各動作を行うことにより、コイル3に流れる電流波形として、
図8に示すように正弦波状の電流指令(破線)に近い電流波形(太実線)が得られる。
【0053】
図9は、
図8の各タイミングにおけるスイッチング素子SW1~SW4のスイッチングパターンの一覧を示す図である。
図9において、I~VIIIにおけるスイッチングパターンは、
図8に図示されているI~VIIIの各時点におけるスイッチングパターンである。
【0054】
また、
図9において、Aは電流指令の変化傾向を示しており、前記電流指令が増加傾向の場合には「+」であり、前記電流指令が減少傾向の場合には「-」である。
図9において、Bは前記電流指令とコイル3に流れる電流との差の極性を示しており、コイル3に流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合には「+」であり、コイル3に流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合には「-」である。
図9において、Cは交流電源2から出力される電圧の極性を示しており、前記電圧の極性が正の場合には「+」であり、前記電圧の極性が負の場合には「-」である。
【0055】
例えば、
図9のI、IIIに示すように、電流指令が増加傾向(Aが+)であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも小さい(Bが+)場合には、駆動制御部20によるスイッチング素子SW1~SW4の駆動制御によって、スイッチング回路10は力行動作を行う。すなわち、スイッチング回路10のスイッチング素子SW2及びスイッチング素子SW3がオン状態、または、スイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW4がオン状態になる。スイッチング素子SW2及びスイッチング素子SW3、または、スイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW4のいずれがオン状態になるかは、交流電源2から出力される電圧の極性(Cの+、-)に応じて決まる。すなわち、駆動制御部20は、交流電源2から出力される電圧の極性に応じて、2組の一対のスイッチング素子(第1スイッチングレグ11、第2スイッチングレグ12)においてそれぞれ駆動するスイッチング素子を決定する。
【0056】
上述のようにスイッチング回路10が力行動作を行うことにより、交流電源2からコイル3に電力が供給される。交流電源2からコイル3に流れる電流は、後述する
図10(d)に示すように、一方向に流れて周期的に変化する電流である。
【0057】
また、
図9のVI、VIIIに示すように、電流指令が減少傾向(Aが-)であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも大きい(Bが-)場合には、駆動制御部20によるスイッチング素子SW1~SW4の駆動制御によって、スイッチング回路10は回生動作を行う。すなわち、スイッチング回路10のスイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW4がオン状態、または、スイッチング素子SW2及びスイッチング素子SW3がオン状態になる。スイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW4、または、スイッチング素子SW2及びスイッチング素子SW3のいずれがオン状態になるかは、交流電源2から出力される電圧の極性(Cの+、-)に応じて決まる。すなわち、駆動制御部20は、交流電源2から出力される電圧の極性に応じて、2組の一対のスイッチング素子(第1スイッチングレグ11、第2スイッチングレグ12)においてそれぞれ駆動するスイッチング素子を決定する。
【0058】
上述のようにスイッチング回路10が回生動作を行うことにより、コイル3から交流電源2に電力が戻される。この際も、コイル3に流れる電流は、一方向に流れて周期的に変化する電流である。
【0059】
また、
図9のII、IVに示すように電流指令が増加傾向(Aが+)であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも大きい(Bが-)場合や、
図9のV、VIIに示すように電流指令が減少傾向(Aが-)であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも小さい(Bが+)場合には、駆動制御部20によるスイッチング素子SW1~SW4の駆動制御によって、スイッチング回路10は、還流動作を行う。すなわち、スイッチング回路10のスイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW2がオン状態、または、スイッチング素子SW3及びスイッチング素子SW4がオン状態になる。例えば、スイッチング素子SW1~SW4のスイッチング動作が最も少なくなるように、スイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW4がオン状態、または、スイッチング素子SW2及びスイッチング素子SW3がオン状態になってもよい。
【0060】
上述のようにスイッチング回路10が還流動作を行うことにより、力行動作または回生動作を行うことなく、電流指令が変化して該電流指令とコイル3に流れる電流との差が小さくなる。よって、スイッチング素子SW1~SW4のスイッチング回数を減らしつつ、コイル3に流れる電流を前記電流指令に近づけることができる。これにより、単相電力変換装置1で生じる損失を低減することができる。
【0061】
本実施形態の単相電力変換装置1は、交流電源2からコイル3に対して単相の電力を供給する単相電力変換装置である。単相電力変換装置1は、交流電源2からコイル3に対して一方向に流れて周期的に変化する電流を供給するように、交流電源2及びコイル3に対して電気的に接続された複数のスイッチング素子SW1~SW4を有するスイッチング回路10と、複数のスイッチング素子SW1~SW4の駆動を制御する駆動制御部20と、を有する。駆動制御部20は、入力される電流指令の変化傾向及び前記電流指令とコイル3に流れる電流との差に基づいて、複数のスイッチング素子SW1~SW4の駆動を制御することにより、スイッチング回路10を力行動作、回生動作及び還流動作のいずれかで動作させる。
【0062】
本実施形態のスイッチング回路10によって、交流電源2からコイル3に対して一方向に流れて周期的に変化する電流を供給できるとともに、前記電流指令の変化傾向及び前記電流指令とコイル3に流れる電流との差に基づいて、スイッチング回路10を、誘導性負荷であるコイル3に対して、力行動作、回生動作及び還流動作のいずれかで動作させることができる。よって、コンデンサを有する整流回路を用いることなく、交流電源2からコイル3に対して一方向に流れて周期的に変化する電流を供給して、コイル3を含む回路において力行動作、回生動作及び還流動作を実現できる。
【0063】
したがって、交流電源2からコイル3に対して単相の電力を供給する単相電力変換装置1において、コンデンサを用いる必要がないため、コンパクトで且つ長寿命な構成を実現できる。
【0064】
しかも、本実施形態の単相電力変換装置1では、コンデンサが不要になることで、電源スイッチがオンになる際に前記コンデンサへの突入電流を考慮する必要がなくなる。よって、本実施形態の単相電力変換装置1では、突入電流防止回路が不要になる。
【0065】
また、本実施形態では、駆動制御部20は、前記電流指令が増加傾向であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合には、スイッチング回路10を力行動作させるようにスイッチング素子SW1~SW4の駆動を制御し、前記電流指令が減少傾向であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合には、スイッチング回路10を回生動作させるようにスイッチング素子SW1~SW4の駆動を制御し、前記電流指令が増加傾向であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合、または、前記電流指令が減少傾向であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合には、スイッチング回路10を還流動作させるようにスイッチング素子SW1~SW4の駆動を制御する。
【0066】
これにより、前記電流指令が増加していてコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合には、スイッチング回路10を力行動作させることにより、交流電源2からコイル3に電力を供給することができる。一方、前記電流指令が減少していてコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合には、スイッチング回路10を回生動作させることにより、コイル3から交流電源2に電力を戻すことができる。また、前記電流指令が増加していてコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合、または、前記電流指令が減少していてコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合には、スイッチング回路10を還流動作させることにより、スイッチング回路10で電流を還流させることができる。これにより、スイッチング回路10を構成するスイッチング素子SW1~SW4のスイッチング回数を減らしつつ、コイル3に流れる電流を前記電流指令に近づけることができる。
【0067】
また、本実施形態では、駆動制御部20は、スイッチング回路10が力行動作または回生動作で動作している際に、交流電源2から出力される電圧の極性に応じて、2組の一対のスイッチング素子において一対のスイッチング素子のうちオン状態にするスイッチング素子をそれぞれ決定する。
【0068】
これにより、交流電源2から出力される電圧の極性に応じて、2組の一対のスイッチング素子において一対のスイッチング素子のうち一方のスイッチング素子をオン状態にして、スイッチング回路10に力行動作または回生動作を行わせることができる。
【0069】
図10は、上述の構成を有する単相電力変換装置1の駆動時において、電流指令、交流電源2の出力電流、コイル3に流れる電流、スイッチング素子SW1~SW4のスイッチングパターンなどの関係を示す図である。
図10において、(a)は電流指令であり、(b)は電流指令の変化傾向であり、(c)は交流電源2の出力電流であり、(d)はコイル3に流れる電流であり、(e)は電流指令とコイル3に流れる電流との差であり、(f)~(i)はスイッチング素子SW1~SW4のスイッチングパターンである。
【0070】
図10に示すように、単相電力変換装置1では、スイッチング素子SW1~SW4は間欠的にスイッチング動作を行う。よって、電圧制御側の正弦波PWM方式に比べて、スイッチング素子SW1~SW4のスイッチング回数を減らすことができる。よって、単相電力変換装置1の損失を低減することができる。
【0071】
(電磁振動機)
図11は、上述の構成を有する単相電力変換装置1及びコイル3を備えた電磁振動機100の一例の概略構成を示す模式図である。電磁振動機100は、パーツフィーダ、リニアフィーダ、ボウルフィーダ、振動搬送機などのように、コイル3に生じる磁気吸引力を利用して振動可能な構成であれば、どのような装置であってもよい。
【0072】
図11に示すように、電磁振動機100は、単相電力変換装置1と、コイル3と、弾性変形部101と、可動コア102と、トラフ103と、ベース部104とを備える。
【0073】
電磁振動機100は、単相電力変換装置1によって、交流電源2からコイル3に対して、一方向に流れて周期的に変化する電流を供給する。コイル3は、単相電力変換装置1を介して交流電源2から供給される電流によって、磁気吸引力を生じる。
【0074】
弾性変形部101は、ベース部104とトラフ103とを接続する。本実施形態では、電磁振動機100は、一対の弾性変形部101を有する。弾性変形部101は、弾性変形可能な板状部材である。弾性変形部101は、例えば、一方向に延びる金属製の板バネである。なお、弾性変形部101は、例えば、共振周波数がコイル3の駆動周波数(磁気吸引力が発生する周波数)と一致している。
【0075】
可動コア102は、トラフ103に接続されている。可動コア102は、コイル3の近傍に位置し、コイルに生じた磁気吸引力によってコイル3に引き寄せられる。
【0076】
上述の構成により、コイル3に対して電流が一方向に流れて周期的に変化すると、コイル3に生じる磁気吸引力が変化して、可動コア102がコイル3に対して近づく方向と離れる方向とに移動する。すなわち、コイル3に流れる電流が大きくなると、コイル3に生じる磁気吸引力が増大してコイル3に可動コア102が引き寄せられる一方、コイル3に流れる電流が小さくなると、コイル3に生じる磁気吸引力が減少して可動コア102がコイル3から離れる。
【0077】
これにより、可動コア102が接続されるトラフ103も、コイル3に対して近づく方向と離れる方向に移動する。トラフ103は、一対の弾性変形部101によってベース部104に弾性支持されているため、上下方向及び左右方向に振動を生じる。
【0078】
本実施形態では、電磁振動機100は、単相電力変換装置1と、単相電力変換装置1によって一方向に周期的な電流が供給されるコイル3と、コイル3への通電によって弾性変形を生じて振動を発生する弾性変形部101と、を有する。
【0079】
既述のとおり、単相電力変換装置1は、コンデンサが不要である。電磁振動機100はコンデンサ不要の単相電力変換装置1を有するため、コンパクトで且つ長寿命な電磁振動機100を実現することができる。
【0080】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0081】
前記実施形態では、スイッチング回路10は、スイッチング素子SW1~SW4とコイル3との間で、スイッチング素子SW1~SW4に対して電気的に直列に接続されたダイオードD1~D4を有する。しかしながら、スイッチング回路は、一部のスイッチング素子とコイルとの間に、前記一部のスイッチング素子に対して電気的に直列に接続されたダイオードを有していてもよい。また、スイッチング回路は、ダイオードを有していなくてもよい。
【0082】
前記実施形態では、ダイオードD1~D4は、スイッチング回路10において、スイッチング素子SW1~SW4とコイル3との間に位置する。しかしながら、スイッチング素子が、ダイオードとコイルとの間に位置していてもよい。
【0083】
前記実施形態では、複数のスイッチング素子SW1~SW4は、それぞれ電気的に直列に接続された一対のスイッチング素子を2組含む。前記2組の一対のスイッチング素子は、コイル3に対して電気的に並列に接続されているとともに、それぞれの中点が交流電源2に電気的に接続されている。しかしながら、スイッチング回路は、交流電源からコイルに対して一方向に流れて周期的に変化する電流を供給することができ、入力される電流指令の変化傾向及び前記電流指令と前記コイルに流れる電流との差に基づいて、力行動作、回生動作及び還流動作のいずれかで動作可能な構成を有していれば、他の構成であってもよい。
【0084】
前記実施形態では、単相電力変換装置1は、電磁振動機100に用いられている。しかしながら、単相電力変換装置は、コイルに対して、一方向に流れて周期的に変化する電流を供給する構成であれば、電磁振動機以外の構成に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、交流電源からコイルに対して単相の電力を供給する単相電力変換装置及びそれを備えた電磁振動機に利用可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 単相電力変換装置
2 交流電源
3 コイル
10 スイッチング回路
11 第1スイッチングレグ
12 第2スイッチングレグ
20 駆動制御部
100 電磁振動機
101 弾性変形部
102 可動コア
103 トラフ
104 ベース部
SW1、SW2、SW3、SW4 スイッチング素子
D1、D2、D3、D4 ダイオード