(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008297
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】識別マーカー及び荷物運搬用自律走行車両
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
B66F9/24 A
B66F9/24 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111733
(22)【出願日】2021-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】501055145
【氏名又は名称】株式会社ZMP
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100086807
【弁理士】
【氏名又は名称】柿本 恭成
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】ルー ジャージュン
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智広
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AB13
3F333FA25
3F333FD12
3F333FD14
3F333FD15
3F333FE05
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で、荷役位置の形態に合わせて荷役位置に対して迅速に荷取り又は荷卸しが可能な自動運転フォークリフト用の識別マーカーを提供する。
【解決手段】自動運転フォークリフトによる荷役作業に用いる識別マーカー41であって、識別部41a及び情報部41bからなる複数個のマーク43から構成し、識別部41aに対応する第一のマーク43aが表面反射率の高い素材から成り、情報部41bに対応する複数個の第二のマーク43bが、それぞれ表面反射率の高い素材又は表面反射率の低い素材から成り、自動運転フォークリフトに備えた三次元点群を取得するセンサから、識別部41aが認識され且つ情報部41bの固有情報が認識されるように、荷卸し又は荷取りすべき荷役位置に隣接して設けて使用する。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物運搬用自律走行車両による荷役作業に用いられる識別マーカーであって、
識別部及び情報部からなる複数個のマークから構成し、前記識別部に対応する第一のマークが表面反射率の高い素材から成り、前記情報部に対応する複数個の第二のマークが、それぞれ表面反射率の高い素材又は表面反射率の低い素材から成り、
荷物運搬用自律走行車両に備えられた三次元点群を取得するセンサから、前記識別部が認識され且つ前記情報部の固有情報が認識されるように、荷卸し又は荷取りすべき荷役位置に隣接して設けられる、識別マーカー。
【請求項2】
前記マークが、一列に並んだ複数個のマークから構成され、両端のそれぞれ少なくとも一つの第一のマークが識別部に対応する、請求項1に記載の識別マーカー。
【請求項3】
前記マークが、一列に並んだ複数個のマークから構成され、両端のそれぞれ二つの第一のマークが識別部に対応する、請求項1に記載の識別マーカー。
【請求項4】
前記第二のマークが、前記情報部に対応するn個(nは正の整数)で整列し、表面反射率の高低に基づいて全体としてnビットの固有情報を構成する、請求項1に記載の識別マーカー。
【請求項5】
前記荷役位置が、荷棚,パレット載置台,配送車両の何れかであって、該荷棚,パレット載置台,配送車両の側面又は付近の床面に配置されて使用される、請求項1に記載の識別マーカー。
【請求項6】
裏面にマグネット材料又はマグネットシートを備えている、請求項1に記載の識別マーカー。
【請求項7】
車体と、前記車体を走行させると共に操舵する走行部と、前記車体前部に取り付けられたフォークと、前記フォークを上下に昇降させるフォーク駆動部と、位置センサと、前記位置センサによって検出した車体の現在位置を参照しながら走行データに基づいて前記走行部及びフォーク駆動部を制御する制御部と、対象物を検出するセンサ部と当該対象物の形状認識部とから成る対象物検出部と、を備えた荷物運搬用自律走行車両であって、
前記センサ部が前記車体又はフォークに取り付けられ前方の三次元点群を取得するセンサから成り、
前記形状認識部が、前記センサ部で取得された三次元点群から前方に位置する識別マーカーの位置及び固有情報を認識する、荷物運搬用自律走行車両。
【請求項8】
前記センサ部が、その水平スキャンの方向とは異なる方向に移動又は揺動可能に支持された二次元ライダーから構成され、
前記形状認識部が、前記二次元ライダーの移動又は揺動の移動量に対応する前記検出対象の高さ位置を取得して、前記二次元ライダーの水平スキャンにより取得される二次元点群に前記高さ位置を付加して三次元点群を演算し、前方に位置する前記識別マーカーの位置及び固有情報を認識する、請求項7に記載の荷物運搬用自律走行車両。
【請求項9】
前記センサ部が、前記車体又はフォークに配置された三次元ライダーであって、前記形状認識部が、前記三次元ライダーで検出した三次元点群から前方に位置する前記識別マーカーの位置及び固有情報を認識する、請求項1に記載の荷物運搬用自律走行車両。
【請求項10】
前記形状認識部が、パレットを荷卸し又は荷取りすべき荷役位置に隣接して設けられた識別部及び情報部から成る識別マーカーを、その識別部に基づいて検出してその情報部に基づいて当該識別マーカーを識別する、請求項7から9の何れかに記載の荷物運搬用自律走行車両。
【請求項11】
請求項1乃至6の何れかに記載の識別マーカーが、荷役位置である荷棚,パレット載置台,配送車両等の側面又は付近の床面に配置され、
前記形状認識部が、前記識別マーカーの位置に対する実際の荷役位置との相対位置情報を前もって備えている、請求項7から10の何れかに記載の荷物運搬用自律走行車両。
【請求項12】
前記制御部が、認識した前記識別マーカーの位置及び固有情報に基づいて、前記位置センサによる現在位置との相対位置情報から、前記識別マーカーに関連して前もって設定された荷役位置に前記フォークが正対する位置までの走行データを作成して、前記走行データに基づいて前記走行部を制御する、請求項7から11の何れかに記載の荷物運搬用自律走行車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば物流倉庫等の広大な施設内で、所定位置に配置されたパレット載置台、荷棚あるいは搬送車両等の荷役位置に設けられる識別マーカーと、この識別マーカーを自動認識して、パレット上に載置された荷物等の荷取り又は荷下ろしの荷役を容易に行なうための荷物運搬用自律走行車両、とくに自動運転フォークリフトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、物流倉庫等の広大な施設においては、商品等をパレット上に積載した状態で所定箇所に保管し、商品等の搬入搬出はパレットに積載したままの状態でフォークリフトを使用してパレットを移動させる。近年の物流業界での各種作業の自動化が進むにつれて、フォークリフトによる荷捌き作業も自動化が期待されており、種々の自動運転フォークリフトが提案又は開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、フォークに取り付けられた二次元レーザセンサを第一の方向に走査させると共に、フォークを昇降させることで前方に設定された空間内に存在する物体までの三次元距離データを計測して荷又はパレットの位置及び向きを特定し、特定した荷又はパレットの位置及び向きに基づいて算出される荷取り位置まで車体を移動させるための軌道データを生成するようにした、フォークリフトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のフォークリフトも含めて、従来の自動運転フォークリフトでは、荷役位置に配置された荷棚,パレット台や搬送車両の荷台を個別に認識するのではなく、単に、荷役作業を行う位置だけを認識し得るに過ぎない。このため、荷役位置で実際にパレットを荷取り又は荷卸しする際は、荷役位置がどのような形態であるか、即ち荷役位置としての荷棚,パレット台や搬送車両の荷台を別途に検出しなければならず、その形態に合わせて、例えば荷棚の何段目の荷棚にパレットを荷卸し又は荷取りするというように、個別に自動運転フォークリフトの駆動制御を行なわなければならない。
【0006】
本発明は以上の点に鑑み、簡単な構成で、荷役位置の具体的な形態に合わせて荷役位置に対して迅速に荷取り又は荷卸しをすることができるようにした荷物運搬用自律走行車両と、この荷役作業に資する識別マーカーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の識別マーカーは、荷物運搬用自律走行車両による荷役作業に用いられ、識別部及び情報部からなる複数個のマークから構成し、識別部に対応する第一のマークが表面反射率の高い素材から成り、情報部に対応する複数個の第二のマークがそれぞれ表面反射率の高い素材又は表面反射率の低い素材から成っており、荷物運搬用自律走行車両に備えられた三次元点群を取得するセンサから、識別部が認識され且つ情報部の固有情報が認識されるように、荷卸し又は荷取りすべき荷役位置に隣接して設けられる。
【0008】
従って、上記構成の各識別マーカーを荷物運搬用自律走行車両により認識することで、その情報部に基づいて当該識別マーカーに隣接する荷役位置を特定することができる。
【0009】
識別マーカーは複数個のマークから構成され、識別部に対応する第一のマークが表面反射率の高い素材から成り、情報部に対応する複数個の第二のマークが、それぞれ表面反射率の高い素材又は表面反射率の低い素材から成り、荷物運搬用自律走行車両に備えられた形状認識部がセンサ部で取得された三次元点群から反射強度の高い点に基づいて、該識別マーカーの識別部を検出するよう構成すれば、反射強度の高い点から識別マーカーの第一のマークが対応する識別部を検出すると共に、第一のマークの位置から第二のマークの位置を推定して、各第二のマークにおける反射強度に基づいて第二のマークが対応する情報部の情報を認識することができる。
【0010】
識別マーカーが一列に並んだ複数個のマークから構成され、両端のそれぞれ少なくとも一つ又は二つの第一のマークが識別部に対応するよう構成すれば、その両端に位置する第一のマークの間隔が所定距離に位置することから、三次元点群から、反射強度の高い点に基づいて容易に且つ確実に第一のマークを認識して識別マーカーを検出できる。
【0011】
識別マーカーにおいて、その情報部に対応するn個(nは正の整数)のマークが、表面反射率の高低に基づいて全体としてnビットの固有情報を構成すれば、n個の第二のマークによりnビットの固有情報を割り当てることができる。
【0012】
識別マーカーを荷役位置である荷棚,パレット載置台,配送車両等の側面又は付近の床面に配置し、荷物運搬用自律走行車両の形状認識部が、識別マーカーの位置に対する実際の荷役位置との相対位置情報を前もって備えるように構成すれば、当該識別マーカーに対して前もって備えられた相対位置情報に基づいて、当該識別マーカーに隣接する実際の荷役位置を推定することが可能になる。
【0013】
識別マーカーが裏面にマグネット材料又はマグネットシートを備えていれば、例えば鉄製の荷棚,パレット載置台,配送車両等の側面に対して、容易に且つ着脱可能に識別マーカーを配置することができる。
【0014】
本発明の荷物運搬用自律走行車両は、車体と、車体を走行させると共に操舵する走行部と、車体前部に取り付けられたフォークと、フォークを上下に昇降させるフォーク駆動部と、位置センサと、位置センサによる現在位置を参照しながら走行データに基づいて走行部及びフォーク駆動部を制御する制御部と、センサ部と形状認識部から成る対象物検出部とを備え、センサ部が車体又はフォークに取り付けられ前方の三次元点群を取得するセンサから成り、形状認識部が、センサ部で取得された三次元点群から前方に位置する識別マーカーの位置及び固有情報を認識することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、荷物運搬用自律走行車両、典型的には自動運転フォークリフトが荷役位置付近に位置する状態で、対象物検出部のセンサ部が前方の三次元点群を取得し、形状認識部がその三次元点群から個々の画素の距離データに基づいて前方に位置する識別マーカーを検出してその位置を認識すると共に、識別マーカーのマークのうち情報部に対応するマークにより当該識別マーカーの固有情報を識別することができる。
【0016】
好ましくは、荷物運搬用自律走行車両のセンサ部をその水平スキャンの方向とは異なる方向に移動又は揺動可能に支持された二次元ライダーから構成し、形状認識部が二次元ライダーの移動又は揺動の移動量に対応する検出対象の高さ位置を取得して、二次元ライダーの水平スキャンにより取得される二次元点群に高さ位置を付加して三次元点群を演算する。センサ部として二次元ライダーを使用し、その検出角度範囲を水平以外の方向に移動させてその移動量に対応する高さ位置を取得し、二次元点群に高さ位置を付加することにより三次元点群を演算することで、二次元ライダーを利用して高精度の三次元点群を取得することができ、高精度で前方の識別マーカーの位置及び固有情報を認識することが可能である。
【0017】
センサ部が車体又はフォークに配置された三次元ライダーであって、形状認識部が三次元ライダーで検出した三次元点群から前方に位置する識別マーカーの位置及び固有情報を認識するよう構成してもよい。
【0018】
制御部は、好ましくは、認識した識別マーカーの位置及び固有情報に基づいて、位置センサによる現在位置との相対位置情報から、識別マーカーに関連して前もって設定された荷役位置にフォークが正対する位置までの走行データを作成して走行データに基づいて走行部を制御する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、識別マーカーにより、その固有情報に基づいて荷役位置の形態に合わせて、荷役位置に対して迅速に荷取り又は荷卸しをすることができ、この識別マーカーを荷卸し又は荷取りすべき荷役位置に隣接して設けることで、きわめて簡単に荷役作業が行える荷物運搬用自律走行車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明による自動運転フォークリフトの一実施形態の全体構成を示す概略図である。
【
図2】
図1の自動運転フォークリフトの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示すレーザーナビゲータの、(A)は概略斜視図、(B)はレーザービーム照射状態を示す概略平面図、(C)は物流倉庫内での位置検出状態を示す概略平面図である。
【
図4】自動運転フォークリフトの制御部が作成する走行データの基本経路を示す概略図である。
【
図5】前記制御部が荷取り位置への接近のための走行データの一つの作成例を示し、(A)は自動運転フォークリフトの現在位置と荷取り位置と相対位置関係の、(B)は前進のみによる走行データによる走行経路を示す概略図である。
【
図6】前記制御部が荷取り位置への接近のための走行データの他の作成例を示し、(A)は自動運転フォークリフトの現在位置と荷取り位置との相対位置関係の、(B)は後退及び前進を組み合わせた走行データによる走行経路を示す概略図である。
【
図7】対象物検出部のセンサ部の配置を示し、(A)は概略斜視図、(B)は側面図である。
【
図8】対象物検出部によるパレット及びその開口部の認識のための異なる高さ位置での測定状態を示す概略図である。
【
図9】(A)~(F)は、順次高さを変えて6種類の高さで二次元ライダーにより取得された二次元点群を示すグラフである。
【
図10】
図9の各高さ位置での二次元点群に高さ位置を付加して演算された三次元点群を示すグラフである。
【
図11】
図10の三次元点群からパレット及びその開口部の形状を認識するためのスライス領域を示す概略図である。
【
図12】
図11の各スライス領域から抽出されたパレット及びその開口部の形状を示す概略図である。
【
図13】対象物検出部による床面及びマーカーの認識のための異なる高さ位置での測定状態を示す概略図である。
【
図14】対象物検出部による識別マーカーの認識のための異なる高さ位置での測定状態を示す概略図である。
【
図15】識別マーカーを荷棚の中間荷棚の前側面に取り付けた状態を示す概略正面図である。
【
図16】荷役位置に隣接して配置される識別マーカーの一例の構成を示す概略正面図である。
【
図17】
図14の各高さ位置での二次元点群に高さ位置を付加して演算された三次元点群を示す図である。
【
図18】
図1の自動運転フォークリフトの荷役作業を順次に示すフローチャートである。
【
図19】対象物検出部によるパレット及びその開口部の形状及び位置の認識作業を順次に示すフローチャートである。
【
図20】
図16の識別マーカーをパレット載置台の前側面に取り付けた状態を示す概略正面図である。
【
図21】
図16の識別マーカーを取り付けたトラックを示し、(A)は概略側面図、(B)は側面アオリ板を開いた状態を示す部分拡大側面図である。
【
図22】
図16の識別マーカーを荷役位置付近の床面に配置した状態における荷役位置に荷卸しされたパレットを示し、(A)は概略側面図、(B)は概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1及び
図2は荷物運搬用自律走行車両として自動運転フォークリフトの一実施形態の全体構成を示す。自動運転フォークリフト10は、例えばリーチタイプのフォークリフトとして構成され、車体11と、車体11を自動で前後に走行させると共に自動操舵する走行部12と、車体11の前部に設けられたフォーク13と、フォーク13を上下に昇降させるフォーク駆動部14と、各種情報を取得する検出部15と、車体11内に設けられた制御部16と、対象物検出部20と、から成る。なお、本明細書では、荷物運搬用自律走行車両として自動運転フォークリフトを例として説明する。荷物運搬用自律走行車両は、荷物運搬に使用される自律走行車両であれば、自動運転フォークリフトに限らず、自動運転機構を備える有人のフォークリフト、無人搬送車(Automated Guided Vehicle,AGV)、SLAM(Simultaneously Localization and Mapping:自己位置推定と地図作成を同時に行う)により自律走行するAGV、ステレオカメラによるSLAM、所謂VSLAM(Vision Simultaneously Localization and Mapping)により自律走行するAGVや搬送用ロボット等も含まれる。
【0022】
車体11は従来の自動運転フォークリフトと同様の構成であり、ほぼ直方体状の外形を有し、左右両側から前方に延びる張出部11aを備え、各張出部11aの先端付近に一対の前輪11bを、車体11の後端付近に後輪11cを備える。後輪11cは操舵輪として垂直軸の周りに揺動可能に支持される。
【0023】
走行部12は、前輪11b又は後輪11cを回転駆動して自動運転フォークリフト10を前後に走行させ、後輪11cを操舵して左右に転回させる。フォーク13は、車体11の前部に上下方向に延びるように固定配置された一対のマスト13aに沿って上下方向に移動可能に支持され、フォーク駆動部14により上下方向に移動され得る。検出部15は、車体11の上方に設けられた位置センサ15aとなるレーザーナビゲータと、車体11の下部に設けられた障害物センサ15b,バンパーセンサ15cを含んでいる。
【0024】
図3(A)は自動運転フォークリフト10における位置センサ15aの概略斜視図を示し、(B)及び(C)はそれぞれレーザービーム照射状態と、物流倉庫内での位置検出状態を示す。位置センサ15aはレーザースキャナ15d及び受光部15eから構成され、レーザースキャナ15dによりレーザービームを放射して、例えば
図3(C)に示すように物流倉庫等の施設15f内の壁面等に配置された複数個の反射部15gで反射されたレーザービームを受光部15eで収集することにより、物流倉庫15f内での現在位置及び方向を決定する。このようにして、レーザーナビゲータ15aは高精度の位置センサとして機能する。
【0025】
障害物センサ15bは例えば二次元ライダーから構成され、自動運転フォークリフト10の車体11の後方にある障害物を検出して検出信号を送出する。バンパーセンサ15cは、障害物に接触したとき障害物を検出して検出信号を送出する。さらに、自動運転フォークリフト10は、より安全性を高めるために安全部17として緊急停止ボタン17a,音声・パトランプ17b及びウィンカー17cを備えている。
【0026】
制御部16が作成する走行データ16bの基本経路16cについて
図4を参照して説明する。制御部16は、車体外面に設けられた操作部16a(
図1参照)で入力された荷取り位置及び荷卸し位置に基づいて走行データ16bを作成し、この走行データ16bに基づいて走行部12を制御する。即ち、制御部16は、自動運転フォークリフト10を、例えば物流倉庫内にて設定された後述する基本経路16cに沿って走行させることで、自動運転フォークリフト10を指定された荷取り位置付近まで移動させ、当該荷取り位置でフォーク13にパレット30を搭載した後、同様にして基本経路16cに沿って指定された荷卸し位置付近まで移動させ、当該荷卸し位置でフォーク13からパレット30を荷卸しする。その際、制御部16は、検出部15のレーザーナビゲータ15a,障害物センサ15b及びバンパーセンサ15cからの検出信号に基づき、走行中に走行データ16bによる走行経路にて障害物や人あるいは他の自動運転フォークリフトと接触しないよう適宜減速、停止あるいは迂回することにより、走行経路に沿って走行する。
【0027】
制御部16は前述した施設15f内のマップデータを備え、各荷取り位置又は荷卸し位置即ち荷役位置を結ぶように、
図4に示す基本経路16c及びマーカー16dの位置も登録している。さらに、制御部16は、マーカー16dの位置の新設,廃止等の変更の際には逐次更新され、常に最新のデータを有する。基本経路16cは、
図4に示すように施設15f内を移動するための経路であって、自動運転フォークリフト10は、基本経路16cに沿って施設15f内を大きく移動すると共に、個々の荷役位置を示すマーカー16dに対しては、基本経路16cからそれぞれ枝分かれしてアクセスする。
【0028】
制御部16は、走行データ16bに基づいて基本経路16cに沿って荷取り位置付近に到着したとき、後述する対象物検出部20よって認識されたパレット30及びその開口部31の形状及び位置と、検出部15のレーザーナビゲータ15aで検出された現在位置との相対位置関係を演算する。制御部16は、この相対位置関係に基づいてフォーク13の先端がパレット30の開口部31に真っ直ぐに正対する荷取り位置までの走行データ16bを作成し、この走行データ16bに基づいて走行部12を制御する。これにより、自動運転フォークリフト10はそのフォーク13の先端が荷取り位置に配置されたパレット30の開口部31に対して真っ直ぐに正対する。
【0029】
ところで、自動運転フォークリフト10の現在位置と荷取り位置との相対位置関係に対応して、
図5(A)に示すようにそのまま前進しただけでは、荷取り位置のパレット30の開口部31に対して真っ直ぐに正対することができない場合には、制御部16は
図5(B)に示すように、回り込んで前進するような走行データ16bを作成する。これに対して、
図6(A)に示すようにパレット30に対する角度が大きくずれていて、前進のみでは回り込んでも荷取り位置のパレット30の開口部31に対して真っ直ぐに正対できない場合には、制御部16は、
図6(B)に示すように一旦後退したのち操舵を切り返して前進するような走行データ16bを作成する。
【0030】
さらに制御部16は、走行データ16bに基づいて基本経路16cに沿って荷卸し位置付近に到着したとき、同様に対象物検出部20から送られてくる床面のマーカー16dの形状及び位置と検出部15のレーザーナビゲータ15aで検出された現在位置との相対位置関係を演算する。そして、この相対位置関係に基づいて、制御部16はフォーク13がマーカー16d上に整列する荷卸し位置までの走行データ16bを作成し、この走行データ16bに基づいて走行部12を制御する。これにより、自動運転フォークリフト10はそのフォーク13が床面のマーカー16d上に整列する。
【0031】
ここで、荷役作業は以下のように行なわれる。即ち、自動運転フォークリフト10が荷取り位置でパレット30の開口部31に対してフォーク13が真っ直ぐに正対する状態から前進して、フォーク13をパレット30の開口部31内に完全に挿入した状態でフォーク13を上昇させる。これによりフォーク13上にパレット30を搭載して荷積みする。荷卸しの場合は、自動運転フォークリフト10が荷卸し位置で、床面のマーカー16dに対してフォーク13及び搭載したパレット30が上方に位置する状態からパレット30の底面が床面に接するまでフォーク13を下降させ、後退することによりパレット30の開口部31からフォーク13を完全に引き抜いて、荷卸しが完了する。
【0032】
以上のように、制御部16は、認識したパレット30及びパレット30の開口部31の形状及び位置に対して位置センサ15aによる現在位置から荷取り位置まで、走行データ16bに従って自動運転を行なうことができる。従って、荷取り位置まで移動した状態から、制御部16が走行部12を制御して前進させることで、フォーク13が真っ直ぐにパレット30の開口部31内に進入することが可能である。
【0033】
センサ部22はパレット30の置き場所を示すマーカー16d付近の床面の三次元点群を取得し、形状認識部24がそのマーカー16dの反射率の違いに基づいてマーカー16dの境界線を抽出して既知のマーカー16dの形状とのマッチングを判定し、マーカー16dの形状及び位置を認識する。これにより、制御部16は、フォーク13に荷又はパレット30を搭載した状態で、センサ部22により床面及びマーカー16dの形状及び位置を認識することにより、指定されたマーカー16dの位置まで自動運転により走行し、当該マーカー16dの示す場所に荷またパレット30を荷卸しすることができる。
【0034】
また、センサ部22は、同様に荷役位置付近を示す識別マーカー41(後述)の三次元点群を取得し、形状認識部24が識別マーカー41を認識してその固有情報に基づいて識別マーカー41を一意に特定する。これにより、制御部16は、荷取り又は荷卸しの際に、センサ部22により識別マーカー41を認識することにより、指定された荷役位置付近まで自動運転により走行すると共に、前もって登録された当該識別マーカー41と実際の荷役位置との間の相対位置情報に基づいて、実際の荷役位置を検出することができる。
【0035】
さらに対象物検出部20は、
図2に示すようにセンサ部22と形状認識部24を備え、センサ部22は車体11に取り付けられ、前方の三次元点群を取得するセンサから成る。形状認識部24は、後述するようにセンサ部22で取得された三次元点群から前方に位置する物体の形状及び位置を認識する。
【0036】
本発明の自動運転フォークリフト10によれば、自動運転フォークリフト10が荷取り位置付近に位置する状態で、対象物検出部20のセンサ部22が前方の三次元点群を取得し、形状認識部24がその三次元点群から個々の画素の距離データに基づいて前方に位置する物体の形状及び位置を認識する。これにより、制御部16は、前方の物体の形状及び位置と位置センサ15aによる現在位置とから車体11と物体との相対位置を把握することができる。
【0037】
対象物検出部20のセンサ部22は、自動運転フォークリフト10の車体11に取り付けられているので、センサ部22がフォーク13に取り付けられている場合と比較して以下の利点が得られる。即ち、センサ部22がフォーク13ではなく車体11に直接に取り付けられていることにより、フォーク13に荷又はパレット30が搭載された状態においてもセンサ部22により前方の物体等を検出することができる。従って、荷取り位置に置かれたパレット30の認識だけでなく、床面や床面に設置されたマーカー16d、あるいは倉庫の壁面や荷棚等の他の物体、さらに後述するように荷役位置付近に設けられた識別マーカーの認識を行なうことも可能である。
【0038】
センサ部22により前方の物体を認識する際に、フォーク13を昇降又は揺動させる必要がないので、フォーク動作による挟まれ等のおそれが排除される。さらに、自動運転フォークリフト10の荷役作業中、フォーク13は衝撃や振動を受けやすいが、センサ部22が車体11に取り付けられることで、フォーク13の衝撃や振動によるセンサ部22の損傷を回避できる。
【0039】
次に、対象物検出部20の構成例の幾つかを記述する。
(対象物検出部の構成例1)
対象物検出部20の構成例1としては、センサ部22を、二次元ライダー22aと二次元ライダー22aの水平スキャンとは異なる方向に移動させる移動手段21とから構成する。この場合、形状認識部24は移動手段21の移動量に対応する高さ位置を取得して、二次元ライダー22aの水平スキャンにより取得される二次元点群に高さ位置を付加して三次元点群を演算することができる。
【0040】
構成例1では、センサ部22として二次元ライダー22aを使用し、移動手段21により二次元ライダー22aの水平スキャンとは異なる方向、例えば垂直方向に移動させることによって、二次元ライダー22aによる二次元点群を取得すると共に、移動手段21の移動量に対応する高さ位置を取得して二次元点群に高さ位置を付加して、三次元点群を演算している。これにより、検出精度の高い二次元ライダー22aを利用して高精度の三次元点群を取得することができるので、高精度で前方の物体の形状及び位置を認識することが可能である。
【0041】
従って、TOFカメラ等の三次元画像による物体の認識の場合と比較すると、センサ部22として二次元ライダー22aを使用することにより、黒い対象物や日光が当たる面の検出でも精度が低下せず、また物体表面のテクスチャや環境光等に影響されにくく、さらに照明が暗くても確実に物体を認識することができる。
【0042】
(対象物検出部の構成例2)
対象物検出部20の構成例2は、センサ部22を二次元ライダー22aとし、二次元ライダー22aの高さ方向の移動手段21を直動アクチュエータ21aとした構成である。センサ部22は、
図7に詳細に示すように自動運転フォークリフト10の車体11の前部に固定配置された上下方向に延びる一対のマスト13aの一方、図示の場合、右側のマスト13aに沿って上下方向に延びるように取り付けられた直動アクチュエータ21a,二次元ライダー22a及び高さセンサ23から構成される。
【0043】
直動アクチュエータ21aは、その長手方向に延びる固定部21bがマスト13aの側面に固定され、可動部21cが本体21bに沿って上下方向に移動する。直動アクチュエータ21aは、自動運転フォークリフト10が例えば荷取り位置付近又は荷卸し位置付近に到着したとき、制御部16によりパレット30又は床面のマーカー16dの形状及び位置を認識するために、後述するように二次元ライダー22aと連動して動作する。
【0044】
二次元ライダー22aは、直動アクチュエータ21aの可動部21cに取り付けられ、
図7(A)に示すように水平方向に広がるスキャン面22bを有すると共に、
図7(B)に示すようにその中心軸Oが前方に向かって下向きに設定されている。上述したライダー(LIDAR(Light Detection and Ranging))はレーザーレーダーとも呼ばれ、光検出と測距又はレーザー画像検出と測距(Laser Imaging Detection and Ranging)を行なうセンサである。ここでは、二次元ライダーが使用される。
【0045】
具体的には、二次元ライダー22aは例えばSICK社のTim581が使用される。この二次元ライダー22aの仕様は、水平開口角270度,スキャン回数15Hz,角度分解能0.33度,検出距離(反射率10%)8mである。二次元ライダー22aのマスト13aへの取付高さ及び傾斜角度は、
図7に示すように、水平スキャン面22bがフォーク13に当たらないよう且つ前方の床面をカバーできるように設定される。これにより、二次元ライダー22aは、水平方向にスキャンした二次元データを二次元点群22cとして出力する。
【0046】
高さセンサ23は、直動アクチュエータ21aを用いて構成される。直動アクチュエータ21aは、ステッピングモーターで駆動され、ステッピングモーター内蔵のエンコーダによりモーターの絶対回転角を取得できる。このモーターの絶対回転角を、直動アクチュエータ21aで用いる既知のギア比をもとに直動アクチュエータ21aの高さ位置に変換することにより、二次元ライダー22aの高さ位置が検出される。高さセンサ23は、直動アクチュエータ21aの本体21bにおける可動部21cの移動範囲の下端から上方への移動距離を検出して、その移動距離を高さ位置hとして出力する。高さセンサ23としては、可動部21cそして二次元ライダー22aの高さ位置を検出できればよく、例えば気圧センサ等の他の種類の高さセンサであってもよい。
【0047】
形状認識部24は、
図1には示されていないが、二次元ライダー22aに隣接してあるいは車体11内に設けられ、二次元ライダー22aの水平スキャンにより検出された二次元点群22cに高さセンサ23で検出された高さ位置hを付加して一体化したデータとして取り扱う。
【0048】
図8に示すように、直動アクチュエータ21aにより、可動部21c及び二次元ライダー22aの高さ位置hを、二次元ライダー22aの水平方向のスキャンと同時に例えばh1,h2,h3・・・と連続的に変更しながら、前方に配置されたパレット30に対して、二次元ライダー22aによる二次元点群22cの取得を繰り返して行なう。
図8は、互いに異なる三つの高さ位置h1,h2,h3で二次元点群22cを取得する例を示す。各高さ位置h1~h3に関して、ある程度の測定密度を保持するため、直動アクチュエータ21aの可動部21cの移動速度に上限が設けられる。
【0049】
図9(A)から(F)は、高さを順次変えて6種類の高さで取得した二次元点群22cの例を示し、高さが変化すると取得した二次元点群22cが変化していることが分る。
【0050】
このようにして、形状認識部24は、高さ位置h毎の二次元点群22cを、
図10に示すように一つの三次元点群25として構成する。ここで、一つのパレット30で取得するスキャンデータは、10~15レイヤーである。つまり、二次元ライダー22aの高さ位置は、10~15の異なる高さで取得したスキャンデータとなる。
【0051】
上記構成によれば、二次元ライダー22aで水平方向にスキャンしながら、直動アクチュエータ21aにより二次元ライダー22aを上下方向に並進移動させて高さ位置を変更することで、二次元ライダー22aによる二次元点群22cに高さ位置を付加して三次元点群25を取得することができる。
【0052】
続いて、形状認識部24は、以下のステップ1~ステップ7の計算手法でパレット30とその開口部31の形状及び位置の認識を行なう。
ステップ1において、形状認識部24は、
図9で説明した所定の高さで取得した二次元点群22cから構成した三次元点群25に関して、三次元の対象領域を設定して対象領域内の点を選択して抽出すると共に、対象領域外の点を除外する。これにより形状認識部24は対象領域内の三次元点群Aを作成する。
ステップ2にて、形状認識部24は、三次元点群Aに関して各点の法線方向を計算して適宜のしきい値で垂直な面に属する点を選択し、選択した点により点群Bを構築する。
ステップ3において、形状認識部24は、
図11に示すように、一定の高さの複数のスライス領域26a,26b…を定義して、点群Bから各スライス領域26a,26b…に属する点をそれぞれ選択し、点群のセットCとして振り分ける。
【0053】
ステップ4において、形状認識部24は、点群のセットCの各点群に対して例えばRANSAC等の適宜の方法によって垂直な平面を検出し、平面からの距離が設定したしきい値より大きい点を除外する。
ステップ5において、点群のセットCの各点群に対して距離を条件にクラスタリングを行ない、得られた各クラスターの面積とクラスターの外接矩形の面積を比較して、
図12に示すように十分に近いクラスター27aを抽出すると共に、パレット30の開口部31の左右の柱部分に大きさが近いクラスター27b,27c,27dを抽出する。ここで、抽出されたクラスター27aから27dのうち、水平方向に隣接する三個一組のクラスター27b,27c,27dを、トリプレットという。形状認識部24は、全ての組合せのトリプレットのうち、三個のクラスター同士の相互距離が一定範囲内であるものを抽出し、セットDとする。
【0054】
ステップ6において、形状認識部24は、上述したセットCに含まれる全てのスライス26a,26b…に対して、上述したステップ4及び5の処理を繰り返し行なう。これにより、形状認識部24は、得られた全てのトリプレットと最初の点群Aとを比較して、トリプレットに含まれる三個のクラスターの間に点のない空隙があるもののみを抽出し、この空隙をセットEとする。
ステップ7において、形状認識部24は、セットEに含まれる空隙のうち互いに距離の近いものを一つのグループとし、当該グループの空隙を一つにまとめた後にその中心位置を荷取り穴の位置として出力する。ここで、グループが複数ある場合は、形状認識部24は、各グループそれぞれ一つのパレット30に対応する荷取り穴の位置として出力する。このようにして、形状認識部24は、前方に存在するパレット30及びその開口部31の形状及び位置を認識して制御部16に出力する。
【0055】
また、形状認識部24は、床面に設けられたマーカー16dの形状及び位置を認識する場合には、
図13に示すように、直動アクチュエータ21aによって、可動部21c及び二次元ライダー22aの高さ位置hをh1,h2,h3と変更しながら、前方に配置されたマーカー16dに対して二次元ライダー22aによる二次元点群22cの取得を繰り返して行なう。これにより、パレット30の形状及び位置の認識を行なう場合と同様にして、各高さ位置における二次元点群22cを統合して一つの三次元点群25を取得し、さらに三次元点群A,点群B,点群セットC及びセットDを取得し、マーカー16dに対するクラスターを抽出することによって、マーカー16dの形状及び位置を認識する。
【0056】
さらに、形状認識部24は、荷役位置に隣接して例えば荷棚40等に設けられた識別マーカー41を認識する場合には、同様に、
図14に示すように、直動アクチュエータ21aによって、可動部21c及び二次元ライダー22aの高さ位置hをh1,h2,h3と変更しながら、前方に配置された識別マーカー41に対して二次元ライダー22aによる二次元点群22cの取得を繰り返して行なう。これにより、パレット30の形状及び位置の認識を行なう場合と同様にして、各高さ位置h1,h2,h3における二次元点群22cを統合して、一つの三次元点群25を取得し、さらに三次元点群A,点群B,点群セットC及びセットDを取得し、識別マーカー41に対するクラスターを抽出することによって識別マーカー41を認識する。
【0057】
ここで、識別マーカー41は
図15に示すように、荷役位置の近傍、即ち荷棚40の中間棚板45の前側面45aに取り付けられている。
図16に示すように、識別マーカー41は、板状の底部42と、底部42の表面に、一列に並んで等間隔で配置された複数個のマーク43と、から構成されている。底部42は、反射率の低い材料、例えば黒色の紙、布、樹脂シート、プラスティック等から構成され、その裏面にはマグネット材料又はマグネットシートから成るマグネット部(図示せず)を備えていてもよい。これにより、識別マーカー41は、
図15に示すように、鉄製の荷棚40の中間棚板45の前側面45aや、同様に鉄製の壁面、扉等に着脱可能に容易に取り付けられ得る。
【0058】
マーク43は、図示の場合、底部42の表面に一列に並んで九個配置されている。ここで、左右両端にて、それぞれ二個のマーク(以下、第一のマーク)43aは、識別部41aを構成している。識別部41aは反射率の高い材料、例えば白色の紙、布、樹脂シート、プラスティック等から構成される。識別部41aは、反射率を上げるためにガラスビーズ等の反射材を埋め込んだり、又は塗布したものでもよい。これに対して、第一のマーク43a以外の、内側に並んだマーク(以下、第二のマーク)43bは、情報部41bを構成している。
【0059】
第二のマーク43bは、それぞれ反射率の高い材料又は反射率の低い材料の組み合わせから構成される。反射率の高い材料は識別部41aと同様の材料からなり、反射率の低い材料は底部42と同様の材料からなる。これにより、各第二のマーク43bが、それぞれ反射率の高低に基づいて1ビットの情報を備えることから、五個の第二のマーク43bは全体として5ビットの情報を構成し、情報部41bとしてこの5ビットの固有情報44を構成している。この固有情報44は、識別マーカー41毎にそれぞれ固有の情報であって、当該識別マーカー41を一意に特定することができる。
【0060】
このような構成の識別マーカー41は、各マーク43の大きさ,間隔及び配置が正確に定義されており、すべての識別マーカー41は、その両端の識別部41aの配置が同じである。従って、形状認識部24は、
図17に示す識別マーカー41の三次元点群からクラスターを抽出して、反射強度の強い点に基づいて既知の識別部41aの配置から識別マーカー41を認識すると共に、情報部41bの各マーク43bの反射の高低に基づいて固有情報44を認識することが可能である。
【0061】
なお、形状認識部24は、個々の識別マーカー41の固有情報44に対して、当該識別マーカー41の位置及び実際の荷取り又は荷卸しのための荷役位置との相対位置情報を前もって登録されている。
【0062】
次に、本発明による自動運転フォークリフト10の動作を
図18のフローチャートにより、そして、パレット30及びその開口部31の形状及び位置の認識作業を
図19のフローチャートに従って説明する。
ステップST1にて、制御部16の操作パネル16aで荷役位置、即ち荷取り位置及び荷卸し位置を入力すると、制御部16は、ステップST2にて現在位置から荷取り位置まで、そして荷取り位置から荷卸し位置までの走行データ16bを作成する。その際、制御部16は、荷取り位置及び荷卸し位置に関して、それぞれ近くの識別マーカー41を指定する。これにより、制御部16は、ステップST3にて走行部12を制御することによって、荷取り位置付近の識別マーカー41まで基本経路16cに沿って走行させる。
【0063】
ステップST4にて、自動運転フォークリフト10が荷取り位置付近の識別マーカー41に到着すると、制御部16は、ステップST5にて、対象物検出部20に当該識別マーカー41の認識作業を行なわせる。続いて、制御部16は、ステップST6にて、当該識別マーカー41と実際の荷取り位置との相対位置情報に基づいて、実際の荷取り位置に置かれたパレット30及びその開口部31の形状及び位置の認識作業の開始を指示し、対象物検出部20が、後述する
図19のフローチャートに従ってパレット30及びその開口部31の形状及び位置の認識作業を行なう。ここで、制御部16は、走行データ16bに基づいて基本経路16cに沿って荷卸し位置付近に到着したとき、
図6の(B)床面のマーカー16dの替わりに対象物検出部20から送られてくる識別マーカー41と検出部15のレーザーナビゲータ15aで検出された現在位置との相対位置関係を演算する。そして、この相対位置関係に基づいて、制御部16はフォーク13が識別マーカー41の近傍の荷卸し位置までの走行データ16bを作成し、この走行データ16bに基づいて走行部12を制御する。
【0064】
これにより、制御部16は、ステップST7にて対象物検出部20で認識されたパレット30及びその開口部31の形状及び位置と位置センサ15aによる現在位置との相対位置関係に基づいて、フォーク13がパレット30の開口部31に真っ直ぐに正対する荷取り位置までの走行データ16bを作成し、ステップST8にてこの走行データ16bに基づいて走行部12を制御し、自動運転フォークリフト10を荷取り位置まで移動させる。続いてステップST9にて制御部16は走行部12を制御して、フォーク13をパレット30の開口部31内に挿入しながらゆっくりと前進させた後、フォーク駆動部14を制御してフォーク13を上昇させ、フォーク13上にパレット30を搭載する。
【0065】
次に、制御部16はステップST10にて、既に作成した走行データ16bにより走行部12を制御し、荷取り位置から荷卸し位置付近の識別マーカー41まで基本経路16cに沿って走行させる。ステップST11にて、自動運転フォークリフト10が荷卸し位置付近の識別マーカー41に到着すると、ステップST12にて、制御部16は、対象物検出部20に当該識別マーカー41の認識作業を行なわせる。続いて、制御部16は、ステップST13にて、当該識別マーカー41と実際の荷卸し位置との相対位置情報に基づいて、実際の荷卸し位置を認識して、対象物検出部20で認識された実際の荷卸し位置と位置センサ15aによる現在位置との相対位置関係に基づいて、フォーク13が実際の荷卸し位置に進入するまでの走行データ16bを作成する。ここで、相対位置関係は、ステップST6と同様に、対象物検出部20から送られてくる識別マーカー41と検出部15のレーザーナビゲータ15aで検出された現在位置との相対位置関係により算出される。ステップST14にて、制御部16は、作成された走行データ16bに基づいて走行部12を制御して自動運転フォークリフト10を荷卸し位置まで移動させる。
【0066】
続いて、制御部16はステップST15にてフォーク駆動部14を制御し、パレット30の底面が荷卸し位置の表面に接するまでフォーク13をゆっくりと下降させた後、ステップST16にて走行部12を制御して後退させ、フォーク13をパレット30の開口部31から完全に引き抜いて荷卸しを行なう。
このようにして、自動運転フォークリフト10による荷役作業が完了する。
【0067】
上記ステップ6において、対象物検出部20によるパレット30及びその開口部31の形状及び位置の認識作業は、
図19のフローチャートに従って以下のように行なう。
先ずステップST21にて、制御部16が対象物検出部20に対して認識作業の開始を指示すると、ステップST22にて対象物検出部20の直動アクチュエータ21a及び二次元ライダー22aが連動し、異なる高さ位置h1,h2,h3でそれぞれ二次元ライダー22aが水平スキャンを行なって二次元点群22cを取得すると共に、高さセンサ23がそのときの高さ位置hを取得する。ステップST23にて形状認識部24によりこれらの二次元点群22cを補正した後、高さ位置hと組み合わせて一つの三次元点群25を構成する。
【0068】
その後、形状認識部24は、ステップST24にて対象領域外の点を除外して三次元点群Aを作成し、ステップST25にて垂直な面に属する点を選択して点群Bを構築し、ステップST26にて複数のスライス領域26a,26b…に属する点をそれぞれ選択して点群のセットCを振り分ける。その後、ステップST27にて点群のセットCの各点群に対して垂直な平面を検出して、この平面からの距離が遠い点を除外してクラスタリングを行なってクラスターを抽出する。
【0069】
ステップST28にて形状認識部24は、水平方向に隣接する三個一組のクラスター(トリプレット)のうち、クラスター同士の相互距離が一定範囲内のものを抽出してセットDとし、ステップST29にてトリプレットに含まれる三個のクラスターの間に点のない空隙があるもののみを抽出してセットEとする。これにより形状認識部24は、ステップST30にてセットEに含まれる空隙のうち互いに距離の近いものを一つのグループとして当該グループの空隙を一つにまとめた後に、その中心位置を開口部31として前方に在るパレット30及びその開口部31の形状及び位置を認識して制御部16に出力する。
このして、パレット30及びその開口部31の形状及び位置の認識作業が完了する。
【0070】
また、対象物検出部20による識別マーカー41の認識作業は、同様に以下のように行なわれる。
先ず、形状認識部24は、取得した三次元点群データから反射強度の強い点を抽出し、点と点との間の距離を条件としてクラスタリングを行なう。そして、形状認識部24は、サイズを判断条件として高反射率のクラスターを抽出する。
続いて、形状認識部24は、抽出したクラスターの幾何学中心と識別マーカー41の識別部41aの反射体(マーク43a)とを照合して識別マーカー41の存在を検出する。その際、形状認識部24は、識別マーカー41の位置や傾きを、抽出したクラスターの幾何学中心及び識別マーカーに属した点群の情報から算出することができる。
最後に、形状認識部24は、識別マーカー41の識別部41aと情報部41bの幾何学関係を利用して、情報部41bに存在可能な反射体(マーク43b)の位置を計算すると共に、実際に抽出したクラスターの幾何学中心と照合して、識別マーカー41の情報部41bに組み込まれた各マーク43bのビットの状態を判断する。
このようにして、形状認識部24は識別マーカー41を認識し、情報部41bの固有情報44を読み取ることができる。
【0071】
識別マーカー41は、上述した実施形態においては、荷棚40の中間棚板42の前側面に取り付けられているが、これに限らず、当該荷棚40の他の位置に取り付けることも可能であり、形状認識部24は、荷役位置となり得るすべての棚板表面と、識別マーカー41の上下及び左右の相対位置情報を前もって登録しておくことにより、各棚板に対して荷役を行なうことができる。
【0072】
また、識別マーカー41は、荷役位置としてパレット載置台を利用する場合には、
図20に示すように、荷Pを積んだパレット30を載置するためのパレット載置台50に対して、その前側面51に取り付けることも可能である。
図20の場合には、識別マーカー41の認識は対象物検出部20により行われ、パレット載置台50に積載されるパレット30と識別マーカー41の左右方向及び上方との相対位置は、検出部15のレーザーナビゲータ15aで検出された現在位置との相対位置関係を演算することにより取得される。これにより、自動運転フォークリフト10において、識別マーカー41の認識によりパレット載置台50の左右の位置と、パレット載置台50の荷台の積載面との上下方向の相対位置を算出すると共に、
図19のフローチャートに従って、対象物検出部20によるパレット30及びその開口部31の形状及び位置の認識を行うことにより、パレット載置台50に2つのパレットを正確に積載できる。パレット載置台は
図20に示すように、底部にキャスター50aを取り付けて移動できるようしてもよい。
【0073】
配送車両の荷台に対して荷取り又は荷卸しを行なう場合には、
図21(A)及び(B)に示すように、配送車両52の荷台53を側方から包囲する所謂アオリ板53aの内面に識別マーカー41を取り付けることも可能である。この場合、識別マーカー41は、アオリ板53aの開放状態にて、よく見える位置、図示の場合開放時に一番上の位置となるようにアオリ板53aの内面に取り付ける。なお、識別マーカー41は、側方のアオリ板53aだけでなく、後方のアオリ板の内面に取り付けてもよい。形状認識部24は、識別マーカー41に関して、配送車両52の荷台53の床面の、例えばパレット30の積載位置をそれぞれ荷役位置として、相対位置情報を登録されている。これにより、識別マーカー41の認識は対象物検出部20により行われ、配送車両52の荷台53に積載されるパレット30と識別マーカー41の左右方向及び荷台53の上下方向との相対位置は、検出部15のレーザーナビゲータ15aで検出された現在位置との相対位置関係を演算することにより取得される。これにより、自動運転フォークリフト10において、識別マーカー41の認識及びパレット30及びその開口部31の形状及び位置の認識により配送車両52の荷台53の左右及び上下方向の所定の位置に複数のパレットを正確に積載できる。
【0074】
これに対して識別マーカー41を、荷棚40やパレット載置台50のような物体の側面に取り付けず、
図22(A)及び(B)に示すように、倉庫等の床面に直接に設けられた荷役位置に隣接して、例えば荷Pを積載したパレット30に隣接した床面に取り付けることも可能である。形状認識部24は、前述した床面に設けられたマーカー16dの場合と同様にして、識別マーカー41を認識することができる。この場合、荷役したい場所にマーカー16dを設けることなく、当該場所に直接に識別マーカー41を置くだけで荷役位置を設定することが可能である。
【0075】
上記構成によれば、形状認識部24が、センサ部22で取得した三次元点群25から例えば荷取り位置に置かれたパレット30及びその開口部31を認識することができるので、荷取り位置に正確にパレット30が置かれていなくても、確実にパレット30の形状及び位置を認識することができる。さらに、形状認識部24は、荷役位置付近に設けられた識別マーカー41を認識することによって、その情報部41bの情報に基づいて当該荷役位置の形態、即ち実際の荷取り位置及び荷卸し位置の荷棚,パレット載置台,配送車両等の形態を正確に把握することができる。
【0076】
本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができる。例えば、対象物検出部20の直動アクチュエータ21a,二次元ライダー22a及び高さセンサ23をマスト13aに取り付けることなく、別途車体11に設けた支持部材に取り付けるようにしてもよい。この場合、フォーク13を上下に揺動させるためにマスト13aが前後に揺動する構造の自動運転フォークリフト10であっても、対象物検出部20を車体11に対して固定配置することが可能である。
【0077】
本発明による自動運転フォークリフト10は、移動手段21を、二次元ライダー22aの水平スキャンとは異なる方向、すなわち上向き又は下向きに揺動させる揺動手段と揺動手段の揺動角度を検出する角度検出手段とで構成してもよい。この構成では、形状認識部24が、角度検出手段により検出された揺動角度に基づいて検出対象の高さ位置を演算して、二次元ライダーによる二次元点群22cに検出対象の高さ位置を付加して三次元点群25を演算する。この構成によれば、二次元ライダー22aで水平方向にスキャンしながら、揺動手段により二次元ライダーを上下方向に揺動させて検出対象の高さ位置を変更することによって、二次元ライダーによる二次元点群22cに高さ位置を付加して三次元点群25を取得することができる。この場合、揺動手段が二次元ライダー22aを上下方向に揺動させる構成であるので、センサ部22が小型に且つ簡単に構成される。
【0078】
上述した実施形態に代えて、対象物検出部20のセンサ部22を車体11に配置した三次元ライダーとし、形状認識部24が三次元ライダーで検出した三次元点群25から前方に位置する物体の形状を認識するようにしてもよい。この構成にすれば、三次元ライダーにより直接に三次元点群25を取得することができるので、ライダーを上下動又は揺動させるための移動手段が不要であり、三次元ライダーが直接に車体11に固定配置できるので、センサ部22がより簡単で且つ小型に構成される。
さらに、上述した実施形態に代えて、対象物検出部20のセンサ部22をフォーク13に配置した二次元ライダーとし、形状認識部24がフォーク13を上下動させながら二次元ライダーで検出した二次元点群から三次元点群を取得して、前方に位置する物体の形状を認識するようにしてもよい。この構成にすれば、フォーク13の上下動に伴って、センサ部により三次元点群25を取得することができるので、ライダーを上下動又は揺動させるための移動手段が不要であり、センサ部22がより簡単で且つ小型に構成される。
【符号の説明】
【0079】
10 自動運転フォークリフト
11 車体
11a 張出部
11b 前輪
11c 後輪
12 走行部
13 フォーク
13a マスト
14 フォーク駆動部
15 検出部
15a 位置センサ(レーザーナビゲータ)
15b 障害物センサ
15c バンパーセンサ
15d レーザースキャナ
15e 受光部
15f 施設
15g 反射部
16 制御部
16a 操作部
16b 走行データ
16c 基本経路
16d マーカー
17 安全部
17a 緊急停止ボタン
17b 音声・パトランプ
17c ウィンカー
20 対象物検出部
21 移動手段
21a 直動アクチュエータ
21b 本体
21c 可動部
22 センサ部
22a 二次元ライダー
22b スキャン面
22c 二次元点群
23 高さセンサ
24 形状認識部
25 三次元点群
26a,26b… スライス領域
27a,27b,27c,27d クラスター
30 パレット
31 開口部
40 荷棚
41 識別マーカー
41a 識別部
41b 情報部
42 棚板
43 マーク
43a 第一のマーク
43b 第二のマーク
44 固有情報
50 パレット載置台
51 前側面
52 配送車両
53 荷台
53a アオリ板