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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082973
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】天井点検口及び天井点検口の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 19/08 20060101AFI20230608BHJP
【FI】
E04F19/08 101E
E04F19/08 101J
E04F19/08 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197033
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】598088723
【氏名又は名称】株式会社カイダーベースボード工業
(74)【代理人】
【識別番号】100167117
【弁理士】
【氏名又は名称】打越 佑介
(72)【発明者】
【氏名】牧野 武男
(72)【発明者】
【氏名】日高 徳雄
(72)【発明者】
【氏名】木曽 和彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雄大
(57)【要約】      (修正有)
【課題】内枠を露出させずに屋内側の意匠性の向上に寄与し、点検口の開口付近のスペースを確保して配線・配管等の保守・点検の作業性の向上に寄与し、施工現場での製作工程を省いて全体の施工計画の順守に寄与する天井点検口を提供すること。
【解決手段】天井材Sの開口Hの周囲に位置する開口壁Wに形成されたレール1と、レール1をスライドする開閉部材2とを備え、レール1は、開口Hに対して平行方向の一端側に位置するレール第1端部11と、レール第1端部11より開口Hに対して平行方向の他端側かつ直交方向の開口H側に位置するレール第2端部12とを有し、開閉部材2は、開口Hと略同形かつ同寸法の板状部21と、板状部21の一端側に取り付けられてレール1に収まる回転軸部22とを有し、閉状態で、板状部21が開口Hに面一状に収まり、回転軸部22がレール第1端部11に位置し、開状態で、回転軸部22がレール第2端部12に位置する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井材の開口の周囲に位置する開口壁に形成されたレールと、
レールをスライドする開閉部材とを備え、
レールは、
開口に対して平行方向の一端側に位置するレール第1端部と、
レール第1端部より開口に対して平行方向の他端側かつ直交方向の開口側に位置するレール第2端部とを有し、
開閉部材は、
開口と略同形かつ同寸法の板状部と、
板状部の一端側に取り付けられてレールに収まる回転軸部とを有し、
閉状態で、板状部が開口に面一状に収まり、回転軸部がレール第1端部に位置し、
開状態で、回転軸部がレール第2端部に位置する
ことを特徴とする天井点検口。
【請求項2】
開口及び開口壁は、天井材とは別体の枠材で構成され、
レールは、枠材に形成された溝である
ことを特徴とする請求項1に記載の天井点検口。
【請求項3】
開閉部材を閉状態に保持する係合部材をさらに備え、
係合部材は、
板状部の他端側に設けられた第1係合部と、
第1係合部と着脱自在に係合するように開口壁に設けられた第2係合部とを有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の天井点検口。
【請求項4】
レールが形成された枠材及び第2係合部が設けられた枠材を準備する工程と、
板状部に回転軸部及び第1係合部が設けられた開閉部材を準備する工程と、
レールが形成された枠材及び第2係合部が設けられた枠材を天井材の開口の周囲に位置する開口壁として設置する工程と、
回転軸部を介してレールが形成された枠材に開閉部材を取り付ける工程とを含む
ことを特徴とする請求項3に記載の天井点検口の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば集合住宅の天井点検口に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば集合住宅や商業施設といった建築物では、天井裏に配設された配線・配管等を保守・点検するために、天井材に形成された開口に装着される天井点検口がある。一般的な天井点検口は、枠幅が広めな額縁タイプや狭めな目地タイプであり、アルミやスチールといった金属製で、上記開口に設けられる外枠と、外枠の内側に収まる内枠とを備え、内枠の内側には上記開口の形成時に切り出した天井材や別途準備した石膏ボードが嵌められている。
【0003】
また、例えば特許文献1には、外枠と、天井裏に設けられた内枠を収納する収納枠とが連続しており、外枠及び収納枠に段差状のレールが連続して設けられており、レールをスライドする内枠が、外枠の内側に収まることで閉状態となり、収納枠の内側に収まることで開状態となる天井点検口が開示されている。この構成によれば、天井材の開口に対して容易に装着でき、また、レールの変形といった不具合を予防する効果が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-339561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般的な天井点検口では、両タイプとも外枠及び内枠が室内に露出してしまうため、天井のみならず部屋全体の見栄えを損ねるおそれがある。さらに、額縁タイプより意匠性が高いと考えられる目地タイプでは、内枠の幅も狭い分、内枠の内寸と嵌め込み用の板材の内寸とが合わないと、内枠と板材とで隙間が生じてしまうおそれもある。こういった問題点を克服するには、少なくとも内枠を要さない構造が適している。
【0006】
また、外枠に対して内枠が回転軸を介して回転する構造では、回転時に内枠が外枠に衝突するおそれがあり、これを回避するために、外枠に対して回転軸を開口の平行方向の中央側に寄せ過ぎると、開口面積が狭まるのみならず、開状態で内枠のうち回転軸より短手側が天井裏に突き出てしまい、配線・配管等の保守・点検時の障害になってしまうおそれもある。こういった問題点を克服するには、回転軸の位置の改善が求められる。
【0007】
特許文献1では、天井裏に収納枠を設置する手間がかかる上に、設置した収納枠が配線・配管等の保守・点検時の障害になってしまうおそれがある。この観点から、特許文献1に記載された内枠がレールを移動する着想に基づいて、回転軸を介して回転する構造に対し、回転軸が移動するレールの形状や範囲、及び移動のルートに関する新たな着想を想起することは容易でない。
【0008】
また、一般的な天井点検口では、例えば建築現場で内枠の内側に嵌める天井材や石膏ボードを準備する分、施工の時間を要するため、他の工程の進度に影響しかねない。すなわち、内枠に嵌め込む板材を切り出す工程や上記板材を内枠に嵌め込む工程が建築現場で行わなければ、天井点検口に関する施工計画を立てやすく、計画どおりに進行しやすいため、これらの工程を事前に済ませるのが望ましい。
【0009】
そこで、本発明の目的は、内枠を露出させずに屋内側の意匠性の向上に寄与し、点検口の開口付近のスペースを確保して配線・配管等の保守・点検の作業性の向上に寄与し、施工現場での製作工程を省いて全体の施工計画の順守に寄与する天井点検口及び天井点検口の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明における天井点検口は、天井材の開口の周囲に位置する開口壁に形成されたレールと、レールをスライドする開閉部材とを備え、レールは、開口に対して平行方向の一端側に位置するレール第1端部と、レール第1端部より開口に対して平行方向の他端側かつ直交方向の開口側に位置するレール第2端部とを有し、開閉部材は、開口と略同形かつ同寸法の板状部と、板状部の一端側に取り付けられてレールに収まる回転軸部とを有し、閉状態で、板状部が開口に面一状に収まり、回転軸部がレール第1端部に位置し、開状態で、回転軸部がレール第2端部に位置することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、開閉部材が内枠を備えていないため、閉状態で屋内側から天井材と一体的に見える効果を期待でき、開閉部材がレール第1端部からレール第2端部に向かって移動しながら回転することで、開閉部材のうち回転軸部より短手側が開口壁に当たらず閉状態から開状態にスムーズに移行する効果を期待でき、レール第1端部とレール第2端部との高低差に応じて開状態で開閉部材が下がることで、上記短手側が天井裏に突き出し過ぎない効果を期待でき、開閉部材が施工現場での他の工程に依存せず、かつ影響を与えにくい工程にて制作可能な構造であるため、全体的に施工しやすい効果を期待できる。
【0012】
以下、本発明における天井点検口を構成する技術要素の定義や例示を記す。
【0013】
「天井材」とは、例えば、建築物、船舶や航空機といった乗物、その他構造上の天井を形成するものであればよく、樹脂製・木製・紙製・金属製・石膏製のいずれかの資材又は二種類以上の資材を組み合わせて形成されており、厚みや面積といった寸法を限定しない。建築物に採用される天井材は、例えば、所定の間隔で複数本配置された細長い棒状の下地材と、下地材に打ち付けられた板状の表面材とを備えている。
【0014】
「天井材の開口」とは、例えば、天井材の所定の箇所を切り抜いて形成された貫通孔であり、また、上記貫通孔の縁に設けた枠材で形成された貫通孔であり、限定しない。
【0015】
「開口の周囲に位置する開口壁」とは、開口の縁から天井裏に向かって壁状に立ち上がった部位であり、例えば、一種類の資材の所定の部位であっても、建築物に採用される天井材のように二種類以上の資材が重なって形成された部位であっても、上記枠材の所定の部位であってもよい。
【0016】
「建築物」とは、例えば、集合住宅・戸建住宅・仮設住宅・学校・病院・高齢者施設・障害者施設・各種商業施設であり、鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄骨造といった構造やサイズを限定しない。「建築物」が集合住宅の場合、間取り・サイズ・構造・施工方法といった本発明が実施される集合住宅内の各居室の仕様は限定されない。
【0017】
「レール」とは、開口に対して少なくとも平行方向、または平行方向及び直交方向(段差状)に開閉部材をスライド自在にするものであり、例えば、開口壁の表面に所定の形状かつ深さに形成された溝でも、天井材とは別の部材で開口壁に外付けしたものでもよい。「レール第1端部」及び「レール第2端部」は、レールを移動する開閉部材の始端・終端であってもよい。「レール第1端部」と「レール第2端部」との間は、開口を基準として上方向又は下方向に膨らむ円弧状であっても、階段状であってもよい。
【0018】
「開閉部材」とは、回転軸部を介してレールを回転及び移動するものであり、回転と移動とを同時に行っても、それぞれ別々に行ってもよく、換言すると、回転しながら連続して移動しても、回転と移動とを断続的に行ってもよく、また、レールに対して着脱自在であってもなくてもよい。「板状部」とは、天井材の開口の形成により切り出された板材でも、天井材とは異なる板材であってもよい。「回転軸部」とは、例えば、樹脂製の部品であり、板状部に対して直に取り付けられても、他の部材を介して間接的に取り付けられてもよく、形状・サイズ・素材を限定しない。
【0019】
「閉状態」とは、天井材に対して所定の治具を介して開閉部材が締結されて、開口と開閉部材との成す角が略ゼロの状態も該当する。「開状態」とは、開閉部材がレールにぶら下がり、開口と開閉部材との成す角が略90°の状態も該当する。
【0020】
また、本発明における天井点検口のうち、開口及び開口壁は、天井材とは別体の枠材で構成され、レールは、枠材に形成された溝であることが望ましい。
【0021】
この構成によれば、枠材の形状・寸法・素材に基づいて開閉部材を含む全体の仕様を決定しやすく、例えば、枠材が樹脂製の場合、溝状のレールを加工しやすく、軽量で、回転軸部から摩擦を受けても摩耗しにくいことから、施工性の向上及び耐久性の確保といった効果も期待できる。
【0022】
また、本発明における天井点検口は、開閉部材を閉状態に保持する係合部材をさらに備え、係合部材は、板状部の他端側に設けられた第1係合部と、第1係合部と着脱自在に係合するように開口壁に設けられた第2係合部とを有することが望ましい。
【0023】
この構成によれば、開閉部材の閉状態で係合部材が屋内側に露出しないことから、開閉部材と天井材との一体感を損ねず、また、第2係合部に対する第1係合部の係合状態を解除しやすいことから、開閉部材の開閉がスムーズになる効果を期待できる。
【0024】
「係合部材」とは、第1係合部を介して第2係合部で開閉部材を支えて落下を予防するものであればよく、例えば、磁力式でも嵌合式でもよいが、好ましくは弱めな外力でも解除しやすい嵌合式である。
【0025】
本発明における天井点検口の施工方法は、レールが形成された枠材及び第2係合部が設けられた枠材を準備する工程と、板状部に回転軸部及び第1係合部が設けられた開閉部材を準備する工程と、上記枠材を天井材の開口の周囲に位置する開口壁として設置する工程と、回転軸部をレールに収めて枠材に対して開閉部材を取り付ける工程とを含むことを特徴とする。
【0026】
これらの工程によれば、枠材の準備と開閉部材との準備とを別々に行え、枠材を設置した後に開閉部材を取り付けられることから、施工現場での精密な作業を回避すると共に、施工現場での作業負担を軽減する効果を期待できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、内枠を露出させずに屋内側の意匠性の向上に寄与し、点検口の開口付近のスペースを確保して配線・配管等の保守・点検の作業性の向上に寄与し、施工現場での製作工程を省いて全体の施工計画の順守に寄与する効果を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態における天井点検口における閉状態(a)、開状態(b)である。
図2】上記天井点検口の閉状態における天井裏側からの平面図(a)、平面図のX1-X1断面図(b)、平面図のX2-X2断面図(c)である。
図3】上記天井点検口に採用されているレールを説明する図である。
図4】上記天井点検口に採用されている回転軸部を説明する図である。
図5】上記天井点検口に採用されている係合部材における係合中(a)、解除後(b)、係合前(c)を説明する図である。
図6】上記天井点検口の閉状態における屋内側からの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、各図を参照しつつ、本発明の一実施形態における天井点検口(以下、「本天井点検口」ともいう。)及び本天井点検口の施工方法について説明する。これらの図において、複数個存在する同一の部位については、一つの部位のみに符番した部分もある。説明の便宜上、所定の部位やこの部位の引き出し線をかくれ線(破線)で示した部分もある。説明において、上、下、縦、横、垂直方向等の向きを示す用語は、基本的に通常の建築物を基準とし、これ以外を基準にする場合は適宜説明する。
【0030】
<本天井点検口の概要>
図1に示すように、本天井点検口は、建築物の所定階の居室Rの天井Tの裏側に配設された配線・配管等を保守・点検するためのものであり、天井材Sの開口Hの周囲に位置する開口壁Wに形成されたレール1と、レール1をスライドする開閉部材2と、開閉部材2を閉状態に保持する係合部材3とを備えている。レール1は、開口Hに対して平行方向の一端側に位置するレール第1端部11と、レール第1端部11より開口Hに対して平行方向の他端側かつ直交方向の開口H側に位置するレール第2端部12とを有する。開閉部材2は、開口Hと略同形かつ同寸法の板状部21と、板状部21の一端側に取り付けられてレール1に収まる回転軸部22とを有する。係合部材3は、板状部21の他端側に設けられた第1係合部31と、第1係合部31と着脱自在に係合するように開口壁Wに設けられた第2係合部32とを有する。閉状態で、板状部21が開口Hに面一状に収まり、回転軸部22がレール第1端部11に位置し、開状態で、回転軸部22がレール第2端部12に位置する。
【0031】
以下、本天井点検口の概要を踏まえつつ、詳細に説明する。
【0032】
<天井材Sの詳細>
図2に示すように、天井材Sは、所定の間隔で複数本配置された細長い棒状の下地材S1と、下地材S1に図示しないビス等で固定された板状の表面材S2とを備えている。下地材S1は、樹脂製でも金属製でも木製でもよく、中空状であってもなくてもよい。表面材S2は、石膏ボード(プラスターボード)でも金属パネルでもよく、限定しない。本天井点検口用の貫通孔は、表面材S2のうち、好ましくは下地材S1で囲まれ、かつ下地材S1に干渉しない箇所に形成される。寸法の一例として、下地材S1は40mm四方、表面材S2の厚みは9.5mmとする。
【0033】
<枠材Fの詳細>
図2に示すように、枠材Fは、本天井点検口の外枠に該当する。枠材Fは、加工性及び耐久性を考慮すると、好ましくは樹脂製である。枠材Fは、下地材S1より本天井点検口用の貫通孔側に位置し、下地材S1に隣接するように表面材S2に載置して図示しないビス等で固定され、表面材S2の端面を覆っている。開口H及び開口壁Wは、枠材Fで構成されており、開口壁Wは、枠材Fの内側の端面に相当する。寸法の一例として、開口Hは450mm四方、開口壁Wの高さは55mmとする。
【0034】
<レール1の詳細>
図2及び図3に示すように、レール1は、枠材Fに形成された溝である。レール1は、開口Hに対して平行方向の一端側に位置し、枠材Fの高さ方向の略中央に位置する略円状のレール第1端部11と、レール第1端部11より開口Hに対して平行方向の他端側かつ直交方向の開口H側に位置し、レール第1端部11より低く位置する略円状のレール第2端部12と、枠材Fの上端からレール第1端部11及びレール第2端部12に通じるレール入口部13とを有する。寸法の一例として、溝状のレール1の深さは10mmとする。レール第1端部11及びレール第2端部12の径並びにレール入口部13の幅は、図示しない回転軸部の径に応じて決定されてもよい。
【0035】
図3を参照しつつ、レール第1端部11とレール第2端部12との位置関係を決定する条件の一例を以下に示す。これらの例のうち、第1の条件・第2の条件のいずれか一方のみ満たしていてもよいが、双方満たしているとより好ましい。図3は、図2(b)と同方向からのレール1の拡大図であり、説明の便宜上、開閉部材2を破線で示す。
【0036】
第1の条件として、レール第1端部11の中心と開閉部材2が回転するときに板状部21のうち最も外側に軌道を描いて移動する部位とを結んで回転軸に直交する直線距離M1が、好ましくはレール第2端部12の中心と開閉部材2が回転するときに接近する開口壁Wとを結ぶ直線距離M2より短く、これにより閉状態から開状態に開閉部材2を移行するときに、上記部位が開口壁Wに衝突するのを回避できる。
【0037】
第2の条件として、レール第1端部11の中心と開閉部材2が回転するときに接近する開口壁Wとを結ぶ直線距離N1は、好ましくはレール第2端部12の中心から枠材Fの上端までの鉛直距離N2より短く、これにより開状態で開閉部材2が枠材Fの上端を超えて突き出るのを回避できる。
【0038】
このように、第1の条件や第2の条件を踏まえて、レール第1端部11及びレール第2端部12の位置を決定してもよい。レール第1端部11は、枠材Fの高さ方向の略中央から上端までの間のいずれに位置してもよい。レール第2端部12は、開口Hに対して平行方向の略中央付近までのいずれに位置してもよいが、レール第2端部12が上記中央付近に位置するほど、開閉部材2の移動距離が増え、かつ開状態で開口Hが分断されて各々の開口面積が狭まる欠点が顕在化するため、これらの欠点を回避するには、好ましくは開口Hに対して平行方向の一端側の近くに位置する。
【0039】
<開閉部材2の詳細>
図2に示すように、開閉部材2は、開口Hと略同形かつ同寸法であり、閉状態で開口壁Wと隙間を空けて開口Hに収まる平面視矩形状の板状部21と、板状部21の一端側に取り付けられてレール1に収まり、板状部21がレール1をスライドしたり回転したりするように取り付けられた回転軸部22とを有する。すなわち、開閉部材2は、従来の天井点検口のように外枠に対する内枠を有さないことから、枠材Fと板状部21との隙間(以下「目地幅」ともいう。)は3mm以下でよく、干渉対策を加味していた従来の外枠と内枠との隙間は3.5mm以上必要であった分、意匠性の向上に寄与している。
【0040】
板状部21は、表面材S2より薄くても厚くてもよく、表面材S2と同素材であっても異素材であってもよく、例えば、石膏ボード(プラスターボード)でもよいが、開閉部材2の落下による事故といった影響を小さくするため、軽量化を優先して6mm厚のケイ酸カルシウム板であってもよい。板状部21は、回転軸部22を取り付ける角材状の土台21aを有する。土台21aは、板状部21の一辺と略同等の長さであり、板状部21の両端付近に図示しないビス等で固定されていることから、板状部21の補強にも寄与している。
【0041】
図4は、図2(c)と同方向からの回転軸部22の拡大図であり、説明の便宜上、他の部材を破線で示す。図5に示すように、回転軸部22は、レール1内に収まる軸心22aと、軸心22aと一体的かつ軸心22aよりも大きめに形成された軸元22bとを有する。軸心22aの径は、レール第1端部11の径及びレール第2端部12の径を含むレール1の幅と同等以下であり、軸元22bの径は、軸心22aの径より大きい。これによれば、枠材Fと土台21aとの間に軸元22bが介在するため、目地幅を一定に保ちやすい。回転軸部22は、好ましくはレール1との耐摩耗性を有し、例えば、ナイロン樹脂製であるが、これに限定しない。回転軸部22は、土台21aに対してビス等で固定されている。
【0042】
<係合部材3の詳細>
図2に示すように、係合部材3は、回転軸部22とは逆側に位置する板状部21の他端側に設けられた第1係合部31と、第1係合部31に嵌合して着脱自在に係合するように開口壁Wである枠材Fに設けられたL字状の第2係合部32とを有しており、例えば、スイング式のラッチである。図5は、図2(b)と同方向からの係合部材3周辺の拡大図である。
【0043】
図5(a)に示すように、第1係合部31は、板状部21に設置された台座21bの上に固定され、押圧部分であるラッチ31aと、ラッチ31aの動作に追従するスプリング31bと、第2係合部32の先端を挿通するスリット31cとを有する。第2係合部32がスリット31cに嵌合した状態で、板状部21が閉状態となる。
【0044】
図5(b)に示すように、嵌合の解除方法は、目地から細長い物体でラッチ31aを押圧すると、ラッチ31aの動作に追従してスプリング31bが可動し、スプリング31bの可動により第1係合部31が傾いてスリット31cから第2係合部32が抜ける。嵌合を解除した直後に、自重による板状部21の回転が始動する。
【0045】
図5(c)に示すように、嵌合の実行方法は、板状部21を回転動作に伴い、第2係合部32が第1係合部31の傾斜状の先端を滑ってスリット31cに嵌合して実行される。
【0046】
<開閉部材2の閉状態>
図6に示すように、居室側から天井Tを見上げると、開閉部材2が開口Hに収まっており、現れるのは枠材Fの一部及び枠材Fと開閉部材2との隙間である目地のみであることから、天井を含む屋内の意匠性が確保される。一方、目地から現れる回動軸部22の軸心22a及び係合部材3の第2係合部32はわずかであることから、これらが上記屋内の意匠性を低下させるとは言いにくいが、これらが目地から現れないように所定のカバー部材で天井裏側から目地を覆ってもよい。
【0047】
<本天井点検口の作用効果>
したがって、図1及び図6に示すように、開閉部材2が内枠を備えていないため、閉状態で屋内側から天井材Sと一体的に見え、開閉部材2がレール第1端部11からレール第2端部12に向かって移動しながら回転することで、開閉部材2のうち回転軸部22より短手側が開口壁Wに当たらず閉状態から開状態にスムーズに移行し、レール第1端部11とレール第2端部12との高低差に応じて開状態で開閉部材2が下がることで、上記短手側が天井裏に突出し過ぎない。
【0048】
さらに、枠材Fの形状・寸法・素材に基づいて開閉部材2を含む全体の仕様を決定しやすく、特に、枠材Fが樹脂製であれば、溝状のレール1を加工しやすく、軽量で、回転軸部22から摩擦を受けても摩耗しにくいことから、施工性の向上及び耐久性の確保が実現する。
【0049】
さらに、開閉部材2の閉状態で係合部材3が屋内側に露出しないことから、開閉部材2と天井材Sとの一体感を損ねず、また、第2係合部32に対する第1係合部31の係合状態を解除しやすいことから、開閉部材2の開閉がスムーズになる。
【0050】
<本天井点検口の施工方法の概要>
上述した本天井点検口の施工方法は限定しないが、例えば、図2に示すように、レール1が形成された枠材F及び第2係合部32が設けられた枠材Fを準備する第1工程と、板状部21に回転軸部22及び第1係合部31が設けられた開閉部材2を準備する第2工程と、レール1が形成された枠材F及び第2係合部32が設けられた枠材Fを天井材Sの開口Hの周囲に位置する開口壁Wとして設置する第3工程と、回転軸部22を介してレール1が形成された枠材Fに開閉部材2を取り付ける第4工程と、を含む。
【0051】
<本天井点検口の施工方法の効果>
これらの工程によれば、レール1の形成を含む枠材Fの準備と回転軸部22の取り付けを含む開閉部材2との準備とを別の場所や別のタイミングで行え、さらに、枠材Fを天井材Sに設置した後に開閉部材2を取り付けられることから、施工現場での精密な作業を回避すると共に、施工現場での作業負担を軽減する。レール1に対して開閉部材2は着脱自在であることから、本天井点検口のメンテナンスもしやすい。
【0052】
なお、本実施形態は、上述した内容に限定されず、同等の効果を得られる限り、あらゆる、部位の位置・形状・寸法、部位同士の関係、施工の計画、他の施工との関係を含む。
【符号の説明】
【0053】
R 居室
T 天井
S 天井材、S1 下地材、S2 表面材
F 枠材
H 開口
W 開口壁
1 レール
11 レール第1端部
12 レール第2端部
13 レール入口部
2 開閉部材
21 板状部、21a 土台
22 回転軸部、22a 軸心、22b 軸元
3 係合部材
31 第1係合部、31a ラッチ、31b スプリング、31c スリット
32 第2係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6