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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082992
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】プローブ基板
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/073 20060101AFI20230608BHJP
   G01R 31/26 20200101ALI20230608BHJP
【FI】
G01R1/073 E
G01R31/26 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197056
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴久
【テーマコード(参考)】
2G003
2G011
【Fターム(参考)】
2G003AA10
2G003AG04
2G003AH04
2G003AH05
2G011AA01
2G011AA16
2G011AB01
2G011AC21
2G011AE03
2G011AF07
(57)【要約】
【課題】プローブ基板本体の破損を抑えることのできるプローブ基板を提供する。
【解決手段】プローブ基板17は、プローブカード11に用いられる。プローブカード11は、回路基板12aを有する主基板部12と、主基板部12に接続される支持部材14とを備える。プローブ基板17は、回路基板12aの第1主面S1aに向かい合うように配置される第1主面S2aを有するプローブ基板本体13と、プローブ基板本体13の第1主面S2aに設けられ、支持部材14に接着される応力緩和膜18とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板を有する主基板部と、前記主基板部に接続される支持部材と、を備えるプローブカードに用いられるプローブ基板であって、
前記回路基板の主面に向かい合うように配置される主面を有するプローブ基板本体と、
前記プローブ基板本体の前記主面に設けられ、前記支持部材に接着される応力緩和膜と、を備える、プローブ基板。
【請求項2】
前記プローブ基板本体は、ガラスセラミックス基板であり、
前記応力緩和膜は、合成樹脂膜又は金属膜である、請求項1に記載のプローブ基板。
【請求項3】
前記合成樹脂膜の合成樹脂は、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂、及びシリコーン系樹脂から選ばれる少なくとも一種である、請求項2に記載のプローブ基板。
【請求項4】
前記金属膜の金属は、Ni、Cu、及びAuから選ばれる少なくとも一種である、請求項2に記載のプローブ基板。
【請求項5】
ガラスセラミックスの組成は、質量%でガラス:20~70%、Al:10~60%、及びZnSiO:20~70%を含有する、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のプローブ基板。
【請求項6】
ガラスセラミックスの組成は、質量%でガラス:30~70%、及びAl:30~70%を含有する、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のプローブ基板。
【請求項7】
前記ガラスセラミックス基板に含まれるガラスは、ガラス組成として、質量%でSiO:50~80%、B:10~30%、LiO+NaO+KO:1~10%、MgO+CaO+SrO+BaO:5~30%、及びTiO:0~10%を含有する、請求項2から請求項6のいずれか一項に記載のプローブ基板。
【請求項8】
前記応力緩和膜の厚さは、1μm以上、100μm以下の範囲内である、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のプローブ基板。
【請求項9】
前記応力緩和膜は、前記プローブ基板本体の前記主面の全面に設けられる、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のプローブ基板。
【請求項10】
前記応力緩和膜は、前記プローブ基板本体の前記主面のうち、前記支持部材に接着される接着部分に対応して部分的に設けられる、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のプローブ基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブ基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、半導体ウェハ上のチップの電気特性の検査には、プローブカードが用いられている。プローブカードは、半導体ウェハ上のチップの電極と接触するプローブを有している。プローブカードは、半導体ウェハ上のチップと、テスター装置との電気信号のやりとりを行う。このようなプローブカードとして、回路基板を有する主基板部と、プローブが接続されるプローブ基板本体と、主基板部にプローブ基板本体を支持させる支持部材とを備えたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-200272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなプローブカードのプローブ基板本体には、プローブ基板本体に接続される支持部材から引張力が加わる場合がある。このとき、プローブ基板本体において、支持部材が接続されている接続部分に集中する応力により、プローブ基板本体が破損するおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、プローブ基板本体の破損を抑えることのできるプローブ基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するプローブ基板は、回路基板を有する主基板部と、前記主基板部に接続される支持部材と、を備えるプローブカードに用いられるプローブ基板であって、前記回路基板の主面に向かい合うように配置される主面を有するプローブ基板本体と、前記プローブ基板本体の前記主面に設けられ、前記支持部材に接着される応力緩和膜と、を備える。
【0007】
この構成によれば、プローブカードの支持部材からプローブ基板に引張力が加わったとき、引張力により生じる応力を応力緩和膜により緩和することができる。これにより、プローブ基板本体に集中する応力を低減することができる。このため、例えば、プローブ基板本体において微細なクラックが存在したとしても、そのクラックの進展を抑えることができる。
【0008】
上記プローブ基板において、前記プローブ基板本体は、ガラスセラミックス基板であり、前記応力緩和膜は、合成樹脂膜又は金属膜であってもよい。
上記プローブ基板において、前記合成樹脂膜の合成樹脂は、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂、及びシリコーン系樹脂から選ばれる少なくとも一種であってもよい。
【0009】
上記プローブ基板において、前記金属膜の金属は、Ni、Cu、及びAuから選ばれる少なくとも一種であってもよい。
上記プローブ基板において、ガラスセラミックスの組成は、質量%でガラス:20~70%、Al:10~60%、及びZnSiO:20~70%を含有してもよい。
【0010】
上記プローブ基板において、ガラスセラミックスの組成は、質量%でガラス:30~70%、及びAl:30~70%を含有してもよい。
上記プローブ基板において、前記ガラスセラミックス基板に含まれるガラスは、ガラス組成として、質量%でSiO:50~80%、B:10~30%、LiO+NaO+KO:1~10%、MgO+CaO+SrO+BaO:5~30%、及びTiO:0~10%を含有してもよい。
【0011】
上記プローブ基板において、前記応力緩和膜の厚さは、1μm以上、100μm以下の範囲内であってもよい。
上記プローブ基板において、前記応力緩和膜は、前記プローブ基板本体の前記主面の全面に設けられてもよい。
【0012】
上記プローブ基板において、前記応力緩和膜は、前記プローブ基板本体の前記主面のうち、前記支持部材に接着される接着部分に対応して部分的に設けられてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、プローブ基板本体の破損を抑える効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態におけるプローブカードを示す分解断面図である。
図2】プローブカードを示す断面図である。
図3図2の領域Aを拡大して示す断面図である。
図4】変更例のプローブ基板を示す断面図である。
図5】変更例のプローブ基板とその取り付け構造を部分的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、プローブ基板、及びプローブカードの一実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。
【0016】
<プローブカードの全体構成>
図1及び図2に示すプローブカード11は、半導体ウェハ上のチップの電気特性の検査に用いられる。プローブカード11は、主基板部12と、プローブ基板本体13とを備えている。プローブカード11は、複数のプローブPと、図示を省略した複数の外部電極とを備えている。
【0017】
プローブカード11の主基板部12は、プローブカード11のメイン基板となる回路基板12aを有している。回路基板12aは、例えば、円盤形状のプリント配線基板である。回路基板12aは、周知の樹脂基板、セラミックス基板等により構成することができる。回路基板12aは、プローブ基板本体13に向かい合う第1主面S1aと、第1主面S1aとは反対側の第2主面S1bとを有している。
【0018】
プローブカード11の各プローブPは、半導体ウェハ上のチップの電極に対応して配置される。プローブ基板本体13は、図示を省略したプローブ電極を有している。複数のプローブPは、プローブ基板本体13の複数のプローブ電極にそれぞれ接続される。プローブの材料としては、任意の金属材料を用いることができ、例えば、パラジウム合金、ベリリウム銅合金、タングステン合金等の合金が挙げられる。
【0019】
プローブカード11の複数の外部電極(図示せず)は、回路基板12aの第2主面S1bの外周部に設けられている。上述した複数のプローブPは、プローブ基板本体13を通じて回路基板12aの外部電極と電気的に接続されている。回路基板12aは、図示を省略したテスター装置に装着される。回路基板12aの複数の外部電極は、テスター装置と電気的に接続される。
【0020】
本実施形態の主基板部12は、回路基板12aの変形を抑えるための補強板12bを有している。補強板12bは、回路基板12aの第2主面S1b側に取り付けられている。補強板12bは、回路基板12aよりも剛性の高い材料から構成されることが好ましい。補強板12bは、例えば、ステンレス鋼等の金属材料から構成することができる。
【0021】
プローブ基板本体13は、回路基板12aの第1主面S1aに向かい合うように配置される第1主面S2aを有する。上述した複数のプローブPは、プローブ基板本体13の第1主面S2aと反対側の第2主面S2bに設けられている。すなわち、プローブ基板本体13の第2主面S2bは、上述した複数のプローブ電極を有している。プローブ基板本体13の平面形状としては、例えば、円形状、四角形状等が挙げられる。
【0022】
プローブ基板本体13は、配線ピッチを変換する配線基板であり、スペーストランスフォーマー(Space Transformer:ST)基板と呼ばれる場合もある。詳述すると、プローブ基板本体13の複数のプローブ電極のピッチは、回路基板12aの複数の外部電極のピッチよりも狭い。すなわち、プローブカード11がプローブ基板本体13を備えることで、より狭いピッチで複数のプローブPを配置することができる。
【0023】
上記のようにプローブカード11の回路基板12aに接続されたテスター装置は、チップとの電気信号のやりとりにより、チップの電気的特性を測定する。テスター装置は、チップの電気的特性の測定結果に基づいて、チップの良品及び不良品の判定を行うことができる。
【0024】
<プローブ基板本体の取付構造>
プローブカード11は、プローブ基板本体13を支持する支持部材14を備えている。支持部材14は、主基板部12に接続されている。本実施形態の支持部材14は、軸部14aと、軸部14aの両端となる第1端部14b及び第2端部14cとを有している。支持部材14の軸部14aは、主基板部12を貫通するように配置され、支持部材14の第1端部14bは、主基板部12の補強板12bに係止されている。支持部材14の材料としては、例えば、金属材料、樹脂材料、セラミックス材料等が挙げられる。
【0025】
図1図3に示すように、プローブカード11は、プローブ基板本体13の第1主面S2aと支持部材14との間に設けられ、支持部材14に接着される応力緩和層15を備えている。本実施形態の応力緩和層15は、第1応力緩和層15aと、第2応力緩和層15bとを備えている。第2応力緩和層15bは、第1応力緩和層15aと支持部材14との間に配置されている。第2応力緩和層15bは、応力緩和層15と支持部材14との接着性を高めている。
【0026】
応力緩和層15は、例えば、プローブ基板本体13を構成する材料よりもヤング率Eの低い材料から構成してもよい。応力緩和層15を構成する材料のヤング率Eは、応力の緩和作用をより高めるという観点から、200[GPa]以下であることが好ましい。応力緩和層15を構成する材料のヤング率Eは、応力緩和層15の過剰な変形を抑えるという観点から、2[GPa]以上であることが好ましい。
【0027】
応力緩和層15を構成する材料の線膨張係数αは、例えば、-40℃以上、125℃以下の温度範囲内で、10[ppm/K]以上、25[ppm/K]以下の範囲内であることが好ましい。
【0028】
図1及び図2に示すように、プローブカード11は、プローブ基板本体13の外周部を主基板部12に保持させる保持部材16を備えている。保持部材16は、プローブ基板本体13の第2主面S2bにおける外周部を支持する支持面を有する保持部本体16aと、保持部本体16aを主基板部12に取り付ける取付部材16bとを備えている。本実施形態の取付部材16bは、主基板部12を貫通し、保持部本体16aに螺合するねじ部材である。なお、取付部材16bとしては、例えば、ボルト及びナット、リベット等を用いてもよい。プローブ基板本体13と回路基板12aとは、図示を省略した中継接続ピンにより、電気的に接続されている。
【0029】
<プローブ基板>
次に、上記プローブ基板本体13を備えるプローブ基板について説明する。このプローブ基板を上記支持部材14に接着剤を用いて接着することにより、支持部材14とプローブ基板本体13との間に応力緩和層15を配置することができる。
【0030】
図1に示すように、プローブ基板17は、プローブ基板本体13と、プローブ基板本体13の第1主面S2aに設けられる応力緩和膜18とを備えている。
プローブ基板本体13は、例えば、ガラスセラミックス基板である。ガラスセラミックスは、ガラスとセラミックスとを含有する。ガラスセラミックスとしては、低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)が例示される。
【0031】
ガラスは、ガラス組成として、質量%で、好ましくは、SiO:50~80%、B:10~30%、LiO+NaO+KO:1~10%、MgO+CaO+SrO+BaO:5~30%、及びTiO:0~10%を含有し、より好ましくは、SiO:60~80%、B:10~30%、LiO+NaO+KO:1~5%、MgO+CaO+SrO+BaO:5~20%、及びTiO:0.1~3%を含有する。ガラスの組成は、その他の酸化物として、質量%でZrO:0.1~3%を含有してもよい。
【0032】
セラミックスとしては、例えば、ZnSiO(ウィレマイト)、Al(アルミナ)、コーディエライト、AlN(窒化アルミニウム)、リン酸ジルコニウム系化合物、ZrSiO(ジルコン)、ZrO(ジルコニア)、TiO(酸化チタン)、酸化スズ(SnO)、β-石英固溶体、β-ユークリプタイト、β-スポジュメン等が挙げられる。セラミックスは、一種又は二種以上を用いることができる。
【0033】
ガラスセラミックスの組成は、質量%で、好ましくは、ガラス:20~70%、Al:10~60%、及びZnSiO:20~70%を含有し、より好ましくは、ガラス:30~60%、Al:15~45%、及びZnSiO:25~55%を含有し、さらに好ましくは、ガラス:35~50%、Al:20~35%、及びZnSiO:30~45%を含有する。
【0034】
ガラスセラミックスの組成は、ZnSiOを含有しない組成であってもよい。ガラスセラミックスの組成は、質量%で、好ましくは、ガラス:30~70%、及びAl:30~70%を含有し、より好ましくは、ガラス:40~60%、及びAl:40~60%を含有し、さらに好ましくは、ガラス:45~55%、及びAl:45~55%を含有する。
【0035】
プローブ基板本体13は、例えば、セラミックスのグリーンシートを用いて回路パターンを形成する周知の方法によって得ることができる。
プローブ基板17の応力緩和膜18は、プローブカード11の支持部材14に接着される。本実施形態の応力緩和膜18は、応力緩和膜18と支持部材14との間に配置される接着層19により、支持部材14に接着される。
【0036】
応力緩和膜18は、プローブカード11の第1応力緩和層15aとなる。本実施形態の応力緩和膜18は、プローブ基板本体13の第1主面S2aのうち、支持部材14に接着される接着部分に対応して部分的に設けられている。
【0037】
応力緩和膜18は、合成樹脂膜又は金属膜であることが好ましい。合成樹脂膜の合成樹脂としては、例えば、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂、及びシリコーン系樹脂から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0038】
合成樹脂膜は、例えば、プローブ基板本体13に合成樹脂の塗布材をコーティングするコーティング法、別途成膜して得られた合成樹脂膜を接合する方法等により、プローブ基板本体13に設けることができる。
【0039】
金属膜の金属としては、例えば、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、及びAu(金)から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。金属膜は、例えば、スパッタ法、めっき法、金属箔を接合する方法等によりプローブ基板本体13に設けることができる。
【0040】
応力緩和膜18、すなわち第1応力緩和層15aの厚さは、1μm以上、100μm以下の範囲内であることが好ましい。
接着層19は、プローブカード11の第2応力緩和層15bとなる。接着層19は、支持部材14と応力緩和膜18との間に接着剤を配置し、その接着剤を硬化させることで形成することができる。例えば、上記応力緩和膜18がポリイミド系樹脂の場合、接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂系接着剤を用いることができる。すなわち、例えば、上記第1応力緩和層15aの材料がポリイミド系樹脂であり、上記第2応力緩和層15bの材料がエポキシ系樹脂であってもよい。接着層19の厚さ、すなわち、第2応力緩和層15bの厚さは、1μm以上、100μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0041】
<プローブ基板の作用>
次に、プローブ基板17の作用について説明する。
プローブ基板17において、プローブ基板本体13の第1主面S2aに設けられる応力緩和膜18は、プローブカード11の支持部材14に接着される。この構成によれば、プローブカード11の支持部材14からプローブ基板17に引張力が加わったとき、引張力により生じる応力を応力緩和膜18により緩和することができる。これにより、プローブ基板本体13に集中する応力を低減することができる。このため、例えば、プローブ基板本体13において微細なクラックが存在したとしても、そのクラックの進展を抑えることができる。
【0042】
次に、プローブ基板本体13に集中する応力を低減できる効果について、シミュレーションにより解析した解析例を挙げて説明する。シミュレーションは、解析ソフト(サイバネットシステム株式会社、商品名:ANSYS Mechanical 2020R2)を用いて行った。
【0043】
(解析例1)
解析例1では、応力緩和膜18の材料がポリイミド(ヤング率E:2.5[GPa]、線膨張係数α:20[ppm/K]であり、応力緩和膜18の厚さtを10[μm])とした。解析例1では、この応力緩和膜18をプローブ基板本体13であるガラスセラミックス基板に設けたプローブ基板17のモデルを設定した。解析例1では、このモデルについて、応力緩和膜18に接着した支持部材14を所定の条件で引っ張ったときのガラスセラミックス基板に発生する応力を解析した。この解析は、支持部材14を引っ張る条件は、2200N、20℃(条件1)、300N、-30℃(条件2)、300N、115℃(条件3)に設定して行った。解析例1における応力の解析結果を表1に示す。
【0044】
(解析例2~8)
解析例2~8では、表1に示すように、応力緩和膜18を変更して応力の解析を行った。なお、解析例8の応力緩和膜18の材料である複合材料は、ニッケルのヤング率Eと、銅の線膨張係数αとを有する材料を仮定したものである。解析例2~8における応力の解析結果を表1に示す。
【0045】
(解析例9)
解析例9では、応力緩和膜18を省略し、支持部材14で引っ張ったときの引張力がガラスセラミックス基板に直接作用したときのガラスセラミックス基板に発生する応力を解析した。解析例9における応力の解析結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
表1に示すように、解析例1~8における応力の値は、解析例9における応力の値よりも低い結果となった。また、解析例1~4の結果から、応力緩和膜18における厚さtの寸法が大きくなるにつれて応力の値は小さくなることが分かる。
【0047】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)プローブ基板17は、プローブカード11の回路基板12aの第1主面S1aに向かい合うように配置される第1主面S2aを有するプローブ基板本体13を備えている。プローブ基板17は、プローブ基板本体13の第1主面S2aに設けられ、支持部材14に接着される応力緩和膜18を備えている。この構成によれば、上述したようにプローブ基板本体13に集中する応力を低減することができる。従って、プローブ基板本体13の破損を抑えることができる。
【0048】
(2)プローブ基板17の応力緩和膜18は、プローブ基板本体13の第1主面S2aのうち、支持部材14に接着される接着部分に対応して部分的に設けられる。この場合、例えば、応力緩和膜18の材料を削減することが可能となる。
【0049】
(3)プローブカード11において、応力緩和層15は、第1応力緩和層15aと、第2応力緩和層15bとを備える。第2応力緩和層15bは、第1応力緩和層15aと支持部材14との間に配置され、支持部材14との接着性を高める。この場合、支持部材14と応力緩和層15との接着性を高める第2応力緩和層15bによって、応力緩和層15の厚さ寸法を大きくすることができる。これにより、プローブ基板本体13に集中する応力をより低減することができる。従って、プローブ基板本体13の破損をより抑えることが可能となる。
【0050】
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0051】
・プローブ基板17の応力緩和膜18の数は、支持部材14の数と異なってもよい。例えば、応力緩和膜18を帯状に設けるとともに、その応力緩和膜18に複数の支持部材14が接着されるように変更することもできる。
【0052】
図4に示すように、プローブ基板17の応力緩和膜18をプローブ基板本体13の第1主面S2aの全面に設けることもできる。この応力緩和膜18の材料がポリイミド系樹脂等の合成樹脂の場合、合成樹脂の塗布材を例えばスピンコーティングすることで応力緩和膜18を容易に設けることができる。
【0053】
・プローブ基板17の応力緩和膜18は、接着層19により支持部材14に接着されているが、接着層19を省略することもできる。すなわち、例えば、応力緩和膜18が合成樹脂膜である場合、接着層19を用いずに応力緩和膜18を支持部材14に接着することもできる。なお、応力緩和膜18を支持部材14に接着する方法としては、例えば、応力緩和膜18を支持部材14に溶着する方法、応力緩和膜18の硬化反応を利用する方法等が挙げられる。
【0054】
・支持部材14の第2端部14cの端面形状は、特に限定されず、端面形状としては、例えば、円形状、多角形状等が挙げられる。また、図5に示すように、支持部材14の第2端部14cの端面形状は、枠形状であってもよい。また、プローブ基板17の応力緩和膜18についても、支持部材14の第2端部14cの端面形状に応じて変更してもよい。
【0055】
・支持部材14の数は、複数であってもよいし、単数であってもよい。
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(付記1)上記課題を解決する一態様のプローブカードは、回路基板を有する主基板部と、前記回路基板の主面に向かい合うように配置される主面を有するプローブ基板本体と、前記主基板部に接続される支持部材と、を備えるプローブカードであって、前記プローブ基板本体の前記主面と前記支持部材との間に設けられ、前記支持部材に接着される応力緩和層を備える。
【0056】
(付記2)上記プローブカードにおいて、前記応力緩和層は、第1応力緩和層と、前記第1応力緩和層と前記支持部材との間に配置され、前記支持部材との接着性を高める第2応力緩和層と、を備えてもよい。この構成によれば、支持部材と応力緩和層との接着性を高める第2応力緩和層によって、応力緩和層の厚さ寸法を大きくすることができる。これにより、プローブ基板本体に集中する応力をより低減することができる。
【符号の説明】
【0057】
11…プローブカード
12…主基板部
12a…回路基板
13…プローブ基板本体
14…支持部材
17…プローブ基板
18…応力緩和膜
図1
図2
図3
図4
図5