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特開2023-8301バッテリーケース及びバッテリーパック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008301
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】バッテリーケース及びバッテリーパック
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/244 20210101AFI20230112BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20230112BHJP
   H01M 50/227 20210101ALI20230112BHJP
【FI】
H01M50/244 A
H01M50/249
H01M50/227
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111739
(22)【出願日】2021-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】杉原 裕理
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA14
5H040AA37
5H040AS07
5H040AY05
5H040CC14
5H040CC28
5H040CC38
5H040CC59
5H040LL01
5H040LL06
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】側突時に合成樹脂製のトレイが破損しにくく、かつ電気自動車の低床化を可能にするバッテリーケースを提供する。
【解決手段】バッテリーケースは、電気自動車用の複数のバッテリーモジュールを収容する、合成樹脂製のトレイと、金属製の支持部材とを備える。前記支持部材は、前記複数のバッテリーモジュールを固定して支持するとともに、電気自動車における車体の下面に取り付けられる。
【選択図】図2C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車用の複数のバッテリーモジュールを収容する、合成樹脂製のトレイと、
金属製の支持部材と
を備え、
前記支持部材は、前記複数のバッテリーモジュールを固定して支持するとともに、電気自動車における車体の下面に取り付けられる、バッテリーケース。
【請求項2】
前記支持部材は、
前記複数のバッテリーモジュールを固定して支持するための固定支持部と、
前記車体の下面に取り付けるための取付部と
を含む、請求項1に記載のバッテリーケース。
【請求項3】
前記固定支持部は、前記複数のバッテリーモジュールを前記トレイと共に固定して支持する、請求項2に記載のバッテリーケース。
【請求項4】
前記支持部材は、
前記固定支持部を構成する固定支持部材と、
前記取付部を構成する取付部材と
を含む、請求項2又は請求項3に記載のバッテリーケース。
【請求項5】
前記固定支持部材と前記取付部材とは、前記支持部材の長手方向に沿って接続されている、請求項4に記載のバッテリーケース。
【請求項6】
前記トレイは、
底壁部と、
前記底壁部の周縁部に上下方向に沿って立設された、前記複数のバッテリーモジュールを囲うための囲い壁部と
を含み、
前記支持部材は、前記囲い壁部を貫通している、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のバッテリーケース。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のバッテリーケースと、
前記バッテリーケース内に収容された複数のバッテリーモジュールと
を備え、
前記複数のバッテリーモジュールは、前記支持部材に固定され支持されている、バッテリーパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バッテリーケース及びバッテリーパックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車の開発が盛んになっている。電気自動車は、駆動源の電動機と、バッテリーパックとを備える。バッテリーパックは、電動機に電力を供給する。
【0003】
特許文献1は、軽量化されたバッテリーパックを開示している。特許文献1に開示のバッテリーパックは、バッテリーケースと、複数のバッテリーモジュールとからなる。複数のバッテリーモジュールは、バッテリーケースに収容されている。
バッテリーケースは、ロアトレイと、カバーとを備える。ロアトレイは、複数のバッテリーモジュールを下から支える。カバーは、合成樹脂製である。カバーは、ロアトレイに対し、上方からバッテリーモジュールを覆う。
ロアトレイは、トレイ本体と、支持部材とを備える。トレイ本体は、合成樹脂製である。トレイ本体は、バッテリーモジュールの下面側から覆う。支持部材は、金属製である。支持部材は、トレイ本体の上面に固定される。支持部材は、バッテリーモジュールを固定して支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-160713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のバッテリーパックは、ブラケットを更に備える(特許文献1の段落0013参照)。ブラケットは、電気自動車の車両ボディ(以下、「車体」という。)の下面に取り付けられ、バッテリーケースを下から支える。
特許文献1において、ブラケットがバッテリーケースを下から支える形態の図示は省略されているが、ブラケットが合成樹脂製のバッテリーケースを下から支える形態としては、第1従来形態又は第2従来形態が考えられる。
【0006】
図7Aは、第1従来形態に係るバッテリーパック9Aの断面図である。図7Bは、第2従来形態に係るバッテリーパック9Bの断面図である。図7A及び図7B中、91はバッテリーケース、911はロアトレイ、9111はトレイ本体、9112は支持部材、912はカバー、92は複数のバッテリーモジュール、93Aは第1従来形態に係るブラケット、93Bは第2従来形態に係るブラケット、931は左側ブラケット部材、932は右側ブラケット部材をそれぞれ示す。図7A及び図7Bにおいて、上下方向は重力平行と平行であり、左右方向は、電気自動車の幅方向と平行である。
【0007】
第1従来形態では、複数のブラケット93Aが用いられる。複数のブラケット93Aは、棒状物である。複数のブラケット93Aの各々は、左右方向に延在している。複数のブラケット93Aの各々は、電気自動車の前後方向に沿って、特定の間隔で、配置されている。電気自動車の前後方向は、左右方向及び上下方向に直交する。複数のブラケット93Aの各々は、図7Aに示すように、1本の梁のようにして、バッテリーケース91を支えている。詳しくは、ブラケット93Aは、トレイ本体9111の底面に配置され、トレイ本体9111に固定されている。ブラケット93Aの両端部は、車体の下面に固定されている。
バッテリーパック9Aが搭載された電気自動車が左側から側面衝突(以下、「側突」という。)された場合、側突に起因する負荷の一部(以下、「側突負荷」)は、ブラケット93Aを介して、バッテリーパック9Aに伝わる。この際、第1従来形態では、複数のブラケット93Aの各々は、1本の梁のようにして、バッテリーケース91を支えている。そのため、側突負荷は、伝達経路DAに示すように、機械的強度が比較的低いトレイ本体9111を介さずに、主としてブラケット93Aを伝って、左側から右側に伝わる。これにより、トレイ本体9111にトレイ本体9111を破損させる大きな負荷は伝わりにくい。その結果、第1従来形態では、電気自動車が側突された場合であっても、トレイ本体9111は破損しにくい。
一方で、電気自動車は、最低地上高さを確保する必要がある(道路運送車両の保安基準)。最低地上高さは、水平な地表面から車体の一番低い箇所までの高さを示す。第1従来形態では、ブラケット93Aは、トレイ本体9111の底面に配置されるので、ブラケットの厚みの分、車体を高くして最低地上高さを確保する必要が生じる。そのため、バッテリーパック9Aが搭載された電気自動車における車体を所定の高さよりも下げること(即ち、電気自動車の低床化)に制約があった。
【0008】
第2従来態様では、複数のブラケット93Bが用いられる。複数のブラケット93Bの各々は、電気自動車の前後方向に沿って、特定の間隔で、配置されている。複数のブラケット93Bは、図7Bに示すように、左側ブラケット部材931と、右側ブラケット部材932とからなる。左側ブラケット部材931、及び右側ブラケット部材932の各々は、左右方向において間隔を空けて、独立してバッテリーケース91を支えている。詳しくは、左側ブラケット部材931、及び右側ブラケット部材932の各々は、棒状物である。左側ブラケット部材931は、一端がトレイ本体9111の左側の底面に固定され、他端が車体の下面に固定されている。右側ブラケット部材932は、一端がトレイ本体9111の右側の底面に固定され、他端が車体の底面に固定されている。
バッテリーパック9Bが搭載された電気自動車が左側から側突された場合、側突負荷は、車体からブラケット93Bを介して、バッテリーパック9Bに伝わる。この際、第2従来形態では、左側ブラケット部材931及び右側ブラケット部材932の各々は、左右方向において間隔を空けて、独立してバッテリーケース91を支えている。そのため、側突負荷は、伝達経路DBに示すように、主として、機械的強度が比較的低いトレイ本体9111を介して、左側ブラケット部材931から右側ブラケット部材932に伝わる。つまり、トレイ本体9111に、トレイ本体9111を破損させる大きな負荷が伝わりやすい。その結果、第2従来形態では、電気自動車が側突された場合、トレイ本体9111は破損するおそれがあった。
一方で、第2従来形態では、バッテリーケース91は、第1従来形態と同様に、バッテリーパック9Bが搭載された電気自動車の低床化に制約があった。
【0009】
本開示は、上記事情に鑑み、側突時に合成樹脂製のトレイが破損しにくく、かつ電気自動車の低床化を可能にするバッテリーケース及びバッテリーパックを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 電気自動車用の複数のバッテリーモジュールを収容する、合成樹脂製のトレイと、金属製の支持部材とを備え、前記支持部材は、前記複数のバッテリーモジュールを固定して支持するとともに、電気自動車における車体の下面に取り付けられる、バッテリーケース。
<2> 前記支持部材は、前記複数のバッテリーモジュールを固定して支持するための固定支持部と、前記車体の下面に取り付けるための取付部とを含む、前記<1>に記載のバッテリーケース。
<3> 前記固定支持部は、前記複数のバッテリーモジュールを前記トレイと共に固定して支持する、前記<2>に記載のバッテリーケース。
<4> 前記支持部材は、前記固定支持部を構成する固定支持部材と、前記取付部を構成する取付部材とを含む、前記<2>又は<3>に記載のバッテリーケース。
<5> 前記固定支持部材と前記取付部材とは、前記支持部材の長手方向に沿って接続されている、前記<4>に記載のバッテリーケース。
<6> 前記トレイは、底壁部と、前記底壁部の周縁部に上下方向に沿って立設された、前記複数のバッテリーモジュールを囲うための囲い壁部とを含み、前記支持部材は、前記囲い壁部を貫通している、前記<1>~<5>のいずれか1つに記載のバッテリーケース。
<7> 前記<1>~<6>のいずれか1つに記載のバッテリーケースと、前記バッテリーケース内に収容された複数のバッテリーモジュールとを備え、前記複数のバッテリーモジュールは、前記支持部材に固定され支持されている、バッテリーパック。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、側突時に合成樹脂製のトレイが破損しにくく、かつ電気自動車の低床化を可能にするバッテリーケース及びバッテリーパックが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の第1実施形態に係るバッテリーパックの外観を示す斜視図である。
図2A】本開示の第1実施形態におけるトレイ、支持部材、及び複数のバッテリーモジュールの上面図である。
図2B図2Aに示す2B-2B線断面図である。
図2C図2Aに示す2C-2C線断面図である。
図3】本開示の第1実施形態におけるトレイの外観を示す斜視図である。
図4】本開示の第2実施形態におけるトレイ、支持部材、及び複数のバッテリーモジュールの断面図である。
図5】本開示の第3実施形態に係るバッテリーパックの外観を示す斜視図である。
図6】本開示の第3実施形態におけるトレイの外観を示す斜視図である。
図7A】第1従来形態に係るバッテリーパックの断面図である。
図7B】第2従来形態に係るバッテリーパックの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、材料中の各成分の量は、材料中の各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、材料中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本開示において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0014】
[バッテリーケース]
本開示のバッテリーケースは、合成樹脂製のトレイと、金属製の支持部材とを備える。トレイは、電気自動車用の複数のバッテリーモジュールを収容する。支持部材は、複数のバッテリーモジュールを固定して支持するとともに、電気自動車における車体の下面に取り付けられる。
【0015】
以下、電気自動車における車体を、単に「車体」という場合がある。
【0016】
本開示のバッテリーケースでは、上述した通り、支持部材は、複数のバッテリーモジュールを固定して支持するとともに、車体の下面に取り付けられる。換言すると、支持部材は、複数のバッテリーモジュールを固定して支持する機能と、車体の下面に取り付けるためのブラケットの機能とを有する。
そのため、本開示のバッテリーケースが搭載された電気自動車が一方から側突された場合、側突負荷は、車体の一方から、支持部材を介して、バッテリーケースに入力される。そして、バッテリーケースに入力された側突負荷は、支持部材を介して、車体の他方に伝達される。この際、本開示のバッテリーケースでは、側突負荷の大部分は、機械的強度が比較的高い金属製の支持部材に印加される。そのため、機械的強度が比較的低い合成樹脂製のトレイにかかる側突負荷は、大幅に軽減される。つまり、合成樹脂製のトレイを破損させる大きな側突負荷は、トレイに伝わりにくい。その結果、電気自動車が側突された場合であっても、本開示のバッテリーケースは、合成樹脂製のトレイを破損しにくくすることができる。
更に、本開示のバッテリーケースは、従来のようなトレイを下から支えるブラケットを備えない。本開示のバッテリーケースでは、支持部材がブラケットの機能を兼ねている。これにより、本開示のバッテリーケースが搭載された電気自動車は、従来のバッテリーケースが搭載された電気自動車よりも、ブラケットの厚さ分だけ車体を下げても最低地上高さを確保することができる。その結果、本開示のバッテリーケースは、電気自動車の低床化を可能にする。
以上により、本開示のバッテリーケースは、側突時に合成樹脂製のトレイが破損しにくく、かつ電気自動車の低床化を可能にする。
【0017】
本開示のバッテリーケースは、例えば、電気自動車に含まれる電動機に電力を供給するバッテリーパックに好適に用いられる。本開示のバッテリーケースは、車体の下面に取り付けられる。
【0018】
〔支持部材〕
本開示のバッテリーケースは、支持部材を備える。
支持部材は、複数のバッテリーモジュールを固定して支持する機能と、車体の下面に取り付けるためのブラケットの機能とを有すれば、特に限定されない。
支持部材の形状としては、例えば、棒状物、板状物等が挙げられる。棒状物としては、丸棒、多角棒等が挙げられる。多角棒は、多角の断面を有する。棒状物は、ソリッド形材であってもよいし、ホロー形材であってもよいし、ソリッド形材とホロー形材とを組み合わせた形材であってもよい。支持部材のサイズは、バッテリーケースのサイズ等に応じて適宜選択すればよい。支持部材の数は、支持部材の形状、バッテリーケースのサイズ等に応じて適宜選択され、少なくとも1つであればよい。
【0019】
支持部材が棒状物であり、かつ支持部材が複数である場合、複数の支持部材の各々は、支持部材の長手方向に直交する方向に沿って配列されていることが好ましい。これにより、支持部材の長手方向と電気自動車の幅方向とが平行となるように、車体の下面にバッテリーケースが取り付けられることで、電気自動車が側突された場合であっても、バッテリーケースは、合成樹脂製のトレイを破損しにくくすることができる。
【0020】
支持部材は、複数のバッテリーモジュールを固定して支持するための固定支持部と、車体の下面に取り付けるための取付部とを含むことが好ましい。
固定支持部は、複数のバッテリーモジュールを固定して支持するために加工(以下、「固定支持加工」という)が施されていてもよい。固定支持部は、トレイを固定して支持するために加工(以下、「トレイ支持加工」)が施されていてもよい。取付部は、車体の下面に取り付けるため加工(以下、「取付加工」という。)が施されていてもよい。固定支持加工の方法は、後述する支持部材が複数のバッテリーモジュールを固定する方法等に応じて適宜選択され、公知の方法であればよい。トレイ支持加工の方法は、トレイの形状等に応じて適宜選択され、公知の方法であればよい。取付加工の方法は、後述する支持部材が車体の下面に取り付けられる方法等に応じて適宜選択され、公知の方法であればよい。
【0021】
固定支持部は、複数のバッテリーモジュールをトレイと共に固定して支持することが好ましい。つまり、固定支持部は、トレイが支持部材に対して移動しないようにすることが好ましい。これにより、本開示のバッテリーケースは、トレイをより破損しにくくすることができる。
固定支持部は、トレイを固定して支持するために加工(以下、「トレイ支持加工」)が施されていてもよい。支持部材が貫通する貫通孔をトレイが有する場合、固定支持部は、固定支持部が貫通孔に嵌まるように加工が施されていてもよい。また、機械用部品を用いる方法(以下、「機械締結」という。)によって固定支持部がトレイを固定して支持する場合、固定支持部は、機械締結するための加工が施されていてもよい。締結用部品は、ボルト、ナット、ネジ、リベット、又はピンを含む。トレイ支持加工の方法は、トレイの形状等に応じて適宜選択され、公知の方法であればよい。
【0022】
支持部材が複数のバッテリーモジュールを固定する方法は、特に限定されず、例えば、機械締結、溶接、引っ掛け等が挙げられる。溶接は、金属溶接、又はろう接を含む。
支持部材が車体の下面に取り付けられる方法は、特に限定されず、例えば、機械締結、溶接、引っ掛け等が挙げられる。
【0023】
支持部材は、トレイに固定されていてもよい。トレイに支持部材を固定する方法は、特に限定されず、機械締結、溶接、引っ掛け等が挙げられる。
【0024】
支持部材は、金属製である。支持部材を構成する金属としては、特に限定されず、鉄、銅、ニッケル、金、銀、プラチナ、コバルト、亜鉛、鉛、スズ、チタン、クロム、アルミニウム、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金(ステンレス、真鍮、リン青銅等)等が挙げられる。
【0025】
支持部材は、固定支持部材と、取付部材とを含むことが好ましい。固定支持部材は、固定支持部を構成する。取付部材は、取付部を構成する。固定支持部材と取付部材とは別体であり、一体となっている。
固定支持部材と取付部材とを一体とする方法としては、特に限定されず、溶接、機械締結、樹脂接着等が挙げられる。樹脂接着は、公知の接着剤を用いる方法を含む。
固定支持部材を構成する金属としては、支持部材を構成する金属として例示したものと同様のものが挙げられる。取付部材を構成する金属としては、支持部材を構成する金属として例示したものと同様のものが挙げられる。固定支持部材を構成する金属と、取付部材を構成する金属とは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
固定支持部材と取付部材との間には、他の金属部材が介在していてもよい。固定支持部材と取付部材との間には、他の金属部材が介在する場合、他の金属部材を構成する金属としては、支持部材を構成する金属として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0026】
固定支持部材と取付部材とは、支持部材の長手方向に沿って接続されていることが好ましい。これにより、支持部材の長手方向において、固定支持部材と取付部材との接続部の機械的強度は、固定支持部材と取付部材とが支持部材の長手方向に沿って接続されていない構成よりも高い。そのため、支持部材の長手方向と電気自動車の幅方向とが平行となるように、車体の下面にバッテリーケースが取り付けられ、電気自動車が側突された場合であっても、バッテリーケースは、支持部材を破損しにくくすることができる。
固定支持部材と取付部材とを接続する方法は、特に限定されず、例えば、溶接、機械締結、樹脂接着等が挙げられる。
【0027】
支持部材は、金属製の成形品であってもよい。金属製の成形品としては、ロール成形品、ダイキャスト成形品、切削加工品、圧延材、プレス成形品、押出材等が挙げられる。
【0028】
〔トレイ〕
本開示のバッテリーケースは、トレイを備える。
トレイは、電気自動車用の複数のバッテリーモジュールを収容する。
【0029】
トレイの形状は、電気自動車用の複数のバッテリーモジュールを収容可能であれば特に限定されず、車体の形状等に応じて適宜選択され、重力方向の反対側(以下、「上方」)が開口した容器状物であることが好ましい。
トレイは、底壁部と、囲い壁部とを含み、支持部材は、囲い壁部を貫通していることが好ましい。囲い壁部は、底壁部の周縁部に上下方向に沿って立設されている。囲い壁部は、複数のバッテリーモジュールを囲うために形成されている。
これにより、本開示のバッテリーケースは、電気自動車の更なる低床化を可能にする。
【0030】
トレイは、合成樹脂製である。これにより、本開示のバッテリーケースは、トレイが金属製である場合よりも軽量である。
トレイを構成する合成樹脂としては、プラスチック、繊維強化プラスチック等が挙げられる。なかでも、トレイを構成する合成樹脂は、トレイの機械的強度を向上させる観点から、繊維強化プラスチックであることが好ましい。
プラスチックとしては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル(即ち、飽和ポリエステル又は不飽和ポリエステル)、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンエーテル、熱可塑性ポリウレタン等が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられる。プラスチックは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
中でも、プラスチックは、ポリオレフィン又はポリエステルを含むことが好ましい。ポリオレフィン及びポリエステルの各々は、耐薬品性を有する。プラスチックがポリオレフィン又はポリエステルを含むことで、バッテリーモジュールに収容された電解液が漏出した際に、本開示のバッテリーケースは、外部への電解液の漏出を防止することができる。
繊維強化プラスチックは、繊維と、マトリックス樹脂とを含む。繊維として、ガラス繊維、アラミド繊維、カーボン繊維、ザイロン繊維、ポリエチレン繊維、及びボロン繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。マトリックス樹脂としては、プラスチックとして例示したものと同様のものが挙げられる。繊維強化プラスチックの全量に対する繊維の含有量は、繊維強化プラスチックの全量に対し、好ましくは20質量%~70質量%、より好ましくは30質量%~60質量%である。繊維強化プラスチックは、繊維及び樹脂以外の成分(添加剤等)を含有していてもよい。添加剤としては、難燃剤(好ましくは臭素系難燃剤)等が挙げられる。
例えば、繊維としてガラス繊維を用い、繊維強化プラスチックの全量に対するガラス繊維の含有量を調整することで、所望の靭性を有するトレイとすることができる。
トレイは、合成樹脂製の成形品であってもよい。合成樹脂製の成形品としては、特に限定されず、例えば、射出成形品、SMC(Sheet Molding Compound)成形品、プレス品、押出プレス成形品等が挙げられる。
【0031】
〔カバー〕
本開示のバッテリーケースは、カバーを更に備えてもよい。
トレイが上方が開口した容器状物である場合、カバーは、トレイの開口を覆う。これにより、バッテリーケースは、バッテリーケースに収容される複数のバッテリーモジュールが水及び塵埃等に曝されることをより確実に防止することができる。
カバーの形状等は、トレイの開口を覆うことができれば特に限定されず、トレイの形状等に応じて適宜選択すればよい。
カバーは、合成樹脂製であってもよいし、金属製であってもよい。なかでも、カバーを構成する材料は、バッテリーケースの軽量化の観点から、合成樹脂製であることが好ましく、カバーの機械的強度を向上させる観点から、繊維強化プラスチックであることがさらに好ましい。カバーを構成する合成樹脂としては、トレイを構成する合成樹脂として例示したものと同様のものが挙げられる。カバーを構成する金属としては、支持部材として例示したものと同様のものが挙げられる。カバーが合成樹脂製である場合、カバーを構成する合成樹脂とトレイを構成する合成樹脂とは同一であってもよいし、異なっていてもよい。カバーが金属製である場合、カバーを構成する金属は、支持部材を構成する金属と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0032】
〔補強部材〕
本開示のバッテリーケースは、補強部材を更に備えていてもよい。これにより、バッテリーケースのうち、補強部材が取り付けられた部分の機械的強度を向上させることができる。その結果、バッテリーケースの破損の発生は抑制され得る。
補強部材の形状は、補強部材によって補強される部材の形状、補強の強さ等を勘案して適宜選択できる。補強部材の形状としては、例えば、板状、棒状、筒状、シート状(例えば繊維強化テープの形状)等が挙げられる。
補強部材としては、金属部材(例えば、金属板、金属棒等)又は繊維強化テープが好ましい。
金属部材の材質としては、支持部材を構成する金属としては例示したものと同様のものが挙げられる。
繊維強化テープの材質としては、特に制限されず、トレイを構成する繊維強化プラスチックとして例示したものと同様のものが挙げられる。
【0033】
〔封止部材〕
本開示のバッテリーケースは、カバーを備える場合、封止部材を更に備えることが好ましい。封止部材は、トレイとカバーとの間に介在する。これにより、トレイとカバーとの間に隙間が発生することを抑制することができる。その結果、バッテリーケースに収容される複数のバッテリーモジュールが水及び塵埃等に曝されることをより確実に防止することができる。
封止部材は、熱可塑性エラストマーを少なくとも1種含むことが好ましい。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、
オレフィン系エラストマー(例えば、TPO、TPV等)、
スチレン系エラストマー(例えば、SEEPS、SEPS、SEBS等)、
ウレタン系エラストマー、
ポリ塩化ビニル系エラストマー(例えば、TPVC)、
ポリアミド系エラストマー(例えば、PAER、TPAE等)、
ポリエステル系エラストマー(例えば、TPEE)、
アクリルゴム、
エチレンプロピレンゴム、
等が挙げられる。
【0034】
[バッテリーパック]
本開示のバッテリーパックは、本開示のバッテリーケースと、複数のバッテリーモジュールとを備える。複数のバッテリーモジュールは、バッテリーケース内に収容されている。複数のバッテリーモジュールは、支持部材に固定され支持されている。
【0035】
本開示のバッテリーパックは、本開示のバッテリーケースを備える。そのため、本開示のバッテリーパックは、車体の下面に取り付けられても、側突時に合成樹脂製のトレイが破損しにくく、かつ電気自動車の更なる低床化を可能にする。
【0036】
複数のバッテリーモジュールの各々は、支持部材に固定され支持されていれば、支持部材と接触していてもよいし、接触していなくてもよい。例えば、複数のバッテリーモジュールの各々は、支持部材上に載置されることによって、支持部材と接触していてもよい。
バッテリーモジュールは、モジュールケースと、複数の単電池とを備える。複数の単電池は、モジュールケースに収容されている。
複数の単電池の各々は、直列又は並列に電気的に接続されている。単電池としては、一次電池、又は二次電池を含む。一次電池としては、特に限定されず、例えば、マンガン乾電池、フッ化黒鉛リチウム一次電池、二酸化マンガンリチウム一次電池等が挙げられる。二次電池としては、特に限定はされず、例えば、リチウムイオン電池、全固体電池、鉛電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池等が挙げられる。単電池の形状としては、パウチ型(ラミネート型)、角型、円筒型等が挙げられる。モジュールケースは、特に限定されず、公知のモジュールケースであればよい。
バッテリーモジュールについては、特許第6751570号公報、特許第6645500号公報等を適宜参照できる。
【0037】
[バッテリーパックの一例]
以下、図面を参照して、本開示に係るバッテリーケース及び本開示に係るバッテリーパックの実施形態について説明する。図中、同一又は相当部分については、同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0038】
[第1実施形態]
図1図3を参照して、本開示の第1実施形態に係るバッテリーパック1Aについて説明する。図1は、本開示の第1実施形態に係るバッテリーパック1Aの外観を示す斜視図である。図2Aは、本開示の第1実施形態におけるトレイ11A、支持部材12A、及び複数のバッテリーモジュール20の上面図である。詳しくは、カバー13Aを取り外した状態のバッテリーパック1Aの上面を示す。図2Bは、図2Aに示すIIB-IIB線断面図である。図2Cは、図2Aに示す2C-2C線断面図である。図3は、本開示の第1実施形態におけるトレイ11Aの外観を示す斜視図である。
【0039】
〔バッテリーパック〕
第1実施形態に係るバッテリーパック1Aは、電気自動車に含まれる電動機に電力を供給するために用いられる。バッテリーパック1Aは、車体の下面に取り付けられる。
【0040】
バッテリーパック1Aは、図1に示すように、バッテリーケース10Aと、複数のバッテリーモジュール20とを備える。複数のバッテリーモジュール20は、バッテリーケース10A内に収容されている。第1実施形態では、バッテリーパック1Aは、直方体状物である。
【0041】
第1実施形態では、バッテリーパック1Aの長手方向を「前後方向」、バッテリーパック1Aの短手方向を「左右方向」、前後方向及び左右方向に直交する方向を「上下方向」として説明する。前後方向は、電気自動車の前後方向と平行である。左右方向は、電気自動車の幅方向と平行である。上方から下方に向かう方向は、重力方向と平行である。
【0042】
(バッテリーケース)
バッテリーケース10Aは、その内部に複数のバッテリーモジュール20を収容している。換言すると、バッテリーケース10Aは、複数のバッテリーモジュール20の全体を覆っている。
バッテリーケース10Aは、図1に示すように、トレイ11Aと、5本の支持部材12Aと、カバー13Aとを備える。
【0043】
トレイ11Aは、図2Aに示すように、上方が開口した容器状物である。トレイ11Aは、前後方向を長手方向とし、左右方向を短手方向とする。
支持部材12Aは、棒状物である。5つの支持部材12Aの各々は、左右方向が長手方向となるように、前後方向に沿って特定の間隔で配置されている。5つの支持部材12Aの各々は、機械締結によって、トレイ11Aに固定されている。
カバー13Aは、図1に示すように、トレイ11Aの開口を覆っている。カバー13Aは、機械締結によって、トレイ11Aに固定されている。
【0044】
<トレイ>
トレイ11Aは、図3に示すように、底壁部111Aと、囲い壁部112Aとを含む。囲い壁部112Aは、複数のバッテリーモジュール20を囲うために形成されている。底壁部111Aと、囲い壁部112Aとは、一体となっている。
底壁部111Aは、長平板状物である。底壁部111Aの形状は、平面視において、前後方向を長手方向とする長方形である。平面視とは、上方から下方に向けて見たことを示す。
囲い壁部112Aは、底壁部111Aの周縁部から上下方向に沿って立設されている。囲い壁部112Aは、底壁部111Aの周縁部の全周に亘って形成されている。囲い壁部112Aは、左壁部1121及び右壁部1122を有する。左壁部1121及び右壁部1122は、左右方向において、対向している。
左壁部1121及び右壁部1122の各々は、5つの貫通孔TH1~TH5を有する。5つの貫通孔TH1~TH5の各々には、1つの支持部材12Aが挿入される。5つの貫通孔TH1~TH5は、前後方向に沿って、特定の間隔で形成されている。左壁部1121の貫通孔TH1と、右壁部1122の貫通孔TH1とは、左右方向において、対向している。左壁部1121の貫通孔TH2と、右壁部1122の貫通孔TH2とは、左右方向において、対向している。左壁部1121の貫通孔TH3と、右壁部1122の貫通孔TH3とは、左右方向において、対向している。左壁部1121の貫通孔TH4と、右壁部1122の貫通孔TH4とは、左右方向において、対向している。左壁部1121の貫通孔TH5と、右壁部1122の貫通孔TH5とは、左右方向において、対向している。
【0045】
以下、5つの貫通孔TH1~TH5の各々を区別しない場合、5つの貫通孔TH1~TH5の各々を、単に「貫通孔TH」という場合がある。
【0046】
第1実施形態では、トレイ11Aは、繊維強化プラスチック製である。トレイ11Aを構成する繊維強化プラスチックは、ガラス繊維と、ポリプロピレンとを含む。ガラス繊維の含有量は、トレイ11Aを構成する繊維強化プラスチックの全量に対して、例えば、50質量%である。
トレイ11Aの平均的な板厚は、例えば、4cmである。
【0047】
<支持部材>
支持部材12Aは、複数のバッテリーモジュール20を固定して支持するとともに、車体の下面に取り付けられる。
支持部材12Aの形状は、角状のソリッド形材である。支持部材12Aの断面寸法は、例えば、前後方向の長さが40mm、上下方向の長さが30mmである。
5つの支持部材12Aの各々は、トレイ11Aの左壁部1121及び右壁部1122の左右方向に対向する一対の貫通孔TH1~TH5(図3参照)に挿入されている。これにより、5つの支持部材12Aの各々は、左右方向を長手方向となるように、前後方向に沿って特定の間隔で配置されている。
支持部材12Aは、固定支持部P12Aと、取付部P12Bとを含む。
固定支持部P12Aは、複数のバッテリーモジュール20をトレイ11Aと共に固定して支持する部位である。固定支持部P12Aは、支持部材12Aの長手方向の中央部に位置する。固定支持部P12Aには、機械締結によって、複数のバッテリーモジュール20が固定されている。更に、固定支持部P12Aには、固定支持部P12Aが貫通孔TH1に嵌め合わせられていることと、機械締結とによって、トレイ11Aが固定されている。
取付部P12Bは、車体の下面に取り付けるための部位である。取付部P12Bは、支持部材12Aのうち、トレイ11Aの外部に位置する。取付部P12Bは、支持部材12Aの長手方向の両端部に位置する。一対の取付部P12Bの各々は、図2Aに示すように、トレイ11Aから左右方向に張り出している。取付部P12Bは、車体の下面(図示略)の所定箇所において、締結部材によって固定される。これにより、バッテリーパック1Aは、電気自動車に固定される。
第1実施形態では、支持部材12Aは、金属製である。支持部材12Aを構成する金属は、アルミニウム合金である。
【0048】
(カバー)
カバー13Aは、トレイ11A及びトレイ11A上に配置された複数のバッテリーモジュール20を覆う。
カバー13Aは、長板状物である。カバー13Aの形状は、平面視において、前後方向を長手方向とする長方形である。
カバー13Aは、繊維強化プラスチック製である。カバー13Aを構成する繊維強化プラスチックは、ガラス繊維と、不飽和ポリエステルとを含む。ガラス繊維の含有量は、カバー13Aを構成する繊維強化プラスチックの全量に対して、例えば、40質量%である。
カバー13Aの平均的な板厚は、例えば、3cmである。
【0049】
(複数のバッテリーモジュール)
第1実施形態では、複数のバッテリーモジュール20の各々は、図2Aに示すように、マトリクス状に規則的に配置されている。詳しくは、複数のバッテリーモジュール20の各々は、左右方向に延びる4つの列が前後方向に沿って配列されるように、配置されている。1つの列は、左右方向に沿って配置された6つのバッテリーモジュール20で構成されている。
第1実施形態では、複数のバッテリーモジュール20の各々は、図2B及び図2Cに示すように、支持部材12A上に載置されている。これにより、第1実施形態では、複数のバッテリーモジュール20は、支持部材12Aに支持されている。
バッテリーモジュール20は、複数のリチウムイオン電池を含む。複数のリチウムイオン電池の各々は、直列又は並列に電気的に接続されている。バッテリーモジュール20は、直方体状物である。第1実施形態では、バッテリーモジュール20は、図2Aに示すように、バッテリーモジュール20の短辺と前後方向が直交するように、配置されているが、バッテリーモジュール20の長辺と前後方向が直交するように、配置されていてもよい。
【0050】
[作用効果]
図1図3を参照して説明したように、第1実施形態では、バッテリーケース10Aは、強化繊維プラスチック製のトレイ11Aと、アルミニウム合金製の支持部材12Aとを備える。トレイ11Aは、電気自動車用の複数のバッテリーモジュール20を収容する。支持部材12Aは、複数のバッテリーモジュール20を固定して支持するとともに、車体の下面に取り付けられる。
これにより、バッテリーパック1Aが搭載された電気自動車が左側から側突された場合、側突負荷の伝達経路D1(図2C参照)上に、機械的強度が比較的低いトレイ11Aは介在しない。これにより、側突負荷の大部分は、機械的強度が比較的高い支持部材12Aに印加される。そのため、機械的強度が比較的低いトレイ11Aにかかる側突負荷は、大幅に軽減される。つまり、トレイ11Aを破損させる大きな側突負荷は、トレイ11Aに伝わりにくい。バッテリーパック1Aが搭載された電気自動車が右側から側突された場合も同様に、トレイ11Aを破損させる大きな側突負荷は、トレイ11Aに伝わりにくい。その結果、電気自動車が側突された場合であっても、バッテリーケース10Aは、合成樹脂製のトレイ11Aを破損しにくくすることができる。
【0051】
本発明者らは、バッテリーパック1Aが搭載された電気自動車のポール側突シミュレーションを実施した。ポール側突シミュレーションの条件は、米国運輸省道路交通安全局が規定している試験要領「FMVSS214」に則した条件である。具体的な条件は、ポール直径254mm、被衝突車速度32km/h、及び衝突角度75°とした。
ポール側突シミュレーションの結果、側突時においてトレイ11A及びカバー13Aに生じる最大応力は60MPa以下となることがわかった。つまり、最大応力は、トレイ11Aを構成する繊維強化プラスチックの破壊応力以下となるとともに、カバー13Aを構成する繊維強化プラスチックの破壊応力以下となることがわかった。これは、以下のような機構に基づくと推測される。
バッテリーパック1Aは、トレイ11Aの底壁部111Aの上部に配設及び固定された支持部材12Aを備える。支持部材12Aの長手方向の両端の取付部P12Bは、車体の下面に取り付けられている。
バッテリーパック1Aが搭載された電気自動車が左側から側突された場合、機械的な側突負荷は、支持部材12Aの左側の取付部P12Bを介して、バッテリーパック1Aに入力される。バッテリーパック1Aに入力された側突負荷は、支持部材12Aを左側から右側に伝って、支持部材12Aの左側の取付部P12Bを介して、車体に再び伝達される。
すなわち、支持部材12Aは、電気自動車の側面から入力される側突負荷の伝達経路として機能する。
図2Cに示すように、この機械的な側突負荷の伝達経路D1上には、機械的強度が比較的低いトレイ11Aは介在しない。そのため、電気自動車の側突時などにおいて、バッテリーパック1Aに対して機械的な負荷が入力された際に、過度の応力は、機械的強度が比較的高い支持部材12Aに印加され、トレイ11A及びカバー13Aに印加されにくい。その結果、バッテリーケース10Aは、電気自動車の側突時などにおいて、合成樹脂製のトレイ11A及びカバー13Aを破損しにくくすることができる。
よって、バッテリーパック1Aは、軽量で、かつ機械的剛性に優れる。
【0052】
バッテリーパック1Aは、従来のブラケットを備えず、車体の下面に取り付けられ得る。ブラケットは、バッテリーケースを下部から支えるように配設される。そのため、バッテリーパック1Aが搭載された電気自動車における車体は、従来のバッテリーケースが搭載された電気自動車よりもブラケットの高さ分だけ下げても、最低地上高さを確保することができる。その結果、バッテリーケース10Aは、バッテリーパック1Aが搭載された電気自動車の低床化を実現することができる。
【0053】
[第2実施形態]
次に、図4を参照して、本開示の第2実施形態に係るバッテリーパック1Bについて説明する。図4は、本開示の第2実施形態におけるトレイ11A、支持部材12B、及び複数のバッテリーモジュール20の断面図である。詳しくは、図4は、図2Aに示す切断線2C-2Cと同様にして切断した第2実施形態におけるトレイ11A、支持部材12B、及び複数のバッテリーモジュール20の断面である。
【0054】
第2実施形態に係るバッテリーパック1Bは、支持部材が2つの部材からなる点で、第1実施形態に係るバッテリーパック1Aと異なる。
バッテリーパック1Bは、バッテリーケース10Bと、複数のバッテリーモジュール20とを備える。複数のバッテリーモジュール20は、バッテリーケース10B内に収容されている。
バッテリーケース10Bは、トレイ11Aと、5本の支持部材12Bと、カバー13Aとを備える。
【0055】
<支持部材>
支持部材12Bは、2つの部材を含む他は、支持部材12Aと同様である。
支持部材12Bは、固定支持部材121と、2つの取付部材122とを含む。固定支持部材121は、固定支持部P12Aを構成する。2つの取付部材122の各々は、取付部P12Bを構成する。2つの取付部材122の一方、固定支持部材121、及び2つの取付部材122の他方は、左右方向に沿って、この順で接続されている。2つの取付部材122の一方と固定支持部材121とは、溶接されている。2つの取付部材122の他方と固定支持部材121とは、溶接されている。これにより、固定支持部材121と、2つの取付部材122とは一体となっている。
固定支持部材121は、複数のバッテリーモジュール20を固定して支持する部材である。固定支持部材121は、支持部材12Aの長手方向の中央部に位置する。固定支持部材121は、支持部材12Aのうち、トレイ11Aの内部に位置する。固定支持部材121には、機械締結によって、複数のバッテリーモジュール20が固定されている。
取付部材122は、車体の下面に取り付けるための部材である。取付部材122は、支持部材12Aのうち、トレイ11Aの外部に位置する。取付部材122は、支持部材12Aの長手方向の両端部に位置する。一対の取付部材122の各々は、図4に示すように、トレイ11Aから左右方向に張り出している。取付部材122は、車体の下面(図示略)の所定箇所において、締結部材によって固定される。これにより、バッテリーパック1Bは、電気自動車に固定される。
固定支持部材121は、金属製である。固定支持部材121を構成する金属は、アルミニウム合金である。取付部材122は、金属製である。取付部材122を構成する金属は、アルミニウム合金である。
【0056】
[作用効果]
図4を参照して説明したように、第2実施形態では、バッテリーケース10Bは、強化繊維プラスチック製のトレイ11Aと、支持部材12Bとを備える。トレイ11Aは、電気自動車用の複数のバッテリーモジュール20を収容する。支持部材12Bは、複数のバッテリーモジュール20を固定して支持するとともに、車体の下面に取り付けられる。
これにより、バッテリーパック1Bが搭載された電気自動車が左側から側突された場合、例えば、側突負荷の伝達経路D2(図4参照)上に、機械的強度が比較的低いトレイ11Aは介在しない。これにより、側突負荷の大部分は、機械的強度が比較的高い金属製の支持部材12Bに印加される。そのため、合成樹脂製のトレイ11Aを破損させる大きな側突負荷は、トレイ11Aに伝わりにくい。バッテリーパック1Bが搭載された電気自動車が右側から側突された場合も、同様に、合成樹脂製のトレイ11Aを破損させる大きな側突負荷は、トレイ11Aに伝わりにくい。その結果、バッテリーケース10Bは、電気自動車が側突された場合であっても、合成樹脂製のトレイ11Aを破損しにくくすることができる。
【0057】
バッテリーパック1Bは、従来のブラケットを備えず、車体の下面に取り付けられる。ブラケットは、バッテリーケースを下部から支えるように配設される。そのため、バッテリーパック1Bが搭載された電気自動車における車体は、従来のバッテリーケースが搭載された電気自動車よりもブラケットの高さ分だけ下げても、最低地上高さを確保することができる。その結果、バッテリーケース10Bは、バッテリーパック1Bが搭載された電気自動車の低床化を実現することができる。
【0058】
図4を参照して説明したように、第2実施形態では、固定支持部材121と取付部材122とは、支持部材12Bの長手方向(左右方向)に沿って接続されている。これにより、支持部材12Bの長手方向において、固定支持部材121と取付部材122との接続部の機械的強度は、固定支持部材と取付部材とが支持部材の長手方向に沿って接続されていない構成よりも高い。そのため、支持部材12Bの長手方向と電気自動車の幅方向とが平行となるように、車体の下面にバッテリーケース10Bが取り付けられることで、電気自動車が側突された場合であっても、支持部材12Bは破損しにくい。
【0059】
[第3実施形態]
次に、図5及び図6を参照して、本開示の第3実施形態に係るバッテリーパック1Cについて説明する。図5は、本開示の第3実施形態に係るバッテリーパック1Cの外観を示す斜視図である。図6は、本開示の第3実施形態に係るバッテリーケース10Cの外観を示す斜視図である。
【0060】
第3実施形態に係るバッテリーパック1Cは、トレイ及びカバーの形状が第1実施形態に係るバッテリーパック1Aと異なる。
バッテリーパック1Cは、図5に示すように、バッテリーケース10Cと、複数のバッテリーモジュール20とを備える。複数のバッテリーモジュール20は、バッテリーケース10C内に収容されている。
バッテリーケース10Cは、トレイ11Bと、8本の支持部材12Aと、カバー13Bとを備える。
【0061】
トレイ11Bは、図6に示すように、上方が開口した容器状物である。トレイ11Bは、前後方向を長手方向とし、左右方向を短手方向とする。トレイ11Bの形状は、平面視において、「I」字状である。
カバー13Bは、トレイ11Bの開口の一部を覆っている。カバー13Bは、機械締結によって、トレイ11Bに固定されている。
【0062】
トレイ11Bは、図3に示すように、底壁部111Bと、囲い壁部112Bとを含む。囲い壁部112Bは、複数のバッテリーモジュール20を囲うために形成されている。底壁部111Bと、囲い壁部112Bとは、一体となっている。
底壁部111Bは、長平板状物である。底壁部111Bの形状は、平面視において、「I」字状である。
囲い壁部112Bは、底壁部111Bの周縁部から上下方向に沿って立設されている。囲い壁部112Bは、底壁部111Bの周縁部の全周に亘って形成されている。囲い壁部112Bは、前後方向に沿って8つの一対の貫通孔THを有する。一対の貫通孔TH同士は、左右方向において対向している。8つの一対の貫通孔THの各々には、1つの支持部材12Aが挿入される。
トレイ11Bは、第1実施形態と同様に、繊維強化プラスチック製である。
【0063】
カバー13Bは、長板状物である。カバー13Aの形状は、平面視において、「T」字状である。
カバー13Bは、第1実施形態と同様に、繊維強化プラスチック製である。
【0064】
[作用効果]
図5及び図6を参照して説明したように、第3実施形態では、バッテリーケース10Cは、強化繊維プラスチック製のトレイ11Bと、支持部材12Aとを備える。トレイ11Bは、電気自動車用の複数のバッテリーモジュール20を収容する。支持部材12Aは、複数のバッテリーモジュール20を固定して支持するとともに、車体の下面に取り付けられる。
これにより、バッテリーケース10Cは、側突時に繊維強化プラスチック製のトレイ11Bが破損しにくく、かつ電気自動車の低床化を可能にする。
【0065】
以上、図面を参照しながら本開示の実施形態を説明した。但し、本開示は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質や形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本開示の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1A、1B バッテリーパック
10A、10B バッテリーケース
11 トレイ
12A、12B 支持部材
13 カバー
20 バッテリーモジュール
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B