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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083017
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】昆虫の捕獲装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/06 20060101AFI20230608BHJP
【FI】
A01M1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197097
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星 友矩
(72)【発明者】
【氏名】水上 修作
(72)【発明者】
【氏名】中前 早百合
(72)【発明者】
【氏名】鍋島 武
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 裕宜
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA12
2B121AA13
2B121AA14
2B121BB13
2B121DA15
2B121FA15
(57)【要約】
【課題】
使用者が自身の口肺を使うことなく、安全かつ衛生的に大量の小型昆虫を連続吸引することができ、しかも吸引した昆虫を生きたまま排出し、回収できるようにする。
【解決手段】
昆虫を捕獲する昆虫捕獲管10Bと、この昆虫捕獲管に対し、吸引力と排出力を付与する送風モータ12を内蔵すると共に、把持し易い外形となされた本体10Aと、該本体の先端に設けられた昆虫捕獲管に対する装着部22と、昆虫が本体内に吸い込まれないように装着部と昆虫捕獲管との間に介挿されたフィルタ40とからなる。本体に設けられた操作スイッチ14を操作することで、昆虫捕獲管に吸引力を付与して昆虫を吸引したり捕獲された昆虫を生きたまま昆虫捕獲管から排出できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昆虫を捕獲する昆虫捕獲管と、
この昆虫捕獲管に対し、吸引力と排出力を付与する送風モータを内蔵すると共に、把持し易い外形となされた本体と、
該本体の先端に設けられた上記昆虫捕獲管に対する装着部と、
上記昆虫が上記本体内に吸い込まれないように該装着部と上記昆虫捕獲管との間に介挿されたフィルタとからなり、
上記本体に設けられた切替スイッチを操作することで上記昆虫捕獲管に吸引力を付与して上記昆虫を吸引すると共に、捕獲された昆虫を上記昆虫捕獲管より排出できるようにしたことを特徴とする昆虫捕獲装置。
【請求項2】
上記昆虫捕獲管は、径大でコニカル状の昆虫収容部と、その先端側に設けられた丸チューブ状で昆虫収容部よりも径小な昆虫誘導部とで構成され、
上記昆虫収容部の一端には、上記装着部への嵌合端が設けられた
ことを特徴とする請求項1に記載の昆虫捕獲装置。
【請求項3】
上記昆虫捕獲管は、丸チューブ状の昆虫収容部で構成され、その一端に上記フィルタが内挿されると共に、該一端が上記装着部への嵌入端として使用される
ことを特徴とする請求項1に記載の昆虫捕獲装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カやハエ等の小型昆虫等を捕獲し、捕獲した昆虫を排出する昆虫捕獲装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カやハエ等の小型昆虫を捕獲する治具として吸虫管と呼ばれている捕獲器が広く用いられている。吸虫管は、先端に昆虫を吸い込むための吸虫口を備えたガラス管と、ガラス管の末端に接続された可撓性のチューブとで構成されている。ガラス管と可撓性チューブの間には可撓性チューブ内部への昆虫の侵入や使用者が昆虫を誤飲することを防ぐためのメッシュ構造体が介在されている。昆虫を捕獲する際には捕獲対象である昆虫に吸虫口を向け、可撓性チューブ末端を口に咥え、対象とする昆虫を外気とともに吸引、捕獲する。
【0003】
このような吸虫管は、フィールドワークや野外調査を目的とした昆虫採集のみならず、実験用途として飼育されているカやハエなどの飛翔昆虫を飼育容器から生きたまま取り出したり、実験装置や実験器具の中に移し替える等のいわゆるラボワークの際にも用いられている。
【0004】
しかし、野外採集やラボワークのいずれにおいても、吸引、捕獲する昆虫が大量である場合、使用者は昆虫の鱗片や粉塵を相当量吸い込むおそれがあり、吸引する対象によってはアレルギーや感染症等の健康被害を引き起こすことが懸念されている。
【0005】
この吸虫管に代わるものとして高性能のフィルタ付き吸虫管(例えば、非特許文献1)などが提案されている。
【0006】
非特許文献1に開示された吸虫管は、吸気口と可撓性チューブとの間にHEPAフィルタを内蔵したフィルタユニットが取り付けられているが、昆虫を捕獲する際には、依然として使用者の口肺を使った吸引が必要である。そのため、フィルタがあったとしても生理的な不快感は否めず、さらにはフィルタが介在されているために吸引時の抵抗が大きく、長時間の使用は使用者にとって苦痛の種であった。
【0007】
この問題は電動化することで解決できる。使用者が口肺により吸引することなく安全に昆虫を捕獲する電動化した装置として、スプレーボトル型あるいはハンドガン型の害虫駆除器(特許文献1および特許文献2)や、懐中電灯のような形状の蠅取り機(特許文献3)等が提案されている。
【0008】
特許文献1の害虫駆除器は、筒状部の一端に吸い込み部が、他端に排気部が設けられると共に、筒状部の中間部に取り外し自在な収納個所が設けられ、吸い込み部より吸い込まれた昆虫などの捕集体(捕獲体)は、この収納個所に収納され、捕集された捕集体(特に害虫など)は廃棄処分される。
【0009】
特許文献2の害虫駆除器は、ほぼ筒状をなす本体の一端に吸い込み口が、他端に排気口からなる本体を有し、本体の途中に吸い込み口と連通する収納個所が設けられ、電動駆動することで吸引された昆虫などの捕集体が取り外し自在な収納個所に収納される。捕集体はそのまま廃棄処分される。
【0010】
特許文献3の蠅取り機は、モータの力で吸引されたハエ等は補虫室に集められ、その後駆除される。
【0011】
特許文献4は、昆虫の捕獲装置とは直接関連する装置ではないものの、昆虫と同様に使用者が直接接触することを忌避するような試料を電動で吸引および排出可能な装置の一例であり、液体の自動吸入、排出及び分注に使用したチップを自動廃棄するためのピペットシステムに関するもので、特に放射性核種を取り扱えるようにしたものである。具体的には、モータによって分注機構を駆動してチップに液体を吸入し、その後ピペットを所望の位置に移動した後に、モータを駆動して空気を吐出させ、その勢いでチップ内から液体を排出する。その後、再びモータによりチップ取り外し機構を駆動してチップを取り外すようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第4649540号
【特許文献2】特許第4838908号
【特許文献3】特開昭63-192334号公報
【特許文献4】特開2020-159885号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Mouth Aspirator with HEPA Filter (Model 612) - The John W. Hock Company (URL; https://www.johnwhock.com/products/aspirators/mouth-aspirators/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1および特許文献2の害虫駆除器は、ラボワークに使用するには本体サイズが大きすぎ、電源を器具本体に内蔵しておらず、取り回しに問題があった。また、これらの害虫駆除器は、害虫の駆除を目的としている装置であるため、電動による昆虫の吸引は可能であるものの、捕獲した昆虫を電動で装置外に排出する機構を備えておらず、装置下部の回収容器に貯留された昆虫を手作業で回収する必要があった。さらに昆虫を生きたまま回収するのも中々難しかった。
【0015】
特許文献3に示される装置は、小型であり本体内部に電源を内蔵しているが、特許文献1、2の害虫駆除器と同様に捕獲した昆虫を電動で装置外に排出する機構を備えておらず、実験動物として昆虫を傷つけることなく捕獲・排出することは困難であった。
【0016】
特許文献4に開示された技術は、液体特に放射性核種を取り扱うピペットシステムに関するもので、吸引と排出する機能は有するものの、昆虫を捕獲する用途には当該技術を流用することは難しい。具体的には、このピペットシステムは、スイッチの切り替えにより電動で吐出流を生じさせることができ、一旦採取した流体サンプルを排出することも可能であるが、ピストンの移動ストロークが有限であり、シリンダ容量の流体しか吸引できない。一方、ハエやカ等の小型の飛翔昆虫を吸引、採取する際には、昆虫の体積の数十~数百倍の空気を同時に吸引する必要があるため、昆虫を捕獲したり、回収する用途には不向きである。
【0017】
そこで、本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、使用者が自身の口肺を使うことなく、安全かつ衛生的に大量の小型昆虫を連続吸引することができ、しかも吸引した昆虫を生きたまま排出、回収することができる昆虫捕獲装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するため、請求項1記載のこの発明に係る昆虫捕獲装置は、昆虫を捕獲する昆虫捕獲管と、この昆虫捕獲管に対し、吸引力と排出力を付与する送風モータを内蔵すると共に、把持し易い外形となされた本体と、該本体の先端に設けられた昆虫捕獲管に対する装着部と、昆虫が本体内に吸い込まれないように該装着部と昆虫捕獲管との間に介挿されたフィルタとからなり、本体に設けられた操作スイッチを操作することで昆虫捕獲管に吸引力を付与して昆虫を吸引すると共に、捕獲された昆虫を昆虫捕獲管外に排出できるようにしたことを特徴とする。
【0019】
請求項2記載のこの発明に係る昆虫捕獲装置において、昆虫捕獲管は、径大でコニカル状の昆虫収容部と、その先端側に設けられた丸チューブ状で昆虫収容部よりも径小な昆虫誘導部とで構成され、昆虫収容部の一端は本体装着部への嵌合端となされたことを特徴とする。
【0020】
請求項3記載のこの発明に係る昆虫捕獲装置において、昆虫捕獲管は、丸チューブ状の昆虫収容部として構成され、その一端にフィルタが内挿されると共に、該一端が装着部への嵌入端として使用されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
この発明の昆虫捕獲装置は、使用者が自身の口肺を使うことなく、安全かつ衛生的に大量の小さな昆虫を連続吸引することができ、しかも吸引した昆虫を傷つけることなく生きたまま排出、回収することができる。そのため、研究室用や実験室用として常備しておけば非常に便利な治具である。
【0022】
昆虫捕獲管は取り替え自在に構成されているため、捕獲すべき昆虫の種類や体型に応じて交換することが可能であり、このことは捕獲作業中にも取り替えながら使用出来るため、捕獲作業の効率化を図れる。
【0023】
昆虫捕獲装置は、装置を構成する部品点数が少ないため、安価に提供できると共に、樹脂による成形品であるため、携帯に便利で、しかもコンパクトであるために軽量化が可能である。バッテリーも内蔵型であるために、特にフィールドワーク用に適している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】この発明に係る昆虫の捕獲装置の一例を示す要部の構成図である。
図2】その部分断面図である。
図3】この発明に適用できるフィルタの一例を示す平面図である。
図4図2の他の例を示す部分断面図である。
図5】昆虫捕獲管の他の例を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0025】
続いて、この発明に係る昆虫捕獲装置の一例を、図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1に示す昆虫捕獲装置10は、本体10Aと昆虫捕獲管10Bとで構成される。本体10Aは昆虫を捕獲するため昆虫を吸引し、捕獲された昆虫を排出するための駆動源としての送風モータ12が内蔵され、具体的には本体ケース(管体)10A内に、送風モータ、この例ではDCモータが設けられている。12aはモータファンであり、電源電流を切り替える切替スイッチ14により、正転と反転制御が行われる。この例では正転により空気を吸入し、反転で空気を排出することができる。本体10Aは以後本体ケースとして呼称する場合がある。
【0027】
切替スイッチ14に近接して駆動電源としての充電池13が配され、この充電池13は二次電池が使用され、充電端子15を介して充電できるようになされている。本体ケース10Aの背面側には空気を吸入し排出するための空気孔(換気孔)16が設けられている。この空気孔16は吸引力や排出力にも影響することから、空気孔16のサイズは捕獲する昆虫の大きさや昆虫捕獲管10Bの大きさなどを総合的に勘案して決定される。
【0028】
本体ケース10Aの前面には、開放自在な駆動部のメンテナンス用の開閉蓋20が設けられ、開閉蓋20の前面先端略中央部は後述する昆虫捕獲管10Bの装着部22となされる。装着部22はケース前面に絞られた状態で略中央より前方に突出する形状となされており、しかもこの装着部22は送風モータ12からの空気流と連通するような空孔となされている。
【0029】
本体ケース10Aは使用者がこの本体を把持し易いように、把持部24が設けられている。この把持部24はケース底部側であって、把持する手の平にフィットするように、内側に多少くびれた形状を有する第1の把持部24aと、開閉蓋20の前面であって、装着部22との間に、使用者の人差し指と中指とで装着部22側を把持できるように湾曲状をなす第2の把持部24bとで構成され、これら第1と第2の把持部24a、24bによって本体ケース10Aを安定に把持できるように工夫されている。
【0030】
本体ケース10Aは樹脂による成形品で構成できることから本体10Aの軽量化が可能になる。本体ケース10Aを樹脂にて作成・製造する際には、例えば、金型を使用した押出成形のほか3Dプリンタを使用した製造等の方法が適用可能である。また、本体ケース10Aを構成する樹脂としては、3Dプリンタで使用可能な樹脂であり、かつ屋外での使用を考慮した耐候性や環境耐性を備えた樹脂であれば特段制限されることはなく、例えば、ABS、ASA、PLA、PTG等が例示される。
【0031】
本体ケース10Aに装着されて使用される昆虫捕獲管10Bについて以下説明する。図1に示す昆虫捕獲管10Bは昆虫を吸引するための昆虫誘導部32Aと、吸引された昆虫を収容する昆虫収容部32Bとで構成され、昆虫誘導部32Aと昆虫収容部32Bとが互いに連通している。
【0032】
昆虫誘導部32Aは内径φが5~7mm程度で100mm程度の長さLaを有する中空の管状部材(丸チューブ)が使用され、その先端部には内径φが10mm程度と比較的広径の吸引ダクト34を有する。吸引ダクト34は、樹木や葉、草花などにとまっている昆虫を、昆虫自身に気付かれないように吸引するためのダクトとして機能する。さらに捕虫網等で一旦捕獲した昆虫を、実験容器や回収容器に移し替えるために吸引・捕獲する際にも吸引ダクト34の形状が広径であることにより昆虫の捕獲が容易である。
【0033】
中空状の昆虫収容部32Bは、ある程度の捕獲昆虫を収容できる容積を有するように、昆虫誘導部32Aよりも径大に設計されている。
【0034】
昆虫収容部32Bの一例としては、例えば、コニカルチューブのような形態であって、内径が15~30mm程度で、長さLbが100~120mm程度のサイズのものが例示される。この場合、昆虫捕獲管10Bの全体の長さLは200~220mm程度となるが、これらのサイズは一例に過ぎない。
【0035】
昆虫誘導部32Aと昆虫収容部32Bとの継ぎ目は緩やかに径が大きくなるようなコニカル状のくびれ部(つなぎ目)38を有する。くびれ部38の径が緩やかに大きくなることにより、捕獲した昆虫を外部に排出する際に排気圧によって昆虫にストレスを与えることなく、生きたままスムーズに排出可能である。
【0036】
昆虫収容部32Bの他端の開口端は図2に示すように本体ケース10Aへの嵌合端(装着口)39として使用される。そのため、この嵌合端39は、装着部22と緩みなく装着できる長さと内径に選定される。
【0037】
昆虫誘導部32Aとしては、例えば、ガラス管やポリプロピレン等の樹脂製の中空パイプやガラス管等を好適に使用することができる。また、可撓性の樹脂製チューブ等を用いてもよい。
【0038】
昆虫収容部32Bとしては、例えば、ポリプロピレン等の樹脂製のコニカルチューブ、遠心管、サンプルチューブ等を好適に使用することができる。
【0039】
昆虫誘導部32Aと昆虫収容部32Bとは、別異の材質から構成されていてもよいし、同一の材質から構成されていてもよい。昆虫誘導部32Aと昆虫収容部32Bとが別異の材質から構成されている場合には、昆虫誘導部32Aと昆虫収容部32Bの継ぎ目に捕獲対象の昆虫や吸引・排出した空気が漏れだすような隙間が無い限り、従来公知の任意の方法すなわち、接着や嵌合、嵌着等の各種方法を適用して昆虫捕獲管10Bを組み立てることができる。また、図示しないが、昆虫誘導部32Aの吸引ダクト34とは反対側の端部と、昆虫収容部32Bのくびれ部38側の端部との間に、空気および昆虫が通過可能な貫通孔を備えたアダプタを介在させて、昆虫誘導部32Aと昆虫収容部32Bとが前記アダプタを介して互いに連通するような態様も考慮される。
【0040】
一方、昆虫誘導部32Aと昆虫収容部32Bとが同一の材質から構成されており、かつ樹脂製である場合には、一体成形により昆虫捕獲管10Bを作成することができる。
【0041】
本体ケース10Aの装着部22と昆虫捕獲管10Bとの間には、昆虫の鱗片などが本体10A内に入り込まないようにフィルタ40が設けられている。この例では図2に示すように、嵌合端39の入り口側にフィルタ40を内在した例であって、フィルタ40は装着部22の端面と嵌合端39との間に介挿されている。
【0042】
フィルタ40の一例を図2図3に示す。この例ではフィルタ40は、図示するように多数の空孔42aが形成された主部42と連なるようにその前面に環状の係合フランジ44が一体成形されたものであって、係合フランジ44が嵌合端39内に嵌め込まれた状態で使用される。係合フランジ44の外周端面の径は、主部42の外径よりわずかに小さく、先細りとなるように成形され、テーパー面が形成されている。これによってフィルタ40を昆虫捕獲管10Bの嵌合端39に嵌め易くなっている。
【0043】
空孔42の数や大きさ(孔径)は、捕獲昆虫の鱗片などが本体側に吸い込まれることがないように設計されていれば、特段限定されることはないが、その径があまりにも小さいと吸引抵抗、排出抵抗が大きくなるので、それらを勘案しながら適宜選定される。このような空孔42がフィルタ40の主部42に設けられていることにより、先曲がりピンセット等の治具を用いて、フィルタ40を容易に取り外すことができる。すなわち、空孔42に先曲がりピンセット等の治具の先端部を差込み、掻き出す操作や牽引する操作により、昆虫捕獲管10Bの嵌合端39からフィルタ40を容易に取り外すことができる。
【0044】
また、フィルタ40を昆虫捕獲管10Bからさらに取り外しやすくするために、図3に示したように、主部42に形成された空孔の一部を通常の孔径の空孔42aより孔径の大きな空孔42bとする態様が考慮される。この孔径の大きな空孔42bには、先曲がりピンセット等の治具の先端部を差込んだり、2個の空孔42bに牽引用の細紐をループ状に挿通することで、昆虫捕獲管10Bからの嵌合端39からフィルタ40を牽引し、取り外しを容易にすることができる。空孔42bの孔径については、捕獲昆虫の鱗片などが本体側に吸い込まれることのない大きさであり、かつ牽引用の細紐をループ状に挿通することができれば特段限定されることはない。また、空孔42bの個数については、1~2個程度とすることが好ましい。なお、空孔42bに挿通した細紐の開放端部についてはフィルタ40の装着部22の外周面と、昆虫捕獲管10Bの嵌合端39の内周面との間からフィルタ40ひいては昆虫捕獲管10の外部へと引き出される。牽引用の細紐としては、例えば、タコ糸やテグス等が好適に使用される。
【0045】
続いて、図1に示す昆虫捕獲装置10の捕獲作業手順について説明する。
切替スイッチ14のレバー14aを手前に引くと吸引動作となり、送風モータ12が駆動されてダクト34側から空気の吸引がなされるから、ダクト34を捕獲対象の昆虫に近付けることで、ダクト34を介して昆虫誘導部32A内に捕獲対象の昆虫を誘導、吸引することができる。吸引動作をさらに続けることによって昆虫は昆虫誘導部32Aから昆虫収容部32B内へと誘導、吸引され、昆虫収容部32B内に収容できる。
【0046】
この作業が繰り返し行われ、許容限度の昆虫を捕獲した後は、切替スイッチ14のレバー14aを前側に倒すことで昆虫の排出作業に移行する。送風モータ12が逆回転して本体後部の空気穴16から周囲の空気が吸引、導入され、ダクト34側に風を吹き出すことで、昆虫収容部32B内の昆虫は昆虫誘導部32Aを経て外部に排出される。そのため、昆虫捕獲装置10の使用者(操作者)は、自身の口肺を使うことなく、安全かつ衛生的に大量の小型昆虫を連続吸引することができ、しかも吸引した昆虫を生きたまま排出し、捕獲された昆虫を別に用意されたケージ内に移し替え、回収することができる。あるいは屋外で捕獲した昆虫を、昆虫収容部32Bに収容したままで研究室や実験室に持ち帰り、シャーレやマイクロチューブ等の実験容器に生きたまま移し替え、回収することも可能である。この際、ダクト34にスポンジやコットン等を詰めて開放部を封止することで、収容された昆虫の脱走を防ぐことが可能である。また、捕獲昆虫の殺虫が必要な場合は殺虫成分を含む薬品(例えば、ジエチルエーテル等)を浸透させたコットンをダクト34に詰めることで昆虫収容部32B内の捕獲昆虫を殺虫することが可能である。
【0047】
図4図1に示す昆虫捕獲管10Bに装着されるフィルタ40の他の実施例を示す。この例はフィルタ40を本体の装着部22と昆虫収容部32Bとの間に介挿できるように、昆虫捕獲管10Bの前後方向と直行する方向における断面略「エ」の字状に構成した場合である。この場合、フィルタ40の前側に設けられた環状の係合フランジ40aを昆虫収容部32Bの嵌合端39の内周面に装着し、フィルタ40の後ろ側に設けられた環状の係合フランジ40bを本体ケース10Aの装着部22の外周面に装着するようにしたものである。
【0048】
係合フランジ44aは嵌合端39の内側に緩やかに嵌装できるように嵌合端39の内径より若干小さ目にその外径が選定されると共に、多少内側に傾斜してテーパー面を形成している。これに対し、他方の係合フランジ44bの内径は、装着部22の外径とほぼ等しい内径に選定されている。そのため、使用中に昆虫捕獲管10Bとフィルタ40の係合フランジ40aとの嵌合部分に多少の外圧がかかっても昆虫捕獲管10Bが外れないように工夫されている。
【0049】
フィルタ40の主部42には図1と同様な複数の空孔42aが設けられている。この例では空孔42aは同じ径である。これは図4の構成の場合、フィルタ40の係合フランジ44bは嵌合端39から露出しているので、使用者が係合フランジ44bを把持して引っ張ることによりフィルタ40を比較的簡単に外すことができるため、図2、3の構成のように空孔42bに前記細紐を通す必要性がないからである。
【0050】
図5はこの発明のさらに他の実施例を示す。この例は昆虫捕獲管10Bの変形例であって、丸チューブのみで構成され、その前端に広径の捕獲ダクト34が設けられ、後端は装着部22の内径部22aに差し込まれる嵌入口46となされる。また、前記丸チューブの後端側よりその内壁面に沿ってフィルタ40が挿嵌されている。前記丸チューブは昆虫の誘導部として機能すると共に、その収容部としても機能する。図5の昆虫捕獲管32Aとしては、例えば、樹脂成形品、ガラス管等を好適に使用できる。
【0051】
図5の場合、昆虫収容部が設けられていないために、余り沢山の昆虫を捕獲することはできないので、比較的小型の昆虫を少量捕獲するのに適した構成となっている。また、場合によっては図1に示す昆虫捕獲管10Bに代えて図5の昆虫捕獲管10Bを装着して捕獲作業を行うこともできる。
【0052】
さらにまた、図5の昆虫捕獲管10Bの変形例としては、捕獲ダクト34を排した直管状の態様も好ましく考慮される。
【0053】
この発明における昆虫捕獲装置10は本体10Aと昆虫捕獲管10Bで構成されているため、装置の構成部品が少ないことから小型、軽量化を達成できる。
【符号の説明】
【0054】
10・・・昆虫捕獲装置
10A・・・本体
10B・・・昆虫捕獲管
12・・・送風モータ
13・・・充電池
14・・・切り替えスイッチ
32B・・・昆虫収容部
32A・・・昆虫誘導部
34・・・捕獲ダクト
22・・・装着部
24・・・把持部
39・・・嵌合端
40・・・フィルタ
46・・・嵌入口
図1
図2
図3
図4
図5