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特開2023-83024二次電池の状態判定装置、充放電制御装置および二次電池システム
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  • 特開-二次電池の状態判定装置、充放電制御装置および二次電池システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083024
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】二次電池の状態判定装置、充放電制御装置および二次電池システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20230608BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20230608BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20230608BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230608BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/367
H01M10/42 P
H01M10/48 P
H02J7/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197115
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 克
(72)【発明者】
【氏名】川治 純
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA22
2G216BA23
2G216BA27
2G216BA30
2G216CB05
2G216CB52
5G503BB02
5G503EA09
5G503GD02
5G503GD06
5H030AA01
5H030AS03
5H030AS06
5H030AS08
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】二次電池の状態を適切に取得できる二次電池の状態判定装置を提供する。
【解決手段】複数の時刻において二次電池210の状態を測定した結果である状態量に基づいて、複数の前記時刻の各々において前記二次電池210のパラメータに対する複数の候補値を求める候補値抽出部120と、複数の前記候補値と、所定の関数と、に基づいて、前記パラメータの推定値および前記推定値の経時変化を求める計算部140と、を二次電池の状態判定装置100に設けた。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の時刻において二次電池の状態を測定した結果である状態量に基づいて、複数の前記時刻の各々において前記二次電池のパラメータに対する複数の候補値を求める候補値抽出部と、
複数の前記候補値と、所定の関数と、に基づいて、前記パラメータの推定値および前記推定値の経時変化を求める計算部と、を備える
ことを特徴とする二次電池の状態判定装置。
【請求項2】
前記計算部は、前記推定値および前記推定値の経時変化を用いて、未来の時点における前記二次電池の劣化状態を予測する
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池の状態判定装置。
【請求項3】
前記二次電池は電極を備え、前記電極は活物質を含むものであり、
前記パラメータは、前記活物質の失活率、前記活物質の表面の被膜膜厚、前記活物質の表面の被膜膜の抵抗値の何れかを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池の状態判定装置。
【請求項4】
前記状態量は、前記二次電池の電池電圧を含み、
前記関数は、指数関数または冪関数を含む関数であり、
前記パラメータは、前記二次電池の劣化状態を表す量であり、
前記計算部は、前記関数と、前記電池電圧の経時変化と、に基づいて、前記推定値を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池の状態判定装置。
【請求項5】
前記推定値に基づいて前記二次電池の運用時における電圧許容範囲を設定し、前記二次電池の電池電圧が該電圧許容範囲に収まるように前記二次電池の運用条件を決定する運用条件決定部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1ないし4の何れか一項に記載の二次電池の状態判定装置。
【請求項6】
複数の時刻において二次電池の状態を測定した結果である状態量に基づいて、複数の前記時刻の各々において前記二次電池のパラメータに対する複数の候補値を求める候補値抽出部と、
複数の前記候補値と、所定の関数と、に基づいて、前記パラメータの推定値および前記推定値の経時変化を求める計算部と、
前記二次電池に対する充放電を制御する充放電制御部と、を備える
ことを特徴とする充放電制御装置。
【請求項7】
複数の二次電池を有する二次電池モジュールと、
複数の時刻において前記二次電池モジュールの状態を測定した結果である状態量に基づいて、複数の前記時刻の各々において前記二次電池のパラメータに対する複数の候補値を求める候補値抽出部と、
複数の前記候補値と、所定の関数と、に基づいて、前記パラメータの推定値および前記推定値の経時変化を求める計算部と、を備える
ことを特徴とする二次電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の状態判定装置、充放電制御装置および二次電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、下記特許文献1の要約には、「実用的な電流値に対する二次電池の劣化状態を精度よく判定する。正極および負極を有する二次電池の状態判定装置であって、正極および負極の基準量あたりの充放電特性ならびに電流値Aに基づき容量減少パラメータ群Aを決定し、正極および負極の基準量あたりの充放電特性、容量減少パラメータ群A、ならびに、電流値Aより大きな電流値Bに基づき、抵抗増加パラメータ群Bを決定する二次電池の状態判定装置、二次電池の状態判定方法、二次電池システム、および、状態判定装置を有する充放電制御装置。」と記載されている。
特許文献1で公知の二次電池や、二次電池の状態判定方法を用いることは可能であり、この点において特許文献1の内容は本明細書に包含される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/045015号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した技術において、二次電池の状態を一層適切に取得したいという要望がある。
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、二次電池の状態を適切に取得できる二次電池の状態判定装置、充放電制御装置および二次電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明の二次電池の状態判定装置は、複数の時刻において二次電池の状態を測定した結果である状態量に基づいて、複数の前記時刻の各々において前記二次電池のパラメータに対する複数の候補値を求める候補値抽出部と、複数の前記候補値と、所定の関数と、に基づいて、前記パラメータの推定値および前記推定値の経時変化を求める計算部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、二次電池の状態を適切に取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態および比較例における劣化パラメータの推定値の取得手順を示す図である。
図2】第1実施形態による状態判定装置のブロック図である。
図3】コンピュータのブロック図である。
図4】パラメータ最適化の概要を示す図である。
図5】複数の候補値の時間変化の例を示す図である。
図6】二次電池の容量維持率の予測曲線と計測結果とを示す図である。
図7】比較例において、正極活物質の有効質量の経時変化を予測した結果を示す図である。
図8】実施例において、正極活物質の有効質量の経時変化を予測した結果を示す図である。
図9】実施例および比較例における実測値と予測曲線との誤差を示す図である。
図10】第2実施形態による二次電池システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態の概要]
近年、リチウムイオン電池などの二次電池を車両の搭載用電源やスマートハウスの蓄電用電源に使用することにより、効率的にエネルギーを利用する取り組みが進められている。但し、二次電池は充放電および保管によって特性劣化を生じることが知られている。特に、上記用途の電源はその利用期間が長期に及ぶことが想定されるため、二次電池を搭載した製品を安定して使用し続けるには、二次電池の劣化状態を適切に判定することが重要である。
【0009】
二次電池の特性劣化は、二次電池の電極中に含まれる活物質の劣化に由来する。活物質とは二次電池の電極を構成する材量の一つであり、イオンを貯蔵したり放出したりすることで二次電池の充放電反応を進行させる役割を担う。例えばリチウムイオン二次電池の場合、二次電池の充電時には正極活物質からリチウムイオンが放出され、それが負極活物質に貯蔵されることで充電反応が進行する。また、放電反応はこの逆の過程をたどる。
【0010】
二次電池の劣化状態を判定するには、上述した活物質の劣化状態を精度よく推定することが望ましい。活物質の劣化状態を把握するには、二次電池の充放電容量の測定の他、抵抗値などの電流電圧応答を測定する方法が用いられる。例えば特許文献1の技術を応用すると、二次電池の充放電曲線を利用して、二次電池における正極や負極の活物質の劣化状態を検出できると考えられる。
【0011】
また、特許文献1の技術を応用すると、予め記憶した正極・負極単独の放電曲線に基づいて当該二次電池の充放電曲線を計算で再現し、その過程で正極活物質の有効重量、負極活物質の有効重量、正極・負極間の容量ずれに対応するパラメータの値を取得できると考えられる。これらのパラメータは何れも活物質の劣化状態と強く相関するものであり、以下では活物質の劣化状態と相関性のあるパラメータを総称して「劣化パラメータ」と呼称する。
【0012】
また、特許文献1の技術を応用すると、上記手順で計算した放電曲線と、二次電池の放電曲線の計測値とを比較することで劣化パラメータの値を推定できると考えられる。但し、かかる方法は、二次電池の放電曲線の計測値に対して計測誤差が存在しないことを前提としている。一般に、測定された計測値には装置や測定環境の影響を受けて一定の計測誤差が内包される。また、仮に同一種の二次電池で測定したとしても、ロット番号などの製造条件の違いから、その計測値には微小な誤差が含まれる(以下、サンプル依存性と呼ぶ)。
【0013】
このように、二次電池の放電曲線の計測値には一定の計測誤差やサンプル依存性が内包される。これらは二次電池の劣化パラメータの推定値を求める際に推定精度の低下を招く原因となるため、単に特許文献1を応用した技術では、推定値を高精度に求めることが困難である。このことは、劣化パラメータの推定値を用いて二次電池の劣化状態を正確に予測できないことを意味する。
そこで、後述する実施形態は、上記の点を考慮して構成されたもので、二次電池の劣化状態を精度よく判定することを可能にするものである。
【0014】
より具体的には、後述する実施形態においては、様々な時刻で二次電池の状態を測定し、このうち、いくつかの時刻における測定データから所定の劣化パラメータの推定値となる候補値を、それぞれ2つ以上求め、求めた候補値と所定の関数とに基づいて、各候補値の経時変化を求める。次に、これら候補値のうち、最も確からしいもの(真値に近いと推定されるもの)である「最尤候補値」を選択する。次に、この最尤候補値を劣化パラメータの推定値として採用し、この推定値を用いて二次電池の劣化状態を予測する。
【0015】
図1は、比較例における劣化パラメータAの推定値および第1実施形態における劣化パラメータAの候補値の取得手順を示す図である。ここで、比較例は、上述した特許文献1を応用した技術である。
比較例の方法においては、時刻t1に二次電池の状態を計測すると、その計測結果に基づいて、時刻t1における劣化パラメータAの推定値AE(t1)を取得する。その後、時刻t2,t3においても、同様に各時刻における劣化パラメータAの推定値AE(t2),AE(t3)を取得する。一方、第1実施形態においては、二次電池の状態を計測する際に、1回の計測時刻tに対して、推定値の候補となる複数の候補値AC1(t),AC2(t),…を取得する。
【0016】
図1に示す例において、各実施形態においては、時刻t1に劣化パラメータAに対する複数の候補値AC1(t1),AC2(t1),…を取得する。その後、時刻t2およびt3においても、同様に各時刻における候補値AC1(t2),AC2(t2),…および候補値AC1(t3),AC2(t3),…を取得する。そして、第1実施形態においては、これら複数の候補値の中から最尤候補値を選択することにより、二次電池の劣化状態を予測する。これにより、第1実施形態によれば、実用的な電流値に対する二次電池の劣化状態を精度よく判定することができる。
【0017】
[第1実施形態]
以下、図面等を用いて、各種実施形態について詳述する。以下の説明中、全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、以下の説明において、二次電池(蓄電池)を、単に「電池」と略して称することがある。
【0018】
〈第1実施形態の全体構成〉
図2は、第1実施形態による状態判定装置100のブロック図である。
図2において、二次電池モジュール200は、直列または並列に接続された複数の二次電池210を備えている。
状態判定装置100は、二次電池モジュール200または個々の二次電池210の状態を判定する装置である。以下の説明では、二次電池210として、リチウムイオン二次電池を適用した例について説明するが、二次電池はリチウムイオン二次電池に限定されるものではない。
【0019】
また、以下の説明では、状態判定装置100の動作として、個々の二次電池210の状態を判定する動作を説明するが、二次電池モジュール200の動作も同様に判定することができる。
図2において、状態判定装置100は、計測部110と、劣化パラメータ抽出部120(候補値抽出部、候補値抽出手段)と、メモリ130と、計算部140(計算手段)と、劣化予測部150と、出力部160と、を備えている。
【0020】
図3は、コンピュータ900のブロック図である。
図2に示した状態判定装置100は、図3に示すコンピュータ900を、1台または複数台備えている。
図3において、コンピュータ900は、CPU901と、RAM902と、ROM903と、HDD904と、通信I/F905と、入出力I/F906と、メディアI/F907とを備える。通信I/F905は、通信回路915に接続される。入出力I/F906は、入出力装置916に接続される。メディアI/F907は、記録媒体917からデータを読み書きする。
【0021】
ROM903には、CPUによって実行される制御プログラム、各種データ等が格納されている。CPU901は、RAM902に読み込んだアプリケーションプログラムを実行することにより、各種機能を実現する。先に図2に示した、状態判定装置100の内部は、アプリケーションプログラム等によって実現される機能をブロックとして示したものである。
【0022】
図2に戻り、計測部110は、二次電池210の状態量を計測してメモリ130に保存する。ここで、二次電池210の状態量とは計測時点における二次電池210の容量、抵抗値、温度、電圧、電流等、二次電池210の充放電特性に関する量を表す。
【0023】
劣化パラメータ抽出部120は、各計測時刻tにおいて計測部110が取得した二次電池の状態量を用いて、劣化パラメータA(パラメータ)の候補値を算出する。その際、劣化パラメータ抽出部120は、少なくとも何れか1つの時刻では、状態量に基づいて、劣化パラメータの2つ以上の候補値AC1(t),AC2(t),…(図1参照)を算出する。
【0024】
また、劣化パラメータ抽出部120は、各時刻の状態量に基づいて複数種類の劣化パラメータ(例えば劣化パラメータA,B,C)の候補値を求めてもよい。劣化パラメータ抽出部120は、これら劣化パラメータA,B,Cのうち少なくとも1種類の劣化パラメータに対して、その候補値を2つ以上求めるとよい。劣化パラメータ抽出部120は、以上のように抽出した候補値と、二次電池の状態量と、パラメータ名と、を関連付けてメモリ130に保存する。また、メモリ130は、計算部140で使用される少なくとも1種類の関数を記憶する。
【0025】
計算部140は、メモリ130に保存されている二次電池の状態量と、劣化パラメータの複数の候補値と、所定の関数と、を比較する。これにより、計算部140は、複数の候補値の中から、最も真値に近いと推定される最尤候補値を特定する。計算部140の動作挙動の詳細については後述する。
【0026】
劣化予測部150は、計算部140で特定された最尤候補値を劣化パラメータの推定値として用いて、二次電池210の劣化状態(二次電池210の内部抵抗や容量減少率等)や余寿命を計算する。なお、二次電池210の寿命とは、例えば、二次電池210の容量が所定の下限値を下回った場合、もしくは二次電池210の内部抵抗が所定の上限値を上回った場合とし、この条件に達したとき二次電池の寿命と見なすとよい。
【0027】
劣化状態や余寿命の計算では、後述する指数関数や冪関数などの所定の関数を用いて劣化パラメータの推定値の経時変化を予測し、その結果に基づいて未来の時点における二次電池210の劣化状態を予測する。なお、劣化予測部150における寿命等の予測方法は上述した手順に限定されるものではない。例えば、計算部140で求めた推定値に機械学習等を適用することで、推定値の経時変化を予測して、二次電池210の劣化状態を予測してもよい。
【0028】
出力部160は、劣化予測部150が決定した二次電池210の劣化状態や余寿命の予測値を、ユーザーへの表示デバイスや電池寿命の管理装置(図示せず)等に出力する。また、予測値を出力する時点において二次電池が既に寿命に達していると判断される場合は警告を表示する。
【0029】
〈劣化パラメータ抽出部120の詳細〉
次に、劣化パラメータ抽出部120の詳細動作を説明するが、最初に、劣化パラメータ抽出部120において劣化パラメータの推定値(または候補値)が求まる理由を説明する。
特許文献1に記載された技術を応用すると、予め記憶した正極・負極単独の放電曲線と劣化パラメータの値とを用いて、二次電池の充放電曲線を計算によって再現できると考えられる。この方法によると、計算で再現した二次電池の充放電曲線と、実際に計測した二次電池の充放電曲線とが一致するように劣化パラメータの値を最適化することができる。この最適化した劣化パラメータの値を該劣化パラメータの推定値(または候補値)とすることができる。
【0030】
このような手順はパラメータ最適化もしくは数値最適化と呼ばれる。計測値に測定誤差が含まれない場合には、以上の最適化手法により、劣化パラメータの真値に近い推定値を取得できるとも考えられる。しかし、一般には、測定誤差の影響によって複数の解が推定値の候補として求まる。その詳細を、図4を参照して説明する。
【0031】
図4は、パラメータ最適化の概要を示す図である。
図4の横軸は、劣化パラメータAのパラメータ値Axとして想定し得る範囲の値である。図4の横軸の全てのパラメータ値Axについて、二次電池210のある状態量(例えば電池電圧)の計算値を求めることができる。また、ある計測時刻tにおける二次電池210の状態量(例えば電池電圧)の計測値は、上述したように、メモリ130に記憶されている。すると、劣化パラメータAの全てのパラメータ値Axに対して、計算値と計測値との差分を求めることができる。この差分をδとする。
【0032】
図4における縦軸は、差分δの絶対値である差分絶対値|δ|である。図示の例において、差分絶対値|δ|には、パラメータ値Ax=α,β,γの3箇所において極小値が現れている。これら極小値を、それぞれδ(α),δ(β),δ(γ)とする。これら極小値が現れる値であるα,β,γは推定値AE(t)の候補値になる。
【0033】
ここで、状態量の計測値には、大きさがδnである測定誤差が含まれていたとする。図示の例において、測定誤差δnは、極小値δ(α),δ(β),δ(γ)の何れよりも大きく、全ての極小値δ(α),δ(β),δ(γ)が測定誤差δnの範囲内に含まれることになる。従って、図4に示されている情報のみでは、候補値α,β,γのうち、何れを推定値AE(t)として採用すべきか判断することが困難になる。
【0034】
このように、状態量の計測値に測定誤差が含まれる場合には、劣化パラメータAの推定値AE(t)の候補値が複数求まり、劣化パラメータAの推定値AE(t)を一意に決定することが困難になる場合がある。本実施形態は、このような候補値α,β,γ,・・・の中から、何れを推定値AE(t)として採用するかを決定するものである。従って、本実施形態は、特許文献1に記された二次電池系に限定されることなく、他の様々な物理系を対象としたパラメータ推定に対しても広く適用可能である。
【0035】
〈計算部140の詳細〉
次に、計算部140の詳細を説明する。
上述した劣化パラメータ抽出部120が、ある計測時刻tにおいて、劣化パラメータAに対する推定値AE(t)の候補として、複数の候補値AC1(t),AC2(t),AC3(t),…を算出したとする。ここで、候補値AC1(t),AC2(t),AC3(t),…は、図4に示した候補値α,β,γと同様の意味であると考えてよい。従って、劣化パラメータ抽出部120は、複数の計測時刻tk(但し、k=0,1,2,3,…)において、同様に候補値AC1(tk),AC2(tk),AC3(tk),…を算出する。推定値AE(t)は、これら候補値AC1(tk),AC2(tk),AC3(tk),…のうち何れかになる。これら候補値を、計測時刻tの順番に配列すると、下式(1)のようになる。
【0036】
(AC1(t0),AC2(t0),AC3(t0),…)at t=t0
(AC1(t1),AC2(t1),AC3(t1),…)at t=t1
(AC1(t2),AC2(t2),AC3(t2),…)at t=t2
: …式(1)
【0037】
ここで、式(1)における各候補値を並べ替えると、下式(2)のようになる。
【0038】
(AC1(t0),AC1(t1),AC1(t2),…)
(AC2(t0),AC2(t1),AC2(t2),…)
(AC3(t0),AC3(t1),AC3(t2),…)
: …式(2)
【0039】
式(2)の各行には、各時刻で計測された劣化パラメータAの候補値が1つずつ含まれている。すなわち、式(1)の各行は、劣化パラメータの経時変化を示すものである。さらに、式(2)は、各時刻で計測された劣化パラメータAの候補値に対して、可能な組み合わせを網羅的に列挙したものである。そのため、劣化パラメータの最尤候補値すなわち推定値AE(t)の経時変化は式(2)に示す何れかの行の中に含まれる。そこで、式(2)における各行を「候補値組」と呼ぶことにする。
【0040】
次に、式(2)に示す候補値組の中から、最尤候補値の経時変化を表す候補値組を特定する方法を述べる。そもそも二次電池の劣化パラメータとは二次電池の劣化の程度を示す量であるため、その値は時間の経過に伴って単調に変化していくものと考えられる。そのため、非単調な時間依存性を示す組は、非物理的な候補値組として最尤候補値の候補から除外できる。
【0041】
図5は、複数の候補値の時間変化の例を示す図である。
図5におけるグラフG1は、候補値AC1(t)の時間変化を示すものであり、グラフG2は、候補値AC2(t)の時間変化を示すものである。
グラフG1において、候補値AC1(t)は時間とともに単調減少している。劣化パラメータAが、時間とともに単調減少するものであれば、候補値AC1(t)は、その点で妥当性を有する。一方、グラフG2において、候補値AC2(t)は非単調な時間依存性を示している。従って、候補値AC2(t)は、劣化パラメータAの不適切な候補値として、最尤候補値の候補から外すことができる。この処理を「不適切候補値除外処理」と呼ぶ。
【0042】
また、一般的に、二次電池の特性劣化は、定性的には特定の関数形に従って進行することが知られている。例えば、二次電池の負極材料に黒鉛が適用されている場合、その特性劣化(容量や抵抗の劣化)は二次電池の使用期間の平方根に比例して進行することが知られている(ルート則)。そこで、本実施形態の計算部140は、このような電池劣化に関する知見や経験則を活用して、式(2)に示した劣化パラメータの組を絞り込むものである。以下にその具体的な手順を示す。メモリ130には、経験則等に基づいて、劣化パラメータの種類毎に、二次電池の劣化挙動を記述する関数が記憶されている。これら関数を、挙動記述関数と呼ぶ。その一例として、下式(3)に示す挙動記述関数F(t)を適用することができる。下式(3)において、G,H,Jは定数である。式(3)の挙動記述関数F(t)は、二次電池の劣化特性が計測時刻tに対して指数関数的に進行することを仮定するものである。
【0043】
F(t)=G-H×exp(-J×t) …式(3)
【0044】
また、他の例として、例えば、下式(4)に示す冪関数を挙動記述関数F(t)として適用することができる。前述したルート則などもこれに含まれる。下式(4)において、G,H,Jは定数である。
【0045】
F(t)=G+H×tJ …式(4)
【0046】
なお、メモリ130に記憶される挙動記述関数F(t)は、上述のものに限定されるわけではなく、劣化パラメータの種類に応じて、種々の関数を適用するとよい。
【0047】
次に、計算部140は、式(2)に示した候補値組から何れか一つの組を選び、選んだ候補値組と、式(3),(4)等の挙動記述関数F(t)との差δf(図示せず)が最小になるように、挙動記述関数F(t)における定数G,H,Jを最適化する。次に、計算部140は、最適化した定数G,H,Jを用いて計算した挙動記述関数F(t)と、選んだ候補値組との差δg(図示せず)を求める。
【0048】
計算部140は、上述した作業を式(2)に示した全ての候補値組、または上述した不適切候補値除外処理によって除外されなかった候補値組に対して実行する。これにより、各候補値組において、定数G,H,Jの最適値が求まり、定数G,H,Jの最適値を用いて計算した関数F(t)と、選んだ候補値組との差δg(図示せず)が求まる。
【0049】
ここで、式(3),(4)に示した挙動記述関数F(t)は、二次電池210の劣化挙動を(経験則的に)記述する関数であるため、劣化パラメータの真値も当該挙動記述関数F(t)に従って経時変化してゆくと考えられる。そのため、計算部140は、候補値組と挙動記述関数F(t)との差δgが最小となる候補値組が、最尤候補値の組であると判定できる。この処理の内容を再び図5を参照し説明する。
【0050】
図5におけるグラフG3は、候補値AC3(t)の時間変化を示すものであり、グラフG4は、候補値AC4(t)の時間変化を示すものである。
また、グラフG3,G4には、上述した挙動記述関数F(t)の例を併記する。図示の例において、候補値AC3(t)は、挙動記述関数F(t)とほぼ一致しているため、その候補値組と挙動記述関数F(t)との差δgは小さな値になる。一方、候補値AC4(t)は挙動記述関数F(t)から外れているため、両者の差δg(図示せず)は大きくなる。従って、最尤候補値の候補が候補値AC3(t)および候補値AC4(t)のみであれば、計算部140は、候補値AC3(t)を最尤候補値として選択する。
【0051】
次に、候補値組と挙動記述関数F(t)との差δgが、同程度である複数の候補値組が生じた場合の、計算部140における処理手順について説明する。なお議論の簡単化のため、最尤候補値の候補は候補値AC5(t),AC6(t)(図示せず)の2つであるとし、二次電池210の状態量はn+1回の計測時刻t0,t1,t2,t3,…,tnにおいて計測されていることとする。
【0052】
まず、計算部140は、n+1回の計測時刻t0,t1,t2,t3,…,tnにおいて、候補値AC5(t),AC6(t)を算出する。そして、計算部140は、候補値AC5(t),AC6(t)について、各々の候補値組と関数F(t)との差δgを求めるが、両者が略同一であったとする。
【0053】
ここで、候補値AC5(t)に基づいて、式(3),(4)等の挙動記述関数F(t)における定数G,H,Jを最適化した結果を定数Gx,Hx,Jxとする。同様に、候補値AC6(t)に基づいて、挙動記述関数F(t)における定数G,H,Jを最適化した結果を定数Gy,Hy,Jyとする。
【0054】
計算部140は、定数Gx,Hx,Jxに基づいて、未来の時刻tm(但しm>n)における候補値AC5(t)の予測値ACE5(tm)を算出する。同様に、計算部140は、定数Gy,Hy,Jyに基づいて、未来の時刻tmにおける候補値AC6(t)の予測値ACE6(tm)を算出する。
【0055】
次に、実際に現在時刻が時刻tmに達すると、計測部110は、二次電池210の状態量を計測してメモリ130に保存する。次に、劣化パラメータ抽出部120は、時刻tmの状態量に基づいて、時刻tmの候補値AC5(tm),AC6(tm)を算出する。次に、計算部140は、差分δ5=|AC5(tm)-ACE5(tm)|および差分δ6=|AC6(tm)-ACE6(tm)|を求める。そして、計算部140は、差分δ5,δ6について、「δ5≦δ6」の関係が成立すれば、候補値AC5(t)を最尤候補値として選択し、それ以外の場合は候補値AC6(t)を最尤候補値として選択する。以上の手順により、計算部140は、式(2)における候補値組の中から、最尤候補値の組を特定し、特定した最尤候補値の組を劣化パラメータAの推定値AE(t)として出力する。
【0056】
〈寿命予測の実施例〉
次に、寿命予測を行った実施例および比較例について説明する。
まず、実施例および比較例において、二次電池210には、負極活物質が黒鉛、正極活物質がLiNiCoMnO2である二次電池を適用した。試験では二次電池210の充電率を80%に調整し、それを一定温度に制御した恒温槽中に静置した。静置した二次電池は30日毎に恒温槽から取り出して、25℃の環境下で二次電池の容量と開回路電圧の充電率依存性(SOC-OCV曲線)を測定した。
【0057】
容量測定後には二次電池の充電率を80%に調整して再び恒温槽中に静置し、さらに30日後に取り出して容量測定をする、という作業を約900日間繰り返した(保存試験)。なお、本検討では保存試験時の恒温槽温度として60℃と25℃の2条件を検討した。
【0058】
図6は、二次電池210の容量維持率の予測曲線と計測結果とを示す図である。
図6におけるグラフG10は、保存試験時の恒温槽温度を60℃とした場合のグラフであり、グラフG20は、保存試験時の恒温槽温度を25℃とした場合のグラフである。
グラフG10,G20において、白ヌキの円で示した実測値14,24および黒塗りの円で示した実測値16,26は、容量維持率の実測値である。
【0059】
これらのうち、実測値14,24は900日分の試験データのうち約200日分のデータであり、予測のための教師データとして用いた。残りの実測値16,26は予測結果の検証用データとして用いた。また、実線の予測曲線L11,L21は、実測値14,24に基づいて、第1実施形態による実施例に基づいて予測した予測曲線である。また、破線の予測曲線L12,L22は、実測値14,24に基づいて、比較例によって予測した予測曲線である。ここで、比較例は、特許文献1に示された方法で求めたものである。
【0060】
以下、比較例による予測曲線L12,L22の作成手順を説明する。比較例の方法では、二次電池の充放電曲線に対して、正極と負極のそれぞれの電位曲線を最小二乗法等でフィッティングすることによって、二次電池の劣化パラメータの推定値を求めることができる。比較例において予測曲線L12,L22を求めるためには、まず、30日毎に取得したそれぞれの充放電曲線に対して、最小二乗法によるフィッティング作業を繰り返すことで、劣化パラメータの計時変化を求めた。さらに、劣化パラメータの経時変化を外挿して将来に渡る劣化パラメータの変化を求め、その結果に基づいて、将来の時点での電池容量を計算することで予測曲線L12,L22を得た。
【0061】
図7は、比較例において、正極活物質の有効質量の経時変化を予測した結果を示す図である。
すなわち、図7の上段の表は、60℃の試験結果から抽出した正極活物質の有効質量の推定値の経時変化を示す。すなわち、比較例において、劣化パラメータは「正極活物質の有効質量」であり、約30日毎に該劣化パラメータの推定値を取得したものである。また、図7の下段のグラフは、該推定値およびその外挿値を示す。外挿に使用した曲線(外挿曲線)には、式(3)に示した指数関数の挙動記述関数F(t)を適用した。
【0062】
次に、本実施例による予測曲線L11,L21の作成手順について説明する。
本実施例では、最小二乗法で劣化パラメータを求める際に、その候補値を複数算出した。具体的には、二次電池の充放電曲線と正極・負極の電位曲線とをフィッティングする際に、フィッティングに使用するパラメータの初期値を複数個用意した。この理由は、フィッティングの結果得られる劣化パラメータの候補値値は、その初期値に依存することが知られているためである。事実、試験開始から180日後の充放電曲線を用いたフィッティングでは、フィッティングに使用するパラメータの初期値を100種類ほど検討した結果、劣化パラメータの候補値として複数の異なる値が得られた。その結果を図8に示す。
【0063】
図8は、本実施例において、正極活物質の有効質量の経時変化を予測した結果を示す図である。すなわち、図8の上段の表は、60℃の試験結果から抽出した正極活物質の有効質量の複数の候補値、およびこれら候補値の中から選択した推定値の経時変化を示す。すなわち、本実施例においても、劣化パラメーは「正極活物質の有効質量」である。また、図8の下段のグラフは、該推定値およびその外挿値を示す。図8の上段の表に示すように、劣化パラメータの候補値は常に一意に決まるわけではなく、その候補値は計測誤差などの影響によって複数存在することが分かる。
【0064】
劣化パラメータの最尤候補値の経時変化を求めるためには、何れの候補値が物理的に妥当な値であるのかを判定する必要がある。そこで、劣化パラメータの経時変化は式(3)に示した指数関数の挙動記述関数F(t)に従うと仮定し、図8に示した候補値の組み合わせの中から指数関数的な経時変化挙動を示す組を、推定値として選択した。選択した推定値を図8の上段の表の右端に示す。本実施例では、このようにして得られた推定値が劣化パラメータの経時変化を正しく記述していると見なす。以降は、比較例または特許文献1の方法と同様にして容量減少パラメータの外挿値を求め、それを用いて将来の時点での電池容量を計算することで予測曲線L11,L21を得た。
【0065】
図9は、上記実施例および比較例における実測値と予測曲線との誤差を示す図である。
すなわち、図9は、検証用データである実測値16,26(図26参照)と、予測曲線L11,L12,L21,L22との誤差を計算した結果である。
誤差の定義には、二乗平均平方根誤差(RMSE)を採用した。RMSEが小さいほど、精度よく寿命予測できることを意味する。図9から明らかなように、本実施例による予測曲線L11,L21は、比較例による予測曲線L12,L22よりもRMSE値が小さく、高精度に寿命が予測できたことが解る。
【0066】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
図10は、第2実施形態による二次電池システム1のブロック図である。
二次電池システム1は、二次電池モジュール200と、充放電制御装置300と、を備えている。ここで、二次電池モジュール200の構成は、第1実施形態のもの(図2参照)と同様である。また、充放電制御装置300は、状態判定装置100と、充放電制御部310と、を備えている。
【0067】
充放電制御部310は、二次電池210に対する充電電流および放電電流が、指定された電流範囲に収まるように、制御する。また、本実施形態における状態判定装置100は、第1実施形態のもの(図2参照)と同様の構成に加えて、運用条件決定部170を備えている。上述したように、劣化予測部150は、劣化パラメータAの推定値AE(t)に基づいて、現在および未来における二次電池210の劣化状態(内部抵抗や容量減少率等)を予測する。
【0068】
運用条件決定部170は、この劣化状態に基づいて、二次電池210の運用時の電圧許容範囲(上限値および下限値)を設定し、二次電池210の電池電圧がこの電圧許容範囲に収まる充放電電流の電流範囲(上限値および下限値)を算出し、該電流範囲を充放電制御部310に指令する。これにより、充放電制御部310は、劣化パラメータAの推定値AE(t)に応じた範囲内になるように充放電電流を制御することができ、これによって二次電池210の長寿命化を図ることができる。
【0069】
[実施形態の効果]
以上のように上述の実施形態によれば、二次電池の状態判定装置100は、複数の時刻(tk;k=0,1,2,3,…)において二次電池210の状態を測定した結果である状態量に基づいて、複数の時刻(tk;k=0,1,2,3,…)の各々において二次電池210のパラメータ(A)に対する複数の候補値(AC1(tk),AC2(tk),AC3(tk),…)を求める候補値抽出部(120)と、複数の候補値(AC1(tk),AC2(tk),AC3(tk),…)と、所定の関数(F(t))と、に基づいて、パラメータ(A)の推定値の経時変化(AE(t))を求める計算部140と、を備える。これにより、複数の候補値(AC1(tk),AC2(tk),AC3(tk),…)に基づいて、劣化パラメータの特徴の経時変化(AE(t))等、二次電池の状態を適切に取得できる。
【0070】
また、二次電池210は電極を備え、電極は活物質を含むものであり、パラメータ(A)は、活物質の失活率、活物質の表面の被膜膜厚、活物質の表面の被膜膜の抵抗値の何れかを含むと一層好ましい。これにより、活物質の失活率、活物質の表面の被膜膜厚、活物質の表面の被膜膜の抵抗値の何れかを適切に推定することができる。
【0071】
また、状態量は、二次電池210の電池電圧を含み、関数(F(t))は、指数関数または冪関数を含む関数であり、パラメータ(A)は、二次電池210の劣化状態を表す量であり、計算部140は、関数(F(t))と、電池電圧の経時変化と、に基づいて、推定値(AE(t))を出力すると一層好ましい。これにより、パラメータ(A)が指数関数または冪関数に近似して変化する場合、一層適切な推定値(AE(t))を出力することができる。
【0072】
また、二次電池の状態判定装置100は、推定値(AE(t))に基づいて二次電池210の運用時における電圧許容範囲を設定し、二次電池210の電池電圧が該電圧許容範囲に収まるように二次電池210の運用条件を決定する運用条件決定部170をさらに備えると一層好ましい。これにより、推定値(AE(t))に基づいて、二次電池210の適切な運用条件を決定することができる。
【0073】
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、もしくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。また、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上で必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。上記実施形態に対して可能な変形は、例えば以下のようなものである。
【0074】
(1)上記実施形態においては、n回の計測時刻t0,t2,t3,…,t(n-1)のそれぞれに、劣化パラメータのp個の候補値AC1(t)~ACp(t)が存在した場合、p個の候補値組の中から最尤候補値の組を選択した。しかし、時系列で辿れる全ての候補値の組合せを候補値組とし、その中から最尤候補値を選択してもよい。上記例では、候補値組の数は、pnになり、特に計測回数nが大きくなると非常に大きな数になる。しかし、例えばビタビアルゴリズム等を用いて最尤候補値の組を検索すると、比較的少ない計算量で最尤候補値の組を求めることができる。
【0075】
(2)上記実施形態における状態判定装置100のハードウエアは一般的なコンピュータによって実現できるため、図2図10に示した各種処理を実行するプログラム等を記憶媒体に格納し、または伝送路を介して頒布してもよい。
【0076】
(3)図2図10に示した処理、その他上述した各処理は、上記実施形態ではプログラムを用いたソフトウエア的な処理として説明したが、その一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit;特定用途向けIC)、あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いたハードウエア的な処理に置き換えてもよい。
【0077】
(4)上記実施形態において実行される各種処理は、図示せぬネットワーク経由でサーバコンピュータが実行してもよく、上記実施形態において記憶される各種データも該サーバコンピュータに記憶させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 二次電池システム
100 状態判定装置
120 劣化パラメータ抽出部(候補値抽出部、候補値抽出手段)
140 計算部(計算手段)
170 運用条件決定部
200 二次電池モジュール
210 二次電池
300 充放電制御装置
310 充放電制御部
A 劣化パラメータ(パラメータ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10