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特開2023-83026電力システム、電力計測システム、分電盤及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083026
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】電力システム、電力計測システム、分電盤及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 21/00 20060101AFI20230608BHJP
   G01R 31/55 20200101ALI20230608BHJP
   G01R 31/50 20200101ALI20230608BHJP
   H02B 1/40 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
G01R21/00 R
G01R31/55
G01R31/50
H02B1/40 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197117
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 佑紀
(72)【発明者】
【氏名】一村 省互
【テーマコード(参考)】
2G014
5G211
【Fターム(参考)】
2G014AA07
2G014AB01
2G014AC15
5G211AA11
5G211AA12
5G211AA17
5G211BB06
5G211DD14
5G211DD15
5G211DD16
5G211DD20
5G211DD21
5G211DD27
5G211DD36
5G211DD37
5G211EE02
5G211FF02
5G211GG04
5G211GG05
5G211GG06
5G211GG10
(57)【要約】
【課題】本開示は、ユーザが電流計測部の設置状況を判定しやすくすることを目的とする。
【解決手段】電力システム1は、取得部11と、提示システム19と、を備える。取得部11は、複数の電線3間の電圧を計測する電圧計測部7、及び、複数の電線3の各々に流れる電流を計測する電流計測部8の計測結果を、電圧電流情報21として取得する。提示システム19は、情報を提示する。提示システム19は、表示部191を含む。表示部191は、取得部11で取得された電圧電流情報21に基づいて、ベクトル図を表示する。ベクトル図は、複数の電線3間の電圧の位相と複数の電線3の各々に流れる電流の位相との関係を示す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線間の電圧を計測する電圧計測部、及び、前記複数の電線の各々に流れる電流を計測する電流計測部の計測結果を、電圧電流情報として取得する取得部と、
情報を提示する提示システムと、を備え、
前記提示システムは、前記取得部で取得された前記電圧電流情報に基づいて、前記複数の電線間の前記電圧の位相と前記複数の電線の各々に流れる前記電流の位相との関係を示すベクトル図を表示する表示部を含む、
電力システム。
【請求項2】
前記取得部で取得された前記電圧電流情報に基づいて前記電流計測部の設置状況を判定する判定部を更に備える、
請求項1に記載の電力システム。
【請求項3】
前記提示システムは、前記判定部の判定結果を提示する判定提示部を更に含む、
請求項2に記載の電力システム。
【請求項4】
前記判定部が前記電流計測部の前記設置状況を異常と判定した場合に、前記電圧電流情報に基づいて前記異常への対処方法を判断する判断部を更に備える、
請求項2又は3に記載の電力システム。
【請求項5】
前記複数の電線から電力の供給先へ供給される電力の算出に係る設定を、前記判断部の判断結果に基づいて変更する変更部を更に備える、
請求項4に記載の電力システム。
【請求項6】
前記提示システムは、前記判断部の判断結果を提示する判断提示部を更に含む、
請求項4又は5に記載の電力システム。
【請求項7】
前記取得部と、
前記取得部で取得された前記電圧電流情報に基づいて、前記複数の電線間の前記電圧の前記位相及び前記複数の電線の各々に流れる前記電流の前記位相を算出する算出部と、
前記算出部で算出された前記電圧の前記位相と前記電流の前記位相とを含む情報を出力する出力部と、
を含む算出装置と、
前記提示システムの少なくとも一部の構成、及び、前記出力部から前記情報を取得する情報取得部を含み、前記情報取得部で取得した前記情報を前記提示システムにおいて提示する提示端末と、を備える、
請求項1~6のいずれか一項に記載の電力システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の電力システムの前記取得部を備える電力計測システムであって、
前記電力計測システムは、前記電圧計測部と、前記電流計測部と、を更に備える、
電力計測システム。
【請求項9】
前記取得部で取得された前記電圧電流情報に基づいて前記電流計測部の設置状況を判定する判定部と、
前記判定部が前記電流計測部の前記設置状況を異常と判定した場合に、前記電圧電流情報に基づいて前記異常への対処方法を判断する判断部と、のうち少なくとも一方を更に備える、
請求項8に記載の電力計測システム。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の電力システム、又は、請求項8若しくは9に記載の電力計測システムと、
前記電力システム又は前記電力計測システムの少なくとも一部を収容するキャビネットと、を備える、
分電盤。
【請求項11】
コンピュータシステムの1以上のプロセッサに、
複数の電線間の電圧を計測する電圧計測部、及び、前記複数の電線の各々に流れる電流を計測する電流計測部の計測結果を、電圧電流情報として取得する取得処理と、
前記取得処理で取得された前記電圧電流情報に基づいて、前記複数の電線間の前記電圧の位相と前記複数の電線の各々に流れる前記電流の位相との関係を示すベクトル図を表示する表示処理と、を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に電力システム、電力計測システム、分電盤及びプログラムに関する。本開示はより詳細には、電圧及び電流の計測結果を用いる電力システム、電圧及び電流を計測するための電力計測システム、上記電力システム又は上記電力計測システムを備える分電盤、及び、電圧及び電流の計測結果を用いるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来例として、特許文献1に記載の判定システムを挙げる。判定システムは、取得部と、判定部と、を備える。取得部は、電圧計測部及び電流計測部から、消費電力を算出するための電圧電流情報を取得する。判定部は、取得部で取得された電圧電流情報に基づいて電流計測部の設置状況を判定する。判定部は、設置状況が異常である場合、設置状況を、第1状況と、第2状況とに区別して判定する。第1状況は、電圧電流情報に基づいて、消費電力を算出する際の設定を変更することで電流計測部の誤設置への対処が可能な状況である。第2状況は、上記対処が不可能な状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-081219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、ユーザが電流計測部の設置状況を判定しやすくなる電力システム、電力計測システム、分電盤及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る電力システムは、取得部と、提示システムと、を備える。前記取得部は、複数の電線間の電圧を計測する電圧計測部、及び、前記複数の電線の各々に流れる電流を計測する電流計測部の計測結果を、電圧電流情報として取得する。前記提示システムは、情報を提示する。前記提示システムは、表示部を含む。前記表示部は、前記取得部で取得された前記電圧電流情報に基づいて、ベクトル図を表示する。前記ベクトル図は、前記複数の電線間の前記電圧の位相と前記複数の電線の各々に流れる前記電流の位相との関係を示す。
【0006】
本開示の一態様に係る電力計測システムは、前記電力システムの前記取得部を備える。前記電力計測システムは、前記電圧計測部と、前記電流計測部と、を更に備える。
【0007】
本開示の一態様に係る分電盤は、前記電力システム、又は、前記電力計測システムと、キャビネットと、を備える。前記キャビネットは、前記電力システム又は前記電力計測システムの少なくとも一部を収容する。
【0008】
本開示の一態様に係るプログラムは、コンピュータシステムの1以上のプロセッサに、取得処理と、表示処理と、を実行させるためのプログラムである。前記取得処理では、複数の電線間の電圧を計測する電圧計測部、及び、前記複数の電線の各々に流れる電流を計測する電流計測部の計測結果を、電圧電流情報として取得する。前記表示処理では、前記取得処理で取得された前記電圧電流情報に基づいて、ベクトル図を表示する。前記ベクトル図は、前記複数の電線間の前記電圧の位相と前記複数の電線の各々に流れる前記電流の位相との関係を示す。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、ユーザが電流計測部の設置状況を判定しやすいという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態1に係る電力システム及び電力システムが適用される施設のブロック図である。
図2図2は、同上の電力システムで表示されるベクトル図の一例である。
図3図3は、同上の電力システムで表示されるベクトル図の別の一例である。
図4図4は、同上の電力システムと共に用いられる分電盤の正面図である。
図5図5は、同上の電力システムにおける判定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、同上の電力システムにおける取付向き確認処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、同上の電力システムにおける組合せ確認処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、実施形態2に係る電力システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
下記の各実施形態においては、本開示の電力システム、電力計測システム、分電盤及びプログラムについて、図面を用いて説明する。ただし、下記の各実施形態は、本開示の様々な実施形態の一部に過ぎない。下記の各実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の各実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。また、図5図7に示すフローチャートは、電力システムの処理手順の一例を示すに過ぎず、処理の順序が適宜変更されてもよいし、処理が適宜追加又は省略されてもよい。また、下記の各実施形態(変形例を含む)は、適宜組み合わせて実現されてもよい。
【0012】
(実施形態1)
(概要)
図1に示すように、本実施形態の電力システム1は、取得部11と、提示システム19と、を備える。取得部11は、複数の電線3間の電圧を計測する電圧計測部7、及び、複数の電線3の各々に流れる電流を計測する(複数の)電流計測部8の計測結果を、電圧電流情報21として取得する。提示システム19は、情報を提示する。提示システム19は、表示部191を含む。表示部191は、取得部11で取得された電圧電流情報21に基づいて、ベクトル図を表示する。ベクトル図は、複数の電線3間の電圧の位相と複数の電線3の各々に流れる電流の位相との関係を示す。
【0013】
図2図3は、表示部191に表示されるベクトル図の一例である。本実施形態によれば、表示部191は電圧の位相と電流の位相との関係をベクトル図により表示するため、電圧及び電流の数値のみが表示される場合と比較して、施工業者等のユーザが電流計測部8の設置状況を判定しやすい。よって、ユーザが電流計測部8の誤設置等に気付きやすい。
【0014】
また、本実施形態のプログラムは、コンピュータシステムの1以上のプロセッサに、取得処理と、表示処理と、を実行させるためのプログラムである。取得処理では、複数の電線3間の電圧を計測する電圧計測部7、及び、複数の電線3の各々に流れる電流を計測する電流計測部8の計測結果を、電圧電流情報21として取得する。表示処理では、取得処理で取得された電圧電流情報21に基づいて、ベクトル図を表示する。ベクトル図は、複数の電線3間の電圧の位相と複数の電線3の各々に流れる電流の位相との関係を示す。本実施形態では、取得部11が取得処理を実行し、表示処理部13が表示処理を実行する。
【0015】
プログラムは、コンピュータで読み取り可能な非一時的記録媒体に記録されていてもよい。
【0016】
(詳細)
(1)全体構成
以下、本実施形態の電力システム1及び電力システム1に係る各構成について、より詳細に説明する。
【0017】
本実施形態では、電圧計測部7及び電流計測部8が需要家施設に設置される場合を例に説明する。需要家施設は、例えば、戸建て住宅及び集合住宅等の住宅、又は、オフィス、雑居ビル、工場及び公共施設等の非住宅である。需要家施設は、電力会社等の電気事業者から電力の供給を受ける施設であってもよいし、太陽光発電設備等の自家発電設備から電力の供給を受ける施設であってもよいし、電気事業者及び自家発電設備の両方から電力の供給を受ける施設であってもよい。
【0018】
需要家施設は、例えば、電力システム1と、分電盤4と、を備えている。ただし、電力システム1の少なくとも一部の構成は、需要家施設の外部に備えられていてもよい。電力システム1の少なくとも一部の構成は、コンピュータサーバに備えられていてもよい。また、電力システム1の少なくとも一部の構成は、分電盤4に設けられていてもよい。
【0019】
需要家施設は、商用電力系統等の交流電源2から電力の供給を受ける。交流電源2から供給された電力は、分電盤4で受電され、分岐回路6を経由して負荷等へ供給される。
【0020】
(2)交流電源
図1に示すように、本実施形態では、交流電源2の配電方式が3相4線式である場合を例に説明する。なお、交流電源2の配電方式は、3相4線式に限らず、例えば、3相3線式、単相2線式又は単相3線式であってもよい。
【0021】
需要家設備には、4本の電線3が設けられている。4本の電線3は、交流電源2に電気的に接続されている。4本の電線3は、R相の電線3Rと、S相の電線3Sと、T相の電線3Tと、N相の電線(中性線)3Nと、を含む。
【0022】
なお、後述の主幹ブレーカ5の4つの1次側端子51には交流電源2から延びる4本の電線が電気的に接続され、主幹ブレーカ5の4つの2次側端子52には4本の電線が電気的に接続されている。本実施形態では、主幹ブレーカ5の1次側の電線と、1次側の電線に電気的に接続された2次側の電線と、をまとめて、1本の電線3と定義する。つまり、主幹ブレーカ5の1次側の4本の電線と、2次側の4本の電線と、をまとめて、4本の電線3と定義する。
【0023】
(3)分電盤
図1に示すように、分電盤4は、主幹ブレーカ5と、複数の分岐回路6と、電圧計測部7と、複数(図1では3つ)の電流計測部8と、を備える。また、分電盤4は、キャビネット9(図4参照)を備える。
【0024】
主幹ブレーカ5は、4つの一次側端子51と、4つの二次側端子52と、を備える。複数の一次側端子51は、複数の電線3を介して、交流電源2に電気的に接続されている。複数の二次側端子52は、複数の電線3を介して、複数の分岐回路6に電気的に接続されている。
【0025】
複数の分岐回路6は、第1分岐回路6aと、第2分岐回路6bと、第3分岐回路6cと、を含む。第1分岐回路6aは、電線3R及び電線3Nに電気的に接続されている。第2分岐回路6bは、電線3S及び電線3Nに電気的に接続されている。第3分岐回路6cは、電線3T及び電線3Nに電気的に接続されている。
【0026】
分岐回路6は、分岐ブレーカ、配線路、配線器具(アウトレット及び壁スイッチ等)、並びに、各種の機器(モータ、照明器具、コンピュータシステム及び家電等の負荷、若しくは、蓄電池)を含む。配線路、配線器具及び各種の機器は、分岐ブレーカの二次側に電気的に接続される。なお、図1とは異なり、第1分岐回路6a、第2分岐回路6b及び第3分岐回路6cのうち少なくとも1つが、複数設けられていてもよい。
【0027】
複数の分岐回路6のうち1つの分岐回路6は、電力システム1に電力を供給している。
【0028】
電圧計測部7は、例えば、相電圧を計測する。すなわち、電圧計測部7は、電線3R及び電線3N間の電圧V1と、電線3S及び電線3N間の電圧V2と、電線3T及び電線3N間の電圧V3と、を計測する。ここで、電圧V1と電圧V2と電圧V3とは、それぞれの位相角が120度異なる3相交流電圧である。電圧計測部7は、計測した電圧V1~V3に関する電圧情報を、電力システム1の取得部11に出力する。電圧情報は、電圧V1、電圧V2及び電圧V3の電圧値並びに位相に関する情報と、計測時刻に関する情報と、を含む。
【0029】
複数の電流計測部8の各々としては、例えば、CT(Current Transformer)センサ、ホール素子、GMR(Giant Magnetic Resistances)素子等の磁気抵抗素子、又はシャント抵抗等が用いられる。本実施形態では、複数の電流計測部8の各々がCTセンサである場合を例に説明する。
【0030】
複数の電流計測部8は、電流計測部8aと、電流計測部8bと、電流計測部8cと、を含む。本実施形態では、電流計測部8aが計測する電流を電流I1と呼び、電流計測部8bが計測する電流を電流I2と呼び、電流計測部8cが計測する電流を電流I3と呼ぶ。図1では、電線3Rに流れる電流を電流計測部8aが計測し、電線3Sに流れる電流を電流計測部8bが計測し、電線3Tに流れる電流を電流計測部8cが計測する。ただし、本開示では、少なくとも一部の電流計測部8が誤って設置される場合も想定する。例えば、電線3Rに流れる電流を電流計測部8cが計測し、電線3Tに流れる電流を電流計測部8aが計測する、というような場合も想定する。このような場合は、電流I3は電線3Rに流れる電流の計測値となり、電流I1は電線3Tに流れる電流の計測値となる。
【0031】
複数の電流計測部8は、計測した電流I1~I3に関する電流情報を、電力システム1の取得部11に出力する。電流情報は、電流I1、電流I2及び電流I3の電流値並びに位相に関する情報と、計測時刻に関する情報と、を含む。
【0032】
なお、図1とは異なり、例えば、電線3R及び電線3Nに電気的に接続される回路として、複数の第1分岐回路6aが並列的に接続される場合、それぞれの第1分岐回路6aに流れる分岐電流を計測できる箇所に電流計測部8を設置することが好ましい。電線3S及び電線3Nに電気的に接続される回路として複数の第2分岐回路6bが並列的に接続される場合、及び、電線3T及び電線3Nに電気的に接続される回路として複数の第3分岐回路6cが並列的に接続される場合も同様である。
【0033】
図4に、分電盤4のキャビネット9及びキャビネット9に収容される主幹ブレーカ5等の各構成を図示する。なお、図4は、分電盤4の構成の一例であって、主幹ブレーカ5等の配置及び形状等は図4によって限定されない。また、以下の説明では、上下、左右及び前後の方向を用いて分電盤4の各構成を説明するが、分電盤4の使用方向は、特に限定されない。
【0034】
キャビネット9の形状は、直方体状である。分電盤4は、第1取付部材41と、第2取付部材42と、2つのフレーム43と、4つ(図4では1つのみを図示)の導電バー44と、を有する。これらは、キャビネット9の内部に配置されている。
【0035】
第1取付部材41及び第2取付部材42は、金属板である。第1取付部材41及び第2取付部材42の平面視形状は、矩形状である。
【0036】
2つのフレーム43は、金属製である。2つのフレーム43は、上下方向に沿った棒状に形成されている。2つのフレーム43は、左右方向に間隔をあけて対向するように配置されている。第1取付部材41及び第2取付部材42は、2つのフレーム43間に跨って取り付けられている。第1取付部材41及び第2取付部材42は、2つのフレーム43に対して、例えばねじで固定されている。
【0037】
第1取付部材41には、主幹ブレーカ5が取り付けられている。第2取付部材42には、複数の分岐回路6の各々の分岐ブレーカ61が取り付けられている。
【0038】
4つの導電バー44は、前後方向に間隔をあけて並んでいる。4つの導電バー44は、4つの電線3と一対一で対応している。各電線3は、対応する導電バー44を介して、分岐ブレーカ61に電気的に接続されている。
【0039】
(4)電力システム
電力システム1は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムを、コンピュータシステムのプロセッサが実行することにより、電力システム1の少なくとも一部の機能が実現される。プログラムは、メモリに記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0040】
図1に示すように、電力システム1は、処理部10と、通信部17と、記憶部18と、提示システム19と、を備える。
【0041】
(4.1)通信部
通信部17は、通信インタフェース装置を含んでいる。通信部17は、通信インタフェース装置を介して、電圧計測部7及び複数の電流計測部8と通信可能である。本開示でいう「通信可能」とは、有線通信又は無線通信の適宜の通信方式により、直接的、又はネットワーク若しくは中継器等を介して間接的に、信号を授受できることを意味する。通信部17は、電圧計測部7から電圧情報を取得し、複数の電流計測部8から電流情報を取得する。
【0042】
(4.2)記憶部
記憶部18は、ハードディスクドライブ(HDD)又はソリッドステートドライブ(SSD)等によって構成される不揮発性の記憶装置である。記憶部18は、プログラム及びデータ等を記憶する。例えば記憶部18には、電圧電流情報21、設定情報22、及び算出値情報23等が記憶される。
【0043】
電圧電流情報21は、電圧計測部7で計測された電圧V1~V3に関する電圧情報と、複数の電流計測部8で計測された電流I1~I3に関する電流情報と、を含む。
【0044】
算出値情報23は、複数の電線3から電力の供給先へ供給される電力に関する情報である。算出値情報23は、後述する第2算出部122によって算出される。本実施形態では、電力の供給先は、複数の分岐回路6に設けられた各種の機器(負荷、若しくは、蓄電池)である。以下では、電力の供給先へ供給される電力を、供給電力とも称す。また、以下では、電力の供給先は負荷であると仮定するため、供給電力は、負荷での消費電力である。算出値情報23は、供給電力を時間積分した電力量に関する情報を含んでいてもよい。
【0045】
設定情報22は、第2算出部122が、電力の供給先(各分岐回路6)への供給電力を電圧電流情報21に基づいて算出する際の演算設定に関する情報である。例えば設定情報22は、電流計測部8a、8b、8cとR、S、T相との関係を表す情報である。設定情報22によってR相と対応付けられた電流計測部8で計測された電流は、第2算出部122により電圧V1と乗算されて、これにより、R相の電力が算出される。設定情報22によってS相と対応付けられた電流計測部8で計測された電流は、第2算出部122により電圧V2と乗算されて、これにより、S相の電力が算出される。設定情報22によってT相と対応付けられた電流計測部8で計測された電流は、第2算出部122により電圧V3と乗算されて、これにより、T相の電力が算出される。そのため、設定情報22は、供給電力を算出するための電圧V1~V3と電流I1~I3との組合せを決定する情報でもある。
【0046】
(4.3)提示システム
提示システム19は、表示部191と、判定提示部192と、判断提示部193と、電力提示部194と、操作部195と、を含む。
【0047】
表示部191は、表示処理部13の指令に基づいて、複数の電線3間の電圧の位相と複数の電線3の各々に流れる電流の位相との関係を示すベクトル図を表示する(図2図3参照)。表示部191は、例えば、ディスプレイを有し、ディスプレイにベクトル図を表示する。
【0048】
判定提示部192は、後述する判定部14の判定結果を提示する。判定部14の判定結果は、複数の電流計測部8の設置状況に関する判定結果である。判定提示部192は、例えば、ディスプレイを有し、ディスプレイに判定結果を表示する。「表示」は、提示の一態様である。
【0049】
判断提示部193は、後述する判断部15の判断結果を提示する。判断部15の判断結果は、少なくとも1つの電流計測部8の設置状況の異常への対処方法に関する判断結果である。判断提示部193は、例えば、ディスプレイを有し、ディスプレイに判断結果を提示する。「表示」は、提示の一態様である。
【0050】
電力提示部194は、後述する第2算出部122で算出された、複数の電線3から電力の供給先へ供給される電力(供給電力)に関する情報を提示する。当該情報は、複数の電線3から電力の供給先へ供給される電力量に関する情報を含んでいてもよい。電力提示部194は、例えば、ディスプレイを有し、ディスプレイに情報を提示する。「表示」は、提示の一態様である。
【0051】
なお、表示部191、判定提示部192、判断提示部193及び電力提示部194のうち2つ以上が、1つのディスプレイにより構成されていてもよい。また、例えば、ディスプレイの画面が複数の領域に分割されていて、図3のように、一部の領域が、ベクトル図を表示する表示部191として用いられてもよい。さらに、図3のように、別の一部の領域が、判定結果を表示する判定提示部192として用いられ、別の一部の領域が、判断結果を表示する判断提示部193として用いられてもよい。さらに、別の一部の領域が、電力に関する情報を表示する電力提示部194として用いられてもよい。あるいは、操作部195への操作に応じて、ディスプレイに表示される情報がベクトル図と、判定結果と、判断結果と、電力に関する情報とで交互に切り替わってもよい。
【0052】
また、判定提示部192、判断提示部193及び電力提示部194は、判定結果、判断結果及び電力に関する情報を視覚的に表示する構成に限定されない。判定提示部192、判断提示部193及び電力提示部194は、例えば、判定結果、判断結果及び電力に関する情報を音(音声を含む)により出力してもよい。音による出力は、提示の一態様である。判定提示部192、判断提示部193及び電力提示部194のうち少なくとも1つは、音による出力を実現するためのスピーカ又はブザー等を有していてもよい。
【0053】
操作部195は、ユーザの操作を受け付ける。操作部195は、例えば、釦、ポインティングデバイス、タッチパネル又はタッチパネルディスプレイ等を有する。提示システム19は、操作部195への操作に応じて情報を提示する。例えば、操作部195に特定の操作がされると、表示部191がベクトル図を表示する。
【0054】
提示システム19は判定結果及び判断結果を提示するだけではなく、ベクトル図を表示するので、ユーザは、判定結果及び判断結果が信頼できるか否かを、ベクトル図から判断することができる。
【0055】
(4.4)処理部
処理部10は、1以上のプロセッサを含む。処理部10は、取得部11と、第1算出部121と、第2算出部122と、表示処理部13と、判定部14と、判断部15と、変更部16と、を含む。なお、これらは、処理部10によって実現される機能を示しているに過ぎず、必ずしも実体のある構成を示しているわけではない。
【0056】
取得部11は、電圧計測部7及び複数の電流計測部8から、電圧電流情報21を取得する。取得部11は、通信部17を介して、有線又は無線により、電圧電流情報21を取得する。取得部11は、取得した電圧電流情報21を記憶部18に記憶させる。電圧電流情報21は、電力システム1が各分岐回路6への供給電力を算出する際、及び、複数の電流計測部8の設置状況を判定する際に使用される情報である。
【0057】
設置状況は、例えば、各電流計測部8が電線3に流れる電流を計測可能な位置に設置されているか否か、各電流計測部8がどの位置に設置されているか、及び、各電流計測部8がどの向きに設置されているか、の情報のうち少なくとも1つを含む。
【0058】
第1算出部121は、取得部11で取得された電圧電流情報21に基づいて、電圧V1~V3の位相及び電流I1~I3の位相を算出する。
【0059】
第2算出部122は、取得部11で取得された電圧電流情報21に基づいて、供給電力を算出する。設定情報22に応じて、第2算出部122が供給電力を算出する際に参照する電圧V1~V3と電流I1~I3との組合せが決定される。
【0060】
表示処理部13は、ベクトル図を提示システム19の表示部191に表示させる。
【0061】
判定部14は、取得部11で取得された電圧電流情報21に基づいて複数の電流計測部8の設置状況を判定する。判定部14による判定の手法の詳細については、後述する。
【0062】
判断部15は、判定部14が少なくとも1つの電流計測部8の設置状況を異常と判定した場合に、電圧電流情報21に基づいて異常への対処方法を判断する。
【0063】
変更部16は、複数の電線3から電力の供給先へ供給される電力(供給電力)の算出に係る設定を、判断部15の判断結果に基づいて変更する。
【0064】
判定部14が少なくとも1つの電流計測部8の設置状況を異常であると判定した場合、判断部15は、設置状況の異常への対処方法について判断する判断処理を行う。判断処理では、判断部15は、複数の電流計測部8の設置状況を、第1状況と第2状況とに区別して判断する。第1状況とは、設定情報22を変更することで複数の電流計測部8の誤設置への対処が可能な電流計測部8の設置状況である。また、第2状況とは、設定情報22を変更することで複数の電流計測部8の誤設置への対処が不可能な電流計測部8の設置状況である。例えば、いずれかの電流計測部8の取付向きが誤っている誤設置の場合、その電流計測部8に対応する電流の計測値に-1を掛ける演算を行うことで、第2算出部122は正しい供給電力を算出することができる。すなわち、設定情報22に対して、該当する電流計測部8の取付向きに関する変更を行うことで、複数の電流計測部8の誤設置に対処することが可能である。そのため、該当する電流計測部8の取付向きに関する誤設置の場合、判断部15は、電流計測部8の設置状況が第1状況であると判断する。つまり、この場合、判断部15は、異常への対処方法が、「設定情報22に対して、該当する電流計測部8の取付向きに関する変更を行うこと」であると判断する。
【0065】
また、例えば、電流I1を計測するための電流計測部8aと、電流I2を計測するための電流計測部8bとの取付位置が逆になっているような、取付位置の組合せに関する誤設置が発生し得る。このような誤設置の場合、電流計測部8aが計測した計測値と、電流計測部8bが計測した計測値とを入れ替えて演算を行うことで、第2算出部122は正しい供給電力を算出することができる。すなわち、設定情報22に対して、電圧計測部7によって計測される電圧V1~V3と複数の電流計測部8によって計測される電流I1~I3との組合せに関する変更を行うことで、複数の電流計測部8の誤設置に対処することが可能である。そのため、複数の電流計測部8の取付位置の組合せに関する誤設置の場合、判断部15は、複数の電流計測部8の設置状況が第1状況であると判断する。つまり、この場合、判断部15は、異常への対処方法が、「設定情報22に対して、電圧計測部7によって計測される電圧V1~V3と複数の電流計測部8によって計測される電流I1~I3との組合せに関する変更を行うこと」であると判断する。
【0066】
一方で、施工業者が電流I1を計測するための電流計測部8aを設置し忘れてしまったような誤設置の場合、第2算出部122は、第1分岐回路6aの供給電力を算出することができない。そのため、このような誤設置の場合、判断部15は、複数の電流計測部8の設置状況が第2状況であると判断する。つまり、この場合、判断部15は、異常への対処方法が、「複数の電流計測部8を正しく設置すること」であると判断する。また、施工業者が例えば、R相の電線3Rに電流計測部8aだけではなく、電流計測部8bをも設置してしまったような誤設置の場合も同様である。
【0067】
判定部14が複数の電流計測部8の設置状況を判定すると、判定提示部192は、判定結果に関する情報を提示する。また、判断部15が設置状況の異常への対処方法について判断すると、判断提示部193は、判断結果に関する情報を提示する。さらに、判断部15は、電流計測部8の設置状況が第1状況であると判断した場合、設定情報22を変更するための変更指示を、変更部16に出力する。
【0068】
(5)処理
(5.1)ベクトル図の表示
図2図3に示すように、表示部191は、電圧電流情報21に基づいて、ベクトル図を表示する。図2図3において、V、V、Vは順に、電圧V1、V2、V3に対応するベクトルであり、I、I、Iは順に、電流I1、I2、I3に対応するベクトルである。
【0069】
ベクトル図は、少なくとも電圧の位相と電流の位相との関係を示していればよく、電圧の大きさ及び電流の大きさを示していることは、必須ではない。そのため、各ベクトルの長さは、電圧の大きさ及び電流の大きさと対応していなくてよい。図2図3では、各ベクトルの長さを一定の長さとして表示している。これにより、電流計測部8の設置状況を判定するために必須ではない情報が除外され、ユーザが判定を行いやすくなる。
【0070】
複数の電流計測部8の設置状況と、設定情報22と、の対応が正しい場合は、第2算出部122は、設定情報22と電圧電流情報21とに基づいて供給電力を正常に算出できる。図2は、複数の電流計測部8の設置状況と、設定情報22と、の対応が正しい場合のベクトル図である。例えば、図1に示す設置状況において、電流計測部8aで計測された電流が、R相の電線3Rに流れる電流I1として処理され、電流計測部8bで計測された電流が、S相の電線3Sに流れる電流I2として処理され、電流計測部8cで計測された電流が、T相の電線3Tに流れる電流I3として処理されるように設定情報22が定められていれば、複数の電流計測部8の設置状況と、設定情報22と、の対応が正しい。
【0071】
一方で、いずれかの電流計測部8の設置状況と、設定情報22と、の対応が誤っている場合は、第2算出部122は、設定情報22と電圧電流情報21とに基づいて供給電力を正常に算出することができない。図3は、電流計測部8a、8cの設置状況と、設定情報22と、の対応が誤っている場合のベクトル図である。例えば、図1に示す設置状況において、電流計測部8aで計測された電流が、T相の電線3Tに流れる電流I3として処理され、電流計測部8bで計測された電流が、S相の電線3Sに流れる電流I2として処理され、電流計測部8cで計測された電流が、R相の電線3Rに流れる電流I1として処理されるように設定情報22が定められていれば、電流計測部8a、8cの設置状況と、設定情報22と、の対応が誤っている。
【0072】
また、いずれかの相における電流計測部8の設置状況が、例えば設置し忘れてある、というように誤っている場合は、設定情報22にかかわらず、第2算出部122は、設定情報22と電圧電流情報21とに基づいて供給電力を正常に算出することができない。
【0073】
図2に示すように、複数の電流計測部8の設置状況と、設定情報22と、の対応が正しい場合は、ベクトル図において、各電流は、例えば、電圧に対してある程度の遅れ位相となる。図3に示すように、いずれかの電流計測部8の設置状況と、設定情報22と、の対応が誤っている場合等には、ベクトル図において、一部の電流が、例えば、電圧に対して進み位相又は大幅な遅れ位相となる。そのため、表示部191に表示されたベクトル図を見たユーザは、位相差の大きさ、及び、電流が遅れ位相か進み位相か等を考慮して、自らの知見に基づいて、複数の電流計測部8の設置状況を判定することができる。例えば、ユーザは、複数の電流計測部8の設置状況が正常であるか否かを判定することができる。複数の電流計測部8の設置状況が正常であるとは、複数の電流計測部8の設置状況と、設定情報22と、の対応が正しいことを言う。
【0074】
(5.2)複数の電流計測部の設置状況の判定及び判断
複数の電流計測部8の設置状況の判定は、ユーザが自ら行うだけではなく、判定部14の判定処理により自動で行うことも可能である。以下では、判定部14による判定処理について説明する。判定処理は、例えば、複数の電流計測部8が設置された直後のタイミング、又は、日付が変わるタイミング等の所定のタイミングで行われる。
【0075】
本実施形態では、設定情報22が変更部16によって一度も変更されていない状態であるデフォルトの状態である場合の判定処理について説明する。設定情報22がデフォルトの状態では、電流計測部8aがR相と対応付けられ、電流計測部8bがS相と対応付けられ、電流計測部8cがT相と対応付けられている。
【0076】
つまり、設定情報22がデフォルトの状態では、第2算出部122は、電圧V1と電流計測部8aで計測した電流I1とを乗算することで第1分岐回路6aへの供給電力を算出する。また、第2算出部122は、電圧V2と電流計測部8bで計測した電流I2とを乗算することで第2分岐回路6bへの供給電力を算出する。また、第2算出部122は、電圧V3と電流計測部8cで計測した電流I3とを乗算することで第3分岐回路6cへの供給電力を算出する。
【0077】
また、電力システム1は、電流計測部8a、8b、8cを例えば、電流計測部8a、8b、8cを有線接続するために電力システム1に設けられたポート(端子)の、ポート番号により識別している。つまり、電流計測部8a、8b、8cがそれぞれ電線3R、3S、3Tのいずれに設置されているかは、電力システム1において未知である。
【0078】
判定部14は、判定処理を開始すると、図5に示すように、記憶部18に記憶された電圧電流情報21及び設定情報22を参照し、少なくとも1つの電流計測部8の設置状況が異常であるか否かの判定を行う(ステップS10)。設定情報22がデフォルトの状態では、判定部14は、各分岐回路6への供給電力を算出するために必要な、電圧V1及び電流I1のペアと、電圧V2及び電流I2のペアと、電圧V3及び電流I3のペアと、のそれぞれのペアが所定の異常条件を満たしているか否かを判定する。異常条件を満たす電圧及び電流のペアがあった場合、判定部14は設置状況が異常であると判定する。ここでは、第1分岐回路6aへの供給電力を算出するために必要な電圧V1及び電流I1のペアが異常条件を満たしているか否かを判定する手法について説明するが、電圧V2及び電流I2のペアと、電圧V3及び電流I3のペアとに対しても同様の判定が行われる。
【0079】
判定部14は、位相情報と力率情報とのうちの少なくとも1つに基づいて、電流計測部8の設置状況が異常であるか否かの判定を行う。ここで、位相情報は、電圧電流情報21から得られる情報であって、電圧V1~V3及び電流I1~I3の位相に関する情報である。また、力率情報は、電圧電流情報21から得られる情報であって、電圧V1~V3及び電流I1~I3に対応した電力の、力率に関する情報である。言い換えると、力率情報は、電圧電流情報21から得られる情報であって、交流電力の力率に関する情報である。本実施形態では、位相情報及び力率情報は、処理部10によって電圧電流情報21から得られる情報である。しかし、位相情報及び力率情報は、電圧計測部7及び電流計測部8等の、処理部10以外の構成によって電圧電流情報21から得られる情報であってもよい。
【0080】
まず、判定部14が、位相情報に基づいて電流計測部8aの設置状況が異常であるか否かを判定する場合について説明する。電流計測部8aの設置状況が正常であれば、電圧V1及び電流I1は同相の電圧及び電流であるため、電圧V1の位相角と電流I1の位相角には所定の相関性がある。言い換えると、電圧V1の位相角と電流I1の位相角に所定の相関性がない場合、電流計測部8aの設置状況が異常であると言える。そこで判定部14は、位相情報に含まれる電圧V1と電流I1との位相差に関する位相差情報に基づいて、電圧V1と電流I1との位相差が所定の範囲内か否かを確認する。本実施形態では、電圧V1に対する電流I1の位相差が「-60度以上0度以下」の範囲外である場合、判定部14は、電圧V1及び電流I1の組合せが異常条件を満たすと判定する。なお、本実施形態では、位相差情報は、電力システム1が電圧電流情報21から得る情報である。
【0081】
また、判定部14は、位相情報に含まれる「進み遅れ情報」に基づいて、電圧V1及び電流I1のペアが異常条件を満たすか否かを確認してもよい。進み遅れ情報は、電圧V1の位相に対する電流I1の位相の進み又は遅れに関する情報である。進み遅れ情報は、電圧V1の位相に対して電流I1の位相が進んでいるか否か、及び、遅れているか否か、に関する情報を含む。一般的に、戸建住宅などの住宅では電流I1の位相は、電圧V1の位相に対して遅れる。そのため、電流I1の位相が電圧V1の位相に対して進んでいる場合、少なくとも1つの電流計測部8の設置状況が異常であると判定できる。電流I1の位相が電圧V1の位相に対して進んでいる場合、判定部14は電圧V1及び電流I1のペアが異常条件を満たすと判定してもよい。なお、本実施形態では、進み遅れ情報は、電力システム1が電圧電流情報21から得る情報である。
【0082】
次に、判定部14が、力率情報に基づいて電流計測部8aの設置状況が異常であるか否かを判定する場合について説明する。電流計測部8aの設置状況が正常であれば、電圧V1及び電流I1は同相であるため、電圧V1と電流I1とに対応する電力(電圧V1と電流I1とを乗算して求められる電力)の力率は所定の値以上となる。言い換えると、電圧V1と電流I1とに対応する電力の力率が所定の値未満である場合、電流計測部8aの設置状況が異常であると言える。そこで判定部14は、力率情報に基づいて、電圧V1と電流I1とに対応する電力の力率が所定の値未満であるか否かを確認する。本実施形態では、電圧V1と電流I1とに対応する電力の力率が0.5未満である場合、判定部14は、電圧V1及び電流I1のペアが異常条件を満たすと判定する。
【0083】
また、判定部14は、位相情報又は力率情報に基づいて電流計測部8aの設置状況を判定する際、電流値情報を参照し、電流I1の値が所定の値以上であることを条件として判定処理を行うことが好ましい。電流I1の値が所定の値未満である場合、ノイズの影響により、判定部14が判定処理を正確に行えない恐れがあるからである。本実施形態では、判定部14は、電流I1の値が1[A]以上であることを条件に、電圧V1及び電流I1のペアが異常条件を満たすか否かを判定する。なお、電流値情報は、電圧電流情報21から得られる情報であって、複数の電流計測部8によって計測される電流I1~I3の値に関する情報である。
【0084】
判定部14は、電圧V2及び電流I2のペアと、電圧V3及び電流I3のペアと、においても同様の判定を行う。そして、電圧及び電流の3つのペアのうちどれか1つのペアでも異常条件を満たす場合、判定部14は、少なくとも1つの電流計測部8の設置状況が異常であると判定する(ステップS11でYES)。その後、判定部14は処理をステップS12に進める。一方、電圧及び電流の3つのペアがいずれも異常条件を満たさない場合、判定部14は、設置状況が正常である(異常なし)と判定する(ステップS11でNO)。その後、判定部14は、判定処理を終了する。
【0085】
ステップS12において、判定部14は、複数の電流計測部8の取付向き確認処理を行う。取付向き確認処理について、図6を参照しつつ説明する。まず判定部14は、電圧電流情報21に基づいて、電圧V1~V3と電流I1~I3とによって構成される電圧及び電流の全てのペアのそれぞれが第1条件を満たすか否かについて確認する(ステップS31)。ここで、「全てのペア」とは、本実施形態においては、電圧V1及び電流I1と、電圧V1及び電流I2と、電圧V1及び電流I3と、電圧V2及び電流I1と、電圧V2及び電流I2と、電圧V2及び電流I3と、電圧V3及び電流I1と、電圧V3及び電流I2と、電圧V3及び電流I3との9つのペアのことである。
【0086】
判定部14は、全てのペアのうちに、第1条件を満たすペアがあるか否かを確認する。判定部14は、位相情報と力率情報とのうちの少なくとも1つに基づいて、全てのペアのうちに第1条件を満たすペアがあるか否かを確認する。
【0087】
まず、判定部14が、位相情報に含まれる位相差情報に基づいて、全てのペアのうちに第1条件を満たすペアがあるか否かを確認する場合について説明する。本実施形態では、電圧に対する電流の位相差が、「0度以上60度以内」である場合、判定部14は第1条件が満たされていると判定する。
【0088】
次に、判定部14が、力率情報及び進み遅れ情報に基づいて、全てのペアのうちに第1条件を満たすペアがあるか否かを確認する場合について説明する。本実施形態では、電圧と電流とに対応する電力の力率が0.5以上であり、電圧に対して電流が進んでいる場合に、判定部14は第1条件が満たされていると判定する。
【0089】
また、判定部14は、電圧及び電流のペアが第1条件を満たすか否かを判定する際、電流値情報に基づいて電流の値が所定の値以上であることを条件にして判定することが好ましい。電流の値が所定の値未満である場合、ノイズの影響により、判定部14が判定処理を正確に行えない恐れがあるからである。本実施形態では、判定部14は、電流の値が1[A]以上であることを条件に、電圧及び電流のペアが第1条件を満たすか否かを判定する。
【0090】
全てのペアのうちに第1条件を満たすペアがなかった場合(ステップS32でNO)、判定部14は、複数の電流計測部8の取付向きは正しいと判断して取付向き確認処理(ステップS12)を終了する。一方、全てのペアのうちに第1条件を満たすペアがあった場合(ステップS32でYES)、判定部14は、第1条件を満たすペアの電流を計測している電流計測部8の取付向きが誤っていると判定する。例えば、電圧V1及び電流I3のペアと、電圧V2と電流I1のペアとが第1条件を満たしていた場合、判定部14は、電流I3を計測している電流計測部8c、及び、電流I1を計測している電流計測部8aの取付向きが誤っていると判定する。
【0091】
判定部14は、取付向きが誤っていると判断した電流計測部8に関する設定情報を変更するための変更指示を、変更部16に出力する(ステップS33)。その後、判定部14は取付向き確認処理(ステップS12)を終了する。変更部16によって、設定情報は、取付向きが誤っていると判断された電流計測部8により計測される電流値の正負を反転させる内容に変更される。具体的には、設定情報は電流値に-1を乗算するように変更される。設定情報の内容が変更されることにより、電流計測部8の取付向きに関する誤設置に対処することできる。
【0092】
図5に戻り、判定部14は、変更部16によって設定情報が変更されたか否かを確認する(ステップS13)。具体的には、判定部14は、変更部16によっていずれかの電流計測部8の取付向きに関する設定情報の変更が行われたか否かを確認する。変更部16によって設定情報の変更が行われていない場合(ステップS13でNO)、処理はステップS16までスキップされる。一方、変更部16によって設定情報の変更が行われている場合(ステップS13でYES)、判定部14は、少なくとも1つの電流計測部8の設置状況が異常であるか否かの判定を行う(ステップS14)。この処理はステップS10の処理と同じ処理である。すなわち、判定部14は、変更部16によって電流計測部8の取付向きに関する設定情報の変更が行われた後、複数の電流計測部8の設置状況を再判定する。変更部16によって設定情報が変更された後に、判定部14が複数の電流計測部8の設置状況を再判定することにより、設定情報の変更によって複数の電流計測部8の誤設置に対処できたか否かを判定することができる。なお、ステップS14の処理の内容はステップS10と同様であるため、説明を省略する。
【0093】
判断部15は、複数の電流計測部8の設置状況が正常である(異常なし)と再判定すると(ステップS15でNO)、複数の電流計測部8の設置状況が第1状況であると判定する(ステップS17)。そして、判定部14は判定処理を終了する。一方、判定部14は、少なくとも1つの電流計測部8の設置状況が異常であると再判定すると(ステップS15でYES)、電圧及び電流の組合せ確認処理を行う(ステップS16)。
【0094】
電圧及び電流の組合せ確認処理について、図7を参照しつつ説明する。判定部14は、第1分岐回路6a、第2分岐回路6b及び第3分岐回路6cへの供給電力を算出する際に組合せ得る全ての電圧及び電流の組合せの中で、第2条件を満たす組合せが存在するか否かを確認する(ステップS41)。
【0095】
ここで、「全ての電圧及び電流の組合せ」には、以下に示す6つの組合せが含まれる。「全ての電圧及び電流の組合せ」に含まれる1つ目の組合せは、電圧V1及び電流I1のペアと、電圧V2及び電流I2のペアと、電圧V3及び電流I3のペアとによって構成される組合せである。「全ての電圧及び電流の組合せ」に含まれる2つ目の組合せは、電圧V1及び電流I1のペアと、電圧V2及び電流I3のペアと、電圧V3及び電流I2のペアとによって構成される組合せである。「全ての電圧及び電流の組合せ」に含まれる3つ目の組合せは、電圧V1及び電流I2のペアと、電圧V2及び電流I1のペアと、電圧V3及び電流I3のペアとによって構成される組合せである。「全ての電圧及び電流の組合せ」に含まれる4つ目の組合せは、電圧V1及び電流I2のペアと、電圧V2及び電流I3のペアと、電圧V3及び電流I1のペアとによって構成される組合せである。「全ての電圧及び電流の組合せ」に含まれる5つ目の組合せは、電圧V1及び電流I3のペアと、電圧V2及び電流I1のペアと、電圧V3及び電流I2のペアとによって構成される組合せである。「全ての電圧及び電流の組合せ」に含まれる6つ目の組合せは、電圧V1及び電流I3のペアと、電圧V2及び電流I2のペアと、電圧V3及び電流I1のペアとによって構成される組合せである。
【0096】
判定部14は、位相情報と力率情報とのうちの少なくとも1つに基づいて、全ての電圧及び電流の組合せのうちに第2条件を満たす組合せがあるか否かを確認する。
【0097】
まず、判定部14が、位相情報に含まれる位相差情報に基づいて、全ての電圧及び電流の組合せのうちに第2条件を満たす組合せがあるか否かを確認する場合について説明する。電圧及び電流の3つのペアの位相差が所定の範囲内である組合せは、判定部14によって第2条件を満たすと判定される。本実施形態では、判定部14は、電圧に対する電流の位相差が「-60度以上0度以下」の範囲内である場合、電圧と電流との位相差が所定の範囲内であると判定する。
【0098】
次に、判定部14が、力率情報及び進み遅れ情報に基づいて、全ての電圧及び電流の組合せのうちに第2条件を満たす組合せがあるか否かを確認する場合について説明する。判定部14は、電圧及び電流の3つのペアにそれぞれ対応する電力の力率が所定の値以上であり、電圧の位相に対して電流の位相が遅れている組合せを、第2条件を満たすと判定する。本実施形態では、所定の値は0.5である。
【0099】
第2条件を満たす組合せが存在する場合(ステップS41でYES)、判断部15は、複数の電流計測部8の設置状況が第1状況であると判断する(ステップS42)。そして、判定部14は、電圧及び電流の組合せ確認処理(ステップS16)を終了する。一方、第2条件を満たす組合せが存在しない場合(ステップS41でNO)、判断部15は、複数の電流計測部8の設置状況が第2状況であると判断する(ステップS43)。そして、判定部14は、電圧及び電流の組合せ確認処理(ステップS16)を終了する。
【0100】
図5に戻り、設置状況が第1状況である場合(ステップS18でYES)、判断部15は、設定情報に含まれる電圧と電流の組合せに関する情報を変更するための変更指示を、変更部16に出力する(ステップS19)。変更指示を入力した変更部16は、変更指示に基づいて、設定情報に含まれる電圧と電流との組合せに関する情報を変更する。すなわち、判断部15にて複数の電流計測部8の設置状況が第1状況であると判断された場合、変更部16は、設定情報を変更する。これにより、設定情報に含まれる電圧と電流との組合せに関する情報は、第2条件を満たす組み合わせへと変更される。したがって、設置状況が第1状況である場合に、ユーザが設定情報を変更したり、複数の電流計測部8を設置し直したりする必要がなくなる。変更部16によって設定情報が変更されると、判定部14による判定処理は終了する。
【0101】
その一方で、設置状況が第1状況ではない場合、すなわち第2状況である場合(ステップS18でNO)、表示処理部13は、判断提示部193に判断結果を通知させる(ステップS20)。本実施形態では、表示部191が判定提示部192及び判断提示部193を兼ねており、判断結果と判定結果とを共に表示する。具体的には、電力システム1は、メッセージを判定提示部192(判断提示部193)に表示させることで(図3参照)、ユーザに判定結果及び判断結果を通知する。ユーザは、複数の電流計測部8を設置し直すことで、設置状況を正常化させることができる。
【0102】
判定提示部192が提示(表示)する判定結果は、例えば、少なくとも1つの電流計測部8の設置状況が、正常であるか否かの情報を含む。判定結果は、複数の電流計測部8のうちいずれの電流計測部8の設置状況が異常であるか(又は、正常であるか)の情報を含んでいてもよい。判定提示部192は、例えば、電流計測部8a、8b、8cを有線接続するために電力システム1に設けられたポート(端子)の、ポート番号により、電流計測部8a、8b、8cを区別して提示してもよい。
【0103】
判断提示部193が提示する判断結果は、例えば、少なくとも1つの電流計測部8の設置状況の異常への対処方法を示す情報を含む。例えば、判断部15が複数の電流計測部8の設置状況を第1状況であると判断した場合に、判断提示部193は、設定情報22を変更した旨を示す提示をする。また、例えば、判断部15が複数の電流計測部8の設置状況を第2状況であると判断した場合に、判断提示部193は、複数の電流計測部8の再設置を促す提示をする。判断提示部193が提示する判断結果は、複数の電流計測部8のうちいずれの電流計測部8が再設置を要するかの情報を含んでいてもよい。判断提示部193は、例えば、電流計測部8a、8b、8cを有線接続するために電力システム1に設けられたポート(端子)の、ポート番号により、電流計測部8a、8b、8cを区別して判断結果を提示してもよい。
【0104】
判定提示部192(判断提示部193)にて判定結果及び判断結果が提示された後、判定部14は判定処理を終了する。
【0105】
また、設定情報22が変更される度に、表示処理部13は、表示部191に表示されるベクトル図を更新する。ユーザは、更新後のベクトル図を参照して、設置状況を判断することができる。
【0106】
(実施形態1の変形例)
以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下の変形例は、適宜組み合わせて実現されてもよい。
【0107】
電圧計測部7及び複数の電流計測部8は、需要家施設に設置されることに限定されず、発電設備に設置されて、発電設備から出力される電圧及び電流を計測してもよい。この場合に、電力の供給先は、需要家設備に設置された機器(負荷又は蓄電池等)であってもよいし、商用電力系統に設置された機器であってもよい。
【0108】
電圧計測部7は、相電圧を計測することに限定されず、線間電圧を計測してもよい。
【0109】
交流電源2の結線方式は、実施形態のようにY結線に限定されず、Δ結線であってもよい。複数の電流計測部8は、相電流を計測してもよいし、線電流を計測してもよい。
【0110】
複数の電流計測部8のうち少なくとも1つは、実施形態1のように主幹ブレーカ5の2次側に設置されることに代えて、1次側に設置されていてもよいし、分岐回路6に設置されていてもよい。
【0111】
電力システム1が第1算出部121を備えることは必須ではなく、電圧V1~V3の位相を電圧計測部7が算出してもよく、電流I1~I3の位相を複数の電流計測部8が算出してもよい。
【0112】
判定部14の判定結果は、ユーザに提示されることに限定されず、記憶部18に記憶されてもよいし、電力システム1の外部の装置(コンピュータサーバ等)へ送信されてもよい。
【0113】
判断部15の判断結果は、ユーザに提示されることに限定されず、記憶部18に記憶されてもよいし、電力システム1の外部の装置(コンピュータサーバ等)へ送信されてもよい。
【0114】
変更部16は、ユーザの選択に応じて、設定情報22を変更してもよい。例えば、判断部15が複数の電流計測部8の設置状況を第1状況であると判断した場合に、判断提示部193は、設定情報22を変更するか否かを尋ねるメッセージを提示する。これに応じて、ユーザが操作部195に操作をして設定情報22の変更を承諾すると、変更部16は、設定情報22を変更する。その後、ユーザは、表示部191に表示されるベクトル図を見て、設置状況が正常になったか否かを確認することができる。さらに、ユーザは、操作部195に操作をして、設定情報22を変更前の状態に戻すことも可能である。
【0115】
表示部191は、ベクトル図に加えて、複数の電流計測部8の設置状況の確認を促すメッセージを表示してもよい。また、表示部191は、ベクトル図に加えて、複数の電流計測部8の設置状況の確認手法を説明する表示をしてもよい。
【0116】
本開示における電力システム1は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における電力システム1としての機能の少なくとも一部が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0117】
また、電力システム1における複数の機能が、1つの装置に集約されていることは電力システム1に必須の構成ではなく、電力システム1の構成要素は、複数の装置に分散して設けられていてもよい。さらに、電力システム1の少なくとも一部の機能、例えば、処理部10の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。反対に、実施形態1のように、電力システム1の機能が、1つの装置に集約されていてもよい。
【0118】
(実施形態2)
以下、実施形態2に係る電力システム1Aについて、図8を用いて説明する。実施形態1と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0119】
本実施形態の電力システム1Aは、算出装置101と、提示端末102と、を備える。算出装置101は、少なくとも取得部11と、第1算出部121(以下、算出部121とも称す。)と、通信部17(以下、出力部17とも称す。)と、を含む。算出部121の機能は、実施形態1の第1算出部121と同様である。すなわち、算出部121は、取得部11で取得された電圧電流情報21に基づいて、複数の電線3間の電圧の位相及び複数の電線3の各々に流れる電流の位相を算出する。出力部17は、算出部121で算出された電圧の位相と電流の位相とを含む情報を出力する。出力部17が出力する情報は、具体的には、表示部191にベクトル図を表示するための情報を含む。また、出力部17が出力する情報は、判定部14の判定結果及び判断部15の判断結果を含んでいてもよい。提示端末102は、提示システム19の少なくとも一部の構成、及び、情報取得部196を含む。本実施形態の提示端末102は、提示システム19の全体を含む。情報取得部196は、例えば、通信インタフェース装置を含んでいる。情報取得部196は、通信インタフェース装置を介して、算出装置101の出力部17と通信可能である。情報取得部196は、出力部17から情報を取得する。提示端末102は、情報取得部196で取得した情報を提示システム19において提示する。
【0120】
算出装置101は、例えば、据え置き型のコンピュータシステムを含む。算出装置101は、例えば、複数の電線3が設けられた施設に設置される。提示端末102は、例えば、スマートフォン等の携帯電話、タブレット端末、又は、パーソナルコンピュータ等である。提示端末102は、ユーザが所有する。ユーザは、算出装置101から離れた場所で、提示端末102を用いて情報を得ることができる。例えば、ユーザは、提示端末102を用いて、ベクトル図(図2図3参照)と、判定部14の判定結果と、判断部15の判断結果と、のうち少なくとも1つを得ることができる。
【0121】
また、提示端末102は、例えば、分電盤4のキャビネット9の外面に取り付けられてもよい。また、施設が例えば住宅である場合等に、提示端末102は、住宅の居住スペースに設置されてもよい。また、施設が例えば集合住宅である場合に、提示端末102は、集合住宅の管理人室に設置されてもよい。
【0122】
(実施形態3)
以下、実施形態3に係る電力計測システム103(図1参照)について説明する。実施形態1と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0123】
電力計測システム103は、電力システム1の取得部11を備える。電力計測システム103は、電圧計測部7と、(複数の)電流計測部8と、を更に備える。
【0124】
例えば、電力計測システム103は、実施形態1の電力システム1と、電圧計測部7と、複数の電流計測部8と、を備える。この場合、電力計測システム103は、取得部11、電圧計測部7及び複数の電流計測部8に加えて、提示システム19を更に備える。
【0125】
あるいは、電力計測システム103は、例えば、実施形態2の算出装置101と、電圧計測部7と、複数の電流計測部8と、を備える。この場合、提示システム19を備えた提示端末102は、電力計測システム103とは別の筐体に設けられる。また、この場合、電力計測システム103は、取得部11、電圧計測部7及び複数の電流計測部8に加えて、判定部14と判断部15とを更に備える。このように、電力計測システム103は、判定部14と、判断部15と、のうち少なくとも一方を更に備えていてもよい。
【0126】
電力計測システム103の複数の構成は、1つの装置に集約されていてもよい。あるいは、電力計測システム103の複数の構成は、複数の装置に分散して設けられていてもよい。
【0127】
電力システム1の少なくとも一部の機能は、電圧計測部7又は電流計測部8に備えられていてもよい。例えば、判定部14及び判断部15のうち少なくとも一方の機能が電圧計測部7又は電流計測部8に備えられていてもよい。提示システム19は、電圧計測部7又は電流計測部8で判定及び判断された結果をユーザに提示すればよい。
【0128】
(その他の変形例)
実施形態1~3において、分電盤4のキャビネット9(図4参照)は、電力システム1(又は1A)の少なくとも一部を収容していてもよい。また、実施形態3において、キャビネット9は、電力計測システム103の少なくとも一部を収容していてもよい。
【0129】
すなわち、本変形例において、分電盤4は、電力システム1(若しくは1A)、又は、電力計測システム103と、キャビネット9と、を備え、キャビネット9は、電力システム1(若しくは1A)又は電力計測システム103の少なくとも一部を収容する。本変形例によれば、電力システム1(若しくは1A)又は電力計測システム103の少なくとも一部の構成を、キャビネット9内に集約することができる。
【0130】
(まとめ)
以上説明した実施形態等から、以下の態様が開示されている。
【0131】
第1の態様に係る電力システム(1、1A)は、取得部(11)と、提示システム(19)と、を備える。取得部(11)は、複数の電線(3)間の電圧を計測する電圧計測部(7)、及び、複数の電線(3)の各々に流れる電流を計測する電流計測部(8)の計測結果を、電圧電流情報(21)として取得する。提示システム(19)は、情報を提示する。提示システム(19)は、表示部(191)を含む。表示部(191)は、取得部(11)で取得された電圧電流情報(21)に基づいて、ベクトル図を表示する。ベクトル図は、複数の電線(3)間の電圧の位相と複数の電線(3)の各々に流れる電流の位相との関係を示す。
【0132】
上記の構成によれば、表示部(191)は電圧の位相と電流の位相との関係をベクトル図により表示するため、電圧及び電流の数値のみが表示される場合と比較して、ユーザが電流計測部(8)の設置状況を判定しやすい。
【0133】
また、第2の態様に係る電力システム(1、1A)は、第1の態様において、判定部(14)を更に備える。判定部(14)は、取得部(11)で取得された電圧電流情報(21)に基づいて電流計測部(8)の設置状況を判定する。
【0134】
上記の構成によれば、電流計測部(8)の設置状況を自動で判定することができる。
【0135】
また、第3の態様に係る電力システム(1、1A)では、第2の態様において、提示システム(19)は、判定部(14)の判定結果を提示する判定提示部(192)を更に含む。
【0136】
上記の構成によれば、ユーザが判定部(14)の判定結果を知ることができる。
【0137】
また、第4の態様に係る電力システム(1、1A)は、第2又は第3の態様において、判断部(15)を更に備える。判断部(15)は、判定部(14)が電流計測部(8)の設置状況を異常と判定した場合に、電圧電流情報(21)に基づいて異常への対処方法を判断する。
【0138】
上記の構成によれば、対処方法を自動で判断することができる。
【0139】
また、第5の態様に係る電力システム(1、1A)は、第4の態様において、変更部(16)を更に備える。変更部(16)は、複数の電線(3)から電力の供給先へ供給される電力の算出に係る設定を、判断部(15)の判断結果に基づいて変更する。
【0140】
上記の構成によれば、電力の算出に係る設定を訂正することができる。
【0141】
また、第6の態様に係る電力システム(1、1A)では、第4又は第5の態様において、提示システム(19)は、判断部(15)の判断結果を提示する判断提示部(193)を更に含む。
【0142】
上記の構成によれば、ユーザが判断部(15)の判断結果を知ることができる。
【0143】
また、第7の態様に係る電力システム(1A)は、第1~6の態様のいずれか1つにおいて、算出装置(101)と、提示端末(102)と、を備える。算出装置(101)は、取得部(11)と、算出部(121)と、出力部(17)と、を含む。算出部(121)は、取得部(11)で取得された電圧電流情報(21)に基づいて、複数の電線(3)間の電圧の位相及び複数の電線(3)の各々に流れる電流の位相を算出する。出力部(17)は、算出部(121)で算出された電圧の位相と電流の位相とを含む情報を出力する。提示端末(102)は、提示システム(19)の少なくとも一部の構成、及び、出力部(17)から情報を取得する情報取得部(196)を含む。提示端末(102)は、情報取得部(196)で取得した情報を提示システム(19)において提示する。
【0144】
上記の構成によれば、ユーザは、算出装置(101)から離れた場所で、提示端末(102)を用いて情報を得ることができる。
【0145】
第1の態様以外の構成については、電力システム(1、1A)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【0146】
また、第8の態様に係る電力計測システム(103)は、第1~7の態様のいずれか1つに係る電力システム(1、1A)の取得部(11)を備える。電力計測システム(103)は、電圧計測部(7)と、電流計測部(8)と、を更に備える。
【0147】
上記の構成によれば、ユーザが電流計測部(8)の設置状況を判定しやすい。
【0148】
また、第9の態様に係る電力計測システム(103)は、第8の態様において、判定部(14)と、判断部(15)と、のうち少なくとも一方を更に備える。判定部(14)は、取得部(11)で取得された電圧電流情報(21)に基づいて電流計測部(8)の設置状況を判定する。判断部(15)は、判定部(14)が電流計測部(8)の設置状況を異常と判定した場合に、電圧電流情報(21)に基づいて異常への対処方法を判断する。
【0149】
上記の構成によれば、電圧計測部(7)及び電流計測部(8)を備えた電力計測システム(103)に、判定部(14)及び判断部(15)の少なくとも一方の機能を持たせることができる。
【0150】
第8の態様以外の構成については、電力計測システム(103)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【0151】
また、第10の態様に係る分電盤(4)は、第1~7の態様のいずれか1つに係る電力システム(1、1A)、又は、第8若しくは第9の態様に係る電力計測システム(103)と、キャビネット(9)と、を備える。キャビネット(9)は、電力システム(1、1A)又は電力計測システム(103)の少なくとも一部を収容する。
【0152】
上記の構成によれば、表示部(191)は電圧の位相と電流の位相との関係をベクトル図により表示するため、電圧及び電流の数値のみが表示される場合と比較して、ユーザが電流計測部(8)の設置状況を判定しやすい。
【0153】
また、第11の態様に係るプログラムは、コンピュータシステムの1以上のプロセッサに、取得処理と、表示処理と、を実行させるためのプログラムである。取得処理では、複数の電線(3)間の電圧を計測する電圧計測部(7)、及び、複数の電線(3)の各々に流れる電流を計測する電流計測部(8)の計測結果を、電圧電流情報(21)として取得する。表示処理では、取得処理で取得された電圧電流情報(21)に基づいて、ベクトル図を表示する。ベクトル図は、複数の電線(3)間の電圧の位相と複数の電線(3)の各々に流れる電流の位相との関係を示す。
【0154】
上記の構成によれば、表示部(191)は電圧の位相と電流の位相との関係をベクトル図により表示するため、電圧及び電流の数値のみが表示される場合と比較して、ユーザが電流計測部(8)の設置状況を判定しやすい。
【0155】
上記態様に限らず、実施形態に係る電力システム(1、1A)及び電力計測システム(103)の種々の構成(変形例を含む)は、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体にて具現化可能である。
【符号の説明】
【0156】
1、1A 電力システム
3 電線
4 分電盤
7 電圧計測部
8 電流計測部
9 キャビネット
11 取得部
14 判定部
15 判断部
16 変更部
19 提示システム
21 電圧電流情報
101 算出装置
102 提示端末
103 電力計測システム
191 表示部
192 判定提示部
193 判断提示部
196 情報取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8