(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083037
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】造形物の製造方法及びマイクロニードルアレイ
(51)【国際特許分類】
B29C 64/129 20170101AFI20230608BHJP
B29C 64/286 20170101ALI20230608BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20230608BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230608BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20230608BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20230608BHJP
【FI】
B29C64/129
B29C64/286
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y80/00
B33Y50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197132
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三田村 健範
(72)【発明者】
【氏名】塩出 浩久
(72)【発明者】
【氏名】栗原 舞
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA43
4F213AA44
4F213AP06
4F213AR20
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL06
4F213WL12
4F213WL44
4F213WL52
4F213WL76
4F213WL79
4F213WL85
4F213WL92
(57)【要約】
【課題】貫通孔及び平滑な平面を有する3Dモデルデータをより精度良く積層造形することができる造形物の製造方法を提供する。
【解決手段】造形物の製造方法は、DLP又は規制液面法によって、光硬化性組成物の液状物に光照射をして、造形プラットフォームの支持面に造形物を形成する工程を含む。前記造形物は、第1主面、前記第1主面に対向する第2主面、及び前記第1主面から前記第2主面に貫通する少なくとも1つの貫通孔を有する基板を備える。前記第2主面は、前記工程において、前記支持面と接触している。前記工程において、前記支持面に直交する方向における前記造形物の造形途中物の前記支持面からの厚みが0μm超500μm以下の範囲内である特定の厚みを超えるまでの前記光照射の光照射エネルギーRaと、前記厚みが前記特定の厚みを超えた後の前記光照射の光照射エネルギーRbとの比(Ra/Rb)が、1.0以上1.8未満の範囲内である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルライトプロセッシング又は規制液面法によって、光硬化性組成物の液状物に光照射をして、造形プラットフォームの支持面に、複数の造形層を積み重ねて、造形物を形成する工程を含み、
前記造形物は、第1主面、前記第1主面に対向する第2主面、及び前記第1主面から前記第2主面に貫通する少なくとも1つの貫通孔を有する基板を備え、
前記第2主面は、前記工程において、前記支持面と接触しており、
前記工程において、前記支持面に直交する方向における前記造形物の造形途中物の前記支持面からの厚みが0μm超500μm以下の範囲内である特定の厚みを超えるまでの前記光照射の光照射エネルギーRaと、前記厚みが前記特定の厚みを超えた後の前記光照射の光照射エネルギーRbとの比(Ra/Rb)が、1.0以上1.8未満の範囲内である、造形物の製造方法。
【請求項2】
前記造形物は、前記第1主面から突出する中実型の少なくとも1つのマイクロニードルを更に備える、請求項1に記載の造形物の製造方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの貫通孔の前記第1主面から前記第2主面までの平均長さは、10μm以上3mm以下である、請求項1又は請求項2に記載の造形物の製造方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの貫通孔の直径は、1μm以上2000μm以下である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の造形物の製造方法。
【請求項5】
前記造形物が、生体から生体試料を採取するために用いられる、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の造形物の製造方法。
【請求項6】
第1主面、前記第1主面に対向する第2主面、及び前記第1主面から前記第2主面に貫通する少なくとも1つの貫通孔を有する基板と、
前記第1主面から突出し、かつ多段傾斜面を有する中実型の少なくとも1つのマイクロニードルと
を備え、
前記第2主面の表面の凹凸の高低差が、100μm以下である、マイクロニードルアレイ。
【請求項7】
造形された孔の総数に対する貫通孔の数の割合を示す開口率が、80%以上である、請求項6に記載のマイクロニードルアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、微細な貫通孔を有する造形物の製造方法及びマイクロニードルアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金型を使用することなく造形物を製造する方法として、液槽光重合法が知られている。液層光重合法では、三次元(以下、「3D」という。)モデルデータを基に,容器内の液体光硬化性樹脂を光重合によって選択的に固化して造形層を作製し、作製した造形層を積み重ねて造形物を形成する。
【0003】
特許文献1は、液層光重合法を利用した造形物の製造方法を開示している。特許文献1に開示の製造方法は、3D造形装置を用いる。
3D造形装置は、容器と、キャリア(以下、「造形プラットフォーム」という。)と、光照射部と、制御部とを備える。容器は、光硬化性組成物を収容し、少なくとも一部に光透過部を有する。造形プラットフォームは、光透過部の面と対向し、光透過部に対する距離が可変に構成されている。光照射部は、光透過部を介して光硬化性組成物に光を光照射する。制御部は、光硬化性組成物を硬化させてなる造形物を形成するよう、造形プラットフォームの位置及び光照射部を制御する。
制御部は、造形物、及び造形プラットフォームと造形物とをつなぐ支持部(以下、「サポート」という。)を形成するように、造形プラットフォームと光透過部との距離を連続的又は断続的に変化させながら光硬化性組成物に光照射部からの光を光照射させる。制御部は、サポートの造形プラットフォームとの接合部を造形する際の造形条件を、造形物のうち光透過部の面に平行な断面の面積が最も大きい第1領域を造形する際の造形条件よりも、光硬化性組成物が硬化しやすい条件にするよう、造形条件を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「3Dプリンタ用新規材料開発」,株式会社エヌ・ティー・エス,2021年1月,P.188
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
血液や尿、唾液などに含まれる生体成分の濃度は、健康状態を把握する指標となる。例えば、血液に含まれるグルコースの濃度は、糖尿病の進行を把握するための指標となる。
【0007】
血液を採取する装置として、血液を低侵襲で採取し、採取した血液を検査する検査チップを用いることができる。検査チップは、マイクロニードルアレイと、検知部とを備える。マイクロニードルアレイは、基板と、複数のマイクロニードルとを有する。基板は、第1主面と、第1主面に対向する第2主面と、第1主面から第2主面に貫通する複数の貫通孔とを有する。貫通孔の直径は、1μm以上2000μm以下である。複数のマイクロニードルの各々は、第1主面から突出する。検知部は、採取された生体試料のうち所定の生体成分を検知する。検知部は、第2主面上に設置されている。
【0008】
このようなマイクロニードルアレイを特許文献1に記載の製造方法で製造する場合、通常、造形物であるマイクロニードルアレイの第2主面と造形プラットフォームとの間には、造形物を造形プラットフォームに固定するための複数のサポートが積層造形される。この複数のサポートは、全ての光照射領域への光照射が終了した後、マイクロニードルアレイから分離される。
本発明者らは、上記の製造方法によりマイクロニードルアレイを積層造形し、ニッパーを用いて、マイクロニードルアレイから複数のサポートを分離したところ、第2主面の複数のサポートの各々が除去された部位(以下、「除去部」という。)には、バリが形成されることがわかった。バリは、第2主面のうち除去部とは異なる部位に対して突出していた。
このバリをヤスリ等を用いて研磨すると、貫通孔内に研磨クズが入り込んで、貫通孔が閉塞するおそれがある。また、研磨により基板が破損するおそれがある。さらに、除去部にバリが形成されたままであると、第2主面上にガタつきなく安定して設置可能な検知部は、バリに対応した形状(例えば、バリに嵌合する形状等)を有する検知部に限られるおそれがあることがわかった。
そのため、第2主面に設置可能な検知部の形状のこのような制限を回避するために、第2主面の全面は、バリが形成されていない平滑な平面であることが求められる。
【0009】
一方で、デジタルライトプロセッシングによって、サポートを積層造形せずに、造形プラットフォームの支持面の表面に直接的に造形物であるマイクロニードルアレイを造形することも考えられる。この場合、造形プラットフォームから造形物が落下することを防止するために、光硬化性組成物に比較的高い光照射エネルギーの光照射を行って、造形プラットフォームの支持面に接触する造形層を充分に硬化させる必要がある。
しかしながら、比較的高い光照射エネルギーの光照射を行うと、光照射領域の近傍に位置する光硬化性組成物は、直接的に光照射がされていなくても、支持面からの反射や散乱により硬化しやすくなる。そのため、造形プラットフォームの支持面に接触する造形層を造形する際に比較的高い光照射エネルギーの光照射を行うと、形成された造形層の貫通孔内に流れ込んだ光硬化性組成物が硬化するなどして、貫通孔が閉塞するおそれがある。
【0010】
本開示は、上記事情に鑑み、貫通孔及び平滑な平面を有する3Dモデルデータをより精度良く積層造形することができる造形物の製造方法及びマイクロニードルアレイを提供することを目的とする。
【0011】
なお、前記技術課題はマイクロニードルアレイをデジタルライトプロセッシング等で造形する場合に限らず、貫通孔及び平滑な平面が必要とされるマイクロ流路デバイス等でも生じる課題であり、本開示はマイクロニードルアレイの造形に限定されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
【0013】
<1> デジタルライトプロセッシング又は規制液面法によって、光硬化性組成物の液状物に光照射をして、造形プラットフォームの支持面に、複数の造形層を積み重ねて、造形物を形成する工程を含み、
前記造形物は、第1主面、前記第1主面に対向する第2主面、及び前記第1主面から前記第2主面に貫通する少なくとも1つの貫通孔を有する基板を備え、
前記第2主面は、前記工程において、前記支持面と接触しており、
前記工程において、前記支持面に直交する方向における前記造形物の造形途中物の前記支持面からの厚みが0μm超500μm以下の範囲内である特定の厚みを超えるまでの前記光照射の光照射エネルギーRaと、前記厚みが前記特定の厚みを超えた後の前記光照射の光照射エネルギーRbとの比(Ra/Rb)が、1.0以上1.8未満の範囲内である、造形物の製造方法。
<2> 前記造形物は、前記第1主面から突出する中実型の少なくとも1つのマイクロニードルを更に備える、前記<1>に記載の造形物の製造方法。
<3> 前記少なくとも1つの貫通孔の前記第1主面から前記第2主面までの平均長さは、10μm以上3mm以下である、前記<1>又は<2>に記載の造形物の製造方法。
<4> 前記少なくとも1つの貫通孔の直径は、1μm以上2000μm以下である、前記<1>~<3>のいずれか1つに記載の造形物の製造方法。
<5> 前記造形物が、生体から生体試料を採取するために用いられる、前記<1>~<4>のいずれか1つに記載の造形物の製造方法。
<6> 第1主面、前記第1主面に対向する第2主面、及び前記第1主面から前記第2主面に貫通する少なくとも1つの貫通孔を有する基板と、
前記第1主面から突出し、かつ多段傾斜面を有する中実型の少なくとも1つのマイクロニードルと
を備え、
前記第2主面の表面の凹凸の高低差が、100μm以下である、マイクロニードルアレイ。
<7> 造形された孔の総数に対する貫通孔の数の割合を示す開口率が、80%以上である、前記<6>に記載のマイクロニードルアレイ。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、貫通孔及び平滑な平面を有する3Dモデルデータをより精度良く積層造形することができる造形物の製造方法及びマイクロニードルアレイが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の実施形態に係るマイクロニードルアレイモデルデータの斜視図である。
【
図2】デジタルライトプロセッシングによる造形工程を説明するためのDLP方式3Dプリンタの概略図である。
【
図3】デジタルライトプロセッシング方式3Dプリンタの制御部が実行する造形処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本開示に係る造形物の製造方法、及びマイクロニードルアレイの実施形態について説明する。また、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0017】
(1)造形物の製造方法
本開示の造形物の製造方法は、デジタルライトプロセッシング(以下、「DLP」という場合がある。)又は規制液面法によって、光硬化性組成物の液状物に光照射をして、造形プラットフォームの支持面に、複数の造形層を積み重ねて、造形物を形成する工程(以下、「造形工程」という。)を含む。前記造形物は、基板を備える。基板は、第1主面と、前記第1主面に対向する第2主面と、前記第1主面から前記第2主面に貫通する少なくとも1つの貫通孔とを有する。前記第2主面は、前記工程において、前記支持面と接触している。前記造形工程において、前記支持面に直交する方向における前記造形物の造形途中物の前記支持面からの厚み(以下、単に「造形途中物の厚み」という。)が0μm超500μm以下の範囲内である特定の厚みを超えるまでの前記光照射の光照射エネルギーRaと、前記厚みが前記特定の厚みを超えた後の前記光照射の光照射エネルギーRbとの比(Ra/Rb)(以下、単に「光照射エネルギー比(Ra/Rb)」という。)が、1.0以上1.8未満の範囲内である。
【0018】
本開示において、「デジタルライトプロセッシング」とは、光源にプロジェクタを使用して、底壁に光透過部を有する容器内の光硬化性組成物の液状物に、光透過部を介して、複数のボクセルに選択的にエネルギー波(例えば、紫外線、可視光、レーザー等)を照射することにより、造形プラットフォームと光透過部との間の光硬化性組成物の液状物を硬化して得られる造形層を積層造形する方法を示す。「ボクセル」とは、造形領域をマス目状に区切った際の1つのマス目を示す。
本開示において、「規制液面法」とは、光源にレーザー光を使用して、底壁に光透過部を有する容器内の光硬化性組成物の液状物に、ガルバノミラーによって、光透過部を介して、造形領域を一筆書きのようにエネルギー波を照射する(換言すると、光硬化性組成物の液状物を走査する)ことにより、造形プラットフォームと光透過部との間の光硬化性樹脂組成物の液状物を硬化して得られる造形層を積層造形する方法を示す。
本開示において、「造形プラットフォーム」とは、造形工程において、開始から終了まで造形物を支持する支持面を有する基盤を示す。
本開示において、「積層造形」とは、3Dモデルデータを基に、造形層を積み重ねることによって3Dの造形物を実体化する加工法を示す。
本開示において、「3Dモデルデータ」とは、DLP又は規制液面法によって作製する造形物をデジタル形式で表現されたものを示す。
本開示において、「サポート」とは、造形プロセス中に造形物を造形プラットフォームに固定するために造形物形状とは別に追加した支持構造体であって、造形物を所定の用途に用いる際には除去されるものを示す。
本開示において、「造形層」とは、光硬化性組成物の層状物を示す。
本開示において、「造形物の造形途中物」とは、造形工程において、開始から終了までの間の未完成の造形物を示す。
本開示において、「光照射エネルギー」とは、1層の造形層を形成するために光硬化性組成物に照射するエネルギーであって、光の光照射強度(mW/cm2)と、光の光照射時間(秒)とを乗算した値を示す。
【0019】
本開示の造形物の製造方法は、上記の構成を有するため、貫通孔及び平滑な平面を有する3Dモデルデータをより精度良く積層造形することができる。つまり、本開示の造形物の製造方法によれば、3Dモデルデータの貫通孔に対応する部位に貫通不良が形成されにくく、かつバリなどの凹凸が少ない平滑な平面を有する造形物が得られる。本開示において、「貫通不良」とは、得られる造形物のうち、3Dモデルデータの貫通孔に対応する部位に、未貫通孔(3Dモデルデータで貫通孔であるべき部分の一部が閉塞している貫通孔も含む)が形成されていることを示す。
この効果は、以下の理由によると推測されるが、これに限定されない。
本開示の造形物の製造方法では、造形工程において、造形物の基板の第2主面は、造形プラットフォームの支持面と接触している。つまり、造形工程において、造形物の第2主面と、造形プラットフォームの支持面との間には、サポートは介在しない。そのため、得られる造形物の造形プラットフォームの支持面と接触する第2主面には、サポートの除去等に起因するバリは形成されない。これにより、得られる造形物は、平滑な平面を有する。
更に、本開示の造形物の製造方法では、造形工程において、光照射エネルギー比(Ra/Rb)が、1.0以上1.8未満の範囲内である。換言すると、造形工程において、光照射を開始した時点から造形途中物の厚みが特定の厚みになる時点までは(以下、「造形初期では」という場合がある。)適度な光照射エネルギーRaの光照射を行い、造形初期を経過した後では適度又は比較的弱い光照射エネルギーRbの光照射を行う。これにより、貫通孔を有する3Dモデルデータを基に造形物を積層造形する際、造形途中物は造形プラットフォームから落下しにくく、かつ得られる造形物には貫通不良が形成されにくい。
これらの結果、本開示の造形物の製造方法は、貫通孔及び平滑な平面を有する3Dモデルデータをより精度良く積層造形することができると推測される。
【0020】
(1.1)3Dモデルデータ
本開示の造形物の製造方法は、3Dモデルデータを基に、造形物を形成する。得られる造形物は、3Dモデルデータが精度良く実体化されている。
本開示において、3Dモデルデータは、第2主面に対応する平面(以下、「第2主面対応平面」という。)を有する。第2主面対応平面には、少なくとも1つの貫通孔の開口が形成されている。
【0021】
3Dモデルデータの形状は、第2主面対応平面を有すれば特に限定されず、得られる造形物の用途等に応じて適宜選択され、板状物、筒状物、球形状を含む物、マイクロニードルアレイの形状、マイクロ流路の形状等が挙げられる。なかでも、3Dモデルデータの形状は、マイクロニードルアレイの形状であることが好ましい。
マイクロニードルアレイは、生体(例えば、皮膚)から生体試料を採取するために好適に用いられる。マイクロニードルアレイ及び生体試料の詳細については後述する。
【0022】
以下、3Dモデルデータの形状がマイクロニードルアレイの形状である場合の3Dモデルデータを「マイクロニードルアレイモデルデータ」という場合がある。
【0023】
3Dモデルデータの貫通孔の直径は、得られる造形物の用途等に応じて適宜選択される。3Dモデルデータの貫通孔の直径の下限は、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは50μm以上である。3Dモデルデータの貫通孔の直径の上限は、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1500μm以下、さらに好ましくは1000μm以下である。
3Dモデルデータの貫通孔の数は、少なくとも1つあればよく、得られる造形物の用途等に応じて適宜選択され、10個以上であってもよい。
【0024】
3Dモデルデータのサイズは、造形工程に用いられる3Dプリンタの性能等に応じて適宜選択される。3Dモデルデータが円柱体である場合、3Dモデルデータのサイズは、例えば、直径が3mm~50mm、厚みが100μm~3mmである。
【0025】
(1.1.1)3Dモデルデータの一例
次に、
図1を参照して、3Dモデルデータの一例について説明する。
図1は、本開示の実施形態に係るマイクロニードルアレイモデルデータ1の斜視図である。
【0026】
本実施形態に係るマイクロニードルアレイモデルデータ1は、
図1に示すように、基板11と、複数のマイクロニードル12とを有する。基板11は、第1主面TS11、第2主面BS11(第2主面対応平面の一例)、及び複数の貫通孔THを有する。第2主面BS11は、第1主面TS11に対向する。複数の貫通孔THの各々は、第1主面TS11から第2主面BS11に貫通している。複数のマイクロニードル12の各々は、第1主面TS11から突出している。マイクロニードル12は、中実型である。基板11と複数のマイクロニードル12とは、同一体である。
【0027】
本開示において、「中実型」とは、マイクロニードルの内部に空隙がないことを示す。中実型のマイクロニードルは、多孔質性のマイクロニードル及び中空型のマイクロニードルを含まない。
【0028】
本実施形態では、マイクロニードル12が基板11の第1主面TS11に対して突出する方向をZ軸正方向と規定し、その反対側の方向をZ軸負方向と規定する。以下、Z軸正方向とZ軸負方向とを区別しない場合、Z軸正方向及びZ軸負方向を「Z軸方向」という。Z軸方向に直交し、かつ基板11の第2主面BS11に平行な任意の方向をX軸正方向と規定し、その反対側の方向をX軸負方向と規定する。Z軸方向に直交し、かつX軸正方向及びX軸負方向に直交する任意の方向をY軸正方向と規定し、その反対側の方向をY軸負方向と規定する。
【0029】
マイクロニードル12の数は21個、貫通孔THの数は16個である。
【0030】
(1.1.1.1)基板
基板11は、円板状である。第1主面TS11及び第2主面BS11の各々は、平面状である。
【0031】
基板11の直径L1(
図1参照)の下限は、好ましくは3mm以上、より好ましくは4.5mm以上である。基板11の直径L1の上限は、好ましくは50mm以下、より好ましくは30mm以下である。
【0032】
基板11の平均厚みL2(すなわち、基板11のZ軸方向の長さL2)(
図1参照)の下限は、好ましくは100μm以上、より好ましくは200μm以上、さらに好ましくは500μm以上である。基板11の平均厚みL2の上限は、好ましくは3,000μm以下、より好ましくは2,000μm以下、さらに好ましくは1,500μm以下である。
基板11の平均厚みL2の測定方法は、例えば、マイクロメーターを使用する方法、定圧厚さ測定器を使用する方法、レーザ式オンライン厚み計測装置を使用する方法、レーザー変位計を使用する方法、分光膜厚計を使用する方法などである。
【0033】
(1.1.1.2)貫通孔
複数の貫通孔THの各々は、基板11の厚み方向(Z軸方向)に沿って、基板11を貫通している。基板11の厚み方向から見た複数の貫通孔THの各々の形状は、丸孔状である。貫通孔THは、基板11の厚み方向に沿って同径である。複数の貫通孔THの各々は、配置位置が異なる他は、同一である。
【0034】
貫通孔THの直径L3(
図1参照)の下限は、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは50μm以上である。貫通孔THの直径L3の上限は、好ましくは2,000μm以下、より好ましくは1,500μm以下、さらに好ましくは1,000μm以下である。
【0035】
貫通孔THの第1主面TS11から第2主面BS11までの平均長さは、基板11の平均厚みL2と同一である。
【0036】
(1.1.1.3)マイクロニードル
マイクロニードル12は、
図1に示すように、基板11の第1主面TS11から尖端Tに向けて先細の円錐状である。マイクロニードル12の突出方向(Z軸正方向)は、第1主面TS11に対して直交する。突出方向は、複数のマイクロニードル12の各々が第1主面TS11から突出する方向を示す。突出方向と、基板11の厚み方向とは、平行である。複数のマイクロニードル12の各々は、配置位置が違う他は、同一である。
【0037】
マイクロニードルアレイモデルデータ1を基に積層造形された造形物は、生体から生体試料を採取するために好適に用いられる。生体の真皮には、神経が存在する。低侵襲の観点から、マイクロニードル12の高さL4(マイクロニードル12のZ方向の長さL4)(
図1参照)は、造形物のマイクロニードルが生体に刺さった際に、真皮に到達しない高さであることが好ましい。詳しくは、マイクロニードル12の高さL4の下限は、生体組織から生体試料を侵出させる観点から、好ましくは100μm以上、より好ましくは150μm以上である。マイクロニードル12の高さL4の上限は、低侵襲性や痛覚の観点から、好ましくは2,000μm以下、より好ましくは1,500μm以下である。マイクロニードル12の高さL4は、突出方向において、第1主面TS11から尖端Tまでの長さを示す。
【0038】
マイクロニードル12の最大直径L5(
図1参照)の下限は、造形物のマイクロニードルの折れにくさの観点から、好ましくは50μm以上、より好ましくは100μm以上である。マイクロニードル12の最大直径L5の上限は、造形物のマイクロニードルの生体組織への刺しやすさの観点から、好ましくは1,000μm以下、より好ましくは700μm以下である。マイクロニードル12の最大直径L5とは、マイクロニードル12の根元を突出方向に直交する面でマイクロニードル12を切断した切断面におけるマイクロニードル12の直径を示す。
【0039】
なお、マイクロニードル12及び貫通孔THの各々の数は、造形物の用途等に応じて適宜選択され、1つ以上であればよい。
基板11の形状は、角板状であってもよい。第1主面TS11及び第2主面BS11の各々は、平面状でなくてもよい。
基板11の厚み方向から見た複数の貫通孔THの各々の形状は、円状、角孔状、長角状、長孔状、又は亀甲状であってもよい。複数の貫通孔THの各々は、基板11の厚み方向に対して傾斜した傾斜角度に沿って、基板11を貫通していてもよい。例えば、傾斜角度は、基板11の厚み方向に対して、0°超80°以下であってもよい。
複数の貫通孔THの各々の直径L3は同一でなくてもよい。
マイクロニードル12は、多角錐状であってもよい。マイクロニードル12の突出方向は、第1主面TS11に対して直交していなくてもよい。
【0040】
(1.2)3Dプリンタ
本開示の造形物の製造方法では、造形工程において3Dプリンタを用いる。
3Dプリンタは、DLP又は規制液面法によって造形物を積層造形することができるプリンタであれば特に限定されず、公知の3Dプリンタであってもよい。3Dプリンタは、市販品であってもよい。
【0041】
(1.3)造形工程
本開示の造形物の製造方法は、造形工程を有する。これにより、3Dモデルデータは実体化される。
【0042】
造形工程では、上述したように、DLP又は規制液面法によって、光硬化性組成物の液状物に光照射をして、造形プラットフォームの支持面に、複数の造形層を積み重ねて、造形物を積層造形する。造形物は、基板を備える。基板は、第1主面と、前記第1主面に対向する第2主面と、前記第1主面から前記第2主面に貫通する少なくとも1つの貫通孔とを有する。造形物の基板の第2主面は、造形工程において、造形プラットフォームの支持面と接触している。造形工程では、光照射エネルギー比(Ra/Rb)が、1.0以上1.8未満の範囲内である。
【0043】
(1.3.1)光硬化性組成物
光硬化性組成物としては、紫外線の光照射によって硬化するものであればよく、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリレート系樹脂、エポキシ・アクリレートハイブリッド系樹脂、エポキシ・オキセタン・アクリレートハイブリッド系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、メタクリレート系樹脂、ウレタンメタクリレート系樹脂、およびこれらの光硬化性モノマーからなる群から選択される少なくとも一つを含む。また、光硬化性組成物は重合開始剤、フィラー、顔料、染料、抗菌剤などの生理活性物質等を含んでもよい。
【0044】
(1.3.2)光照射
本開示では、光硬化性組成物の液状物に対して、特定のタイミングで光照射エネルギーを変更して光照射を行ってもよい。詳しくは、光硬化性組成物の液状物に対して、造形初期では光照射エネルギーRaの光照射を行い、造形初期を経過した後では光照射エネルギーRbの光照射を行う。光照射エネルギーRbは、光照射エネルギーRaと同一、又は光照射エネルギーRaよりも低い。
【0045】
光照射エネルギー比(Ra/Rb)は、1.0以上1.8未満の範囲内である。光照射エネルギー比(Ra/Rb)が上記範囲内であれば、貫通孔を有する3Dモデルデータを基に造形物を積層造形する際、造形途中物は造形プラットフォームから落下しにくくすることができるとともに、得られる造形物に貫通不良が形成されることを抑制することができる。
光照射エネルギー比(Ra/Rb)の上限は、貫通孔の造形精度の観点から、好ましくは1.7以下、より好ましくは1.6以下、さらに好ましくは1.5以下である。
光照射エネルギー比(Ra/Rb)の下限は、積層造形可能範囲の観点から、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.3以上である。
【0046】
造形初期は、上述したように、造形途中物の厚みが特定の厚みなった時点で終了する。特定の厚みは、0μm超500μm以下の範囲内の1点であり、3Dモデルデータのサイズ等に応じて適宜選択される。例えば、造形層の1層当たりの厚みが50μmに設定されている場合、造形初期は、光照射を開始した時点から所定の層数(1層~10層のいずれか1つ)の造形層を積層造形した時点で終了する。
特定の厚みが上記範囲内であることは、造形物の用途に応じたサイズであることを示す。
【0047】
(1.3.2.1)光照射エネルギーRa
所望の膜厚を得るための光照射エネルギーは、光硬化性モノマーの種類により異なる。例えば、光硬化性モノマーの種類ごとに、硬化膜厚と光照射エネルギーとの関係が実験的に決まっている(非特許文献1)。所望の膜厚を得るためにはその関係から光照射エネルギーRexpを求めればよい。ただし、積層させるためには、オーバーラップさせる分が必要なのでRexpの1倍~5倍のエネルギーを与える必要がある。これが、Rbになる。
造形初期の光照射エネルギーRaの上限は、光硬化性モノマーの種類に依存するが、造形精度の観点から、好ましくは100mW・秒/cm2以下、より好ましくは80mW・秒/cm2以下、さらに好ましくは60mW・秒/cm2以下である。
造形初期の光照射エネルギーRaの下限は、光硬化性モノマーの種類に依存するが、造形途中物が造形プラットフォームから落下しにくくする等の観点から、好ましくは1mW・秒/cm2以上、より好ましくは2mW・秒/cm2以上、さらに好ましくは3mW・秒/cm2以上である。
【0048】
造形初期の光照射強度は、光照射エネルギーRa及び造形初期の光照射時間に応じて決定される。「造形初期の光照射時間」とは、造形初期において、造形層を1層形成するために、光硬化性組成物に光照射をする時間を示す。
造形初期の光照射強度の上限は、造形操作性の観点から、好ましくは100mW/cm2以下、より好ましくは50mW/cm2以下、さらに好ましくは20mW/cm2以下である。
造形初期の光照射強度の下限は、造形可能範囲の観点から、好ましくは0.01mW/cm2以上、より好ましくは0.05mW/cm2以上、さらに好ましくは0.1mW/cm2以上である。
【0049】
造形初期の光照射時間は、光照射エネルギーRa及び造形初期の光照射強度に応じて決定される。
【0050】
(1.3.2.2)光照射エネルギーRb
造形初期を経過した後の光照射エネルギーRbの上限は、光硬化性モノマーの種類に依存するが、造形精度の観点から、好ましくは100mW・秒/cm2以下、より好ましくは80mW・秒/cm2以下、さらに好ましくは60mW・秒/cm2以下である。
造形初期を経過した後の光照射エネルギーRbの下限は、光硬化性モノマーの種類に依存するが、造形途中物が造形プラットフォームから落下しにくくする等の観点から、好ましくは1mW・秒/cm2以上、より好ましくは2mW・秒/cm2以上、さらに好ましくは3mW・秒/cm2以上である。
【0051】
造形初期を経過した後の光照射強度は、光照射エネルギーRb及び造形初期を経過した後の光照射時間に応じて決定される。「造形初期を経過した後の光照射時間」とは、造形初期を経過した後において、造形層を1層形成するために、光硬化性組成物に光照射をする時間を示す。
造形初期を経過した後の光照射強度の上限は、造形操作性の観点から、好ましくは100mW/cm2以下、より好ましくは50mW/cm2以下、さらに好ましくは20mW/cm2以下である。
造形初期を経過した後の光照射強度の下限は、造形可能範囲の観点から、好ましくは0.01mW/cm2以上、より好ましくは0.05mW/cm2以上、さらに好ましくは0.1mW/cm2以上である。
【0052】
造形初期を経過した後の光照射時間は、光照射エネルギーRb及び造形初期の光照射強度に応じて決定される。
【0053】
(1.3.3)造形層の1層当たりの厚み
造形層の1層当たりの厚みは、特に限定されず、3Dプリンタの性能等に応じて適宜される。
造形層の1層当たりの厚みの上限は、造形精度の観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。
造形層の1層当たりの厚みの下限は、造形速度の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上である。
【0054】
(1.3.4)造形工程の一例
次に、
図2及び
図3を参照して、造形工程の一例について説明する。
図2は、DLPによる造形工程を説明するためのDLP方式3Dプリンタの概略図である。
図2中、符号1Mは、造形途中物を示す。
【0055】
(1.3.4.1)DLP方式3Dプリンタ
本実施形態に係るDLP方式3Dプリンタ100は、
図2に示すように、吊り上げ型である。DLP方式3Dプリンタ100は、容器110と、造形プラットフォーム120と、プロジェクタ130と、駆動部140と、受付部150と、通信部160と、記憶部170と、制御部180とを備える。
【0056】
容器110は、光硬化性組成物の液状物200を収容する。容器110の底壁は、光透過部111を有する。光透過部111は、プロジェクタ130から光照射される紫外線を透過する。光透過部111は、例えば、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)フィルム、又はガラス板である。
【0057】
造形プラットフォーム120は、造形工程において、開始から終了まで造形物を支持する支持面S120を有する。
支持面S120の表面性状は、得られる造形物の第2主面に転写される。支持面S120の凹凸の高低差は、特に限定されず、得られる造形物の第2主面をより平滑な平面にする等の観点から、100μm以下であることが好ましい。支持面S120の凹凸の高低差の測定方法は、実施例に記載の造形物の第2主面の表面の凹凸の高低差の測定方法と同様である。
支持面S120の反射率は、特に限定されず、10%以下であることが好ましい。支持面S120の反射率が上記範囲内であれば、プロジェクタ130から光照射される光は、支持面S120で反射しにくい。そのため、光硬化性組成物の液状物200は、支持面S120の反射光に曝されにくい。つまり、光硬化性組成物の液状物200の反射光による硬化の進行は抑制される。その結果、DLP方式3Dプリンタ100は、3Dモデルデータをより精度良く積層造形することができる。
【0058】
プロジェクタ130は、紫外線を照射する。詳しくは、プロジェクタ130は、3Dモデルデータを基に、複数のボクセルに選択的に光照射をする。
【0059】
駆動部140は、造形プラットフォーム120を、Z軸負方向に向けて移動(上昇)させる。駆動部140は、例えば、モータ(例えば、ステッピングモータ)と、モータの回転運動を直線運動に変換する機構(例えば、送りネジ機構)とを有する。
【0060】
受付部150は、ユーザーからの造形処理の実行指示を受け付ける。受付部150は、例えば、キーボード、テンキー、又はマウスを含む。
造形処理は、記憶部170に記憶されている3Dモデルデータ情報171を基に、造形物を積層する処理を示す。3Dモデルデータ情報171及び造形処理の詳細については、後述する。
【0061】
通信部160は、ネットワークを介して、例えば、情報処理装置とデータの送受信を行う。データは、3Dモデルデータ情報171を含んでもよい。通信部160は、例えば、通信インターフェイスである。
【0062】
記憶部170は、各種のデータを記憶する。記憶部170は、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)のような主記憶部、及び補助記憶部を含む。主記憶部は、半導体メモリーを含む。補助記憶部は、SSD(Solid State Drive)を含む。記憶部170は、制御部180によって実行される種々のプログラム、及び3Dモデルデータ情報171を記憶する。プログラムは、造形処理を施すための造形処理用アプリケーション、ファームウェア、及び制御プログラムを含む。
3Dモデルデータ情報171は、3Dモデルデータと、パラメータ設定情報(例えば、特定の厚み、造形層の1層の厚み、光の光照射強度、光の光照射時間、造形プラットフォーム120の上昇速度、及びサポートの有無等に関する情報)とを含む。
【0063】
制御部180は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサーを含むハードウェア回路である。制御部180は、記憶部170に格納された造形処理用アプリケーションを実行することにより、プロジェクタ130、駆動部140、受付部150、通信部160及び記憶部170を制御し、記憶部170に記憶された3Dモデルデータ情報171を基に造形処理を実行する。
【0064】
(1.3.4.2)造形処理の一例
次に、
図3を参照して、制御部180が実行する造形処理について説明する。
図3は、DLP方式3Dプリンタ100の制御部180が実行する造形処理を示すフローチャートである。
【0065】
図3に示す造形処理は、ユーザーから造形処理の実行指示を受付部150が受け付けたことに応じて、スタートする。スタートの時点では、プロジェクタ130及び駆動部140の各々は、停止しており、造形プラットフォーム120の支持面S120と光透過部111の内壁面S111とは接触している。
【0066】
ステップS11において、制御部180は、駆動部140を駆動して、造形プラットフォーム120を造形層の1層の厚み分上昇させ、駆動部140の駆動を停止させる。その後、ステップS12に進む。
【0067】
ステップS12において、制御部180は、プロジェクタ130を駆動して、3Dモデルデータ情報171を基に、光硬化性組成物の液状物200に対して、光照射エネルギーRaの光照射を行う。詳しくは、制御部180は、プロジェクタ130に、造形初期の光照射強度で、造形初期の光照射時間、光照射させる。制御部180は、ステップS11の処理を開始した時点から造形初期の光照射時間が経過すると、プロジェクタ130の駆動を停止させる。次いで、ステップS13に進む。
【0068】
ステップS13において、制御部180は、造形途中物の厚みが特定の厚みを超えている否かを判定する。詳しくは、制御部180は、積層実行回数が初期積層回数以上であるか否かを判定する。「積層実行回数」とは、ステップS11及びステップS12の一連のステップを実行した回数を示す。「初期積層数」とは、特定の厚みを造形層の1層当たりの厚みで除算した除算値(以下、単に「除算値」という。)が整数である場合はその整数を示し、除算値が整数でない場合は除算値の整数部分に1を加算した整数を示す。
造形途中物の厚みが特定の厚みを超えていると制御部180が判定した場合(例えば、積層実行回数が初期積層数以上であると制御部180が判定した場合)(ステップS13;Yes)、ステップS14へ進む。
造形途中物の厚みが特定の厚みを超えていないと制御部180が判定した場合(例えば、積層実行回数が初期積層数以上ではないと制御部180が判定した場合)(ステップS13;No)、処理はステップS11へ戻る。
【0069】
ステップS14において、制御部180は、駆動部140を駆動して、造形プラットフォーム120を造形層の1層の厚み分上昇させ、駆動部140の駆動を停止させる。次のステップS15に進む。
【0070】
ステップS15において、制御部180は、プロジェクタ130を駆動して、3Dモデルデータ情報171を基に、光硬化性組成物の液状物200に対して、光照射エネルギーRbの光照射を行う。詳しくは、制御部180は、プロジェクタ130に、造形初期を経過した後の光照射強度で、造形初期を経過した後の光照射時間の間、光照射をさせる。制御部180は、ステップS15の処理を開始した時点から造形初期を経過した後の光照射時間が経過すると、プロジェクタ130の駆動を停止させる。次いで、ステップS16に進む。
【0071】
ステップS16では、制御部180は、全ての造形層を積層造形したか否かを判定する。全ての造形層を積層造形したと制御部180が判定した場合(ステップS16;Yes)、処理は終了する。全ての造形層を積層造形していないと制御部180が判定した場合(ステップS16;Nо)、処理は、ステップS14に戻る。
【0072】
(1.4)造形物
本開示の造形物の製造方法で得られる造形物は、上述したように、基板を備える。基板は、第1主面、第2主面、及び少なくとも1つの貫通孔を有する。第2主面には、少なくとも1つの貫通孔の開口が形成されている。造形物は、上述した3Dモデルデータが精度良く実体化されて得られる。造形物の構成(構造、サイズ等)は、上述した3Dモデルデータの構成として例示したものと同様である。
【0073】
造形物は、生体から生体試料を採取するために用いられることが好ましい。
【0074】
造形物は、マイクロニードルアレイ造形物であることが好ましい。マイクロニードルアレイ造形物は、上述したマイクロニードルアレイモデルデータ1が実体化されたものである。マイクロニードルアレイ造形物の構成(構造、サイズ等)は、マイクロニードルアレイモデルデータ1として例示したものと同様である。
【0075】
マイクロニードルアレイ造形物は、中実型の少なくとも1つのマイクロニードルを更に備えることが好ましい。少なくとも1つのマイクロニードルは、基板の第1主面から突出する。
マイクロニードルが中実型である場合、マイクロニードルの機械的強度は、中空型、例えば、多孔質性のマイクロニードルよりも優れる。これにより、中実型のマイクロニードルは、例えば、生体に刺された際に、中空型のマイクロニードルよりも壊れにくい。
さらに、マイクロニードルアレイ造形物の基板は、少なくとも1つの貫通孔を有する。そのため、例えば、マイクロニードルが生体に刺さった際に、マイクロニードルアレイ造形物の基板は、貫通孔を有しない構成よりも撓みやすい。これにより、マイクロニードルにかかる押圧力は、マイクロニードルの根元に局所的に作用しにくい。つまり、マイクロニードルが生体に刺さった際に、マイクロニードルは根元から壊れにくい。その結果、マイクロニードルアレイ造形物は、マイクロニードルが壊れにくく、低侵襲で生体成分をより確実に採取することができる。
【0076】
マイクロニードルアレイ造形物では、少なくとも1つの貫通孔の前記第1主面から前記第2主面までの平均長さ(以下、単に「平均長さ」という場合がある。)は、10μm以上3mm以下であることが好ましい。
マイクロニードルアレイ造形物が生体から生体試料を採取するために用いられる場合、生体試料は、生体液を含むことがある。第1主面側に位置する生体液は、毛細管現象によって、貫通孔を介して、第2主面側により移動しやすい。例えば、基板の第2主面側には、採取された生体試料を所定の生体成分を検知する検知部が配置される。そのため、生体液は、基板の第2主面側に位置する検知部に到達しやすい。検知部の詳細については、後述する。
平均長さの下限は、検知に充分な量の生体試料を検知部へ流通させる観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。平均長さの上限は、基板の第2主面側に検知部が配置される場合に生体試料を適時的に検知部へ流通させる観点から、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1.3mm以下、特に好ましくは1.5mm以下である。
【0077】
造形物の少なくとも1つの貫通孔の各々の直径は、特に限定されず、1μm以上2,000μm以下であることが好ましい。
造形物がマイクロニードルアレイ造形物であり、マイクロニードルアレイ造形物が生体から生体試料を採取するために用いられる場合、生体試料は、生体液を含むことがある。第1主面側に位置する生体液は、毛細管現象によって、貫通孔を介して、第2主面側により移動しやすい。例えば、基板の第2主面側には、採取された生体試料を所定の生体成分を検知する検知部が配置される。そのため、生体液は、基板の第2主面側に位置する検知部に到達しやすい。
【0078】
生体試料は、生体液、及び生体ガスを含む。
生体液は、管内液、及び管外液を含む。管内液は、血漿、リンパ液、及び脳脊髄液を含む。管外液は、間質液、及び組織間液を含む。なかでも、生体液は、低侵襲で採取可能な間質液を主成分とすることが好ましい。「主成分」とは、生体試料の総質量に対して、30質量%以上であることを示す。
生体ガスは、皮膚ガスを含む。皮膚ガスは、体表面から放散される揮発性化合物を示す。揮発性化合物は、有機化合物及び無機化合物の少なくとも1つを示す。
【0079】
(2)マイクロニードルアレイ
本開示のマイクロニードルアレイは、基板と、中実型の少なくとも1つのマイクロニードルとを備える。前記基板は、第1主面、前記第1主面に対向する第2主面、及び前記第1主面から前記第2主面に貫通する少なくとも1つの貫通孔を有する。前記少なくとも1つのマイクロニードルは、前記第1主面から突出し、かつ多段傾斜面を有する。前記第2主面の表面の凹凸の高低差が、100μm以下である。
【0080】
本開示において、「多段傾斜面」とは、マイクロニードルの外周面において、DLP又は規制液面法による積層造形に起因して不可避的に形成される、階段状の形状を示す。
【0081】
本開示のマイクロニードルアレイは、本開示の造形物の製造方法によって、好適に製造される。
【0082】
(2.1)凹凸の高低差
第2主面の表面の凹凸の高低差は、100μm以下である。第2主面の表面の凹凸の高低差が100μm以下であることは、第2主面がサポートの除去に起因するバリが形成されていない平滑な平面であることを示す。これにより、マイクロニードルアレイの第2主面に検知部を設置する場合、検知部を第2主面上にガタつきなく安定して設置することができる。
第2主面の表面の凹凸の高低差の上限は、小さければ小さいほど好ましく、好ましくは80μm以下、より好ましくは50μm以下である。
第2主面の表面の凹凸の高低差の下限は、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上である。
第2主面の表面の凹凸の高低差の測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0083】
(2.2)マイクロニードルアレイの構成
本開示のマイクロニードルアレイは、本開示の造形物の製造方法によって、上述したマイクロニードルアレイモデルデータ1が精度良く実体化されたものである。そのため、本開示のマイクロニードルアレイの構成(構造、サイズ等)は、マイクロニードルアレイモデルデータ1の構成、又はマイクロニードルアレイ造形物の構成として例示したものと同様である。
【0084】
(2.3)開口率
本開示のマイクロニードルアレイは、造形された孔の総数に対する貫通孔の数の割合を示す開口率が、80%以上であることが好ましい。
【0085】
本開示において、「造形された孔」は、基板の第1主面から第2主面に貫通している貫通孔と、基板の第1主面から第2主面に貫通していない未貫通孔とを含む。
【0086】
開口率が80%以上であることは、未貫通孔の数が少ないことを示す。本開示のマイクロニードルアレイが生体から生体試料を採取するために用いられる場合、マイクロニードルが生体に刺さって、マイクロニードルの表面を伝って移動する生体試料は、基板の第1主面側の貫通孔により到達しやすくなる。例えば、基板の第2主面側には、採取された生体試料を所定の生体成分を検知する検知部が配置される。そのため、生体試料は、貫通孔を介して、基板の第2主面側に位置する検知部に到達しやすくなる。
開口率の上限は、好ましくは100%以下、より好ましくは90%以下、さらに好ましくは95%以下である。
開口率の下限は、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上である。
開口率の測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0087】
(2.4)用途
本開示のマイクロニードルアレイは、検査チップの部品として好適に用いられる。検査チップは、例えば、ユーザーの生体から採取された生体試料の所定の生体成分(以下、「検知成分」という場合がある。)を検知する。
【0088】
検知成分は、ユーザーによって選択される。例えば、検知成分は、検知部の感知材料の材質を選択することで決定される。
検知成分は、カリウムイオン、ナトリウムイオン、窒素酸化物、ブドウ糖、グルコース、コレステロール、トリグリセリド、コルチゾール、乳酸、尿酸、酢酸、ガラクトース、アルコール類、アセトンなどのケトン類、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類、アセト酢酸、ヒドロキシ酪酸などのカルボン酸を含む有機酸類、癌マーカーなどのタンパク質類、核酸類、細菌などの感染性因子の全体またはその一部分およびそれらが生産する毒素、イソプレン、メチルメルカプタン、アリルメルカプタン、ジメチルトリスルフィド、炭化水素類、ベンゼン、トルエン、ノネナール、ホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、アンモニア、トリメチルアミン、メタン、ベンゼン、トルエン、ニコチン、メチルフラン化合物、硫化水素、水素、一酸化窒素、一酸化炭素、二酸化炭素などの生体ガス類、を含む。
【0089】
(2.4.1)検査チップ
検査チップは、本開示のマイクロニードルアレイと、検知部とを備える。検知部は、マイクロニードルアレイの第2主面上に配置されている。
【0090】
検査チップは、例えば、特表2020-511214号公報に記載されているようなシステムのセンサに好適に用いられる。
【0091】
検知部は、採取された生体試料のうち検知成分を検知する。例えば、検知部は、生体液及び生体ガスから検知成分を検知する。
【0092】
検知部は、例えば、本体部と、体積変化体と、応力検出部と、を備える。本体部は、平板状であり、且つ第1方向における第1端が支持されるとともに、厚さ方向における両端面のうち少なくとも一方にて開口する収容空間を有する。体積変化体は、所定の生体成分の量に応じて体積が変化するとともに、少なくとも一部が収容空間に収容されるように本体部により支持される。応力検出部は、本体部のうちの、第1方向における第2端に連接し、且つ、体積変化体の体積の変化に伴って生じる応力を検出する。
【0093】
検知部の構成及び検知部の製造方法は、国際公開第2019-188164号に記載を参照することができる。
【0094】
検査チップは、例えば、下記のようにして使用される。
本開示のマイクロニードルアレイを生体に刺すと、生体内の生体液は、マイクロニードルの表面を伝って、マイクロニードルアレイの基板の第1主面に向けて移動する。次いで、マイクロニードルアレイの基板の第1主面側の貫通孔に到達した生体液は、毛細管現象によって、貫通孔を介して、マイクロニードルアレイの基板の第2主面側に向けて移動する。マイクロニードルアレイの基板の第2主面側には、検知部が位置する。検知部は、マイクロニードルアレイの基板の第2主面に到達した生体液の検知成分を検知する。
このようにして、検査チップは、生体成分をより確実に検査することができる。
【実施例0095】
以下、本発明に係る実施形態を、実施例を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0096】
[1]実施例1
[1.1]準備
下記の3Dモデルデータ、DLP方式3Dプリンタ、及び光硬化性組成物を準備した。
【0097】
<3Dモデルデータ>
・3Dモデルデータ:マイクロニードルアレイモデルデータ1(
図1参照)
・基板11の直径L1 :5mm
・基板11の平均厚さL2 :1.3mm
・基板11の主面の面積 :25mm
2
・貫通孔THの平均直径L3 :500μm
・貫通孔THの密度 :16個(1mm
2/個)
・平均長さ :1.3mm
・マイクロニードル12の高さL4:400μm
・マイクロニードル12の密度 :25個(1mm
2/個)
なお、平均長さは、貫通孔THの第1主面TS11から第2主面BS11までの平均長さを示す。
【0098】
<DLP方式3Dプリンタ>
・3Dプリンタ :武藤工業株式会社製の「ML-80」
【0099】
<光硬化性組成物>
・光硬化性組成物 :武藤工業株式会社製の「MR-UDC」
・粘度 :200mPa・S
【0100】
[1.2]積層造形
3DモデルデータをSTL形式で造形処理用アプリケーション(武藤工業株式会社製の「MUTOH Slicer_J」)に入力し、マイクロニードルアレイモデルデータ1がZ軸正方向に向けて積層造形されるように設定した。スライスファイルをDLP方式3Dプリンタに送信し、DLP方式3Dプリンタを用いて積層造形を行い、造形物前駆体を得た。造形物前駆体のマイクロニードルアレイモデルデータ1の第2主面BS11に相当する面は、造形プラットフォームの支持面と接触していた。
特定の厚みは、150μmに設定されている。第1パラメータ設定は、1層目~3層目の造形層(支持面からの厚み:150μm以下)を形成するためのパラメータ設定を示す。第2設定パラメータは、4層目以降の造形層(支持面からの厚み:150μm超))を形成するパラメータ設定を示す。
【0101】
<サポート設定>
サポートの有無 :無し
<第1パラメータ設定>
・造形層の層数 :3層
・造形層の1層当たりの厚み :50μm
・光の光照射強度 :8mW/m2
・光の光照射時間 :1.0秒
・造形プラットフォームの上昇速度:1mm/秒
<第2パラメータ設定>
・造形層の層数 :43層
・造形層の1層当たりの厚み :50μm
・光の光照射強度 :8mW/m2
・光の光照射時間 :1.0秒
・造形プラットフォームの上昇速度:1mm/秒
【0102】
[1.3]後処理
造形物前駆体をスクレイパーを用いて造形プラットフォームの支持面から分離し、70質量%イソプロパノール中で超音波洗浄を5分間行い、造形物前駆体から余剰レジンを除去した。
次いで、造形物前駆体に光照射機(Kulzer社製の「HiLite(登録商標) Power」)を用いて、10分間、後重合処理を行った。これにより、造形物であるマイクロニードルアレイを得た。
【0103】
[2]実施例2、比較例1~比較例3
第1パラメータ設定の光照射時間を表1に示すように変更したことの他は、実施例1と同様にして、造形物であるマイクロニードルアレイを得た。
【0104】
[3]比較例4
サポート設定のサポートの有無を「有り」に設定したこと、下記のサポート用パラメータ設定を設定したこと、及び第1パラメータ設定の光照射時間を表1に示すように変更したことの他は、実施例1と同様にして、サポート付きの造形物を得た。
サポート付き造形物のマイクロニードルアレイモデルデータ1の第2主面BS11に相当する面は、造形プラットフォームの支持面と接触しておらず、複数のサポートが形成されていた。
【0105】
<サポート用パラメータ設定>
・サポートの形状 :円柱
・サポートのサイズ :直径2mm、高さ3.3mm
・サポートの数 :18個
<第1パラメータ設定>
・造形層の層数 :3層
・造形層の1層当たりの厚み :50μm
・光の光照射強度 :8mW/cm2
・光の光照射時間 :5.0秒
・造形プラットフォームの上昇速度:1mm/秒
<第2パラメータ設定>
・造形層の層数 :109層
・造形層の1層当たりの厚み :50μm
・光の光照射強度 :8mW/cm2
・光の光照射時間 :1.0秒
・造形プラットフォームの上昇速度:1mm/秒
【0106】
ニッパーを用いて、得られたサポート付きの造形物から複数のサポートを分離して、造形物であるマイクロニードルアレイを得た。
【0107】
[4]評価方法
[4.1]平滑性評価
得られた造形物の第2主面の表面の凹凸の高低差を、デジタルスプラインマイクロメーター(「MCD230-25SA」、新潟精機株式会社製)で測定した。
得られた測定値を用いて、以下の基準で、平滑性評価を行った。
平滑性評価の測定値及び評価結果を表1に示す。平滑性評価の許容可能な評価は、「A」である。
【0108】
<平滑性評価の評価基準>
A:測定値が100μm以下であること
B:測定値が100μm超であること
【0109】
[4.2]開口率評価
得られた造形物のうち、マイクロニードルアレイモデルデータ1の貫通孔THに対応する部位(以下、「貫通孔対応部」) 10ヶ所を任意に選択し、10ヶ所の貫通孔対応部の各々が貫通しているか否かを目視および拡大レンズで観察した。
得られた観察結果を用いて、以下の基準で、開口率評価を行った。
開口率評価の観察結果及び評価結果を表1に示す。開口率評価の許容可能な評価は、「A」である。
【0110】
<開口率評価の評価基準>
A:貫通していない貫通孔対応部の数が全貫通孔数のうちの2割以下であること
B:貫通していない貫通孔対応部の数が全貫通孔数のうちの2割超であること
【0111】
【0112】
表1中、第1パラメータ設定における「0μm以上150μm以下」とは、造形途中物の造形プラットフォームの支持面からの厚みが0μm以上150μm以下であることを示す。
表1中、第2パラメータ設定における「150μm超」とは、造形途中物の造形プラットフォームの支持面からの厚みが150μm以降であることを示す。
表1中、光照射エネルギー比(Ra/Rb)における「Ra」とは、造形途中物の厚みが150μm(特定の厚み)を超えるまでの光照射エネルギーを示す。
表1中、光照射エネルギー比(Ra/Rb)における「Rb」とは、造形途中物の厚みが150μm(特定の厚み)を超えた後の光照射エネルギーを示す。
【0113】
比較例1~比較例3では、造形工程において、造形物であるマイクロニードルアレイの第2主面は、造形プラットフォームの支持面と接触していた。しかしながら、造形工程において、光照射エネルギー比(Ra/Rb)は、1.8~5.0であり、1.0以上1.8未満の範囲外であった。そのため、開口率評価の評価結果は「B」であった。つまり、比較例1~比較例3の製造方法では、貫通孔を有する3Dモデルデータをより精度良く積層造形することができなかった。この結果から、比較例1~比較例3の造形物の製造方法は、貫通孔及び平滑な平面を有する3Dモデルデータをより精度良く積層造形することができないことがわかった。
【0114】
比較例4では、造形工程において、造形物であるマイクロニードルアレイの第2主面と造形プラットフォームの支持面との間にはサポートが介在していた。つまり、造形物であるマイクロニードルアレイの第2主面は、造形プラットフォームの支持面と接触していなかった。そのため、平滑性評価の評価結果は、「B」であった。つまり、比較例4の製造方法では、平滑な平面を有する3Dモデルデータをより精度良く積層造形することができなかった。この結果から、比較例4の造形物の製造方法は、貫通孔及び平滑な平面を有する3Dモデルデータをより精度良く積層造形することができないことがわかった。
【0115】
実施例1及び実施例2では、造形工程において、造形物であるマイクロニードルアレイの第2主面は、造形プラットフォームの支持面と接触していた。造形工程において、光照射エネルギー比(Ra/Rb)は、1.0~1.5であり、1.0以上1.8未満の範囲内であった。そのため、開口率評価及び平滑性評価の各々の評価結果は「A」であった。この結果から、実施例1及び実施例2の造形物の製造方法は、貫通孔及び平滑な平面を有する3Dモデルデータをより精度良く積層造形することができることがわかった。