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<図1>
  • 特開-発熱部品の放熱構造及びその組立方法 図1
  • 特開-発熱部品の放熱構造及びその組立方法 図2
  • 特開-発熱部品の放熱構造及びその組立方法 図3
  • 特開-発熱部品の放熱構造及びその組立方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008306
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】発熱部品の放熱構造及びその組立方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
H05K7/20 B
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111754
(22)【出願日】2021-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】507011574
【氏名又は名称】株式会社電菱
(74)【代理人】
【識別番号】100007983
【弁理士】
【氏名又は名称】笹川 拓
(72)【発明者】
【氏名】小椋 直嗣
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 衛
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸一
【テーマコード(参考)】
5E322
【Fターム(参考)】
5E322AA02
5E322AA03
5E322AB01
5E322AB04
5E322AB11
5E322FA04
(57)【要約】
【課題】電子機器の樹脂筐体の内部に収容された基板に実装される発熱部品を、樹脂筐体を利用して効率良く放熱することが可能な発熱部品の放熱構造及びその組立方法を提供すること。
【解決手段】発熱部品30に接する放熱体3を備え、放熱体3は、発熱部品30の互いに対抗する2側面に第1の伝熱保持部16と、第2の伝熱保持部17と、発熱部品30の平面に対向して接する主放熱部5と、当該主放熱部5から連続して外側に延伸した周辺放熱部7とを有しており、基板35が固定される第1の筐体部21と発熱部品30及び放熱体30を介して第1の筐体部21と反対側に配される第2の筐体部24とが互いに固定されて、第2の筐体部24が主放熱部5及び周辺放熱部7に接触して当該放熱体3を発熱部品30に固定しているものである。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の樹脂筐体の内部に収容された基板の主面の一方に、底面を介して実装される発熱部品の放熱構造であって、
前記発熱部品に熱伝導可能に接する金属製の放熱体を備え、
当該放熱体は、前記発熱部品の互いに対抗する2側面の一方に接する第1の伝熱保持部と、
他方に接する第2の伝熱保持部と、
当該第1の伝熱保持部と当該第2の伝熱保持部との間に連設されて前記発熱部品の平面に対向して接する主放熱部と、
当該主放熱部から連続して前記発熱部品の前記平面よりも外側に延伸した周辺放熱部とを有しており、
前記樹脂筐体は、前記基板の主面の他方側に配され、かつ、前記基板が固定される第1の筐体部と、
前記発熱部品及び前記放熱体を介して前記第1の筐体部と反対側に配される第2の筐体部を有し、
前記第1の筐体部と前記第2の筐体部とが互いに固定されて、前記第2の筐体部が前記主放熱部及び前記周辺放熱部に接触して当該放熱体を前記発熱部品に固定している
ことを特徴とする発熱部品の放熱構造。
【請求項2】
前記発熱部品と前記放熱体とは熱伝導シートを介して接することを特徴とする請求項1に記載の発熱部品の放熱構造。
【請求項3】
前記主放熱部と前記周辺放熱部は同一平面で連続して配されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発熱部品の放熱構造。
【請求項4】
前記放熱体は、1枚の板金を折り曲げて形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち、いずれか1に記載の発熱部品の放熱構造。
【請求項5】
前記放熱体は、前記第1の伝熱保持部、前記第2の伝熱保持部及び前記主放熱部を介して前記発熱部品に接することにより、当該発熱部品上に仮置き可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうち、いずれか1に記載の発熱部品の放熱構造。
【請求項6】
前記第1の筐体部と前記第2の筐体部とは互いの距離を近づけることにより、互いに係合して固定されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうち、いずれか1に記載の発熱部品の放熱構造。
【請求項7】
前記主放熱部及び/又は前記周辺放熱部は、前記第2の筐体部と平行に配されて、当該第2の筐体部と互いに面で接触することを特徴とする請求項1乃至請求項6のうち、いずれか1に記載の発熱部品の放熱構造。
【請求項8】
前記主放熱部及び/又は前記周辺放熱部は、前記第2の筐体部と熱伝導シートを介して互いに面で接触することを特徴とする請求項1乃至請求項7のうち、いずれか1に記載の発熱部品の放熱構造。
【請求項9】
電子機器の樹脂筐体の内部に収容された基板の主面の一方に、底面を介して実装される発熱部品の放熱構造の組立方法であって、
前記放熱構造は、前記発熱部品に熱伝導可能に接する金属製の放熱体を備え、
当該放熱体は、前記発熱部品の互いに対抗する2側面の一方に接する第1の伝熱保持部と、
他方に接する第2の伝熱保持部と、
当該第1の伝熱保持部と当該第2の伝熱保持部との間に連設されて前記発熱部品の平面に対向して接する主放熱部と、
当該主放熱部から連続して前記発熱部品の前記平面よりも外側に延伸した周辺放熱部とを有しており、
前記樹脂筐体は、前記基板の主面の他方側に配され、かつ、前記基板が固定される第1の筐体部と、
前記発熱部品及び前記放熱体を介して前記第1の筐体部と反対側に配される第2の筐体部を有し、
前記放熱体は、前記第1の伝熱保持部、前記第2の伝熱保持部及び前記主放熱部を介して前記発熱部品に接することにより、当該発熱部品上に仮置きされ、
その後、前記第1の筐体部と前記第2の筐体部とは互いの距離を近づけることにより、当該第1の筐体部と当該第2の筐体部とが互いに固定されて、前記第2の筐体部が前記主放熱部及び前記周辺放熱部に接触して当該放熱体を前記発熱部品に固定している
ことを特徴とする発熱部品の放熱構造の組立方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱部品の放熱構造及びその組立方法に関し、特に、電子機器の樹脂筐体の内部に収容された基板に実装される発熱部品の放熱構造及びその組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子機器の内部に収容された電源トランス等が発熱するため、発熱を放出する放熱機構が設けられている。例えば、電源容量が大きい電源トランスでは、発熱量が多大のため、強制的に熱を外部に放出する電動ファンが筐体に設けられている。また、発熱量が多くない電源トランスでは、放熱板を用いて放熱させる。
【0003】
特許文献1には、電子部品の放熱構造が開示されている。特許文献1によれば、基板上には電源トランスが搭載され、電源トランスのフェライトコアの上には放熱シートが設けられ、放熱シートの上には放熱シートに密着させて伝熱冷却板が設けられている。伝熱冷却板は、装置筐体であるケースに接するところで直角に折り曲げられて、ケースに密着固定されている。
【0004】
また、特許文献2には、発熱部品を放熱させるためヒートシンク構造体を有する電子装置が開示されている。特許文献2の電子装置は、基板に取り付けられた発熱部品と、ヒートシンク及び変形可能な放熱シートからなるヒートシンク構造体と、平板状の金属筐体とを有し、ヒートシンクは、放熱シートを介して外表面が非平坦面である発熱部品の一部を囲み覆い、金属筐体に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5706703号公報
【特許文献2】特許第6326772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子部品の放熱構造に関して、特許文献1では伝熱冷却板が発熱部品の上面と側面に接触し、伝熱部が筐体に接触固定されるが、しかしながら、伝熱冷却板の伝熱部は、ケースに接するところで直角に折り曲げられて筐体に固定されるため、伝熱冷却板の取り付けに制約を受ける恐れがある。
【0007】
また、特許文献2では、発熱部品の上面に取り付けられた放熱シートとヒートシンクとからなるヒートシンク構造体で発熱部品の上面を囲み、発熱部品の上面側を金属筐体に接触させるが、金属筐体と発熱部品との接触面積が少ないため、熱を十分に金属筐体に伝えることができない恐れがある。
【0008】
また、筐体の内部に発熱部品を内蔵し、筐体が金属製の場合、発熱部品に接している放熱板からの伝熱により金属製の筐体に過剰な温度上昇が発生する恐れがある。このため、筐体の温度上昇を抑えるべく、筐体と放熱板との間に熱伝導率の低い樹脂製の部材を金属製の筐体と放熱板の間に配置する必要がある。
【0009】
このように電子部品のような発熱部品の放熱構造については、種々の提案が行われており、より効率の良い放熱構造の提案が待たれている。
【0010】
このような状況で、本件発明者は、電子部品のような発熱部品の放熱構造について試行錯誤を繰り返し、樹脂筐体そのものを利用して効率よく放熱可能な本発明に想到したものであって、本発明は、電子機器の樹脂筐体の内部に収容された基板に実装される発熱部品を、樹脂筐体を利用して効率良く放熱することが可能な発熱部品の放熱構造及びその組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的達成のため、本発明に係る発熱部品の放熱構造は、電子機器の樹脂筐体の内部に収容された基板の主面の一方に、底面を介して実装される発熱部品の放熱構造であって、前記発熱部品に熱伝導可能に接する金属製の放熱体を備え、当該放熱体は、前記発熱部品の互いに対抗する2側面の一方に接する第1の伝熱保持部と、他方に接する第2の伝熱保持部と、当該第1の伝熱保持部と当該第2の伝熱保持部との間に連設されて前記発熱部品の平面に対向して接する主放熱部と、当該主放熱部から連続して前記発熱部品の前記平面よりも外側に延伸した周辺放熱部とを有しており、前記樹脂筐体は、前記基板の主面の他方側に配され、かつ、前記基板が固定される第1の筐体部と、前記発熱部品及び前記放熱体を介して前記第1の筐体部と反対側に配される第2の筐体部を有し、前記第1の筐体部と前記第2の筐体部とが互いに固定されて、前記第2の筐体部が前記主放熱部及び前記周辺放熱部に接触して当該放熱体を前記発熱部品に固定していることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る発熱部品の放熱構造は、前記発熱部品と前記放熱体とは熱伝導シートを介して接することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る発熱部品の放熱構造は、前記主放熱部と前記周辺放熱部は同一平面で連続して配されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の前記放熱体は、1枚の板金を折り曲げて形成されることを特徴とする
【0015】
また、本発明の前記放熱体は、前記第1の伝熱保持部、前記第2の伝熱保持部及び前記主放熱部を介して前記発熱部品に接することにより、当該発熱部品上に仮置き可能であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る発熱部品の放熱構造は、前記第1の筐体部と前記第2の筐体部とは互いの距離を近づけることにより、互いに係合して固定されることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の前記主放熱部及び/又は前記周辺放熱部は、前記第2の筐体部と平行に配されて、当該第2の筐体部と互いに面で接触することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の前記主放熱部及び/又は前記周辺放熱部は、前記第2の筐体部と熱伝導シートを介して互いに面で接触することを特徴とする。
【0019】
本発明に係る発熱部品の放熱構造の組立方法は、電子機器の樹脂筐体の内部に収容された基板の主面の一方に、底面を介して実装される発熱部品の放熱構造の組立方法であって、前記放熱構造は、前記発熱部品に熱伝導可能に接する金属製の放熱体を備え、当該放熱体は、前記発熱部品の互いに対抗する2側面の一方に接する第1の伝熱保持部と、他方に接する第2の伝熱保持部と、当該第1の伝熱保持部と当該第2の伝熱保持部との間に連設されて前記発熱部品の平面に対向して接する主放熱部と、当該主放熱部から連続して前記発熱部品の前記平面よりも外側に延伸した周辺放熱部とを有しており、前記樹脂筐体は、前記基板の主面の他方側に配され、かつ、前記基板が固定される第1の筐体部と、前記発熱部品及び前記放熱体を介して前記第1の筐体部と反対側に配される第2の筐体部を有し、前記放熱体は、前記第1の伝熱保持部、前記第2の伝熱保持部及び前記主放熱部を介して前記発熱部品に接することにより、当該発熱部品上に仮置きされ、その後、前記第1の筐体部と前記第2の筐体部とは互いの距離を近づけることにより、当該第1の筐体部と当該第2の筐体部とが互いに固定されて、前記第2の筐体部が前記主放熱部及び前記周辺放熱部に接触して当該放熱体を前記発熱部品に固定していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、樹脂筐体を利用して放熱効率の良い放熱構造を提供することが可能である。
【0021】
即ち、本発明によれば、樹脂筐体の第2の筐体部が主放熱部及び周辺放熱部に接触して放熱体を発熱部品に固定していることにより、発熱部品で発生した熱を、放熱体を介して第2の筐体の全体に拡散可能であり、樹脂筐体を利用して放熱効率の良い放熱構造を提供することが可能である。
【0022】
また、本発明によれば、樹脂筐体を放熱構造として利用して省スペースを実現することが可能である。
【0023】
即ち、本発明によれば、主放熱部及び周辺放熱部は、樹脂筐体の第2の筐体部と平行に配されて、第2の筐体部と互いに面で接触することにより、樹脂筐体を放熱構造として利用して省スペースを実現することが可能である。
【0024】
また、主放熱部及び周辺放熱部が同一平面で連続して配され、主放熱部が発熱部品の平面に接するため、主放熱部による基板の主面からの高さの増加を抑えることが可能である。
【0025】
さらに、本発明によれば、放熱体を基板に固定する必要がないため、基板において放熱体の取り付け構造を用意する必要がなく、基板の小型化を実現することができる。
【0026】
また、本発明によれば、樹脂筐体は、基板が固定される第1の筐体部と、第1の筐体部と反対側に配される第2の筐体部を有しており、樹脂筐体を用いたことにより金属筐体のように筐体が高温度になることがなく、さらに熱伝導率の低い部材も不要である。このため、樹脂筐体を用いたことにより金属筐体のようにやけどの恐れがなく、安全に使用することができる。
【0027】
また、本発明によれば、放熱体は、第1の伝熱保持部、第2の伝熱保持部及び主放熱部を介して発熱部品に接することにより、放熱体を発熱部品に仮置きすることが可能で、かつ、内部に基板を収容した樹脂筐体の組立は、第1の筐体部と第2の筐体部とを互いに近づけて係合させるのみであるため、放熱体の発熱部品に対する仮置きと相まって、容易に筐体の組立を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】発熱部品の放熱構造における放熱体の斜視図である。
図2】基板の主面に実装された発熱部品に放熱体を仮置きした状態を示す斜視図である。
図3】樹脂筐体の第1の筐体部に組み込まれた基板に実装されている発熱部品、発熱部品に仮置き前の放熱体及び第2の筐体部との位置関係を示す斜視図である。
図4】発熱部品の放熱構造における電子機器の樹脂筐体の第1の筐体部と第2の筐体部とが互いに固定されて、第2の筐体部が主放熱部及び周辺放熱部に接触して放熱体を発熱部品に固定している状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下図面を参照して、本発明による発熱部品の放熱構造及びその組立方法を実施するための形態について説明する。尚、本発明は、発熱部品に接する放熱体を備え、放熱体は、発熱部品の平面に接する主放熱部と、主放熱部と同一平面に配された周辺放熱部とを有し、第1の筐体部と第1の筐体部と反対側に配される第2の筐体部とが互いに固定されて、樹脂筐体である第2の筐体部が主放熱部及び周辺放熱部に接触して放熱体を発熱部品に固定しているものであって、これにより、樹脂筐体を利用して放熱効率の良い、発熱部品の放熱構造及びその組立方法を提供するものである。
【0030】
[発熱部品の放熱構造における放熱体]
最初に、発熱部品の放熱構造における放熱体について図1を参照して説明する、図1は、発熱部品の放熱構造における放熱体3の斜視図である。
【0031】
図1に示すように、放熱体3は、主放熱部5と、周辺放熱部7と、伝熱保持部15とを有している。主放熱部5は、発熱部品30(図2に示す)の平面を成す上面に対向して接するように設けられている。周辺放熱部7は、主放熱部5から連続して発熱部品30の平面よりも外側に延伸している。また、放熱体3の主放熱部5と主放熱部5から延伸して設けられている周辺放熱部7とは同一平面で連続して形成されている。
【0032】
伝熱保持部15は、主放熱部5と周辺放熱部7の成す面に対して垂直方向に、板状の第1の伝熱保持部16と、板状の第2の伝熱保持部17とが設けられている。
【0033】
伝熱保持部15の第1の伝熱保持部16は、発熱部品30の互いに対抗する2側面の一方に接し、第2の伝熱保持部17は、発熱部品30の側面の他方に接する。このように、伝熱保持部15は、発熱部品30の互いに対抗する2側面に接することが可能となる。
【0034】
放熱体3は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属製の部材のいずれかからなり、1枚の平板を切り起こし曲げ加工によって、伝熱保持部15が形成されている。これにより、周辺放熱部7には、伝熱保持部15における第1の伝熱保持部16及び第2の伝熱保持部17の表面積に相当する開口部8及び開口部9が設けられている。また、主放熱部5は、第1の伝熱保持部16と第2の伝熱保持部17との間に連設されている。
【0035】
また、図1に示す放熱体3における周辺放熱部7の両端部には、伝熱保持部15側に曲げ加工された縁曲げ部10、11が設けられている。周辺放熱部7の両端部の近傍を曲げ加工して縁曲げ部10、11を設けることにより、主放熱部5、周辺放熱部7に加わる圧力に対して強度を保つことができる。このため、放熱体3は、熱、圧力、衝撃力等による変形が発生しづらい。
【0036】
このように、放熱体3は、1枚の平板から製作されて、切り起こし曲げ加工によって発熱部品30の互いに対抗する2側面の一方に接する第1の伝熱保持部16と、他方に接する第2の伝熱保持部17とが形成され、第1の伝熱保持部16と第2の伝熱保持部17との間に連設されて発熱部品30の平面に対向して接する主放熱部5と、主放熱部5から連続して発熱部品30の平面よりも外側に延伸した周辺放熱部7とを有している。
【0037】
[発熱部品への放熱体の取付]
次に、基板の主面に実装された発熱部品への放熱体の取付について図2を参照して説明する。図2は、基板の主面に実装された発熱部品30に放熱体3を仮置きした状態を示す斜視図である。
【0038】
図2に示すように、発熱部品30である電源トランス31は、基板35の主面の一方に、底面を介して実装されている。例えば、図2に示す基板35に実装された電源トランス31は、フェライトコアで形成された2組の対抗する側面を有している。
【0039】
また、基板35に実装された電源トランス31は、上面に平面を成すコイル巻線部の一部が突出して設けられている。尚、電源トランス31は、基板35に実装された状態で、側面にコイル巻線部が設けられ、上面にフェライトコアが位置していてもよい。
【0040】
発熱部品30への放熱体3の取付は、最初に、基板35に実装された電源トランス31の対抗する側面及び上面の平面に密着するように熱伝導シート40を取り付ける。その後、放熱体3に対向して設けられている第1の伝熱保持部16と第2の伝熱保持部17を電源トランス31の側面を把持するように接触して仮止めする。また、主放熱部5を電源トランス31の上面に接触させる。
【0041】
このように、放熱体3は、基板35に実装された発熱部品30である電源トランス31の互いに対抗する側面の一方に熱伝導シート40を介して伝熱保持部15の第1の伝熱保持部16が接し、伝熱保持部15の第2の伝熱保持部17が熱伝導シート40を介して電源トランス31の他方の側面に接して仮置きする。また、第1の伝熱保持部16と第2の伝熱保持部17との間に連設された主放熱部5が電源トランス31の上面に対向して熱伝導シート40を介して接している。
【0042】
これにより、放熱体3は、主放熱部5が電源トランス31の上面の平面に接するように、電源トランス31の側面を第1の伝熱保持部16と第2の伝熱保持部17で把持して仮止めされ、放熱体3は基板35に対向して、主放熱部5と周辺放熱部7とが基板35の主面と平行状態で仮置きされる。
【0043】
熱伝導シートは可撓性、柔軟性を有しており、このため、発熱部品30に熱伝導シートを取り付けるに際して、発熱部品30の表面の凹凸、波打ち等の表面状態に影響を受けることがない。これにより、発熱部品30である電源トランス31と放熱体3とを熱伝導シート40を介して接触させることにより、電源トランス31と放熱体3との接触面積を増やすことが可能である。また、発熱部品30に熱伝導シート40を接触するように用いることにより、発熱部品30と熱伝導シート40との間に空気層を作らずに、発熱部品30と熱伝導シート40とを密着させることができる。さらに、熱伝導シート40を介して放熱体3を発熱部品30に密着させることにより、発熱部品30を安定して固定することができる。
【0044】
また、図1に示す符号Wは、伝熱保持部15における第1の伝熱保持部16と第2の伝熱保持部17との間隔の大きさを示し、Wは、W<(発熱部品の幅+熱伝導シートの厚さ×2)となるように設定されている。これにより組立時に放熱体3の伝熱保持部15がわずかに弾性変形して、熱伝導シート40を介して発熱部品30に適切な圧力を与えて把持することができる。さらに、また、放熱体3に伝熱保持部15を有することにより伝熱及び放熱の効率が向上し、また、放熱体3が発熱部品30に保持されて落下時の衝撃に耐えることが可能となる。
【0045】
また、所定の熱伝導率を有する熱伝導シート40を使用することにより、樹脂筐体20の温度を過剰に上昇させることなく、放熱体3からの熱を樹脂筐体20に伝熱し、樹脂筐体20からの熱対流や熱輻射により放熱体3からの熱の放出を向上させることが可能である。
【0046】
また、放熱体3は1枚の金属製からなる平板から製作されるため、製造コストの低減を図ることができる。
【0047】
このように、放熱体3は、対向して設けられている第1の伝熱保持部16と第2の伝熱保持部17とにより発熱部品30である電源トランス31を把持するように接触して仮止めされ、また、主放熱部5が電源トランス31の上面に接触して仮置きされる。
【0048】
また、放熱体3は、主放熱部5から連続して発熱部品30の平面よりも外側に延伸した周辺放熱部7を有しており、周辺放熱部7によって、より放熱効率を上げることができる。
【0049】
発熱部品30は、電源トランス31に限らず、例えば、コイルに電流が流れるチョークコイル、電磁ソレノイドなども含まれる。また、発熱部品は、コイルに電流が流れるものに限定するものではなく、互いに対抗する側面と、上面に基板等の部品取付面と平行な平面を有するものであってもよい。
【0050】
尚、図1図2では、伝熱保持部15の第1の伝熱保持部16及び第2の伝熱保持部17は、正面視で放熱体3における主放熱部5の左右の位置に設けられているが、主放熱部5の左右の位置に限らず主放熱部5の前後の位置(紙面の手前と奥側)に設けることも可能である。
【0051】
[放熱体及び樹脂筐体との位置関係]
次に、放熱体及び樹脂筐体との位置関係について図3を参照して説明する。図3は、樹脂筐体20の第1の筐体部21に組み込まれた基板35に実装されている発熱部品30、発熱部品30に仮置き前の放熱体3及び第2の筐体部24との位置関係を示す斜視図である。
【0052】
図3に示すように、発熱部品の放熱構造1における樹脂筐体20は、部材が樹脂からなり、基板35の主面の他方側に配され、かつ、基板35が固定される第1の筐体部21と、発熱部品30及び放熱体3を介して第1の筐体部21と反対側に配される第2の筐体部24を有している。第1の筐体部21は正面視で、略U字形状をなし、底板と底板の両端から垂直方向に側板を有している。底板の両端部付近には基板を取り付けるための螺子止め等の所定の固定方法により基板35を固定する基板取付部(図示せず)が設けられている。
【0053】
また、第1の筐体部21の対向する両側面の上端には、規則的に爪状の突起部22が設けられている。爪状の突起部22は、正面視で略U字形状をなし、一方の突起片は爪の形状を有している。略U字形状を成す爪状の突起部22は、一方の突起片を他方の突起片側に押すことにより、一方の爪の形状を有している突起片の先端部が他方の突起片側に変位し、力が加わらなければ、元の位置に復帰する弾性特性を有している。
【0054】
第2の筐体部24は平板をなし、第1の筐体部21の両側面の上端を覆う大きさを有している。第2の筐体部24の底面(第1の筐体部21に対向する面)には、放熱体3に接するための突起した面である突起面25が設けられている(図4も参照)。突起面25は、放熱体3の主放熱部5と周辺放熱部7とに密着する大きさの表面を有している。また、第2の筐体部24における両端部の近傍付近には規則的に角状の孔部26が設けられている。第2の筐体部24に設けられている角状の孔部26は、第1の筐体部21の爪状の突起部22と嵌合するためのものである。
【0055】
主放熱部5の一方の面は、熱伝導シート40を介して発熱部品30の平面と接し、主放熱部5の他方の面は、第2の筐体部24の突起面25に接している。樹脂筐体20の第2の筐体部24と放熱体3とは、第2の筐体部24の突起面25によって密着し、放熱体3は第2の筐体部2によって発熱部品30に対して固定される。
【0056】
樹脂筐体20は、金属筐体のように熱伝導率が高くないため、放熱体3の主放熱部5と周辺放熱部7とに対向して密着するように使用しても、樹脂筐体20の表面温度の上昇を抑えることができ、例えば、手で触れたり、持ったりすることもできる。さらに、樹脂筐体20は、熱を放熱する放熱媒体としても作用するため、筐体として最適である。
【0057】
また、放熱体3の主放熱部5と周辺放熱部7が第2の筐体部24と接触する大きさは、第2の筐体部24の突起面25の面積とほぼ同じであるため、発熱部品30で発生した熱を、放熱体3を介して樹脂筐体20の第2の筐体24の全体に拡散可能である。また、樹脂筐体20を放熱構造として利用して省スペースを実現することが可能である。
【0058】
[樹脂筐体による放熱体の発熱部品への組込]
次に、樹脂筐体における放熱体の発熱部品への組込状態について図4を参照して説明する。図4は、発熱部品の放熱構造1における電子機器2の樹脂筐体20の第1の筐体部21と第2の筐体部24とが互いに固定されて、第2の筐体部24が主放熱部5及び周辺放熱部7に接触して放熱体3を発熱部品30に固定している状態を示す正面図である。
【0059】
樹脂筐体20における放熱体3の発熱部品30への組込は、最初に図2及び図4に示すように、放熱体3は、対向して設けられている第1の伝熱保持部16と第2の伝熱保持部17とにより発熱部品30である電源トランス31を把持するように接触して仮止めされ、また、主放熱部5が電源トランス31の上面に接触して仮置きされる。
【0060】
次に、図4に示すように、第1の筐体部21と第2の筐体部24とが互いに固定されて、第2の筐体部24の突起面25が主放熱部5及び周辺放熱部7に接触して、放熱体3が発熱部品30に固定される。
【0061】
即ち、基板35は、基板35の両端が第1の筐体部21に接するように取り付けられている。発熱部品30が実装された基板35は、第1の筐体部21の内面側に配置されており、第1の筐体部21と第2の筐体部24とは互いの距離を近づけることにより、互いに係合して固定されている。
【0062】
図3に示す例では、第1の筐体部21の対向する両側面の上端には、規則的に爪状の突起部22が設けられ、第2の筐体部24では、両端部の近傍に規則的に角状の孔部26が設けられており、第1の筐体部21と第2の筐体部24とは互いの距離を近づけることにより、第1の筐体部21の爪状の突起部22と第2の筐体部24の角状の孔部26とが嵌合する。
【0063】
これにより、樹脂筐体20の第1の筐体部21と第2の筐体部24とが係合して互いに確実に固定されるとともに、発熱部品30に仮置きされた放熱体3も、第2の筐体部24の突起面25が主放熱部5及び周辺放熱部7に接触することにより、発熱部品30に固定される。
【0064】
樹脂筐体20の第1の筐体部21と第2の筐体部24とが互いに嵌合して固定されると、図4に矢印で示すように、第2の筐体部24の突起面25は放熱体3の主放熱部5を圧接して、発熱部品30が実装されている方向に熱伝導シート40を介して荷重をかけた状態となり、放熱体3が樹脂筐体20に固定される。
【0065】
一般的に熱伝導シートは、その厚みの20から30%圧縮して接触するように使用することにより、熱伝導の効率を高めることができ、その点を考慮して放熱構造を構成することとなる。
【0066】
尚、第1の筐体部21と第2の筐体部24との固定方法は、上述した第1の筐体部21の爪状の突起部22と第2の筐体部24の角状の孔部26との嵌合を利用した実施形態に限定するものではなく、第1の筐体部21と第2の筐体部24との互いの距離を近づけることによる手法であれば、最終的な固定は螺子による固定等、他の固定方法であってもよい。
【0067】
一方、第1の筐体部21と第2の筐体部24との互いの距離を近づけることによる手法ではなく、例えば、第1の筐体部21の両側面の上端部にスライド用の溝を設けて、第2の筐体部24を溝に沿って(紙面の手前と奥側の方向に)スライドさせて、第1の筐体部21と第2の筐体部24とを係合させることも可能であるが、第1の筐体部21と第2の筐体部24とがスライド用の溝によって固定されるため、これでは放熱構造の組立時において、発熱部品30に対して仮置きされた放熱体3を第2の筐体部24のスライド動作により第2の筐体部24と密着固定することは、作業上、相当な難易度を伴ってしまう。また、スライド式では第2の筐体部24が放熱体3を密着方向に正確に圧接することが困難であり、発熱部品30に対して放熱体3が予期しない角度で固定されてしまい、十分な放熱効果が得られない恐れがある。
【0068】
しかしながら、本発明は、第1の筐体部21と第2の筐体部24との互いの距離を近づけることにより、互いに係合して固定され、発熱部品30に仮置きされた放熱体3を容易かつ確実に固定できるため、他の固定方法であるスライド式のように複雑な構成を採る必要もなければ、発熱部品30に仮置きされた放熱体3の固定のための難易度を伴った作業が必要なく、容易に筐体の組立、即ち、放熱構造の組立を行うことが可能である。
【0069】
即ち、発熱部品30と放熱体3の密着固定させたい方向と、第1の筐体部21と第2の筐体部24との固定方向が一致しないスライド式のような固定方法と異なり、本発明は、第1の筐体部21と第2の筐体部24とが互いの距離を近づけて係合して固定することにより、第2の筐体部24が放熱体3を発熱部品30との密着方向に正確に圧接するため、発熱部品30と放熱体3の密着固定させたい方向と、第1の筐体部21と第2の筐体部24との固定方向が一致し、容易に放熱構造の組立が可能であるとともに、十分な放熱効果を得ることができる。
【0070】
以上のように、第1の筐体部21と第2の筐体部24とが互いに係合して固定されることにより、発熱部品30と放熱体3の間に設けられた熱伝熱シート40は圧縮されて、さらに放熱体3が熱伝熱シート40を介して発熱部品30に密接することで、効率よく放熱を行うことができる。
【0071】
また、筐体が熱伝導率の低い樹脂であることから、放熱体3からの熱伝導により、筐体温度が過剰に上昇することを防ぐことができるため、手などが筐体に接触したときの安全性を確保することができる。
【0072】
また、本発明の発熱部品の放熱構造によれば、第2の筐体部24が同一平面で連続して配された主放熱部5及び周辺放熱部7に接触し、主放熱部5が発熱部品30の平面に接するため、発熱部品30の平面から熱伝熱シート40と主放熱部5の厚さのみ増すため、主放熱部5による基板35の主面からの高さの増加を抑えることが可能である。
【0073】
以上述べたように、本発明に係る発熱部品の放熱構造によれば、放熱体3が発熱部品30の対向する側面と平面とに接することにより、発熱部品30からの発熱を熱伝導シート40を介して放熱体3に熱伝導され、放熱体3が樹脂筐体20に接触して、樹脂筐体20で熱を拡散して放熱することが可能である。
【0074】
尚、第2の筐体部24と放熱体3とを直接接触させる実施形態について述べたが、樹脂筐体20の第2の筐体部24と放熱体3の間に熱伝導シートを配置することも可能である。第2の筐体部24と放熱体3とを熱伝導シートを介して接触させることにより、放熱体3が熱伝導シートを介して第2の筐体部24に密着することができため、確実に放熱することが可能となる。
【0075】
この発明は、その本質的特性から逸脱することなく数多くの形式のものとして具体化することができる。よって、上述した実施形態は専ら説明上のものであり、本発明を制限するものではないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0076】
1 発熱部品の放熱構造
2 電子機器
3 放熱体
5 主放熱部
7 周辺放熱部
8、9 開口部
10、11 縁曲げ部
15 伝熱保持部
16 第1の伝熱保持部
17 第2の伝熱保持部
20 樹脂筐体
21 第1の筐体部
22 爪状の突起部
24 第2の筐体部
25 突起面
26 角状の孔部
30 発熱部品
31 電源トランス
35 基板
40 熱伝導シート
図1
図2
図3
図4