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  • 特開-拡開アンカー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083062
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】拡開アンカー
(51)【国際特許分類】
   F16B 13/04 20060101AFI20230608BHJP
【FI】
F16B13/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197169
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000181963
【氏名又は名称】若井ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋本 拓也
【テーマコード(参考)】
3J025
【Fターム(参考)】
3J025AA07
3J025BA08
3J025CA01
3J025EA05
(57)【要約】
【課題】全体の小型化を図った拡開アンカーにおいて、ねじ込んだねじの尖鋭端を導入ブッシュへ傾き無く誘導することができ、導入ブッシュの損傷発生を防げる拡開アンカーを提供する。
【解決手段】ステム2の先端部両側に第1のヒンジ3を介して拡開腕4を設け、両拡開腕4にそれぞれ第2のヒンジ5を介して連成した両ウエブ6の先端側を、ねじのねじ込み孔14が貫通する導入ブッシュ8に結合し、前記両ウエブ6の拡開腕4に臨む内面側に補強リブ13を設けた拡開アンカー1であって、前記両ウエブ6に設けた補強リブ13の導入ブッシュ8側に位置する端部に、ねじ誘導用の凹欠部15を設けた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ挿入孔が貫通するステムの先端部両側にヒンジを介して拡開腕を設け、両拡開腕にそれぞれヒンジを介して連成した両ウエブの先端側を、ねじのねじ込み孔が貫通する導入ブッシュと結合した拡開アンカーであって、前記両ウエブの拡開腕に臨む内面側に、このウエブの長さ方向の全長に亘る長さと、ウエブの半分程度の幅を有する補強リブを、両ウエブにおいて相反する側縁に片寄った配置で設けこの補強リブの導入ブッシュ側に位置する端部のコーナーに、ねじ誘導用の凹欠部を設けたことを特徴とする拡開アンカー。
【請求項2】
上記補強リブに設けたねじ誘導用の凹欠部は、前記補強リブの導入ブッシュ側に位置する端部で、ウエブの幅方向の内側に位置するコーナー部分の位置に設定され、この凹欠部が、上記ステムに設けたねじ挿入孔の内周における軸方向前方の延長仮想円に一致する円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の拡開アンカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、裏面に手が届かないような条件の壁材やプレート等の建材に用いる、合成樹脂製の拡開アンカーに関し、特にねじによって導入ブッシュを破損させることがなく、ねじを確実に導入ブッシュと螺合させることができる拡開アンカーに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の拡開アンカーは、特許文献1に示されるように、ねじ挿入孔が貫通する筒状で後端側にフランジが設けられたステムと、前記ステムの先端側で両側位置にヒンジを介して設けた拡開腕と、両拡開腕のステムと反対側の面で途中の位置に、それぞれヒンジを介して前方へ内向きの傾斜状に設けられたウエブと、両ウエブの集合させた先端間にヒンジを介して設けられ、前記ステムの前方位置に同軸状の配置となる筒状の導入ブッシュとからなり、両拡開腕がステムの先端側で略直角両側へ開き、両ウエブが両拡開腕の前方位置で開いた状態の形状に成形されて製品となっている。
【0003】
壁材等の建材に各種部材をねじ止め固定するに際し、先ず、アンカーは両拡開腕に内側への力を加え、互いに接近させることで、前方に押し出した両ウエブを接近させてこれを挟み込み、両拡開腕と両ウエブ及び導入ブッシュを一本の棒状になるよう折り畳み、この状態で、建材に設けた下孔に導入ブッシュから両拡開腕を挿通すれば、建材の裏面側において、拡開腕とステムは合成樹脂の復元弾性で開き状態に復帰する。
【0004】
次に、各種部材を固定するためのねじをステムのねじ挿入孔に差し込み、その先端が導入ブッシュ内に進入した状態でねじをねじ込むと、導入ブッシュがステム側に引き寄せられ、これにより、ステム突っ張り状となって両拡開腕を押し広げ、両拡開腕を建材の裏面に当接させることにより、拡開アンカーは構築部材に対して抜け止めとなり、各種部材が建材に固定される。
【0005】
このような合成樹脂製の拡開アンカーにおいて、壁材に各種部材をねじ止めするとき、ねじにより導入ブッシュを引き込むと、ステムには拡開腕を押し広げる方向の力が加わり、壁材への固定状態では拡開腕が閉じないように突っ張らなければならないので、折れ曲がりが生じないような強度が要求される。
【0006】
このため、板状に形成されたステムには、拡開腕に対して対面状に臨む内面側に補強リブを設け、耐折れ曲がり強度を向上させている。
【0007】
この補強リブをステムの内面側に設けるのは、両拡開腕を閉じた位相にしてその内側にウエブを挟み込んだ場合、ウエブの外面側に補強リブがあるとこれに拡開腕が干渉し、拡開腕を嵩低く閉じることができないので、これを避けるためである。
【0008】
また、両拡開腕を閉じた位相にしたとき、挟み込まれた両ウエブは互いに接近することになるが、このとき、補強リブがウエブの内面側で幅方向の全面に設けられていると、補強リブが互いに干渉し、拡開腕を嵩低く閉じることができなくなるので、補強リブの幅をウエブの幅の半分以下に設定し、両ウエブに対して補強リブは相反する側縁に沿うような配置で設け、ウエブの折り畳み時に各補強リブな相手ウエブの補強リブが無い位置に納まるようにしている。
【0009】
ところで、上記のような拡開アンカーは、ねじ止めせんとする各種部材の条件に対応できるよう、大小大きさの異なるものが用意されているが、例えば、小型の拡開アンカーを製品化しようとした場合、どうしてもアンカーを構成する各部を小さくするために肉厚を薄くする必要があり、当然ながら一対となるウエブにおいても薄肉厚化は避けられないが、先にも述べたように、このウエブの役目は、拡開腕を押し開いてこの開いた状態を維持する必要があり、そのため、耐折れ曲がり強度の確保が要求され、補強リブによる補強が重要となる。
【0010】
このため、小型化した拡開アンカーの場合、薄くなったウエブに対して強度を確保するため、ウエブに設ける補強リブは、できるだけ厚みを確保しながらウエブの長さ方向の全長に亘る長さに設けることが必要になる。
【0011】
ところで、拡開アンカーは、使用するとき両拡開腕を互いに押して接近させ、その間にウエブを畳んで挟み込み、棒状になった両拡開腕と導入ブッシュを建材の下孔に挿入し、建材の裏面側で折り畳みが開放された拡開腕は、弾性でステムに対して拡開腕が両側へ略直角の角度で張り出して使用前の成型姿に戻り、両ウエブは両拡開腕のそれぞれから前方に向けて突出し、両ウエブの先端部に位置する導入ブッシュが前記ステムと同軸心の配置で位置する形状になる。
【0012】
このような拡開アンカーの条件下において、補強リブをステムの全長に亘って設けるようにすると、上記のように、拡開アンカーの両拡開腕が開き状態にあるとき、補強リブの導入ブッシュ側に位置する端部で、ウエブの幅方向の内側に位置するコーナー部分が、ステムに形成した挿入孔の内径における軸方向前方の延長仮想円に対して突出する位置関係になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特公昭60-21249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のような状況で、建材に各種部材をねじ止め固定するため、下孔に挿入した拡開アンカーのステムにねじを挿入してねじ込んでいくと、ねじはステムの挿入孔に誘導されて直進するが、ねじの軸部先端に形成した尖鋭端が、補強リブの端部における内側コーナー部分、即ち、挿入孔の内周における軸方向前方の延長仮想円に対して突出する部分に接触することになる。
【0015】
このように、ねじの尖鋭端が補強リブに接触すると、直進しようとするねじが挿入孔の軸線延長に対して傾き、これが原因でねじは尖鋭端が導入ブッシュに対して傾斜した姿勢で侵入しようとする。
【0016】
導入ブッシュに対してねじの尖鋭端が傾いた姿勢で侵入すると、合成樹脂製である導入ブッシュの内周面に尖鋭端が突き刺さったり、内周面を強く引っ掻いたり擦ることになり、このため、導入ブッシュの周壁に孔が明いたり切れ目が発生し、導入ブッシュとこれにねじ込んだねじの確実な螺合が得られなくなり、導入ブッシュを確実に引き寄せ、ウエブが突っ張って拡開腕を支持することができず、拡開アンカーを固定できない事態が発生するという問題がある。
【0017】
そこで、この発明の課題は、全体の小型化を図った拡開アンカーにおいて、ウエブに設けた補強リブをできるだけ厚くウエブの全長に亘って設けても、差し込んだねじの尖鋭端を導入ブッシュへ傾き無く誘導することができ、導入ブッシュの損傷発生を防ぐことで、導入ブッシュへのねじの確実なねじ込みが行える拡開アンカーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記のような課題を解決するため、請求項1の発明は、ねじ挿入孔が貫通するステムの先端部両側にヒンジを介して拡開腕を設け、両拡開腕にそれぞれヒンジを介して連成した両ウエブの先端側を、ねじのねじ込み孔が貫通する導入ブッシュと結合した拡開アンカーであって、前記両ウエブの拡開腕に臨む内面側に、このウエブの長さ方向の全長に亘る長さと、ウエブの半分程度の幅を有する補強リブを、両ウエブにおいて相反する側縁に片寄った配置で設けこの補強リブの導入ブッシュ側に位置する端部のコーナーに、ねじ誘導用の凹欠部を設けたものである。
【0019】
請求項2の発明は、上記補強リブに設けたねじ誘導用の凹欠部は、前記補強リブの導入ブッシュ側に位置する端部で、ウエブの幅方向の内側に位置するコーナー部分の位置に設定され、この凹欠部が、上記ステムに設けたねじ挿入孔の内周における軸方向前方の延長仮想円に一致する円弧状に形成されているようにしたものである。
【0020】
ここで、ステムは、後端部外周にフランジと、外周面に供回り防止用のリブが設けられ、軸心に沿って貫通するねじ挿入孔は、後端側が大径で先端側が小径の二段孔となり、このステムの先端部は、ステムの開きすぎを防止するための小径の筒状部となり、前記ステムと一対の拡開腕は筒状部を挟んだ両側の位置で第1のヒンジを介して連成されている。
【0021】
上記ステムと拡開腕及びウエブは略等しい幅を有し、拡開腕のヒンジに近い位置にウエブが第2のヒンジを介して連成され、両ウエブの先端部間に第3のヒンジを介して導入ブッシュが連成されている。
【発明の効果】
【0022】
この発明によると、両ウエブの相反する側縁に片寄った配置で補強リブを設け、この補強リブの導入ブッシュ側に位置する端部のコーナーに、ねじ誘導用の凹欠部を設けたので、ステムに差し込んだねじの尖鋭端が凹欠部に侵入させることで、ねじの直進性が保たれてブレがなくなり、ねじの尖鋭端を導入ブッシュへ傾き無く誘導することができ、ねじの尖鋭端による導入ブッシュの損傷発生を防ぐことで、これにより、導入ブッシュへのねじの確実なねじ込みが得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】この発明に係る拡開アンカーの正面図
図2】同拡開アンカーの斜視図
図3】同拡開アンカーの縦断正面図
図4図1における矢印a-a線での断面図
図5図1における矢印b-b線の側から見たウエブとこれに設けた補強リブの構造を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0025】
図1乃至図3のように、この発明の拡開アンカー1は、角形の筒状になるステム2と、このステム2の先端側で両側位置に第1のヒンジ3を介して設けた一対の拡開腕4と、両拡開腕4のステム2と反対側の前面で途中の位置に、それぞれ第2のヒンジ5を介して前方へ内向きの傾斜状に設けられた一対のウエブ6と、両ウエブ6の接近させた先端間に第3のヒンジ7を介して設けられ、前記ステム2の前方位置に同軸心状の配置となる導入ブッシュ8とからなり、この拡開アンカー1は、材料に合成樹脂を用い、両拡開腕4がステム2の先端側で略直角に両側へ開き、両ウエブ6は両拡開腕4から前方に向けて先端が互いに接近するよう傾斜状に突出し、両ウエブ6の先端間に導入ブッシュ8が位置する形状に成型されている。
【0026】
上記ステム2は、後端部にフランジ9と、外周の各面に供回り防止用の複数のリブ10が設けられ、その軸線に沿って貫通するねじの挿入孔11は、後端側の大径孔11aと先端側の小径孔11bの段付き孔であり、大径孔11aの孔径はねじの挿入を助けるガイドの役目をするため、ねじの呼び径よりも大きくなっており、小径孔11bはねじをねじ込むことができる孔径になっている。
【0027】
上記フランジ9は、図示の場合円形に形成されたものを示したが、四角形や六角形であってもよく、また、リブ10はステム2の各面に設けられ、図4に示すように、ステム2の軸方向に沿って長く、ステム2の外面から半径方向の外向きに突出するよう横断面が台形に形成され、ステム2へのねじのねじ込み時における回転方向に向く面は、ステム2に対して垂直になり、反対側の面はステム2側に向けて広がるような傾斜面になっていると共に、先端側は外縁からステム2側に向けて下がり傾斜となる傾斜縁になっており、図2 のように、拡開腕4と同じ外面にあるリブ10においては、先端側が拡開腕4の第1のヒンジ3に達しない長さになっている。
【0028】
上記拡開アンカー1をねじのねじ込みによって固定するとき、リブ10には瞬時に高い回転方向のトルクがかかることになるが、このリブ10を上記のような形状及び構造とすることにより、トルクに抵抗する有効な回り止め効果が得られると共に、建材の下孔に挿入する際の抵抗を減らすことができることになるともに、第1のヒンジ3の部分での拡開腕4の回動に支障を与えることのないようになっている。
【0029】
図示の場合、上記ステム2の先端側は、このステム2に対する両側の第1のヒンジ3を連接した部分よりも前方に突出させ、ねじを過度にねじ込んだとき、引き寄せた導入ブッシュ8を先端で受けることで、拡開腕4の開きすぎ発生を防ぐ防止部12になっており、第1のヒンジ3と異なる外面に位置するリブ10は、その先端がこの開きすぎ防止部12の先端に近接する位置になるような長さに設定されている。
【0030】
上記ステム2の両側に設けた第1のヒンジ3は、略90°の角度で相反する外方へ弧状に屈曲し、この第1のヒンジ3の先端に連なって両側に張り出す拡開腕4は、第1のヒンジ3よりも少し幅が広くステム2の幅と同程度となり、前記第1のヒンジ3よりも厚みが厚くなっている。
【0031】
上記ウエブ6は、上記拡開腕4と等しい幅を有する厚みの比較的薄い角形の板であり、その後端側が、前記拡開腕4の前面側で第1のヒンジ3に近接する位置に設けた第2のヒンジ5を介して拡開腕4に連なり、先端側が拡開腕4に対してステム2の軸心延長線に向けて互いに接近する傾斜状となり、両ウエブ6の先端間に短い第3のヒンジ7を介して導入ブッシュ8が設けられている。
【0032】
上記両ウエブ6のステム2側に向く内面には、ウエブ6の耐折れ曲がり強度を向上させるための補強リブ13がそれぞれ設けられている。
【0033】
この補強リブ13は、ウエブ6の全長に亘る長さとウエブ6の半分の幅を有する直方体の形状を有し、両ウエブ6において、相反する側縁に沿うように位置を幅方向に違えた配置で設けられ、両拡開腕4を閉じてその対向面間にウエブ6を挟み込んだとき、補強リブ13が干渉することなく両ウエブ6が畳み込まれるようになっている。
【0034】
図3のように、導入ブッシュ8は、ウエブ6の幅と等しい長辺とこれよりも短い短辺の角形で、その軸心に沿ってねじのねじ込み孔14が貫通し、ステム2の前方位置に、ねじの挿入孔11とねじ込み孔14が同軸心状となる配置で両ウエブ6の先端間に設けられ、両ウエブ6の先端側の端部は、短い第3のヒンジ7を介して導入ブッシュ8の後端側でねじ込み孔14の開口端に臨むことになる。
【0035】
このため、ウエブ6の全長に亘って厚みのある補強リブ13を設けると、この補強リブ13の導入ブッシュ8の側に位置する端部は、内側のコーナー部分が、ステム2に形成した挿入孔11における小径孔11bの内周の軸方向延長仮想円に対して侵入する関係になり、このような侵入部分があると、ステム2から導入ブッシュ8に向けてねじをねじ込むとき、前記侵入部分にねじの先鋭端が接触し、ねじの直進を妨げてブレが発生し、先鋭端が傾斜して導入ブッシュ8に侵入することで、導入ブッシュ8の内周に損傷を生じさせることになる。
【0036】
これを防ぐため、この発明は、図3図5のように、上記補強リブ13の導入ブッシュ8側に位置する端部で幅方向内側のコーナー部分に、ねじ誘導用の凹欠部15を設け、導入ブッシュ8のねじ込み孔14へのねじの直進を妨げることのないようにしている。
【0037】
このねじ誘導用の凹欠部15は、補強リブ13の厚みの一部を削り取ることにより、上記挿入孔11の小径孔11bにおける内周の軸方向延長仮想円に一致する円弧状に形成されており、これにより、凹欠部15の内周面は導入ブッシュ8の手前の位置において、ねじ込み孔14の内周の一部と軸方向の離れた位置で一致する位相の配置となり、ねじの誘導が精度よく確実に行えることになる。
【0038】
図5の場合、上記補強リブ13において、拡開腕4側に位置する端部で幅方向内側のコーナー部分に面取り16を施し、ウエブ6の開き具合が不十分な状態のような時においても、先ず、面取り16間にねじが侵入してでウエブ6を両側に押し開き、ねじの先鋭端を導入ブッシュ8に誘導することができるようにしている。
【0039】
この発明の拡開アンカー1は、上記のような構成であり、拡開アンカー1を使用するときは、図1のように両側に広がる両拡開腕4を第1のヒンジ3の部分から互いに前方へ押して閉じるように接近させ、この拡開腕4を閉じると第2のヒンジ5を介して一対のステム2が前方に押し出され、第2のヒンジ5側の端部が接近しながら並列状に閉じて両拡開腕4の間に挟み込まれ、棒状になった両拡開腕4の先端部に導入ブッシュ8が位置する形態にする。
【0040】
この状態で拡開アンカー1を、導入ブッシュ8から両拡開腕4を建材の下孔に対し、ステム2のリブ10を下孔の内周から建材に食い込ませ、フランジ9が建材に当接するまで挿入すれば、建材の裏面側に位置することで折り畳みが開放された拡開腕4は、第1のヒンジ3の復元弾性でステム2に対して両側へ斜めの角度で張り出し、建材の裏面側に臨むような状態になり、第2のヒンジ5を介して引き戻された両ウエブ6は両側に開き、拡開アンカー1は、導入ブッシュ8がステム2の軸方向前方に位置する使用前の図1に示した成型姿に近い状態に戻る。
【0041】
次に、ステム2の挿入孔11にねじを挿入して小径孔11bにねじ込むと、ねじは挿入孔11の軸心に沿って前進することでステム2を貫通し、ステム2の先端から突出したねじの先鋭端は、両側に開いたウエブ6間を通って前方の導入ブッシュ8に向けて進むことになるが、このとき、両側のウエブ6の内面側にそれぞれ設けた補強リブは、導入ブッシュ8の側に位置する端部で幅方向の内側コーナー部分に、ねじ誘導用の凹欠部15が設けられ、且つ、この凹欠部15が挿入孔11における小径孔11bの内周の軸方向延長仮想円に一致する円弧状に形成されているので、ねじの前進方向の前方には障害物の突出発生がない状態になっている。
【0042】
従って、ねじはステム2を貫通後の前進途中において、拡開アンカー1を形成する樹脂の撓みや、補強リブ13の開き具合の差などによって軸心にブレが生じた場合でも、ねじの先鋭端は両側の凹欠部15間に侵入して前進が誘導され、この誘導によりねじはその軸心が前方に位置する導入ブッシュ8の軸心と一致することになり、このため、前進するねじの先鋭端は導入ブッシュ8に対して傾きなく軸心に沿って侵入し、導入ブッシュ8の内周に傷を付けたり破損を生じさせることはない。
【0043】
導入ブッシュ8にねじがねじ込まれ、ねじの頭部が固定物に当接した状態でねじを締めつけるようにすると、ねじは小径孔11bの内周を壊すようにして定位置で回転し、このねじの定位置回転により、ねじが螺合した導入ブッシュ8がステム2の側に引かれることになり、これにより、両ウエブ6を介して両拡開腕4が押されて建材の裏面側に圧接し、建材の板厚が薄い場合、導入ブッシュ8はステム2の先端の防止部12に当接することで拡開腕4の過剰な拡開の発生を防ぎ、拡開アンカー1は両拡開腕4とフランジ9で建材を挟み込むことで固定され、建材への固定物の取付けが完了する。
【符号の説明】
【0044】
1 拡開アンカー
2 ステム
3 第1のヒンジ
4 拡開腕
5 第2のヒンジ
6 ウエブ
7 第3のヒンジ
8 導入ブッシュ
9 フランジ
10 リブ
11 挿入孔
11a 大径孔
11b 小径孔
12 開きすぎ防止部
13 補強リブ
14 ねじ込み孔
15 凹欠部
16 面取り
図1
図2
図3
図4
図5