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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083077
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】外用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20230608BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20230608BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20230608BHJP
   A61K 8/893 20060101ALI20230608BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230608BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20230608BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20230608BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230608BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230608BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230608BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/06
A61K8/19
A61K8/893
A61Q19/00
A61Q1/00
A61K9/107
A61K47/36
A61K47/02
A61K47/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197200
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堺 友美
(72)【発明者】
【氏名】野口 友里
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076BB31
4C076DD29
4C076EE27
4C076EE30
4C076FF16
4C076FF43
4C083AB032
4C083AB172
4C083AB211
4C083AB212
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB432
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC622
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD172
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD532
4C083CC02
4C083DD32
4C083EE01
(57)【要約】
【課題】金属酸化物及びステアリン酸イヌリン又は架橋型ポリエーテル変性シリコーンを配合して調製した外用組成物を保存すると、経時的に分離が見られ、製剤安定性が劣るといった新たな課題を見出した。すなわち、本発明の目的は、金属酸化物及びステアリン酸イヌリン又は架橋型ポリエーテル変性シリコーンを含有し、製剤安定性を向上した外用組成物を提供することである。
【解決手段】(a)ヘパリン類似物質、(b)金属酸化物、及び(c)ステアリン酸イヌリン又は架橋型ポリエーテル変性シリコーンを含有することを特徴とする外用組成物、である。本発明の外用組成物は、化粧料、医薬部外品、医薬品などの用途に使用できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ヘパリン類似物質、(b)金属酸化物、及び(c)ステアリン酸イヌリン又は架橋型ポリエーテル変性シリコーンを含有することを特徴とする外用組成物。
【請求項2】
乳化物である請求項1に記載の外用組成物。
【請求項3】
さらに、(d)ポリエーテル変性シリコーンを含有する、請求項1~2のいずれかに記載の外用組成物。
【請求項4】
油中水型である、請求項1~3のいずれかに記載の外用組成物。
【請求項5】
化粧料、医薬部外品、又は医薬品である、請求項1~4のいずれかに記載の外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物を含有する外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘパリン類似物質は、酸性ムコ多糖類の一種であり、皮膚に対する保湿効果や抗炎症作用、血流促進、瘢痕・ケロイドの治療や予防など幅広い効果があることから医薬品や医薬部外品などの外用製剤に配合されている。
【0003】
金属酸化物は、肌の明暗や色彩を調整し肌の色調的トラブルを隠蔽する目的や、紫外線の影響から肌を防御する紫外線散乱剤、べたつきやのびの悪さといった製剤使用感の短所をカバーする感触改良剤として使用されている。このように多様な目的で外用製剤に配合される一方で、金属酸化物を配合した外用製剤の場合には、金属酸化物の粉末が凝集してしまうという問題があり、これにより製剤の乳化安定性が損なわれることが一般的に知られている。金属酸化物の分散性を向上するため、分散剤として水溶性高分子を配合した技術や(特許文献1)、金属酸化物の表面を疎水化もしくは親水化処理して得た表面処理粉体を外用製剤に配合した技術が開発されている(特許文献2)。また、金属酸化物の表面を疎水化処理するだけでは疎水化処理粉体の分散性、及び乳化安定性が十分ではなく、ポリグリセリン誘導体を配合することによって製剤安定性を向上できることが報告されている(特許文献3)。
【0004】
一般的に、化粧料など皮膚に適用する外用組成物は、製剤安定性を向上するために、製剤に応じて様々な増粘剤が用いられている。その中でも金属酸化物を配合した外用製剤によく使用される増粘剤としては、高分子エステル、シリコーンゲル、粘度鉱物などが挙げられる。これらを用途別に使い分け、配合成分等を変えることで、金属酸化物を配合した製剤安定性の良好な外用製剤を調製することができる。
しかし、ヘパリン類似物質と金属酸化物とステアリン酸イヌリン又は架橋型ポリエーテル変性シリコーンを配合した外用組成物は知られておらず、金属酸化物とステアリン酸イヌリン又は架橋型ポリエーテル変性シリコーンを配合した外用組成物にヘパリン類似物質を配合すると製剤にどのように影響するかについては全く報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-1999号公報
【特許文献2】WO2020/085241号公報
【特許文献3】特許第4611832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、金属酸化物を配合した製剤安定性の良好な外用組成物を提供するため、金属酸化物及びステアリン酸イヌリン又は架橋型ポリエーテル変性シリコーンを配合して調製した外用組成物を保存したところ、経時的に分離が見られ、製剤安定性が劣るといった新たな課題を見出した。
【0007】
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、金属酸化物及びステアリン酸イヌリン又は架橋型ポリエーテル変性シリコーンを含有し、製剤安定性を向上した外用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ヘパリン類似物質、金属酸化物、及びステアリン酸イヌリン又は架橋型ポリエーテル変性シリコーンを配合した外用組成物は、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、
(1)(a)ヘパリン類似物質、(b)金属酸化物、及び(c)ステアリン酸イヌリン又は架橋型ポリエーテル変性シリコーンを含有することを特徴とする外用組成物、
(2)乳化物である(1)に記載の外用組成物、
(3)さらに、(d)ポリエーテル変性シリコーンを含有する(1)~(2)のいずれかに記載の外用組成物、
(4)油中水型である、(1)~(3)のいずれかに記載の外用組成物、
(5)化粧料、医薬部外品、又は医薬品である、(1)~(4)のいずれかに記載の外用組成物、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、金属酸化物、ステアリン酸イヌリン又は架橋型ポリエーテル変性シリコーンを含有し、製剤安定性に優れた外用組成物を提供することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の外用組成物において用いる各成分は、通常医薬品、医薬部外品、又は化粧料に用いられる品質のものを適宜使用することができる。
【0012】
本発明のヘパリン類似物質の含有量は、本発明の外用組成物中、0.01~5w/w%が好ましく、0.1~0.5w/w%がより好ましい。
【0013】
本発明の金属酸化物としては通常医薬品、医薬部外品、又は化粧料に使用されるものであれば特に限定されないが、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化チタン被覆雲母(雲母チタン)、酸化鉄(黒酸化鉄、ベンガラ、黄酸化鉄)、シリカ、マイカ、タルク、酸化クロム、酸化アルミニウム、カオリンなどが挙げられる。また、金属酸化物の表面をシリコンやその他成分で表面修飾したものを使用することもできる。これらは1種単独で使用しても良く、2種以上を組み合わせて使用しても良い。金属酸化物の含有量は、本発明の外用組成物中、0.01~30w/w%が好ましく、0.1~20w/w%がより好ましい。
【0014】
本発明のステアリン酸イヌリンの含有量は、本発明の外用組成物中、0.01~5w/w%が好ましく、0.1~3w/w%がより好ましい。
【0015】
本発明の架橋型ポリエーテル変性シリコーンとしては、ポリシロキサン鎖をポリエーテルによって架橋した三次元架橋物であれば特に限定されない。この架橋型ポリエーテル変性シリコーンの具体例としては、例えば、(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマー等の表示名称で知られている。さらに、主鎖にアルキル分岐を持つ架橋物としては、例えば、(PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、(PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマーが挙げられる。これらはシリコーンオイルやその他のオイルを含む膨潤物として市販され、例えば、信越化学工業株式会社から販売されているKSG-210、240、310,320、320Z、330,340,350Z、360Z,380Z等(商品名)を使用することができる。架橋型ポリエーテル変性シリコーンの含有量は、本発明の外用組成物中、0.01~10w/w%が好ましく、0.1~2w/w%がより好ましい。
【0016】
本発明の外用組成物は、製剤安定性の観点から、乳化組成物であることが一層好ましいものとなる。乳化組成物の安定性を向上するために乳化剤を配合してもよく、この乳化剤としては、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステロール、レシチン誘導体、高分子乳化剤等が挙げられ、ポリエーテル変性シリコーンがより好ましい。
【0017】
本発明のポリエーテル変性シリコーンとしては、ポリエーテルとシリコーン構造を持つ物であれば特に限定されない。ポリエーテル変性シリコーンの具体例としては、例えば、PEG-10ジメチコン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ポリシリコーン-13等の表示名称で知られている。さらに、アルキル鎖を持つものとしてはラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等が挙げられる。これらは1種単独で使用しても良く、2種以上を組み合わせて使用しても良い。ポリエーテル変性シリコーンの含有量は、本発明の外用組成物中、0.01~5.0w/w%が好ましく、0.1~2.0w/w%がより好ましい。
【0018】
本発明の外用組成物は、油中水型又は水中油型の乳化組成物であってもよく、このうち好ましいのは油中水型外用組成物である。
【0019】
本発明の外用組成物は、上記の各成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、通常の化粧品、医薬部外品、医薬品などに用いられる各種成分を適宜配合することができる。例えば、シリコン油、植物油、低級アルコール類、高級脂肪酸、テルペン類、抗酸化剤、無機塩類、有機酸及びその塩、有機アミン類及びその塩、キレート剤、増粘剤、中和剤、紫外線吸収剤、多価アルコール、各種アミノ酸、ビタミン誘導体、香料等を適宜配合することができる。これらの成分の添加量は、特に制約はなく、使用感等を考慮しながら適宜定めることができる。
【0020】
本発明の外用組成物は化粧料、医薬部外品、医薬品などの用途に使用できる。本発明の外用組成物は、剤形に応じて常法により製造することができる。
【実施例0021】
以下に、実施例、比較例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明は、下記の例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において、数値は全て質量%を意味するものとする。
【0022】
(外用組成物の調製法)
下記の表1に示す処方に従い、適宜水を加えた(a)ヘパリン類似物質、(b)~(d)及びシクロペンタシロキサンの各成分を加温し均一に溶解させた。加温した(b)~(d)及びシクロペンタシロキサンを攪拌しているところへ、(a)を徐々に添加し、2000rpm(実施例1及び比較例1)もしくは1500rpm(実施例2及び比較例2)で3分攪拌し乳化した。その後、冷却し、実施例及び比較例の乳化組成物を得た。
【0023】
(製剤安定性の評価)
実施例1~2、比較例1~2の各外用組成物を50mLのPETスクリュー管に約20gずつ充てんし、50℃で2週間保管した。当該サンプルに対して目視で外観を確認し、以下の評価基準に従って乳化安定性を評価した。
(安定性の評価基準)
○:分離なし
×:分離が認められた
【0024】
【表1】
【0025】
表1の結果から明らかなように、シリコーン被覆酸化亜鉛、ステアリン酸イヌリン又は(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマーを配合した外用組成物は経時的に分離が認められた(比較例1~2)。一方、ヘパリン類似物質を配合した実施例1~2の組成物は分離しなかった。
(処方例)
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明により、ヘパリン類似物質、金属酸化物、ステアリン酸イヌリン又は架橋型ポリエーテル変性シリコーンを配合し、製剤安定性に優れた外用組成物を提供することが可能になった。