IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社パークウェイの特許一覧

<>
  • 特開-櫛 図1
  • 特開-櫛 図2
  • 特開-櫛 図3
  • 特開-櫛 図4
  • 特開-櫛 図5
  • 特開-櫛 図6
  • 特開-櫛 図7
  • 特開-櫛 図8
  • 特開-櫛 図9
  • 特開-櫛 図10
  • 特開-櫛 図11
  • 特開-櫛 図12
  • 特開-櫛 図13
  • 特開-櫛 図14
  • 特開-櫛 図15
  • 特開-櫛 図16
  • 特開-櫛 図17
  • 特開-櫛 図18
  • 特開-櫛 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083083
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】櫛
(51)【国際特許分類】
   A45D 24/00 20060101AFI20230608BHJP
   A45D 24/14 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
A45D24/00 E
A45D24/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197214
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】395021860
【氏名又は名称】株式会社パークウェイ
(74)【代理人】
【識別番号】100120813
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】波握 英珠
(57)【要約】
【課題】パーティングやブロッキング等の毛髪を分ける作業を行う際、作業対象となる毛髪との接触抵抗等を低減してスムーズに作業を行えるようにする。
【解決手段】櫛1は、櫛背部2の長手方向における一端側2aから延出する一端縁櫛部3の先端範囲に溝10を形成すると共に、櫛背部2の他端側2bから櫛背部2の長手方向に沿って延出するテール5にテール溝11を形成する。一端縁櫛部3又はテール5の先端でパーティングやブロッキング等の毛髪を分ける作業を行う際、溝10又はテール溝11により、毛髪との接触抵抗等を低減し、毛髪の中で櫛1を移動させやすくしてスムーズな作業を可能にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背骨状の櫛背部と、前記櫛背部の長手方向と直交する向きに前記櫛背部から突出する複数本の櫛歯と、前記櫛背部の端側から延出する先細形状の延出部とを備え、前記延出部の先端で毛髪を分ける作業を行えるようにした櫛において、
前記延出部は、幅方向に直交的な表面側における先端範囲に溝を備え、
前記溝は、前記延出部の先端側から前記櫛背部の方へ延びるように形成してあることを特徴とする櫛。
【請求項2】
前記延出部は、前記櫛背部の一端側から櫛歯の突出する方向と平行的に延出するように形成してある請求項1に記載の櫛。
【請求項3】
前記延出部は、先端を、前記櫛背部の長手方向と平行的なフラット形状にしており、
前記溝は、フラット形状の先端に溝端部が表出するように形成してある請求項2に記載の櫛。
【請求項4】
前記延出部は、前記櫛背部の他端側から櫛歯の突出する方向と平行的に延出するように形成してある請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の櫛。
【請求項5】
前記櫛背部は、前記延出部の先端に応じた箇所を示す先端印を備える請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の櫛。
【請求項6】
前記延出部は、前記櫛背部の他端側から前記櫛背部の長手方向に沿って棒状で延出するように形成してある請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の櫛。
【請求項7】
前記櫛背部の他端側から延出する棒状の延出部は、幅方向に直交的な表面側の先端箇所にフラット面を備え、
前記溝は、前記フラット面を横切るように形成してある請求項6に記載の櫛。
【請求項8】
前記櫛歯は、幅方向に直交的な表面側における先端範囲に櫛歯溝を備え、
前記櫛歯溝は、前記櫛歯の先端側から前記櫛背部の方へ延びるように形成してある請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の櫛。
【請求項9】
前記櫛背部は、前記複数本の櫛歯の中で前記櫛背部の長手方向で真ん中に位置する櫛歯に応じた箇所を示す中央印を備える請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の櫛。
【請求項10】
前記櫛背部は、前記複数本の櫛歯の中で前記櫛背部の長手方向に沿って所定間隔に位置する櫛歯ごとに応じた箇所を示す所定間隔印を備える請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の櫛。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪を分ける作業をスムーズに行えるようにすると共に、毛髪の中に櫛歯等が埋もれても櫛歯等の位置を把握しやくした櫛に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、櫛は、背骨状の櫛背部から突出する複数本の櫛歯で髪を梳くと云った整髪に使われることが一般的であるが、職業的な櫛のユーザである美容師や理容師は、櫛背部から延出する先細形状の延出部で毛髪を分ける作業も櫛で行う。このような毛髪を分ける作業の例としては、分け目を形成する作業(パーティングと称される)や、カット又はパーマ等の対象となる一定量の毛束を部位ごとに分ける作業(ブロッキングと称される)などがある。
【0003】
図17(a)は従来の櫛の一例である櫛Kを示し、櫛Kは櫛背部K1より複数本の櫛歯K2を突出すると共に、櫛背部K2の一端K1aとなる側に、櫛歯K2と平行的に、先細形状の縁櫛部K3(延出部に相当)を延出している。
【0004】
図17(b)は、縁櫛部K3によるパーティングの作業例を示し、頭皮Tにおいて分け目Wを作りたい箇所に、縁櫛部K3の先端K3aを押し当てると共に、櫛Kを把持しない側の手の指Fを縁櫛部K3aにあてがって、分け目Wを形成しようとする線に沿って縁櫛部K3を移動させることで、頭皮Tにおける分け目Wに沿って所定量の毛髪Hを順次二つに分けて分け目線を形成する。
【0005】
また、図18は櫛Kの縁櫛部K3で側頭部辺りの毛髪Hの中から毛束を取り分けるブロッキングの作業例を示す。このブロッキングでは、縁櫛部K3の先端K3aを頭皮に押し当てた状態で櫛Kを移動させることになる。櫛Kの移動方向としては、対象となる部位や、分ける向きなどに応じて様々であるが、例えば、図18に示すように、櫛Kを上から下へ移動させる場合(図中の黒矢印方向参照)、櫛Kを下から上へ移動させる場合(図中の白矢印方向参照)などがある(櫛Kを右から左へ、又は左から右へ移動させる場合も勿論ある)。なお、パーティングやブロッキングの際の櫛の姿勢としては、頭皮に対して櫛を垂直的に立たせる手法や、頭皮に対して櫛を寝かせて櫛に対する角度を90度より小さくする手法などがあり、これらの手法やユーザの癖や好みに応じて適宜、選ばれる。
【0006】
さらに、図19は、櫛Kの持ち手(把手)部分であるテールK5(延出部に相当)でブロッキングを行う例を示す。テールK5でブロッキングを行う場合も、図18の場合と同様に、テールK5の先端K5aを頭皮に押し当てて、櫛Kを上から下へ移動させたり(図中の黒矢印方向参照)、櫛を下から上へ移動させる(図中の白矢印方向参照)ことなどで、側頭部辺りの毛髪Hから一定量の毛束(ブロック)を取り分ける。なお、パーティングやブロッキングなどの作業で、櫛Kの縁櫛部K3を使うか又はテールK5を使うかは、美容師等のユーザの好みや癖などにより、各ユーザによって使いやすい方が選択される。
【0007】
また、図18、19では、櫛背部K1の後方から棒状の持ち手部分(テールK5)を延出したテールコームと称されるタイプの櫛を示すが、棒状の持ち手部分(テール)の無いタイプの櫛も存在する。このような持ち手部分の無いタイプの櫛は一般にカットコームと称されており(カッティングコーム又はテーツコームと称される場合もある)、櫛背部の一端又は他端側から櫛歯と同方向に延出する縁櫛部(延出部に相当)で、パーティングやブロッキングなどの作業を可能にする。
【0008】
下記の特許文献1は、パーティング等に使用可能な櫛を示す。この櫛は、基部(櫛背部)より延出する分け目形成部(延出部)の先端側に、隣接する櫛歯2との間隔を広げるため、肉盗み部を設けると共に、分け目形成部(延出部)の先端部を、複数の櫛歯の先より突出させて、パーティングを行いやすくしている。なお、パーティング等に使用可能な櫛の例は、特許文献2、3にも示される。また、下記の特許文献4、5は、先端が二股に分かれたスリット状の凹部を形成した櫛歯を有する櫛を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】登録実用新案第3132022号公報
【特許文献2】実開平06-66504号公報
【特許文献3】特許第5690976号公報
【特許文献4】特開平11-332636号公報
【特許文献5】特許第4452318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
パーティングやブロッキングを行う櫛の移動ライン上における頭皮に、頭皮より隆起した毛穴や吹き出物等が存在することがあり、パーティング等の作業を行う際、このような隆起した毛穴等に、頭皮等に押し当てている延出部の先端が引っかかることなどで、櫛の移動がジグザグ状になり、櫛のスムーズな移動が妨げられ作業性を悪化させるという問題がある。
【0011】
また、パーティングやブロッキングを行う際の櫛の移動線上を横切る毛髪に、頭皮に押し当てている延出部の先端が乗り上げてしまい、櫛の移動を妨げるという問題が生じることもある。特に、この問題は、櫛を頭皮に対して寝かせた姿勢でパーティングやブロッキングを行う際に発生しやすい。
【0012】
さらに、ブロッキング等の作業を行う場合は、取り分けた毛束に櫛歯を入れて整髪しながら、カット又はパーマの対象にする毛束の巾などの寸法調整することがあり、この際、毛髪量が多きときなどは、毛髪(毛束の毛髪)の中に櫛歯の全長の大半が埋もれてしまい、櫛歯の位置を把握することが困難になり、毛束の巾などの寸法調整が行いにくくなるという問題もある。
【0013】
なお、特許文献1に係る櫛は、分け目形成部(延出部)の先端側に肉盗み部を設けたので、先端側が通常の延出部に比べて細くなっており、それに伴い先端側が強度的に弱くなり、パーティングやブロッキングの際などに先端側を頭皮へ押し当てることに対して強度的な問題が生じる。また、特許文献4、5に示す凹部を仮に、パーティングやブロッキングを行う延出部の先端に適用した場合を想定すると、この凹部はスリット状に割れて二股に分かれているので、毛髪はスリット状に割れた隙間に入り込んで抵抗になったり、絡まったりすることなどで、パーティングやブロッキングの妨げとなり、このようなスリット状の凹部はパーティングやブロッキングに不適であることが予想される。
【0014】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、パーティングやブロッキング等の毛髪を分ける作業を行う櫛の延出部の先端範囲に溝を形成することにより、パーティングやブロッキング等の作業の際、隆起した毛穴などの影響を低減してスムーズに移動できるようにした櫛を提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、櫛歯の先端範囲に櫛歯溝を形成することにより、整髪を行う際にも、隆起した毛穴などの影響を抑えてスムーズに動かして整髪を行えるようにした櫛を提供することを目的とする。
【0016】
さらに、本発明は、櫛背部に所定の櫛歯に応じた箇所を示す印を設けることにより、櫛歯が毛髪の中に埋もれた場合でも、印に基づき所定の櫛歯の位置をユーザが把握しやすくした櫛を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために本発明に係る櫛は、背骨状の櫛背部と、前記櫛背部の長手方向と直交する向きに前記櫛背部から突出する複数本の櫛歯と、前記櫛背部の端側から延出する先細形状の延出部とを備え、前記延出部の先端で毛髪を分ける作業を行えるようにした櫛において、前記延出部は、幅方向に直交的な表面側における先端範囲に溝を備え、前記溝は、前記延出部の先端側から前記櫛背部の方へ延びるように形成してあることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る櫛は、前記延出部が、前記櫛背部の一端側から櫛歯の突出する方向と平行的に延出するように形成してあることを特徴とする。
さらに、本発明に係る櫛は、前記延出部が、先端を、前記櫛背部の長手方向と平行的なフラット形状にしており、前記溝は、フラット形状の先端に溝端部が表出するように形成してあることを特徴とする。
さらにまた、本発明に係る櫛は、前記延出部が、前記櫛背部の他端側から櫛歯の突出する方向と平行的に延出するように形成してあることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る櫛は、前記櫛背部が、前記延出部の先端に応じた箇所を示す先端印を備えることを特徴とする。
また、本発明に係る櫛は、前記延出部が、前記櫛背部の他端側から前記櫛背部の長手方向に沿って棒状で延出するように形成してあることを特徴とする。
さらに、本発明に係る櫛は、前記櫛背部の他端側から延出する棒状の延出部は、幅方向に直交的な表面側の先端箇所にフラット面を備え、前記溝は、前記フラット面を横切るように形成してあることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る櫛は、前記櫛歯が、幅方向に直交的な表面側における先端範囲に櫛歯溝を備え、前記櫛歯溝は、前記櫛歯の先端側から前記櫛背部の方へ延びるように形成してあることを特徴とする。
また、本発明に係る櫛は、前記櫛背部が、前記複数本の櫛歯の中で前記櫛背部の長手方向で真ん中に位置する櫛歯に応じた箇所を示す中央印を備えることを特徴とする。
さらに、本発明に係る櫛は、前記櫛背部が、前記複数本の櫛歯の中で前記櫛背部の長手方向に沿って所定間隔に位置する櫛歯ごとに応じた箇所を示す所定間隔印を備えることを特徴とする。
【0021】
本発明では、パーティングやブロッキング等に用いられる櫛の延出部の先端範囲に溝を設けたので、パーティングやブロッキング等を行う櫛の移動線上に存在する隆起した毛穴等や移動線上を横切るような毛髪を、溝で乗り越えるような状況を作りだし、毛穴等や毛髪により、頭皮に押し当てている延出部の先端が移動を妨げられにくくなり、その結果、従来に比べて、櫛をスムーズに移動させやすくなる。このように櫛をスムーズに移動させやすくなるのは、頭皮に対して櫛を垂直的に立たせている場合だけでなく、頭皮に対して櫛を寝かせてパーティングやブロッキングを行う場合でも、延出部の表面側で延びるように形成された溝で毛穴等や毛髪を乗り越えるようになり、それによりユーザの思うように櫛を移動させやすくなる。
【0022】
なお、本発明では、延出部の先端範囲に溝を形成する構造なので、特許文献1の櫛のように、肉盗み部によって先端側の外形寸法が細くなることもないため、延出部の先端側は強度的に不足せず十分である。また、本発明に係る溝は、溝という構成であることから溝底があるので、特許文献4、5に係る櫛の凹部のように、スリット状に割れていないことから、スリット状の凹部に毛髪が入り込むような事態も生じないので、スムーズな櫛の移動を確保できる。
【0023】
本発明では、櫛背部の一端側から櫛歯の突出方向と平行的に延出する延出部に溝を形成したので、パーティングやブロッキング等の作業を行うにあたり、櫛歯の突出方向と同方向の延出部を用いるユーザに好適となる櫛を提供できるようになる。なお、このような櫛歯の突出方向と同方向の延出部に溝を形成することは、持ち手部分の無いタイプの櫛(カットコーム)、及び持ち手部分のあるタイプの櫛(テールコームなど)の両方に適用可能である。また、櫛背部の一端側は、持ち手部分の無いタイプの櫛の場合は、櫛背部の長手方向のいずれか一方の端が該当し、持ち手部分のあるタイプの櫛の場合は、櫛背部の長手方向において、持ち手部分を設けた反対側の端(先端)が該当する。
【0024】
本発明では、延出部の先端を櫛背部の長手方向と平行的なフラット形状にしたので、延出部の先端が尖っている場合に比べて、一定の巾を確保できるようになり、それにより、パーティングやブロッキング等の際、延出部で毛髪を両側に分けるときに、分け目の境界の巾を広く確保できるようになり、明確な分け目を形成しやすくなる。また、分け目の境界の巾が広くなると、隆起した毛穴等や、境界を横切る毛髪も多くなるが、本発明にあっては、そのようなフラット形状の先端に溝端部が表出するように溝を形成したので、分け目の境界に存在する毛穴や毛髪等を確実に溝で乗り越える状況を確保し、櫛の移動が妨げられるのを回避して櫛の移動をスムーズに行える。
【0025】
本発明では、櫛背部の他端側から櫛歯の突出する方向と平行的に延出する延出部に溝を設けたので、櫛背部の他端側に設けた延出部でユーザがパーティングやブロッキング等を行う場合でも、上述した櫛背部の一端側に設けた延出部の場合と同様に、隆起した毛穴や毛髪等の影響を回避してスムーズに櫛を移動させられる。なお、櫛背部の他端側の延出部に溝を形成する場合、櫛背部の一端側の延出部にも溝を設けるとき、又は、設けないときの二通りのパターンが想定される。
【0026】
本発明では、櫛背部の一端側又は他端側から延出する延出部の先端に応じた箇所を示す先端印を櫛背部に設けたので、パーティングやブロッキング等を行う箇所の毛髪量が多くて、延出部が根本まで毛髪の中に埋もれた状態であっても、櫛背部は毛髪の中に埋もれることないことから、櫛背部に設けた先端印で延出部の先端位置をユーザは把握できるようになる。そのため、毛髪量が多い箇所をパーティングやブロッキング等を行う場合でも、櫛背部の先端印を目安にして延出部の先端側の位置を掴んで、ユーザの所望するラインに沿って毛髪を分ける作業を行うことを補助できる。
【0027】
本発明では、櫛背部の他端側から櫛背部の長手方向に沿って棒状に延出する延出部に溝を設けたので、持ち手(把手)部分を有するタイプの櫛(テールコーム)の持ち手部分を延出部にしてユーザがパーティングやブロッキング等の作業を行う場合でも、上述した櫛背部の一端側等に設けた延出部の場合と同様に、隆起した毛穴や毛髪等の影響を回避してスムーズに櫛を移動させられる。なお、持ち手部分を延出部にして溝を形成する場合、櫛背部の一端側の延出部に溝を設けるとき、又は、設けないときが想定され、同様に、櫛背部の他端側の延出部に溝を設けるとき、又は、設けないときが想定される。
【0028】
本発明では、先端範囲に溝を設けた棒状の延出部(櫛の持ち手部分)において、その幅方向と直交的な表面側の先端箇所にフラット面を形成したので、棒状の延出部(持ち手部分)を頭皮に対して寝かせた姿勢でパーティングやブロッキングを行う場合、延出部の先端箇所のフラット面が頭皮に面接触的に当接するようになり、棒状の延出部が断面周方向に回りにくくなり、安定した姿勢でパーティングやブロッキング等の作業を行える。さらに、本発明にあっては、上述したフラット面を横切るように溝を形成したので、フラット面を頭皮に当接させた状態で、溝により、隆起した毛穴や毛髪等の影響が回避されると共に、頭皮等との接触抵抗も溝の存在により低減され、櫛のスムーズな移動を確保するのに貢献できる。
【0029】
本発明では、櫛歯の幅方向に直交的な表面側における先端範囲に櫛歯溝を設けたので、櫛歯で髪を梳く等の整髪を行う際、隆起した毛穴等による抵抗や整髪対象の毛髪との接触抵抗等による影響を櫛歯溝で低減してスムーズな整髪が行いやすくなる。また、櫛歯溝は、櫛歯の先端側から櫛背部の方向へ延びるように形成してあるので、櫛歯を頭皮に対して寝かす姿勢で整髪等を行う場合でも、一定の長さで延びる櫛歯溝により、毛髪に対する抵抗を低減して良好な感触の整髪が実現可能となる。
【0030】
本発明では、複数の櫛歯の中で前記櫛背部の長手方向で真ん中に位置する櫛歯に応じた箇所を示す中央印を櫛背部に設けたので、毛髪量が多い箇所の整髪等を行う場合に毛髪の中に櫛歯が埋もれても、櫛背部までは毛髪の中に埋もれないことから、複数の櫛歯の中の中央箇所を櫛背部の中央印を目安にしてユーザは認識できるようになり、毛束の量などを整えやすくするのに役立てられる。
【0031】
本発明では、複数の櫛歯の中で前記櫛背部の長手方向に沿って所定間隔に位置する櫛歯ごとに応じた箇所を示す所定間隔印を櫛背部に設けたので、毛髪量が多い箇所の整髪等を行う場合に毛髪の中に櫛歯が埋もれても、所定間隔の櫛歯の位置を櫛背部の各所定間隔印で目安にしてユーザは認識できるようになり、毛髪量の多い毛束の巾などの調整に役立てられる。
【発明の効果】
【0032】
本発明にあっては、櫛の延出部の先端範囲に溝を設けたので、パーティングやブロッキング等の作業を行う櫛の移動線上の毛穴や毛髪等を溝で乗り越えるような状況を作りだし、毛穴や毛髪等による延出部の移動を妨げる影響を低減できるので、パーティングやブロッキング等の作業の際、従来の櫛に比べて、ユーザは櫛をスムーズに移動でき、毛束の取り分け等の作業を効率的に行える。
【0033】
また、本発明にあっては、櫛背部の一端側から櫛歯の突出方向と平行的に延出する延出部に溝を形成したので、櫛背部の一端側に設けた延出部をパーティングやブロッキング等に用いるユーザに好適な櫛を提供できる。
さらに、本発明にあっては、延出部の先端を櫛背部の長手方向と平行的なフラット形状にしたので、パーティングやブロッキングの際、分け目の境界の巾を広く確保して、明確な分け目を形成できる。
【0034】
さらにまた、本発明にあっては、櫛背部の他端側から櫛歯の突出する方向と平行的に延出する延出部に溝を設けたので、櫛背部の他端側に設けた延出部でユーザがパーティングやブロッキング等の作業を行う場合でも、毛穴や毛髪等の影響を回避して、ユーザはスムーズに櫛の移動を行える。
【0035】
本発明にあっては、櫛背部の一端側又は他端側に設けた延出部の先端に応じた箇所を示す先端印を櫛背部に設けたので、延出部が根本まで毛髪の中に埋もれても、櫛背部の先端印で一端側又は他端側の延出部の位置をユーザは把握でき、毛髪量が多い箇所をパーティングやブロッキング等の作業を行う場合でも、ユーザの所望ラインに沿って櫛を移動することを補助できる。
【0036】
また、本発明にあっては、櫛背部の他端側から櫛背部の長手方向へ棒状に延出する延出部に溝を設けたので、櫛の持ち手部分を延出部にしてパーティングやブロッキング等の作業を行う場合でも、毛穴や毛髪等の影響を回避してユーザはスムーズに櫛を移動できる。
【0037】
さらに、本発明にあっては、棒状の延出部となる持ち手部分において、先端箇所にフラット面を形成したので、持ち手部分を頭皮に対して寝かせた姿勢でパーティングやブロッキングを行う場合、先端箇所のフラット面が頭皮に面接触的に当接して、棒状の延出部が周方向に回るのを防ぎ、安定した姿勢でパーティングやブロッキング等の作業を行うことに役立てられる。
【0038】
本発明にあっては、櫛歯の幅方向に直交的な表面側となる櫛歯の先端範囲に櫛歯溝を設けたので、櫛歯で髪を梳く等の整髪を行う際に、整髪対象の毛髪の接触抵抗や隆起した毛穴等による抵抗の影響を櫛歯溝で低減してスムーズな整髪を行える。
【0039】
また、本発明にあっては、複数の櫛歯の中で前記櫛背部の長手方向で真ん中に位置する櫛歯に応じた箇所を示す中央印を櫛背部に設けたので、ユーザが毛髪量が多い箇所の整髪等を行う場合に櫛背部の中央印を目安にして櫛歯の位置を認識しながら整髪を行える。
【0040】
さらに、本発明にあっては、複数の櫛歯の中で前記櫛背部の長手方向に沿って所定間隔に位置する櫛歯ごとに応じた箇所を示す所定間隔印を櫛背部に設けたので、毛髪量が多い箇所の整髪等を行う場合、櫛背部の各所定間隔印で目安にしてユーザは所要寸法を認識でき、毛髪量の多い毛束の巾などの調整を行うのに役立てられる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の第1実施形態に係る櫛を示す概略斜視図である。
図2】第1実施形態に係る櫛の正面図である。
図3】第1実施形態に係る櫛の平面図である。
図4】第1実施形態に係る櫛の一端縁櫛部から他端縁櫛部へ至る箇所を示す拡大平面図である。
図5】第1実施形態に係る櫛の櫛背部における一端側から他端側の範囲の箇所を示す拡大平面図である。
図6】第1実施形態に係る櫛の他端縁櫛部からテールへ至る範囲の箇所を示す拡大正面図である。
図7】第1実施形態に係る櫛の一端縁櫛部付近を示す要部拡大正面図である。
図8】(a)は、第1実施形態に係る櫛の一端縁櫛部付近を示す要部拡大底面図であり、(b)は、図7におけるA-A線断面図である。
図9】(a)は、第1実施形態に係る櫛のテール先端付近を示す要部拡大正面図であり、(b)は、(a)におけるB-B線断面図である。
図10】(a)は、一端縁櫛部を頭皮に対して垂直的に立てた姿勢で毛髪を分ける作業の状況を示す概略図であり、(b)は、その作業の状況を図4中のC-C線で断面にした一端縁櫛部の先端付近の要部拡大断面図である。
図11】(a)は、一端縁櫛部を頭皮に対して斜めにした姿勢で毛髪を分ける作業の状況を示す概略図であり、(b)は、その作業状況を図4中のC-C線で断面にした一端縁櫛部の先端付近の要部拡大断面図である。
図12】(a)は、テールを頭皮に対して垂直的に立てた姿勢で毛髪を分ける作業の状況を示す概略図であり、(b)は、テールを頭皮に対して斜めにした姿勢で毛髪を分ける作業の状況を示す概略図である。
図13】第1実施形態に係る櫛による整髪作業の状況を示す概略図である。
図14】第1実施形態に係る櫛の他端縁櫛部の変形例を示す要部拡大正面図である。
図15】本発明の第2実施形態に係る櫛の正面図である。
図16】本発明の第3実施形態に係る櫛を示し、(a)は正面図、(b)櫛歯先端の拡大正面図、(c)は(b)におけるD-D線断面図である。
図17】(a)は従来の櫛の一端側を示す正面図、(b)は従来の櫛の一端縁櫛部によるパーティングの状況を示す概略図である。
図18】従来の櫛の一端縁櫛部によるブロッキングの状況を示す概略図である。
図19】従来の櫛のテールによるブロッキングの状況を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0042】
図1乃至3は、本発明の第1実施形態に係る櫛1の全体を概略的に示す。本発明の櫛1はテールコームと称される持ち手部分を有するタイプであり、合成樹脂製で一体的に成形されている。概要的な構成として櫛1は、背骨状の櫛本体となる櫛背部2の長手方向と直交する向きに複数本の櫛歯6を突出すると共に、櫛背部2の長手方向における一方の端側(一端側2a)及び他方の端側(他端側2b)から、複数本の櫛歯6を挟むように一端縁櫛部3(第一の延出部に相当)及び他端縁櫛部4(第二の延出部に相当)を各櫛歯6の突出方向と平行的に延出し、さらに、櫛背部2の他方の端側(他端側2b)から、櫛背部2の長手方向に沿ってテール5(持ち手部分であり、第三の延出部に相当)を延出した構成になっている。
【0043】
図1の中で示すX軸方向は、背骨状に延びる櫛背部2の長手方向に沿った方向であり、X軸方向に直交するY軸方向は櫛歯6の突出方向及び各縁櫛部3、4の延出方向に沿った方向であり、X軸方向及びY軸方向に直交するZ軸方向は櫛1、櫛背部2、各縁櫛部3、4、テール5、及び各櫛歯6の幅方向(厚み方向)に沿った方向である(他の図でも同様)。なお、図1等の中で、X軸を示す矢印は、櫛背部2の一端側2aから他方側2bへ向いており、Y軸を示す矢印は、櫛歯6が櫛背部2から突出する方向を向いており、Z軸を示す矢印は、櫛1の正面側から背面側へ向いている(他の図でも同様)。
【0044】
図2は、櫛1の正面図であり、本実施形態の櫛1は、正面方向から見た構成と、背面方向から見た構成を対称にしており、そのため、櫛1の背面方向の構成については、正面方向からの構成が参照される。以下、櫛1について詳しく説明していく。
【0045】
図1-3、4等に示すように、櫛1の櫛背部2は、正面2cから反対側の背面2dへとZ軸方向に沿って貫通する貫通孔7を複数形成しており、これら各貫通孔7は、X軸方向に沿って直線状に所定の間隔をあけた配置になっている。貫通孔7は、X軸方向を長軸方向にした横長の楕円であり、その楕円の周囲には、更に横長の楕円形状のザグリ部7aを形成している(図7も参照)。なお、第1実施形態においては、貫通孔7の長軸側の内径と短軸側の内径の比を2対1にしており、一例としては長軸側の内径を約4mm(ミリメートル)、短軸側の内径を約2mmに設定している(なお、ザグリ部7aについては例えば、長軸側の内径を約9mm、短軸側の内径を約3mmに設定することが想定できる)。
【0046】
図2に示すように、櫛背部2の最も一端側2aに位置する貫通孔7は、その中心が、櫛背部2の一端側2aの先端箇所2gから距離Pとなる位置に形成されており、一端側2aからの順序が2番目以降となる各貫通孔7は、それぞれの貫通孔7の中心同士の間隔が距離Pとなる位置に順次形成されている。
【0047】
距離Pの具体例としては、櫛1の仕向け、仕様等に応じて、ミリメートル単位、又はインチ単位の寸法のいずれに設定してもよく、例えば、ミリメートル単位の寸法を用いる場合は最も標準的な寸法である10mm等に設定することが好適であり、インチ単位の寸法を用いる場合は1インチ(inch)又は0.5インチ等に設定するのが好適である。このような間隔で形成された複数の貫通孔7は、所定の寸法を距離Pごとに示す目印(櫛背部2の長手方向に沿った距離を示す目印)として利用できる。例えば、カット対象の毛髪の長さを各貫通孔7で測る場合、櫛背部2の先端箇所2gを、カット対象の毛髪の根本付近の頭皮に当接させて、カットで残す毛髪長さを各貫通孔7で測定し、その測定した箇所で毛髪をカットすることになる。
【0048】
また、図1等で示すように、櫛1は、複数本の櫛歯6を一端縁櫛部3及び他端縁櫛部4の間で、櫛背部2の底面2f(図4、7等参照)から突出している。これら複数本の櫛歯6は全体的に見ると、連なって面状に並んだ構成になっており、複数本の櫛歯6が連なって並ぶ面状の部分は、X軸及びY軸によるXY平面と平行的な向きになっている。
【0049】
さらに、複数本の櫛歯6の根元側6a(図7参照)は、櫛背部2の底面2fで留まるのでは無く、櫛背部2の正面2c及び背面2dへ入り込むように延びると共に、正面2c及び背面2dといった櫛背部2の表面から凸状に盛り上がっている(凸設する)。
【0050】
図4等に示すように、これら複数本の櫛歯6の中で、X軸方向において中央(真ん中)に位置する櫛歯(櫛歯6の中の中央櫛歯65)は、その根元側65aを両隣側に並ぶ櫛歯6の根元側6a(図7参照)より長く伸ばすと共に、その根元側65aから線状に延びる中央印25を櫛背部2に設けている(図4参照)。この中央印25は、中央櫛歯65に応じた箇所を示し、櫛背部2の正面2cから天面2eを経由して背面2dまで線状に繋がっていると共に(図4、5等参照)、櫛背部櫛歯65の根元側65aと同様、櫛背部2の表面(正面2c、背面2d、天面2e)から凸状に盛り上がっている(凸設形状になっている)。
【0051】
さらに図4に示すように、複数本の櫛歯6の中で、中央櫛歯65から左右の方向(X軸方向に沿った左右の方向)へ所定の間隔W1をあけた位置で櫛背部2から突出する各櫛歯(特定櫛歯62、63、64、66、67、68)も、それらの根元側62a、63a、64a、66a、67a、68aを隣に並ぶ櫛歯6の根元側6aより長く伸ばしている。そして、これらの根元側62a、63a、64a、66a、67a、68aも、正面2c及び背面2dといった櫛背部2の表面から凸状に盛り上がらせており、これら根元側62a、63a、64a、66a、67a、68aに応じた櫛背部2の表面からの凸設箇所を所定間隔印22、23、24、26、27、28にしている(図4、5参照)。これら所定間隔印22、23、24、26、27、28は、特定櫛歯62、63、64、66、67、68ごとに応じた箇所を示す印としてき機能する。なお、上述した中央印25も、特定櫛歯64、66とそれぞれ所定間隔をあけた中央櫛歯65に応じた箇所を示す所定間隔印として機能する。
【0052】
特定櫛歯62、63、64、66、67、68及び中央櫛歯65の位置に係る間隔の寸法W1は、各櫛歯におけるY軸方向に沿った中心線同士の距離に相当し、上述した櫛背部2に形成した複数の貫通孔7に係る中心間の距離Pと同様に、櫛1の仕向け、仕様等に応じて、ミリメートル単位、又はインチ単位の寸法のいずれに設定してもよく、ミリメートル単位の寸法を用いる場合は最も標準的な寸法である10mm等に設定することが好適であり、インチ単位の寸法を用いる場合は1インチ(inch)又は0.5インチ等に設定するのが好適である。
【0053】
また、図4に示すように、櫛背部2の一端側2aに最も近い位置の特定櫛歯62から一端縁櫛部3の櫛歯側に対向する縁部位3eまでの間隔も寸法W1にしており、同様に、櫛背部2の他端側2bに最も近い位置の特定櫛歯68から他端縁櫛部4の櫛歯側に対向する縁部位4eまでの間隔も寸法W1に揃えている。そのため、櫛1において、一端縁櫛部3の縁部位3eから他端縁櫛部4の縁部位4eまでの縁櫛部間距離Wは、寸法W1の8倍となるように設定される。一端縁櫛部3の縁部位3eはX軸方向において先端3cと同等の位置となり、他端縁櫛部4の縁部位4cもX軸方向において先端4cと同等の位置となるので、縁櫛部間距離Wは、一端縁櫛部3の先端3cと他端縁部位4の先端4cとの内側間の距離にも相当する。
【0054】
本実施形態の櫛1は、特定櫛歯等の間隔の寸法W1の寸法を10mmに設定しており、それに伴い、縁櫛部間距離Wは80mmとなる。この80mmという寸法は、毛髪をカール(パーマ)するのに用いるロッドの種類の中で、直径が12mmのロッドの長さと同等になっている。そのため、本実施形態の櫛1を用いて、カール用の毛髪をブロッキングする際、一端縁櫛部3の先端3cから他端縁櫛部4の先端4cまでの寸法に毛束の巾を整えると、丁度、ロッドの長さに合うことから、ロッドを巻くのに適した巾寸法に毛束を整えるの容易になる。また、毛束を取り分ける際の10mm間隔の寸法も、櫛背部2に見える根元側62a等の所定間隔印22等を目印にできるため、この点においても毛束の巾調整を行うときに役立つことなり、特に、中央櫛歯65については、中央印25も存在するので、毛束の巾を整える際、巾方向の中央位置も中央印25で確認しやすくなっている。
【0055】
また、図4等に示すように、櫛1は、複数本の櫛歯6の中で、一端縁櫛部3に最も隣接する櫛歯として、他の櫛歯6に比べて、突出寸法(Y軸方向の全長)が短い短櫛歯16を設けている。このように一端縁櫛部3の隣を短櫛歯16にすることにより、一端縁櫛部3の先端3cの周囲に空間が生じ、一端縁櫛部3で毛髪を分ける作業(パーティングやブロッキング)を行いやすくしている。
【0056】
さらに、本実施形態の櫛1は、短櫛歯16以外の櫛歯6の突出寸法(Y軸方向の全長)を、一端縁櫛部3及び他端縁櫛部4の全長より短くしている。具体的には、図7に示すように、一端縁櫛部3の先端3cのY軸方向の高さVより、各櫛歯6の先端部6bは距離V1だけ短くなっている(距離V1の具体的な寸法としては、0.5~2.5mm程度が考えられ、本実施形態では約1mmに設定している)。このような関係は、図7では示していないが、他端縁櫛部4でも同様であり、他端縁櫛部4の先端4cは、Y軸方向において高さVの位置となり、各櫛歯6の先端部6bは、他端縁櫛部4の先端4cより、距離V1だけ引っ込んだ箇所に位置することになる。上記のような位置関係に設定することで、一端縁櫛部3の先端3c又は他端縁櫛部4の先端4cでパーティングやブロッキングを行う際、各櫛歯6が邪魔にならないようにしている。次に、一端縁櫛部3に関する詳しい説明を行う。
【0057】
図1、2、4、7等に示すように、一端縁櫛部3(第一の延出部)は、先を細くした先細形状であり、櫛背部2の長手方向に対して直交する向き(Y軸方向に沿った方向であり、各櫛歯6の突出方向と平行的な方向にも相当)へ櫛背部2の一端側2aより延出した延出部として機能する。このような先細形状は、図2、4、7等のように櫛1の正面側から見た場合だけでなく、櫛1の先端側(櫛背部2の先端箇所2gの側)から見た場合も、Z軸方向に応じた幅方向(厚み方向)の寸法が先端3cに向けて小さくすることにより、先細形状にしている(図10、11等参照)。
【0058】
一端縁櫛部3は、櫛1の正面方向からの拡大視図である図7において、Y軸方向に沿った方向で、先端3cを含む先端側の範囲となる先端範囲3aと、櫛背部2からの延出元を含む根元側の範囲となる根元範囲3bに区分けすることができる。これらの範囲の比率は、設計仕様により様々に設定可能であるが、一端遠端部3のY軸方向に沿った全長を「1」とした場合、先端範囲3aと根元範囲3bの比率の範囲として、0.3:0.7~0.7:0.3といった程度の範囲が考えられ、バランスの取れた比率としては、先端範囲3aと根元範囲3bの比率を0.5:0.5にすることが想定できる。
【0059】
一端縁櫛部3は、図7の正面方向からの視図で、外周となる外周縁(外周の縁を形成する面である一端外縁面3d)において、根元範囲3bを、凹状の曲線に基づいた湾曲形状にする一方、先端範囲3aは、外方へ凸状の曲線に基づいた湾曲形状にしている。そのため、一端縁櫛部3の外周側(櫛背部2の先端箇所2gに応じた側)の一端外縁面3dは、根元範囲3bから先端範囲3aへ向けて凹から凸のなだらかな曲線で連続し、先端範囲3aにおける凸となる頂部から先端3cへ向けてX軸方向に沿った寸法が小さくなる先細の形状になる。
【0060】
また、一端縁櫛部3は、櫛歯6の側に対向する一端内縁面に相当する縁部位3eは、図7の正面方向からの視図で直線状に形成している。そして、この直線状の縁部位3eに応じた櫛背部2の表面(正面2c、背面2d、天面2e)には、縁部位3eに応じた箇所を示す直線的な溝形状の一端側印21を形成している。この縁部位3eは、Y軸方向に沿った直線状であるため、X軸方向において一端縁櫛部3の先端3cの位置とも一致し、一端側印21は、一端縁櫛部3の先端3cの位置(先端3cにおける櫛歯6寄り側となる内縁側角部の位置)を表す先端印に相当する。
【0061】
具体的に、櫛背部2は、一端縁櫛部3における直線状の縁部位3eを、櫛背部2の方へY軸方向に沿って延長した箇所に一端側印21を形成しており、この一端側印21は、櫛背部2の正面2cから天面2eを経由して背面2dへと連続した溝形状になっている。なお、このような一端側印21は、溝形状以外の形態にすることも勿論可能であり、例えば、上述した中央櫛歯65の位置を示す中央印25と同様に、櫛背部25の表面から凸状に盛り上がった凸設形状にしてもよい。
【0062】
さらに、図7及び図8(a)等に示すように、本実施形態の一端縁櫛部3は、先端3cを尖らせるのではなく、X軸方向に平行的なフラット形状にしている。このフラット形状に応じた先端3cの面(フラット面)は、一端縁櫛部3の一端外縁面3dと繋がる角部を外縁側角部3gにすると共に、一端内縁面(縁部位3e)と繋がる角部を内縁側角部3hにしている。このような先端3cのフラット面は、外縁側角部3gから内縁側角部3hまでの寸法S(先端3cのフラット面のX軸方向に沿った寸法)を確保している。寸法Sの具体的な数値としては、約1mm弱から2mm程度の範囲が想定でき、本実施形態の櫛1では、寸法Sを約1.5mmに設定している。
【0063】
このように本実施形態の一端縁櫛部3は、上記のような寸法Sを確保することにより、一端縁櫛部3でパーティングやブロッキングを行う場合、尖らせた場合に比べて、寸法Sという一定の巾で毛髪を左右に大きく分けることが可能となり、パーティングやブロッキングの作業を素早く行うことに役立つと共に、尖ったような先端が押し当てられることがなくなるので頭皮に対しても優しい状況となる。また、外縁側角部3g及び内縁側角部3hは、エッジ状の角になっていることから、密集度が高い毛髪箇所などをパーティングやブロッキング等する場合、エッジ状の角が立った外縁側角部3g又は内縁側角部3hを用いることで、密集度の高い毛髪を素早く掻き分けることが可能となり、パーティングやブロッキングといった毛髪を分ける作業のスピードアップに貢献できる。
【0064】
さらにまた、図4、7等で示すように、一端縁櫛部3は、先端範囲3aにおける根元範囲3b寄りの箇所に、Z軸方向(幅方向)に貫通する先端貫通孔8を形成している。先端貫通孔8は、櫛背部2の貫通孔7と同様に楕円形状であり、その楕円形状の先端貫通孔8の周囲には、一端縁櫛部3の正面側表面3fから窪んだ楕円形状のザグリ部8aを形成している。先端貫通孔8及びザグリ部8aは、その長軸方向がY軸方向に対して斜めになるように形成されており、それにより、一端縁櫛部3の先細形状である先端範囲3aの外方へ凸となる外縁の曲線形状(曲面形状)に、先端貫通孔8のザグリ部8aの開口縁が沿うような配置となり、楕円形状の先端貫通孔8及びザグリ部8aを可能な範囲で大きい寸法を確保できるようにしている。なお、ザグリ部8aは、一端縁櫛部3の背面側表面3iにも、上述した正面側表面3fの場合と同様に形成されている。
【0065】
また、図7に示すように、一端縁櫛部3は、本発明の特徴として、先端範囲3aに溝10を形成している。溝10は、一端縁櫛部3において、一端縁櫛部3の幅方向(Z軸方向)に直交的な正面側表面3fの側に設けられており(正面側表面3fは、X軸及びY軸によるXY平面に平行的な位置関係になっている)、一端縁櫛部3の先端3cの側から櫛背部2の方へ向かって、ザグリ部8aの手前付近まで延びるように形成されている。溝10は、一端縁櫛部3の先端3cの側の端を溝先端部10a(溝端部に相当)にすると共に、ザグリ部8aの側の端を溝他端部10bしており、溝先端部10aから溝他端部10bまで一定の溝長さLを有する(図7参照)。
【0066】
本実施形態の溝10は、溝の延びる方向をY軸方向と平行にするのではなく、上述した先端貫通孔8及びザグリ部8aの長軸方向と同様に、Y軸方向に対して少し斜めになるようにしており、それにより、一端縁櫛部3における直線状の一端内縁面の縁部位3eから所要の間隔を開けて、意図した溝形状と剛性を確保できるようにしている。また、本実施形態の溝10は、溝先端側の端部である溝先端部10aが一端縁櫛部3のフラット形状である先端3cに表出するように形成されており、先端3cのフラット面から溝10の内部が露出している(図8(a)参照)。なお、先端3のフラット面から表出する溝10に示すように、溝10の長手方向に直交する向きの溝形状は、半円的な円弧形状にしている(図8(a)、(b)参照)が、アルファベットのU字形状やV字形状にすることも勿論可能である。
【0067】
溝10は、溝巾M及び溝深さF(図8(b)参照)について、溝先端部10aの側を溝他端部10bの側より大きくしており、溝長さLの半分より溝他端部10b寄りの箇所から、溝巾M及び溝深さFが徐々に小さくなるようにしている。
【0068】
溝10の溝長さLの具体的な値としては、2mmから5mm程度の範囲内の数値が考えられ(例えば、3.5mmなど)、溝先端部10aにおける溝巾Mの数値としては、0.5mmから1.3mm程度の範囲内の数値が考えられ(例えば、1mmなど)、溝深さFの数値としては、0.2mmから0.8mm程度の範囲内の数値が考えられる(例えば、0.4mm)。このような溝巾Mと溝深さFの比率としては、4:1から1.5:1程度の範囲が想定できる(例えば、バランスを考慮すると2.5:1などが考えられる)。なお、上述した溝10は、一端縁櫛部3の背面側表面3i(背面側表面3iも、X軸及びY軸によるXY平面に平行的な位置関係になっている)にも、上述した正面側表面3fの場合と同様に形成されている。
【0069】
また、図2、4、6等に示すように、櫛1の他端縁櫛部4(第二の延出部)は、櫛背部2の他端側2bからY軸方向に沿って延出しており、棒状に長く延びるテール5の根元側の剛性を確保するために、略三角形状になっている。他端縁櫛部4も、上述した一端縁櫛部3と同様に、櫛歯6の側に対向する一端内縁面に相当する縁部位4eを、正面方向からの視図で直線状に形成している(図4参照)。また、他端縁櫛部4は、テール5の側となる外方の外周縁(外周の縁を形成する面である他端外縁4e)は、テール5の基部5bから他端縁櫛部4の先端4cへ向かう斜線的な輪郭にしており、他端縁櫛部4のX軸方向の寸法は櫛背部2から先端4cへ向けて徐々に小さくなっており、それにより他端縁櫛部4は先細形状になっている。
【0070】
なお、他端縁櫛部4は、斜めの他端外縁4eに半円状の複数の窪み部4bを形成しており、ユーザが他端外縁4eに親指等をあてがって整髪や毛髪を分ける作業等を行う場合の滑り止めになるようにしている。また、他端縁櫛部4は、正面側の表面4f及び背面側の表面に筋状の三本の曲線部9a、9b、9cを形成しており、これら三本の曲線部9a~9cは、表面から凹になっており、それにより、他端縁櫛部4は、テール5を延出させるのに必要な強度を確保した上で、できるだけ柔軟性を確保できるようにしており、櫛1が他端縁櫛部4の箇所でも柔軟に曲がりやすくして、頭皮の曲面に沿わした整髪等を行いやすくしている。なお、三本の曲線部9a~9cの一部は櫛背部2まで延びており、また、一番上方の曲線部9cの先端箇所はテール5の基部5bの付近にまで延びている。
【0071】
また、図6等に示すように、他端縁櫛部4の縁部位4eに応じた櫛背部2の表面(正面2c、背面2d、天面2e)には、上述した櫛背部2の一端側印21と同様に、縁部位4eに応じた箇所を示す直線的な溝形状の他端側印29を形成している。この縁部位4eもY軸方向に沿った直線状であるため、X軸方向において他端縁櫛部4の先端4cの位置とも一致するので、他端側印29は、他端縁櫛部4の先端4cの位置(先端4cにおける櫛歯6寄りの側となる内縁側角部の位置)を表す先端印に相当する。なお、他端側印29を、溝形状ではなく凸状に盛り上がった凸設形状にしてもよいのも一端側印21と同様である。
【0072】
図1-3、6に示すように、テール5(第三の延出部)は、櫛背部2の他端側2bから、X軸方向に沿って(櫛背部2の長手方向と平行的な方向に沿って)、棒状(丸棒状)で延出している。テール5は、図2、6に示すように正面(XY平面)で見た場合において、テール先端5aに向かってY軸方向の寸法が徐々に小さくなるようにした先細形状であると共に、図3に示すように平面(XZ平面)で見た場合においても、テール先端5aに向かってZ軸方向の寸法が徐々に小さくなるようにした先細形状であり、テール先端5aを尖らせた形状になっている。なお、櫛1の全体的な幅寸法(Z軸方向の寸法)としては、図3に示すように、テール5の基部5bの付近、及び櫛背部2の他端側2bの付近を最も大きくしており、櫛背部2における櫛歯6を突出する箇所及び一端縁櫛部3を延出する箇所に応じた範囲(図3において、符号2gから符号29に示す範囲)は、テール5の基部5b及び櫛背部の他端側2bといった付近より幅寸法を小さくし(約1/2~3/4程度で小さくしており、本実施形態では約3/5程度)、それにより、櫛歯6等を突出する範囲の櫛背部6に柔軟性を持たせて、頭の曲率に合わせて櫛背部6を曲げながら整髪等の作業を行いやすくしている。
【0073】
図6等に示すように、テール5は、延出先となるテール先端5aからの距離の目印となる複数のポイント20、21を、櫛背部2の幅方向(Z方向)に直交的な表面である正面側テール表面5c及び背面側テール表面5dに形成している。これらポイント20、21は、本実施形態においてはテール5の表面から凹にした丸状に形成しているが、テール5の表面から凸で形成することや、丸状ではなく、Y軸方向に沿った線状で形成すること等も可能である。
【0074】
複数のポイント20、21の中で、最もテール先端5aよりに位置するポイント21は、テール先端5aから第1寸法P20の箇所(先端箇所)に形成され、それ以降の各ポイント20は、第2寸法P2の間隔となる箇所に順次形成されている。第1寸法P20は、第2寸法P2の倍の長さにしており、本実施形態では第2寸法P2の長さを10mmに設定している。そのため、例えば、テール先端5aを毛髪の根元の頭皮に押し当てると、テール5のポイント20等を目印にして毛髪の長さを測定でき、毛髪のカット箇所等を決めるときなどに役立てられる。
【0075】
また、図3、6、9(a)(b)等に示すように、テール5は、第1寸法P20の範囲内に応じた先端箇所にフラット面12を形成している。テール5は上述したように丸棒状であることから、その表面は外方へ凸となる湾曲した面になっているが、第1寸法P20の範囲内におけるテール先端5a寄りの箇所(先端箇所)において、テール5の幅方向(Z軸方向)と直交的な表面側である正面側テール表面5c及び背面側テール表面5dを平らにしてフラット面12を形成している。このようなフラット面12のX軸方向に沿った長さ寸法としては、テール5の長さ等により様々に設定可能であり、第1寸法P20の約1/5~約2/3程度の寸法(約4mm~約14mmの範囲の寸法)にすることが考えられ、本実施形態では第1寸法P20の約1/2(約10mm)に設定している。
【0076】
さらに、テール5は、フラット面12をX軸方向に沿って横切るように、テール先端5aの側から櫛背部2の方へ延びるテール溝11を形成している。テール溝11は、テール先端5a寄りのテール溝先端11aからテール溝他端11bへと直線状で形成されており、このテール溝11の溝巾及び溝深さについて、具体的や数値や両者に比率等は、上述した一端縁櫛部3に形成した溝10と同様にしている。
【0077】
なお、テール溝11の長さは、上述したフラット面12と同様に、テール5の長さ等により様々に設定可能であり、第1寸法P20の約1/5~約2/3程度の寸法(約4mm~約14mmの範囲の寸法)にすることが考えられ、本実施形態では第1寸法P20の約1/2(約10mm)に設定している。また、図9(a)に示すように、テール溝11はフラット面12の範囲に収まるようにしているが、テール溝11の長手方向の寸法を長く確保するときなどは、テール溝先端11a又はテール溝他端11bのいずれか若しくは両方がフラット面12から飛び出す長さに設定してもよい。
【0078】
図10(a)、(b)は、上述した第1実施形態に係る櫛1で、頭髪に対してパーティングやブロッキング等の毛髪h1を分ける作業の状況を示している。図10(a)は、櫛1を先端側(櫛背部2の先端箇所2g)から見た状態を示し、図10(b)は、図4に示すC-C線断面における一端縁櫛部3の先端3c付近の拡大断面を示す。なお、図10(b)では、発明の特徴を端的に示すため、毛髪h1の図示を省略している。櫛1の一端縁櫛部3により、パーティングやブロッキング等の作業を行う場合、先ず、作業対象となる毛髪h1の根元箇所となる頭皮Tに、櫛1の一端縁櫛部3の先端3cを頭皮Tに対して垂直的(直角的)に押し当てる。それから、その垂直的な姿勢のままで櫛1(一端縁櫛部3)を図10(a)、(b)の中で示す白矢印方向に移動させることで、移動経路上の毛髪h1を一端縁櫛部3の先端3cを中心にして順次、分けていく。
【0079】
図10(b)に示すように、櫛1(一端縁櫛部3)の移動経路上に頭皮Tから隆起した毛穴T1が存在した場合、移動方向側の向きに応じた一端縁櫛部3の正面側表面3fに設けた溝10に毛穴T1が入り込むようになり、一端縁櫛部3の先端3cが隆起した毛穴T1を乗り越える範囲が、溝10が無い従来の構成の櫛に比べて短くなり、それに伴い、隆起した毛穴T1の影響を低減してパーティングやブロッキング等の作業の際、スムーズに櫛1を移動させられる。なお、隆起した毛穴T1以外にも、隆起した吹き出物などが頭皮に存在する場合も、上述した毛穴T1の場合と同様に、それらの影響を溝10で回避して良好な作業性を確保できる。
【0080】
また、パーティングやブロッキング等の際は、一端縁櫛部3の正面側表面3f及び背面側表面3iが毛髪h1と強く接触するため、これら各表面3f、3iは毛髪h1から圧(接触圧)を受けることなるが、各表面3f、3iの先端3cの範囲に設けた一定長で凹んだ溝10により、毛髪h1からの接触圧を緩和でき、それにより、パーティングやブロッキング等の作業の際、櫛1を移動させやすくなり、作業効率の向上に役立てられる。
【0081】
特に、移動方向側の向きに対応する一端縁櫛部3の正面側表面3fは、毛髪h1からの接触圧が、背面側表面3iに比べて大きくなるが、溝10は上述したように、所定寸法値の溝長さL、溝巾K、及び溝深さDを確保しているので、正面側表面3fの先端箇所に接する毛髪h1の一部は溝10に入り込み、毛髪h1からの接触圧を十分に緩和できる。なお、1本の毛髪(頭髪)の太さは、平均約0.08mmであることから、溝10の溝長さL、溝巾M、及び溝深さFについて、上述したような数値を確保することで、接触圧を緩和するのに十分な量の毛髪が溝10の内部空間に入り込むことが可能となる。
【0082】
また、図11(a)、(b)も、第1実施形態に係る櫛1で、頭髪に対してパーティングやブロッキング等の作業を行う状況を示すが、この図11(a)、(b)は、頭皮Tに対して櫛1を寝かした姿勢(頭皮Tに対して一端縁櫛部3が90度より小さくなる角度の姿勢)にして、頭髪を分ける作業を行う状況を示している(なお、図11(a)(b)も、ず10(a)(b)と同方向からの視図となる)。この場合も、図11(a)、(b)の中で示す白矢印方向に櫛1を移動することになるが、頭皮Tに対して櫛1を寝かせた姿勢にして移動させるため、移動方向側の向きに応じた一端縁櫛部3の正面側表面3fへの毛髪h1による圧は、図10(a)、(b)に示す場合に比べて大きくなる。
【0083】
しかし、図11(b)に示すように、正面側表面3fに設けた溝10は、溝長さL、溝巾M、及び溝深さFについて上述したような数値を有するので、一定量の毛髪h1が溝10の内部へ入り込むことができ、毛髪h1による接触圧を緩和できると共に、このように接触圧を緩和することで、毛髪h1との接触抵抗も低減でき、それに伴い、櫛1(一端縁櫛部3)の移動経路上を横切るような毛髪h1が存在しても、そのような毛髪h1を一端縁櫛部3は、正面側表面3fの先端箇所でスムーズに乗り越えることができ、パーティングやブロッキング等に対して良好な作業性を提供できる。
【0084】
また、図11(a)、(b)に示すような頭皮Tに対して櫛1を寝かした場合においても、櫛1(一端縁櫛部3)の移動経路上に隆起した毛穴等が存在すれば、上述した図10(b)に示す場合と同様に、溝10に毛穴等が入り込むことで、隆起した毛穴等による櫛1の移動に対する影響を抑制できる。なお、一端縁櫛部3の正面側表面3f及び背面側表面3iの先端範囲3aには上述したように各表面3f、3iから窪んだザグリ部8a及び貫通孔8を形成しているため、これらザグリ部8a及び貫通孔8によっても、一端縁櫛部3で分けられる毛髪h1との接触面積を低減して接触圧を抑えることを補助し、パーティングやブロッキング等の作業における櫛1の一端縁櫛部3の移動しやすさを確保するのに役立てられる。
【0085】
一方、図12(a)、(b)は、テール5を用いてパーティングやブロッキング等の作業を行う状況を示し、図12(a)はテール5を頭皮Tに対して垂直的な姿勢で作業を行う状況であり、図12(b)はテール5を頭皮Tに対して寝かせた姿勢(頭皮Tに対してテール5が90度より小さくなる角度の姿勢)で作業を行う状況になっている。
【0086】
図12(a)に示す状況では、図10(a)に示す一端縁櫛部3の場合と同様に、テール5を頭皮Tに対して垂直的な姿勢で、テール先端5aを作業対象となる毛髪h1の根元箇所に押し当て、図12(a)の中で示す白矢印方向に、上記の垂直的な姿勢を維持して櫛1(テール5)を移動させることにより、移動経路上の毛髪h1をテール先端5cで順次、分けていく。
【0087】
正面側テール表面5c及び背面側テール表面5dのテール先端5cの範囲には、フラット面12においてテール溝11が形成されていることから、図10(b)に示す場合と同様に、移動経路上に頭皮Tから隆起した毛穴等が存在した場合、移動方向側に相当するテール5の背面側テール表面5dに設けたテール溝11に隆起した毛穴等が入り込むので、テール5で作業を行うときでも、隆起した毛穴等の影響を低減してパーティングやブロッキング等の際、スムーズに櫛1を移動させられる。また、各表面5c、5dのテール先端5aの側の範囲に設けた一定長で凹んだテール溝11により、毛髪h1からの接触圧を緩和して、櫛1を移動させやすくなり、特に、移動方向側に相当する背面側テール表面5dの毛髪h1からの圧は、正面側テール表面5cより大きくなるが、テール溝11は上述したように所定の溝長さ、溝巾、及び溝深さを確保しているので、背面側テール表面5dに設けたテール溝11に毛髪h1の一部が入り込み、毛髪h1からの接触圧を十分に緩和できる。
【0088】
また、図12(b)に示す状況では、図11(a)に示す一端縁櫛部3の場合と同様に、テール5を頭皮Tに対して寝かせた姿勢で、テール先端5aを作業対象となる毛髪h1の根元箇所に押し当て、図12(b)の中で示す白矢印方向に櫛1を寝かせたまま移動させることにより、移動経路上の毛髪h1をテール先端5cで順次、分けていく。
【0089】
このようにテール5を寝かせた姿勢で毛髪を分ける作業を行う際も、図11(b)に示す寝かせた姿勢の一端縁櫛部3の場合と同様に、櫛1(テール5)の移動経路上を横切るような毛髪h1が存在しても、そのような毛髪h1を、テール溝11を備える背面側テール表面5dの先端箇所でスムーズに乗り越えることができ、パーティングやブロッキング等に対して良好な作業性を提供できる。また、櫛1(テール5)の移動経路上に隆起した毛穴等が存在する場合にも、このような隆起した毛穴等がテール溝11に入り込むので、寝かしたテール5で作業を行うときも、隆起した毛穴等の影響を低減してパーティングやブロッキング等の作業の際、スムーズに櫛1を移動させられる。
【0090】
さらに、テール5は、テール先端5a寄りの先端箇所にフラット面12を形成するので、図12(b)に示すように、テール5を頭皮Tに対して寝かせた場合、移動方向側に相当する背面側テール表面5dに設けたフラット面12が頭皮Tや毛髪h1と面接触で触れることなる。そのため、丸棒状のテール5が作業中にテール5の長手方向に沿った中心線を軸にして回りにくくなり、フラット面12が回り止め機能として働くため、そのフラット面12が備えるテール溝11を確実に頭皮Tの方へ対向させることができ、テール溝11による良好な作業性を維持するのに貢献できる。
【0091】
また、図13は、本実施形態の櫛1による整髪を行う状況の例を示し、パーティングやブロッキング等により分けた毛束を整えるため、毛束(毛髪h1)の中に複数本の櫛歯6、一端縁櫛部3、及び他端縁櫛部4を差し込んだ状況になっている。なお、図13では、本発明の特徴を端的に示すため、櫛背部2に形成した複数の貫通孔7、及び貫通孔7の周囲のザグリ部7aの図示を省略している。
【0092】
図13に示すように、整髪対象となる毛髪箇所(毛束)の量が多いときや、整髪対象となる部位などによっては、複数本の櫛歯6を毛髪の中に差し入れたとき、各櫛歯6、一端縁櫛部3、及び他端縁櫛部4は毛髪の中に埋もれてもしまい、それらの位置をユーザが把握するのが困難となる。
【0093】
しかし、本実施形態の櫛1は、櫛背部2の正面2cから天面2eを経由して背面2dへと連続する一端側印21及び他端側印29を形成しているので、一端縁櫛部3の先端3cの位置及び他端縁櫛部4の先端4cの位置を、一端側印21及び他端側印29をそれぞれ目安にして、櫛1のいずれの方向からもユーザは認識できる。そのため、整髪対象となる毛束をカールするために、毛束の巾をロッドの長さに揃えたいときなどは、一端側印21及び他端側印29を目安にして、一端側印21から他端側印29までの寸法(図4に示す縁櫛部間距離Wに相当)に毛束を揃えれば、ロッドに巻くのに適切な寸法に毛束を調整できる。そして、本実施形態の櫛1は、櫛背部2の正面2cから天面2eを経由して背面2dへと連続するように、一端側印21及び他端側印29を形成しているので、どのような向きからも一端側印21及び他端側印29をユーザは確認しやすくなっており、毛束の巾を揃える作業性を向上できる。
【0094】
また、櫛背部2は、中央印25及び定間隔印22、23、24、26、27、28を備えるので、取り分けた毛束をカットする巾に整えたい場合にこれらの各印(定間隔印22等に加えて一端側印21及び他端側印29も含む)を活用でき、特に、図13に示すように、毛髪量が多くて各櫛歯6が毛髪(頭髪)の中に埋もれるような場合、これらの各印21、22等は有用となる。
【0095】
例えば、中央印25を中心にして6cmの巾で毛束を整えたい場合、最も一端縁櫛歯23寄りの定間隔印22と、最も他端縁櫛歯4寄りの定間隔印28の二つを目安にして、これら定間隔印22から定間隔印28までの寸法で毛束の巾を揃えるように櫛1で毛束の整髪を行うことになる。また、櫛1の先端寄りに5cm巾で毛束を揃えたい場合は、一端側印21と、中央印25から一つ他端縁櫛歯4寄りの定間隔印26の二つを目安にして、これら一端側印21から定間隔印26までの寸法で毛束の巾が整うように櫛1で毛束の整髪を行う。以上のように、本実施形態の櫛1では、毛髪(頭髪)の中に埋もれて、一転縁櫛部3の先端3c、他端縁櫛部4の先端4c、及び各櫛歯6の位置が直接、確認できない場合でも、櫛背部2に設けた各印21、22等を目印にして各位置を間接的に把握できる。
【0096】
なお、第1実施形態に係る櫛1は上述した構成に限定されるものではなく、櫛1の使い方が限定される場合などに対して様々な変形例が考えられる。例えば、パーティングやブロッキング等の作業を一端縁櫛部3のみで行うユーザ向けの櫛を提供する場合は、テール5のテール溝11やフラット面12を省略してもよい。一方、パーティングやブロッキング等の作業をテール5のみで行うユーザ向けの櫛を提供する場合は、一端縁櫛部3の溝10を省略してもよい。
【0097】
また、上述した説明では、櫛1は正面側の構成と背面側の構成を対称にしていたが、右利き向けのユーザ又は左利き向けのユーザに応じた櫛を提供する場合は、一端縁櫛部3の正面側表面3fの溝10又は背面側表面3iの溝10のいずれかを省略してもよく、同様に、テール5の正面側テール表面5cのテール溝11又は背面側テール表面5dのテール溝11のいずれかを省略してもよい。また、ユーザの櫛の持ち方の工夫等によりテール5が回るのを防止できるときは、テール5のフラット面12を省略することも可能である。
【0098】
さらに、櫛背部2の定間隔印22、23、24、26、27、28は、一端側印21と同様に、正面2cから天面2eを経由して背面2dへと連続するような構成や、正面2、天面2e、背面2dのそれぞれに非連続で設ける構成にしてもよい。同様に、一端側印21及び他端側印22も、正面2、天面2e、背面2dのそれぞれに非連続で設ける構成にすることも可能である。さらにまた、一端縁櫛部3の先端3cの位置、又は他端縁櫛部4の先端4cの位置を櫛背部2で確認することが不要な場合は、一端側印21又は他端側印29を省略でき、同様に、櫛背部2で櫛6の間隔等を測るのが不要なときは、各定間隔印22等を省略してもよい。そして、図13に示すように、各印21、22等による毛髪の中に埋もれた一端縁櫛部3、櫛歯6等の位置を把握するをことをメインの目的にして、パーティングやブロッキング等の毛髪を分ける作業を特に目的としない場合は、櫛1から溝10及びテール溝11を省略することも可能である。
【0099】
また、一端縁櫛部3に形成する溝10は、一定の溝長さLを有するのでは無く、先端3cの箇所のみで凹となった形状にしてもよい。そして、一端縁櫛部3の先端3cはフラット形状にするのではなく、テール5のように先を尖らせた形状にすることも可能であり、この場合は、先を尖らせた先端3cを通過するように溝10を形成することになる。
【0100】
図14は、第1実施形態に係る変形例の一つである櫛51の要部を示しており、この変形例の櫛51では、櫛背部52の他端側52bからY軸方向に沿って延出する略三角形状の先細の他端縁櫛部54にも溝60を形成したことが特徴になっている。この溝60は、他端縁櫛部54の幅方向(Z軸方向)に直交的な正面側表面54fの側における先端54cを含む先端範囲に、先端54cの側から櫛背部52の方へ延びるように形成されており、図7に示す一端縁櫛部3に設けた溝10と、櫛背部2の中央印25を中心にして対称となる構成にしている。なお、図14では示していないが、一端縁櫛部3と同様に、他端縁櫛部54は背面側表面(他端縁櫛部54の幅方向(Z軸方向)に直交的な表面に相当)の側にも、溝60を形成している。
【0101】
このように第2の延出部に相当する他端縁櫛部54に溝60を形成することで、他端縁櫛部54の先端54cを用いて、パーティングやブロッキング等の作業を行うユーザにとって、図10、11に示す一端縁櫛部3の溝10と同様な状況を確保でき、良好な作業性を提供できることになる。なお、上述した様々な変形例は、構成的に組み合わせ可能なものについては、適宜、組み合わせて適用することも勿論可能である。
【実施例0102】
図15は、本発明の第2実施形態に係る櫛100の全体を概略的に示す正面図である。第2実施形態に係る櫛100は持ち手部分を有しないカットコームと称されるタイプであり、合成樹脂製で一体的に成形されている。概要的な構成として櫛100は、背骨状の櫛本体となる櫛背部102の長手方向と直交する向きに複数本の櫛歯106を突出すると共に、櫛背部102の長手方向における一方の端側(一端側102a)及び他方の端側(他端側102b)から、複数の櫛歯106を挟むように一端縁櫛部103(第一の延出部に相当)及び他端縁櫛部104(第二の延出部に相当)を各櫛歯106の突出方向と平行的に延出する。なお、櫛100も、図15に示す正面方向から見た構成と、図示しない背面方向から見た構成を対称にしており、そのため、櫛100の背面方向の構成については、正面方向からの構成が参照される。
【0103】
櫛背部102は、正面102cから反対側の背面へとZ軸方向に沿って貫通する貫通孔107を複数形成しており(X軸方向の中央箇所102iを除く)、これら各貫通孔107は、第1実施形態の貫通孔7と同様に、X軸方向を長軸方向にした横長の楕円であり、X軸方向に沿って直線状に所定の間隔をあけた配置になっている。櫛背部102の最も一端側102aに位置する貫通孔107は、その中心の位置が、櫛背部102の一端側102aの先端箇所102gからの距離が各貫通孔107の間隔の寸法と同じになるように配置される。また、櫛背部102の最も他端側102bに位置する貫通孔107も、その中心の位置が、櫛背部102の他端側102bの後端箇所102hからの距離が各貫通孔107の間隔の寸法と同じになるように配置されている。
【0104】
各貫通孔107の間隔の寸法の具体例としては、第1実施形態の櫛1と同様に、櫛100の仕向け、仕様等に応じて、ミリメートル単位、又はインチ単位の寸法のいずれに設定してもよく、例えば、ミリメートル単位の寸法を用いる場合は最も標準的な寸法である10mm等に設定することが好適であり、インチ単位の寸法を用いる場合は1インチ(inch)又は0.5インチ等に設定するのが好適である。
【0105】
このような間隔で形成された複数の貫通孔107は、櫛背部102の一端側102aの先端箇所102g又は他端側102bの後端箇所102hから、所定の寸法を示す目印として利用できる。そのため、例えば、カット対象の毛髪の長さを各貫通孔107で測る場合、櫛背部102の先端箇所102g又は後端箇所102hを、カット対象の毛髪の根本付近の頭皮に当接させて、カットで残す毛髪長さを各貫通孔107で測定し、その測定した箇所で毛髪をカットすることになる。
【0106】
櫛背部102から突出する複数本の櫛歯106には、X軸方向の寸法が厚めの第1櫛歯116と、その櫛歯116に比べて薄い第2櫛歯126の二種類が含まれる。第1櫛歯116の厚み寸法(X軸方向に沿った櫛歯の寸法)としては約1mm強、第2櫛歯126の厚み寸法としては約0.6~0.8mm程度が想定できる。第1櫛歯116は、X軸方向において、櫛本体102の中央箇所102iより一端側102aへ至る第1範囲(一端縁櫛部103の側の範囲)に配置しており、第2櫛歯126は、中央箇所102iより他端側102bへ至る第2範囲(他端縁櫛部104の側の範囲)に配置される。また、第1櫛歯116と、第2櫛歯126では、櫛歯間の間隔(櫛歯ピッチ)も相違させており、第1櫛歯116のピッチを、第2櫛歯126のピッチより広くしている(第1櫛歯116のピッチの一例としては約3mm、第2櫛歯126のピッチの一例としては約1.5mmが想定できる)。
【0107】
このように第1櫛歯116と、第2櫛歯126とでは、厚み寸法と櫛歯ピッチを相違させることで、異なった種類の整髪作業を一本の櫛100で行えるようにしており、例えば、第1櫛歯116でラフな整髪作業を行い、第2櫛歯126で細やかな整髪作業を行うことが可能になる。上記のようなラフな整髪作業と細やかな整髪作業を切り替えて行う場合、第2実施形態の櫛100は、櫛背部102の中央箇所102iには貫通孔等を設けていないため、中央箇所102iが把持箇所として好適となり、この中央箇所102iをユーザがつまむように把持でき、整髪時には、その把持した箇所を中心に回転させることにより、第1櫛歯116による整髪と、第2櫛歯126による整髪をスムーズに切り替えることができる。
【0108】
また、櫛100は、第1実施形態の櫛1と同様に、複数本の櫛歯106の中で、一端縁櫛部103に隣接する箇所に、第1櫛歯116に比べて、突出寸法(Y軸方向の全長)が短い短櫛歯136を設けている。この短櫛歯136により、一端縁櫛部103の先端103cの周囲に空間が生じるようにして、パーティングやブロッキング等の作業を行いやすくしている。
【0109】
櫛100の先細形状の一端縁櫛部103は、第1実施形態の櫛1の一端縁櫛部3と一部を除き、基本的に同等の構成にしている。そのため、一端縁櫛部103は、その幅方向(Z軸方向)に直交的な正面側表面103fの側における先端103cの範囲に、先端103cから櫛背部102の方へ延びる溝110を形成している。この溝110も第1実施形態の一端縁櫛部3に設けた溝10と同等の構成になっている。なお、図15では見えていないが、櫛100は、一端縁櫛部103の背面側表面(幅方向(Z軸方向)に直交的な表面に相当)の側にも、正面側表面103fと対称的に溝110を形成している。また、第2実施形態の一端縁櫛部103は、第1実施形態の一端縁櫛部3に形成していた先端貫通孔8及びザグリ部8aを省略しているが、第1実施形態と同様に、先端貫通孔8及びザグリ部8aを形成することも勿論可能である。
【0110】
また、櫛背部102の他端側102bから延出する先細形状の他端縁櫛部104は、櫛背部102の中央箇所102iを中心にして、上述した一端縁櫛部103と対称的な構成になっている。そのため、他端縁櫛部104も、その幅方向(Z軸方向)に直交的な正面側表面104f及び図示しない背面側表面の側における先端104cの範囲に、先端104cから櫛背部102の方へ延びる溝120を形成しており、この溝120も第1実施形態の一端縁櫛部3に設けた溝10と同等の構成になっている。
【0111】
上述した第2実施形態の櫛100の一端縁櫛部103でパーティングやブロッキング等の作業を行う場合で、一端縁櫛部103を頭皮に対して垂直的な姿勢にするときは、図10(a)、(b)に示す第1実施形態と同じ状況となり、溝110により、作業対象となる毛髪からの接触圧や接触抵抗を低減できると共に、頭皮から隆起した毛穴等の影響も抑えて、良好な作業性を確保できる。同様に、一端縁櫛部103を頭皮に対して寝かせた姿勢で作業を行うときは、図11(a)、(b)に示す第1実施形態と同じ状況となり、このときも、溝110により良好な作業性を確保できる。
【0112】
また、他端縁櫛部104でパーティングやブロッキング等の作業を行う場合も、上述した一端縁櫛部103のときと同じ状況になり、他端縁櫛部104を頭皮に対して垂直的な姿勢又は頭皮に対して寝かせた姿勢で作業を行う際、溝120により良好な作業性を確保できる。
【0113】
このように、第2実施形態の櫛100は、一端縁櫛部103と他端縁櫛部104のいずれでもパーティングやブロッキング等の作業を行えるため、一端縁櫛歯103と第1櫛歯116を組み合わせて、パーティング等の毛髪を分ける作業と第1櫛歯116によるラフな整髪を、櫛100の持ち替え無しに効率良く行える。同様に、他端縁櫛歯104と第2櫛歯126を組み合わせて、パーティング等の毛髪を分ける作業と第2櫛歯126による細やかな整髪を、櫛100の持ち替え無しに効率良く行えるメリットがある。
【0114】
なお、第2実施形態の櫛100においても様々な変形例の適用が可能であり、例えば、櫛100において、一端縁櫛部103の溝110のみを使うユーザ向けの仕様にするときは、他端縁櫛部104の溝120を省略可能であり、逆に、他端縁櫛部104の溝120のみを使うユーザ向けの仕様にするときは、一端縁櫛部103の溝110を省略してもよい。また、第1実施形態で説明した各種変形例は、テール5に関する変形例等を除き、第2実施形態の櫛100にも適宜、適用できる。
【実施例0115】
図16(a)は、本発明の第3実施形態に係る櫛200の全体を概略的に示す正面図である。この櫛200も、上述した第2実施形態の櫛100と同様に、持ち手部分を有しないタイプであり、合成樹脂製で一体的に成形される。概要的な構成として櫛200は、背骨状の櫛本体となる櫛背部202の長手方向と直交する向きに複数本の櫛歯206を突出すると共に、櫛背部202の長手方向における一方の端側(一端側202a)及び他方の端側(他端側202b)から、複数の櫛歯206を挟むように一端縁櫛部203(第一の延出部に相当)及び他端縁櫛部204(第二の延出部に相当)を各櫛歯206の突出方向と平行的に延出する。なお、櫛200も、図16に示す正面方向から見た構成と、図示しない背面方向から見た構成を対称にしており、そのため、櫛200の背面方向の構成については、正面方向からの構成が参照される。
【0116】
櫛背部202は、第2実施形態の櫛100と同様に、ユーザの把持部分となる中間箇所202iを除いて複数の貫通孔207を所定の間隔をあけて形成しており、これらの各貫通孔207を目安にしてカット対象の毛髪の長さ等を測定できるようにしている。
【0117】
第3実施形態に係る櫛200は、一般に荒歯と呼ばれるタイプの先細形状の櫛歯206を櫛背部202からY軸方向に沿って突出させている。荒歯の櫛歯206は、第2実施形態の櫛100の第1櫛歯116の厚み寸法(X軸方向に沿った寸法)の約1.5から4.5倍程度の寸法を有すると共に、各櫛歯206の間隔の寸法も、第2実施形態の櫛100の第1櫛歯116の間隔に対して、約1.2から4倍程度の寸法を確保している。第3実施形態の一例として、荒歯の櫛歯206は、突出方向(Y軸方向)に直交的な断面が丸断面(円又は楕円、図16(c)参照)の丸歯であり、X軸方向に沿った厚み寸法を4mm、櫛歯間隔を4mmにすることが考えられる。
【0118】
なお、第3実施形態の櫛200においても、複数本の櫛歯206の中で、一端縁櫛部203に隣接する箇所に、他の通常長さの櫛歯206に比べて、突出寸法(Y軸方向の全長)が短い短櫛歯216を設けており、この短櫛歯216により、一端縁櫛部203の先端203cの周囲に空間が生じるようにして、パーティングやブロッキング等の作業を行いやすくしている。
【0119】
図16(b)、(c)に示すように、第3実施形態の櫛200の特徴として、全ての櫛歯206(短櫛歯216を除く)は、櫛歯先端206aを含む先端範囲206dに櫛歯溝230をそれぞれ形成している。この櫛歯溝230は、櫛歯206の幅方向(Z軸方向)に直交的な正面側表面206b及び背面側表面206cの側に、櫛歯先端206aの側からY軸方向に沿って櫛背部202の方へ直線的に延びるように形成されている。
【0120】
櫛歯溝230のY軸方向の溝長さは、櫛歯溝230の巾方向の約2倍以上に設定するのが好ましく(約2倍から約15倍程度)、一例としては、櫛歯溝230の巾寸法として1.5mm、溝深さ寸法として0.7mm、溝長さ寸法として5mmに設定することが考えられる(巾と溝深さの寸法の関係としては、巾:溝深さを1:0.2~0.8程度にすることが考えられる)。
【0121】
このような第3実施形態の櫛200の櫛歯230で整髪を行うと、櫛歯溝230により、整髪対象の毛髪(頭髪)との接触面積を少なくなり、それにより毛髪(頭髪)からの接触圧や接触抵抗を低減でき、髪通りの良いなめらかな整髪作業を実現できる。そして、櫛歯溝230は、スリット状に割れて二股に分かれていないので、毛髪(頭髪)が絡まったりするような事態も生じない。
【0122】
また、第3実施形態の櫛200も、第2実施形態の櫛100と同様に、先細形状の一端縁櫛部203に溝210を設けており、この溝210は、その幅方向(Z軸方向)に直交的な正面側表面203f及び背面側表面(図示せず)の側における先端203cの範囲に、先端203cから櫛背部202の方へ延びるように形成されている。この溝210も第2実施形態の溝110と同等の構成になっている。なお、第3実施形態の一端縁櫛部203も、第1実施形態の一端縁櫛部3に形成していた先端貫通孔8及びザグリ部8aを省略しているが、第1実施形態と同様に、先端貫通孔8及びザグリ部8aを形成することも勿論可能である。また、第3実施形態の一端縁櫛部203は外周縁に、第1実施形態の一端縁櫛部3に形成したような根元範囲の凹状の湾曲形状を形成しておらず、外周縁をなだらかな凸の湾曲形状にしているが、第1実施形態の一端縁櫛部3の外周縁と同様な形状にしてもよい。
【0123】
そして、第3実施形態の櫛200の他端縁櫛部204は、第2実施形態の櫛100と同様に、櫛背部202の中央箇所202iを中心にして、一端縁櫛部203と対称的な構成にしている。そのため、他端縁櫛部204も、その幅方向(Z軸方向)に直交的な正面側表面204f及び図示しない背面側表面の側における先端204cの範囲に、先端204cから櫛背部202の方へ延びる溝220を形成している。
【0124】
このような第3実施形態の櫛200の一端縁櫛部203又は他端縁櫛部204でパーティングやブロッキング等の作業を行う場合も、一端縁櫛部203又は他端縁櫛部204を頭皮に対して垂直的な姿勢で作業を行うときは、図10(a)、(b)に示す第1実施形態と同じ状況となり、溝210又は溝220により、作業対象となる毛髪からの接触圧や接触抵抗を低減できると共に、頭皮から隆起した毛穴等の影響も抑えて、良好な作業性を確保できる。同様に、一端縁櫛部203又は他端縁櫛部204を頭皮に対して寝かせた姿勢で作業を行うときは、図11(a)、(b)に示す第1実施形態と同じ状況となり、このときも、溝210又は溝220により良好な作業性を確保できる。
【0125】
なお、第3実施形態の櫛200においても様々な変形例の適用が可能であり、例えば、櫛206に設けた櫛歯溝230を、短櫛歯216にも設けて良い。また、櫛歯溝230は全ての櫛歯206に設けるのではなく、一部の櫛歯206に対して設ける仕様にすることも可能である。例えば、櫛背部202の中間箇所202iから他端側202bの範囲に配置される櫛206には櫛歯溝230を形成し、その他の櫛歯206には櫛歯溝230を形成しないことが考えられる。このようにすれば、櫛背部202の中間箇所202iから一端側202aに配置された櫛歯206では従来と同様の感覚で整髪作業を行える一方、中間箇所202iから他端側202bに配置された櫛歯206では、櫛歯溝230により、髪通りの良いなめらかな感覚で整髪作業を行えるので、二通りの感覚を使い分けられる(なお、櫛歯溝230を設ける範囲は、上記とは逆にすることも勿論可能である)。
【0126】
また、上述したように櫛歯溝230を形成する櫛歯206の範囲を区切るのでは無く、櫛歯溝230を形成した櫛歯206と、櫛歯溝230を形成しない櫛歯206を混在させる仕様も想定できる。例えば、1本ごと又は複数本ごとに櫛歯溝230を生成した櫛歯206を配置すること、ランダムに櫛歯溝230を生成した櫛歯206を配置すること等が考えられる。このように櫛歯溝230を形成しない櫛歯206の中に、櫛歯溝230を形成した櫛歯206を混在させる例では、櫛歯溝230を形成した櫛歯206を含ませる度合いにより、整髪に係る抵抗感やスムーズさ等を微妙に調整することが可能となり、整髪作業時の感触をユーザの好みに合わせることが可能となる。
【0127】
また、溝210又は溝220を設ける一端縁櫛部203又は他端縁櫛部204については、第2実施形態の櫛100で説明した例と同様な変形例の適用が可能であり、例えば、櫛200を一端縁櫛部203の溝210のみを使うユーザ向けの仕様にするときは、他端縁櫛部204の溝220を省略可能であり、逆に、他端縁櫛部204の溝220のみを使うユーザ向けの仕様にするときは、一端縁櫛部203の溝210を省略してもよい。さらに、第1実施形態で説明した各種変形例は、テール5に関する変形例等を除き、第3実施形態の櫛200にも適宜、適用できる。さらにまた、第3実施形態の櫛200において、パーティングやブロッキング等の毛髪を分ける作業を行わないときは、一端縁櫛部203又は他端縁櫛部204の溝210又は溝220を形成しないで省略してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明は、パーティングやブロッキング等の毛髪を分ける櫛による作業をスムーズに効率良く行うことに対して好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0129】
1、50、100、200 櫛
2、102、202 櫛背部
2a、102a、202a 一端側
2b、102b、202b 他端側
3、103、203 一端縁櫛部
4、54、104、204 他端縁櫛部
6、106、206 櫛歯
7 貫通孔
8 先端貫通孔
10、60、110、120、210、220 溝
11 テール溝
12 フラット面
22、23、24、26、27、28 定間隔印
25 中央印
230 櫛歯溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19