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特開2023-83090撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム、及びそれを備えた撮像素子内蔵型投写型映像表示装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083090
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム、及びそれを備えた撮像素子内蔵型投写型映像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20230608BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20230608BHJP
   G02B 5/04 20060101ALI20230608BHJP
   H04N 9/31 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
G03B21/14 Z
G03B21/00 F
G02B5/04 G
G02B5/04 Z
H04N9/31
G02B5/04 A
G02B5/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197236
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】大西 義典
(72)【発明者】
【氏名】山本 紀和
【テーマコード(参考)】
2H042
2K203
5C060
【Fターム(参考)】
2H042CA08
2H042CA14
2H042CA17
2K203FA03
2K203FA25
2K203FA44
2K203FA54
2K203FA62
2K203GB23
2K203GB27
2K203HA08
2K203HA82
2K203HA83
2K203KA36
2K203KA56
2K203MA12
5C060HC09
5C060JB06
(57)【要約】
【課題】撮像素子内蔵型投写型映像表示装置におけるDMD-OFF光による撮像素子又は撮像光学系の発熱又は熱変形を抑制することができる撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズムを提供する。
【解決手段】本発明に係る撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズムは、可視光域の照明光を色分離して得られた、それぞれが所定の波長帯域を有する複数の光を、複数の光変調素子に別々に導き、複数の光変調素子のそれぞれで反射した光を光軸に導いて光軸の前方側の投写光学系の方向に伝搬される投射光を生成し、投射光を色合成した投影光を光軸に沿って投写光学系へ出力する色分離合成プリズムと、色分離合成プリズムと一体的に形成された撮像光分離プリズムと、を備え、撮像光分離プリズムは、投写光学系から入射し、光軸の前方側に対向する光軸の後方側の方向に伝搬される撮像光を受光し、撮像光の少なくとも一部を撮像素子へ導くように構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光域の照明光を色分離して得られた、それぞれが所定の波長帯域を有する複数の光を、複数の光変調素子に別々に導き、前記複数の光変調素子のそれぞれで反射した光を光軸に導いて前記光軸の前方側の投写光学系の方向に伝搬される投射光を生成し、前記投射光を色合成した投影光を前記光軸に沿って前記投写光学系へ出力する色分離合成プリズムと、
前記色分離合成プリズムと一体的に形成された撮像光分離プリズムと、
を備え、
前記撮像光分離プリズムは、前記投写光学系から入射し、前記光軸の前方側に対向する前記光軸の後方側の方向に伝搬される撮像光を受光し、前記撮像光の少なくとも一部を撮像素子へ導く、
撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム。
【請求項2】
前記複数の光は、第1の光と、第2の光と、第3の光とを含み、
前記複数の光変調素子は、第1の光変調素子と、第2の光変調素子と、第3の光変調素子とを含み、
前記色分離合成プリズムは、前記光軸の前方側から前記光軸に沿って順に配置された第1のプリズムと、第2のプリズムと、第3のプリズムとを含み、
前記第1のプリズムは、前記第1の光を反射して前記第2の光及び前記第3の光を透過する第1のプリズム面を有し、前記第1の光を前記第1の光変調素子に導き、
前記第2のプリズムは、前記第2の光を反射して前記第3の光を透過する第2のプリズム面を有し、前記第2の光を前記第2の光変調素子に導き、
前記第3のプリズムは、前記第3の光を前記第3の光変調素子に導くように構成され、
前記撮像光分離プリズムは、前記色分離合成プリズムの前記光軸の前方側に位置し、第1の面を介して前記第1のプリズムに接し、前記照明光が前記第1の面を介して前記第1のプリズムに入射し、前記第1の光変調素子と、前記第2の光変調素子と、前記第3の光変調素子とで反射されて前記光軸の前方側の方向に伝搬される投射光が前記第1の面を通して前記投写光学系へ出射し、前記光軸の後方側の方向に伝搬される撮像光が前記第1の面に入射するように配置され、
前記第1の面は、表面に光学膜が形成され、
前記光学膜は、高透過率波長領域と高反射率波長領域とを含む反射特性を有し、
前記高透過率波長領域は、前記第1の光の波長帯域と少なくとも部分的に重なる第1光透過セクションと、前記第2の光の波長帯域と少なくとも部分的に重なる第2光透過セクションと、前記第3の光の波長帯域と少なくとも部分的に重なる第3光透過セクションと、を含み、
前記高反射率波長領域は、可視光域において、前記照明光の前記所定の波長帯域以外の波長領域の少なくとも一部を含む、
請求項1に記載の撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム。
【請求項3】
前記撮像光分離プリズムは、
前記第1の面と交差して前記撮像光分離プリズムの第1のプリズム角を形成する第2の面を有し、
前記撮像光分離プリズムは、前記光軸に垂直の基準面が前記第1のプリズム角内を通過するように配置され、
前記基準面に対して、前記第1の面が第1傾斜角を成し、前記第2の面が第2傾斜角を成して配置され、
前記第1傾斜角と前記第2傾斜角とは、ともに鋭角であり、合わせて前記第1のプリズム角を構成し、
前記撮像光の少なくとも一部が、前記撮像光分離プリズム内で前記第1の面と前記第2の面とで順に反射されて前記撮像素子へ導かれるように構成されている、
請求項2に記載の撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム。
【請求項4】
前記撮像光分離プリズムは、
前記照明光が、前記第1の面に対して第1入射角を成して入射し、
前記撮像光が、前記第1の面に対して第2入射角を成して入射するように配置される、
請求項3に記載の撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム。
【請求項5】
前記光学膜は、可視光域において、更にシフト反射波長領域を含む反射特性を有し、
前記シフト反射波長領域は、反射率が前記高透過率波長領域よりも高く、前記第1光透過セクションに隣接する第1光部分反射セクションと、前記第2光透過セクションに隣接する第2光部分反射セクションと、前記第3光透過セクションに隣接する第3光部分反射セクションと、を含む、
請求項4に記載の撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム。
【請求項6】
前記第1の面に対して前記第1入射角を成して入射する前記照明光に対して、前記光学膜は、前記高透過率波長領域の前記第1光透過セクションと、前記第2光透過セクションと、前記第3光透過セクションとのそれぞれが、前記第1の光と、前記第2の光と、前記第3の光との波長帯域のそれぞれと少なくとも部分的に重なり、
前記第1の面に対して前記第2入射角を成して入射する前記撮像光に対して、前記光学膜は、前記シフト反射波長領域の前記第1光部分反射セクションと、前記第2光部分反射セクションと、前記第3光部分反射セクションとのそれぞれが、前記第1の光と、前記第2の光と、前記第3の光との波長帯域のそれぞれと少なくとも部分的に重なるように構成されている、
請求項5に記載の撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム。
【請求項7】
前記光学膜は、前記シフト反射波長領域において、2%以上10%以下の反射率を有する、
請求項6に記載の撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム。
【請求項8】
前記撮像光分離プリズムは、
前記第1傾斜角が5度以上、15度以下であり、前記第2傾斜角が25度以上、45度以下であるように構成される、
請求項4から7のいずれか1項に記載の撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム。
【請求項9】
前記撮像光分離プリズムは、前記第1入射角と前記第2入射角の差が5度から15度の範囲内にあるように配置される、
請求項4から8のいずれか1項に記載の撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム。
【請求項10】
前記光学膜は、前記高透過率波長領域において96%以上の透過率を有し、前記高反射率波長領域において96%以上の反射率を有する、
請求項2から9のいずれか1項に記載の撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム。
【請求項11】
前記複数の光は、第1の光と、第2の光と、第3の光とを含み、
前記複数の光変調素子は、第1の光変調素子と、第2の光変調素子と、第3の光変調素子とを含み、
前記色分離合成プリズムは、前記光軸の前方側から前記光軸に沿って順に配置された第1のプリズムと、第2のプリズムと、第3のプリズムとを含み、前記撮像光分離プリズムは、前記3つのプリズムのいずれか2つの間に配置され、
前記第1のプリズムは、前記第1の光を反射して前記第2の光及び前記第3の光を透過する第1のプリズム面を有し、前記第1の光を前記第1の光変調素子に導き、
前記第2のプリズムは、前記第2の光を反射して前記第3の光を透過する第2のプリズム面を有し、前記第2の光を前記第2の光変調素子に導き、
前記第3のプリズムは、前記第3の光を前記第3の光変調素子に導くように構成され、
前記撮像光分離プリズムよりも前記光軸の前方側のプリズムの少なくとも1つは、前記第1のプリズム面又は前記第2のプリズム面が更にシフト透過波長領域を有し、それぞれの前記シフト透過波長領域は、それぞれのプリズム面で反射される光の波長帯域に隣接する対応の所定の波長帯域であって、
前記照明光における第1の光又は第2の光の入射角と異なる入射角を成して前記第1のプリズム面又は前記第2のプリズム面に入射する撮像光に対して、前記第1のプリズム面又は前記第2のプリズム面は、それぞれの前記シフト透過波長領域において前記撮像光における第1の光又は第2の光を部分的に透過させ、
前記撮像光分離プリズムは、第1の面を有し、前記光軸の前方側のプリズムを透過した照明光が、前記第1の面を介して前記光軸の後方側のプリズムに入射し、前記光軸の後方側のプリズムからの投射光が前記第1の面を通して前記投写光学系へ出射し、前記撮像光の少なくとも一部が前記光軸の前方側のプリズムを透過して前記第1の面に入射し、前記撮像光分離プリズムによって前記撮像素子に導かれるように配置され、
前記第1の面は、表面に光学膜が形成され、
前記光学膜は、可視光域において、高透過率波長領域と、高反射率波長領域と、前記高透過率波長領域よりも高い反射率を有するシフト反射波長領域を有し、
第1入射角を成して前記第1の面に入射する照明光に対して、前記光学膜は、前記高透過率波長領域が、前記光軸の後方側のプリズムにより光変調素子に導かれる光の波長領域と少なくとも部分的に重なり、
第2入射角を成して前記第1の面に入射する撮像光に対して、前記光学膜は、前記シフト反射波長領域が、前記光軸の後方側のプリズムにより光変調素子に導かれる光の波長領域と少なくとも部分的に重なり、
前記光学膜は、前記高反射率波長領域が、前記光軸の前方側のプリズムにより光変調素子に導かれる光の波長領域を含むように構成された、
請求項1に記載の撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム。
【請求項12】
前記複数の光は、第1の光と、第2の光と、第3の光とを含み、
前記複数の光変調素子は、第1の光変調素子と、第2の光変調素子と、第3の光変調素子とを含み、
前記色分離合成プリズムは、前記光軸の前方側から前記光軸に沿って順に配置された第1のプリズムと、第2のプリズムと、第3のプリズムとを含み、
前記第1のプリズムは、前記第1の光を反射して前記第2の光及び前記第3の光を透過する第1のプリズム面を有し、前記第1の光を前記第1の光変調素子に導き、
前記第2のプリズムは、前記第2の光を反射して前記第3の光を透過する第2のプリズム面を有し、前記第2の光を前記第2の光変調素子に導き、
前記第3のプリズムは、前記第3の光を反射して前記第3の光変調素子に導く第3のプリズム面を有し、
前記第1のプリズム面と前記第2のプリズム面と前記第3のプリズム面の少なくとも1つが更にシフト透過波長領域を有し、各々の前記シフト透過波長領域は、各々のプリズム面で反射される光の波長帯域に隣接する対応の所定の波長帯域であって、
前記照明光における第1の光又は第2の光又は第3の光の入射角と異なる入射角を成して前記第1のプリズム面又は前記第2のプリズム面又は前記第3のプリズム面に入射する撮像光に対して、前記第1のプリズム面又は前記第2のプリズム面又は前記第3のプリズム面は、各々の前記シフト透過波長領域において、前記撮像光における第1の光又は第2の光又は第3の光を部分的に透過させ、
前記撮像光分離プリズムは、前記第3のプリズムの前記光軸の後方側の面に接して配置されている、
請求項1に記載の撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム。
【請求項13】
可視光域の照明光を供給する照明光学系と、
請求項1から12のいずれか1つに記載の前記撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズムと、
前記色分離合成プリズムにより色分離して得られた複数の光のそれぞれを空間的に変調し、映像情報に応じた投射光を生成する複数の光変調素子と、
前記照明光学系により供給された照明光を反射させて前記撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズムへ導くとともに、前記撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズムによって前記投射光を色合成して生成された投影光を透過させて投写光学系へ導くTIRプリズムと、
前記TIRプリズムを透過した投影光を拡大投写して映像を表示する投写光学系と、
前記投写光学系から入射し、前記光軸に沿って、前記投影光の出力方向に対向する方向に伝搬される撮像光を受光した前記撮像光分離プリズムにより出力された光を受光し、結像する撮像素子と、
を備える、
撮像素子内蔵型投写型映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム、及びそれを備えた撮像素子内蔵型投写型映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン又は建物などの投写対象物に対して映像を投写する投写型映像表示装置が知られている。投写型映像表示装置として、R(赤)/G(緑)/B(青)の3原色を色分離・合成して表示する3板式の投写型映像表示装置の開発が数多くされている。
【0003】
3板式の投写型映像表示装置は、R/G/Bの3原色の照明光、又は白色からなる照明光を色分離して得られた3原色の光を、色分離合成プリズム内の異なるブロック状のプリズムを透過もしくは透過及び反射をさせながらR/G/B各色域の光用の光変調素子に別々に導く。その後、光変調素子にて反射させる方向を選択し、投影用光束と不要な光束を分離させ、投影用光束は再びプリズム内を経由し、ダイクロイックフィルタでR/G/B各色域の投影用光束を合成される。合成された投影光は投写光学系を通して投写され、投写対象物に映像を表示する。
【0004】
従来の投写型映像表示装置において、投写対象物に投写された映像を撮像する機能を更に備える、撮像素子内蔵型投写型映像表示装置が検討されている。そこで、例えば、特許文献1の発明が提案されている。
【0005】
図18は、特許文献1に開示されたプロジェクタ101を示す概略図である。特許文献1のプロジェクタ101は、光源1からの照明光を光変調素子6に導くと共に、光変調素子6で反射された光を投写光学系7へ出力するTIRプリズム5が設けられている。スクリーン8から反射された光は、TIRプリズム5内部の反射面で反射されて撮像素子11に出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-218262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の撮像素子内蔵型投写型映像表示装置において、DMD-OFF光(光変調素子6で反射され、投影しない光)が偏向によって導かれる方向付近に撮像素子及び撮像光学系が配置されている。この場合、高輝度な投写型映像表示装置において、高エネルギーのDMD-OFF光による発熱によって、撮像素子の破損、又は撮像光学系を構成する光部品が熱変形し、撮像光線の光路が所望の光路より曲げられることで結像の画質低下などの課題が懸念される。従って、撮像素子内蔵型投写型映像表示装置におけるDMD-OFF光による撮像光学系の光学部品の発熱又は熱変形を抑制する点で未だ改善の余地がある。
【0008】
そこで、本開示の目的は、前記課題を解決することにあって、撮像素子内蔵型投写型映像表示装置におけるDMD-OFF光による撮像素子又は撮像光学系の発熱又は熱変形を抑制することができる撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本開示に係る撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズムは、可視光域の照明光を色分離して得られた、それぞれが所定の波長帯域を有する複数の光を、複数の光変調素子に別々に導き、複数の光変調素子のそれぞれで反射した光を光軸に導いて光軸の前方側の投写光学系の方向に伝搬される投射光を生成し、投射光を色合成した投影光を光軸に沿って投写光学系へ出力する色分離合成プリズムと、色分離合成プリズムと一体的に形成された撮像光分離プリズムと、を備え、撮像光分離プリズムは、投写光学系から入射し、光軸の前方側に対向する光軸の後方側の方向に伝搬される撮像光を受光し、撮像光の少なくとも一部を撮像素子へ導くように構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様に係る撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズムによれば、撮像素子内蔵型投写型映像表示装置におけるDMD-OFF光による撮像素子又は撮像光学系の発熱又は熱変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る撮像素子内蔵型投写型映像表示装置600の全体構成を示す概略図である。
図2図1の照明光源105の発光スペクトルの一例を示す図である。
図3図1の投影撮像光学系500の構成を示す概略図である。
図4図1のTIRプリズム200及び撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム300の構成を示す斜視図である。
図5図1の撮像光分離プリズム310の断面図である。
図6図5の撮像光分離プリズムの第1の面311の反射特性の一例を示す図である。
図7】光学膜の反射特性の入射角依存性の一例を示す図である。
図8】シフト反射波長領域を有する撮像光分離プリズムの第1の面311aの反射特性の例を示す図である。
図9図8の撮像光分離プリズムの第1の面311aの反射特性のシフトの一例を示す図である。
図10】実施の形態2に係る撮像素子内蔵型投写型映像表示装置600aの全体構成を示す概略図である。
図11】実施の形態3に係る撮像素子内蔵型投写型映像表示装置の投影撮像光学系500bの構成を示す概略図である。
図12図11の投影撮像光学系の第1のプリズム321bの第1のプリズム面321b1の反射特性の例を示す図である。
図13A】光反射セクションSGとシフト透過波長領域SG1とをともに有する第1のプリズム面321b1と、光透過セクションTR,TBとシフト反射波長領域の光部分反射セクションTR1,TB1とをともに有する撮像光分離プリズムの第1の面311bとが照明光に対する反射特性の一例を示す図である。
図13B】光反射セクションSGとシフト透過波長領域SG1とをともに有する第1のプリズム面321b1と、光透過セクションTR,TBとシフト反射波長領域の光部分反射セクションTR1,TB1とをともに有する撮像光分離プリズムの第1の面311bとが撮像光に対する反射特性の一例を示す図である。
図14】実施の形態4に係る撮像素子内蔵型投写型映像表示装置の投影撮像光学系500cの構成を示す概略図である。
図15A】光反射セクションSGとシフト透過波長領域SG1とをともに有する第1のプリズム面321c1と、光反射セクションSRとシフト透過波長領域SR1とをともに有する第2のプリズム面322c2と、光透過セクションTBとシフト反射波長領域の光部分反射セクションTB1とをともに有する撮像光分離プリズムの第1の面311cとが照明光に対する反射特性の一例を示す図である。
図15B】光反射セクションSGとシフト透過波長領域SG1とをともに有する第1のプリズム面321c1と、光反射セクションSRとシフト透過波長領域SR1とをともに有する第2のプリズム面322c2と、光透過セクションTBとシフト反射波長領域の光部分反射セクションTB1とをともに有する撮像光分離プリズムの第1の面311cとが撮像光に対する反射特性の一例を示す図である。
図16】実施の形態5に係る撮像素子内蔵型投写型映像表示装置の投影撮像光学系500dの構成を示す概略図である。
図17A】光反射セクションSGとシフト透過波長領域SG1とをともに有する第1のプリズム面321d1と、光反射セクションSRとシフト透過波長領域SR1とをともに有する第2のプリズム面322d2と、光反射セクションSBとシフト透過波長領域SB1とをともに有する第3のプリズム面323d3とが照明光に対する反射特性の一例を示す図である。
図17B】光反射セクションSGとシフト透過波長領域SG1とをともに有する第1のプリズム面321d1と、光反射セクションSRとシフト透過波長領域SR1とをともに有する第2のプリズム面322d2と、光反射セクションSBとシフト透過波長領域SB1とをともに有する第3のプリズム面323d3とが撮像光に対する反射特性の一例を示す図である。
図18】特許文献1に開示されたプロジェクタ101を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の第1態様によれば、可視光域の照明光を色分離して得られた、それぞれが所定の波長帯域を有する複数の光を、複数の光変調素子に別々に導き、複数の光変調素子のそれぞれで反射した光を光軸に導いて光軸の前方側の投写光学系の方向に伝搬される投射光を生成し、投射光を色合成した投影光を光軸に沿って投写光学系へ出力する色分離合成プリズムと、色分離合成プリズムと一体的に形成された撮像光分離プリズムと、を備え、撮像光分離プリズムは、投写光学系から入射し、光軸の前方側に対向する光軸の後方側の方向に伝搬される撮像光を受光し、撮像光の少なくとも一部を撮像素子へ導く、撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズムを提供する。
【0013】
この態様によれば、撮像素子内蔵型投写型映像表示装置におけるDMD-OFF光による撮像素子又は撮像光学系の発熱又は熱変形を抑制することができる。
【0014】
本開示の第2態様によれば、複数の光は、第1の光と、第2の光と、第3の光とを含み、複数の光変調素子は、第1の光変調素子と、第2の光変調素子と、第3の光変調素子とを含み、色分離合成プリズムは、光軸の前方側から光軸に沿って順に配置された第1のプリズムと、第2のプリズムと、第3のプリズムとを含み、第1のプリズムは、第1の光を反射して第2の光及び第3の光を透過する第1のプリズム面を有し、第1の光を第1の光変調素子に導き、第2のプリズムは、第2の光を反射して第3の光を透過する第2のプリズム面を有し、第2の光を第2の光変調素子に導き、第3のプリズムは、第3の光を第3の光変調素子に導くように構成され、撮像光分離プリズムは、色分離合成プリズムの光軸の前方側に位置し、第1の面を介して第1のプリズムに接し、照明光が第1の面を介して第1のプリズムに入射し、第1の光変調素子と、第2の光変調素子と、第3の光変調素子とで反射されて光軸の前方側の方向に伝搬される投射光が第1の面を通して投写光学系へ出射し、光軸の後方側の方向に伝搬される撮像光が第1の面に入射するように配置され、第1の面は、表面に光学膜が形成され、光学膜は、高透過率波長領域と高反射率波長領域とを含む反射特性を有し、高透過率波長領域は、第1の光の波長帯域と少なくとも部分的に重なる第1光透過セクションと、第2の光の波長帯域と少なくとも部分的に重なる第2光透過セクションと、第3の光の波長帯域と少なくとも部分的に重なる第3光透過セクションと、を含み、高反射率波長領域は、可視光域において、照明光の所定の波長帯域以外の波長領域の少なくとも一部を含む、第1態様に記載の撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズムを提供する。
【0015】
本開示の第3態様によれば、撮像光分離プリズムは、第1の面と交差して撮像光分離プリズムの第1のプリズム角を形成する第2の面を有し、撮像光分離プリズムは、光軸に垂直の基準面が第1のプリズム角内を通過するように配置され、基準面に対して、第1の面が第1傾斜角を成し、第2の面が第2傾斜角を成して配置され、第1傾斜角と第2傾斜角とは、ともに鋭角であり、合わせて第1のプリズム角を構成し、撮像光の少なくとも一部が、撮像光分離プリズム内で第1の面と第2の面とで順に反射されて撮像素子へ導かれるように構成されている、第2態様に記載の撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズムを提供する。
【0016】
本開示の第4態様によれば、撮像光分離プリズムは、照明光が、第1の面に対して第1入射角を成して入射し、撮像光が、第1の面に対して第2入射角を成して入射するように配置される、第3態様に記載の撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズムを提供する。
【0017】
本開示の第5態様によれば、光学膜は、可視光域において、更にシフト反射波長領域を含む反射特性を有し、シフト反射波長領域は、反射率が高透過率波長領域よりも高く、第1光透過セクションに隣接する第1光部分反射セクションと、第2光透過セクションに隣接する第2光部分反射セクションと、第3光透過セクションに隣接する第3光部分反射セクションと、を含む、第4態様に記載の撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズムを提供する。
【0018】
本開示の第6態様によれば、第1の面に対して第1入射角を成して入射する照明光に対して、光学膜は、高透過率波長領域の第1光透過セクションと、第2光透過セクションと、第3光透過セクションとのそれぞれが、第1の光と、第2の光と、第3の光との波長帯域のそれぞれと少なくとも部分的に重なり、第1の面に対して第2入射角を成して入射する撮像光に対して、光学膜は、シフト反射波長領域の第1光部分反射セクションと、第2光部分反射セクションと、第3光部分反射セクションとのそれぞれが、第1の光と、第2の光と、第3の光との波長帯域のそれぞれと少なくとも部分的に重なるように構成されている、第5態様に記載の撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズムを提供する。
【0019】
本開示の第7態様によれば、光学膜は、シフト反射波長領域において、2%以上10%以下の反射率を有する、第6態様に記載の撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズムを提供する。
【0020】
本開示の第8態様によれば、撮像光分離プリズムは、第1傾斜角が5度以上、15度以下であり、第2傾斜角が25度以上、45度以下であるように構成される、第4から第7態様のいずれか1つに記載の撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズムを提供する。
【0021】
本開示の第9態様によれば、撮像光分離プリズムは、第1入射角と第2入射角の差が5度から15度の範囲内にあるように配置される、第4から第8態様のいずれか1つに記載の撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズムを提供する。
【0022】
本開示の第10態様によれば、光学膜は、高透過率波長領域において96%以上の透過率を有し、高反射率波長領域において96%以上の反射率を有する、第2から第9態様のいずれか1つに記載の撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズムを提供する。
【0023】
本開示の第11態様によれば、複数の光は、第1の光と、第2の光と、第3の光とを含み、複数の光変調素子は、第1の光変調素子と、第2の光変調素子と、第3の光変調素子とを含み、色分離合成プリズムは、光軸の前方側から光軸に沿って順に配置された第1のプリズムと、第2のプリズムと、第3のプリズムとを含み、撮像光分離プリズムは、3つのプリズムのいずれか2つの間に配置され、第1のプリズムは、第1の光を反射して第2の光及び第3の光を透過する第1のプリズム面を有し、第1の光を第1の光変調素子に導き、第2のプリズムは、第2の光を反射して第3の光を透過する第2のプリズム面を有し、第2の光を第2の光変調素子に導き、第3のプリズムは、第3の光を第3の光変調素子に導くように構成され、撮像光分離プリズムよりも光軸の前方側のプリズムの少なくとも1つは、第1のプリズム面又は第2のプリズム面が更にシフト透過波長領域を有し、それぞれのシフト透過波長領域は、それぞれのプリズム面で反射される光の波長帯域に隣接する対応の所定の波長帯域であって、照明光における第1の光又は第2の光の入射角と異なる入射角を成して第1のプリズム面又は第2のプリズム面に入射する撮像光に対して、第1のプリズム面又は第2のプリズム面は、それぞれのシフト透過波長領域において撮像光における第1の光又は第2の光を部分的に透過させ、撮像光分離プリズムは、第1の面を有し、光軸の前方側のプリズムを透過した照明光が、第1の面を介して光軸の後方側のプリズムに入射し、光軸の後方側のプリズムからの投射光が第1の面を通して投写光学系へ出射し、撮像光の少なくとも一部が光軸の前方側のプリズムを透過して第1の面に入射し、撮像光分離プリズムによって撮像素子に導かれるように配置され、第1の面は、表面に光学膜が形成され、光学膜は、可視光域において、高透過率波長領域と、高反射率波長領域と、高透過率波長領域よりも高い反射率を有するシフト反射波長領域を有し、第1入射角を成して第1の面に入射する照明光に対して、光学膜は、高透過率波長領域が、光軸の後方側のプリズムにより光変調素子に導かれる光の波長領域と少なくとも部分的に重なり、第2入射角を成して第1の面に入射する撮像光に対して、光学膜は、シフト反射波長領域が、光軸の後方側のプリズムにより光変調素子に導かれる光の波長領域と少なくとも部分的に重なり、光学膜は、高反射率波長領域が、光軸の前方側のプリズムにより光変調素子に導かれる光の波長領域を含むように構成された、第1態様に記載の撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズムを提供する。
【0024】
本開示の第12態様によれば、複数の光は、第1の光と、第2の光と、第3の光とを含み、複数の光変調素子は、第1の光変調素子と、第2の光変調素子と、第3の光変調素子とを含み、色分離合成プリズムは、光軸の前方側から光軸に沿って順に配置された第1のプリズムと、第2のプリズムと、第3のプリズムとを含み、第1のプリズムは、第1の光を反射して第2の光及び第3の光を透過する第1のプリズム面を有し、第1の光を第1の光変調素子に導き、第2のプリズムは、第2の光を反射して第3の光を透過する第2のプリズム面を有し、第2の光を第2の光変調素子に導き、第3のプリズムは、第3の光を反射して第3の光変調素子に導く第3のプリズム面を有し、第1のプリズム面と第2のプリズム面と第3のプリズム面の少なくとも1つが更にシフト透過波長領域を有し、各々のシフト透過波長領域は、各々のプリズム面で反射される光の波長帯域に隣接する対応の所定の波長帯域であって、照明光における第1の光又は第2の光又は第3の光の入射角と異なる入射角を成して第1のプリズム面又は第2のプリズム面又は第3のプリズム面に入射する撮像光に対して、第1のプリズム面又は第2のプリズム面又は第3のプリズム面は、各々のシフト透過波長領域において、撮像光における第1の光又は第2の光又は第3の光を部分的に透過させ、撮像光分離プリズムは、第3のプリズムの光軸の後方側の面に接して配置されている、第1態様に記載の撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズムを提供する。
【0025】
本開示の第13態様によれば、可視光域の照明光を供給する照明光学系と、第1から第12態様のいずれか1つに記載の撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズムと、色分離合成プリズムにより色分離して得られた複数の光のそれぞれを空間的に変調し、映像情報に応じた投射光を生成する複数の光変調素子と、照明光学系により供給された照明光を反射させて撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズムへ導くとともに、撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズムによって前記投射光を色合成して生成された投影光を透過させて投写光学系へ導くTIRプリズムと、TIRプリズムを透過した投影光を拡大投写して映像を表示する投写光学系と、投写光学系から入射し、光軸に沿って、投影光の出力方向に対向する方向に伝搬される撮像光を受光した撮像光分離プリズムにより出力された光を受光し、結像する撮像素子と、を備える、撮像素子内蔵型投写型映像表示装置を提供する。
【0026】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0027】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0028】
なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供するものであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。また、各図においては、説明を容易なものとするため、各要素を誇張して示している。
【0029】
<実施の形態1>
以下、本開示の実施の形態に係る撮像素子内蔵型投写型映像表示装置について、図1乃至図18を参照しながら説明する。本開示に係る投写型映像表示装置の具体的な実施例として、光変調素子を3つ備える3板式の投写型映像表示装置を説明する。
【0030】
(撮像素子内蔵型投写型映像表示装置600の構成)
図1は、実施の形態1に係る撮像素子内蔵型投写型映像表示装置600の全体構成を示す概略図である。実施の形態1に係る撮像素子内蔵型投写型映像表示装置600は、例えば、高輝度タイプのプロジェクタであって、プロジェクションマッピングなどに用いられてもよく、また、家庭用の低輝度タイプのプロジェクタであってもよい。
【0031】
図1の撮像素子内蔵型投写型映像表示装置600は、照明光を供給する照明光学系100と、投影撮像光学系500と、を備える。照明光学系100は、3原色R、G、Bの光を提供する照明光源105と、ダイクロイックミラー111,112と、レンズ121,122と、ロッドインテグレータ125と、リレー光学系を構成するレンズ126,127,128と、ミラー113とを備える。
【0032】
本開示の実施の形態において、照明光源105は、赤色光源105Rと、緑色光源105Gと、青色光源105Bとを含み、好ましくは、狭帯域光源、例えば、半導体レーザ(LD)又は発光ダイオード(LED)である。照明光源105の波長帯域(発光スペクトル幅)は、好ましくは、50nm以下であってもよく、好ましくは、20nm以下であってもよく、更に好ましくは、10nm以下であってもよい。図2は、図1の照明光源105の発光スペクトルの一例を示す図である。図2に示すように、照明光源105から発される照明光は、3原色の色域の光LR,LG,LBを含み、それぞれが中心波長640nm,530nm,460nm付近の波長帯域を有する。また、図1に示すように、緑色光源105Gと、赤色光源105Rと、青色光源105Bとは、それぞれが複数のLD又はLEDを含んでもよく、それぞれのLD又はLEDから発された光は、コリメートレンズでそれぞれコリメートされて出射される。
【0033】
照明光源105から出射された緑域の光LGと赤域の光LRとは、それぞれダイクロイックミラー111、112で反射され、ダイクロイックミラー111,112を透過する青域の光LBとともに+Z方向に進み、レンズ121、122によって集束され、ロッドインテグレータ125に入射する。ロッドインテグレータ125から出射した光は、リレー光学系を構成するレンズ126,127を通過した後、ミラー113で反射され、レンズ128を透過したのち、+X方向に投影撮像光学系500に入射する。本実施の形態において、投影撮像光学系500に入射される照明光Lsに含まれる緑域の光LGと、赤域の光LRと、青域の光LBとをそれぞれ第1の光Ls1と、第2の光Ls2と、第3の光Ls3とする。
【0034】
図3は、図1の投影撮像光学系500の構成を示す概略図である。投影撮像光学系500は、内部全反射プリズム(以下、「TIR(Total Internal Reflection)プリズム」と称する)200と、撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム300と、光変調素子371,372,373と、投写光学系400と、撮像素子450と、を備える。
【0035】
TIRプリズム200は、本実施の形態において、略三角柱状の2つのプリズム201,202の間に微小の空隙を設けて接合して構成され、全反射を利用して、入射してきた照明光Lsを、進行方向を偏向させて伝搬する。本実施の形態の場合、ミラー128からTIRプリズム200に入射した光は、プリズム面211で全反射され、撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム300に入射する。
【0036】
撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム300は、略三角柱状の撮像光分離プリズム310と、色分離合成プリズム320とを含み、色分離合成プリズム320は、更に略三角柱状の第1のプリズム321と、略三角柱状の第2のプリズム322と、略四角柱状の第3のプリズム323とによって構成されている。この3つのプリズムは、投写光学系400の側から、投影撮像光学系500の光軸Oに沿って順に配置され、第1の光Ls1と、第2の光Ls2と、第3の光Ls3とのそれぞれに対応する。撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム300の構成については、後段において詳述する。
【0037】
照明光Lsに含まれるLs1,Ls2,Ls3は、撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム300に入射した後、色分離合成プリズム320の第1のプリズム321の緑域反射ダイクロイックコート層である第1のプリズム面321a1に到達する。第1プリズム面321a1にて、緑域の第1の光Ls1が反射され、更に第1のプリズム321内で全反射されて光変調素子371に導入されるとともに、赤域の第2の光Ls2と青域の第3の光Ls3とが透過して、第2のプリズム322に入射する。次に、第1のプリズム321を透過した第2の光Ls2と、第3の光Ls3とは、第2のプリズム322の赤域反射ダイクロイックコート層である第2のプリズム面322a2に到達する。第2のプリズム面322a2にて、赤域の第2の光Ls2が反射され、更に第2のプリズム322内で全反射されて光変調素子372に導入されるとともに、青域の第3の光Ls3が透過して、第3のプリズム323に入射する。そして、第2のプリズム322を透過した第3の光Ls3は、第3のプリズム323の第3のプリズム面323a3を通過して光変調素子373に導入される。このように、色分離合成プリズム320は、入射してきた照明光に含まれるLs1,Ls2,Ls3を3原色の色域の光に色分離して、光軸Oの後方側に配置された3つの光変調素子371,372,373に別々に導く。
【0038】
本開示の3板式の投写型映像表示装置において、光変調素子としてDMD(Digital Mirror Device)が用いられ、3原色の色域ずつに対応するように3つ設けられている。緑域の光を対応する第1のDMD371と、赤域の光を対応する第2のDMD372と、青域の光を対応する第3のDMD373とは、それぞれが入射される第1の光Ls1と、第2の光Ls2と、第3の光Ls3とを映像信号に基づいて変調し、変調した緑域、赤域、青域の光成分を、再び色分離合成プリズム320の3つのプリズムのそれぞれに反射する。色分離合成プリズム320は、それぞれのプリズム内でDMDに反射された投影用の光(DMD-ON光)を光軸Oに導いた各色域の投射光を再度色合成し、合成した投影光Lpを光軸Oに沿って+Z方向に出射する。投影しない光(DMD-OFF光)は光軸Oから偏向されて除去される。投影光Lpは、撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム300から出力され、光軸Oの前方側のTIRプリズム200を通して、投写光学系400へ伝搬される。
【0039】
投写光学系400は、投写レンズを備え、出射された投影光Lpを拡大投写して映像を表示する。各色域の光が再度色合成された投影光Lpがスクリーンに投写されることによって、フルカラーの映像を生成して知覚させる。
【0040】
一方、本実施の形態に係る撮像素子内蔵型投写型映像表示装置600において、スクリーンから反射された撮像光Liを利用して、スクリーンに投写された映像を、投影撮像光学系500に内蔵された撮像素子450によって撮像することができる。
【0041】
図1に示すように、撮像光Liは、投写光学系400から入射し、光軸Oに沿って-Z方向に伝搬され、TIRプリズム200を透過して撮像光分離プリズム310に入射する。撮像光分離プリズム310は、投写光学系400から入射してきた撮像光Liを撮像素子450へ導く。撮像素子450は、CCDイメージセンサー、CMOSイメージセンサー等の固体撮像素子から構成することができる。また、本実施の形態において、撮像素子450は、光変調素子371,372,373と同じサイズを有し、スクリーンに投写された画像の全体を含むスクリーン上の被写体を撮像することができる。なお、撮像素子450と撮像光分離プリズム310との間には、更に撮像光学系を配置することができる(本実施の形態には図示せず、本開示の実施の形態2を示す図10を参照)。
【0042】
このように、撮像光Liの光軸と投影光Lpが出射される光軸とを同一にする同軸撮像構成を利用することで、画角の調整を省略でき、撮像における影の発生を軽減することができる。
【0043】
このように、撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム300を利用することで、DMD-OFF光が導かれる方向付近に撮像素子及び撮像光学系を配置することを回避でき、DMD-OFF光による撮像素子又は撮像光学系の光学部品の発熱又は熱変形を抑制することができる。
【0044】
上述したように、投写光学系400へ出力される投影光Lpは、R、G、B各色域の投射光を含み、投写光学系400から入射される撮像光Liは、可視光域の広域光成分を含む。本明細書において、投影撮像光学系500の光軸Oの投写光学系400が配置されている側を光軸Oの前方側(図示+Z側)とし、その対向側を光軸Oの後方側(図示-Z側)とする。また、照明光Lsに含まれる第1の光Ls1(LG)と、第2の光Ls2(LR)と、第3の光Ls3(LB)とのそれぞれに対応する投影光Lpの各色域の投射光をそれぞれLp1(LG),Lp2(LR),Lp3(LB)とし、各色域の投射光Lp1,Lp2,Lp3がスクリーンによって反射され、光軸Oに沿って光軸Oの後方側の方向に伝搬される撮像光のR、G、B各色域の光成分をそれぞれLi1(LG),Li2(LR),Li3(LB)とする。
【0045】
(撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム300の構成)
図4,5を参照して実施の形態1に係る投影撮像光学系500の撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム300の構成を説明する。図4は、図1のTIRプリズム200及び撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム300の構成を示す斜視図である。図5は、図1の撮像光分離プリズム310の断面図である。なお、図4及び図5において、各光のビームラインは、説明を容易にするために概略的に示している。
【0046】
図4に示すように、撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム300は、撮像光分離プリズム310と色分離合成プリズム320とが一体に形成されている。撮像光分離プリズム310は、第1の面311を介して色分離合成プリズム320の第1のプリズム321に接して配置されている。TIRプリズム200は、撮像光分離プリズム310の第2面312の側に位置し、撮像光分離プリズム310を介して、色分離合成プリズム320と対向して配置されている。なお、図1に示す平面図の製図上の表現により、TIRプリズム200が撮像光分離プリズム310と離間して配置されるように示しているが、TIRプリズム200と撮像光分離プリズム310とは、エアギャップを介して近づけるように配置することが望ましい。これによって、映像投写における様々な収差の発生を防止することができる。
【0047】
図示のように、本実施の形態において、TIRプリズム200は2つのプリズム201、202から構成され、互いのプリズムの近接面には微小の空隙(図示せず)が設けられている。これによって、2つのプリズム201、202を順に通して出射される投影光Lpが光軸Oに沿って出力され、投写光学系によって結像することができる。
【0048】
色分離合成プリズム320は、第1のプリズム321と撮像光分離プリズム310の第1の面311との間にエアギャップ(図3参照)を設けて第1のプリズム321内において第1の面311と隣接する面で第1の光Ls1を全反射させて第1の光変調素子371に導く。同様に、第2のプリズム322と第1のプリズム321の第1のプリズム面321a1との間にエアギャップ(図3参照)を設けて第2のプリズム322内において第1のプリズム面321a1と隣接する面で第2の光Ls2を全反射させて第2の光変調素子372に導く。第3のプリズム323は、第3の光Ls3を第3のプリズム面323a3で透過して第3の光変調素子373に導く。
【0049】
図示のように、本実施の形態において、略三角柱状の撮像光分離プリズム310は、光軸Oに沿って色分離合成プリズム320の前方側(投写光学系側)に位置している。照明光学系からの各色域の照明光Ls1,Ls2,Ls3は、TIRプリズム200を透過して第1の面311を介して光軸Oの後方側の色分離合成プリズム320に入射する。一方、色分離合成プリズム320からの各色域の投射光Lp1,Lp2,Lp3は、光軸Oに沿って+Z方向に第1の面311を通して投写光学系(図4に図示せず)へ出射する。また、投写光学系から入射した撮像光Liは、光軸Oに沿って-Z方向に第1の面311に入射する。このように、撮像光分離プリズム310の第1の面311には、照明光Ls1,Ls2,Ls3と、投射光Lp1,Lp2,Lp3と、撮像光Liとが、ともに入射する。
【0050】
図5に示すように、本実施の形態において、撮像光分離プリズム310は、第1の面311と、投写光学系側に位置し、第1の面311と交差して、第1のプリズム角Cを形成する第2の面312を有する。本実施の形態において、撮像光分離プリズム310は、光軸Oに垂直の基準面A-Aが第1のプリズム角C内を通過するように配置されている。また、基準面A-Aに対して、第1の面311は、鋭角である第1傾斜角θ1を成して配置され、第2の面312は、鋭角である第2傾斜角θ2を成して配置されている。図示のように、第1傾斜角θ1と第2傾斜角θ2とは、合わせて第1のプリズム角Cを構成している。
【0051】
撮像光分離プリズム310をこのように配置することによって、撮像光Liの少なくとも一部が、撮像光分離プリズム310内において、第1の面311と第2の面312とで順に反射され、容易に撮像素子450に導入される。これに限定されないが、更に好ましくは、撮像光Liの少なくとも一部が、第2の面312で全反射されて撮像素子450に導入される。これによって、効率よく撮像光を利用することができる。
【0052】
図5を参照すれば、撮像光Liが光軸Oに沿って、第1の面311に対して-Z方向に入射角α1で入射する。入射角α1は、図示のように、撮像光Liと第1の面311の法線P1とが成す角度である。第1の面311で反射された撮像光Liの一部Lfを、第2の面312で全反射させるためには、Lfが第2の面312に対する入射角が臨界角よりも大きくなるように第2の面312の第2傾斜角θ2を設計する必要がある。この場合、第1の面311の第1傾斜角θ1が小さいほど、撮像光Liが第1の面311に対する入射角α1が小さくなり、第2の面312の第2傾斜角θ2が大きくなるため、撮像光分離プリズム310が全体的に大型化になる。
【0053】
また、投射光Lpが光軸Oに沿って、第2の面312に対してZ方向に入射角α2で入射する。入射角α2は、図示のように、投射光Lpと第2の面312の法線P2とが成す角度である。第2の面312で投射光Lpの少なくとも一部を透過させて投写光学系へ出力するためには、投射光Lpが第2の面312に対する入射角α2が臨界角よりも小さくなるように第2の面312の第2傾斜角θ2を設計する必要がある。入射角α2は、実質的に第2傾斜角θ2に等しいため、第2の面312の第2傾斜角θ2が大きいほど、入射角α2が大きくなる。したがって、第2の面312の第2傾斜角θ2が大き過ぎると、投射光Lpが第2の面312で全反射されて投写光学系へ出射できなくなる。
【0054】
このように、第2の面312の第2傾斜角θ2が、第2の面312で撮像光Liを全反射させながら、投写光Lpを全反射させない角度であるように、撮像光分離プリズム310の第1の面311の第1傾斜角θ1及び第2の面312の第2傾斜角θ2を設計することが望ましい。本実施の形態では、図示のように、第1傾斜角θ1と第2傾斜角θ2とは、ともに鋭角である。
【0055】
前述したように、照明光Ls1,Ls2,Ls3は、撮像光分離プリズム310の第1の面311を介して光軸Oの後方側の色分離合成プリズム320に入射する。そのため、第1の面311は、照明光Ls1,Ls2,Ls3を透過する光学特性を有する必要がある。本実施の形態において、第1の面311は、表面に光学膜を形成することで、一定の反射特性を有する。
【0056】
図6は、図5の撮像光分離プリズムの第1の面311の反射特性の一例を示す図である。図6に示すように、第1の面311の反射特性は、高透過率波長領域と高反射率波長領域とを含むことができる。更に、高透過率波長領域は、第1光透過セクションTGと、第2光透過セクションTRと、第3光透過セクションTBとを含む。第1光透過セクションTGと、第2光透過セクションTRと、第3光透過セクションTBとのそれぞれは、照明光Ls1(LG)と、Ls2(LR)と、Ls3(LB)とのそれぞれの波長帯域と少なくとも部分的に重なるように構成される。光透過セクションTG,TR,TBの幅は、これに限定されないが、好ましくは、照明光Ls1,Ls2,Ls3のそれぞれのスペクトルの半値幅以上である。これによって、撮像光分離プリズム310の第1の面311において、効果的に照明光Ls1,Ls2,Ls3を透過して下流側の色分離合成プリズム320に入射することができる。また、この場合、色分離合成プリズム320からの各色域の投射光Lp1,Lp2,Lp3は、照明光Ls1,Ls2,Ls3に対応する波長領域を有するため、第1の面311を透過して投写光学系へ出射することができる。一方、投写光学系からの-Z方向に第1の面311に入射する撮像光は、照明光Ls1,Ls2,Ls3に対応する波長領域を有する光成分Li1,Li2,Li3は、第1の面311を透過するため、撮像素子に導入されない。撮像は、第1の面311の反射特性における高反射率波長領域の光成分を利用して実行される。
【0057】
第1の面311の光学膜は、これに限定されないが、好ましくは、高透過率波長領域の透過率が96%以上であり、高反射率波長領域の反射率が96%以上である。これによって、入射してきた照明光を透過することによって照明光が撮像素子に入って迷光となることを回避するとともに、投影光を透過させ、且つ、撮像光の一部を撮像素子に導入することができる。
【0058】
より鮮明で明るい撮像を得るために、より多くの可視光域の光成分を撮像素子に導入して利用することが望ましい。したがって、照明光Ls1,Ls2,Ls3に対応する波長領域の光を回避するとともに、可視光域の多くの光成分を撮像に利用するように、狭帯域のLD又はLED光源を利用することが好ましい。
【0059】
また、上述したように、図6に示す第1の面311の光学膜の反射特性では、撮像光Liのうち、照明光の各色域に対応するLi1,Li2,Li3は撮像に利用されない。しかし、照明光の各色域に対応する光は、投影光がR/G/B各色域の光であって、スクリーン上の映像を構成する光成分である。3板式の投写型映像表示装置による鮮やかなカラー描写を撮像に反映させるため、照明光の各色域の光の一部、すなわち撮像光における対応する光成分Li1,Li2,Li3を撮像に利用するように検討し、更に以下の発明に至った。
【0060】
(光学膜の反射特性の入射角依存性)
図7を参照して光学膜の反射特性の入射角依存性について説明する。図7は、光学膜の反射特性の入射角依存性の一例を示す図であって、420-540nm付近に高反射率を有する青域の光用光学膜の反射特性を例示している。一般に、光学膜のカットオフ波長は、光学膜に入射する光の入射角に依存してシフトすることが知られている。例えば、図7の(a)に示す入射角θaが22度の場合、カットオフ波長λ1が約515nmであって、図7の(b)に示す入射角θaが12度の場合、カットオフ波長λ2が約535nmの長波長側にシフトしている。すなわち、当該光学膜は、入射角が10度減少するにつれ、カットオフ波長が長波長側へ約20nmのシフト量δλを有する。なお、図7には青域の光用光学膜の例を示しているが、このような反射特性の入射角依存性は、他の色域の光用光学膜にも存在し、入射角に対するシフト量は、波長領域によって異なる。
【0061】
このように、光学膜の反射特性のシフトを利用することによって、同一の光学膜において、一の入射角の光に対して反射するとともに、他の入射角の光を透過させることができる。この特性を撮像素子内蔵型投写型映像表示装置に利用するため、本実施の形態において、シフト反射波長領域を有する撮像光分離プリズムの第1の面311aを構成した。
【0062】
図8は、シフト反射波長領域を有する撮像光分離プリズムの第1の面311aの反射特性の例を示す図である。図8に示す第1の面311aの反射特性は、図6の(b)に示す第1の面311の反射特性に示す光透過セクションTG,TR,TBを有し、更に、光部分反射セクションTG1,TR1,TB1を含むシフト反射波長領域(図8の(b)に示す)、又は光部分反射セクションTG2,TR2,TB2を含むシフト反射波長領域(図8の(c)に示す)を有することができる。光部分反射セクションTG1,TR1,TB1のそれぞれは、光透過セクションTG,TR,TBのそれぞれに隣接する短波長側の対応する波長領域であって、光部分反射セクションTG2,TR2,TB2のそれぞれは、光透過セクションTG,TR,TBのそれぞれに隣接する長波長側の対応する波長領域である。以下、図8の(b)に示す光部分反射セクションTG1,TR1,TB1を有する第1の面311aを例として説明する。
【0063】
光学膜の反射特性のシフトを利用するために、撮像光分離プリズムは、照明光Lsと撮像光Liとが第1の面311aに対して異なる入射角で入射するように配置される。照明光Lsの入射角は、光変調素子DMDの仕様によって定められ、一定の範囲内で調整することができる。本実施の形態において、例えば、図8の(b)に示すシフト反射波長領域TG1,TR1,TB1を有する第1の面311aを利用する場合、第1の面311aに対して、撮像光Liの入射角α1(図5)が照明光Lsの入射角α0(図示せず)よりも小さくなるように撮像光分離プリズム310を配置することができる。ここで、前述したように、第1の面311aの第1傾斜角θ1が大きいほど、撮像光Liが第1の面311aに対する入射角α1が大きくなる。したがって、第1の面311aの第1傾斜角θ1が大き過ぎると、照明光Lsと撮像光Liとの第1の面311aに対する入射角の差が小さくなり、第1の面311aの光学膜の反射特性のシフトを利用できなくなる。
【0064】
本実施の形態において、撮像光分離プリズム310は、第1の面311aの第1傾斜角θ1が5度以上、15度以下であり、第1の面312の第2傾斜角θ2が25度以上、45度以下であるように構成されている。また、第1の面311aの光学膜の反射特性のシフトを利用するため、撮像光分離プリズム310は、照明光Lsと撮像光Liとの第1の面311aに対する入射角の差が5度から15度の範囲内にあるように配置することができる。
【0065】
図9は、図8の撮像光分離プリズムの第1の面311aの反射特性のシフトの一例を示す図であって、図8の(a)に示すシフト反射波長領域の光部分反射セクションTG1,TR1,TB1を有する第1の面311aの例を示している。図9の(a)は、照明光のLG,LR,LB光の波長領域を示し、図9の(b)は、図8の(a)に示す反射特性を有する第1の面311aが照明光Ls1,Ls2,Ls3に対する反射特性を示し、図9の(c)は、図8の(a)に示す反射特性を有する第1の面311aが撮像光Li1,Li2,Li3に対する反射特性である。
【0066】
図9の(b)に示すように、入射角α0で撮像光分離プリズムの第1の面311aに入射される照明光Lsに対し、第1の面311aの光学膜は、光透過セクションTG,TR,TBのそれぞれが、Ls1,Ls2,Ls3に対応する光LG,LR,LBの波長領域のそれぞれと少なくとも部分的に重なる。一方、図9の(c)に示すように、入射角α1で撮像光分離プリズムの第1の面311aに入射される撮像光Liに対して、撮像光Liの入射角α1が照明光Lsの入射角α0よりも小さいため、第1の面311aの反射特性が長波長側へシフトする。これによって、第1の面311aの光学膜は、光部分反射セクションTG1,TR1,TB1のそれぞれが、Li1,Li2,Li3に対応する光LG,LR,LBの波長領域のそれぞれと少なくとも部分的に重なる。このように、異なる入射角で入射される照明光Lsと撮像光Liとに対し、第1の面311aの光学膜は、反射特性のシフトにより、照明光Lsを透過させるとともに、撮像光Liのうち、対応する同一の波長領域を有する光成分の一部を反射して撮像素子に導入し、撮像に利用することができる。
【0067】
また、このとき、撮像光の対向方向に、撮像光Liと等しい入射角である入射角で第1の面311aに入射する投射光Lp1,Lp2,Lp3に対応する光LG,LR,LBの波長領域は、同様に第1の面311aの光学膜のシフト反射波長領域の光部分反射セクションTG1,TR1,TB1のそれぞれに少なくとも部分的に重なる。そのため、投射光Lp1,Lp2,Lp3の一部が第1の面311aで反射されて投影光Lpにロスが生じる。好ましくは、第1の面311aの光学膜は、シフト反射波長領域において、2%以上10%以下の反射率を有する。このようにして、投影光Lpに大きなロスが生じることなく、各色域に対応する投射光成分の一部を撮像素子に取り入れて、色彩効果の優れた撮像を実現することができる。
【0068】
(他の実施の形態)
図10乃至図17Bを参照して、実施の形態2-5について説明する。なお、実施の形態2‐5においては、実施の形態1と同一または同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、以下の説明において、実施の形態1と重複する記載を省略する。
【0069】
<実施の形態2>
図10は、実施の形態2に係る撮像素子内蔵型投写型映像表示装置600aの全体構成を示す概略図である。実施の形態2に係る撮像素子内蔵型投写型映像表示装置600aにおいて、投影撮像光学系500aが更に縮小光学系440を備える点で、前述した実施の形態1と異なる。
【0070】
前述したように、スクリーンに投写された画像の全体を含むスクリーン上の被写体を撮像するために、投影光Lpがスクリーンでの投写と撮像範囲とを一致させる必要がある。そのため、実施の形態1に係る撮像素子450は、光変調素子としてのDMD371,372,373と同じサイズを有する。
【0071】
図10に示す実施の形態2に係る撮像素子内蔵型投写型映像表示装置600aの投影撮像光学系500aにおいて、撮像光分離プリズム310と撮像素子450aとの間に、撮像光学系が配置されている。撮像光学系は、複数の光学部品によって構成することができ、本実施の形態の撮像光学系は、縮小光学系440であって、複数のレンズからなるアフォーカル光学系で構成することができる。投写光学系400から入射され、光軸Oに沿って-Z方向に伝搬される撮像光Liは、縮小光学系440により、撮像素子450aに縮小結像することができる。これによって、より小さいサイズの撮像素子450aを用いて、スクリーン上の投影範囲と同範囲で撮像することができ、撮像素子内蔵型投写型映像表示装置を安価化することができる。
【0072】
実施の形態2に係る撮像素子内蔵型投写型映像表示装置600aの他の構成要素は、実施の形態1と同様に構成することができる。ここで詳細な説明を省略する。
【0073】
<実施の形態3>
図11乃至図13Bを参照して本開示の実施の形態3について説明する。図11は、実施の形態3に係る撮像素子内蔵型投写型映像表示装置の投影撮像光学系500bの構成を示す概略図である。実施の形態3に係る投影撮像光学系500bにおいて、撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム300bにおけるプリズムの配置において、前述した実施の形態1-2と異なる。
【0074】
(撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム300bの構成)
図11に示すように、撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム300bは、撮像光分離プリズム310bと、色分離合成プリズム320bとが一体に形成されている。色分離合成プリズム320bは更に、光軸Oに沿って略三角柱状の第1のプリズム321bと、略三角柱状の第2のプリズム322bと、略四角柱状の第3のプリズム323bとによって構成されている。本実施の形態において、撮像光分離プリズム310bは、第2の面312bを介して色分離合成プリズム320bの第1のプリズム321bの第1のプリズム面321b1に接し、第1の面311bを介して色分離合成プリズム320bの第2のプリズム322bに接して配置されている。
【0075】
色分離合成プリズム320bは、第1のプリズム321bとTIRプリズム200との間にエアギャップを設けて第1のプリズム321b内において第1の光Ls1を全反射させて第1の光変調素子371に導く。第2のプリズム322bにおいて、第2のプリズム322bと撮像光分離プリズム310bの第1の面311bとの間にエアギャップを設けて、第2の光Ls2を第2のプリズム322b内で全反射させて第2の光変調素子372に導く。第3のプリズム323bにおいて、第3の光Ls3を第3のプリズム面323b3で透過して第3の光変調素子373に導く。
【0076】
図示のように、本実施の形態において、略三角柱状の撮像光分離プリズム310bは、光軸Oに沿って色分離合成プリズム320bの第1のプリズム321bと第2のプリズム322bとの間に位置する。つまり、光軸Oの前方側(投写光学系側)に第1のプリズム321bが配置され、光軸Oの後方側に第2のプリズム322bと第3のプリズム323bが配置されている。
【0077】
本実施の形態において、照明光学系からの各色域の照明光Ls1,Ls2,Ls3は、TIRプリズム200を透過して第1のプリズム321bの緑域反射ダイクロイックコート層である第1のプリズム面321b1に入射する。第1のプリズム面321b1を透過した照明光Ls2,Ls3は、撮像光分離プリズム310bの第1の面311bに到達し、更に下流側の第2のプリズム322bの赤域反射ダイクロイックコート層である第2のプリズム面322b2に入射する。第2のプリズム面322b2を透過した照明光Ls3は、第3のプリズム323bの第3のプリズム面323b3に到達し、第3の光変調素子373に導入される。色分離合成プリズム320bの第2、第3のプリズムからの投射光Lp2,Lp3は、光軸Oに沿って+Z方向に撮像光分離プリズム310bの第1の面311bを通して出射され、更に第1のプリズムからの投射光Lp1と光合成し、合成された投影光LpはTIRプリズム通して投写光学系400へ出力され、投写光学系400により拡大投写され、スクリーンに映像を表示する。また、投写光学系400から入射する撮像光Liは、光軸Oに沿って、TIRプリズムと第1のプリズム321bを透過して-Z方向に撮像光分離プリズム310bの第2の面312bに入射し、そして、第2の面312bを透過して第1の面311bに到達したのち、撮像素子450に導入される。
【0078】
図12は、図11の投影撮像光学系の第1のプリズム321bの第1のプリズム面321b1の反射特性の例を示す図である。図12の(a)は、照明光のLG,LR,LB光の波長領域を示し、図12の(b)は、従来の緑域反射ダイクロイックコート層である第1のプリズム面321b1の反射特性を示している。第1のプリズム面321b1は、緑域の光反射セクションSGを有することで照明光Ls1に対応する緑域の光LGを反射する。この場合は、撮像光Liのうち、照明光Ls1に対応する緑域の光成分Li1は、当該第1のプリズム面321b1で反射され、撮像光分離プリズム310bの第1の面311bに到達できず、撮像に利用されない。
【0079】
そこで、撮像光Liのうち、緑域の光成分Li1の一部を撮像素子450に導き、撮像に利用するため、シフト透過波長領域を第1のプリズム面321b1に設けて、異なる入射角による光学膜の反射特性のシフトを利用することができる。図12の(c)は、光反射セクションSGとシフト透過波長領域SG1とをともに有する第1のプリズム面321b1の反射特性の例を示し、図12の(d)は、光反射セクションSGとシフト透過波長領域SG2とをともに有する第1のプリズム面321b1の反射特性の例を示している。シフト透過波長領域SG1は、光反射セクションSGに隣接する短波長側の波長領域であって、シフト透過波長領域SG2は、光反射セクションSGに隣接する長波長側の波長領域である。シフト透過波長領域SG1とシフト透過波長領域SG2とは、光反射セクションSGよりも反射率が低く、緑域の光を部分的に透過させることができる。
【0080】
図13Aは、光反射セクションSGとシフト透過波長領域SG1とをともに有する第1のプリズム面321b1と、光透過セクションTR,TBとシフト反射波長領域の光部分反射セクションTR1,TB1とをともに有する撮像光分離プリズムの第1の面311bとが照明光に対する反射特性の一例を示す図である。図13Bは、光反射セクションSGとシフト透過波長領域SG1とをともに有する第1のプリズム面321b1と、光透過セクションTR,TBとシフト反射波長領域の光部分反射セクションTR1,TB1とをともに有する撮像光分離プリズムの第1の面311bとが撮像光に対する反射特性の一例を示す図である。
【0081】
このとき、例えば、照明光Ls1は、第1のプリズム面321b1に対して、入射角β1bで入射し、撮像光Li1は、第1のプリズム面321b1に対して、入射角β2bで入射する。照明光Ls2,Ls3は、撮像光分離プリズムの第1の面311bに対して、入射角α1bで入射し、撮像光Li2,Li3は、第1の面311bに対して、入射角α2bで入射する。なお、第1のプリズム321bは、入射角β2bが入射角β1bよりも小さくなるように配置され、撮像光分離プリズム310bは、入射角α2bが入射角α1bよりも小さくなるように配置することができる(それぞれの入射角は図示せず)。
【0082】
図13Aの(b)に示すように、入射角β1bで第1のプリズム面321b1に入射される照明光Ls1に対し、第1のプリズム面321b1は、光反射セクションSGがLs1対応する光LGの波長領域と少なくとも部分的に重なる。図13Aの(c)に示すように、入射角α1bで撮像光分離プリズムの第1の面311bに入射される照明光Ls2,Ls3に対し、撮像光分離プリズムの第1の面311bは、光透過セクションTR,TBのそれぞれが、Ls2,Ls3に対応する光LR,LBの波長領域のそれぞれと少なくとも部分的に重なる。
【0083】
一方、図13Bの(b)に示すように、入射角β2bで第1のプリズム面321b1に入射される撮像光Li1に対して、撮像光Li1の入射角β2bが照明光Ls1の入射角β1bよりも小さいため、第1のプリズム面321b1の反射特性が長波長側へシフトする。これによって、第1のプリズム面321b1は、シフト透過波長領域SG1がLs1対応する光LGの波長領域と少なくとも部分的に重なる。図13Bの(c)に示すように、入射角α1bよりも小さい入射角α2bで撮像光分離プリズムの第1の面311bに入射される撮像光Li2,Li3に対し、撮像光分離プリズムの第1の面311bの反射特性が長波長側へシフトする。これによって、撮像光分離プリズムの第1の面311bは、シフト反射波長領域の光部分反射セクションTR1,TB1のそれぞれが、Li2,Li3に対応する光LR,LBの波長領域のそれぞれと少なくとも部分的に重なる。
【0084】
このように、異なる入射角で入射される照明光Lsと撮像光Liとに対し、反射特性のシフトにより、第1のプリズム面321b1において照明光Ls1を反射するとともに、撮像光Liのうち、対応する同一の波長領域を有する光成分Li1が部分的に透過して撮像光分離プリズムの第1の面311bに到達することができる。本実施の形態において、好ましくは、撮像光分離プリズムの第1の面311bは、撮像光Li1に対応する波長領域(LG)において高反射率を有し、第1のプリズム面321b1を部分的に通過して到達した撮像光Li1を撮像素子に導く。
【0085】
なお、本実施の形態において、第1のプリズム面321b1のシフト透過波長領域SG1における反射率、及び撮像光分離プリズムの第1の面311bのシフト反射波長領域TR1,TB1における反射率を調整することで、投影光Lpに大きなロスが生じることなく、各色域に対応する投射光成分の一部を撮像素子に取り入れて、色彩効果の優れた撮像を実現することができる。
【0086】
<実施の形態4>
図14乃至図15Bを参照して本開示の実施の形態4について説明する。図14は、実施の形態4に係る撮像素子内蔵型投写型映像表示装置の投影撮像光学系500cの構成を示す概略図である。実施の形態4に係る投影撮像光学系500cにおいて、撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム300cにおけるプリズムの配置において、前述した実施の形態1-3と異なる。
【0087】
(撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム300cの構成)
図14に示すように、撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム300cは、撮像光分離プリズム310cと、色分離合成プリズム320cとが一体に形成されている。色分離合成プリズム320cは、更に略三角柱状の第1のプリズム321cと、略三角柱状の第2のプリズム322cと、略四角柱状の第3のプリズム323cとによって構成されている。本実施の形態において、撮像光分離プリズム310cは、第2の面312cを介して色分離合成プリズム320cの第2のプリズム322cの第2のプリズム面322c2に接し、第1の面311cを介して色分離合成プリズム320cの第3のプリズム323cに接して配置されている。
【0088】
色分離合成プリズム320cは、第1のプリズム321cとTIRプリズムとの間にエアギャップを設けて第1のプリズム321c内において第1の光Ls1を全反射させて第1の光変調素子371に導く。第2のプリズム322cにおいて、第2のプリズム322cと第1のプリズムの第1のプリズム面321c1との間にエアギャップを設けて、第2の光Ls2を第2のプリズム322c内で全反射させて第2の光変調素子372に導く。第3のプリズム323bにおいて、第3の光Ls3を第3のプリズム面323c3で透過して第3の光変調素子373に導く。
【0089】
図示のように、本実施の形態において、略三角柱状の撮像光分離プリズム310cは、色分離合成プリズム320cの第2のプリズム322cと第3のプリズム323cとの間に位置する。つまり、光軸Oの前方側(投写光学系側)に第1のプリズム321cと第2のプリズム322cとが配置され、光軸Oの後方側に第3のプリズム323cが配置されている。
【0090】
本実施の形態において、照明光学系からの各色域の照明光Ls1,Ls2,Ls3は、TIRプリズム200を透過して第1のプリズム321cの緑域反射ダイクロイックコート層である第1のプリズム面321c1に入射する。第1のプリズム面321c1を透過した照明光Ls2,Ls3は、光軸Oの後方側の第2のプリズム322cの赤域反射ダイクロイックコート層である第2のプリズム面322c2に入射する。そして、第2のプリズム面322c2を透過した照明光Ls3は、撮像光分離プリズム310cの第1の面311cに到達し、更に光軸Oの後方側の第3のプリズム323cに入射し、第3のプリズム面323b3に到達したのち、第3の光変調素子373に導入される。色分離合成プリズム320cの第3のプリズムからの投射光Lp3は、光軸Oに沿って+Z方向に撮像光分離プリズム310cの第1の面311cを通して出射され、更に第1のプリズムからの投射光Lp1及び第2のプリズムからの投射光Lp2と光合成し、合成された投影光LpはTIRプリズム通して投写光学系400へ出力され、投写光学系400により拡大投写され、スクリーンに映像を表示する。また、投写光学系400から入射した撮像光Liは、光軸Oに沿って、TIRプリズムと第1のプリズム321cと第2のプリズム322cとを順に透過して-Z方向に撮像光分離プリズム310cの第2の面312cに入射し、第1の面311cで反射され、撮像素子450に導入される。
【0091】
実施の形態3において説明したと同様に、撮像光Liのうち、撮像光分離プリズム310cの光軸Oの前方側に位置する第1のプリズム321cの第1のプリズム面321cと第2のプリズム322cの第2のプリズム面322c2とで反射される撮像光の光成分Li1とLi2との一部を撮像素子450に導き、撮像に利用するため、第1のプリズム面321cと第2のプリズム面322c2とのそれぞれに対応するシフト透過波長領域を設けて、異なる入射角による光学膜の反射特性のシフトを利用することができる。
【0092】
図15Aは、光反射セクションSGとシフト透過波長領域SG1とをともに有する第1のプリズム面321c1と、光反射セクションSRとシフト透過波長領域SR1とをともに有する第2のプリズム面322c2と、光透過セクションTBとシフト反射波長領域の光部分反射セクションTB1とをともに有する撮像光分離プリズムの第1の面311cとが照明光に対する反射特性の一例を示す図である。図15Bは、光反射セクションSGとシフト透過波長領域SG1とをともに有する第1のプリズム面321c1と、光反射セクションSRとシフト透過波長領域SR1とをともに有する第2のプリズム面322c2と、光透過セクションTBとシフト反射波長領域の光部分反射セクションTB1とをともに有する撮像光分離プリズムの第1の面311cとが撮像光に対する反射特性の一例を示す図である。
【0093】
このとき、例えば、照明光Ls1は、第1のプリズム面321c1に対して、入射角β1cで入射し、撮像光Li1は、第1のプリズム面321c1に対して、入射角β2cで入射する。照明光Ls2は、第2のプリズム面322c2に対して、入射角β3cで入射し、撮像光Li2は、第2のプリズム面322c2に対して、入射角β4cで入射する。照明光Ls3は、撮像光分離プリズムの第1の面311cに対して、入射角α1cで入射し、撮像光Li3は、第1の面311cに対して、入射角α2cで入射する。なお、第1のプリズム321cは、入射角β2cが入射角β1cよりも小さくなるように配置され、第2のプリズム322cは、入射角β4cが入射角β3cよりも小さくなるように配置され、撮像光分離プリズム310cは、入射角α2cが入射角α1cよりも小さくなるように配置することができる(それぞれの入射角は図示せず)。
【0094】
図15Aの(b)に示すように、入射角β1cで第1のプリズム面321c1に入射される照明光Ls1に対し、第1のプリズム面321c1は、光反射セクションSGがLs1対応する光LGの波長領域と少なくとも部分的に重なる。図15Aの(c)に示すように、入射角β3cで第2のプリズム面322c2に入射される照明光Ls2に対し、第2のプリズム面322c2は、光反射セクションSRがLs2対応する光LRの波長領域と少なくとも部分的に重なる。図15Aの(d)に示すように、入射角α1cで撮像光分離プリズムの第1の面311cに入射される照明光Ls3に対し、撮像光分離プリズムの第1の面311cは、光透過セクションTBが、Ls3に対応する光LBの波長領域と少なくとも部分的に重なる。
【0095】
一方、図15Bの(b)に示すように、入射角β2cで第1のプリズム面321c1に入射される撮像光Li1に対し、撮像光Li1の入射角β2cが照明光Ls1の入射角β1cよりも小さいため、第1のプリズム面321c1の反射特性が長波長側へシフトする。これによって、第1のプリズム面321c1は、シフト透過波長領域SG1がLs1対応する光LGの波長領域と少なくとも部分的に重なる。同様に、図15Bの(c)に示すように、入射角β3cよりも小さい入射角β4cで第2のプリズム面322c2に入射される撮像光Li2に対し、第2のプリズム面322c2の反射特性が長波長側へシフトすることによって、第2のプリズム面322c2は、シフト透過波長領域SR1がLs2対応する光LRの波長領域と少なくとも部分的に重なる。更に、図15Bの(d)に示すように、入射角α1cよりも小さい入射角α2cで撮像光分離プリズムの第1の面311cに入射される撮像光Li3に対し、撮像光分離プリズムの第1の面311cの反射特性が長波長側へシフトすることによって、撮像光分離プリズムの第1の面311cは、シフト反射波長領域の光部分反射セクションTB1が、Li3に対応する光LBの波長領域のそれぞれと少なくとも部分的に重なる。
【0096】
このように、異なる入射角で入射される照明光Lsと撮像光Liとに対し、反射特性のシフトにより、第1のプリズム面321c1と第2のプリズム面322c2とにおいて、照明光Ls1,Ls2が反射されるとともに、撮像光Liのうち、対応する同一の波長領域を有する光成分Li1,Li2が部分的に透過して撮像光分離プリズムの第1の面311cに到達することができる。本実施の形態において、好ましくは、撮像光分離プリズムの第1の面311cは、撮像光Li1,Li2に対応する波長領域(LG,LR)において高反射率を有し、第1のプリズム面321c1と第2のプリズム面322c2とを部分的に通過して到達した撮像光Li1,Li2を撮像素子に導く。
【0097】
なお、本実施の形態において、第1のプリズム面321c1のシフト透過波長領域SG1と第2のプリズム面322c2のシフト透過波長領域SR1とのそれぞれにおける反射率、及び撮像光分離プリズムの第1の面311cのシフト反射波長領域TB1における反射率を調整することで、投影光Lpに大きなロスが生じることなく、各色域に対応する投射光成分の一部を撮像素子に取り入れて、色彩効果の優れた撮像を実現することができる。
【0098】
<実施の形態5>
図16乃至図17Bを参照して本開示の実施の形態5について説明する。図16は、実施の形態5に係る撮像素子内蔵型投写型映像表示装置の投影撮像光学系500dの構成を示す概略図である。実施の形態5に係る投影撮像光学系500dにおいて、撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム300dにおけるプリズムの配置において、前述した実施の形態1-4と異なる。
【0099】
(撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム300dの構成)
図16に示すように、撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム300dは、撮像光分離プリズム310dと、色分離合成プリズム320dとが一体に形成されている。色分離合成プリズム320dは、更に光軸Oに沿って略三角柱状の第1のプリズム321dと、略三角柱状の第2のプリズム322dと、略三角柱状の第3のプリズム323dとによって構成されている。本実施の形態において、撮像光分離プリズム310dは、第1の面311cを介して色分離合成プリズム320dの第3のプリズム323dの第3のプリズム面323d3に接して、第3のプリズム323dの光軸Oの後方側に配置されている。
【0100】
色分離合成プリズム320dは、第1のプリズム321dとTIRプリズム200との間にエアギャップを設けて第1のプリズム321d内において第1の光Ls1を全反射させて第1の光変調素子371に導く。第2のプリズム322dにおいて、第2のプリズム322dと第1のプリズムの第1のプリズム面321d1との間にエアギャップを設けて、第2の光Ls2を第2のプリズム322d内で全反射させて第2の光変調素子372に導く。第3のプリズム323bにおいて、第3のプリズム323dと第2のプリズムの第2のプリズム面322d2との間にエアギャップを設けて、第3の光Ls3を第3のプリズム323d内で全反射させて第3の光変調素子373に導く。本実施の形態において、撮像光分離プリズム310dは、色分離合成プリズム320dの下流側に配置され、略四角柱状に形成されてもよい。
【0101】
本実施の形態において、照明光学系からの各色域の照明光Ls1,Ls2,Ls3は、TIRプリズム200を透過して第1のプリズム321dの緑域反射ダイクロイックコート層である第1のプリズム面321d1に入射する。第1のプリズム面321d1を透過した照明光Ls2,Ls3は、光軸Oの後方側の第2のプリズム322dの赤域反射ダイクロイックコート層である第2のプリズム面322d2に入射する。そして、第2のプリズム面322d2を透過した照明光Ls3は、光軸Oの後方側の第3のプリズム323dの青域反射ダイクロイックコート層である第3のプリズム面323d3に入射する。この場合、照明光学系からの各色域の照明光Ls1,Ls2,Ls3は、撮像光分離プリズム310dには到達することなく、光軸Oの前方側の色分離合成プリズム320dの各プリズムにより別々に光変調素子371,372,373に導かれる。
【0102】
また、色分離合成プリズム320dの各プリズムからの各色域の投射光Lp1,Lp2,Lp3が光合成され、合成された投影光LpはTIRプリズム通して投写光学系400へ出力され、投写光学系400により拡大投写され、スクリーンに映像を表示する。投写光学系400からの撮像光Liは、光軸Oに沿って、TIRプリズムと第1のプリズム321dと第2のプリズム322dと第3のプリズム323dとを順に透過して-Z方向に撮像光分離プリズム310dの第1の面311dに入射し、撮像素子450に導入される。
【0103】
実施の形態3及び4において説明したと同様に、撮像光Liのうち、撮像光分離プリズム310dよりも光軸Oの前方側に位置する第1のプリズム321dの第1のプリズム面321d1と、第2のプリズム322dの第2のプリズム面322d2と、第3のプリズム323dの第3のプリズム面323d3とで反射される撮像光の光成分Li1,Li2,Li3の一部を撮像素子450に導き、撮像に利用するため、第1のプリズム面321dと第2のプリズム面322d2と第3のプリズム面323d3とのそれぞれに対応するシフト透過波長領域を設けて、異なる入射角による光学膜の反射特性のシフトを利用することができる。
【0104】
図17Aは、光反射セクションSGとシフト透過波長領域SG1とをともに有する第1のプリズム面321d1と、光反射セクションSRとシフト透過波長領域SR1とをともに有する第2のプリズム面322d2と、光反射セクションSBとシフト透過波長領域SB1とをともに有する第3のプリズム面323d3とが照明光に対する反射特性の一例を示す図である。図17Bは、光反射セクションSGとシフト透過波長領域SG1とをともに有する第1のプリズム面321d1と、光反射セクションSRとシフト透過波長領域SR1とをともに有する第2のプリズム面322d2と、光反射セクションSBとシフト透過波長領域SB1とをともに有する第3のプリズム面323d3とが撮像光に対する反射特性の一例を示す図である。
【0105】
このとき、例えば、照明光Ls1は、第1のプリズム面321d1に対して、入射角β1dで入射し、撮像光Li1は、第1のプリズム面321d1に対して、入射角β2dで入射する。照明光Ls2は、第2のプリズム面322d2に対して、入射角β3dで入射し、撮像光Li2は、第2のプリズム面322d2に対して、入射角β4dで入射する。照明光Ls3は、第3のプリズム面323d3に対して、入射角β5dで入射し、撮像光Li3は、第3のプリズム面323d3に対して、入射角β6dで入射する。なお、第1のプリズム321dは、入射角β2dが入射角β1dよりも小さくなるように配置され、第2のプリズム322dは、入射角β4dが入射角β3dよりも小さくなるように配置され、第3のプリズム323dは、入射角β6dが入射角β5dよりも小さくなるように配置することができる(それぞれの入射角は図示せず)。
【0106】
図17Aの(b)-(d)に示すように、それぞれのプリズム面321d1,322d2,323d3に入射される照明光Ls1,Ls2,Ls3に対し、それぞれのプリズム面の光反射セクションSG,SR,SBが対応する光LG,LR,LBのそれぞれの波長領域と少なくとも部分的に重なる。一方、図17Bの(b)-(d)に示すように、照明光Ls1,Ls2,Ls3のそれぞれの入射角よりも小さい入射角でプリズム面321d1,322d2,323d3に入射される撮像光Li1,Li2,Li3のそれぞれに対し、対応するそれぞれのプリズム面の反射特性が長波長側へシフトすることによって、それぞれのプリズム面のシフト透過波長領域SG1,SR1,SB1が対応する光LG,LR,LBのそれぞれの波長領域と少なくとも部分的に重なる。これによって、撮像光Li1,Li2,Li3の一部が撮像光分離プリズムの第1の面311dに到達し、撮像素子450に導入され、撮像に利用することができる。なお、本実施の形態において、撮像光分離プリズムの第1の面311dは、撮像光Li1,Li2,Li3に対して透過することができる。
【0107】
なお、本実施の形態において、それぞれのプリズム面321d1,322d2,323d3のシフト透過波長領域SG1,SR1,SB1における反射率を調整することで、各色域に対応する投射光成分の一部を撮像素子に取り入れて、色彩効果の優れた撮像を実現することができる。
【0108】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、上記実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記各々の実施の形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0109】
上記実施の形態において、3原色R、G、Bの照明光を説明したが、本開示は3原色の照明光に限定しない。本開示に係る照明光源は、可視光域の照明光を供給する光源であればよい。
【0110】
また、色分離合成プリズムの第1、第2、第3のプリズムはそれぞれ緑域、赤域、青域の光に対応するように説明したが、本開示は各色域の光の順番を限定しない。第1、第2、第3のプリズムと、異なる色域の光との対応において、他の構成を有してもよい。
【0111】
また、色分離合成プリズムの第1、第2、第3のプリズムと撮像光分離プリズムとの形状について、略三角柱状又は略四角柱状であるように説明したが、本開示は各々のプリズムの形状を限定しない。色分離合成プリズムの第1、第2、第3のプリズムと撮像光分離プリズムとは、他の形状を有してもよい。
【0112】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面及び詳細な説明を提供した。したがって、添付図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。したがって、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0113】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。そのような変更、及び異なる実施の形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本開示は、投写型映像表示装置の色分離合成プリズムに適用可能であり、撮像素子内蔵型投写型映像表示装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0115】
100 照明光学系
105 照明光源
111,112 ダイクロイックミラー
121,122 レンズ
125 ロッドインテグレータ
126,127,128 リレー光学系を構成するレンズ
113 ミラー
200 TIRプリズム
300 撮像光分離プリズム一体型色分離合成プリズム
201,202 プリズム
211 プリズム面
310,310b,310c,310d 撮像光分離プリズム
320,320b,320c,320d 色分離合成プリズム
321,321b,321c,321d 第1のプリズム
322,322b,322c,322d 第2のプリズム
323,323b,323c,323d 第3のプリズム
311,311a,311b,311c,311d 第1の面
312,312b,312c,312d 第2の面
321a1,321b1,321c1,321d1 第1のプリズム面
322a2,322b2,322c2,322d2 第2のプリズム面
323a3,323b3,323c3,323d3 第3のプリズム面
371,372,373 光変調素子(DMD)
400 投写光学系
440 縮小光学系
450,450a 撮像素子
500,500a,500b,500c,500d 投影撮像光学系
600,600a 撮像素子内蔵型投写型映像表示装置
Ls,Ls1,Ls2,Ls3 照明光
Lp 投影光
Lp1,Lp2,Lp3 投射光
Li,Li1,Li2,Li3 撮像光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15A
図15B
図16
図17A
図17B
図18