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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083114
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】面ファスナー部材
(51)【国際特許分類】
   A44B 18/00 20060101AFI20230608BHJP
【FI】
A44B18/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197284
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松本 浩昭
(72)【発明者】
【氏名】菅野 孝太
(72)【発明者】
【氏名】久保田 就子
(72)【発明者】
【氏名】重松 彩
【テーマコード(参考)】
3B100
【Fターム(参考)】
3B100DA06
3B100DB01
3B100DB05
(57)【要約】
【課題】円柱状突起の配列により得られる意匠性に対して大きく影響することなく係合及び係合解除に必要な力を所望の範囲内に簡便に調整することが望まれる。
【解決手段】複数の円柱状突起7は、第1円柱状突起76の第1サブセットと、第2円柱状突起77の第2サブセットを含む。W1が第1円柱状突起76の一定又は最大の第1直径を示し、W2が第2円柱状突起77の一定又は最大の第2直径を示す時、(W1×0.9)<W2<(W1×0.98)を満足する。第2サブセットは、格子100において隣接した又は直線状に配列された又はジグザグ状に配列された格子点に設けられた第2円柱状突起77を含む。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
係合及び係合解除可能なペアとして使用可能な軟質の面ファスナー部材(2a,2b)であって、
基層(6)と、
前記基層(6)の主面から凸状に形成された複数の円柱状突起(7)と、
前記複数の円柱状突起(7)に応じて前記基層(6)の主面上に画定された複数の受容部(8)を備え、
前記基層(6)の主面上の所定平面において列仮想線(C1~C6)と行仮想線(R1~R6)の格子(100)が設定される時、前記格子(100)における複数の列仮想線(C1~C6)それぞれの線上に定ピッチで設けられた複数の格子点において前記円柱状突起(7)と前記受容部(8)が交互に配置され、かつ前記格子(100)における複数の行仮想線(R1~R6)それぞれの線上に定ピッチで設定された複数の格子点において前記円柱状突起(7)と前記受容部(8)が交互に配置され、
前記複数の円柱状突起(7)は、第1円柱状突起(76)の第1サブセットと、第2円柱状突起(77)の第2サブセットを含み、W1が前記第1円柱状突起(76)の一定又は最大の第1直径を示し、W2が前記第2円柱状突起(77)の一定又は最大の第2直径を示す時、(W1×0.9)<W2<(W1×0.98)を満足し、
前記第2サブセットは、前記格子(100)において隣接した又は直線状に配列された又はジグザグ状に配列された格子点に設けられた第2円柱状突起(77)を含む、面ファスナー部材。
【請求項2】
前記第2サブセットに含まれる前記第2円柱状突起(77)の個数は、前記第1サブセットに含まれる前記第1円柱状突起(76)の個数よりも少ないことを特徴とする請求項1に記載の面ファスナー部材。
【請求項3】
前記基層(6)の主面上において前記第1サブセットの前記第1円柱状突起(76)が外周線(SL)内に配置され、前記外周線(SL)が前記第1サブセットの前記第1円柱状突起(76)の外周面に関して引かれた接線の連結により構成され、前記第2円柱状突起(77)のいずれも前記外周線(SL)に接しないように配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の面ファスナー部材。
【請求項4】
前記円柱状突起(7)は、前記基層(6)から離れるに応じて直径が漸増する拡径部(71)と、前記拡径部(71)から前記円柱状突起(7)の上面に向けて直径又は幅が漸減する上端部(72)を有し、前記第1及び第2直径が、前記拡径部(71)と前記上端部(72)の間の縁における直径であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の面ファスナー部材。
【請求項5】
前記基層(6)を貫通し、かつ前記円柱状突起(7)を中空にするべく延びる複数の孔(12)を更に有し、前記孔(12)の底面は、前記拡径部(71)と前記上端部(72)の間の縁又はこの近傍の高さに設定されることを特徴とする請求項4に記載の面ファスナー部材。
【請求項6】
前記円柱状突起(7)を中空にするべく延びる複数の孔(12)を更に有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の面ファスナー部材。
【請求項7】
前記列仮想線(C1~C6)又は前記行仮想線(R1~R6)における当該面ファスナー部材(2a,2b)の断面では、材料層が、前記基層(6)を形成するように延びることと、前記円柱状突起(7)を形成するように延びることを交互に繰り返すように形成されることを特徴とする請求項6に記載の面ファスナー部材。
【請求項8】
前記第1直径は、前記列仮想線(C1~C6)のピッチの半分の値及び前記行仮想線(R1~R6)のピッチの半分の値のいずれよりも大きく、前記第2直径は、前記列仮想線(C1~C6)のピッチの半分の値以下、及び/又は、前記行仮想線(R1~R6)のピッチの半分の値以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の面ファスナー部材。
【請求項9】
前記行仮想線(R1~R6)のピッチは前記列仮想線(C1~C6)のピッチよりも大きいことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の面ファスナー部材。
【請求項10】
前記複数の円柱状突起(7)は、はみ出し部分が生じないように前記面ファスナー部材(2a,2b)同士が係合することを許容するように配置されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の面ファスナー部材。
【請求項11】
各島部が、少なくとも前記基層(6)、前記複数の円柱状突起(7)、及び前記複数の受容部(8)を含む複数の島部(4a,4b,4c)と、
隣接する前記島部(4a,4b,4c)の前記基層(6)同士を連結する少なくとも一つの連結部(5a,5b)を備えることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の面ファスナー部材。
【請求項12】
前記行仮想線(R1~R6)が前記島部(4a,4b,4c)の連結方向に平行であり、
前記第2サブセットは、前記行仮想線(R1~R6)に沿う方向で隣接した又は直線状に配列された又はジグザグ状に配列された格子点に設けられた前記第2円柱状突起(77)を含むことを特徴とする請求項11に記載の面ファスナー部材。
【請求項13】
前記面ファスナー部材(2a,2b)同士の係合のために必要な力が30N以下であり、その係合解除のために必要な力が2~5Nの範囲内であることを特徴とする請求項11又は12に記載の面ファスナー部材。
【請求項14】
係合及び係合解除可能なペアとして使用可能な軟質の面ファスナー部材(2a,2b)であって、
複数の島部(4a,4b,4c)にして、各島部(4a,4b,4c)が、基層(6)と、前記基層(6)の主面から凸状に形成された複数の円柱状突起(7)と、前記複数の円柱状突起(7)に応じて前記基層(6)の主面上に画定された複数の受容部(8)を備える複数の島部(4a,4b,4c)と、
隣接する前記島部(4a,4b,4c)の前記基層(6)同士を連結する少なくとも一つの連結部(5a,5b)を備え、
前記基層(6)の主面上の所定平面において列仮想線(C1~C6)と行仮想線(R1~R6)の格子(100)が設定される時、前記格子(100)における複数の列仮想線(C1~C6)それぞれの線上に定ピッチで設けられた複数の格子点において前記円柱状突起(7)と前記受容部(8)が交互に配置され、かつ前記格子(100)における複数の行仮想線(R1~R6)それぞれの線上に定ピッチで設定された複数の格子点において前記円柱状突起(7)と前記受容部(8)が交互に配置され、
前記複数の円柱状突起(7)は、第1円柱状突起(76)の第1サブセットと、第2円柱状突起(77)の第2サブセットを含み、W1が前記第1円柱状突起(76)の一定又は最大の第1直径を示し、W2が前記第2円柱状突起(77)の一定又は最大の第2直径を示す時、(W1×0.9)<W2<(W1×0.98)を満足し、
前記第2サブセットは、前記格子(100)において隣接した又は直線状に配列された又はジグザグ状に配列された格子点に設けられた第2円柱状突起(77)を含む、面ファスナー部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、面ファスナー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、硬質樹脂から成る第1係合体と軟質樹脂から成る第2係合体から成る面ファスナーが開示されている。各係合体には円柱状の突起が設けられている(同文献の図1乃至4参照)。特許文献2には、面ファスナーの耳部に等間隔で孔を設け、手縫いで容易に布地に取り付け可能とすることが開示されている(同文献の図7,8参照)。特許文献3には、セグメント同士が軟質の連結部により連結されることが開示されており(同文献の図1参照)、同じ構造の面ファスナー部材がペアとして用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-4207号公報
【特許文献2】特開2017-148261号公報
【特許文献3】国際公開第2020/136779号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軟質の面ファスナー部材をペアとして用いる場合、両者の面ファスナー部材が変形しやすく、円柱状突起の数、密度、及び直径を単調に調整するだけでは係合に必要な力と係合解除に必要な力の両方を所望の範囲内にすることが容易ではない場合がある。なお、円柱状突起を選択的に取り除くと、面ファスナー部材の意匠性が低下してしまう。
【0005】
上述の非限定の例示説明から分かるように、円柱状突起の配列により得られる意匠性に対して大きく影響することなく係合及び係合解除に必要な力を所望の範囲内に簡便に調整することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る面ファスナー部材は、係合及び係合解除可能なペアとして使用可能な軟質の面ファスナー部材であって、基層と、基層の主面から凸状に形成された複数の円柱状突起と、複数の円柱状突起に応じて基層の主面上に画定された複数の受容部を含み、基層の主面上の所定平面において列仮想線と行仮想線の格子が設定される時、格子における複数の列仮想線それぞれの線上に定ピッチで設けられた複数の格子点において円柱状突起と受容部が交互に配置され、かつ格子における複数の行仮想線それぞれの線上に定ピッチで設定された複数の格子点において円柱状突起と受容部が交互に配置され、複数の円柱状突起は、第1円柱状突起の第1サブセットと、第2円柱状突起の第2サブセットを含み、W1が第1円柱状突起の一定又は最大の第1直径を示し、W2が第2円柱状突起の一定又は最大の第2直径を示す時、(W1×0.9)<W2<(W1×0.98)を満足し、第2サブセットは、格子において隣接した又は直線状に配列された又はジグザグ状に配列された格子点に設けられた第2円柱状突起を含む。
【0007】
本開示の別態様に係る面ファスナー部材は、係合及び係合解除可能なペアとして使用可能な軟質の面ファスナー部材であって、複数の島部にして、各島部が、基層と、基層の主面から凸状に形成された複数の円柱状突起と、複数の円柱状突起に応じて基層の主面上に画定された複数の受容部を備える複数の島部と、隣接する島部の基層同士を連結する少なくとも一つの連結部を含み、基層の主面上の所定平面において列仮想線と行仮想線の格子が設定される時、格子における複数の列仮想線それぞれの線上に定ピッチで設けられた複数の格子点において円柱状突起と受容部が交互に配置され、かつ格子における複数の行仮想線それぞれの線上に定ピッチで設定された複数の格子点において円柱状突起と受容部が交互に配置され、複数の円柱状突起は、第1円柱状突起の第1サブセットと、第2円柱状突起の第2サブセットを含み、W1が第1円柱状突起の一定又は最大の第1直径を示し、W2が第2円柱状突起の一定又は最大の第2直径を示す時、(W1×0.9)<W2<(W1×0.98)を満足し、第2サブセットは、格子において隣接した又は直線状に配列された又はジグザグ状に配列された格子点に設けられた第2円柱状突起を含む。
【0008】
幾つかの実施形態では、行仮想線と島部の連結方向がお互いに平行であり、第2円柱状突起が行方向で隣接した又は直線状に配列された又はジグザグ状に配列された格子点に設けられる。面ファスナー部材同士を係合解除する時、一方の面ファスナー部材のある島部は、他方の面ファスナー部材の島部から離れる方向及び行方向に引かれる。係合解除の過程で島部の円柱状突起が斜めに配向されるため、第2円柱状突起の配置に関わらず円柱状突起同士の接触面積は維持される。従って、そのような第2円柱状突起の配置によって、面ファスナー部材同士の係合に必要な力(以下、係合必要力と呼ぶ)が低減されるとしても、それらの係合解除に必要な力(以下、係合解除必要力と呼ぶ)の変動量を相対的に小さくすることができる。実際に行った測定において、係合必要力を所望の範囲内(例えば、30N以下)とし、同時に、係合解除必要力を所望の範囲(2~5Nの範囲)内とすることが確認できている。
【0009】
幾つかの実施形態では、島部の主面上において第1サブセットの第1円柱状突起が外周線内に配置され、外周線が第1サブセットの第1円柱状突起の外周面に関して引かれた接線の連結により構成され、第2円柱状突起のいずれも外周線に接しないように配置される。
【0010】
幾つかの実施形態においては、円柱状突起は、基層から離れるに応じて直径が漸増する拡径部と、拡径部から円柱状突起の上面に向けて直径又は幅が漸減する上端部を有する。第1及び第2直径は、拡径部と上端部の間の縁における直径である。
【0011】
幾つかの実施形態においては、第1直径は、列仮想線のピッチの半分の値及び行仮想線のピッチの半分の値のいずれよりも大きく、第2直径は、列仮想線のピッチの半分の値以下、及び/又は、行仮想線のピッチの半分の値以下である。
【0012】
他の特徴は、以下の明細書及び/又は請求項に記載の通りである。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一態様によれば、円柱状突起の配列により得られる意匠性に対して大きく影響することなく係合及び係合解除に必要な力を所望の範囲内に簡便に調整することが促進される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の一態様に係る面ファスナーの概略的な側面図であり、面ファスナー部材が上下に離間して図示される。
図2】本開示の一態様に係る面ファスナー部材の正面図である。
図3】面ファスナー部材の係合解除状態を示す概略的な端面図であり、図2の一点鎖線X3-X3における端面を示す。
図4】面ファスナー部材の係合状態を示す概略的な端面図であり、図2の一点鎖線X3-X3における端面を示す。
図5】面ファスナー部材の係合状態を示す概略的な端面図であり、図2の一点鎖線X4-X4における端面を示す。
図6】面ファスナー部材の係合状態と係合解除状態の中間の状態を示す概略的な斜視図であり、各面ファスナー部材の円柱状突起の図示が省略されている。
図7】面ファスナー部材の係合状態と係合解除状態の中間の状態を示す概略的な端面図である。
図8】島部の概略的な正面図である。
図9】行仮想線R1に沿う概略的な端面図である。
図10】行仮想線R2に沿う概略的な端面図である。
図11】島部の概略的な正面図である。
図12】列仮想線C6に沿う概略的な端面図である。
図13】列仮想線C5に沿う概略的な端面図である。
図14】格子のジグザグ状に配列された格子点に第2円柱状突起が選択的に配置されることを示す島部の概略的な正面図である。
図15】格子の行仮想線R1,R6に配列された格子点に第2円柱状突起が選択的に配置されることを示す島部の概略的な正面図である。
図16】円柱状突起群の外周線に接しないように第2円柱状突起が選択的に配置されることを示す島部の概略的な正面図である。
図17】格子の列仮想線C1に配列された格子点に第2円柱状突起が選択的に配置されることを示す島部の概略的な正面図である。
図18】面ファスナー部材の製造のために用いられる金型の概略図である。
図19】円柱状突起の頂面が楕円形であることを示す島部の正面図である。
図20】円柱状突起の頂面が矩形であることを示す島部の正面図である。
図21】第2円柱状突起の配置に関するバリエーションを示す図である。
図22】第2円柱状突起の配置に関するバリエーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、様々な実施形態及び特徴について説明する。当業者は、過剰説明を要せず、各実施形態及び/又は各特徴を組み合わせることができ、この組み合わせによる相乗効果も理解可能である。実施形態間の重複説明は、原則的に省略する。参照図面は、発明の記述を主たる目的とするものであり、作図の便宜のために簡略化されている。各特徴は、本願に開示された面ファスナー部材にのみ有効であるものではなく、本明細書に開示されていない他の様々な面ファスナー部材にも通用する普遍的な特徴として理解される。
【0016】
面ファスナー1は、係合及び係合解除可能な一つのペアとして面ファスナー部材2a,2bを有する(図1参照)。各面ファスナー部材2a,2bは、軟質樹脂から成り、高い柔軟性又は可撓性を有する。軟質樹脂は、エラストマー樹脂であることが好ましく、例えば、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、シリコーン系、ポリスチレン系、スチレンブタジエン系、ニトリルブタジエン系など各種エラストマー樹脂が挙げられる。面ファスナー1は、フック・トゥ・ループといった面ファスナーとは異なり、糸屑が付着しにくく、また係合解除時に音が発生しにくい。なお、フック・トゥ・ループにおいては、フック側の係合体のために硬質な樹脂(例えば、ポリブチレンテレフタレート又はポリプロピレン)が用いられる。
【0017】
各面ファスナー部材2a,2bは、衣類、鞄、靴等の別々の布地に対して取り付けられ、典型的には、縫い糸により縫い付けられる。面ファスナー部材2a,2bの係合により布地同士が重ね合わされ、布地間の開口が閉じられる。面ファスナー部材2a,2bの係合解除により布地間に開口が生じる。なお、衣服、鞄、靴等以外の用途にも面ファスナー1を利用することができる。
【0018】
各面ファスナー部材2a,2bは、複数の島部4a,4b,4cと複数の連結部5a,5bを有し、所定の軸線AXに沿って複数の島部4a,4b,4cが連結部5a,5bを介して連結される(図1,2参照)。所定の軸線AXは、島部4a,4b,4cの連結方向に平行に、かつ島部4a,4b,4cの幅方向WDで中央に設定されている。連結部5a,5bは必ずしもこの限りではないが島部の幅よりも狭い幅を有する線状部分であり、これにより、島部4aと島部4cが軸線AXに対して傾斜しやすくなり(図2の島部4cの点線参照)、面ファスナー部材2a,2bが取り付けられる布地の柔軟性が確保される。なお、軸線AX沿いの連結部5a,5bの長さは、軸線AX沿いの島部4a,4b,4cの長さの1/5以下、又は1/8以下、又は1/10以下であり得る。複数の連結部で島部同士を連結しても良い。
【0019】
各島部4a,4b,4cは、基層6、基層6の主面から凸状に形成された複数の円柱状突起7、複数の円柱状突起7に応じて基層6の主面上に画定された複数の受容部8、及び基層6の主面上で隣接する円柱状突起7間を接続するように設けられた複数のリブ9を有する。基層6、円柱状突起7、及びリブ9は、一つの成形品の異なる部分であり、基層6と円柱状突起7が一体的及び連続的に形成される。換言すれば、基層6の材料層と円柱状突起7の材料部又は材料層が連続的に形成され、両者の間に境界又は界面がない。この点は、基層6とリブ9の関係、円柱状突起7とリブ9の関係に当てはまる。なお、基層6の主面は、係合相手の面ファスナー部材に対面する面である。各受容部8は、その位置に応じて、2以上の円柱状突起7に隣接して設けられ、又は、3つ又は4つの円柱状突起7の間に設けられ、側方において空間的に開放されている。受容部8は、そこへの係合相手の円柱状突起7の挿入を許容すれば足りる。
【0020】
面ファスナー部材2a,2bの係合時、面ファスナー部材2aの円柱状突起7が面ファスナー部材2bの円柱状突起7の間に挿入されて受容部8に受容され、同時に、面ファスナー部材2bの円柱状突起7が面ファスナー部材2aの円柱状突起7の間に挿入されて受容部8に受容される(図3及び図4参照)。面ファスナー部材2aの円柱状突起7と面ファスナー部材2bの円柱状突起7の間に生じる摩擦に応じて面ファスナー部材2a,2bの係合必要力が変化する。なお、円柱状突起7同士の摩擦は、円柱状突起7の外周面(例えば、後述の上端部又は縁近傍)において生じる。円柱状突起7の位置によって、面ファスナー部材2a,2bの係合時に接触する相手方の円柱状突起7の個数が異なる。必ずしもこの限りではないが、面ファスナー部材2a,2bは、同一の構造を有するものの、はみ出し部分が生じないように係合可能であり(図4参照)、これを許容するように円柱状突起7が配置される。はみ出し部分が生じないとは、一対の面ファスナー部材2a,2bが係合した際に、面ファスナー部材2a,2bの外周が上下、左右にずれていない状態である。
【0021】
基層6は、矩形状の外形を有するが、円形状、楕円形といった他の外形とすることもできる。基層6は、円柱状突起7及び受容部8が配置された係合領域Z1と、軸線AXと直交する幅方向において係合領域Z1を挟むように設けられた側縁領域Z2,Z3を有する(図2参照)。係合領域Z1と側縁領域Z2の境界は、幅方向WDにおいて軸線AXから所定距離だけ離れた位置に設定される。係合領域Z1と側縁領域Z3の境界についても同様である。係合領域Z1の両側に側縁領域Z2,Z3を設け、縫い糸を用いてこれらを布地に縫い付けることで島部4a,4b,4cをそこに強固に取り付けることができる。
【0022】
基層6は、軸線AXに沿って平行に延びる一対の側縁41,42と、軸線AXに沿う凸部を形成するべく軸線AXに直交する幅方向WDに沿って延びる一対の側縁43,44を有する。隣接する島部4a,4b又は4b,4cにおいて側縁43,44同士が対向する。これらの側縁43,44の離間間隔K1(図2参照)が軸線AXから離れるに応じて増加し、島部4a,4cが斜めに揺動し易くなる。
【0023】
係合領域Z1における基層6の厚みは一定である。側縁領域Z2,Z3における基層6の厚みは、幅方向WDにおいて軸線AXから離間するに応じて減少する(図5参照)。側縁領域Z2,Z3には基層6の上面に軸線AXに平行に延びる溝11が設けられ(図5参照)、これにより、縫い針が基層6を貫通しやすくなる。基層6の厚みは、面ファスナー部材2a,2bの可撓性と相関し、結果として、係合解除必要力と相関する。なお、リブ9が基層6の係合領域Z1に設けられる場合、係合解除必要力が高められる。
【0024】
面ファスナー部材2a,2bの係合時、面ファスナー部材2aの島部4aが面ファスナー部材2bの島部4aに重ね合わされる(図3乃至図5参照)。即ち、面ファスナー部材2aの島部4aの全ての円柱状突起7が面ファスナー部材2bの島部4aの対応の全ての受容部8に全て同時に又は一部ずつ挿入される。従って、係合必要力は、面ファスナー部材2a,2bの(係合に寄与する)円柱状突起7の全個数に相関(例えば、比例)することになる。
【0025】
他方、面ファスナー部材2a,2bの係合解除時、面ファスナー部材2aの島部4aが面ファスナー部材2bの島部4aから徐々に引き剥がされる(図6及び図7参照)。図6及び図7に示す如く軸線AXに沿って島部の引き剥がしが行われる場合、係合解除必要力は、軸線AXに直交する幅方向における円柱状突起7の個数に相関(例えば、比例)することになる。なお、面ファスナー部材2aの島部4aが面ファスナー部材2bの島部4aから引き剥がされる時、面ファスナー部材2aの円柱状突起7が斜めに傾き、面ファスナー部材2bの円柱状突起7の側面に強く衝突する。
【0026】
面ファスナー部材2a,2bの係合時、面ファスナー部材2aの全ての島部4a,4b,4cと面ファスナー部材2bの全ての島部4a,4b,4cを同時に係合する必要はない。軸線AXに沿って順に島部同士を係合させても良い。例えば、面ファスナー部材2a,2bの島部4a同士を係合させ、次に、面ファスナー部材2a,2bの島部4b同士を係合させ、次に面ファスナー部材2a,2bの島部4c同士を係合させることができる。
【0027】
図8乃至図13を参照して各島部4a,4b,4cにおける円柱状突起7、受容部8、及びリブ9の配置について説明する。面ファスナー部材2a,2bの島部同士の制御された係合及び係合解除のため、各島部の主面上の所定平面において列仮想線C1~C6と行仮想線R1~R6の格子100が設定される。格子100においては第1対角線D1~D11(D4~D10の図示は省略)と第2対角線E1~E10(E3~E5,E7~E9の図示は省略)も設定される。以下、説明の便宜上、列仮想線の番号と行仮想線の番号に基づいて格子点の番地が定まるものとする。例えば、列仮想線C1と行仮想線R1の交点の格子点の番地は(1,1)であり、列仮想線C1と行仮想線R2の交点の格子点の番地は(1,2)である。この規則に基づいて他の格子点の番地も決定される。
【0028】
格子100における複数の列仮想線C1~C6それぞれの線上に定ピッチで設けられた複数の格子点において円柱状突起7と受容部8が交互に配置される(図8参照)。列仮想線C1の線上の格子点(1,1),(1,3),(1,5)に円柱状突起7が設けられ、列仮想線C1の線上の格子点(1,2),(1,4),(1,6)に受容部8が設けられる。列仮想線C2の線上の格子点(2,2),(2,4),(2,6)に円柱状突起7が設けられ、列仮想線C2の線上の格子点(2,1),(2,3),(2,5)に受容部8が設けられる。他の列仮想線C3~C6についても図示のとおりであり、冗長説明は省略する。隣接する列仮想線において円柱状突起7が相補的に設けられ、同様、受容部8が相補的に設けられる(図12,13参照)。最外周の受容部8を除いて、受容部8は、列方向と行方向の両方で隣接する円柱状突起7の間に設けられる。
【0029】
格子100における複数の行仮想線R1~R6それぞれの線上に定ピッチで設定された複数の格子点において円柱状突起7と受容部8が交互に配置される(図11参照)。行仮想線R1の線上の格子点(1,1),(3,1),(5,1)に円柱状突起7が設けられ、行仮想線R1の線上の格子点(2,1),(4,1),(6,1)に受容部8が設けられる。行仮想線R2の線上の格子点(2,2),(4,2),(6,2)に円柱状突起7が設けられ、行仮想線R2の線上の格子点(1,2),(3,2),(5,2)に受容部8が設けられる。他の行仮想線R3~R6についても図示のとおりであり、冗長説明は省略する。隣接する行仮想線において円柱状突起7が相補的に設けられ、同様、受容部8が相補的に設けられる(図9,10参照)。最外周の受容部8を除いて、受容部8は、列方向と行方向の両方で隣接する円柱状突起7の間に設けられる。
【0030】
行方向における円柱状突起7の間隔Q1は、列仮想線のピッチ間隔P1の2倍である。同様、列方向における円柱状突起7の間隔Q2は、行仮想線のピッチ間隔P2の2倍である。対角線方向における円柱状突起7の間隔もP1,P2に基づいて算出可能である。なお、円柱状突起7の間隔の決定に関しては円柱状突起7の中心線が参照される。
【0031】
幾つかの場合、行仮想線のピッチは、列仮想線のピッチよりも大きく、例えば、(P1×1.004)<P2<(P1×1.02)、又は、(P1×1.006)<P2<(P1×1.01)を満足する。図7に示したように、係合解除時、円柱状突起7が斜めに傾き、上下の円柱状突起7の接触面積の増加に帰結し得る。従って、係合必要力を低減しつつ、係合解除必要力を大きく変動させないことができる。
【0032】
なお、格子100においては、第1対角線D3,D5,D7,D9それぞれの線上に定ピッチで設定された複数の格子点に受容部8が設けられて斜めに連続した空間が形成される。同様、格子100における第2対角線E2,E4,E6,E8,E10それぞれの線上に定ピッチで設定された複数の格子点に受容部8が設けられて斜めに連続した空間が形成される。なお、第1対角線と第2対角線はお互いに直交する。受容部8が側方において開放されている帰結である。
【0033】
リブ9は、格子100の対角線方向に延びて同方向で隣接する円柱状突起7を接続する。リブ9は、受容部8に対応する複数の網目を形成するように設けられる。詳細には、リブ9は、受容部8が配置されていない第1対角線D2,D4,D6,D8,D10それぞれの線上において隣接する円柱状突起7を接続するように(例えば、直線状に)延びる。リブ9は、受容部8が配置されていない第2対角線E3,E5,E7,E9それぞれの線上において隣接する円柱状突起7を接続するように(例えば、直線状に)延びる。結果として、最外周の受容部8が2つのリブ9により囲まれ、それらよりも島部の内側に位置する受容部8が4つのリブ9により囲まれる。最外周の円柱状突起7には1つ又は2つのリブ9が接続し、それらよりも島部の内側に位置する円柱状突起7には4つのリブ9が接続する。
【0034】
図12図13において、列仮想線C5、C6に沿う端面に加え、列仮想線C5、C6に位置する円柱状突起7を接続するリブ9も図示している。基層6の係合領域Z1の主面からのリブ9の高さH9は、円柱状突起7の高さH7の半分又はこの近傍(例えば、高さH7×0.2~高さH7×0.55の範囲内、好ましくは、高さH7×0.4~高さH7×0.5の範囲内)であり得る。リブ9の高さH9を、円柱状突起7の高さH7×0.55よりも低くすることにより、面ファスナー部材2a,2bの島部同士が係合する時に円柱状突起7がリブ9に接触することが回避され、又はその程度が低減される。すなわち、係合必要力の低減を図ることができる。また、リブ9の高さH9を、円柱状突起7の高さH7×0.2よりも高くすることにより、面ファスナー部材2a,2bの島部同士を剥離する際に、隣接する円柱状突起7の間隔が広がりすぎることを防止し、所望の係合解除必要力を確保できる。追加又は代替として、リブ9の高さH9は、基層6の最大厚TH6以上であり得る。これにより基層6を薄くしつつ、基層6の係合領域Z1において必要な基層6の硬さを確保でき、所望の係合解除必要力を確保できる。
【0035】
円柱状突起7の密度は、50個/cm2以下であり、又は、30個/cm2以下であり、又は、10個/cm2~50個/cm2の範囲内であり、又は、16個/cm2~31個/cm2の範囲内である。必ずしもこの限りではないが、フック・トゥ・ループ又はフック・トゥ・フックのフック密度と比べて密度が低い。
【0036】
円柱状突起7は、基層6から離れるに応じて直径が漸増する拡径部71と、拡径部71から円柱状突起7の上面74に向けて直径又は幅が漸減する上端部72を有し、拡径部71と上端部72の間には縁73が形成される。円柱状突起7の直径は、拡径部71において基層6から離間するに応じて漸増し、上端部72において基層6から離間するに応じて漸減し、縁73において最大径を持つ。円柱状突起7は、その高さによって異なる直径を有するが、これに限らず、一定の直径を有することもできる。なお、上述の上端部の直径の漸減によって面ファスナー部材2a,2bの係合時の円柱状突起7同士のアライメント(例えば、特には、円柱状突起7の受容部8への誘い込み)が促進される。
【0037】
島部4a,4b,4cには、複数の孔12が設けられる。孔12は、基層6を貫通し、かつ円柱状突起7を中空にするべく延びる。円柱状突起7を中空とすることにより、熱収縮に伴う円柱状突起7の直径の変動を抑制することができる。円柱状突起7に孔12が設けられ、従って、円柱状突起7は、基層6から立ち上がる円筒壁を有する。円筒壁上に上端部72が設けられ、孔12の上開口が閉鎖される。これにより、上端部72の下面(円柱状突起7の突出方向とは反対方向の面)が孔12の底面13を形成する。なお、列仮想線又は行仮想線における断面では、単層の材料層(例えば、樹脂層又はエラストマー層)が、基層6を形成するように延びることと、円柱状突起7の壁を形成するように延びることを交互に繰り返す(図9,10,12,13参照)。
【0038】
孔12の底面13は、拡径部71と上端部72の間の縁73又はこの近傍の高さに設定され得る。これにより上端部72の厚みTH72が拡径部71の(最大の)厚みTH71と同等とすることができる。[条件1]0.6<(TH71/TH72)<1.4、又は[条件2]0.8<(TH71/TH72)<1.2を満足し得る。なお、孔12は、典型的には円柱状であるが、角柱状であっても構わない。また、孔12は、段階的に変化する2以上の異なる幅又は直径を有することができ、この追加又は代替として連続的な変化する幅又は直径を有することができる。
【0039】
以下、図14乃至図17を参照して更に説明する。島部4a,4b,4cに設けられる円柱状突起7は、第1円柱状突起76の第1サブセットと、第2円柱状突起77の第2サブセットに分類することができる。理解の促進のため図14乃至図17では第2円柱状突起77を点線で示している。第2円柱状突起77は、第1円柱状突起76と同等のサイズを有するものの、完全に同じのサイズを有するものではない。W1が第1円柱状突起76の一定又は最大の第1直径を示し、W2が第2円柱状突起77の一定又は最大の第2直径を示す時、(W1×0.9)<W2<(W1×0.98)を満足する。この場合、島部4a,4b,4cの円柱状突起7の配列の一様性を保つことができる。幾つかの実施形態では、(W1×0.945)<W2<(W1×0.975)が満足される。
【0040】
第1円柱状突起76の第1直径は、列仮想線のピッチの半分の値及び行仮想線のピッチの半分の値のいずれよりも大きい。第2円柱状突起77の第2直径は、列仮想線のピッチの半分の値以下、及び/又は、行仮想線のピッチの半分の値以下である。第2円柱状突起77は、従って、第1円柱状突起76よりも係合必要力の増加に小さい程度で寄与する。他方、係合解除必要力については、係合解除時、円柱状突起7が斜めに傾くため、第2円柱状突起77が第1円柱状突起76と同等に係合必要力に寄与するものと考えられる。
【0041】
第2円柱状突起77の個数及び配列について様々な形態が想定される。図14の場合、第2円柱状突起77の第2サブセットは、格子100の行仮想線R3,R4においてジグザグ状に配列された格子点に設けられた第2円柱状突起77を含む。結果として、第2円柱状突起77も行方向にジグザグ状に配置される。図15の場合、第2円柱状突起77の第2サブセットは、格子100の各行仮想線R1,R6において直線状に配列された格子点に設けられた第2円柱状突起77を含む。結果として、第2円柱状突起77も行方向に直線状に配置される。図14及び図15のいずれの場合においても第2円柱状突起77が格子100において隣接した格子点に設けられ、結果として、第2円柱状突起77同士が隣接する。第2円柱状突起77間の間隔が増加するため(即ち、受容部8の幅が増加するため)、面ファスナー部材2a,2bの係合必要力及び係合解除必要力に影響する。
【0042】
図16の場合、島部4bの主面上において第1サブセットの第1円柱状突起76が外周線SL内に配置される。外周線SLが第1サブセットの第1円柱状突起76の外周面に関して引かれた接線の連結により構成される。第2サブセットの第2円柱状突起77のいずれも外周線SLに接しないように配置される。外周線SLに接する円柱状突起7は、外周線SLに接しない円柱状突起7と比べて島部4a,4b,4cの外周側に容易に逃げることができる。第2円柱状突起77を外周線SLに接しない位置に設けることで、より少数の第2円柱状突起77で係合必要力の低減を図ることができる。
【0043】
図17の場合、第2円柱状突起77の第2サブセットは、一つの列仮想線C1において直線状に配列された格子点に設けられた第2円柱状突起77を含む。結果として、第2円柱状突起77も直線状に配置される。図17との比較から分かるように、図14乃至図16の場合、面ファスナー部材2a,2bの軸線AXに平行である行方向に沿って配列された格子点に第2円柱状突起77が配置される。行方向に沿って第2円柱状突起77が隣接して配置され、第2円柱状突起77同士の間隔が増加する。繰り返すが、第2円柱状突起77同士の間隔の増加は、必ずしも係合解除必要力の(少なくとも大きな)減少に帰結しない。すなわち、図7に示したように、係合解除時、円柱状突起7が斜めに傾くため、第2円柱状突起77同士の間隔の増加は、上下の円柱状突起7の接触面積の増加に帰結すると考えられる。従って、係合必要力の変動の程度と比較して係合解除必要力の変動の程度を相対的に低くすることができ、係合必要力の低減と係合解除必要力の両立が促進できる。なお、島部4a,4b,4cの格子100の行仮想線は、軸線AXに平行に設定する必要はなく、軸線AXに対して斜めに設定され得る。
【0044】
第2サブセットに含まれる第2円柱状突起77の個数が第1サブセットに含まれる第1円柱状突起76の個数よりも少ない。このような場合、シミュレーションにより所望の係合必要力と係合解除必要力を見積もりやすくなる。例えば、シミュレーションのため、はじめに格子100の全格子点が第1円柱状突起76として係合必要力と係合解除必要力を算出し、次に、第1円柱状突起76を選択的に第2円柱状突起77で置換して係合必要力と係合解除必要力を調整することができる。
【0045】
面ファスナー部材2a,2bは、図18に示すような金型装置200を用いて製造することができる。下型201上に上型202が配置されて型締めされた後、両者間に形成されたキャビティー203に溶融樹脂を流入させ、続いて金型装置200を冷却する。その後、型開して金型装置200から成形品、即ち、面ファスナー部材を取り出す。面ファスナー部材に連結したゲート部等は切断により除去することができる。
【0046】
なお、円柱状突起7の上面は、楕円(図19)又は矩形(図20)といった形状を有するように形成することができる。円柱状突起7の上面の形状は、係合必要力と係合解除必要力に影響せず、所望の意匠性を与えることができる。
【0047】
図21に示すようにジグザグ状に配置された合計4つの第2円柱状突起77から離れた位置に第2円柱状突起77を設けることもできる。
【0048】
図22に示すように島部4a,4b,4cに設けられる第2円柱状突起77の行数は一つに限らず、複数であり得る(図22の場合、第2円柱状突起77の行数=4)。第2円柱状突起77の列数についても同様である。
【実施例0049】
島部4a,4b,4cの連結方向に平行に行仮想線を設定した。行仮想線のピッチを1.45mmとした。列仮想線のピッチを1.45mmとした。円柱状突起7は、縁73において最大径を有する。円柱状突起7として、最大径が異なる第1及び第2円柱状突起76,77を設けた。第1円柱状突起76の最大径を1.52mmとした。第2円柱状突起77の最大径を1.47mmとした。第2円柱状突起77を図16に示すように配置した。基層6の厚みは、0.8mmとした。リブ9の高さは、0.9mmとした。円柱状突起7の高さは、2.0mmとした。
【0050】
同一構造の面ファスナー部材の係合及び係合解除の必要力を測定したところ、係合必要力=17.0Nとし、係合解除必要力=4.1Nとすることができた。係合必要力は、面ファスナーを図3の状態から図4に示す状態にするために必要な力である。詳細には、廻し試験機に一対の面ファスナー部材をセットし、図3の状態から図4の状態になるように廻し試験機を操作する。廻し試験機で測定される力が1.0Nとなる位置を初期位置とし、初期位置から1.0mm押し下げた際の力を係合必要力として計測する。係合解除必要力は、面ファスナーを図4の状態から図7に示す過程を経て図3の状態にする過程で計測される力の最大値である。詳細には、2つの生地のそれぞれに面ファスナーを縫製して取り付け、生地に取り付けた一対の面ファスナー同士を係合させる。2つの生地のそれぞれの端部を引張試験機にセットし、一対の面ファスナーの係合が解除される方向に引っ張る。一対の面ファスナーの1つの島部が完全に係合解除されるまでにかかる力を測定し、その最大力を係合解除必要力として計測する。係合必要力及び係合解除必要力は、いずれも島部の一つのペアに関する値である。
【0051】
上述の教示を踏まえ、当業者は、各実施形態及び各特徴に対して様々な変更を加えることができる。特許請求の範囲に盛り込まれた符号は、参考のためであり、特許請求の範囲を限定解釈する目的で参照されるべきものではない。基層を貫通しない態様で円柱状突起に孔を設けて円柱状突起を中空としても良い。
【符号の説明】
【0052】
1:面ファスナー,2a,2b:面ファスナー部材,4a~4c:島部,6:基層,7:円柱状突起,8:受容部,76:第1円柱状突起,77:第2円柱状突起,100:格子,AX:軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図22