(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083128
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】穀物水分計の診断具
(51)【国際特許分類】
G01N 27/04 20060101AFI20230608BHJP
【FI】
G01N27/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197301
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】升尾 智裕
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA12
2G060AC01
2G060AE16
2G060AF07
2G060AG03
2G060AG07
2G060CA06
2G060CC08
2G060CD07
2G060CE01
2G060HC02
2G060JA04
(57)【要約】
【課題】穀物水分計を簡易に動作診断することが可能な穀物水分計の診断具を提供する。
【解決手段】穀物水分計20の診断具1は、ロール径方向に並設された第1電極ロール24及び第2電極ロール25を備え、互いに反対向きに回転する両電極ロール24、25間に試料穀物Sを通過させながら圧砕する際の電気抵抗値に基づいて試料穀物Sの含有水分値を換算して得る穀物水分計20の動作診断を行う際に用いる。穀物水分計20の診断具1は、第1電気抵抗部11を備えた診断具本体2と、診断具本体2の外面に所定間隔をあけて同方向に突設され、穀物水分計20に対して診断具本体2を接近させた際、両電極ロール24、25の側面に当接する第1外部端子部3a及び第2外部端子部3eとを備え、第1外部端子部3a及び第2外部端子部3eが第1電気抵抗部11の一端と他端とにそれぞれ電気的に接続される。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極ロール及び第2電極ロールの間において試料穀物を圧砕しながら該試料穀物の水分を計測するよう構成された穀物水分計の動作診断を行う際に用いられる穀物水分計の診断具であって、
電気抵抗部を備えた診断具本体と、
該診断具本体の外面に所定の間隔をあけて同方向に突設され、前記穀物水分計に対して前記診断具本体を接近させた際、一方が前記第1電極ロールの側面に当接する状態で他方が前記第2電極ロールの側面に当接する状態となるよう構成された一対の外部端子部とを備え、
該一方の外部端子部は、前記電気抵抗部の一端と電気的に接続され、前記他方の外部端子部は、前記電気抵抗部の他端と電気的に接続されていることを特徴とする穀物水分計の診断具。
【請求項2】
請求項1に記載の穀物水分計の診断具において、
前記診断具本体外面の前記両外部端子部間には、前記穀物水分計の動作診断を行う際、前記第1電極ロール及び前記第2電極ロールの少なくとも一方に接触可能な弾性部材が取り付けられていることを特徴とする穀物水分計の診断具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の穀物水分計の診断具において、
前記外部端子部は、一端側が開口する筒体と、当該筒体内に筒中心線に沿って進退可能に収容され、前進すると前記筒体の一端開口から飛び出す一方、後退すると前記電気抵抗部と導通状態となるよう構成された可動ピンと、該可動ピンを前進するように付勢する付勢部材とを備えていることを特徴とする穀物水分計の診断具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の穀物水分計の診断具において、
前記電気抵抗部は、第1電気抵抗部と当該第1電気抵抗部よりも電気抵抗が大きい第2電気抵抗部とを含み、
前記第1電気抵抗部が前記両外部端子部に電気的に接続される第1状態と、第2電気抵抗部が前記両外部端子部に電気的に接続される第2状態とに切替可能な切替部を備えていることを特徴とする穀物水分計の診断具。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の穀物水分計の診断具において、
前記第1電極ロール及び前記第2電極ロールは、回転軸心が同じ水平方向に延びるようにロール径方向に並設され、
前記外部端子部の突出方向に前記診断具本体をガイド可能なガイド部材を支持するとともに、前記穀物水分計に設けられた内部に連通する開口部に前記外部端子部の突出方向が前記回転軸心に沿うように、且つ、前記各外部端子部が前記第1電極ロール及び前記第2電極ロールにそれぞれ対応する位置となるように取付可能な支持プレートを備えていることを特徴とする穀物水分計の診断具。
【請求項6】
請求項5に記載の穀物水分計の診断具において、
前記第1電極ロール及び前記第2電極ロールは、互いに反対向きに回転するように構成され、
前記ガイド部材は、前記診断具本体の底面部に対向するように設けられた底壁部と、当該底壁部の各側縁部に連続して設けられ、前記診断具本体の各側面部に対向するように設けられた一対の側壁部とを含むことを特徴とする穀物水分計の診断具。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の穀物水分計の診断具において、
前記支持プレートは、透明部材で形成されていることを特徴とする穀物水分計の診断具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀物水分計の動作診断を行う際に用いられる穀物水分計の診断具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、籾米などの穀物の水分を計測可能な穀物水分計が知られている。該穀物水分計は、第1電極ロール及び第2電極ロールの間において試料穀物を圧砕しながら該試料穀物の水分を計測するよう構成されている。
【0003】
ところで、穀物水分計は、計測精度が低下したり、或いは、経年劣化等による故障のおそれがあるため、定期的に動作診断を行う必要がある。例えば、特許文献1に開示されている穀物水分計は、電気回路が内蔵された水分計本体を備え、該電気回路は、電源部、測定回路部、温度補正部、及び、指示部の機能ブロックに分割されている。水分計本体の外面には、電気回路の各機能ブロックに対応する入出力端子が露出しており、当該入出力端子に診断装置の診断用端子を接続することにより、穀物水分計の機能ブロック毎に動作診断が可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の如き穀物水分計の診断装置の場合、水分計本体の入出力端子に対して機能ブロック毎に診断装置の診断用端子を接続する必要があるため、作業が煩雑になってしまう。例えば、穀物水分計が穀物乾燥機に備え付けられている場合、穀物水分計の診断作業が集中的に実施される穀物乾燥機の稼働時期である籾米の刈り取り時期の前において、サービスマンが上述の如き穀物水分計の複数箇所について動作診断をしようとすると、診断する回数が多くなって大きな負担となるおそれがある。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、穀物水分計を簡易に動作診断することが可能な穀物水分計の診断具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、穀物水分計における第1電極ロール及び第2電極ロールの側面に対して、診断具の外部端子部を当接させることにより、穀物水分計の動作診断をできるようにしたことを特徴とする。
【0008】
具体的には、第1電極ロール及び第2電極ロールの間において試料穀物を圧砕しながら該試料穀物の水分を計測するよう構成された穀物水分計の動作診断を行う際に用いられる穀物水分計の診断具を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、第1の発明では、電気抵抗部を備えた診断具本体と、該診断具本体の外面に所定の間隔をあけて同方向に突設され、前記穀物水分計に対して前記診断具本体を接近させた際、一方が前記第1電極ロールの側面に当接する状態で他方が前記第2電極ロールの側面に当接する状態となるよう構成された一対の外部端子部とを備え、該一方の外部端子部は、前記電気抵抗部の一端と電気的に接続され、前記他方の外部端子部は、前記電気抵抗部の他端と電気的に接続されていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、前記診断具本体外面の前記両外部端子部間には、前記穀物水分計の動作診断を行う際、前記第1電極ロール及び前記第2電極ロールの少なくとも一方に接触可能な弾性部材が取り付けられていることを特徴とする。
【0011】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、前記外部端子部は、一端側が開口する筒体と、当該筒体内に筒中心線に沿って進退可能に収容され、前進すると前記筒体の一端開口から飛び出す一方、後退すると前記電気抵抗部と導通状態となるよう構成された可動ピンと、該可動ピンを前進するように付勢する付勢部材と備えていることを特徴とする。
【0012】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、前記電気抵抗部は、第1電気抵抗部と当該第1電気抵抗部よりも電気抵抗が大きい第2電気抵抗部とを含み、前記第1電気抵抗部が前記両外部端子部に電気的に接続される第1状態と、第2電気抵抗部が前記両外部端子部に電気的に接続される第2状態とに切替可能な切替部を備えていることを特徴とする。
【0013】
第5の発明では、第1から第4のいずれか1つの発明において、前記第1電極ロール及び前記第2電極ロールは、回転軸心が同じ水平方向に延びるようにロール径方向に並設され、前記外部端子部の突出方向に前記診断具本体をガイド可能なガイド部材を支持するとともに、前記穀物水分計に設けられた内部に連通する開口部に前記外部端子部の突出方向が前記回転軸心に沿うように、且つ、前記各外部端子部が前記第1電極ロール及び前記第2電極ロールにそれぞれ対応する位置となるように取付可能な支持プレートを備えていることを特徴とする。
【0014】
第6の発明では、第5の発明において、前記第1電極ロール及び前記第2電極ロールは、互いに反対向きに回転するように構成され、前記ガイド部材は、前記診断具本体の底面部に対向するように設けられた底壁部と、当該底壁部の各側縁部に連続して設けられ、前記診断具本体の各側面部に対向するように設けられた一対の側壁部とを含むことを特徴とする。
【0015】
第7の発明では、第5又は第6の発明において、前記支持プレートは、透明部材で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明では、穀物水分計の動作診断を行う際、診断具における各外部端子部を第1電極ロール及び第2電極ロールの側面にそれぞれ当接させると、第1電極ロールと第2電極ロールとの間が診断具における2つの外部端子部と電気抵抗部とを介して電気的に接続された状態となる。この状態において、第1電極ロール及び第2電極ロールの間を通電させると、例えば、診断具の電気抵抗部に対応する電気抵抗値が穀物水分計で検出されるようになる。ここで、例えば、診断具の電気抵抗部の電気抵抗を乾燥籾に対応するようにしておくことで、前記検出した電気抵抗値に基づいて換算して得た含有水分値が乾燥籾に対応した値となっているかをサービスマン等が確認することで、穀物水分計の動作診断をすることができる。したがって、上述の特許文献1の如き穀物水分計の複数箇所を個別に診断する必要が無くなるため、穀物水分計を簡易に動作診断することができる。
【0017】
第2の発明では、穀物水分計の動作診断を行う際、診断具を第1電極ロール及び第2電極ロールに接近させると、診断具における各外部端子部が第1電極ロール及び第2電極ロールの側面にそれぞれ当接する一方、弾性部材が第1電極ロール及び第2電極ロールの少なくとも一方の側面と診断具本体との間で挟まれて弾性変形するようになる。そうすると、穀物水分計の動作診断の際、両電極ロールが回転すると、弾性変形した弾性部材の復元力によって第1電極ロール及び第2電極ロールの少なくとも一方に回転抵抗が生じるようになる。したがって、例えば、第1電極ロール及び第2電極ロールが電気モータにより回転駆動される穀物水分計において、回転する第1電極ロール及び第2電極ロールの間を試料穀物が通過する際に発生するモータ負荷によって該試料穀物の圧砕を判断し、該圧砕を判断した場合に試料穀物の含有水分値が得られるようになっている場合であっても、弾性部材により生じた第1電極ロール及び第2電極ロールの少なくとも一方の回転抵抗によって穀物水分計に試料穀物を圧砕したと判断させることができるようになるため、穀物水分計を確実に動作診断することができる。
【0018】
第3の発明では、診断具を第1電極ロール及び第2電極ロールに接近させると、診断具の各外部端子部が第1電極ロール及び第2電極ロールに押圧されるとともに両外部端子部の可動ピンが付勢部材の付勢力に抗して後退して各可動ピンと電気抵抗部とが導通状態になる。一方、第1電極ロール及び第2電極ロールの側面に対する診断具の押圧力を弱めるか、或いは、該側面から診断具を離間させると、付勢部材の復元力によって可動ピンが初期位置に戻るまで前進するようになり、各可動ピンと電気抵抗部とが非導通状態になる。したがって、別途スイッチを設けなくても、簡易な構造により、診断具の導通状態と非導通状態とを切替えることができる。
【0019】
第4の発明では、異なる2つの乾燥状態の乾燥籾に対応する各電気抵抗を切り替えながら穀物水分計の動作診断が行えるようになる。したがって、単一の電気抵抗により穀物水分計の動作診断を行う場合に比べて、その診断精度を向上させることができる。
【0020】
第5の発明では、穀物水分計の開口部に支持プレートを取り付けると、当該支持プレートのガイド部材に取り付けられた診断具本体の各外部端子部の突出方向が第1電極ロール及び第2電極ロールの回転軸心に沿う姿勢になるとともに、各外部端子部が穀物水分計の第1電極ロール及び第2電極ロールの側面に対向する姿勢になる。したがって、支持プレートに対して診断具を第1電極ロール及び第2電極ロールの側面に対して接近する方向に動かすだけで、簡易に穀物水分計の動作診断を行うことができる。
【0021】
第6の発明では、穀物水分計の動作診断時において、第1電極ロール及び第2電極ロールの側面に対して診断具の各外部端子部を当接させた状態で第1電極ロール及び第2電極ロールが回転すると、第1電極ロール及び第2電極ロールの回転力が各外部端子部を介して診断具本体にも作用し、該診断具本体を下方若しくは側方に動かそうとする。このような場合であっても、当該診断具本体を下方に動かそうとする力がガイド部材の底壁部により受け止められるようになるとともに、診断具本体を側方に動かそうとする力がガイド部材の側壁部により受け止められるようになる。したがって、穀物水分計の診断の際、第1電極ロール及び第2電極ロールが回転しても、その回転力をガイド部材により確実に受け止めることができるようになり、診断作業を行うサービスマン等に過剰な負担が加わるのを防止できる。
【0022】
第7の発明では、穀物水分計の動作診断の際、第1電極ロール及び第2電極ロールが正常に回転しているか、或いは、診断具の各外部端子部が第1電極ロール及び第2電極ロールの側面に適切に押圧されているか等について、穀物水分計の外部から支持プレートを介して容易に視認することができるようになる。したがって、各外部端子部が第1電極ロール及び第2電極ロールの側面に適切に押圧できていない等の理由によって、穀物水分計の動作診断を適切に行うことができないといった事態が発生するのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る穀物水分計の診断具を示す平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る穀物水分計の診断具の内部の構成を示す概略図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る穀物水分計の診断具を示す右側面図である。
【
図4】穀物乾燥機に備え付けられた穀物水分計の構成を示す概略図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る穀物水分計の診断具を用いて穀物水分計の動作診断方法の手順を示すフローチャートである。
【
図6】穀物水分計の開口部からカバーを取り外し、本発明の実施形態に係る穀物水分計の診断具を穀物水分計の開口部に取り付ける様子を示す斜視図である。
【
図7】穀物水分計の診断具が穀物水分計に装着された状態を示す図である。
【
図8】第1状態にセットされた穀物水分計の診断具を用いて穀物水分計の動作診断を実行している状態を示す図である。
【
図9】第2状態にセットされた穀物水分計の診断具を用いて穀物水分計の動作診断を実行している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る穀物水分計の診断具1を示す。該診断具1は、穀物乾燥機に備え付けられている穀物水分計の動作診断の際に用いられるものであり、サービスマン等が鞄等に入れて持ち運び可能な大きさに構成されている。
【0026】
該診断具1は、診断具本体2と、ガイド部材6と、支持プレート7と、により構成された組立体である。
【0027】
診断具本体2は、直方体かつ六面体をなしており、その外面は、前面部2a、後面部2b、右側面部2c、左側面部2d、上面部2e、及び、底面部2f(
図3参照)の6面を備えている。尚、本発明では、
図1及び
図2の紙面上側を診断具1の右側とする一方、紙面下側を診断具1の左側とし、紙面右側を診断具1の後側とする一方、紙面左側を診断具1の前側とする。また、
図3の紙面上側を診断具1の上側とする一方、紙面下側を診断具1の下側とし、紙面右側を診断具1の前側とする一方、紙面左側を診断具1の後側とする。
【0028】
前面部2aには、当該前面部2aから診断具本体2の前方側に突出する外部端子部3が診断具本体2の左右方向に所定の間隔をあけて一対設けられ、前面部2aにおける両外部端子部3の間には、略ブロック形状をなす弾性部材4が取り付けられている。
【0029】
外部端子部3は、スプリングピンコネクタであり、右側に位置する第1外部端子部3aと、左側に位置する第2外部端子部3eとにより構成されている。
【0030】
第1外部端子部3aは、前端側が開口する第1筒体3bと、該第1筒体3b内に筒中心線に沿って進退可能に収容された第1可動ピン3cと、該第1可動ピン3cを付勢する第1スプリング3dと(
図2参照)を備え、第1可動ピン3cは、第1スプリング3dの付勢力により前進して第1筒体3bの前端開口から飛び出すように構成されている。
【0031】
第2外部端子部3eは、前端側が開口する第2筒体3fと、該第2筒体3f内に筒中心線に沿って進退可能に収容された第2可動ピン3gと、該第2可動ピン3gを付勢する第2スプリング3hと(
図2参照)を備え、第2可動ピン3gは、第2スプリング3hの付勢力により前進して第2筒体3fの前端開口から飛び出すように構成されている。
【0032】
診断具本体2の内部には、
図2に示すように、切替部5、電気接続線10、第1電気抵抗部11及び第2電気抵抗部12が収容されている。
【0033】
電気接続線10は、第1接続線10a、第2接続線10b、第3接続線10c、第4接続線10d及び第5接続線10eを備えている。
【0034】
第1接続線10aは、一端が第1外部端子部3aに電気的に接続されるとともに、他端が切替部5と電気的に接続されていて、第1外部端子部3aの第1可動ピン3cが第1筒体3b内を前進すると、該第1可動ピン3cと切替部5とが非導通状態となる一方、第1可動ピン3cが第1筒内3b内を後退すると、該第1可動ピン3cと切替部5とが第1接続線10aを介して導通可能な状態となるように構成されている。
【0035】
第2接続線10bは、一端が切替部5と電気的に接続されるとともに、他端が第1電気抵抗部11の一端と電気的に接続されている。
【0036】
第3接続線10cは、一端が切替部5と電気的に接続されているとともに、他端が第2電気抵抗部12の一端と電気的に接続されている。
【0037】
第4接続線10dは、一端が第1電気抵抗部11の他端と電気的に接続されるとともに、他端が第2外部端子部3eと電気的に接続されていて、第2外部端子部3eの第2可動ピン3gが第2筒体3f内を前進すると、該第2可動ピン3gと第1電気抵抗部11の他端とが非導通状態となる一方、第2可動ピン3gが第2筒内3f内を後退すると、該第2可動ピン3gと第1電気抵抗部11の他端とが第4接続線10dを介して導通状態となるように構成されている。
【0038】
第5接続線10eは、一端が第2電気抵抗部12の他端と電気的に接続されるとともに、他端が第4接続線10dの中途部に電気的に接続されていて、第2外部端子部3eの第2可動ピン3gが第2筒体3f内を前進すると、該第2可動ピン3gと第2電気抵抗部12の他端とが非導通状態となる一方、第2可動ピン3gが第2筒内3f内を後退すると、該第2可動ピン3gと第2電気抵抗部12の他端とが第4接続線10d及び第5接続線10eを介して導通状態となるように構成されている。
【0039】
第1電気抵抗部11は、固定抵抗器であり、通電状態において、半乾燥籾の含有水分値に対応する電気抵抗値(例えば、1MΩ)を発生させるように構成されている。
【0040】
第2電気抵抗部12は、固定抵抗器であり、通電状態において、第1電気抵抗部11よりも大きな電気抵抗値である、乾燥籾の含有水分値に対応する電気抵抗値(例えば、20MΩ)を発生させるように構成されている。
【0041】
切替部5は、サービスマン等が診断具本体2の上面部2eにおいて上方に突設された手動操作部5aを手動操作により切り替えることで、第1接続線10aと第2接続線10bとが電気的に接続される第1状態と、第1接続線10aと第3接続線10cとが電気的に接続される第2状態とに切替可能に構成されている。
【0042】
切替部5が第1状態に切り替えられると、第1電気抵抗部11の一端は、第2接続線10b、切替部5、及び第1接続線10aを介して第1外部端子部3aに電気的に接続され、第1電気抵抗部11の他端は、第4接続線10dを介して第2外部端子部3eに電気的に接続されるようになっている。
【0043】
一方、切替部5が第2状態に切り替えられると、第2電気抵抗部12の一端は、第3接続線10c、切替部5、及び第1接続線10aを介して第1外部端子部3aに電気的に接続され、第2電気抵抗部12の他端は、第5接続線10e及び第4接続線10dを介して第2外部端子部3eに電気的に接続されるようになっている。
【0044】
弾性部材4は、前面部2aにおける一対の外部端子部3の間、つまり、第1外部端子部3aと第2外部端子部3eとの間において、診断具本体2の前方に向かって突設されている。弾性部材4は、例えば、ゴム材で構成されており、診断具本体2の前後方向において弾性変形により伸縮するようになっている。
【0045】
右側面部2cには、
図3に示すように、診断具本体2の内側に凹むとともに、当該診断具本体2の前後方向に延びる長穴部2gが設けられている。
【0046】
ガイド部材6は、左右方向に幅広な上向きに開放する断面略コ字状をなしており、診断具本体2の底面及び両側面を覆うように構成されている。具体的には、ガイド部材6には、診断具本体2の底面部2fと対向するように設けられた底壁部6aと、当該底壁部6aの右側縁部に連続して設けられ、診断具本体2の右側面部2cに対向するように設けられた右側壁部6bと、当該右側壁部6bの前後方向中間部から右方向に向けて突設された第1取付部6cと、底壁部6aの左側縁部に連続して設けられ、診断具本体2の左側面部2dに対向するように設けられた左側壁部6dと、当該左側壁部6dの前後方向中間部において左方向に向けて突設された第2取付部6eと、が備えられている。
【0047】
ガイド部材6の右側壁部6bにおける診断具本体2の長穴部2gに対応する位置には、図示しない螺子孔部が設けられ、該螺子孔部には、第1螺子部材6fが診断具本体2側に向けて螺合している。そして、第1螺子部材6fの先端部分が長穴部2gに遊嵌しており、これにより、ガイド部材6の底壁部6a上面に載置された診断具本体2は、第1螺子部材6fが長穴部2gの前後方向の範囲内において移動可能な寸法だけ、ガイド部材6に対して前後方向に相対移動可能になっている。
【0048】
支持プレート7は、水平方向に延びる長方形かつ板状をなしており、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)などの透明部材で形成されている。支持プレート7の長手方向一側寄り下部には、下方に開放する切り欠き部7a(
図6参照)が形成されている。
【0049】
支持プレート7には、第1固定部材8と第2固定部材9とがそれぞれ一対ずつ設けられ、各第1固定部材8及び各第2固定部材9は、支持プレート7に設けられた図示しない孔部に挿通させた状態で支持プレート7に取付られている。
【0050】
各第1固定部材8は、切り欠き部7aの左右両側それぞれに設けられた第3螺子部材8b及び第2螺子部材8aにより構成され、支持プレート7における切り欠き部7aの内側に診断具本体2及びガイド部材6を位置させた状態において、ガイド部材6における第2取付部6eと支持プレート7とを第3螺子部材8bで支持プレート7の後面側から共締めするとともに、ガイド部材6における第1取付部6cと支持プレート7とを第2螺子部材8aで支持プレート7の後面側から共締めすることにより、診断具本体2が取付られた状態のガイド部材6が支持プレート7に固定されるようになっている。
【0051】
各第2固定部材9は、第3螺子部材8b及び第2螺子部材8aの左右両側それぞれに設けられた第2固定具セット9e及び第1固定具セット9aにより構成されている。
【0052】
第2固定具セット9eは、互いに螺合可能な第2雄螺子部9f及び第2雌螺子部9gと、段差状に折り曲げて形成された第2挟持プレート9hとを備えている。
【0053】
第2挟持プレート9hは、支持プレート7の前面側に配設された状態において、第2挟持プレート9hの一端側と支持プレート7とを第2雄螺子部9f及び第2雌螺子部9gで共締めすることにより、支持プレート7に取り付けられるようになっていて、第2挟持プレート9hの他端側は、当該第2挟持プレート9hの一端側よりも左側に位置するとともに支持プレート7の前面から離間した位置になっている。
【0054】
第1固定具セット9aは、互いに螺合可能な第1雄螺子部9b及び第1雌螺子部9cと、段差状に折り曲げて形成された第1挟持プレート9dとを備えている。
【0055】
第1挟持プレート9dは、支持プレート7の前面側に配設された状態において、第1挟持プレート9dの一端側と支持プレート7とを第1雄螺子部9b及び第1雌螺子部9cで共締めすることにより、支持プレート7に取り付けられるようになっていて、第1挟持プレート9dの他端側は、当該第1挟持プレート9dの一端側よりも右側に位置するとともに支持プレート7の前面から離間した位置になっている。
【0056】
次に、
図4を用いて、本発明の実施形態に係る穀物水分計20の診断具1を用いて動作診断を行う対象の穀物水分計20について説明する。
【0057】
該穀物水分計20は、籾や麦などの穀物の乾燥に用いられる穀物乾燥機13に備え付けられ、該穀物乾燥機13において乾燥中の穀物の一部が試料穀物Sとして供給された際に、該供給された試料穀物Sの含有水分値を測定可能に構成されている。
【0058】
穀物乾燥機13には、試料穀物Sの含有水分値の計測結果等を表示可能なディスプレイ14が備えられている。そして、該穀物乾燥機13の内部には、電源15、電圧センサ16、及び、制御コントローラ17が収容されている。
【0059】
ディスプレイ14は、タッチパネルとして機能するように構成されており、例えば、ディスプレイ14に表示される所定の画像をサービスマン等がタッチ操作することにより、該所定の画像に対応する処理を実行可能となっている。
【0060】
電源15は、正極部15aと負極部15bとを有し、図示しない電源コードを介して商用電源のコンセントに電気的に接続可能に構成されている。
【0061】
電圧センサ16は、正極部15aと負極部15bとの電位差を検出可能なセンサであり、その検出値を制御コントローラ17に送信するように構成されている。
【0062】
制御コントローラ17は、ディスプレイ14、電源15、電圧センサ16、温度センサ23、及び、電気モータ26、にそれぞれ接続されており、図示しないプロセッサにより、試料穀物Sの含有水分値の計測、穀物水分計20の動作診断、これらの計測及び動作診断の結果のディスプレイ14への表示、上記計測時及び動作診断時における電気モータ26の駆動制御等の処理を実行するように構成されている。
【0063】
穀物水分計20は、籾や麦などの試料穀物Sの含有水分値を一粒毎に測定可能な電気抵抗式の単粒水分計であり、略四角柱形状をなしている(
図6参照)。該穀物水分計20は、内部に連通する矩形状をなす開口部21aが前面中央部分に形成されたケース21と、開口部21aを覆うようにケース21に取付取外可能なカバー22と、を備えている。開口部21aの開口縁21bには、当該開口縁21bを貫通する雌螺子孔状の一対の第3雌螺子部21cが設けられており、一対の第3雄螺子部30をカバー22の図示しない各孔部に挿通した状態において、一対の第3雌螺子部21cにそれぞれ螺合することにより、カバー22が開口部21aの開口縁21bに螺子止め固定されている。そして、ケース21の内部には、温度センサ23、第1電極ロール24、第2電極ロール25、及び、電気モータ26が収容されている。
【0064】
温度センサ23は、穀物水分計20の内部の温度を検出可能なセンサである。例えば、サーミスタで構成されており、検出値を制御コントローラ17に送信するように構成されている。
【0065】
第1電極ロール24は、回転軸心が水平方向に向く厚みを有する円板形状の導電体であり、回転軸心を中心として環状に延びる第1ロール面部24aと、該第1ロール面部24aの一側面に設けられ、回転軸心を中心とした円形状をなす第1側面部24bとを備えている。
【0066】
第2電極ロール25は、回転軸心が水平方向に向く厚みを有する円板形状の導電体であり、回転軸心を中心として環状に延びる第2ロール面部25aと、該第2ロール面部25aの一側面に設けられ、回転軸心を中心とした円形状をなす第2側面部25bとを備えている。
【0067】
そして、第1電極ロール24と第2電極ロール25とは、その回転軸心が同じ水平方向に延びるようにロール径方向に所定間隔を空けた姿勢で並設され、電気モータ26によって回転駆動されることにより、互いに反対向きに回転するように構成されている。これにより、第1電極ロール24の第1ロール面部24aと第2電極ロール25の第2ロール面部25aとの間に試料穀物Sを通過させながら該試料穀物Sを圧砕することが可能となっている。
【0068】
第1電極ロール24は、第6接続線28aを介して正極部15aと電気的に接続されており、また、第2電極ロール25は、第7接続線28bを介して負極部15bと電気的に接続されている。これにより、第1電極ロール24の第1ロール面部24aと第2電極ロール25の第2ロール面部25aとの間において試料穀物Sが圧砕されると、該圧砕された試料穀物Sを介して第1電極ロール24と第2電極ロール25との間が導通可能となる為、電源15の正極部15aから、第6接続線28a、第1電極ロール24、試料穀物S、第2電極ロール25、及び第7接続線28bを介して電源15の負極部15bに至る閉回路が形成されるようになっている。
【0069】
ここで、電源15により上記閉回路が通電されると、第6接続線28aと第7接続線28bとの電位差、つまり、上記閉回路の電圧が電圧センサ16により検出され、制御コントローラ17に送信される。該検出値は、第1電極ロール24及び第2電極ロール25の間において圧砕された試料穀物Sの含有水分値に応じて変化し得る。つまり、試料穀物Sが比較的含有水分が多い半乾燥籾の場合は、当該半乾燥籾自体の電気抵抗値が比較的小さいため、例えば、上記閉回路に一定電流値を通電した際、電圧センサ16において検出される電圧値は比較的小さくなる一方、試料穀物Sが比較的含有水分が少ない乾燥籾の場合は、当該乾燥籾自体の電気抵抗値が比較的大きいため、例えば、上記閉回路に一定電流値を通電した際、電圧センサ16において検出される電圧値は比較的大きくなる。
【0070】
例えば、試料穀物Sの含有水分値を計測する場合、制御コントローラ17は、第1電極ロール24及び第2電極ロール25との間に投入された試料穀物Sを圧砕すべく、第1電極ロール24及び第2電極ロール25を回転駆動するように電気モータ26に駆動指令するとともに、電源15に対して正極部15aから電気を流すように指令する。ここで、制御コントローラ17は、試料穀物Sが第1電極ロール24及び第2電極ロール25により圧砕されたか否かを電気モータ26の負荷が所定負荷に達したか否かで判断するようになっており、該判断がYesの場合は含有水分値の計測を継続する一方、上記判断がNoの場合は含有水分値の計測を中止するように構成されている。
【0071】
しかる後、制御コントローラ17は、電圧センサ16及び温度センサ23の検出値を取得し、該取得した電圧センサ16検出値に基づいて第1電極ロール24及び第2電極ロール25間において圧砕されている試料穀物Sの電気抵抗値を算出し、該算出した電気抵抗値及び温度センサ23の検出値から試料穀物Sの含有水分値に換算するとともに、該含有水分値及び穀物水分計20内部の温度(温度センサ23の検出値)のディスプレイ14への表示を制御するように構成されている。なお、同一の電気抵抗値において、温度センサ23の検出する温度が高いほど、試料穀物Sの含有水分値が低い値に換算されるようになっている。
【0072】
次に、本判明の実施形態に係る穀物水分計20の診断具1を用いた穀物水分計20の動作診断方法の手順について、
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0073】
ステップS1では、
図6に示すように、穀物水分計20の開口部21aから第3雄螺子部30とカバー22を取り外し、診断具1を開口部21aに取り付ける。ここで、第1固定具セット9aにおける第1挟持プレート9dの後面と支持プレート7の前面との間と、第2固定具セット9eの第2挟持プレート9hの後面と支持プレート7の前面との間とのそれぞれにおいて穀物水分計20の開口部21aの開口縁21bを前後方向に挟持することにより、診断具1を穀物水分計20の開口部21aに取り付ける(
図7参照)。開口部21aに取り付けられた診断具1は、
図7に示すように、診断具1の第1外部端子部3a及び第2外部端子部3eの突出方向が第1電極ロール24及び第2電極ロール25の回転軸心に沿う姿勢になるとともに、第1外部端子部3a及び第2外部端子部3eが第1電極ロール24の第1側面部24b及び第2電極ロール25の第2側面部25bにそれぞれ対応する位置となる。なお、ステップS1の状態では、第1外部端子部3a及び第2外部端子部3eは、第1電極ロール24の第1側面部24b及び第2電極ロール25の第2側面部25bに接触していない。
【0074】
ステップS2では、穀物水分計20の動作診断を開始する操作、例えば、穀物乾燥機13のディスプレイ14に表示された所定の診断実行画像をタッチ操作する。これにより、制御コントローラ17は、第1電極ロール24及び第2電極ロール25が回転するように電気モータ26に駆動指令するとともに、電源15に対して正極部15aから電気を流すように指令する。
【0075】
ステップS3では、第1状態、つまり、第1電気抵抗部11が導通可能な状態にセットされた診断具1を前進させて、
図8に示すように、第1電極ロール24の第1側面部24b及び第2電極ロール25の第2側面部25bに対して押し付ける。これにより、診断具1の前端に位置する第1可動ピン3c及び第2可動ピン3gが後退し、第1可動ピン3c及び第2可動ピン3gと第1電気抵抗部11とが導通可能な状態となる。したがって、電源15の正極部15aから、第6接続線28a、第1電極ロール24、第1外部端子部3a、第1接続線10a、切替部5、第2接続線10b、第1電気抵抗部11、第4接続線10d、第2外部端子部3e、第2電極ロール25、第7接続線28b、電源15の負極部15bに至る閉回路が形成されるとともに通電状態となる。すると、電圧センサ16が第1状態において通電している閉回路の電圧値を検出し、該検出した値を制御コントローラ17に送信する。制御コントローラ17は、電圧センサ16の検出値に基づいて電気抵抗値を算出し、該算出した電気抵抗値及び温度センサ23の検出値から第1含有水分値WC1に換算した後、ディスプレイ14に第1含有水分値WC1及び穀物水分計20の内部温度T1(温度センサ23の検出値)を表示する。
【0076】
また、ステップS3では、診断具1の弾性部材4が第1電極ロール24の第1側面部24b及び第2電極ロール25の第2側面部25bに対して押し付けられることにより、第1電極ロール24及び第2電極ロール25を駆動する電気モータ26に所定の負荷が生じる。したがって、弾性部材4を用いて、第1電極ロール24及び第2電極ロール25により試料穀物Sが圧砕された状態を疑似的に作り出し、制御コントローラ17に試料穀物Sを粉砕したと判断させることができる。
【0077】
さらに、ステップS3では、診断具1の弾性部材4が回転する第1電極ロール24の第1側面部24b及び第2電極ロール25の第2側面部25bに対して押し付けられているので、第1電極ロール24及び第2電極ロール25の回転力が第1外部端子部3a及び第2外部端子部3eを介して診断具本体2にも作用し、該診断具本体2を下方或いは側方に動かそうとする。このような場合であっても、本発明の実施形態に係る穀物水分計20の診断具1では、診断具本体2を下方に動かそうとする力がガイド部材6の底壁部6aにより受け止められ、かつ、診断具本体2を右方向或いは左方向に動かそうとする力がガイド部材6の右側壁部6b或いは左側壁部6dにより受け止められるようになる。
【0078】
ステップS4では、診断作業を行うサービスマン等がディスプレイ14に表示された第1含有水分値WC1及び穀物水分計20の内部温度T1を確認し、必要に応じて、第1含有水分値WC1及び穀物水分計20の内部温度T1をメモ用紙等に記録する。
【0079】
ステップS5では、切替部5を手動操作により切り替えることで、診断具本体2を第1状態から第2状態、つまり、第2電気抵抗部12が導通可能な状態にセットする。
【0080】
ステップS6では、穀物水分計20の動作診断を実行する操作を行うと、制御コントローラ17は、第1電極ロール24、第2電極ロール25、及び、電源15に対してステップS2と同様の指令を行う。
【0081】
ステップS7では、第2電気抵抗部12が導通可能な状態にセットされた診断具1を前進させて、
図9に示すように、第1電極ロール24の第1側面部24b及び第2電極ロール25の第2側面部25bに対して押し付ける。これにより、診断具1の前端に位置する第1可動ピン3c及び第2可動ピン3gが後退し、第1可動ピン3c及び第2可動ピン3gと第2電気抵抗部12とが導通可能な状態となる。したがって、電源15の正極部15aから、第6接続線28a、第1電極ロール24、第1外部端子部3a、第1接続線10a、切替部5、第3接続線10c、第2電気抵抗部12、第5接続線10e、第4接続線10d、第2外部端子部3e、第2電極ロール25、第7接続線28b、電源15の負極部15bに至る閉回路が形成されるとともに通電状態となる。すると、電圧センサ16が第2状態において通電している閉回路の電圧値を検出し、該検出した値を制御コントローラ17に送信する。制御コントローラ17は、電圧センサ16の検出値に基づいて電気抵抗値を算出し、該算出した電気抵抗値及び温度センサ23の検出値から第2含有水分値WC2に換算した後、ディスプレイ14に第2含有水分値WC2及び穀物水分計20の内部温度T2(温度センサ23の検出値)を表示する。
【0082】
ステップS8では、サービスマン等がディスプレイ14に表示された第2含有水分値WC2及び穀物水分計20の内部温度T2を確認し、必要に応じて、第2含有水分値WC2及び穀物水分計20の内部温度T2をメモ用紙等に記録する。
【0083】
ステップS9では、サービスマン等は、ステップS4及びステップS8で確認した第1含有水分値WC1及び第2含有水分値WC2が穀物水分計20の内部温度毎に設定された所定の範囲内(例えば、判断基準となる含有水分値の±0.5%の範囲内)であるか否かを判断する。該所定の範囲は、穀物水分計20の内部温度が高いほど、含有水分値が低くなる範囲に設定されている。上記判断がYesの場合、つまり、第1含有水分値WC1及び第2含有水分値WC2がいずれも所定の範囲内にある場合には、穀物水分計20が正常であると診断する(ステップS10)。
【0084】
上記判断がNoの場合、つまり、第1含有水分値WC1及び第2含有水分値WC2がいずれかが所定の範囲内にない場合には、穀物水分計20が異常であると診断する(ステップS11)。なお、穀物水分計20が異常と診断された際、さらに、第1電極ロール24及び第2電極ロール25等において汚れ或いは摩耗等の異常の有無を確認し、異常が有る場合は該当箇所の清掃や該当部品の交換を行った後、穀物水分計20が正常となったか否かを診断するために、再度、
図5に示す診断を行う。一方、上記異常が無い場合は、上記第1含有水分値WC1及び第2含有水分値WC2と予め設定された基準値との誤差分を補正するように、例えば、タッチパネルとして機能するよう構成されたディスプレイ14に表示される所定の画像をタッチ操作する。しかる後、穀物水分計20が正常となったか否かを診断するために、再度、
図5に示す診断を行う。
【0085】
以上より、本発明の実施形態によれば、穀物水分計20の動作診断をする際、診断具1における第1外部端子部3a及び第2外部端子部3eを第1電極ロール24及び第2電極ロール25の第1側面部24b及び第2側面部25bにそれぞれ当接させると、第1電極ロール24と第2電極ロール25との間が診断具1における第1外部端子部3a及び第2外部端子部3eと電気抵抗部(第1電気抵抗部11、又は、第2電気抵抗部12)とを介して電気的に接続された状態となる。この状態において、第1電極ロール24及び第2電極ロール25の間を通電させると、例えば、診断具1の電気抵抗部(第1電気抵抗部11、又は、第2電気抵抗部12)に対応する電気抵抗値が穀物水分計20で検出されるようになる。ここで、例えば、診断具1の電気抵抗部の電気抵抗を乾燥籾に対応するようにしておくことで、前記検出した電気抵抗値に基づいて換算して得た含有水分値が乾燥籾に対応した値となっているかをサービスマン等が確認可能になり、穀物水分計20の動作診断をすることができる。したがって、上述の特許文献1の如き穀物水分計の複数箇所を個別に診断する必要が無くなるため、穀物水分計を簡易に動作診断することができる。
【0086】
また、穀物水分計20の動作診断を行う際、診断具1を第1電極ロール24及び第2電極ロール25に接近させると、診断具1における第1外部端子部3a及び第2外部端子部3eが第1電極ロール24及び第2電極ロール25の第1側面部24b及び第2側面部25bにそれぞれ当接する一方、弾性部材4が第1電極ロール24及び第2電極ロール25の少なくとも一方の側面(第1側面部24b及び第2側面部25bの少なくとも一方)と診断具本体2との間で挟まれて弾性変形するようになる。そうすると、穀物水分計20の動作診断の際、両電極ロール24、25が回転すると、弾性変形した弾性部材4の復元力によって第1電極ロール24及び第2電極ロール25の少なくとも一方に回転抵抗が生じるようになる。したがって、例えば、第1電極ロール24及び第2電極ロール25が電気モータ26により回転駆動される穀物水分計20において、回転する第1電極ロール24及び第2電極ロール25の間を試料穀物Sが通過する際に発生するモータ負荷によって該試料穀物Sの圧砕を判断し、該圧砕を判断した場合に試料穀物Sの含有水分値が得られるようになっている場合であっても、弾性部材4により生じた第1電極ロール24及び第2電極ロール25の少なくとも一方の回転抵抗によって穀物水分計20に試料穀物Sを圧砕したと判断させることができるようになるため、穀物水分計20を確実に動作診断することができる。
【0087】
また、診断具1を第1電極ロール24及び第2電極ロール25に接近させると、診断具1の第1外部端子部3a及び第2外部端子部3eが第1電極ロール24及び第2電極ロール25に押圧されるとともに第1外部端子部3a及び第2外部端子部3eの第1可動ピン3b及び第2可動ピン3gが第1スプリング3d及び第2スプリング3hの付勢力に抗して後退して第1可動ピン3b及び第2可動ピン3gと電気抵抗部(第1電気抵抗部11、又は、第2電気抵抗部12)とが導通状態になる。一方、第1電極ロール24及び第2電極ロール25の第1側面部24b及び第2側面部25bに対する診断具1の押圧力を弱めるか、或いは、該第1側面部24b及び第2側面部25bから診断具1を離間させると、第1スプリング3d及び第2スプリング3hの復元力によって第1可動ピン3b及び第2可動ピン3gが初期位置に戻るまで前進するようになり、第1可動ピン3b及び第2可動ピン3gと電気抵抗部(第1電気抵抗部11、第2電気抵抗部12)とが非導通状態になる。したがって、別途スイッチを設けなくても、簡易な構造により、診断具1の導通状態と非導通状態とを切替えることができる。
【0088】
また、切替部5により異なる2つの乾燥状態の乾燥籾に対応する第1電気抵抗部11と第2電気抵抗部12とを切り替えながら穀物水分計20の動作診断が行えるようになる。したがって、単一の電気抵抗により穀物水分計20の動作診断を行う場合に比べて、その診断精度を向上させることができる。
【0089】
また、穀物水分計20の開口部21aに支持プレート7を取り付けると、当該支持プレート7のガイド部材6に取り付けられた診断具本体2の第1外部端子部3a及び第2外部端子部3eの突出方向が第1電極ロール24及び第2電極ロール25の回転軸心に沿う姿勢になるとともに、第1外部端子部3a及び第2外部端子部3eが穀物水分計20における第1電極ロール24の第1側面部24bと第2電極ロール25の第2側面部25bとにそれぞれ対向する姿勢になる。したがって、支持プレート7に対して診断具1を第1電極ロール24及び第2電極ロール25の第1側面部24b及び第2側面部25bに対して接近する方向に動かすだけで、簡易に穀物水分計20の動作診断を行うことができる。
【0090】
また、穀物水分計20の動作診断時において、第1電極ロール24及び第2電極ロール25の第1側面部24b及び第2側面部25bに対して診断具1の第1外部端子部3a及び第2外部端子部3eを当接させた状態で第1電極ロール24及び第2電極ロール25が回転すると、第1電極ロール24及び第2電極ロール25の回転力が第1外部端子部3a及び第2外部端子部3eを介して診断具本体2にも作用し、該診断具本体2を下方若しくは側方に動かそうとする。このような場合であっても、当該診断具本体2を下方に動かそうとする力がガイド部材6の底壁部6aにより受け止められるようになるとともに、診断具本体2を側方に動かそうとする力がガイド部材6の右側壁部6b及び左側壁部6cにより受け止められるようになる。したがって、穀物水分計20の診断の際、第1電極ロール24及び第2電極ロール25が回転しても、その回転力をガイド部材6により確実に受け止めることができるようになり、診断作業を行うサービスマン等に過剰な負担が加わるのを防止できる。
【0091】
また、支持プレート7が透明部材で形成されているので、穀物水分計20の動作診断の際、第1電極ロール24及び第2電極ロール25が正常に回転しているか、或いは、診断具1の第1外部端子部3a及び第2外部端子部3eが第1電極ロール24及び第2電極ロール25の第1側面部24b及び第2側面部25bに適切に押圧されているか等について、穀物水分計20の外部から支持プレート7を介して容易に視認することができるようになる。したがって、第1外部端子部3a及び第2外部端子部3eが第1電極ロール24及び第2電極ロール25の第1側面部24b及び第2側面部25bに適切に押圧できていない等の理由によって、穀物水分計20の動作診断を適切に行うことができないといった事態が発生するのを回避することができる。
【0092】
なお、本発明の実施形態では、診断具1は、1つの弾性部材4を備えていたが、2以上の弾性部材を備えてもよく、或いは、弾性部材を備えなくてもよい。
【0093】
また、本発明の実施形態では、診断具1における弾性部材4は、第1電極ロール24の第1側面部24b及び第2電極ロール25の第2側面部25bの両方に接触可能に構成されていたが、いずれか一方の電極ロールの側面部にのみ接触可能としてもよい。
【0094】
また、本発明の実施形態では、外部端子部3が、第1筒体3b及び第2筒体3f、第1可動ピン3c及び第2可動ピン3g、第1スプリング3d及び第2スプリング3hを備えていたが、これらを備えない外部端子部としてもよい。
【0095】
また、本発明の実施形態では、診断具本体2は、第1電気抵抗部11及び第2電気抵抗部12を備えるようにしたが、いずれか一方のみ備えるようにしてもよく、或いは、さらに電気抵抗部を追加して3つ以上の電気抵抗部を備えるようにしてもよい。
【0096】
また、本発明の実施形態では、第1電気抵抗部11及び第2電気抵抗部12は、固定抵抗器とされていたが、電気抵抗を任意に変更可能な可変抵抗器としてもよく、或いは、1つの可変抵抗器のみ備えるようにしてもよい。
【0097】
また、本発明の実施形態では、第1電気抵抗部11及び第2電気抵抗部12は、診断具本体2の内部に収容されていたが、診断具本体2の外部に一部が露出するように設けられてもよく、或いは、診断具本体2の外面に設けられてもよい。
【0098】
また、本発明の実施形態では、ガイド部材6を備えていたが、該ガイド部材6を備えないようにしてもよい。
【0099】
また、本発明の実施形態では、支持プレート7は、第1固定具セット9a及び第2固定具セット9eを用いて穀物水分計20の開口部21aに取り付けられていたが、支持プレート7における一対の第3雌螺子部21cに対応する位置に一対の孔部を設け、当該一対の孔部に一対の雄螺子をそれぞれ挿通した状態において、該一対の雄螺子を一対の第3雌螺子部21cにそれぞれ螺合することにより、支持プレート7を開口部21aの開口縁21bに螺子止め固定してもよい。
【0100】
また、本発明の実施形態では、支持プレート7を備えていたが、該支持プレート7を備えないようにしてもよい。また、支持プレート7が透明部材で形成されていたが、透明部材以外の部材で形成されてもよい。
【0101】
また、本発明の実施形態では、穀物水分計20の動作診断を行う際、第1電気抵抗部11及び第2電気抵抗部12の両方について診断していたが、いずれか一方のみ診断するようにしてもよい。
【0102】
また、本発明の実施形態では、穀物乾燥機13は、電圧センサ15を備えるようにしていたが、電圧センサ15の代わりに、電流センサを備えて、該電流センサの検出値に基づいて、電気抵抗値の算出及び含有水分値の換算を行うようにしてもよい。
【0103】
また、本発明の実施形態では、穀物水分計20の動作診断を行う際、
図5のステップS9において、第1含有水分値WC1及び第2含有水分値WC2がいずれも所定の範囲内であるか否かを判断するようにしていたが、診断具1が第1状態及び第2状態にセットされた際における電圧センサ29の各検出値をディスプレイ14に表示させ、該表示された電圧センサ16の各検出値を確認したサービスマン等が該各検出値のいずれもが所定の範囲内であるか否かを判断することにより、穀物水分計20の動作診断をするようにしてもよく、或いは、第1含有水分値WC1、第2含有水分値WC2、及び電圧センサ16の各検出値(第1状態及び第2状態にセットされた際の各検出値)のいずれもが所定の範囲内であるか否かを判断するようにしてもよい。
【0104】
また、本発明の実施形態では、穀物乾燥機13のディスプレイ14に第1含有水分値WC1及び第2含有水分値WC2等を表示するようにしていたが、穀物水分計20にディスプレイが備えられている場合は、該穀物水分計20のディスプレイに第1含有水分値WC1及び第2含有水分値WC2等を表示するようにしてもよい。
【0105】
また、本発明の実施形態では、水分計20は、穀物乾燥機13に備え付けられていたが、穀物乾燥機以外の装置に備え付けられてもよく、或いは、穀物乾燥機等の装置に備え付けでなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、穀物水分計の動作診断の際に用いられる穀物水分計の診断具に適している。
【符号の説明】
【0107】
1 診断具
2 診断具本体
2c 右側面部(側面部)
2d 左側面部(側面部)
2f 底面部
3 外部端子部
4 弾性部材
5 切替部
6 ガイド部材
6a 底壁部
6b 右側壁部(側壁部)
6c 左側壁部(側壁部)
7 支持プレート
3b 第1筒体(筒体)
3c 第1可動ピン(可動ピン)
3d 第1スプリング(付勢部材)
3f 第2筒体(筒体)
3g 第2可動ピン(可動ピン)
3h 第2スプリング(付勢部材)
11 第1電気抵抗部(電気抵抗部)
12 第2電気抵抗部(電気抵抗部)
20 穀物水分計
21a 開口部
S 試料穀物