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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083132
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】迷光監視システムおよび迷光監視方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/74 20060101AFI20230608BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20230608BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20230608BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20230608BHJP
   G03B 21/26 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
H04N5/74 Z
B60R11/02 C
G03B21/00 D
G03B21/14 Z
G03B21/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197309
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】新保 康夫
【テーマコード(参考)】
2K203
3D020
5C058
【Fターム(参考)】
2K203FA51
2K203FA74
2K203FA80
2K203FB07
2K203GB36
2K203GB38
2K203GB64
2K203GB69
2K203GC32
2K203GC39
2K203GC40
2K203KA54
2K203KA84
2K203KA88
2K203MA11
3D020BA04
3D020BC04
3D020BC07
3D020BE03
5C058BA35
5C058EA02
(57)【要約】
【課題】プロジェクタからの投影光が本来の正常な位置に正確に照射されていない状況を把握可能な「迷光監視システムおよび迷光監視方法」を提供する。
【解決手段】プロジェクタ102から発せられる投影光が照射されるべき所定正常領域の周辺の所定位置に設置され、当該所定位置に照射される光を検知する光センサ11と、光センサ11に対して有線または無線で接続された制御装置12とを備え、制御装置12が、光センサ11による検知信号に基づいて、プロジェクタ102からの投影光が所定正常領域に正確に照射されていないことによる迷光の発生を検知する機能を備えることにより、プロジェクタ102からの投影光が所定正常領域に正確に照射されていない場合に、光センサ11によってプロジェクタ102からの投影光が検知されるようにして、プロジェクタ102からの投影光が迷光となっている状況を把握できるようにする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロジェクタから発せられる投影光が照射されるべき車内の所定正常領域の周辺の所定位置に設置され、上記所定位置に照射される光を検知する光センサと、
上記光センサに対して有線または無線で接続された制御装置とを備え、
上記制御装置は、上記光センサによる検知信号に基づいて、上記プロジェクタからの投影光が上記所定正常領域に正確に照射されていないことによる迷光の発生を検知する迷光検知部を備えた
ことを特徴とする迷光監視システム。
【請求項2】
上記制御装置は、上記迷光の発生が上記迷光検知部により検知された場合に、異常発生の報知を行う異常報知部を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の迷光監視システム。
【請求項3】
上記異常報知部は、異常発生のメッセージを示す画像が上記プロジェクタから上記所定正常領域に投影されるように制御することを特徴とする請求項2に記載の迷光監視システム。
【請求項4】
上記制御装置は、上記迷光の発生が上記迷光検知部により検知された場合に、上記プロジェクタによる上記投影光の出力状態を制御する投影光制御部を更に備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の迷光監視システム。
【請求項5】
上記投影光制御部は、上記投影光の出力が停止するように制御することを特徴とする請求項4に記載の迷光監視システム。
【請求項6】
上記投影光制御部は、上記投影光の出力強度が低下するように制御することを特徴とする請求項4に記載の迷光監視システム。
【請求項7】
車両の窓の上部位置に設定された調光シートを更に備え、
上記制御装置は、上記迷光の発生が上記迷光検知部により検知された場合に、上記調光シートを透光状態から遮光状態に切り替えるように制御する調光制御部を更に備えた
ことを特徴とする請求項1または2に記載の迷光監視システム。
【請求項8】
上記所定正常領域が天井面に設置され、上記プロジェクタが上記所定正常領域よりも後方位置に設置されており、
上記光センサは、左右のピラーの上部位置、ルームミラーが取り付けられている位置、および上記所定正常領域の後方側周辺の天井位置の少なくとも1箇所の車内壁面に設置されている
ことを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の迷光監視システム。
【請求項9】
上記光センサの周囲に設置された遮光壁を更に備え、
上記遮光壁は、入光可能な開口部と、上記開口部とは異なる方向からの入光を遮断する遮光面とを有し、上記プロジェクタの光源方向に上記開口部が向くように設置されている
ことを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載の迷光監視システム。
【請求項10】
上記プロジェクタは、太陽光と識別可能な分光特性を有する光を発する光源を有し、
上記迷光検知部は、上記光センサによる検知信号に基づいて分光特性を解析し、当該解析した分光特性に基づいて識別される上記光源からの投影光に基づいて、上記迷光の発生を検知する
ことを特徴とする請求項1~9の何れか1項に記載の迷光監視システム。
【請求項11】
上記制御装置は、昼間の時間帯または夜間の時間帯の何れであるかを検出する昼夜検出部を更に備え、
上記迷光検知部は、上記昼夜検出部による検出結果に応じて、上記迷光が発生しているか否かの検知閾値を変更する
ことを特徴とする請求項1~10の何れか1項に記載の迷光監視システム。
【請求項12】
上記昼夜検出部は、上記プロジェクタとは別の車載表示装置における表示出力の強度を調整する調光装置による調光状態を示す情報に基づいて、上記昼間の時間帯または上記夜間の時間帯の何れであるかを検出することを特徴とする請求項11に記載の迷光監視システム。
【請求項13】
制御装置の信号入力部が、プロジェクタから発せられる投影光が照射されるべき車内の所定正常領域の周辺の所定位置に設置されて当該所定位置に照射される光を検知する光センサによる検知信号を入力するステップと、
上記制御装置の迷光検知部が、上記光センサによる検知信号に基づいて、上記プロジェクタからの投影光が上記所定正常領域に正確に照射されていないことによる迷光の発生を検知するステップとを有する
ことを特徴とする迷光監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、迷光監視システムおよび迷光監視方法に関し、特に、車内に設置されたプロジェクタから発せられる光が本来想定される光路外に生じる迷光を監視するシステムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車内に設置されたプロジェクタを用いて、車内の所定位置に映像を投影するようにしたシステムが知られている(例えば、特許文献1~3参照)。特許文献1に記載の天体鑑賞装置では、プロジェクタを用いて、ナビゲーションシステムから取得される自車位置、方位および日時に基づいて、ガラスルーフを通して観る天体を特定し、天体に関する付加情報に関する映像をガラスルーフに投影する。
【0003】
特許文献2に記載の車両用投影装置では、曲面形状となっている車室壁面に画像を投影させると投影画像に歪みが生じることに鑑みて、プロジェクタによる投影画像を撮像し、当該撮像画像に基づいて、プロジェクタに対して投影画像の歪み補正を行う。
【0004】
特許文献3に記載の表示装置では、車両内の空間を有効活用して、より多くの情報を同時に表示可能とすることを目的として、インストルメントパネルの内部にプロジェクタを配置し、プロジェクタからの投影光が反射鏡を介して背面側からコンビネーションメータの透明樹脂カバーに照射されるようにすることで、例えば車両の状態を示す画像が透明樹脂カバーに投影されるようにする。また、プロジェクタの投影光の焦点を、透明樹脂カバーの位置に合った状態から、天井面の位置に合った状態に切り替えることで、例えば映画等の画像が天井面に投影されるようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-64889号公報
【特許文献2】特開2015-184409号公報
【特許文献3】特開2016-53622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プロジェクタからの投影光が天井面等の所定の車室壁面に正確に投影されるようにするために、プロジェクタはそのアライメント(位置や角度)を正確に調整して車内の所定の場所に取り付けられる。しかしながら、プロジェクタをいったん正確に取り付けた後、走行中の振動、経年による変形、搭乗者による意図しない接触などによって、プロジェクタの取り付けのアライメントが変わってしまうことがある。この場合、プロジェクタからの投影光が、本来想定される車室壁面に正確に投影されなくなってしまい、一部の光が車内外への迷光となる。また、プロジェクタの故障によって投影位置や投影形状が変わることにより、一部の光が車内外への迷光となることもある。
【0007】
特に、夜間において車両の窓に投影光が照射されると、車外に漏れ出した迷光が他車の運転者を幻惑させたり、歩行者や自転車等を幻惑させたりする。また、投影光が窓で反射すると、車内に照射される迷光が自車の運転者を幻惑させたり、乗員を幻惑させたりする。そのため、このような迷光の発生に対する対策が望まれる。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、プロジェクタからの投影光が本来の正常な位置に正確に照射されていない状況を把握できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明の迷光監視システムは、プロジェクタから発せられる投影光が照射されるべき車内の所定正常領域の周辺の所定位置に設置され、当該所定位置に照射される光を検知する光センサと、光センサに対して有線または無線で接続された制御装置とを備え、制御装置は、光センサによる検知信号に基づいて、プロジェクタからの投影光が所定正常領域に正確に照射されていないことによる迷光の発生を検知するようにしている。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成した本発明によれば、プロジェクタからの投影光が所定正常領域に正確に照射されていれば、所定正常領域の周辺の所定位置に設置された光センサによってプロジェクタからの投影光が検知されることはない一方で、プロジェクタからの投影光が所定正常領域に正確に照射されていなければ、光センサによってプロジェクタからの投影光が検知される。このため、本発明によれば、プロジェクタからの投影光が本来の正常な位置に正確に照射されていない状況を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の迷光監視システムを適用する映像投影システムの構成例を示す図である。
図2】本実施形態による迷光監視システムおよび映像投影システムの構成要素を示すブロック図である。
図3】本実施形態による光センサの設置位置の一例を示す図である。
図4】本実施形態による制御装置の機能構成例を示すブロック図である。
図5】各種の迷光検知例を示す図である。
図6】本実施形態による制御装置の動作例を示すフローチャートである。
図7】本実施形態による制御装置の他の機能構成例を示すブロック図である。
図8】本実施形態による迷光監視システムの他の構成例を示すブロック図である。
図9】調光シートの設置位置の一例を示す図である。
図10】迷光の誤検出を抑制するための構成の第1例を示す図であり、遮光壁の構成例を示す図である。
図11】迷光の誤検出を抑制するための構成の第2例を示す図であり、遮光壁に拡散板を設ける構成例を示す図である。
図12】迷光の誤検出を抑制するための構成の第3例を示す図であり、遮光壁に分光用フィルタを設ける構成例を示す図である。
図13】迷光の誤検出を抑制するための構成の第4例を示す図であり、制御装置の他の機能構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の迷光監視システムは、車内に設置されたプロジェクタを用いて、車内の所定位置に映像を投影するようにしたシステム(以下、映像投影システムという)に適用されるものである。図1は、本実施形態の迷光監視システムを適用する映像投影システムの構成例を示す図である。図1(a)は車両を上方から見た状態を示し、図1(b)は車両を側方から見た状態を示している。なお、図1では、映像投影システムの構成要素を、車体を透過させた状態で模式的に示している。
【0013】
図1に示すように、映像投影システムは、映像再生装置101とプロジェクタ102とを備え、当該映像再生装置101とプロジェクタ102との間がCAN(Controller Area Network)などの車載ネットワークを介して接続されている。映像再生装置101は、例えば車両前方のコンソールまたはダッシュボードに設置されている。プロジェクタ102は、例えば最後部座席の上部かつ左右方向中央の位置に設置されている。
【0014】
プロジェクタ102は、映像再生装置101により再生された任意の映像を車両の天井面に投影する。図1は、プロジェクタ102が正確なアライメント(位置や角度)で後部座席の上部位置に取り付けられて、天井面の所定正常領域NAに映像が正しく投影された状態を示している。この所定正常領域NAは、プロジェクタ102から発せられる投影光が照射されるべき本来の正しい投影領域を示している。所定正常領域NAは、車両の天井面の範囲内に収まっており、サイドウィンドウおよびフロントウィンドウの領域は含まない。プロジェクタ102は、所定正常領域NAよりも後方位置に設置され、後方から所定正常領域NAに映像を投影する。
【0015】
図2は、本実施形態による迷光監視システム10の構成要素を映像投影システム100の構成要素と共に示すブロック図である。図2に示すように、映像投影システム100は、上述したように映像再生装置101とプロジェクタ102とを備えている。一方、迷光監視システム10は、光センサ11と制御装置12とを備えている。光センサ11と制御装置12との間は、有線または無線で接続されている。制御装置12は、例えば車両前方のコンソールまたはダッシュボードに設置されている。
【0016】
光センサ11は、プロジェクタ102から発せられる投影光が照射されるべき車内の所定正常領域NAの周辺の所定位置に設置され、当該所定位置に照射される光を検知する。光センサ11の一例として、センサ位置の明るさを検知する照度センサを用いることが可能である。
【0017】
図3は、光センサ11の設置位置の一例を示す図である。図3に示すように、光センサ11は、左右のA・Bピラーの上部位置、ルームミラーが取り付けられている位置、および所定正常領域NAの後方側周辺の天井位置の車内壁面に設置されている。ここで、A・Bピラーの上部位置、ルームミラーが取り付けられている位置とは、天井面に近い位置をいう。
【0018】
以下では、左右のAピラーの上部位置に設置されているものを光センサ11AL,11ARと表記し、左右のBピラーの上部位置に設置されているものを光センサ11BL,11BRと表記し、ルームミラーが取り付けられている位置に設置されているものを光センサ11RMと表記し、所定正常領域NAの後方側周辺の天井位置に設置されているものを光センサ11RL,11RRと表記する。
【0019】
左右のA・Bピラーの上部位置に設置された4つの光センサ11AL,11AR,11BL,11BRは、所定正常領域NAに対して左方向または右方向の周辺位置に照射される光を検知する。ルームミラーの取付位置に設置された光センサ11RMは、所定正常領域NAに対して前方向の周辺位置に照射される光を検知する。所定正常領域NAの後方側周辺の天井位置に設置された光センサ11RL,11RRは、所定正常領域NAに対して後方向の周辺位置に照射される光を検知する。
【0020】
なお、ここで示した光センサ11の設置位置は一例であり、これに限定されない。また、ここに示した設置位置の全てに対して光センサ11を設置することを必須とするものではない。
【0021】
光センサ11は、光の検知信号を制御装置12に出力する。光センサ11を照度センサにより構成した場合、光センサ11は、検知した照度を示す情報を含んだ検知信号を制御装置12に出力する。制御装置12は、光センサ11から入力される検知信号に基づいて、所定正常領域NAからはみ出して照射されるプロジェクタ102からの投影光を迷光として検出する。
【0022】
図4は、制御装置12の機能構成例を示すブロック図である。図4に示すように、本実施形態の制御装置12は、機能構成として、信号入力部21、迷光検知部22および異常報知部23を備えている。これらの機能ブロック21~23は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記機能ブロック21~23は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0023】
信号入力部21は、光センサ11による検知信号を入力する。例えば、信号入力部21は、光センサ11による検知信号を所定周期で繰り返し入力する。迷光検知部22は、信号入力部21により入力された光センサ11による検知信号に基づいて、プロジェクタ102からの投影光が所定正常領域NAに正確に照射されていないことによる迷光の発生を検知する。例えば、迷光検知部22は、光センサ11の検知信号により示される照度が検知閾値より大きい場合に、迷光が発生していることを検知する。
【0024】
図5は、各種の迷光検知例を示す図である。図5(a)は、プロジェクタ102の取付角度が本来の正しい角度よりも右方向に傾いた場合を示している。この場合、プロジェクタ102からの投影光の照射領域501は、所定正常領域NAに対して右側に傾いた状態となる。このため、プロジェクタ102からの投影光が、右側のBピラーの上部位置に設置された光センサ11BRに照射される。その結果、光センサ11BRで検出される光の照度が、プロジェクタ102からの投影光が所定正常領域NAにのみ正しく照射されている場合に比べて大きくなり、検知閾値を超える。これにより、迷光検知部22は、所定正常領域NAの右側に迷光が発生していることを検知する。
【0025】
図5(b)は、プロジェクタ102の取付角度が本来の正しい角度よりも前方に傾いた場合を示している。この場合、プロジェクタ102からの投影光の照射領域502は、所定正常領域NAに対して前方に伸びて移動した状態となる。このため、プロジェクタ102からの投影光が、ルームミラーの取付位置に設置された光センサ11RMに照射される。その結果、光センサ11RMで検出される光の照度が、プロジェクタ102からの投影光が所定正常領域NAにのみ正しく照射されている場合に比べて大きくなり、検知閾値を超える。これにより、迷光検知部22は、所定正常領域NAの前方に迷光が発生していることを検知する。
【0026】
図5(c)は、プロジェクタ102に故障が発生したために、プロジェクタ102からの投影光の照射領域503が、所定正常領域NAの形状に対して歪んだ場合を示している。ここでは、所定正常領域NAの後方右側に照射領域503が膨らんでいる状態を示している。このため、プロジェクタ102からの投影光が、所定正常領域NAの後方側周辺の右側位置に設置された光センサ11RRに照射される。その結果、光センサ11RRで検出される光の照度が、プロジェクタ102からの投影光が所定正常領域NAにのみ正しく照射されている場合に比べて大きくなり、検知閾値を超える。これにより、迷光検知部22は、所定正常領域NAの後方右側に迷光が発生していることを検知する。
【0027】
異常報知部23は、迷光の発生が迷光検知部22により検知された場合に、異常発生の報知を行う。例えば、異常報知部23は、異常発生のメッセージを示す画像(以下、異常報知画像という)がプロジェクタ102から所定正常領域NAに投影されるように映像再生装置101を制御する。一例として、映像再生装置101は、異常報知部23からのメッセージ表示指示を受けて、再生される映像の中央付近に異常報知画像を重畳させた映像データを生成し、これをプロジェクタ102に供給する。
【0028】
これにより、再生映像の中央付近に異常報知画像が重畳された合成映像がプロジェクタ102により投影される。再生映像の中央付近に異常報知画像を重畳させているので、図5示す照射領域501~503に合成映像が投影されたとしても、異常報知画像は所定正常領域NAの範囲内である天井面に表示されることになる。なお、異常報知画像は、どの方向に迷光が発生しているかを示す情報を含んだものであってもよい。
【0029】
この異常報知画像を見た乗員は、プロジェクタ102からの投影光が本来の所定正常領域NAに対して正確に照射されていない状況になっていることを把握することができる。そして、プロジェクタ102の取り付けに関するアライメントを正しい状態に直したり、故障しているプロジェクタ102を修理したりするといった適切な処理をとることができる。
【0030】
なお、ここでは異常報知画像をプロジェクタ102により投影するという方法によって異常発生の報知を行う例について説明したが、報知の方法はこれに限定されない。例えば、異常発生のメッセージを示す音声または所定のアラーム音を車載スピーカから出力するようにしてもよい。
【0031】
図6は、以上のように構成した本実施形態による制御装置12の動作例を示すフローチャートである。図6に示すフローチャートは、制御装置12に電源が投入されている間は所定周期で繰り返し実行される。
【0032】
まず、信号入力部21は、光センサ11から検知信号を入力する(ステップS1)。次に、迷光検知部22は、信号入力部21により入力された光センサ11による検知信号に基づいて、所定正常領域NAの周辺に設置されている光センサ11の各位置において検知された光の照度をそれぞれ検出する(ステップS2)。そして、迷光検知部22は、照度が検知閾値より大きくなっているセンサ位置が存在するか否かを判定する(ステップS3)。
【0033】
ここで、迷光検知部22は、照度が検知閾値より大きくなっているセンサ位置が存在すると判定された場合、そのセンサ位置において迷光が発生していることを検知する(ステップS4)。この場合、異常報知部23は、例えば異常報知画像がプロジェクタ102から所定正常領域NAに投影されるように映像再生装置101を制御することにより、異常発生の報知を行う(ステップS5)。一方、何れのセンサ位置においても照度が検知閾値より大きくないと判定された場合、迷光検知部22はステップS4,S5の処理を実行しない。これにより、図6に示す1回の処理が終了する。
【0034】
なお、上記実施形態では、迷光の発生が迷光検知部22により検知された場合に、異常報知部23によって異常発生の報知を行う例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図7のように、制御装置12に代えて制御装置12Aを備える構成としてもよい。この図7において、図4に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。
【0035】
制御装置12Aは、図4に示した異常報知部23に代えて投影光制御部24を備えている。投影光制御部24は、迷光の発生が迷光検知部22により検知された場合に、映像再生装置101またはプロジェクタ102に指示を出力することにより、プロジェクタ102による投影光の出力状態を制御する。
【0036】
例えば、投影光制御部24は、投影光の出力が停止するように制御するようにしてもよい。この制御は、例えば、投影光制御部24からプロジェクタ102に対して、投影光の出力停止を指示することによって行うことが可能である。あるいは、投影光制御部24から映像再生装置101に対して、プロジェクタ102に対する映像データの出力停止を指示することによって行うようにすることも可能である。
【0037】
別の例として、投影光制御部24は、投影光の出力強度が低下するようにプロジェクタ102を制御するようにしてもよい。すなわち、プロジェクタ102は投影光の出力強度(輝度)を調整する機能を有しており、投影光制御部24はこのプロジェクタ102の出力強度調整機能に働きかける指示を出力することにより、プロジェクタ102からの投影光の出力強度を減衰させる。
【0038】
このようにすれば、プロジェクタ102が迷光を発生する状態になっていたとしても、投影光の出力停止によって迷光が発生しないようにしたり、投影光の出力強度の低下によって迷光の弊害が軽減されるようにしたりすることができる。
【0039】
ここでは、異常報知部23に代えて投影光制御部24を設ける例について説明したが、異常報知部23および投影光制御部24を併用するようにしてもよい。なお、投影光制御部24によってプロジェクタ102からの投影光の出力を停止させる場合、異常報知部23は、異常報知画像の投影によって異常発生の報知を行うことができない。よって、この場合に異常報知部23は、音声によって異常発生の報知を行う。
【0040】
また、迷光の発生が迷光検知部22により検知された場合に行う処理の別例として、例えば図8に示す構成に基づく処理を行うようにしてもよい。なお、この図8において、図2および図4に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。図8(a)は、迷光監視システム10Bおよびこれを適用する調光システム200の構成例を示す図である。図8(b)は、迷光監視システム10Bの構成要素である制御装置12Bの機能構成を示すブロック図である。
【0041】
図8(a)に示すように、調光システム200は、調光シート制御部201および調光シート202を備えている。調光シート202は、印加される電圧の状態に応じて透光状態と遮光状態とを切り替えることができるように構成された薄膜状のフィルムである。例えば、印加電圧のオン/オフによって透明/不透明を切り替えることができるようになされた液晶調光フィルムを用いることが可能である。調光シート制御部201は、調光シート202に対して印加する電圧のオン/オフを制御する。
【0042】
調光シート202は、車両の窓の上部位置に設定(貼付)されている。図9は、調光シート202の設置位置の一例を示す図である。図9に示すように、調光シート202は、フロントウィンドウの上部位置、前方から1列目の座席(Bピラーの前側)の左右にあるサイドウィンドウの上部位置、および前方から2列目の座席(Bピラーの後側)の左右にあるサイドウィンドウの上部位置に設置されている。フロントウィンドウの上部位置とは、例えば図9(a)に示すように、フロントウィンドウのAゾーン(黒い部分)である。また、サイドウィンドウの上部位置とは、例えば図9(b)に示すように、サンバイザーが存在するゾーンである。
【0043】
以下では、フロントウィンドウの上部位置に設置されているものを調光シート202FWと表記し、前方から1列目の座席(Bピラーの前側)の左右にあるサイドウィンドウの上部位置に設置されているものを調光シート202AL,202ARと表記し、前方から2列目の座席(Bピラーの後側)の左右にあるサイドウィンドウの上部位置に設置されているものを調光シート202BL,202BRと表記する。
【0044】
図8(b)に示すように、制御装置12Bは、図4に示した異常報知部23に代えて調光制御部25を備えている。調光制御部25は、迷光の発生が迷光検知部22により検知された場合に、調光シート制御部201に指示を出して調光シート202に対する印加電圧をオフからオンに切り替えることにより、調光シート202を透光状態から遮光状態に切り替えるように制御する。
【0045】
ここで、調光制御部25は、ルームミラーの取付位置に設置された光センサ11RMの検知信号に基づいて迷光の発生が迷光検知部22により検知された場合、フロントウィンドウの上部位置に設置されている調光シート202FWを遮光状態に切り替える。
【0046】
また、調光制御部25は、Aピラーの上部位置に設置された光センサ11AL,11ARの検知信号に基づいて迷光の発生が迷光検知部22により検知された場合、Bピラーの前側のサイドウィンドウの上部位置に設置されている調光シート202AL,202ARを遮光状態に切り替える。フロントウィンドウの上部位置に設置されている調光シート202FWも合わせて遮光状態に切り替えるようにしてもよい。
【0047】
また、調光制御部25は、Bピラーの上部位置に設置された光センサ11BL,11BRの検知信号に基づいて迷光の発生が迷光検知部22により検知された場合、Bピラーの後側のサイドウィンドウの上部位置に設置されている調光シート202BL,202BRを遮光状態に切り替える。Bピラーの前側のサイドウィンドウの上部位置に設置されている調光シート202AL,202ARも合わせて遮光状態に切り替えるようにしてもよい。
【0048】
調光シート202を遮光状態に切り替えることにより、迷光が車外に漏れ出すことを抑制することができる。調光シート202はウィンドウの上部位置にのみ設置されているので、調光シート202を遮光状態にしても、それ以外の部分において外界の視界を確保することが可能である。
【0049】
なお、図8では、調光制御部25が調光システム200の調光シート制御部201に指示を出することによって調光シート202に対する印加電圧を制御する例について説明したが、調光制御部25が調光シート制御部201の機能を内蔵する構成としてもよい。また、図8では、異常報知部23に代えて調光制御部25を設ける例について説明したが、異常報知部23および調光制御部25を併用するようにしてもよい。
【0050】
次に、迷光の誤検出を抑制するための構成例について説明する。光センサ11には、プロジェクタ102からの投影光だけでなく、太陽光などの周囲光も入光する。以下に説明する幾つかの例は、光センサ11に入射される太陽光に基づいて迷光が発生していると誤検出してしまうことを抑制するためのものである。
【0051】
<第1例>
第1例では、図10に示すように、光センサ11の周囲に遮光壁110を設置する。遮光壁110は、入光可能な開口部110Aと、当該開口部110Aとは異なる方向からの入光を遮断する遮光面110Bとを有し、プロジェクタ102の光源方向に開口部110Aが向くように設置される。例えば、円柱形状の上面から底面に向けて凹部を形成し、その凹部の最下部に光センサ11を配置する。これにより、円柱形状の上面の一部が開口部110Aとなり、円柱形状の側面および底面が遮光面110Bとなるようにする。そして、円柱形状の上面がプロジェクタ102の光源方向に向くようにして、遮光壁110を図3に示す各所定位置に設置する。
【0052】
このようにすれば、遮光面110Bの方向から光センサ11に向かう太陽光を遮断し、光センサ11に入光しないようにすることができる。これにより、遮光面110Bの方向から光センサ11に向かう太陽光の影響を排除してセンサ位置の照度を検出することが可能となり、光センサ11に入射される太陽光に基づいて迷光が発生していると誤検出してしまうことを抑制することができる。
【0053】
<第2例>
図10のように遮光壁110を設けても、開口部110Aの方向から光センサ11に向かう太陽光を遮断することはできない。そこで、第2例では、図11に示すように、開口部110Aと光センサ11との間に半球状の拡散板111を設け、光センサ11がプロジェクタ102の光源方向に正対するように遮光壁110を設置するようにしてもよい。このようにすれば、開口部110Aを通じて斜めの方向から光センサ11に向かう太陽光を拡散板111により拡散させて光センサ11に入射されにくくすることが可能となり、光センサ11に入射される太陽光に基づいて迷光が発生していると誤検出してしまうことを抑制することができる。
【0054】
<第3例>
第3例では、プロジェクタ102として、太陽光と識別可能な分光特性を有する光を発する光源を有するものを用いる。例えば、RGB光のみを出力するLED(Light Emitting Diode)光源またはLD(Laser Diode)光源を備えたプロジェクタ102を用いる。そして、迷光検知部22は、光センサ11による検知信号に基づいて分光特性を解析し、当該解析した分光特性に基づいて識別されるLED光源またはLD光源からの投影光に基づいて、迷光の発生を検知する。
【0055】
太陽光は、紫外線(UV)領域、可視光領域および赤外線(IR)領域を含む広い波長範囲の光を含んでいる。これに対し、LED光源またはLD光源から発せられる投影光は、赤色、緑色、青色の特定の波長の光のみを含んでいる。そのため、光センサ11による検知信号に基づいて分光特性を解析することにより、UV領域の波長の光、IR領域の波長の光、およびRGB以外の波長の光が太陽光であると判別することが可能である。そして、迷光検知部22は、このようにして判別した太陽光を除外して照度を検出する。これにより、光センサ11に入射される太陽光に基づいて迷光が発生していると誤検出してしまうことを抑制することができる。
【0056】
なお、この第3例において、図12に示すように、光センサ11の前面に、特定波長領域の光を遮断または透過させる分光用フィルタを配置するようにしてもよい。このようにすれば、太陽光に含まれる波長の光が光センサ11に入射されることを抑制することができる。
【0057】
<第4例>
第4例では、図4に示した制御装置12に代えて図13のように制御装置12Cを構成する。図13において、図4に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。図13に示すように、第4例における制御装置12Cは、迷光検知部22に代えて迷光検知部22Cを備えるとともに、昼夜検出部26を更に備えている。
【0058】
昼夜検出部26は、昼間の時間帯または夜間の時間帯の何れであるかを検出する。昼間の時間帯とは、車両周囲が明るくてヘッドライトを点灯させる必要がない時間帯をいう。夜間の時間帯とは、車両周囲が暗くてヘッドライトを点灯させる必要がある時間帯をいう。例えば、昼夜検出部26は、車両のヘッドライトが点灯している状態か否かを検出することにより、昼間の時間帯または夜間の時間帯の何れであるかを検出する。ヘッドライトの点灯/非点灯に連動してインストルメントパネル等の車両照明の点灯/非点灯が制御されるように構成されている場合、車両照明の点灯/非点灯を検出することにより、昼間の時間帯または夜間の時間帯の何れであるかを検出するようにしてもよい。
【0059】
また、ヘッドライトの点灯/非点灯に連動して、プロジェクタ102とは別の車載表示装置における表示出力の強度(輝度)が調光装置により調整されるように構成されている場合、調光装置による調光状態を示す情報に基づいて、車載表示装置の調光状態を検出することにより、昼間の時間帯または夜間の時間帯の何れであるかを検出するようにしてもよい。
【0060】
迷光検知部22Cは、昼夜検出部26による検出結果に応じて、迷光が発生しているか否かの検知閾値を変更する。例えば、迷光検知部22Cが使用する検知閾値として、第1の閾値と、それよりも大きい第2の閾値との何れかを切り替えて用いるようにする。そして、昼夜検出部26により昼間の時間帯であることが検出された場合は第2の閾値を用いる一方、夜間の時間帯であることが検出された場合は第1の閾値を用いるようにする。
【0061】
このように、第4例では、昼夜の時間帯に応じて検知閾値を切り替えて、太陽光が光センサ11に入射される可能性のある昼間の時間帯はより大きな値の第2の閾値を用いて迷光の発生を検知するようにしている。これにより、光センサ11に対して太陽光だけが入射されている正常状態のときに迷光が発生していると誤検出してしまうことを抑制することができる。
【0062】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0063】
10,10B 迷光監視システム
11 光センサ
12,12A,12B,12C 制御装置
21 信号入力部
22,22C 迷光検知部
23 異常報知部
24 投影光制御部
25 調光制御部
26 昼夜検出部
101 映像再生装置
102 プロジェクタ
110 遮光壁
110A 開口部
110B 遮光面
NA 所定正常領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13