(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083133
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】シート固定装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/08 20060101AFI20230608BHJP
【FI】
B60N2/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197310
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】593034105
【氏名又は名称】株式会社ミクニライフ&オート
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100208605
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 龍一
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 武志
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BB02
3B087BC01
(57)【要約】
【課題】レバーのワンアクションで、容易にシートを摺動させ、ガタつきなく固定することができ、かつ後付け可能なシート固定装置を提供する。
【解決手段】溝と溝の開口端部から内側に突出するように設けられた一対のフランジ部を有するレール上を摺動するシートを固定するシート固定装置であって、シートを支持するシート支持部と、シート支持部と結合し溝内部を摺動するスライダと、シート支持部に軸支されたレバーと、先端で溝の底部を押圧するロック用プッシュロッドと、ロック用プッシュロッドの先端と反対側の端部に連結する第1のトグル部材および第1の関節部を介して第1のトグル部材と一端で連結すると共に他端でシート支持部に軸支される第2のトグル部材から構成される第1のトグル機構と、第1の関節部とレバーとを連動させる連動部材と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝と前記溝の開口端部から内側に突出するように設けられた一対のフランジ部を有するレール上を摺動するシートを固定するシート固定装置であって、
前記シートを支持するシート支持部と、
前記シート支持部と結合し前記溝内部を摺動するスライダと、
前記シート支持部に軸支されたレバーと、
先端で前記溝の底部を押圧するロック用プッシュロッドと、
前記ロック用プッシュロッドの先端の反対側の端部に連結する第1のトグル部材および第1の関節部を介して前記第1のトグル部材と一端で連結すると共に他端で前記シート支持部に軸支される第2のトグル部材から構成される第1のトグル機構と、
前記第1の関節部と前記レバーとを連動させる連動部材と、を備え、
前記レバーの変位に伴い、前記連動部材が連動して変位し、前記第1のトグル機構を介して前記ロック用プッシュロッドを変位させることによって、前記スライダを押圧し前記シートのロック及びロック解除を行うことを特徴とするシート固定装置。
【請求項2】
前記レバーがロック方向に回転すると、前記連動部材は、前記第1のトグル部材と前記第2のトグル部材とのなす角度が大きくなる方向に前記第1の関節部を変位させ、前記第1のトグル部材は、前記ロック用プッシュロッドの先端を前記溝の底部へ押圧させ、前記スライダは、前記ロック用プッシュロッドの先端が前記溝の底部へ押圧する反力を受けて前記レールのフランジ部の内面に当接することを特徴とする請求項1記載のシート固定装置。
【請求項3】
前記第1の関節部は、逆関節の状態で前記第1のトグル機構をロックする一方、前記レバーがリリース方向に回転すると、前記連動部材は、前記第1のトグル部材と前記第2のトグル部材とのなす角度が小さくなる方向に前記第1の関節部を変位させると共に前記ロック用プッシュロッドの先端を前記溝の底部から離脱させ、前記第1のトグル機構のロックを解除することを特徴とする請求項1または請求項2記載のシート固定装置。
【請求項4】
溝と前記溝の開口端部から内側に突出するように設けられた一対のフランジ部を有するレール上を摺動するシートを固定するシート固定装置であって、
前記シートを支持するシート支持部と、
前記シート支持部と結合し前記溝内部を摺動するスライダと、
前記シート支持部に軸支されたレバーと、
先端で前記溝の底部を押圧するロック用プッシュロッドと、
前記ロック用プッシュロッドの先端の反対側の端部に連結する第3のトグル部材および第2の関節部を介して前記第3のトグル部材と一端で連結すると共に他端で前記シート支持部に軸支される第4のトグル部材、並びに前記第2の関節部に連結する第5のトグル部材および第3の関節部を介して前記第5のトグル部材と一端で連結すると共に他端で前記シート支持部に軸支される第6のトグル部材から構成される第2のトグル機構と、
前記第3の関節部と前記レバーとを連動させる連動部材と、を備え、
前記レバーの変位に伴い、前記連動部材が連動して変位し、前記第2のトグル機構を介して前記ロック用プッシュロッドを変位させることによって、前記スライダを押圧し前記シートのロック及びロック解除を行うことを特徴とするシート固定装置。
【請求項5】
前記レバーがロック方向に回転すると、前記連動部材は、前記第5のトグル部材と前記第6のトグル部材とのなす角度が大きくなる方向に前記第3の関節部を変位させると共に、前記第5のトグル部材が、前記第3のトグル部材と前記第4のトグル部材とのなす角度が大きくなる方向に前記第2の関節部を変位させ、前記第3のトグル部材は、前記ロック用プッシュロッドの先端を前記溝の底部へ押圧させ、前記スライダは、前記ロック用プッシュロッドの先端が前記溝の底部へ押圧する反力を受けて前記レールのフランジ部の内面に当接することを特徴とする請求項4記載のシート固定装置。
【請求項6】
前記第2の関節部および前記第3の関節部は、逆関節の状態で前記第2のトグル機構をロックする一方、前記レバーがリリース方向に回転すると、前記連動部材は、前記第5のトグル部材と前記第6のトグル部材とのなす角度が小さくなる方向に前記第3の関節部を変位させると共に、前記第5のトグル部材が、前記第3のトグル部材と前記第4のトグル部材とのなす角度が小さくなる方向に前記第2の関節部を変位させ、前記ロック用プッシュロッドの先端を前記溝の底部から離脱させ、前記第2のトグル機構のロックを解除することを特徴とする請求項4または請求項5記載のシート固定装置。
【請求項7】
前記レールのフランジ部は、前記レールの幅方向の長さが小さい幅狭部および前記レールの幅方向の長さが大きい幅広部を備え、
前記スライダは、
前記幅狭部と干渉する一方、前記幅広部に嵌合するロケータと、
前記ロケータを前記レールの内側から開口部方向に付勢する弾性体と、を備え、
前記シート支持部は、
先端で前記ロケータを押圧するロケータ用プッシュロッドと、
前記ロケータ用プッシュロッドの先端の反対側の端部および前記連動部材を連結するロケータ用連動部材と、を備え、
前記レバーがロック方向に回転すると、ロケータ用連動部材は、前記ロケータ用プッシュロッドの先端を前記ロケータから離脱させる一方、前記レバーがロック解除方向に回転すると、前記ロケータ用連動部材は、前記ロケータ用プッシュロッドの先端を前記ロケータへ押圧させることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のシート固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール上を摺動するシートを固定するシート固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、航空機や自動車などの車両シートは、シートの位置を調整ができるように下部に摺動装置が設けられている。航空機の車両シートの固定方法は、金具などを用いてフロアに各シートを固定している。また、自動車の車両シートは、座席に座りレバーを操作し、シートを前後にスライドおよび固定している。
【0003】
特許文献1では、摺動デバイスの各軌道に1つの、1対の係止アセンブリ(1a、1b)、各々が軌道の上部レールをそれぞれの下部レールに係止するのに好適な複数の係止ピン(5a、5b)を含む係止装置を備える摺動デバイスが開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、一対のロック組立体(1a、1b)を備え、ロック組立体が下側レールに対してトラックの上側レールをロックする複数のロックピン(3a、3b)を有するロック構成を装備する摺動デバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2020-526434号公報
【特許文献2】特表2020-526437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から用いられている摺動デバイスでは、一つ一つ金具などを用いて所望の位置に固定する必要がある。座席取付金具の多くは、レールの穴勘合部の可動の他に、座席のガタつきを抑えるためレール溝の底面や勘合面に一部を強く押し付け、反力でスライド全体をレールに密着させる方法をとり、押し付ける方法として、ボルト締め付け、偏芯カム、ハンドノブ締付等を用いている。特許文献1、2で開示されている摺動デバイスでは、ハンドルを用いて、座席のガタつきを抑えるためレール溝の底面や勘合面に一部を強く押し付け、反力でスライド全体をレールに密着させる方法をとっている。しかしながら、いずれも、ロックする際には、シート全体を持ち上げる以上の大きな力が必要となり、作業時の負荷が掛かるが、負荷の軽減については考慮されていない。
【0007】
また、自動車の車両シートにおいて、強力なバネでスライド部品を密着させる構造で、シートに座った状態でレバー操作できるシステムを実現しているが、車体の限られたスペースに、後付けで設置することは、想定されていないため、後付けで設置することはできない。
【0008】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、レバーのワンアクションで、容易にシートを摺動させ、ガタつきなく固定することができ、かつ後付け可能なシート固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明のシート固定装置は、溝と前記溝の開口端部から内側に突出するように設けられた一対のフランジ部を有するレール上を摺動するシートを固定するシート固定装置であって、前記シートを支持するシート支持部と、前記シート支持部と結合し前記溝内部を摺動するスライダと、前記シート支持部に軸支されたレバーと、先端で前記溝の底部を押圧するロック用プッシュロッドと、前記ロック用プッシュロッドの先端の反対側の端部に連結する第1のトグル部材および第1の関節部を介して前記第1のトグル部材と一端で連結すると共に他端で前記シート支持部に軸支される第2のトグル部材から構成される第1のトグル機構と、前記第1の関節部と前記レバーとを連動させる連動部材と、を備え、前記レバーの変位に伴い、前記連動部材が連動して変位し、前記第1のトグル機構を介して前記ロック用プッシュロッドを変位させることによって、前記スライダを押圧し前記シートのロック及びロック解除を行うことを特徴としている。
【0010】
このように、レバーの変位を、トグル機構を介してスライダに押圧力を伝達することで、少ない力でもシートを確実に固定することができる。また、シートに座った状態においても、レバーを変位させることでシートを自在に移動させ、固定することができる。
【0011】
(2)また、本発明のシート固定装置において、前記レバーがロック方向に回転すると、前記連動部材は、前記第1のトグル部材と前記第2のトグル部材とのなす角度が大きくなる方向に前記第1の関節部を変位させ、前記第1のトグル部材は、前記ロック用プッシュロッドの先端を前記溝の底部へ押圧させ、前記スライダは、前記ロック用プッシュロッドの先端が前記溝の底部へ押圧する反力を受けて前記レールのフランジ部の内面に当接することを特徴としている。
【0012】
このように、トグル機構を利用し、スライダをレールのフランジ部の内面に当接させるため、少ない力でシートを強力にロックすることができる。
【0013】
(3)また、本発明のシート固定装置において、前記第1の関節部は、逆関節の状態で前記第1のトグル機構をロックする一方、前記レバーがリリース方向に回転すると、前記連動部材は、前記第1のトグル部材と前記第2のトグル部材とのなす角度が小さくなる方向に前記第1の関節部を変位させると共に前記ロック用プッシュロッドの先端を前記溝の底部から離脱させ、前記第1のトグル機構のロックを解除することを特徴としている。
【0014】
このように、トグル機構を利用し、スライダをレールのフランジ部の内面から離脱させるため、少ない力でシートのロックを解除することができる。
【0015】
(4)また、本発明のシート固定装置は、溝と前記溝の開口端部から内側に突出するように設けられた一対のフランジ部を有するレール上を摺動するシートを固定するシート固定装置であって、前記シートを支持するシート支持部と、前記シート支持部と結合し前記溝内部を摺動するスライダと、前記シート支持部に軸支されたレバーと、先端で前記溝の底部を押圧するロック用プッシュロッドと、前記ロック用プッシュロッドの先端の反対側の端部に連結する第3のトグル部材および第2の関節部を介して前記第3のトグル部材と一端で連結すると共に他端で前記シート支持部に軸支される第4のトグル部材、並びに前記第2の関節部に連結する第5のトグル部材および第3の関節部を介して前記第5のトグル部材と一端で連結すると共に他端で前記シート支持部に軸支される第6のトグル部材から構成される第2のトグル機構と、前記第3の関節部と前記レバーとを連動させる連動部材と、を備え、前記レバーの変位に伴い、前記連動部材が連動して変位し、前記第2のトグル機構を介して前記ロック用プッシュロッドを変位させることによって、前記スライダを押圧し前記シートのロック及びロック解除を行うことを特徴としている。
【0016】
このように、レバーの変位を、トグル機構を介してスライダに押圧力を伝達することで、少ない力でもシートを確実に固定することができる。また、シートに座った状態においても、レバーを変位させることでシートを自在に移動させ、固定することができる。
【0017】
(5)また、本発明のシート固定装置において、前記レバーがロック方向に回転すると、前記連動部材は、前記第5のトグル部材と前記第6のトグル部材とのなす角度が大きくなる方向に前記第3の関節部を変位させると共に、前記第5のトグル部材が、前記第3のトグル部材と前記第4のトグル部材とのなす角度が大きくなる方向に前記第2の関節部を変位させ、前記第3のトグル部材は、前記ロック用プッシュロッドの先端を前記溝の底部へ押圧させ、前記スライダは、前記ロック用プッシュロッドの先端が前記溝の底部へ押圧する反力を受けて前記レールのフランジ部の内面に当接することを特徴としている。
【0018】
このように、トグル機構を利用し、スライダをレールのフランジ部の内面に当接させるため、少ない力でシートを強力にロックすることができる。
【0019】
(6)また、本発明のシート固定装置において、前記第2の関節部および前記第3の関節部は、逆関節の状態で前記第2のトグル機構をロックする一方、前記レバーがリリース方向に回転すると、前記連動部材は、前記第5のトグル部材と前記第6のトグル部材とのなす角度が小さくなる方向に前記第3の関節部を変位させると共に、前記第5のトグル部材が、前記第3のトグル部材と前記第4のトグル部材とのなす角度が小さくなる方向に前記第2の関節部を変位させ、前記ロック用プッシュロッドの先端を前記溝の底部から離脱させ、前記第2のトグル機構のロックを解除することを特徴としている。
【0020】
このように、トグル機構を利用し、スライダをレールのフランジ部の内面から離脱させるため、少ない力でシートのロックを解除することができる。
【0021】
(7)また、本発明のシート固定装置において、前記レールのフランジ部は、前記レールの幅方向の長さが小さい幅狭部および前記レールの幅方向の長さが大きい幅広部を備え、前記スライダは、前記幅狭部と干渉する一方、前記幅広部に嵌合するロケータと、前記ロケータを前記レールの内側から開口部方向に付勢する弾性体と、を備え、前記シート支持部は、先端で前記ロケータを押圧するロケータ用プッシュロッドと、前記ロケータ用プッシュロッドの先端の反対側の端部および前記連動部材を連結するロケータ用連動部材と、を備え、前記レバーがロック方向に回転すると、前記ロケータ用連動部材は、前記ロケータ用プッシュロッドの先端を前記ロケータから離脱させる一方、前記レバーがリリース方向に回転すると、前記ロケータ用連動部材は、前記ロケータ用プッシュロッドの先端を前記ロケータへ押圧させることを特徴としている。
【0022】
これにより、所望の位置でシートを1次固定することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、本実施形態によれば、レバーのワンアクションで、容易にシートを摺動させ、ガタつきなく固定することができるシート固定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1の構成を有するシート固定装置の概略構成を示す図である。
【
図2】(a)、(b)は、スライダの概略構成を示す斜視図と側面図である。
【
図3】第1の構成を有するシート固定装置1のレバー113bの部分を拡大した図である。
【
図4】第2の構成を有するシート固定装置の概略構成を示す図である。
【
図5】(a)~(c)は、トグル機構を示す図である。
【
図6】トグル機構において、2つのリンクがなす角度(θ)により、出力される力(kg)の測定結果を示す図である。
【
図8】(a)、(b)は、シートが固定された(ロックされた)状態を示すシート固定装置の側面図と、ロック構造の断面図である。
【
図9】(a)、(b)は、シートがフリー(ロックが解除された)状態を示すシート固定装置の側面図と、ロック構造の断面図である。
【
図10】(a)、(b)は、シートがロック解除され、レールをスライドしている状態を示すシート固定装置の側面図と、ロック構造の断面図である。
【
図11】(a)、(b)は、シートを所望の位置に固定するための1次固定待機の状態を示すシート固定装置の側面図と、ロック構造の断面図である。
【
図12】(a)、(b)は、シートが1次固定された(ロックされた)状態を示すシート固定装置の側面図と、ロック構造の断面図である。
【
図13】(a)、(b)は、シートが固定された(ロックされた)状態を示すシート固定装置の側面図と、ロック構造の断面図である。
【
図14】(a)、(b)は、
図8の状態におけるロケータ、ロックピン、およびレールの状態を示す図、および(a)のa0-a0における断面図である。
【
図15】(a)、(b)は、
図9の状態におけるロケータ、ロックピン、およびレールの状態を示す図、および(a)のa1-a1における断面図である。
【
図16】(a)、(b)は、
図12の状態におけるロケータ、ロックピン、およびレールの状態を示す図、および(a)のa2-a2における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
[1.シート固定装置の構成]
[1]第1の構成
図1は、第1の構成を有するシート固定装置の概略構成を示す図である。
図2(a)、(b)は、スライダの概略構成を示す斜視図と側面図である。
図3は、第1の構成を有するシート固定装置1のレバー113bの部分を拡大した図である。また、
図14~
図16は、車両等に取付けられるレール51と本ロック構造の態様を示した図である。
【0026】
シート固定装置1は、車両等に取付けられるレール51に設けられた溝53と溝53の開口端部53aから内側に突出するように設けられた一対のフランジ部55を有するレール51上を摺動するシートを固定するシート固定装置であって、シートを支持するシート支持部111、1つ以上設けられたレバー113a、113b、レバーストッパー114a、114b、ロック用プッシュロッド115、ロケータ用プッシュロッド117、第1のトグル機構119、連動部材121、ロケータ用連動部材122、およびスライダ123を備える。シート支持部111は、シート支持台111a、シート側面板111bおよびシート支持枠111cから構成され、それぞれボルト等の固定金具で固定されている。
【0027】
シート固定装置が摺動するレール51は、溝53を有しており、溝53の幅方向(レールの幅方向)の両側にそれぞれ内側方向に突出するフランジ部55を有する。すなわち、フランジ部55は、レールの幅方向の長さが小さい幅狭部59およびレール51の幅方向の長さが大きい幅広部57を備える。幅広部57は、本明細書では、例えば、φ20mmとする。
【0028】
シート固定装置1を構成する各要素について説明する。レバー113a、113bは、シート支持部111に軸支され、点Aを中心に回転できるように、2つのレバーが互いに連動するように設けられている。一方のレバーを矢印R方向へ回転させると、もう一方のレバーも矢印R方向へ回転する。また、一方のレバーを矢印F方向へ回転させると、もう一方のレバーも矢印F方向へ回転する。本実施形態では、2つのレバーのうち、1つのレバーを回転させた場合を一例として説明するが、前述した通り、2つのレバーは連動するように設けられているため、どちらのレバーを操作しても同様の動きをする。なお、シート固定装置1が有するレバーの数は、2つに限定されない。シート固定装置1が有するレバーの数は、1つであってもよい。
【0029】
スライダ123は、ガイドローラー21、ロケータ23、弾性体25、ロックピン27を備える。ガイドローラー21は、スライダ123の端部に設けられたレール51内をスライドするための車輪(ベアリングを有する)である。ロケータ23は、スライダ123のもう一方の端部に設けられた上下に可動するアーム22の先端に設けられた円盤状のロック機構であり、円盤状の部分がレール51の幅広部57に嵌合することでシート本体の位置決めをすることが可能となっている。本実施形態では、ロケータ23は、レール51の幅広部57に合わせ、φ20mmの円板であるが、これに限定されない。レール51の幅広部57のサイズ、形状と実質的に同じであればよい。
【0030】
弾性体25は、アーム22の根本部分の下部に設けられ、ロケータ23が下方へ動くことにより押圧され、上方(レール51の開口方向)へ付勢力を生じる。弾性体25は、ウレタンゴムを使用しているが、弾性を有する部材であればよく、ウレタンゴムに限定されない。ゴム部材の他、バネ部材であってもよい。
【0031】
ロックピン27は、シートを固定するためのロック機構である。ロックピンは、φ10mmで形成され、ロック時には、レール51の溝53の底部53bを押圧し、シートを固定する。ロックピンのサイズ(径)は、φ10mmに限定されない。
【0032】
このように構成されたスライダ123は、シート支持部111と結合し、ロック解除時はレール51の溝53内部を摺動し、ロック時はレール51の溝53内部(フランジ部55の内面)に当接する。なお、ロックピン27ではなく、スライダ123に貫通孔を有し、貫通孔にロック用プッシュロッド115を挿入し、ロック用プッシュロッド115が直接レール51の溝53の底部53bを押圧し、レール51の溝53内部に当接させてもよい。本実施形態に係るシート固定装置では、シート支持台111aの底部に、ロケータ23が向き合うように2つのスライダ123が設置され、
図2(a)、(b)に示すように、シート支持部111とスライダ123は、ボルト73で固定されている。
【0033】
ロック用プッシュロッド115は、先端でスライダ123のロックピン27を押圧する。押圧されたスライダ123のロックピン27は、レール51の底部を、200kg重~300kg重の力で押圧する。一方、ロック用プッシュロッド115が、スライダ123のロックピン27から離脱すると、それと共に、ロック用プッシュロッド115に押圧されていたスライダ123のロックピン27もレール51の底部から離脱する。
【0034】
ロケータ用プッシュロッド117は、先端でスライダ123のロケータ23を押圧する。押圧されたスライダ123のロケータ23は、レール51の幅広部57との嵌合が解除される。ロケータ用プッシュロッド117が、ロケータ23から離脱すると、ロケータ用プッシュロッド117に押圧されていたロケータ23は、弾性体25の付勢力によってレール51の長手方向(
図1において、図面に対し左右方向)に対し実質的に平行となる水平状態へ戻り、レール51の幅広部57の位置で嵌合する。
【0035】
第1のトグル機構119は、ロック用プッシュロッド115の先端の反対側の端部に連結する第1のトグル部材119a、および第1の関節部119bを介して第1のトグル部材119aと一端で連結すると共に他端の点aでシート支持部111に軸支される第2のトグル部材119c、から構成される。第2のトグル部材119cは、第1の関節部119bと反対側の端部は、点aにおいてシート支持部111に固定(軸支)されている。連動部材121は、第1の関節部119bとレバー113a、113bとを連動させる。また、ロケータ用連動部材122は、第4の関節部127において屈曲または伸展ができるように構成されており、連動部材121の第1の関節部119bと反対側の第4の関節部127を連結する。ロケータ用連動部材122は、連動部材121およびロケータ用プッシュロッド117と連動する。
【0036】
このような構造を有することにより、例えば、レバー113a、113bをロック(R)方向へ回転させると、連動部材121は、レバー113a、113bから
図1において、図面に対して右方向の力を受け、第1のトグル部材119aと第2のトグル部材119cのなす角度が大きくなる方向(
図1において、図面に対し右方向)に第1の関節部119bを変位させ、第1のトグル部材119aは、ロック用プッシュロッド115を下方(
図1において、図面に対し下方向)へ動かし、同時に、連動部材121は、第4の関節部127を
図1において、図面に対して右方向に変位させ、ロケータ用連動部材122を屈曲させてロケータ用プッシュロッド117を上方(
図1において、図面に対し上方向)へ動かす。それにより、ロック用プッシュロッド115の先端で、スライダ123のロックピン27を押圧し、ロケータ用プッシュロッド117をロケータ23から離脱させる。
【0037】
ロック用プッシュロッド115の先端で押圧されたスライダ123のロックピン27は、レール51の溝53の底部53bを押圧し、スライダ123自体は、レール51の溝53の底部53bへ押圧する反力を受けて、レール51のフランジ部55の内面に当接する。ロックピン27が、レール51の底部を、200kg重~300kg重の力で押圧する反力を受けることから、スライダ123はレール51のフランジ部55の内面に200kg重~300kg重の力で押圧されることとなる。これにより「がた(ガタつき)」をなくし、シートをレール51に固定することが可能となる。また、ロケータ用プッシュロッド117から離脱したスライダ123のロケータ23は、弾性体25の付勢力によってレール51の長手方向(
図1において、図面に対し左右方向)に対し実質的に平行となる水平状態へ戻り、レール51の幅広部57の位置に嵌合する。このとき、第1の関節部119bは、第1のトグル部材119aと第2のトグル部材119cのなす角度が180度を超えた「逆関節の状態」となり、レバー113bがレバーストッパー114aに当接することで固定される。これにより、第1のトグル機構119がロックされ、ロックピン27がレール51の底部を押圧した状態を維持するため、シートをレール上に「がた」がなくなった状態で固定することが可能となる。また、レバー113bがロック(R)方向へ回転した際に、レバー113bがレバーストッパー114aに当接することで、第1の関節部119bが「逆関節の状態」で固定されると述べたが、前述した通り、2つのレバー113a、113bは連動するように設けられているため、どちらのレバーを操作しても同様の動きをする。
【0038】
第1の関節部119bは、逆関節の状態で第1のトグル機構119をロックする一方、レバー113a、113bがロック解除(F)方向へ回転すると、連動部材121は、第1のトグル部材119aと第2のトグル部材119cとのなす角が小さくなる方向(
図1において、図面に対し左方向)に第1の関節部119bを変位させると共に、ロック用プッシュロッド115の先端を持ち上げる。そして、ロック用プッシュロッド115により押圧されていたロックピン27も持ち上がり、ロックピン27の先端がレール51の溝53の底部53bから離脱される。それにより、スライダ123自体は、レール51のフランジ部55の内面から離れる。また、同時に、連動部材121は、第4の関節部127を
図1において、図面に対して左方向に変位させ、ロケータ用連動部材122を伸展させてロケータ用プッシュロッド117を下方へ移動させ、ロケータ用プッシュロッド117の先端がスライダ123のロケータ23を押圧し、レール51の幅広部57との嵌合を解除する。これにより、第1のトグル機構119のロックを解除し、シートがレール上をスライドする。さらに、レバー113bがロック解除(F)方向に回転した際に、レバー113bがレバーストッパー114bに当接し、レバー113bが回転しすぎないよう、可動範囲を規制する。前述した通り、2つのレバー113a、113bは連動するように設けられているため、どちらのレバーを操作しても同様の動きをする。
【0039】
以上説明したように、シート固定装置は、トグル機構を利用した構造を有することにより、シートのロック、ロック解除を小さい力で行うことを可能とし、さらに、レバーを固定するストッパーについても複雑な部材を要することなく、簡易な部材で製造することができ、製造コストを抑えることが可能となる。
【0040】
[2]第2の構成
次に、第2の構成を有するシート固定装置2について、図面を参照しながら説明する。上述した第1の構成を有するシート固定装置1は、1つのトグル機構を用いた構成であったが、第2の構成を有するシート固定装置2は、2つのトグル機構を有する。なお、スライダ、シート固定装置が摺動するレールの構成については、第1の構成と重複するため、本構成では説明は省略する。
【0041】
図4は、第2の構成を有するシート固定装置2の概略構成を示す図である。シート固定装置2は、レール51に設けられた溝53と溝53の開口端部53aから内側に突出するように設けられた一対のフランジ部55を有するレール51上を摺動するシートを固定するシート固定装置であって、シートを支持するシート支持部211、1つ以上レバー213a、213b、レバーストッパー214a、214b、ロック用プッシュロッド215、ロケータ用プッシュロッド217、第2のトグル機構219、連動部材221、ロケータ用連動部材222、およびスライダ123を備える。シート支持部211は、シート支持台211a、シート側面板211bおよびシート支持枠211cから構成され、それぞれネジ等の固定金具で固定されている。
【0042】
シート固定装置2を構成する各要素について説明する。レバー213aは点Bにおいて、レバー213bは点Cにおいて、シート支持部211にそれぞれ軸支され、2つのレバーが互いに連動するように設けられている。一方のレバーを矢印R方向へ回転させると、もう一方のレバーも矢印R方向へ回転する。また、一方のレバーを矢印F方向へ回転させると、もう一方のレバーも矢印F方向へ回転する。本実施形態では、2つのレバーのうち、1つのレバーを回転させた場合を一例として説明するが、前述した通り、2つのレバーは連動するように設けられているため、どちらのレバーを操作しても同様の動きをする。なお、シート固定装置2が有するレバーの数は、2つに限定されない。シート固定装置2が有するレバーの数は、1つであってもよい。
【0043】
ロック用プッシュロッド215は、先端でスライダ123のロックピン27を押圧する。押圧されたスライダ123のロックピン27は、レール51の底部を、200kg重~300kg重の力で押圧する。一方、ロック用プッシュロッド215が、スライダ123のロックピン27から離脱すると、それと共に、ロック用プッシュロッド215に押圧されていたスライダ123のロックピン27もレール51の底部から離脱する。
【0044】
ロケータ用プッシュロッド217は、先端でスライダ123のロケータ23を押圧する。押圧されたスライダ123のロケータ23は、レール51の幅広部57との嵌合が解除される。ロケータ用プッシュロッド217が、ロケータ23から離脱すると、ロケータ用プッシュロッド217に押圧されていたロケータ23は、弾性体25の付勢力によってレール51の長手方向(
図4において、図面に対し左右方向)に対し実質的に平行となる水平状態へ戻り、レール51の幅広部57の位置で嵌合する。
【0045】
第2のトグル機構219は、ロック用プッシュロッド215の先端の反対側の端部に連結する第3のトグル部材219a、および第2の関節部219bを介して第3のトグル部材219aと一端で連結すると共に他端の点bでシート支持部211に軸支される第4のトグル部材219c、並びに第2の関節部219bに連結する第5のトグル部材219d、および第3の関節部219eを介して第5のトグル部材219dと一端で連結すると共に他端の点cでシート支持部211に軸支される第6のトグル部材219f、から構成される。連動部材221は、第3の関節部219eとレバー213a、213bとを連動させる。また、ロケータ用連動部材222は、第3の関節部219eを介して連動部材221と連結している。ロケータ用連動部材222は、連動部材221およびロケータ用プッシュロッド217と連動される。
【0046】
このような構造を有することにより、例えば、レバー213a、213bをロック(R)方向へ回転させると、連動部材221は、第5のトグル部材219dと第6のトグル部材219fとのなす角度が大きくなる方向(
図4において、図面に対し上方向)に第3の関節部219eを変位させると共に、第5のトグル部材219dが、第3のトグル部材219aと第4のトグル部材219cとのなす角度が大きくなる方向(
図4において、図面に対し左方向)に第2の関節部219bを変位させ、第3のトグル部材219aは、ロック用プッシュロッド215の先端を下方(
図4において、図面に対し下方向)へ動かし、同時に、ロケータ用連動部材222は、ロケータ用プッシュロッド217を上方(
図4において、図面に対し上方向)へ動かす。それにより、ロック用プッシュロッド215の先端で、スライダ123のロックピン27を押圧し、ロケータ用プッシュロッド217をロケータ23から離脱させる。
【0047】
ロック用プッシュロッド215の先端で押圧されたスライダ123のロックピン27は、レール51の溝53の底部53bを押圧し、スライダ123自体は、レール51の溝53の底部53bへ押圧する反力を受けて、レール51のフランジ部55の内面に当接する。ロックピン27が、レール51の底部を、200kg重~300kg重の力で押圧する反力を受けることから、スライダ123はレール51のフランジ部55の内面に200kg重~300kg重の力で押圧されることとなる。これにより「がた」をなくし、シートをレールに固定することが可能となる。また、ロケータ用プッシュロッド217から離脱したスライダ123のロケータ23は、弾性体25の付勢力によってレールの長手方向(
図4において、図面に対し左右方向)に対し実質的に平行となる水平状態へ戻り、レールの幅広部の位置で、レールの幅広部に嵌合する。このとき、第2の関節部219bは、第3のトグル部材219aと第4のトグル部材219cのなす角度が180度を超えた「逆関節の状態」となり、レバー213bがレバーストッパー214aに当接することで第2のトグル機構219をロックすると共に、第3の関節部219eも、第5のトグル部材219dと第6のトグル部材219fのなす角度が180度を超えた「逆関節の状態」となり、第2の関節部219bと同様、レバー213bがレバーストッパー214aに当接することで第2のトグル機構219をロックされ、ロックピン27がレール51の底部を押圧した状態を維持するため、シートをレール上に「がた」がなくなった状態固定することが可能となる。また、レバー213bがロック(R)方向へ回転した際に、レバー213bがレバーストッパー214aに当接することで、第2のトグル機構219を構成する第2の関節部219bおよび第3の関節部219eが「逆関節の状態」で固定されると述べたが、前述した通り、2つのレバー213a、213bは連動するように設けられているため、どちらのレバーを操作しても同様の動きをする。
【0048】
また、第2の関節部219bおよび第3の関節部219eは、逆関節の状態で第2のトグル機構219をロックする一方、レバー213a、213bがリリース(F)方向に回転すると、連動部材221は、第5のトグル部材219dと第6のトグル部材219fとのなす角度が小さくなる方向(
図4において、図面に対し下方向)に第3の関節部219eを変位させると共に、第5のトグル部材219dが、第3のトグル部材219aと第4のトグル部材219cとのなす角度が小さくなる方向(
図4において、図面に対し右方向)に第2の関節部219bを変位させ、ロック用プッシュロッドの先端を持ち上げる。そして、ロック用プッシュロッド215により押圧されていたロックピン27も持ち上がり、ロックピン27の先端がレール51の溝53の底部53bから離脱される。それにより、スライダ123自体は、レール51のフランジ部55の内面から離れる。また、同時に、ロケータ用連動部材222は、ロケータ用プッシュロッド217を下方(
図4において、図面に対し下方向)へ動かし、ロケータ用プッシュロッド217の先端がスライダ123のロケータ23を押圧し、レール51の幅広部57との嵌合を解除する。これにより、第2のトグル機構219のロックが解除され、シートがレール上をスライドする。さらに、レバー213bがロック解除(F)方向に回転した際に、レバー213bがレバーストッパー214bに当接し、レバー213bが回転しすぎないよう、可動範囲を規制する。
【0049】
以上説明したように、シート固定装置は、トグル機構を利用した構造を有することにより、シートのロック、ロック解除を小さい力で行うことを可能とし、さらに、レバーを固定するストッパーについても複雑な部材を要することなく、簡易な部材で製造することができ、製造コストを抑えることが可能となる。
【0050】
[2.トグル機構について]
次に、トグル機構について説明する。本実施形態に係るシート固定装置では、第1の構成および第2の構成、いずれもトグル機構を有している。シート固定装置を固定する際に、ロック用プッシュロッドを用いて、固定しているが、その際、シート全体を持ち上げる以上の非常に大きな力が必要となる。トグル機構とは、2つのリンクと1つのスライダからなるリンク機構であり、倍力構造によって出力が増大する機構である。
【0051】
図5(a)~(c)は、トグル機構を示す図である。
図6は、トグル機構において、2つのリンクがなす角度(θ)により、出力される力(kg)の測定結果を示す図である。
図7は、
図6の出力結果をグラフ化した図である。
【0052】
トグル機構とは、
図5(a)~(c)に示すように、2つのリンクと1つのスライダからなるリンク機構であり、一端は固定端、もう一端はスライダの構造となっている。
図5(a)に示すように、図面に対し右方向へ力(p)が入力されると、図面に対し下方へ力(f)が出力され、スライダで構成されたリンクがスライドする。入力(p)がなくなると、重量などの反力(r)により、出力(f)とは逆方向にリンクが戻される。
【0053】
一方、
図5(c)に示すように、2つのリンクがなす角度θが180度を超える位置にストッパーを設けられた状態で、図面に対し右方向へ力(p)が入力し、2つのリンクがなす角度θが180度を超えた位置で止めても、出力(f)とは逆方向にリンクが戻されることはなく、リンクがストッパーの位置で固定された状態を維持することが可能となる。本実施形態に係るシート固定装置1、2において、レバーストッパー114a、214aがストッパーの役割を果たしている。
【0054】
また、
図6、
図7に示すように、2つのリンクのなす角度(θ)が180度に近づくにつれ、出力される力は大きくなることがわかる。特に180度近くになると、出力される力は、急激に大きくなる。本実施形態に係るシート固定装置では、このトグル機構を利用することで、ロック時に必要となるシート全体を持ち上げる以上の非常に大きな力を得ることを実現することを可能とした。
【0055】
[3.ロック構造について]
次に、本実施形態に係るシート固定装置のロック構造について、詳細に説明する。
図8~
図13は、各ロック構造の状態を示す図である。
図14~
図16は、ロック構造の各状態におけるレールとスライダの詳細を示す図である。以下、第2の構成を有するシート固定装置を用いて説明するが、第1の構成を有するシート固定装置も同様である。
【0056】
図8(a)、(b)は、シートが固定された(ロックされた)状態を示すシート固定装置の側面図と、ロック構造の断面図である。
図14(a)は、
図8の状態におけるロケータ、ロックピン、およびレールの状態を示す図であり、
図14(b)は、
図14(a)のa0-a0における断面図である。シートがロックされた状態では、
図8(a)、(b)、
図14(a)に示すように、ロケータ用プッシュロッド217は、スライダ123のロケータ23から離れ、スライダ123のロケータ23は、弾性体25の付勢力によってレール51の長手方向(スライダ123の摺動方向)に対し実質的に平行となる水平状態へ戻り、レール51の幅広部57の位置で、レール51の幅広部57に嵌合する。また、ロック用プッシュロッド215は、スライダ123のロックピン27を押圧し、押圧されたスライダ123のロックピン27は、レール51の溝53の底部53bを押圧する。そして、
図14(b)に示すように、スライダ123自体は、レール51の溝53の底部53bへ押圧する反力を受けて、レール51のフランジ部55の内面に当接する。これにより、シートがガタつくことなく、シート固定装置によってレール51上に固定される。
【0057】
図8(a)、(b)は、シートがフリー(ロックが解除された)状態を示すシート固定装置の側面図と、ロック構造の断面図である。
図15(a)は、
図8の状態におけるロケータ、ロックピン、およびレールの状態を示す図であり、
図15(b)は、
図15(a)のa1-a1における断面図である。レバーをリリース(F)方向に回転させたフリー状態では、
図8(a)、(b)、
図15(a)に示すように、ロケータ用プッシュロッド217は、スライダ123のロケータ23を押圧することで、スライダ123のロケータ23とレール51の幅広部57との嵌合が解除される。また、ロック用プッシュロッド215は、スライダ123のロックピン27を離脱し、それに伴い、スライダ123のロックピン27も、レール51の溝53の底部53bから離脱する。これにより、
図15(b)に示すように、スライダ123自体は、レール51のフランジ部55の内面から離れ、ロケータ23は、レール51の溝53内部に収まる状態となり、ロックが解除される。
【0058】
図10(a)、(b)は、シート固定装置のロックが解除され、シートがレール51をスライドしている状態を示すシート固定装置の側面図と、ロック構造の断面図である。ロック解除状態では、
図15(b)に示すように、スライダ123自体は、レール51のフランジ部55の内面から離れ、ロケータ23は、レール51の溝53内部に収まる状態となるため、レール51内をスライダ123が摺動することが可能となる。
【0059】
図11(a)、(b)は、シートを所望の位置に固定するための1次固定待機の状態を示すシート固定装置の側面図と、ロック構造の断面図である。レバーを中立の(R方向でもF方向でもない)状態にすると、
図11(a)、(b)に示すように、ロケータ用プッシュロッド217は持ち上がり、ロケータ用プッシュロッド217は、スライダ123のロケータ23から離れる。また、ロック用プッシュロッド215は下がり、スライダ123のロックピン27に当接する。ただし、1次固定待機の状態では、スライダ123のロケータ23は、レール51の幅狭部59の下にあるため、シートはまだスライド可能な状態である。
【0060】
図12(a)、(b)は、シートが1次固定された(ロックされた)状態を示すシート固定装置の側面図と、ロック構造の断面図である。
図16(a)は、
図12の状態におけるロケータ、ロックピン、およびレールの状態を示す図であり、
図16(b)は、
図16(a)のa2-a2における断面図である。
図11に示す1次固定待機の状態で、さらにシートをスライドすると、
図11(a)、(b)、
図16(a)に示すように、直近のレール51の幅広部57とスライダ123のロケータ23が嵌合する。これにより、シートが一次固定される。
【0061】
図13(a)、(b)は、シートが固定された(ロックされた)状態を示すシート固定装置の側面図と、ロック構造の断面図である。1次固定された状態から、レバーをロック(R)方向へ回転させることで、トグル機構が働き、ロケータ用プッシュロッド217は、スライダ123のロケータ23から離れ、スライダ123のロケータ23は、弾性体25の付勢力によってレール51の長手方向(スライダ123の摺動方向)に対し水平状態へ戻り、レール51の幅広部57の位置で、レール51の幅広部57に嵌合する。また、ロック用プッシュロッド215は、スライダ123のロックピン27を押圧し、押圧されたスライダ123のロックピン27は、レール51の溝53の底部53bを押圧する。そして、
図14(b)に示すように、スライダ123自体は、レール51の溝53の底部53bへ押圧する反力を受けて、レール51のフランジ部55の内面に当接する。これにより、シートがガタつくことなく、シート固定装置によってレール51上に固定される。
【0062】
以上説明したように、本実施形態によれば、レバーのワンアクションで、容易にシートを摺動させ、ガタつきなく固定することができ、かつ後付け可能なシート固定装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0063】
1、2 シート固定装置
21 ガイドローラー
22 アーム
23 ロケータ
25 弾性体
27 ロックピン
51 レール
53 溝
53a 開口端部
53b 底部
55 フランジ部
57 幅広部
59 幅狭部
111 シート支持部
111a シート支持台
111b シート側面板
111c シート支持枠
113a、113b レバー
114a、114b レバーストッパー
115 ロック用プッシュロッド
117 ロケータ用プッシュロッド
119 第1のトグル機構
119a 第1のトグル部材
119b 第1の関節部
119c 第2のトグル部材
121 連動部材
122 ロケータ用連動部材
123 スライダ
127 第4の関節部
211 シート支持部
211a シート支持台
211b シート側面板
211c シート支持枠
213a、213b レバー
214a、214b レバーストッパー
215 ロック用プッシュロッド
217 ロケータ用プッシュロッド
219 第2のトグル機構
219a 第3のトグル部材
219b 第2の関節部
219c 第4のトグル部材
219d 第5のトグル部材
219e 第3の関節部
219f 第6のトグル部材
221 連動部材
222 ロケータ用連動部材