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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083144
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】ボタンキャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/20 20060101AFI20230608BHJP
   B05B 9/04 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
B65D83/20
B05B9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197334
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000141118
【氏名又は名称】株式会社丸一
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 直樹
【テーマコード(参考)】
3E014
4F033
【Fターム(参考)】
3E014PB01
3E014PD01
3E014PE15
3E014PE17
3E014PF10
4F033DA02
4F033EA01
4F033RA02
4F033RC01
4F033RC04
4F033RC08
4F033RC16
4F033RC21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡単な構成により、広範囲に内容物を噴出することができるボタンキャップを提供する。
【解決手段】エアゾール容器の上端に設けられ、エアゾール容器に貯留された流体を噴射するためのボタンキャップ2であって、エアゾール容器に取り付け可能な取付部27と、流体を噴射方向に向かって送る通路形成部25を有する本体部21と、通路形成部25の噴射側の開口を塞ぐように設けられる覆い部と、を有し、覆い部には、互いに離間した複数の噴射口32が開口し、覆い部には、複数の噴射口32を隔てる位置に分流部が設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器の上端に設けられ、前記エアゾール容器に貯留された流体を噴射するためのボタンキャップであって、
前記エアゾール容器に取り付け可能な取付部と、流体を噴射方向に向かって送る通路形成部を有する本体部と、前記通路形成部の噴射側の開口を塞ぐように設けられる覆い部と、を有し、
前記覆い部には、互いに離間した複数の噴射口が開口し、
前記覆い部には、複数の前記噴射口を隔てる位置に分流部が設けられている、
ボタンキャップ。
【請求項2】
前記噴射方向から見たとき、二つの前記噴射口の中心点間距離dと、二つの前記中心点を通る線分方向に沿った前記分流部の長さDとの比率d/Dが1.2以上4.0以下である、請求項1に記載のノズルキャップ。
【請求項3】
前記覆い部は、前記覆い部の噴射側面に開口し、反噴射側に向かって延びる凹部を有している、請求項1に記載のボタンキャップ。
【請求項4】
前記噴射方向から見たとき、ボタンキャップは前記エアゾール容器に対して第一方向に並ぶように取り付けられており、
二つの前記噴射口が前記第一方向に沿って設けられており、二つの前記凹部が前記第一方向と直交する第二方向に向かって設けられている、請求項1から請求項3に記載のボタンキャップ。
【請求項5】
前記覆い部には、前記覆い部の噴射側面に付着した流体を前記凹部に向かって導く、前記凹部よりも浅い誘い込み部が前記噴射口の近傍から前記凹部に向かって設けられる、請求項3に記載のボタンキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボタンキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数の噴出口からエアゾール内容物を広範囲に噴出するボタンキャップを開示している。この装置では、噴出口を複数設けることによって、内容物を仮想的な錐面に沿って噴出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-205782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に係る装置は、噴出に係る機構が複雑なため改良の余地があった。
【0005】
本開示は、簡単な構成により、広範囲に内容物を噴出することができるボタンキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るボタンキャップは
エアゾール容器の上端に設けられ、前記エアゾール容器に貯留された流体を噴射するためのボタンキャップであって、
前記エアゾール容器に取り付け可能な取付部と、流体を噴射方向に向かって送る通路形成部を有する本体部と、前記通路形成部の噴射側の開口を塞ぐように設けられる覆い部と、を有し、
前記覆い部には、互いに離間した複数の噴射口が開口し、
前記覆い部には、複数の前記噴射口を隔てる位置に分流部が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示のボタンキャップによれば、簡単な構成でありながら、縦広範囲に流体を噴射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示に係るボタンキャップを搭載したエアゾール容器を示す概略図である。
図2図2は、バルブの概略断面図である。
図3図3は、エアゾール容器の上部およびボタンキャップを示す断面図である。
図4図4はノズル部を噴射側から見た正面図である。
図5図5は、図4のV-V線断面図である。
図6図6は、ノズル部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本開示の実施形態に係るボタンキャップを搭載したエアゾール容器を示す概略図である。
【0010】
本実施形態においては、ボタンキャップ2を含む噴霧装置1を説明する。図1に示したように、噴霧装置1は、ボタンキャップ2と、エアゾール容器3で構成されており、エアゾール容器3には流体が高圧状態で充填されている。噴霧装置1はボタンキャップ2を操作することによりエアゾール容器3内部の流体を、ボタンキャップ2を通じて外部に噴射することができる。本実施形態の噴霧装置1は、殺虫剤を塗布するための装置である。
【0011】
なお、以降では、略円筒状のエアゾール容器3の軸線方向が鉛直方向となるようにエアゾール容器3が配置されており、この状態のエアゾール容器3の上部にボタンキャップ2が設けられた状態を説明する。このため、以降の説明では便宜的に、エアゾール容器3の中心に対してボタンキャップ2がある方向を上方、エアゾール容器3の中心に対してボタンキャップ2と反対側を下方と定義する。
【0012】
ボタンキャップ2の説明に先立ち、ボタンキャップ2が取り付けられるエアゾール容器3のバルブ10を説明する。図2は、エアゾール容器3の上部およびバルブ10を示す断面図である。図2の左半分はバルブ10の密閉状態、図2の右半分はバルブ10の作動状態を示している。図2に示すように、バルブ10はステム11と、ハウジング12と、スプリング13と、シール部材14を有している。バルブ10は密閉状態と作動状態の二つの状態となることができる。密閉状態のバルブ10はエアゾール容器3の内部を密閉し、作動状態のバルブ10はエアゾール容器3の内部の流体を噴射できるように構成されている。
【0013】
ハウジング12は、エアゾール容器3の内部に設けられている。ハウジング12は、エアゾール容器3の開口部17を覆うように設けられている。ハウジング12は略円筒状の部材である。ハウジング12の下部には、容器側連通口15が開口している。
【0014】
ハウジング12とエアゾール容器3の外壁部とによって、それらの内側に弁室16が形成されている。弁室16は、エアゾール容器3の開口部17を介して外部と連通可能である。また弁室16は、ハウジング12の下部の容器側連通口15によって、エアゾール容器3の図示せぬ貯留領域と連通している。弁室16の内部に、ステム11の一部と、スプリング13とが収容されている。
【0015】
ステム11は、弁室16の内部に上下方向に移動可能に設けられている。ステム11は、エアゾール容器3の開口部17よりも小径の略円筒状の部材である。ステム11は、エアゾール容器3の開口部17を貫通している。ステム11の下部はエアゾール容器3の内部に位置し、ステム11の上部はエアゾール容器3の外に突出している。
【0016】
ステム11の内部には、ステム内通路11Aが形成されている。ステム11の上面には、ステム内通路11Aと外部とを連通させるキャップ側開口部11Bが開口している。ステム11の下面は閉塞されており、ステム内通路11Aとエアゾール容器3の図示せぬ貯留領域とを隔てている。ステム11の側面には、ステム内通路11Aと弁室16とを連通させる孔が開口している。
【0017】
スプリング13は、コイルばね等の弾性体で構成される。スプリング13は、弁室16内において、ステム11の下部とハウジング12との間に設けられている。スプリング13は、下方に移動してきたステム11を上方に向けて押す。
【0018】
シール部材14は、ステム11の側面に向かい合う位置で、ハウジング12の内面に固定されている。シール部材14は、弾性変形可能なゴムなどで構成される。シール部材14は、内部にステム11が貫通する略円板状の部材である。シール部材14の外周側端部はハウジング12の内面に固定されている。シール部材14の内周側端部14Aはステム11の側面に当接している。シール部材14の内周側端部14Aは、ステム11の連通口15を閉塞可能である。
【0019】
バルブ10の密閉状態において、ステム11はスプリング13によって上方に押圧され、ステム11の可動範囲の上限位置に位置している。密閉状態において、シール部材14はステム11の連通口15を閉塞している。このため、弁室16とエアゾール容器3の外部とがシール部材14で遮られ、エアゾール容器3の内部に貯留された流体は外部に流出しない。
【0020】
バルブ10の作動状態において、ステム11はボタンキャップ2によってスプリング13の弾性復元力に抗して下方に押圧され、下方に移動している。バルブ10の作動状態において、シール部材14の内周側端部14Aはステム11の移動に伴い下方に向かって弾性変形する。これにより、シール部材14の内周側端部14Aとステム11の側面との間に隙間が生じ、ステム11の連通口15が弁室16と連通し、弁室16とステム内通路11Aとが連通する。この作動状態において、エアゾール容器3の内部の高圧の流体は、弁室16、連通口15、ステム内通路11Aを通じてエアゾール容器3の外部に流出することができる。なお、ボタンキャップ2によるステム11の押下が解除されると、ステム11はスプリング13によって上方へ押し上げられ、バルブ10は密閉状態に戻る。
【0021】
次に、図3を参照しつつ、ボタンキャップ2について説明する。図3は、ボタンキャップ2の概略断面図である。ボタンキャップ2は、トリガー24を含む本体部21と、カバー部22と、保護ピース23と、取付部27と、ノズル部30を有している。バルブ10から流れてきた流体はボタンキャップ2のノズル部30から外部へ噴射される。Xは噴射方向である。ボタンキャップ2のトリガー24を操作することにより、ボタンキャップ2はバルブ10のステム11を下方へ押し下げてバルブ10を密閉状態から作動状態に変化させる。
【0022】
カバー部22は本体部21を覆う略半球状の部位である。カバー部22は、ボタンキャップ2の外観意匠性を高めている。
取付部27はカバー部22の下部に構成されている。カバー部22は、取付部27を介してエアゾール容器3の上部に取り付けられている。取付部27は、エアゾール容器3に嵌められている。
【0023】
本体部21はトリガー24と、通路形成部25とで構成されている。本体部21は、ハウジング12に対して取り付け点Pを中心に回動可能に取り付けられている。
本体部21の内部には、ステム11のステム内通路11Aと連通するキャップ内通路26が設けられている。通路形成部25は、このキャップ内通路26を形成している。キャップ内通路26は、ステム11の連通口15から上方に延びる第一通路26Aと、第一通路26Aから折れ曲がり横方向に延びる第二通路26Bで構成されている。第一通路26Aの一端には、ステム11の上部を覆う拡径部28が設けられている。第二通路26Bの端部には、ノズル部30が接続されている。エアゾール容器3から流出した流体は、このキャップ内通路26を流れてノズル部30まで運ばれる。
【0024】
トリガー24は、第二通路26Bを形成している通路形成部25から下方に延びる部位である。このトリガー24には、操作者の指を掛けることができる。操作者がトリガー24に指をかけて、図中の矢印Yで示したようにトリガー24を移動させると、ボタンキャップ2の姿勢が図3において取り付け点Pを中心に反時計方向に回転する。すると、本体部21の下面がステム11の上面を下方に押し下げる。これにより、上述したようにバルブ10が密閉状態から作動状態に変化する。
【0025】
ノズル部30から噴射された流体は噴射方向に拡散し、その一部がノズル部30の近傍に設けられたトリガー24に向かうことがある。そこで流体がトリガー24に掛けられた指に付着することを防止するために、ノズル部30の外周に、保護ピース23が設けられている。保護ピース23の少なくとも一部は、ノズル部30の噴射口32とトリガー24とを遮る位置に設けられている。
【0026】
次に図4を参照しつつ、ノズル部30について説明する。図4は、ノズル部30を噴射側から見た正面図である。図4に示したように、ノズル部30は、エアゾール容器3の長手方向に交差する噴射方向に延びる筒状の部材である。ノズル部30の内部には、噴射方向Xに延びるノズル内通路36(図3参照)が形成されている。
【0027】
ノズル部30は本体部21に嵌め込まれ、キャップ内通路26とノズル内通路36とが連通されている。ノズル部30は、キャップ内通路26から吐出された流体をノズル内通路36を介して外部に導く部位である。ノズル部30は、噴射側端部に覆い部31を有している。覆い部31は、ノズル内通路36の噴射側端部を閉塞するように設けられている板状の部品である。覆い部31は噴射口32と、分流部33と、凹部34と、誘い込み部35を有している。覆い部31の噴射側面31Aに、凹部34と誘い込み部35が設けられている。
【0028】
覆い部31には、噴射方向Xに貫通する二つの噴射口32が設けられている。ノズル内通路36は噴射口32を介して外部に連通している。二つの噴射口32は、上下方向(第一方向)に並ぶように設けられている。
【0029】
分流部33は、覆い部31のうち、ノズル内通路36を塞ぐ位置に設けられた部位である。分流部33は、二つの噴射口32の間に設けられている。分流部33はノズル内通路36を通過し、運ばれてきた流体を噴射口32に導く部位である。
【0030】
図4に示したように、凹部34は、覆い部31の噴射側面31Aに設けられた、反噴射側に延びる孔である。図5は、図4のV-V線断面図である。図5に示したように、凹部34は底面を有しており、ノズル内通路36にまで貫通していない。
図4は、覆い部31の噴射側面31Aを噴射方向から見た図である。図4に示したように図示した例では、一対の凹部34が、二つの噴射口32を挟むように設けられている。
覆い部31の噴射側面31Aを噴射方向からみると、凹部34は覆い部31の外周部に沿った形をしており、曲線で縁取られている。二つの凹部34は噴射方向から見たとき上下方向(第一方向)と直交する左右方向(第二方向)に沿って設けられている。凹部34は、覆い部31の外周縁の近傍に設けられている。
【0031】
図4および図5に示したように、誘い込み部35は、覆い部31の噴射側面31Aに設けられた、凹部34よりも浅いくぼみである。図4に示したように、覆い部31の噴射側面31Aを噴射方向からみると、誘い込み部35は凹部34と噴射口32との間に設けられている。つまり誘い込み部35は凹部34よりも噴射口32に近い位置に設けられている。
【0032】
次に、エアゾール容器3内の流体、(例えば薬剤)が噴射される際の、ノズル部30の働きについて説明する。前述したように、バルブ10から噴射された流体は本体部21に設けられたキャップ内通路26を通過し、ノズル部30へ送られる。
【0033】
ノズル内通路36を通過し、噴射方向に運ばれる流体の少なくとも一部は、分流部33にぶつかって上方および下方へ流れ、上方に設けられた噴射口32および下方に設けられた噴射口32のそれぞれから外部に吐出される。上方に設けられた噴射口32には、ノズル内通路36を通過し、直線的に運ばれて噴射方向に平行に動く流体の他、分流部33によって遮られて上方に動く流体が突入する。噴射方向に平行に動く流体のみが噴射口32に突入する場合に比べて、本実施形態のノズル部30においては、上方に設けられた噴射口32から、より上方に向かって広がるように流体が噴射される。
【0034】
同様にして、下方に設けられた噴射口32からは、より下方に向かって広がるように流体が噴射される。このようにして、本実施形態のボタンキャップ2によれば、分流部33を持たず単一の噴射口を有するボタンキャップに比べて、上下方向に広い領域に流体を噴射できる。また、二つの噴射口32が上下方向に並んで設けられているため、左右方向よりも上下方向に広い領域に流体を噴射できる。
【0035】
噴射口32は、流体の噴射範囲をより上下方向に広くすることが望ましい。そのため、図4に示す、二つの噴射口32の中心点間距離dと、二つの中心点を通る線分方向に沿った分流部33の長さDにおいて、その比率d/Dが1.2以上4.0以下となることが望ましい。比率d/Dが1.2未満の場合、噴射口32同士が離れすぎることによって各々の噴射口32から噴射される噴射範囲が上下に分かれてしまい、各々の噴射口32の間の噴霧量が少なくなる。比率d/Dが4.0を超える場合は、分流部33の幅が狭くなるため噴射口32同士が近づきすぎてしまい、各々の噴射口32から噴射される流体が合流して直進性が高くなり、上下方向に広角の噴射が難しくなる。
【0036】
また、噴射口32は、流体の噴射範囲を上下方向に広くするため、図4に示すように噴射口32の縦幅Lと横幅lの比率L/lが0.9以上4.0以下であることが望ましく、形状は略楕円形が望ましい。
比率L/lが0.9未満の場合、噴射される流体の直進性が高くなり、噴射範囲の上下方向の広がりが抑えられてしまう。また比率L/lが4.0を超える場合、噴射範囲が上下方向に広がりすぎてしまい、噴射時に過剰の薬剤を散布する可能性が高くなる。
【0037】
噴射口32の比率L/lを0.9以上4.0以下としたことにより、噴射口32から距離20cmを隔てて鉛直方向に直立させた対象物(網戸)に対して噴射したときの処理面の最大の縦幅Wと最大の横幅wの比率W/wが2.0以上7.0以下とすることができる。比率W/wが2.0以下になると円形に近い噴射パターンとなり、特に四角形状の処理面の角への噴射が困難になる。このため、網戸に薬剤を噴霧した場合、隅に薬剤を噴霧することが難しくなる。また、比率W/wが7.0以上になると、縦方向に噴霧範囲が広がりすぎて、処理時に過剰の薬剤を噴霧する可能性が高くなる。
【0038】
噴射口32から噴射される流体の平均粒子径は、図6に示すノズル内通路36の断面積Sと噴射口32の総面積sとの比率S/sによって決まり、その平均粒子径は40~170μmとなることが望ましい。噴射される流体の平均粒子径が40μmよりも小さい場合、操作者が粒子を吸入するリスクが高まり、使用感を損ねるうえに、粒子の跳ね返りや風による影響を受けやすくなるなど処理対象物に対する付着性が悪くなる可能性がある。逆に、平均粒子径が170μmよりも大きい場合、噴射口32からの液だれが発生しやすくなる他、処理面に対して薬剤が液だれしたり濡れるように付着したりすることで、跡残りによる汚れを操作者に想起させ、使用感を損ねる可能性がある。
本実施形態においては、噴射される流体の粒子径を上述した範囲に制御するため、ノズル内通路36の断面積Sと噴射口32の総面積sとの比率S/sを6.3以上19.6以下とすることが望ましい。なお、噴射距離20cmにおけるエアゾール組成物の平均粒子径(D50)は、レーザー粒度分布測定装置(東日コンピュータアプリケーションズ(株)製、LDSA-1400A)を用いて、25℃条件において20cmの位置における粒子径を測定することにより算出した。なお、測定方法は、キー・スタート平均(平均化回数3回、間隔0.60ms)とし、3回の平均値を算出することにより測定した。
【0039】
なお、流体の噴射に伴い、覆い部31の噴射側面31Aに噴射された流体が付着することがある。付着量が多くなると、覆い部31から流体が垂れてしまうことがある。そこで本実施形態のボタンキャップ2においては、覆い部31の噴射側面31Aに付着した流体を貯留する凹部34が設けられている。これにより、覆い部31から流体が垂れてしまうことを抑制できる。
【0040】
なお、覆い部31に付着した流体は自重により下方に移動するので、噴射口32の下方に凹部34を設けることが考えられる。しかしながら、噴射口32の下方に凹部34を設けてしまうと、覆い部31を含むノズル部30が上下方向に大きくなりすぎてしまう。そこで本実施形態においては、凹部34を噴射口32の左方および右方に設けている。覆い部31に付着した流体は噴射側面31Aに留まりやすく、凹部34を噴射口32の左方および右方に設けても、覆い部31に付着した流体が凹部34まで移動できることを見出したからである。このように二つの凹部34を左右方向に並んで設けたことにより、ノズル部30の大型化が抑制されている。
【0041】
なお、このように噴射側面31Aに付着した流体を凹部34に確実に導くために、本実施形態のボタンキャップ2には誘い込み部35が設けられている。噴射口32の付近に流体が多く付着しやすいため、他の部位よりもくぼんだ誘い込み部35を設け、誘い込み部35から凹部34に向かって流体を導いている。誘い込み部35を設けることにより、より液だれを抑制できる。なお誘い込み部35の底面は、平坦面であってもよいし、傾斜面であってもよいし、複数の凹凸を有する形状であってもよい。
【0042】
なお、上述した実施形態では噴射口32が二つの例を説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、三つ以上の噴射口32が設けられていてもよい。
【0043】
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0044】
1:噴霧装置
2:ボタンキャップ
3:エアゾール容器
10:バルブ
11:ステム
11A:ステム内通路
11B:キャップ側開口部
12:ハウジング
13:スプリング
14:シール部材
14A:内周側端部
15:容器側連通口
16:弁室
17:開口部
21:本体部
22:カバー部
23:保護ピース
24:トリガー
25:通路形成部
26:キャップ内通路
26A:第一通路
26B:第二通路
27:取付部
30:ノズル部
31:覆い部
31A:噴射側面
32:噴射口
33:分流部
34:凹部
35:誘い込み部
36:ノズル内通路
X:噴射方向
Y:トリガー移動方向
P:取り付け点
L:噴射口縦幅
l:噴射口横幅
S:ノズル内通路断面積
s:噴射口総面積
図1
図2
図3
図4
図5
図6