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特開2023-83163杭圧入引抜機の制御方法および杭圧入施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083163
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】杭圧入引抜機の制御方法および杭圧入施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 7/20 20060101AFI20230608BHJP
【FI】
E02D7/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197382
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】永田 浩之
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050AA12
2D050CB22
2D050EE04
2D050EE13
2D050FF04
(57)【要約】
【課題】隣り合う杭の相対位置が一定でない場合にも杭圧入引抜機を自走させて杭圧入を行うことができる杭圧入引抜機の制御方法を提供する。
【解決手段】杭圧入引抜機の制御方法は、チャック25で把持した圧入杭Pを、既設杭Pの前方において地盤に圧入する圧入工程と、クランプ11による既設杭Pの把持を解除し、クランプ11を既設杭Pより高い位置まで上昇させる上昇工程と、クランプ11の現在位置と、このクランプ11の移動先となる既設杭Pの位置と、に基づき、クランプ11の移動量を演算する移動量演算工程と、移動量演算工程における演算結果に基づいてクランプ11を移動させる移動工程と、クランプ11を下降させ、クランプ11に既設杭Pを把持させる下降工程と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧入杭を把持するチャックと、
前記チャックを昇降可能に支持するマストと、
前記マストに対して前後移動可能なサドルと、
前記サドルに移動可能に取り付けられ、既設杭を内側から把持する複数のクランプと、
を備えた杭圧入引抜機を用いた杭圧入引抜機の制御方法であって、
前記既設杭を前記クランプで把持し、前記チャックで把持した前記圧入杭を、前記既設杭の前方において地盤に圧入する圧入工程と、
前記クランプによる前記既設杭の把持を解除し、前記チャックを前記マストに対して相対的に下降させることで、前記クランプを前記既設杭より高い位置まで上昇させる上昇工程と、
前記クランプの現在位置と、このクランプの移動先となる前記既設杭の位置と、に基づき、前記クランプの移動量を演算する移動量演算工程と、
前記移動量演算工程における演算結果に基づいて前記クランプを移動させる移動工程と、
前記チャックを前記マストに対して相対的に上昇させることで、前記クランプが前記既設杭を把持可能となる位置まで前記クランプを下降させ、前記クランプに前記既設杭を把持させる下降工程と、
を有し、
前記既設杭は、前記圧入杭に隣り合う第1既設杭と、前記第1既設杭に隣り合う第2既設杭と、を含み、
複数の前記クランプのうち最も前方にある第1クランプの現在位置は、前記第2既設杭を把持する位置であり、
前記第1クランプの移動先となる前記既設杭は、前記第1既設杭である、
杭圧入引抜機の制御方法。
【請求項2】
複数の前記クランプのうち前記第1クランプに隣り合う第2クランプの現在位置は、前記第2既設杭に隣り合う第3既設杭を把持する位置であり、
前記第2クランプの移動先となる前記既設杭は、前記第2既設杭であり、
前記移動量演算工程において、前記第2既設杭の位置は、前記第1クランプの現在位置から把握される、
請求項1記載の杭圧入引抜機の制御方法。
【請求項3】
前記チャックは、前記マストに対して回転可能であり、
前記マストは、前記サドルに対して旋回可能であり、
前記移動工程において、前記演算結果に基づいて、前記チャックの回転角度および前記マストの旋回角度を調整する、
請求項1または2に記載の杭圧入引抜機の制御方法。
【請求項4】
前記移動量演算工程において、前記圧入杭を把持した前記チャックを基準とする座標から、前記移動量を演算する、
請求項1~3のうちいずれか1項に記載の杭圧入引抜機の制御方法。
【請求項5】
圧入杭を把持するチャックと、
前記チャックを昇降可能に支持するマストと、
前記マストに対して前後移動可能なサドルと、
前記サドルに移動可能に取り付けられ、既設杭を内側から把持する複数のクランプと、
を備えた杭圧入機を用いた杭圧入施工方法であって、
前記既設杭を前記クランプで把持し、前記チャックで把持した前記圧入杭を、前記既設杭の前方において地盤に圧入する圧入工程と、
前記クランプによる前記既設杭の把持を解除し、前記チャックを前記マストに対して相対的に下降させることで、前記クランプを前記既設杭より高い位置まで上昇させる上昇工程と、
前記クランプの現在位置と、このクランプの移動先となる前記既設杭の位置と、に基づき、前記クランプの移動量を演算する移動量演算工程と、
前記移動量演算工程における演算結果に基づいて前記クランプを移動させる移動工程と、
前記チャックを前記マストに対して相対的に上昇させることで、前記クランプが前記既設杭を把持可能となる位置まで前記クランプを下降させ、前記クランプに前記既設杭を把持させる下降工程と、
を有し、
前記既設杭は、前記圧入杭に隣り合う第1既設杭と、前記第1既設杭に隣り合う第2既設杭と、を含み、
複数の前記クランプのうち最も前方にある第1クランプの現在位置は、前記第2既設杭を把持する位置であり、
前記第1クランプの移動先となる前記既設杭は、前記第1既設杭である、
杭圧入施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭圧入引抜機の制御方法および杭圧入施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、杭を地盤に打ち込む杭圧入引抜機を用いた施工方法が知られている。この施工方法では、予め地盤に埋め込まれた既設杭をクランプで把持して反力を取り、杭を把持したチャックを昇降させることにより、既設杭の隣の位置に新しい杭を圧入する。杭圧入引抜機を用いた施工技術としては、杭圧入引抜機が自走しつつ杭圧入施工を行う制御方法がある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61-45023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述の杭圧入引抜機の制御方法では、隣り合う杭の中心間距離、並び方向などが一定でない場合に、杭圧入引抜機を自走させつつ杭圧入施工を行うのは容易でなかった。
【0005】
本発明の一態様は、隣り合う杭の相対位置が一定でない場合にも杭圧入引抜機を自走させて杭圧入を行うことができる杭圧入引抜機の制御方法および杭圧入施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る杭圧入引抜機の制御方法は、圧入杭を把持するチャックと、前記チャックを昇降可能に支持するマストと、前記マストに対して前後移動可能なサドルと、前記サドルに移動可能に取り付けられ、既設杭を内側から把持する複数のクランプと、を備えた杭圧入引抜機を用いた杭圧入引抜機の制御方法であって、前記既設杭を前記クランプで把持し、前記チャックで把持した前記圧入杭を、前記既設杭の前方において地盤に圧入する圧入工程と、前記クランプによる前記既設杭の把持を解除し、前記チャックを前記マストに対して相対的に下降させることで、前記クランプを前記既設杭より高い位置まで上昇させる上昇工程と、前記クランプの現在位置と、このクランプの移動先となる前記既設杭の位置と、に基づき、前記クランプの移動量を演算する移動量演算工程と、前記移動量演算工程における演算結果に基づいて前記クランプを移動させる移動工程と、前記チャックを前記マストに対して相対的に上昇させることで、前記クランプが前記既設杭を把持可能となる位置まで前記クランプを下降させ、前記クランプに前記既設杭を把持させる下降工程と、を有し、前記既設杭は、前記圧入杭に隣り合う第1既設杭と、前記第1既設杭に隣り合う第2既設杭と、を含み、複数の前記クランプのうち最も前方にある第1クランプの現在位置は、前記第2既設杭を把持する位置であり、前記第1クランプの移動先となる前記既設杭は、前記第1既設杭である。
【0007】
複数の前記クランプのうち前記第1クランプに隣り合う第2クランプの現在位置は、前記第2既設杭に隣り合う第3既設杭を把持する位置であり、前記第2クランプの移動先となる前記既設杭は、前記第2既設杭であり、前記移動量演算工程において、前記第2既設杭の位置は、前記第1クランプの現在位置から把握されることが好ましい。
【0008】
前記チャックは、前記マストに対して回転可能であり、前記マストは、前記サドルに対して旋回可能であり、前記移動工程において、前記演算結果に基づいて、前記チャックの回転角度および前記マストの旋回角度を調整することもできる。
【0009】
前記移動量演算工程において、前記圧入杭を把持した前記チャックを基準とする座標から、前記移動量を演算することが好ましい。
【0010】
本発明の一態様に係る杭圧入施工方法は、圧入杭を把持するチャックと、前記チャックを昇降可能に支持するマストと、前記マストに対して前後移動可能なサドルと、前記サドルに移動可能に取り付けられ、既設杭を内側から把持する複数のクランプと、を備えた杭圧入機を用いた杭圧入施工方法であって、前記既設杭を前記クランプで把持し、前記チャックで把持した前記圧入杭を、前記既設杭の前方において地盤に圧入する圧入工程と、前記クランプによる前記既設杭の把持を解除し、前記チャックを前記マストに対して相対的に下降させることで、前記クランプを前記既設杭より高い位置まで上昇させる上昇工程と、前記クランプの現在位置と、このクランプの移動先となる前記既設杭の位置と、に基づき、前記クランプの移動量を演算する移動量演算工程と、前記移動量演算工程における演算結果に基づいて前記クランプを移動させる移動工程と、前記チャックを前記マストに対して相対的に上昇させることで、前記クランプが前記既設杭を把持可能となる位置まで前記クランプを下降させ、前記クランプに前記既設杭を把持させる下降工程と、を有し、前記既設杭は、前記圧入杭に隣り合う第1既設杭と、前記第1既設杭に隣り合う第2既設杭と、を含み、複数の前記クランプのうち最も前方にある第1クランプの現在位置は、前記第2既設杭を把持する位置であり、前記第1クランプの移動先となる前記既設杭は、前記第1既設杭である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、隣り合う杭の相対位置が一定でない場合にも杭圧入引抜機を自走させて杭圧入を行うことができる杭圧入引抜機の制御方法および杭圧入施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態にかかる杭圧入引抜機の概略側面図である。
図2】杭圧入引抜機の自走工程の第1の例の概略説明図である。
図3】杭圧入引抜機のセンサ配置を示す概略説明図である。
図4】自走工程を自動化して行う場合の制御フローの概略図である。
図5】杭を示す模式図である。
図6】杭圧入引抜機の動作を説明する図である。
図7】杭圧入引抜機の自走工程の第2の例の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
本明細書における杭圧入引抜機の「前方」とは、施工を進める方向を示す。図1では、右側は杭圧入引抜機の前方である。左側は杭圧入引抜機の後方である。「前進」の方向は、左右方向(図1の紙面に直交する方向)の成分を含んでいてもよい。
杭としては、内側から把持可能な杭であれば特に限定されないが、例えば、鋼管杭、鋼管矢板、コンクリート杭などが挙げられる。本実施の形態では杭として鋼管杭を用いる。
【0015】
[杭圧入引抜機の概略構成]
図1は、実施の形態に係る杭圧入引抜機1の概略側面図である。図1に示すように、杭圧入引抜機1は、マスト20と、スライドフレーム12と、サドル10と、クランプ11と、チャック25と、を備える。
クランプ11は、サドル10の下部に複数設けられている。クランプ11の数は、2以上の任意の数であってよい。複数のクランプ11は、前後方向に間隔をおいて形成されている。
【0016】
図1では、クランプ11は、既に圧入されている既設の杭Pの上端部を把持し、サドル10を杭Pの上部に固定している。クランプ11は、杭Pの内側に挿入されて拡径し、杭Pの内面に押しつけられることで、杭Pを内側から把持する。複数のクランプ11は、自走工程における移動方向の前から後に(図1において右から左に)、第1クランプ11A、第2クランプ11B、および第3クランプ11Cということがある。第1クランプ11Aは、複数のクランプ11のうち最も前方にあるクランプ11である。第2クランプ11Bは、第1クランプ11Aの後方に隣り合う。第3クランプ11Cは、第2クランプ11Bの後方に隣り合う。
【0017】
図1は、既設の3本の杭Pの上端部をクランプ11で把持してサドル10を固定し、それら3本の杭Pの前方に、新しい1本の杭Pを圧入し終えた状態を示している。既設の杭は「既設杭」である。新たに圧入する杭は「圧入杭」である。クランプ11が杭Pを把持する構造は特に限定されない。
【0018】
複数のクランプ11は、サドル10に対して、水平面に沿う任意の方向に移動可能である。例えば、クランプ11は、サドル10に対して前後方向に移動することもできるし、左右方向に移動することもできる。クランプ11は、前後方向と左右方向を組み合わせた方向に移動することもできる。複数のクランプ11は、互いに独立して動作できる。
なお、複数のクランプ11のうち1または複数は、サドル10に対して固定されていてもよいが、サドル10に対して移動可能であることが好ましい。複数のクランプ11は、独立して動作してもよいし、一体的に動作してもよい。
【0019】
スライドフレーム12は、サドル10の上部に、サドル10に対して相対的に前後方向にスライド移動自在に設けられている。そのため、サドル10は、スライドフレーム12およびマスト20に対して前後方向にスライド移動可能である。
【0020】
マスト20は、スライドフレーム12の上に設けられている。マスト20は、旋回基台として機能する。マスト20は、スライドフレーム12の中央部に設けられた回転軸22を中心として、スライドフレーム12に対して回転自在(旋回自在)とされている。マスト20の回転は、例えば、マスト20の下面側に設けられたモータなどの回転駆動源(図示せず)によって行われる。マスト20は、チャック25を昇降可能に支持する。
【0021】
チャック25は、平面視において、マスト20に対して前方に設けられている。チャック25は、昇降可能とされている。チャック25は、チャックフレーム26と、ケーシングチャック27とを備える。チャックフレーム26は、昇降可能とされている。ケーシングチャック27は、チャックフレーム26に装着されている。チャック25全体(チャックフレーム26およびケーシングチャック27)は、シリンダ30の伸縮動作によって一体的に昇降する。
【0022】
ケーシングチャック27は、チャックフレーム26に対して、回転自在に装着されている。これにより、チャック25は、マスト20に対して回転可能となる。ケーシングチャック27は、全体として筒形状を有しており、ケーシングチャック27の内方には、縦方向に貫通する開口部31が形成されている。開口部31は、平面視で杭Pの断面に沿う形状とされている。開口部31には、杭Pが挿通する。
【0023】
ケーシングチャック27の内部には、固定部材が設けられている。固定部材は、油圧シリンダ(図示せず)によって、圧入対象となる杭Pを例えば外側から把持する。
【0024】
[杭圧入引抜機の自走工程]
図1および図2(A)~図2(F)を参照して杭圧入引抜機1の自走工程について説明する。図2(A)~図2(F)は、杭圧入引抜機1の自走工程の概略説明図である。
【0025】
図1および図2(A)は、複数(3本)の既設杭Pをクランプ11で把持した状態でそれら3本の杭Pの前方の地盤Gに、第1の杭P1を圧入した状態を示す。クランプ11が把持する既設杭Pの数は、例えば、2以上である。第1の杭P1は、既設杭Pの一例である。
【0026】
図2(B)に示すように、マスト20をサドル10に対して前進させ、第1の杭P1の前方において第2の杭P2(圧入杭)を地盤Gに仮圧入する(圧入工程)。「仮圧入」とは、第2の杭P2をチャック25により把持して杭圧入引抜機1を自走させることができる程度に第2の杭P2を地盤Gに圧入することである。
【0027】
第1の杭P1は、第1既設杭PAである。第1既設杭PAは、第2の杭P2(圧入杭)の後方に隣り合う。第1既設杭PAの後方に隣り合う杭Pは、第2既設杭PBである。第2既設杭PBの後方に隣り合う杭Pは、第3既設杭PCである。第3既設杭PCの後方に隣り合う杭Pは、第4既設杭PDである。
【0028】
3つのクランプ11のうち第1クランプ11Aの現在位置は、第2既設杭PBを把持する位置である。第2クランプ11Bの現在位置は、第3既設杭PCを把持する位置である。第3クランプ11Cの現在位置は、第4既設杭PDを把持する位置である。
【0029】
図2(C)に示すように、チャック25を所定の高さまで上昇させ、その状態で第2の杭P2を把持させる。このときのチャック25の高さは、以降の工程にて杭圧入引抜機1の本体を自走させるのに十分な高さであればよい。
【0030】
図2(D)に示すように、チャック25により第2の杭P2を把持した状態で、クランプ11による既設杭Pの把持を解除する。
チャック25を杭圧入引抜機1の本体(サドル10、クランプ11、スライドフレーム12およびマスト20)に対して相対的に下降させることによって、杭圧入引抜機1の本体を上昇させる(上昇工程)。杭圧入引抜機1の本体を上昇させる高さとしては、少なくとも、クランプ11の下端が既設杭Pの上端よりも上方に位置するまでの高さが必要である。
【0031】
図2(E)に示すように、第2の杭P2を把持したまま、第2の杭P2の後方において、第1の杭P1を含む既設杭P,P1を3本のクランプ11で把持することが可能な位置までサドル10をマスト20に対し前進させる(移動工程)。
【0032】
第1クランプ11Aの移動先は第1既設杭PAである。第2クランプ11Bの移動先は第2既設杭PBである。第3クランプ11Cの移動先は第3既設杭PCである。
【0033】
図2(F)に示すように、第2の杭P2を把持したまま、チャック25を杭圧入引抜機1の本体に対して相対的に上昇させることによって、杭圧入引抜機1の本体を下降させる。クランプ11は既設杭P,P1を把持可能な位置となる。この状態で、クランプ11に既設杭P,P1を把持させる(下降工程)。
【0034】
これによって、杭圧入引抜機1の自走工程の1サイクルが完了する。杭圧入引抜機1は、図2(A)~図2(F)を参照して説明した自走工程を繰り返すことで、自走しながら順次、複数の杭を圧入させることができる。
【0035】
図2(A)~図2(F)を参照して説明した杭圧入引抜機1の自走工程に関し、各工程を自動化させる技術について検討を行い、自動化に必要な各種センサの設置、当該センサの検出に基づく好適な制御方法等について検討した。
【0036】
自走工程における主要な工程を以下の1)~5)にまとめる。
1)マスト20をサドル10に対して前進させ、第1の杭P1の前方に第2の杭P2を仮圧入する工程(圧入工程)。
2)チャック25を所定の高さまで上昇させ、その状態で第2の杭P2を把持させる工程。
3)第2の杭P2を把持したまま、クランプ11の把持を解除し、クランプ11が複数の既設杭より高い位置に至るまで本体(サドル10、マスト20等)を上昇させる工程(上昇工程)。
4)第2の杭P2を把持したまま、本体後方において、既設杭P,P1を3本のクランプ11で把持することが可能な位置までマスト20に対しサドル10を前進させる工程(移動工程)。
5)第2の杭P2を把持したまま、既設杭P,P1を3本のクランプ11で把持することが可能な位置まで本体(サドル10、マスト20等)を下降させ、クランプ11に既設杭Pを把持させる工程(下降工程)。
【0037】
前記各工程に関し、工程の自動化を図るため、必要なセンサを杭圧入引抜機1に設け、それら各種センサを用いた制御方法について検討を行った。
【0038】
工程1)については、マスト前後センサを設け、マスト20の前後位置(またはサドル10の前後位置)を把握する。これにより、杭圧入引抜機1は、マスト20とサドル10との間の相対的な位置関係に基づき、マスト20を前後方向に所定の移動量だけ移動(前進あるいは後退)させることができる。工程1では、サドル10に対しマスト20を前進させる。マスト前後センサとしては、ストロークセンサ、近接スイッチ、リミットスイッチ等が挙げられる。センサの種類によっては、マスト20およびサドル10の停止位置を予め定めておくこともできる。
【0039】
工程2)については、チャック上下センサを設け、本体(マスト20等)に対するチャック25の上下方向位置を把握する。これにより、杭圧入引抜機1は、本体とチャック25との間の相対的な位置関係に基づき、本体が固定された状態でチャック25を上下方向に所定の移動量だけ移動(上昇あるいは下降)させることができる。
【0040】
工程3)については、前述のチャック上下センサを用い、本体(マスト20等)に対するチャック25の上下方向位置を把握する。杭圧入引抜機1は、本体とチャック25との間の相対的な位置関係に基づき、チャック25が固定された状態で本体(マスト20、サドル10等)を上下方向に所定の移動量だけ移動(上昇あるいは下降)させることができる。
【0041】
工程4)については、前記マスト前後センサを用い、マスト20の前後位置(またはサドル10の前後位置)を把握する。杭圧入引抜機1は、マスト20とサドル10との間の相対的な位置関係に基づき、マスト20を前後方向に所定の移動量だけ移動(前進あるいは後退)させることができる。工程4では、マスト20に対しサドル10を前進させる。すなわち、マスト20を固定した状態でサドル10を前進させる。
【0042】
工程5)については、前述のチャック上下センサを用い、本体(マスト20等)に対するチャック25の上下方向位置を把握する。杭圧入引抜機1は、本体とチャック25との間の相対的な位置関係に基づき、チャック25が固定された状態で本体(マスト20、サドル10等)を上下方向に所定の移動量だけ移動(上昇あるいは下降)させ、クランプ11が好適な位置となるように本体の下降を行うことができる。
【0043】
なお、本体の下降を行う際には、マスト20に取り付けられた傾斜計を用いてマスト20の姿勢を把握し、既設杭(杭P,P1)に対して所定の角度をなすようマスト20を傾斜させてもよい。
【0044】
(センサおよび制御部の配置)
杭圧入引抜機1における各センサとその制御部の配置について説明する。図3は、杭圧入引抜機1のセンサ配置を示す概略説明図である。
【0045】
図3に示すように、マスト前後センサ50は、サドル10とスライドフレーム12との境界近傍に配置される。マスト前後センサ50は、サドル10とマスト20との相対的な位置関係を検出する。マスト前後センサ50は、スライドフレーム12でのスライドに応じて、マスト20の前後方向への移動量や移動方向を検出することができる。
マスト旋回センサ51は、マスト20内に設けられ、回転軸22を中心とするマスト20の旋回角度を検出する。
【0046】
チャック上下センサ52は、マスト20の前部に配置される。チャック上下センサ52は、マスト20とチャック25の相対的な位置関係(上下位置関係)を検出する。チャック上下センサ52は、チャック25の上下方向への昇降量(移動量)や昇降方向を検出することができる。
チャック回転センサ53は、チャックフレーム26近傍に配置され、チャック25の回転角度を検出する。
【0047】
第1クランプ前後センサ54Aは、サドル10と第1クランプ11Aとの境界近傍に配置される。第1クランプ前後センサ54Aは、第1クランプ11Aの前後方向位置を検出する。第1クランプ前後センサ54Aは、第1クランプ11Aの前後移動およびそれに伴う把持可能位置の検出を行う。
第1クランプ左右センサ55Aは、サドル10と第1クランプ11Aとの境界近傍に配置され、第1クランプ11Aの左右方向位置を検出する。第1クランプ左右センサ55Aは、第1クランプ11Aの左右移動およびそれに伴う把持可能位置の検出を行う。
【0048】
第2クランプ前後センサ54Bは、サドル10と第2クランプ11Bとの境界近傍に配置される。第2クランプ前後センサ54Bは、第2クランプ11Bの前後方向位置を検出する。第2クランプ前後センサ54Bは、第2クランプ11Bの前後移動およびそれに伴う把持可能位置の検出を行う。
第2クランプ左右センサ55Bは、サドル10と第2クランプ11Bとの境界近傍に配置され、第2クランプ11Bの左右方向位置を検出する。第2クランプ左右センサ55Bは、第2クランプ11Bの左右移動およびそれに伴う把持可能位置の検出を行う。
【0049】
第3クランプ前後センサ54Cは、サドル10と第3クランプ11Cとの境界近傍に配置される。第3クランプ前後センサ54Cは、第3クランプ11Cの前後方向位置を検出する。第3クランプ前後センサ54Cは、第3クランプ11Cの前後移動およびそれに伴う把持可能位置の検出を行う。
第3クランプ左右センサ55Cは、サドル10と第3クランプ11Cとの境界近傍に配置され、第3クランプ11Cの左右方向位置を検出する。第3クランプ左右センサ55Cは、第3クランプ11Cの左右移動およびそれに伴う把持可能位置の検出を行う。
【0050】
マスト前後センサ50、マスト旋回センサ51、チャック上下センサ52、チャック回転センサ53、クランプ前後センサ54A~54C、クランプ左右センサ55A~55Cとしては、公知のセンサを使用できる。例えば、ストロークセンサ、近接スイッチ、リミットスイッチ、圧力センサ等を適宜選択して使用できる。
【0051】
マスト20内には、センサ50~53,54A~54C,55A~55Cに接続された制御部(コントローラ)60が設けられている。制御部60による各センサの制御については、ブロック図等を参照して後述する。
【0052】
実施の形態における杭圧入引抜機の制御方法および杭圧入施工方法について説明する。
【0053】
(制御部による制御方法)
制御部60による各センサ(センサ50~53,54A~54C,55A~55C)を用いた制御方法について説明する。図4は、杭圧入引抜機1において、自走工程(前進自走)を自動化して行う場合の制御フローの概略図である。図5は、杭Pを示す模式図である。図6(A)~図6(D)は、杭圧入引抜機1の動作を説明する図である。
【0054】
制御部60を用いて、クランプ11の現在位置と、既設杭Pの位置とに基づいて、クランプ11の移動量を演算することができる。この工程を「移動量演算工程」という。移動量演算工程は、例えば、工程1)の後、工程3)の前に行うことができる。なお、移動量演算工程は、工程1)の後、工程4)の前であれば実施できる。
以下、図4を参照して制御の流れの一例について説明する。
【0055】
図4に示すように、制御開始時(Start)は、クランプ11が既設杭Pを把持し、かつ、チャック25が第2の杭P2を把持した状態となっている。
ステップS1では、チャック25が第2の杭P2(図5参照)を把持した状態で、クランプ11による既設杭Pの把持を解除する。
【0056】
ステップS2は、「移動量演算工程」の例である。
この工程では、チャック25の中心Oを基準とする座標から、クランプ11の移動量を演算してもよい。その場合、チャック25の中心Oを基準とする座標を共通的に用いるため、複数のクランプ11の位置を精度よく把握できる。
【0057】
ステップS2では、各可動部のパラメータ(A)~(I)を定める。(A)は、マスト20の前後方向の移動距離である。(B)はマスト20の旋回角度である。(C)はチャック25の回転角度である。(D)は第1クランプ11Aの左右方向の移動距離である。(E)は第1クランプ11Aの前後方向の移動距離である。(F)は第2クランプ11Bの左右方向の移動距離である。(G)は第2クランプ11Bの前後方向の移動距離である。(H)は第3クランプ11Cの左右方向の移動距離である。(I)は第3クランプ11Cの前後方向の移動距離である。
【0058】
図6(A)に示すように、クランプ11の位置は、クランプ前後センサ54A~54Cおよびクランプ左右センサ55A~55C(図3参照)を用いて把握できる。図6(A)に示す例では、チャック25の中心Oと、第1クランプ11Aの中心と、第2クランプ11Bの中心と、第3クランプ11Cの中心とは、前後方向に直線的に並ぶ。
【0059】
第1クランプ11Aの現在位置は、第1クランプ前後センサ54Aおよび第1クランプ左右センサ55Aによって把握される。第1クランプ11Aの現在位置は、制御部60において記憶領域に書込みしても良い(図3参照)。
【0060】
同様に、第2クランプ11Bの現在位置は、第2クランプ前後センサ54Bおよび第2クランプ左右センサ55Bによって把握される。第3クランプ11Cの現在位置は、第3クランプ前後センサ54Cおよび第3クランプ左右センサ55Cによって把握される。第2クランプ11Bおよび第3クランプ11Cの現在位置は、制御部60において記憶領域に書込みしても良い(図3参照)。
【0061】
図6(A)に示す例では、第1クランプ11Aの現在位置には、左右または前後のずれが生じていない。このことは、第1クランプ前後センサ54Aおよび第1クランプ左右センサ55Aによって把握される。第1クランプ11Aの現在位置は、第2クランプ11Bの移動先である既設杭Pの位置である。
【0062】
制御部60は、第1クランプ11Aの現在位置と、第1の杭P1(図5参照)の位置に基づいて、第1クランプ11Aの移動量を演算する。第1の杭P1は、チャック25が現在把持している第2の杭P2(図5参照)の前にチャック25が把持していた杭Pである。これにより、移動工程における第1クランプ11Aの左右方向の移動距離(D)および第1クランプ11Aの前後方向の移動距離(E)(図4参照)が得られる。
第1の杭P1(図5参照)の位置は、前回の自走工程においてチャック25が把持していた杭Pの位置として、制御部60の記憶領域に書込まれていても良い。
【0063】
制御部60は、第2クランプ11Bの現在位置と、第2クランプ11Bの移動先である既設杭Pの位置とに基づいて、第2クランプ11Bの移動量を演算する。これにより、移動工程における第2クランプ11Bの左右方向の移動距離(F)および第2クランプ11Bの前後方向の移動距離(G)(図4参照)が得られる。
【0064】
杭Pは、施工上の種々の要因により、圧入位置のずれが生じることがある。また、杭Pの目標位置を、所定距離前方の位置に対して左右方向または前後方向にずれた位置に設定することもある。
【0065】
図6(B)に示す例では、杭Pの位置ずれによって、第1クランプ11Aの現在位置は、本来の位置(図6(A)参照)から右方にずれている。この位置ずれは第1クランプ左右センサ55Aによって把握される。第1クランプ11Aの現在位置は、第2クランプ11Bの移動先である既設杭Pの位置である。
【0066】
制御部60は、第2クランプ11Bの現在位置と、第2クランプ11Bの移動先である既設杭Pの位置とに基づいて、第2クランプ11Bの移動量を演算する。これにより、移動工程における第2クランプ11Bの左右方向の移動距離(F)および第2クランプ11Bの前後方向の移動距離(G)(図4参照)が得られる。
【0067】
図6(C)に示す例では、杭Pの位置ずれによって、第1クランプ11Aの現在位置は、本来の位置(図6(A)参照)から後方にずれている。この位置ずれは第1クランプ前後センサ54Aによって把握される。第1クランプ11Aの現在位置は、第2クランプ11Bの移動先である既設杭Pの位置である。
【0068】
制御部60は、第2クランプ11Bの現在位置と、第2クランプ11Bの移動先である既設杭Pの位置とに基づいて、第2クランプ11Bの移動量を演算する。これにより、移動工程における第2クランプ11Bの左右方向の移動距離(F)および第2クランプ11Bの前後方向の移動距離(G)(図4参照)が得られる。
【0069】
図6(D)に示す例では、杭Pの位置ずれによって、第1クランプ11Aの現在位置は、本来の位置(図6(A)参照)から右方および後方にずれている。この位置ずれは第1クランプ前後センサ54Aおよび第1クランプ左右センサ55Aによって把握される。第1クランプ11Aの現在位置は、第2クランプ11Bの移動先である既設杭Pの位置である。
【0070】
制御部60は、第2クランプ11Bの現在位置と、第2クランプ11Bの移動先である既設杭Pの位置とに基づいて、第2クランプ11Bの移動量を演算する。これにより、移動工程における第2クランプ11Bの左右方向の移動距離(F)および第2クランプ11Bの前後方向の移動距離(G)(図4参照)が得られる。
【0071】
第2クランプ11Bの現在位置は、第3クランプ11Cの移動先である既設杭P(第1クランプ11Aの現在位置である既設杭Pに対して後方に隣り合う既設杭P)の位置である。
制御部60は、第2クランプ11Bと同様に、第3クランプ11Cの現在位置と、第3クランプ11Cの移動先である既設杭Pの位置とに基づいて、第3クランプ11Cの移動量を演算する。これにより、移動工程における第3クランプ11Cの左右方向の移動距離(H)および第3クランプ11Cの前後方向の移動距離(I)(図4参照)が得られる。
【0072】
図4に示すように、マスト20の前後方向の移動距離(A)は、隣り合う杭Pの中心間距離などに基づいて設定される。マスト20の旋回角度(B)は、杭Pの並び方向などに基づいて設定される。チャック25の回転角度(C)は、杭Pの並び方向などに基づいて設定される。
【0073】
ステップS3では、演算終了が判定される。演算が終了した場合、次工程に進む。演算が終了していない場合はステップS1に戻る。
【0074】
ステップS4では、クランプ11による既設杭Pの把持を解除した後、杭圧入引抜機1の本体(サドル10、クランプ11、スライドフレーム12およびマスト20)に対して、チャック25を相対的に下降させることによって、杭圧入引抜機1の本体を上昇させる(上昇工程)。
【0075】
ステップS5では、マスト20に取り付けられた傾斜計を用いて本体(マスト20等)の傾斜角度が検出され、この傾斜角度が予め設定された設定値以内(すなわち、予め設定された範囲内)であるかどうかが判定される。傾斜角度が前記設定値以内であれば、次工程に進む。
ステップS6では、マスト20の傾斜角度が前記設定値を外れた場合(すなわち、予め設定された範囲を外れた場合)に、マスト20の傾斜を調整し、ステップS5に戻る。
【0076】
ステップS7~S15は、「移動工程」の例である。
ステップS10,S11では、ステップS2で得られた演算結果に基づいて第1クランプ11Aを移動させる。詳しくは、ステップS2で得られた第1クランプ11Aの左右方向の移動距離(D)および第1クランプ11Aの前後方向の移動距離(E)に基づいて、第1クランプ11Aを移動させる。そのため、第1クランプ11Aは移動先の既設杭Pを確実に把持できる。
【0077】
ステップS12,S13では、ステップS2で得られた演算結果に基づいて第2クランプ11Bを移動させる。詳しくは、ステップS2で得られた第2クランプ11Bの左右方向の移動距離(F)および第2クランプ11Bの前後方向の移動距離(G)に基づいて、第2クランプ11Bを移動させる。そのため、第2クランプ11Bは移動先の既設杭Pを確実に把持できる。
【0078】
ステップS14,S15では、ステップS2で得られた演算結果に基づいて第3クランプ11Cを移動させる。詳しくは、ステップS2で得られた第3クランプ11Cの左右方向の移動距離(H)および第3クランプ11Cの前後方向の移動距離(I)に基づいて、第3クランプ11Cを移動させる。そのため、第3クランプ11Cは移動先の既設杭Pを確実に把持できる。
【0079】
ステップS7~S9では、ステップS2で設定した(A)~(C)に基づいて、マスト20の前後方向の位置および旋回角度、ならびにチャック25の回転角度を定める。
ステップS7~S15は、同時に並行して実行してもよい。
【0080】
ステップS16では、チャック25を杭圧入引抜機1の本体に対して相対的に上昇させることによって、杭圧入引抜機1の本体を下降させる。クランプ11に既設杭P,P1を把持させる(下降工程)。
【0081】
ステップS17では、傾斜計を用いて本体(マスト20等)の傾斜角度が検出され、この傾斜角度が、予め設定された設定値以内(すなわち、予め設定された範囲内)であるかどうかが判定される。傾斜角度が前記設定値以内であれば、次工程に進む。
ステップS18では、マスト20の傾斜角度が前記設定値を外れた場合(すなわち、予め設定された範囲を外れた場合)に、マスト20の傾斜を調整し、ステップS17に戻る。
【0082】
ステップS19では、クランプ11は杭Pを把持する。
ステップS20では、クランプ11の安全ランプの点灯の有無が判定され、安全ランプの点灯が確認されれば終了する。安全ランプの点灯が確認されない場合には、ステップS19に戻る。
【0083】
ステップS20の後、そのときのマスト20の位置およびマスト20の旋回角度を、マスト前後センサ50およびマスト旋回センサ51によって検出する。マスト20の位置およびマスト20の旋回角度は、制御部60において記憶領域に書込まれる。これらのデータは、次回の自走工程のステップS2において、既設杭P1の位置特定に利用される。
【0084】
[実施の形態の杭圧入引抜機の制御方法が奏する作用効果]
杭圧入引抜機1の制御方法は、クランプ11の現在位置と、移動先の既設杭Pの位置とに基づいてクランプ11の移動量を演算する移動量演算工程を有する。そのため、隣り合う杭の相対位置が一定でない場合(例えば、隣り合う杭Pの中心間距離、並び方向などが一定でない場合)でも、クランプ11は移動先の既設杭Pを確実に把持できる。よって、杭圧入引抜機1を自走させる杭Pの圧入施工を効率よく行うことができる。
【0085】
第2クランプ11B以降のクランプ11については、移動先の既設杭Pの位置が、前方に隣り合うクランプ11の現在位置から把握されるため、精度の高い移動量の演算が可能である。例えば、第2クランプ11Bについては、移動先である既設杭P(PB)の位置が第1クランプ11Aの現在位置であるため、その位置を正確に把握できる。
【0086】
前述の杭圧入施工方法によれば、クランプ11の現在位置と、移動先の既設杭Pの位置とに基づいてクランプ11の移動量を演算する移動量演算工程を有するため、隣り合う杭の相対位置が一定でない場合でも、クランプ11は移動先の既設杭Pを確実に把持できる。よって、杭Pの圧入施工を効率よく行うことができる。
【0087】
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。以下、本発明の変形例について説明する。
【0088】
(本発明の変形例)
前述の実施の形態では、杭圧入引抜機1の自走工程として、基本的に直線的に進む自走(いわゆる直線自走)による杭の圧入施工について説明したが、杭Pの並び方向が曲線に沿うような自走(いわゆるカーブ自走)による杭の圧入施工も可能である。このような杭の圧入施工について説明する。
【0089】
図7(A)および図7(B)は、杭圧入引抜機の自走工程の第2の例の概略説明図である。
図7(A)および図7(B)に示すように、この例では、杭圧入引抜機1の移動方向を、前回の自走工程における移動方向に対して傾斜させることによって、杭Pの並び方向が曲線に沿う自走(いわゆるカーブ自走)を行うことができる。
【0090】
杭圧入引抜機1の移動方向を、前回の自走工程における移動方向に対して傾斜させるには、移動量演算工程における演算結果に基づいて、マスト20の旋回角度およびチャック25の回転角度を調整する。以下、詳しく説明する。
【0091】
マスト20の旋回角度は、マスト旋回センサ51(図3参照)によって検出される。チャック25の回転角度は、チャック回転センサ53(図3参照)によって検出される。マスト20の前後方向の位置は、マスト前後センサ50(図3参照)によって検出される。
【0092】
図4に示すように、ステップS2では、マスト20の現在の旋回角度と、カーブ自走に必要なマスト20の旋回角度とに基づいて、マスト20の旋回角度(B)を演算することができる。
ステップS2では、併せて、チャック25の現在の回転角度と、カーブ自走に必要なチャック25の回転角度に基づいて、チャック25の回転角度(C)を演算することができる。
ステップS2では、併せて、マスト20の前後方向の位置と、カーブ自走に必要なマスト20の前後方向の位置とに基づいて、マスト20の前後方向の移動距離(A)を演算することができる。
【0093】
ステップS7~S9では、ステップS2で得られた(A)~(C)に基づいて、マスト20の前後方向の位置および旋回角度、ならびにチャック25の回転角度を定める。このように、マスト20の前後方向の位置および旋回角度、ならびにチャック25の回転角度を調整することによって、杭圧入引抜機1の移動方向を、前回の自走工程における移動方向に対して傾斜させることができる。よって、杭Pの並び方向が曲線に沿うような自走(いわゆるカーブ自走)が可能である。
【0094】
前述の実施の形態においては、クランプ11の数は3つであるが、クランプの数は2以上の任意の数であってよい。例えば、クランプの数は2でもよいし、4以上でもよい。
前述の実施の形態においては、工程3)において、クランプ11が複数の既設杭Pより高い位置に至るまで杭圧入引抜機1の本体を上昇させるが、この工程では、クランプ11が既設杭Pより高い位置に至る直前に本体を停止させ、安全確認工程を行うことも可能である。
【0095】
杭圧入引抜機は「杭圧入機」ともいう。クランプが杭を把持する方式としては、両側から杭を挟み込んで把持する方式もあるが、前述の実施の形態では、内側から杭を把持する方式が採用されている。
【符号の説明】
【0096】
1…杭圧入引抜機(杭圧入機)
10…サドル
11…クランプ
11A…第1クランプ
11B…第2クランプ
11C…第3クランプ
12…スライドフレーム
20…マスト
25…チャック
60…制御部
G…地盤
P…杭
P1…第1の杭(既設杭)
P2…第2の杭(圧入杭)
PA…第1既設杭(既設杭)
PB…第2既設杭(既設杭)
PC…第3既設杭(既設杭)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7