(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083167
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】抗ウイルス剤、抗ウイルスシート及びそれを用いた抗ウイルス製品
(51)【国際特許分類】
A01N 61/00 20060101AFI20230608BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20230608BHJP
A01N 25/34 20060101ALI20230608BHJP
D21H 21/36 20060101ALI20230608BHJP
D21H 11/18 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
A01N61/00 B
A01P1/00
A01N25/34 A
D21H21/36
D21H11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197386
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川製紙所
(71)【出願人】
【識別番号】509349141
【氏名又は名称】京都府公立大学法人
(71)【出願人】
【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】北原 浩
(72)【発明者】
【氏名】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】扇谷 えり子
(72)【発明者】
【氏名】新屋 政春
(72)【発明者】
【氏名】足立 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】松田 修
(72)【発明者】
【氏名】ペッツォッティ ジュセッペ
【テーマコード(参考)】
4H011
4L055
【Fターム(参考)】
4H011AA04
4H011BB20
4H011BC19
4H011DA07
4H011DH16
4L055AF09
4L055AF21
4L055AF33
4L055AF46
4L055AG04
4L055AG05
4L055AG13
4L055AG26
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4L055AH01
4L055AH17
4L055AH18
4L055AH21
4L055CF03
4L055CG32
4L055EA16
4L055FA30
4L055GA27
(57)【要約】
【課題】優れた抗ウイルスの特性を有し、健康への影響を緩和した抗ウイルス剤、抗ウイルスシート、及びそれを用いた抗ウイルス製品を提供する。
【解決手段】抗ウイルス機能を有する機能性粒子を含有する抗ウイルス剤、及び、抗ウイルス機能を有する機能性粒子と、有機繊維と、前記有機繊維より平均繊維径が小さい微細繊維と、を含み、前記機能性粒子の平均粒子径が1μm~300μmである、抗ウイルスシート及びそれを用いた抗ウイルス製品である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗ウイルス機能を有する機能性粒子を含有する、抗ウイルス剤。
【請求項2】
抗ウイルス機能を有する機能性粒子と、有機繊維と、前記有機繊維より平均繊維径が小さい微細繊維と、を含み、
前記機能性粒子の平均粒子径が1μm~300μmである、抗ウイルスシート。
【請求項3】
前記有機繊維はフィブリル状繊維でなく、
前記微細繊維はフィブリル状繊維である、請求項2に記載の抗ウイルスシート。
【請求項4】
前記有機繊維の平均繊維径は、前記機能性粒子の平均粒子径よりも小さい、請求項2または請求項3に記載の抗ウイルスシート。
【請求項5】
前記有機繊維の平均繊維径が2μm~100μmである、請求項2~4のいずれか1項に記載の抗ウイルスシート。
【請求項6】
前記微細繊維の平均繊維径が0.05μm~20μmである、請求項2~5のいずれか1項に記載の抗ウイルスシート。
【請求項7】
前記抗ウイルスシートは、少なくとも一部に連通孔を有する、請求項2~6のいずれか1項に記載の抗ウイルスシート。
【請求項8】
前記機能性粒子が無機粒子である、請求項2~7のいずれか1項に記載の抗ウイルスシート。
【請求項9】
前記機能性粒子が構成素材にハイドロタルサイトを含む、請求項2~8のいずれか1項に記載の抗ウイルスシート。
【請求項10】
前記有機繊維または前記微細繊維の構成素材が、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基およびスルホ基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する素材である、請求項2~9のいずれか1項に記載の抗ウイルスシート。
【請求項11】
請求項2~10いずれかに記載の抗ウイルスシートを備える抗ウイルス製品。
【請求項12】
前記機能性粒子が構成素材にハイドロタルサイト、窒化ケイ素、及びゼオライトからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の抗ウイルス剤。
【請求項13】
前記ウイルスがSARS-CoV-2である、請求項1又は12に記載の抗ウイルス剤。
【請求項14】
繊維、及び前記繊維に保持された請求項1、12、又は13に記載の抗ウイルス剤を含む、抗ウイルス繊維。
【請求項15】
素材、及び請求項1、12、又は13に記載の抗ウイルス剤を含む、抗ウイルス材料。
【請求項16】
請求項14に記載の抗ウイルス繊維を含む、抗ウイルスシート。
【請求項17】
請求項16に記載の抗ウイルスシートを備える抗ウイルス製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ウイルス剤、繊維を用いたシートと抗ウイルス機能性粒子を含む抗ウイルスシート、及びそれを用いた抗ウイルス製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート状の構造物に対して、消臭、抗菌や抗ウイルス等の機能を持つ粒子を保持させた、抗菌や抗ウイルス等の機能を持つシート等が開発されている。これらの粒子は、臭い成分の粒子、菌やウイルス等を吸収、吸着することで、消臭、抗菌や抗ウイルス等の機能を持つ。消臭、抗菌や抗ウイルス等の機能を持つ粒子としては、金属や化合物などの無機粒子が知られている。これらのシート等は、シート状の構造物が使用できる様々な用途において、消臭、抗菌や抗ウイルス等に用いることができる。特に、シートとして一定の間隔を有して設けられた繊維からなるシートを用いた場合は、通気性や濾過性を持つので、衛生用品、衣類、濾過用フィルタ、またはその他内装用の部材などの分野で応用することができることが知られている。
【0003】
特許文献1には、無機粒子と繊維との複合体および合成繊維を含んでなる湿式不織布であって、該複合体の繊維表面の15%以上が無機粒子によって被覆されている湿式不織布についての技術が開示されている。この技術は、無機粒子と繊維との複合体から優れた湿式不織布を得、無機粒子の種類を適宜選択することによって種々の特性を備えた湿式不織布を得、例えば、ハイドロタルサイトと繊維の複合体から得られる湿式不織布は優れた消臭効果などを有するため衛生用品などに好適に使用することのできる湿式不織布を得ようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、近年、インフルエンザやコロナウイルス等のウイルス感染の予防手段が注目されている。上述の機能を持つ粒子のうち、特に抗ウイルスの機能を持つ機能性粒子を用い、上述の繊維からなるシート状の構造物に対して抗ウイルスの機能を有する機能性粒子を保持させ、このシートを、マスク等の衛生用品や、抗ウイルス性を持つ防護服等の衣類等に用いることが考えられる。例えば特許文献1の技術は、インフルエンザウイルス及びネコカリシウイルスに対して抗ウイルス性を有することが開示されている。
【0006】
しかしながら、上述の技術は、機能性粒子の大きさによっては、人体に接する箇所、又は人体の近くで用いるには健康への影響が懸念される場合がある。一般に、1μmを下回るような浮遊粒子状物質は、健康影響として懸念されている。無機粒子の粒子径が小さく、かつ上述のシートから遊離、飛散する可能性がある場合は、健康面での懸念があり、マスクや衣類等の人体に接触する用途や、人体の近くで用いる抗ウイルス製品へ利用が制限されるケースが想定される。
【0007】
例えば、特許文献1に記載されている技術では、不織布と無機粒子の複合体において、無機粒子の平均一次粒子径は1μm未満、さらにはそれ以下の径であることが好ましい態様とされている。一般に粒子の径が小さい方が表面積が大きく、繊維との接触面積が大きく、また粒子の質量が小さいため、不織布の繊維から脱落しにくい。しかし、1μm未満の粒子を用いた複合体を、人体に接触する又は人体の近くで用いた場合、上述したように健康面での懸念が考えられる。
【0008】
本発明は上記のような事情を鑑みてなされたものであり、優れた抗ウイルスの特性を有し、健康への影響を緩和した抗ウイルスシート、及びそれを用いた抗ウイルス製品を提供することを目的とする。
【0009】
また、コロナウイルスは、コロナウイルス科のコロナウイルス亜科に属するウイルスの種であり、ヒトおよび動物に感染し、呼吸器、消化器、血管、または神経性の疾患を発症させるプラス鎖RNAウイルスである。コロナウイルスは、感染している何らかの宿主動物から伝播して、ヒトに対して大規模な伝染病を引き起こすことが可能である。コロナウイルスとしては、近年では、例えば、2002年及び2003年に流行したSARSコロナウイルス1(SARS-CoV-1)、及び中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)が挙げられる。最近では、SARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)の世界的な流行が起こり、治療技術が確立されていないことから、医療、経済等の多方面に亘って甚大な被害が続いている。
【0010】
そこで、本発明は、その一態様において、コロナウイルス等のウイルス、特にSARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対する抗ウイルス剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明は、以下の態様を有する。
[1] 抗ウイルス機能を有する機能性粒子と、有機繊維と、前記有機繊維より平均繊維径が小さい微細繊維と、を含み、前記機能性粒子の平均粒子径が1μm~300μmである、抗ウイルスシート。
[2] 前記有機繊維はフィブリル状繊維でなく、前記微細繊維はフィブリル状繊維である、前記の抗ウイルスシート。
[3] 前記有機繊維の平均繊維径は、前記機能性粒子の平均粒子径よりも小さい、前記の抗ウイルスシート。
[4] 前記有機繊維の平均繊維径が2μm~100μmである、前記の抗ウイルスシート。
[5] 前記微細繊維の平均繊維径が0.05μm~20μmである、前記の抗ウイルスシート。
[6] 前記抗ウイルスシートは、少なくとも一部に連通孔を有する、前記の抗ウイルスシート。
[7] 前記機能性粒子が無機粒子である、前記の抗ウイルスシート。
[8] 前記機能性粒子が構成素材にハイドロタルサイトを含む、前記の抗ウイルスシート。
[9] 前記有機繊維または前記微細繊維の構成素材が、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基およびスルホ基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する素材である、前記の抗ウイルスシート。
[10] 前記の抗ウイルスシートを用いた抗ウイルス製品。
【0012】
上記課題を解決する本発明は、以下の態様も有する。
[A] 抗ウイルス機能を有する機能性粒子を含有する、抗ウイルス剤。
[B] 前記機能性粒子が構成素材にハイドロタルサイト、窒化ケイ素、及びゼオライトからなる群より選択される少なくとも1種を含む、前記の抗ウイルス剤。
[C] 前記ウイルスがSARS-CoV-2である、前記の抗ウイルス剤。
[D] 繊維、及び前記繊維に保持された前記の抗ウイルス剤を含む、抗ウイルス繊維。
[E] 素材、及び前記の抗ウイルス剤を含む、抗ウイルス材料。
[F] 前記の抗ウイルス繊維を含む、抗ウイルスシート。
[G] 前記の抗ウイルスシートを備える抗ウイルス製品。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、優れた抗ウイルスの特性を有し、健康への影響を緩和した抗ウイルスシート、及びそれを用いた抗ウイルス製品が得られる。また、本発明によれば、コロナウイルス等のウイルス、特にSARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対する抗ウイルス剤、さらにはそれを用いた繊維、抗ウイルスシートが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】試験例2のTCID
50測定結果を示す。横軸に、試験に供した無機粒子を示す。Controlは無機粒子を使用していない場合を示す。
【
図2】試験例2のウイルスRNA検出(Real time RT PCR)結果を示す。Supは遠心分離上清の検出結果を示し、Pptは遠心分離ペレットの検出結果を示す。横軸に、試験に供した無機粒子を示す。Controlは無機粒子を使用していない場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の抗ウイルス剤、抗ウイルスシート、及びそれを用いた抗ウイルス製品について、実施形態を示して説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
(抗ウイルス剤)
本実施形態の抗ウイルス剤は、抗ウイルス機能を有する機能性粒子を含有する。
【0017】
(機能性粒子)
本実施形態の抗ウイルス機能を有する機能性粒子は、抗ウイルス効果を有する粒子を広く含む。抗ウイルス効果を有する粒子としては、一定の無機粒子が知られている。無機粒子は、無機元素又は無機化合物を構成素材とする粒子で、無機元素又は無機化合物は主に、金属又は金属化合物である。金属化合物とは、金属の陽イオンと陰イオンがイオン結合によって結合してできた無機塩などをいう。
【0018】
機能性粒子は、前記無機粒子の金属化合物のうち、ハイドロタルサイト、窒化ケイ素、ゼオライトであることが好ましく、ハイドロタルサイト、窒化ケイ素であることがより好ましく、ハイドロタルサイトであることが特に好ましい。
【0019】
ハイドロタルサイトは、[M2+
1-xM3+
x(OH)2][An-
x/n・mH2O](ここで、M2+は2価の金属イオン、M3+は3価の金属イオンを表し、An-
x/nは層間陰イオンを表す。また0<x<1であり、nはAの価数、0≦m<1である)という一般式で示される。ここで、2価の金属イオンであるM2+は、例えば、Mg2+、Co2+、Ni2+、Zn2+、Fe2+、Ca2+、Ba2+、Cu2+、Mn2+など、3価の金属イオンであるM3+は、例えば、Al3+、Fe3+、Cr3+、Ga3+など、層間陰イオンであるAn-は、例えば、OH-、Cl-、CO3
-、SO4
-などのn価の陰イオンを挙げることができる。xは一般に0.2~0.33の範囲である。このうち、2価の金属イオンとしては、Mg2+、Zn2+、Fe2+、Mn2+が好ましい。
【0020】
ゼオライトとは、四面体構造を有するTO4単位(Tは中心原子であり、Si、Al等を表す。)が酸素原子を共有して三次元的に連結し、開かれた規則的なミクロ細孔を形成している結晶性物質を意味する。具体的には、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association;以下、これを「IZA」ということがある。)の構造委員会データ集に記載のあるケイ酸塩、リン酸塩、ゲルマニウム塩、ヒ酸塩等が含まれる。ゼオライトの結晶構造は特に制限されず、例えばLTA、CHA、MOR、AFI、FER、FAU、DDR、MFI等が挙げられる。
【0021】
機能性粒子の平均粒子径は、特に制限されず、例えば、10nm~1mmである。当該平均粒子径は、好ましくは1μm~300μmである。
【0022】
なお、機能性粒子の平均粒子径は、D50粒子径(メジアン径)である。機能性粒子のD50粒子径とは、次のように測定して得られる値を意味するものとする。例えば、シートから機能性粒子を回収し、液中に分散した粒子を直接、撮影し、撮影データの画像処理により分析・解析する事が可能なフロー方式画像解析法を用いた機器(例えば、シスメックス社製:FPIA-3000)にて求めることができる。測定された個々の機能性粒子のデータから、粒子数基準の粒度分布における積算値50%での粒径により求めることができる。
【0023】
機能性粒子は、1種単独であってもよいし、2種以上の組合わせであってもよい。
【0024】
(抗ウイルス剤の用途)
本発明の抗ウイルス剤の対象ウイルスとしては、特に制限されない。ウイルスとしては、例えばインフルエンザウイルス(例えばA型、B型等)、風疹ウイルス、エボラウイルス、コロナウイルス、麻疹ウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、ムンプスウイルス、アルボウイルス、RSウイルス、SARSウイルス、肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス等)、黄熱ウイルス、エイズウイルス、狂犬病ウイルス、ハンタウイルス、デングウイルス、ニパウイルス、リッサウイルス等のエンベロープウイルス(エンベロープを有するウイルス); アデノウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、ヒトパピローマウイルス、ポリオウイルス、エンテロウイルス、コクサッキーウイルス、ヒトパルボウイルス、脳心筋炎ウイルス、ポリオウイルス、ライノウイルス等の非エンベロープウイルス(エンベロープを有さないウイルス)等が挙げられる。これらの中でも、コロナウイルスが特に好ましい。
【0025】
コロナウイルスは、オルトコロナウイルス亜科に属するウイルスである。コロナウイルスとしては、アルファコロナウイルス属、ベータコロナウイルス属、ガンマコロナウイルス属、デルタコロナウイルス属等が挙げられ、これらの中でも、ベータコロナウイルス属が好ましい。ベータコロナウイルス属としては、SARS関連コロナウイルス(SARSr-CoV)、広コロナウイルスHKU1、MERSコロナウイルス等が挙げられ、これらの中でも、SARSr-CoVが好ましい。SARSr-CoVとしては、SARS-CoV-2、SARS-CoV-1等が挙げられ、これらの中でもSARS-CoV-2が好ましい。本発明の抗ウイルス剤は、特にSARS-CoV-2に対して好適に使用することができる。
【0026】
本発明の抗ウイルス剤によれば、ウイルスに対して抗ウイルス作用を発揮することができる。抗ウイルス作用としては、具体的には、ウイルス感染抑制作用、ウイルスの細胞感染力価低下作用、ウイルスによる細胞死を抑制する作用、ウイルス不活化作用、ウイルス増殖抑制作用、ウイルス出芽抑制作用、ウイルス抵抗性誘導作用等が挙げられる。本発明の抗ウイルス剤は、ウイルス感染抑制、ウイルスの細胞感染力価低下剤、ウイルスによる細胞死の抑制、ウイルス不活化、ウイルス増殖抑制、ウイルス出芽抑制、ウイルス抵抗性誘導からなる群より選択される少なくとも1種に用いることができる。また、これらの作用により、コロナウイルス感染症(特に、COVID-19)の予防又は治療剤として使用することもできる。
【0027】
本発明の抗ウイルス剤は、抗ウイルス性を要する各種分野において広く使用することができる。本発明の抗ウイルス剤は、例えば工業、洗浄、医療、食品、飲料、日用品等の各種分野において使用することができる。本発明の抗ウイルス剤の用途は、主に、生体に適用する用途と、後述の物品に適用する用途とに分けられる。
【0028】
(生体に適用する用途)
生体に適用する用途としては、例えば医薬、化粧品、食品組成物(健康食品、健康増進剤、栄養補助食品(サプリメントなど)を包含する)、飲料組成物、食品添加剤、飲料添加物、消毒剤、洗浄剤等が挙げられる。この場合の適用対象は特に限定されず、例えば、ヒト、サル、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、シカなどの種々の哺乳類動物などが挙げられる。
【0029】
本発明の抗ウイルス剤を生体に適用することによって、有効成分が接触する部位において抗ウイルス作用を発揮することができる。
【0030】
本発明の抗ウイルス剤の形態は、特に限定されず、本発明の抗ウイルス剤の用途に応じて、各用途において通常使用される形態をとることができる。
【0031】
形態としては、用途が医薬である場合は、例えば注射剤、点滴剤、うがい剤、吸入剤、貼付剤(プラスター剤、硬膏剤等のテープ剤(リザーバー型、マトリックス型等)、パップ剤、パッチ剤、マイクロニードル等)、軟膏剤、外用液剤(リニメント剤、ローション剤等)、スプレー剤(外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤等、クリーム剤、ゲル剤、点眼剤、眼軟膏剤、点鼻剤、坐剤、直腸用半固形剤、注腸剤等の非経口摂取に適した製剤形態;錠剤(口腔内側崩壊錠、咀嚼可能錠、発泡錠、トローチ剤、ゼリー状ドロップ剤、舌下錠などを含む)、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、ドライシロップ剤、液剤(ドリンク剤、懸濁剤、シロップ剤を含む)、ゼリー剤などの経口摂取に適した製剤形態(経口製剤形態)、経管栄養剤、経腸栄養剤、経鼻カテーテル剤、食道ろうカテーテル剤、胃ろうカテーテル剤などが挙げられる。
【0032】
形態としては、用途が化粧品である場合は、例えば液剤、ジェル剤、クリーム剤、軟膏剤、スプレー剤、スティック剤等が挙げられる。
【0033】
形態としては、用途が食品組成物の場合は、液状、ゲル状あるいは固形状の食品、例えばジュース、清涼飲料、茶、スープ、豆乳などの飲料、サラダ油、ドレッシング、ヨーグルト、ゼリー、プリン、ふりかけ、育児用粉乳、ケーキミックス、乳製品(例えば、粉末状、液状、ゲル状、固形状等)、パン、菓子(例えば、クッキー等)などが挙げられる。また、用途が食品添加剤、健康増進剤、栄養補助食品(サプリメントなど)などである場合は、例えば錠剤(口腔内側崩壊錠、咀嚼可能錠、発泡錠、トローチ剤、ゼリー状ドロップ剤などを含む)、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、ドライシロップ剤、液剤(懸濁剤、シロップ剤を含む)、ゼリー剤などが挙げられる。
【0034】
形態としては、用途が消毒剤又は洗浄剤である場合は、例えば液体(溶液、乳液、懸濁液、スプレーなど)、半固体(ゲル、クリーム、ペーストなど)、固体(錠剤、粒子状剤、カプセル剤、フィルム剤、混練物、溶融固体、ロウ状固体、弾性固体など)などの任意の形態を採ることができる。例えば、口腔に適用する場合であれば、より具体的には、歯磨剤(練歯磨、液体歯磨、液状歯磨、粉歯磨など)、洗口剤、塗布剤、貼付剤、口中清涼剤、食品(例えば、チューインガム、錠菓、キャンディ、グミ、フィルム、トローチなど)などが挙げられる。また、鼻腔に適用する場合であれば、より具体的には、スプレー型点鼻剤、鼻うがい剤等が挙げられる。皮膚に適用する場合であれば、石鹸、ボディソープ、シャンプー、リンス、スプレー剤等が挙げられる。
【0035】
本発明の抗ウイルス剤は、必要に応じてさらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば医薬、化粧品、消毒剤、洗浄剤などに配合され得る成分である限り特に限定されるものではないが、例えば基剤、担体、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、保湿剤、着色料、香料、キレート剤などが挙げられる。
【0036】
緩衝剤としては、特に制限されず、用途に応じて、許容される適切なものを採用することができる。好ましくはリン酸緩衝液、酢酸緩衝液等が挙げられる。
【0037】
本発明の抗ウイルス剤の有効成分の含有量は、有効成分の種類、用途、使用態様、適用対象、適用対象の状態などに左右されるものであり、限定はされないが、例えば0.000001~100重量%、好ましくは0.01~50重量%とすることができる。
【0038】
本発明の抗ウイルス剤の適用(例えば、投与、摂取、接種など)量は、所望の効果を発現する有効量であれば特に限定されず、通常は、有効成分の重量として、一般に一日あたり0.1~1000 mg/kg体重である。上記投与量は1日1回又は2~3回に分けて投与するのが好ましく、年齢、病態、症状により適宜増減することもできる。
【0039】
(物品に適用する用途)
物品に適用する用途としては、例えば消毒剤、洗浄剤等が挙げられる。この場合の適用対象は、特に制限されず、各種分野において用いられている工業製品やその原材料が挙げられる。
【0040】
物品の具体例としては、マスク、フェイスマスク、手袋等が挙げられる。また気管内挿管チューブ、バイトブロック、喉頭鏡、電極、計測機器、点滴装置、酸素マスク、鼻カテーテル、チューブ、カテーテル、白衣、ガウン、キャップ、防護服、防護シールド、手術器具等の医療器具、手術台、ベッド、ストレッチャー、車いす等が挙げられる。また、OA機器、家電、空調機器、掃除機、机、椅子、ソファー、ベンチ、窓、つり革、ハンドル、シート、自動改札機、自動券売機、自動販売機、扉、柵、手摺、食器、調理用具、包装フィルム、包装袋、瓶、ボトル、包装パック、シンク、便器、文房具、書籍、棚、歯ブラシ、鏡、空調フィルター、コート、ジャケット、ズボン、スカート、ワイシャツ、ニットシャツ、ブラウス、セーター、カーディガン、ナイトウエア、肌着、下着、オムツ、サポーター、靴下、タイツ、ストッキング、帽子、スカーフ、マフラー、襟巻き、ストール、服の裏地、服の芯地、服の中綿、作業着、ユニフォーム、学童用制服等の衣料、カーテン、アミ戸、布団地、布団綿、布団カバー、枕カバー、シーツ、マット、カーペット、タオル、ハンカチ、壁布、バンドエイド、包帯等が挙げられる。
【0041】
本発明の抗ウイルス剤を物品に適用することによって、有効成分が接触する部位において抗ウイルス作用を発揮することができる。なお、有効成分が接触する部位は、物品上の部位に限られず、物品が生体等に適用された場合には生体中の部位も包含される。
【0042】
本発明の抗ウイルス剤の剤形は特に制限されず、その用途に応じて適宜選択することができる。剤形としては、例えば液剤、乳剤、懸濁剤、分散剤、スプレー剤、エアゾール剤等の液剤; 水和剤、粉剤、粒剤、微粒剤、フロアブル剤等の固形又は半固形剤等が挙げられる。種々の物品に塗布またはコーティングすることができる。
【0043】
本発明の抗ウイルス剤は、必要に応じてさらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば物品の洗浄剤、消毒剤などに配合され得る成分である限り特に限定されるものではないが、例えば基剤、担体、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、保湿剤、着色料、香料、キレート剤などが挙げられる。
【0044】
緩衝剤としては、特に制限されず、用途に応じて、許容される適切なものを採用することができる。好ましくはリン酸緩衝液、酢酸緩衝液等が挙げられる。
【0045】
本発明の抗ウイルス剤の有効成分の含有量は、有効成分の種類、用途、使用態様、適用対象、適用対象の状態などに左右されるものであり、限定はされないが、例えば0.000001~100重量%、好ましくは0.001~50重量%とすることができる。
【0046】
(抗ウイルス繊維)
本実施形態の抗ウイルス繊維は、繊維、及び前記繊維に保持された本発明の抗ウイルス剤を含む。
【0047】
繊維としては、特に制限されず、例えば植物繊維(例えば綿繊維、麻繊維、亜麻繊維、レーヨン繊維、ポリノジック繊維、キュプラ繊維、リヨセル繊維、アセテート繊維等)、動物繊維(例えば羊毛、絹、天蚕糸、モヘヤ、カシミア、キャメル、ラマ、アルパカ、ビキューナ、アンゴラ、蜘蛛糸等)、鉱物繊維(例えば温石綿、白石綿、青石綿、茶石綿、直閃石綿、透角閃石綿、陽起石綿等)等の天然繊維; 合成繊維(例えばナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリウレタン繊維等)、再生繊維(例えばレーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル、アセテート等)、ガラス繊維(例えばグラスウール、グラスファイバー等)、炭素繊維(例えばPAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、カーボンナノチューブ等)、人造鉱物繊維(例えばロックウール、セラミックファイバー等)等の化学繊維等を広く用いることができる。
【0048】
本発明の抗ウイルス繊維は、上記各種繊維の混紡であってもよい。また、本発明の抗ウイルス繊維には、上記繊維の一次加工品、例えば糸、紐、ロープ、織物、編物、不織布、紙等が包含される。
【0049】
本発明の抗ウイルス繊維は、本発明の抗ウイルス剤を保持する。保持の態様としては、特に限定されないが、本発明の抗ウイルス剤の有効成分である機能性粒子が直接繊維表面に吸着している態様、機能性粒子が接着成分を介して間接的に繊維表面に吸着している態様、機能性粒子が化学結合を介して繊維に結合している態様等が挙げられる。
【0050】
本発明の抗ウイルス繊維が保持する機能性粒子の量は、特に限定されないが、繊維と機能性粒子の含有量の質量比が、5/95~95/5の範囲から選択することが好ましい。また、抗ウイルスシートの全体質量に対して10%以上が好ましく、20%以上がさらに好ましく、40%以上が特に好ましい。
【0051】
このような本発明の抗ウイルス繊維は、繊維に機能性粒子を保持させることにより、或いはこれにより得られた繊維を加工することにより製造することができる。
【0052】
機能性粒子の保持は、公知の方法に従って行うことができる。機能性粒子の保持は、例えば、繊維と、機能性粒子を含有する処理剤とを接触させる方法(より具体的には、例えば繊維を、機能性粒子を含有する処理剤を含む処理液中に浸漬する方法や、機能性粒子を含有する処理剤を含む処理液を繊維に噴霧する方法等)により行うことができる。なお、この処理剤は、繊維の抗ウイルス性を高めることができるので、「繊維の抗ウイルス性向上剤」ということもできる。該向上剤は、溶液状として、マスク使用者が適宜噴霧することにより、簡便に使用することができる。
【0053】
(抗ウイルス材料)
本実施形態の抗ウイルス繊維は、素材、及び本発明の抗ウイルス剤を含む。
【0054】
素材は、本発明の抗ウイルス剤を直接又は他の材料を介して表面に付着又は接着可能であるか、或いは本発明の抗ウイルス剤と混錬可能な素材である限り、特に制限されない。
【0055】
素材としては、例えば樹脂材料、炭素材料、金属材料等の無機材料、木質材料等が挙げられ、これらの2種以上の組合せからなる複合材料も挙げられる。
【0056】
樹脂材料を構成する樹脂としては、特に制限されず、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリスチレン樹脂、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリサルホン(PSF)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂等が挙げられる。
【0057】
炭素材料としては、特に制限されず、例えば炭素繊維(例えばPAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、カーボンナノチューブ等)、カーボンブラック、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、メソポーラスカーボン、グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン等が挙げられる。
【0058】
本発明の抗ウイルス材料は、抗ウイルス製品の一部であることができる。抗ウイルス製品としては、例えば塗料、接着剤、合成ゴムラテックス、インキ、ポリビニルアルコールフィルム、塩化ビニルフィルム、樹脂製品、石膏ボード、屋根材、壁材、床材、建具、塗工紙、壁紙、フロア外張り、OA機器、家電、空調機器、掃除機、机、椅子、ソファー、ベンチ、窓、つり革、ハンドル、シート、自動改札機、自動券売機、自動販売機、扉、柵、手摺、食器、調理用具、包装フィルム、包装袋、瓶、ボトル、包装パック、シンク、便器、文房具、書籍、棚、歯ブラシ、鏡、フィルター、マスク、コート、ジャケット、ズボン、スカート、ワイシャツ、ニットシャツ、ブラウス、セーター、カーディガン、ナイトウエア、肌着、下着、オムツ、サポーター、靴下、タイツ、ストッキング、帽子、スカーフ、マフラー、襟巻き、ストール、手袋、服の裏地、服の芯地、服の中綿、作業着、ユニフォーム、学童用制服等の衣料、カーテン、アミ戸、布団地、布団綿、布団カバー、枕カバー、シーツ、マット、カーペット、タオル、ハンカチ、壁布、バンドエイド、包帯等、さらにはこれらの複合材料等が挙げられる。
【0059】
(抗ウイルスシート1)
本実施形態の抗ウイルスシートは、抗ウイルス機能を有する機能性粒子と、有機繊維と、微細繊維と、を含む。
全体として、本実施形態の抗ウイルスシート(抗ウイルス性シート、抗ウイルス機能性シート)は、上述の機能性粒子と、有機繊維と微細繊維とからなるシート部位を含み、シート部位に、機能性粒子が保持されてなる。
【0060】
(機能性粒子)
本実施形態の抗ウイルス機能を有する機能性粒子は、抗ウイルス効果を有する粒子を広く含む。抗ウイルス効果を有する粒子としては、一定の無機粒子が知られている。無機粒子は、無機元素又は無機化合物を構成素材とする粒子で、無機元素又は無機化合物は主に、金属又は金属化合物である。金属化合物とは、金属の陽イオンと陰イオンがイオン結合によって結合してできた無機塩などをいう。
【0061】
機能性粒子は、前記無機粒子の金属化合物のうち、ハイドロタルサイトであることが好ましい。
ハイドロタルサイトは、[M2+
1-xM3+
x(OH)2][An-
x/n・mH2O](ここで、M2+は2価の金属イオン、M3+は3価の金属イオンを表し、An-
x/nは層間陰イオンを表す。また0<x<1であり、nはAの価数、0≦m<1である)という一般式で示される。ここで、2価の金属イオンであるM2+は、例えば、Mg2+、Co2+、Ni2+、Zn2+、Fe2+、Ca2+、Ba2+、Cu2+、Mn2+など、3価の金属イオンであるM3+は、例えば、Al3+、Fe3+、Cr3+、Ga3+など、層間陰イオンであるAn-は、例えば、OH-、Cl-、CO3
-、SO4
-などのn価の陰イオンを挙げることができる。xは一般に0.2~0.33の範囲である。このうち、2価の金属イオンとしては、Mg2+、Zn2+、Fe2+、Mn2+が好ましい。
【0062】
機能性粒子の平均粒子径は、1μm~300μmである。機能性粒子が1μmを超える大きな粒子径であることで、健康被害を起こしにくい。
機能性粒子の平均粒子径は、10μm以上であることがさらに好ましい。一般に、SPM(浮遊粒子状物質)と呼ばれる粒子径の小さい物質は、10μm以下のものを指すことがあり、健康被害がより懸念されることがある。本実施形態では、機能性粒子の平均粒子径が10μm以上であることで、機能性粒子が保持された繊維から飛散、浮遊した際にも特に健康被害に対して安全性が高い。
また、機能性粒子が300μm以下であることで、機能性粒子の繊維からの脱落が起こりにくく、抗ウイルスシートの機能を維持することができる。機能性粒子の平均粒子径は、100μm以下であると、さらに長期間、また洗浄などの取り扱いに対して機能性粒子の抗ウイルスシートからの脱落が防がれ、抗ウイルス機能を維持することができるのでさらに好ましい。
【0063】
なお、機能性粒子の平均粒子径は、D50粒子径(メジアン径)である。機能性粒子のD50粒子径とは、次のように測定して得られる値を意味するものとする。例えば、シートから機能性粒子を回収し、液中に分散した粒子を直接、撮影し、撮影データの画像処理により分析・解析する事が可能なフロー方式画像解析法を用いた機器(例えば、シスメックス社製:FPIA-3000)にて求めることができる。測定された個々の機能性粒子のデータから、粒子数基準の粒度分布における積算値50%での粒径により求めることができる。
【0064】
機能性粒子の飛散、浮遊による健康面での影響をより少なくするには、機能性粒子の径を大きくし、飛散、浮遊することが考えられる。しかしながら、粒子の径を大きくすると表面積が小さくなり、機能性粒子の質量あたりのシートの繊維との接触面積が小さくなるので、機能性粒子のシートからの脱落が起こりやすくなる。そのため、従来の技術の不織布等に径の大きい機能性粒子を保持させようとしたシートは、抗ウイルスの機能を保持することが困難、又は長期間にわたって抗ウイルスの機能を維持することができないと考えられる。そこで本実施形態では、後述するようにシート部位に有機繊維および微細繊維を設けることによって、機能性粒子のシートからの脱落を起こりにくくすることを試みた。その結果、本実施形態の抗ウイルスシートでは、平均粒子径の大きい機能性粒子を用いることができる。
【0065】
なお、本実施形態では、抗ウイルスシートに含まれる機能性粒子の量は、シート部位の繊維と機能性粒子の含有量の質量比が、5/95~95/5の範囲から選択することが好ましい。また、抗ウイルスシートの全体質量に対して10%以上が好ましく、20%以上がさらに好ましく、40%以上が特に好ましい。
また、抗ウイルスシートに含まれる機能性粒子の量は、抗ウイルスシートの面積あたりの質量で10g/m2以上であることが好ましい。より好ましくは10~105g/m2であることが好ましい。抗ウイルスシートに含まれる機能性粒子の量がこれらの範囲であることで、充分に機能性粒子の機能を発揮できるほど機能性粒子が多く、かつ、繊維に対して機能性粒子が多すぎて保持できないということがなく、長期間にわたって抗ウイルスシートが機能性粒子を保持可能で、その機能を発揮することができる。
【0066】
(シート部位)
(有機繊維および微細繊維)
有機繊維は、有機化合物を含む繊維である。微細繊維は微細な、すなわち平均繊維径が一定の値よりも小さい繊維である。例えば、太い繊維(幹)から、枝分かれした繊維を指す。微細繊維は有機繊維よりも平均繊維径が小さいものを指す。
微細繊維が微細である、すなわち平均繊維径が一定の値よりも小さいとは、例えば、シートの垂直断面を観察した際、繊維径が一定の値以下の繊維を微細繊維とする。繊維径が前記一定の値を超えかつ有機化合物を含む繊維を有機繊維とする。前記一定の値は、微細繊維は有機繊維よりも平均繊維径が小さいという条件内で、有機繊維と微細繊維の構成素材等によって選択できるが、2μm~10μmが目安であり、5μm以上であることが好ましい。例えば、一定の値を5μmであるとし、繊維径が5μm以下の繊維を微細繊維、繊維径が5μmを超えかつ有機化合物を含む繊維を有機繊維とすることができる。
ここで繊維の平均繊維径は、次の方法によって測定される径を意味するものとする。顕微鏡で撮像された繊維の垂直断面に基づき繊維の断面積を算出し(例えば、公知ソフトにて)、前記断面積と同一面積を有する円の直径を算出することにより導かれた面積径の平均値(例えば、20個の繊維の平均値)とすることができる。
本実施形態では、主に、有機繊維が抗ウイルスシートのシート部位の構造を形成し、微細繊維がシート部位に対して機能性粒子を保持する。
微細繊維は有機繊維に比べて、機能性粒子との接触表面積が大きく、シート中に機能性粒子を少量で効率的に担持することができる。これにより、機能性粒子の含有率が高いシートが得られ、抗ウイルス性能に寄与する。
【0067】
(有機繊維)
有機繊維の構成素材は、有機化合物から適宜選択できるが、後述する親水性の化合物を主に含む繊維であることが好ましい。また、有機繊維の構成素材は、シート部位の構造を形成するため、ある程度の強度を有する繊維を構成するものであることが好ましい。有機繊維の構成素材はこれらの目的に応じて、適宜選択することができる。
【0068】
具体的には、前記有機繊維の平均繊維径は、前記機能性粒子の平均粒子径よりも小さいことが好ましい。
さらに具体的には、有機繊維の平均繊維径が2μm~100μmであることが好ましい。また、有機繊維の平均繊維径は5μm~50μmであることがさらに好ましい。
【0069】
有機繊維はフィブリル状繊維でない繊維を構成素材とすることが好ましい。
ここでフィブリル状繊維とは、有機物からなる、数nmから数μmの大きさの繊維状の微細組織を有する繊維を意味する。フィブリル状繊維としては、天然セルロース繊維、再生セルロース繊維、アラミド繊維(帝人:トワロン(登録商標)パルプ、デュポン:ケブラーパルプ等)、アクリル繊維(東洋紡:ビィパル、スターリングファイバー社:CFF等)、ポリアリレート繊維、ポリエチレン合成パルプ(三井化学:SWP等)等が挙げられる。
【0070】
有機繊維がフィブリル状繊維でない繊維を構成素材とすることで、シート自体の強度が向上する、シートの通気度が向上するという効果がある。
【0071】
(微細繊維)
微細繊維の構成素材は、適宜選択できるが、後述する後述する親水性の繊維であることが好ましい。また、微細繊維の構成素材は、機能性粒子を保持するため、ある程度の強度を有する繊維を構成するものであることが好ましい。また、微細繊維の構成素材は、用いる機能性粒子の種類によって、機能性粒子を保持可能である、すなわちある程度親和性があるものであることが好ましい。微細繊維の構成素材はこれらの目的に応じて、適宜選択することができる。
【0072】
微細繊維の平均繊維径は、0.05μm~20μmであることも好ましく、0.1μm~10μmであることもさらに好ましい。
かつ、有機繊維の平均繊維径に対して微細繊維の平均繊維径は、1/5以下であることが好ましい。
【0073】
微細繊維は、フィブリル状繊維を構成素材とすることが好ましい。
具体例としては、例えば、微細繊維の構成素材として、後述する親水性を有する繊維である微小繊維状セルロース(MFC)を用いることができる。
【0074】
微細繊維がフィブリル状繊維を構成素材とすることで、機能性微粒子がフィブリル繊維に絡めとられ、繊維上に担持することができるという効果がある。
【0075】
(シート部位の構成)
本実施形態において、シート部位における有機繊維と微細繊維との含有量の比は、シートを形成し抗ウイルス効果が発現する上で任意に設定することができる。好ましくは有機繊維:微細繊維=50:50~98:2であることが好ましい。シート部位における有機繊維と微細繊維との含有量の比がこの範囲であることで、有機繊維の量が、微細繊維やそれが保持する機能性粒子の量に対して、充分に抗ウイルスシートの構造を保持できるほど多く、また、微細繊維が充分な量の機能性粒子を保持でき、抗ウイルス性能を発揮することができる。
【0076】
本実施形態では、抗ウイルスシートの空隙率が、50~90%であることが好ましい。これらの空隙率により、繊維に機能性粒子が充分に保持され、また、抗ウイルスシートが通気性などを失わない。
【0077】
シート部位の大きさ、すなわち面積や厚み、また、シート部位の形状は、抗ウイルスシート及びそれに用いる抗ウイルス製品の用途に応じて、適宜選択してよい。目安としては、上述の有機繊維及び微細繊維を用いた場合、抗ウイルスシートの厚みが0.03~1.0mmであると、抗ウイルスシートの通気性及び強度をともに両立することができ、抗ウイルス製品に好適に用いることができる。繊維と機能性粒子とを含めた抗ウイルスシートの厚みが上述の値になるよう、繊維を選択しシート部位を形成することが好ましい。
【0078】
抗ウイルスシートは、少なくとも一部に連通孔を有することが好ましい。連通孔とは、シートの厚さ方向に貫通している孔である。シートの厚さ方向に空気の通気有無により確認することができる。抗ウイルスシートの表裏を貫通する連通孔を有していることで、通気性または通液性を確保することができ、マスクや衣類等、またフィルタ等に好適に用いることができる。また、通気または通液によって、機能性粒子がより多くのウイルスに接触するので、高い抗ウイルス効果を発揮することができる。
【0079】
上述の抗ウイルスシートの通気度は、通気度は、15~200cc/cm2・sであることが好ましい。前記範囲であると、シート部位の通気性及び強度をともに両立することができ、抗ウイルス製品に好適に用いることができる。
【0080】
有機繊維および/または微細繊維の構成素材は、親水性の化合物を含むことが好ましい。これにより、有機繊維および/または微細繊維が高い親水性を示すことが好ましい。有機繊維および/または微細繊維が親水性であると、抗ウイルスシートに接触した水分が有機繊維および/または微細繊維に保持される。この作用によって、ウイルスが水分を媒体とする、すなわちウイルスが水分に含有されている場合に、ウイルスが抗ウイルスシートの抗ウイルス粒子に導入されやすくなる。これは、唾液や吐息等の水分を媒体としてウイルスが導入されるマスク等の用途において特に好ましい。
【0081】
有機繊維と微細繊維はいずれが親水性の化合物であってもよい。微細繊維が親水性の化合物であることが好ましい。本実施形態では、微細繊維が機能性粒子を保持する大きな役割を有するので、微細繊維が親水性の化合物であることで、微細繊維が水分を保持したときに機能性粒子とウイルスが接触しやすくなる。有機繊維および微細繊維の構成素材の両方が、いずれも親水性の化合物であることがさらに好ましい。前記構成素材がいずれも親水性の化合物であることで、ウイルスが抗ウイルスシートの抗ウイルス粒子にさらに導入されやすくなる。
【0082】
有機繊維および/または微細繊維の構成素材は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基およびスルホ基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する素材であることがより好ましい。すなわち、上述の親水性の化合物がヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基およびスルホ基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する化合物であることがより好ましい。これらの官能基を有する素材は親水性であり、上述の用途において特に高い効果を発揮することができる。
【0083】
上述の親水性の化合物からなる構成素材の具体例としては、セルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、でんぷん、カルボキシメチルセルロース(CMC)、または、親水性の官能基がついた素材等を用いることができる。
【0084】
なお、本実施形態において、有機繊維と微細繊維は、同じ構成素材により構成されていてもよいし、異なる構成素材により構成されていてもよい。有機繊維と微細繊維とがいずれも親水性の構成素材から構成される場合は、同一の構成素材であってもよい。
【0085】
なお、本実施形態において、有機繊維および/または微細繊維は、単一の種類の繊維を用いてもよいし、複数の種類のものを用いてもよい。例えば、構成素材の異なる有機繊維を2種類用いることができる。構成素材の異なる有機繊維を2種類用いることで、複合体としてより強度等の機械的特性の優れたシート部位を得ることができる。または、それぞれ2種類の異なる性質を持つ構成素材の異なる有機繊維を2種類用いることもできる。例えば、強度に優れた有機繊維と、微細繊維や機能性粒子との親和性に優れた有機繊維を選択し、組み合わせることができる。
【0086】
例えば、構成素材としてPET(ポリエチレンテレフタレート)を用いた有機繊維を用い、上述の親水性の構成素材、例えばPVAの有機繊維と複合させて用いることができる。
【0087】
抗ウイルスシートは、他の構成成分を含んでいてもよい。例えば、上述の有機繊維と同様の化合物の粉末や、バインダ等を含むことができる。これらを含むことで、シート強度の向上や、親水性の向上、粒子脱落の抑制という効果が得られる。
【0088】
(抗ウイルスシート2)
本実施形態の抗ウイルスシートは、本発明の抗ウイルス繊維を含む。本実施形態の抗ウイルスシートの好ましい形態については、上記(抗ウイルスシート1)の記載が援用される。
【0089】
(抗ウイルスシートを用いた抗ウイルス製品)
本実施形態の抗ウイルス製品は、前記抗ウイルスシートを備えた製品を広く含む。
抗ウイルス製品の例としては、衛生用品が挙げられる。衛生用品としては、マスク、ワイパー、おむつ、または生理用品などが挙げられる。これらの衛生用品、特にマスクは、ウイルスを原因とする疾患が流行する状況においては強く求められる。
抗ウイルス製品の例としては他に、フィルタが挙げられる。フィルタは気体を通すフィルタと、液体を通すフィルタの両方が挙げられる。気体を通すフィルタとしては、例えば空気清浄機に用いるフィルタに用いることができる。液体を通すフィルタとしては、濾過用フィルタが挙げられる。これらのフィルタは、フィルタを備えた濾過用機器、内装や外装の一部としてのフィルタが含まれる。
抗ウイルス製品の例としては他に、建材、土木用途、または車両等の内装資材が挙げられる。
抗ウイルス製品の例としては他に、衣類が挙げられる。衣類としては、抗ウイルス機能を持つ防護服が挙げられる。
抗ウイルス製品の例としては他に、ウイルス飛散防止用具が挙げられる。例えばウイルス汚染されたディスポーザブル容器や、機器、検査キットなどを廃棄するディスポーザブルバッグなどが挙げられる。
その他、上記の他にも、抗ウイルスシートは、抗ウイルスの機能を有することが有効な製品に広く使用できる。
【0090】
具体的には、本実施形態の抗ウイルスシートをマスクに用いる場合、抗ウイルスシートの厚みは0.05~0.5mm、抗ウイルスシートの通気度は、15~200cc/cm2・sであることが好ましい。
【実施例0091】
以下に、実施例を示して本実施形態を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0092】
(試験例1)
表1に示す機能性粒子、有機繊維、微細繊維およびその他の材料を用いて、抗ウイルスシートを調整した。実施例1は機能性粒子にハイドロタルサイトを用い、有機繊維にPVA、パルプ又はPETを用い、微細繊維にMFCを用いて調整した。一方、比較例1は機能性粒子を含まないものを用いた。
【0093】
抗ウイルスシートの調整は、具体的には以下の工程によって行った。
機能性粒子としてハイドロタルサイト粉末(協和化学工業株式会社製、商品名「キョーワード500PL」、平均粒子径20μm)と、微細繊維としてマイクロファイバーセルロース(ダイセルミライズ株式会社製、商品名「セリッシュKY100G」)と有機繊維としてビニロン繊維(クラレ株式会社、商品名「VPB053」)とポリエステル繊維(帝人フロンティア株式会社製、商品名「テピルスTA04PN」、有機バインダとしてポリビニルアルコール粉末(デンカ株式会社製、商品名「デンカポバールK177」) とを水に離解分散させ、その後湿潤紙力剤(荒川化学工業社製、商品名「アラフィックスAF255」)、凝集剤を添加して、濃度0.6%のスラリーを得た。
ラボ抄紙機として角型手漉きマシーン(160mmφ)を用い、湿潤シートを得た。
ヤンキードライヤーを用い、湿潤シートを140℃で乾燥して、抗ウイルスシート(ハイドロタルサイトを担持したシート)を得た。
【0094】
抗ウイルス試験は、以下の工程によって行った。
(1)SARS-CoV-2(TY11-927(デルタ株))5.0 X 10^6/50μlを滅菌したヒト唾液(Lee Biosolutions (Maryland Heights, MO, USA)より購入)で10倍希釈。
(2)10 mlラウンドチューブ内に、UV滅菌した試験紙(NoncoatingまたはHydrotalcite coatingしたもの)(10 mm x 50 mm)を入れ、その試験紙の上に75μlのウイルス液を滴下。
(3)直後にピンセットで圧着して試験紙に吸水させ、10分間室温で静置。
(4)4mlのMS (0.5% ウシ胎仔血清添加Dulbecco’s modified Eagle’s minimum essential medium)を添加し、10秒間voltex。
(5)ラウンドチューブを遠心(1,500rpm, 3 min、4 ℃)し、上清を500μl採取(測定まで4℃保存)
(6)上清をMSで10段階希釈。
(7)前日にVeroE6/TMPRESS2細胞を播種して培養した96-well plateに、各希釈液を50μl/wellずつquadruplicateで加え、培養してTCID50を測定した。
【0095】
厚さ(μm):マイクロメーターにより測定した。
空隙率(%):シート中の各配合原料の真密度と配合比より、シートの平均真密度を求めた。空隙率(%)=1-シートの見掛け密度/シートの平均真密度
収率(%)手抄きシートを作製する上で、ワイヤーを抜ける成分により重量減少する場合があるため、手抄き時に限定した収率を下記にて測定した。
収率(%):乾燥後のシートの重量(g)×100/投入する原材料の全固形
吸水度(mm):JIS-P8141(紙および板紙-吸水度試験法-クレム法
通気性(cc/cm2・s):JIS-L1096 8.26(織物及び編物の生地試験方法8.26項)
【0096】
【0097】
本実施形態の機能性粒子、有機繊維及び微細繊維を用いた実施例1は、優れた抗ウイルス性を示した。
一方、機能性粒子を含まないネガティブコントロールである比較例1は、シートの物理的特性では各実施例と大きな差はなかったが、抗ウイルス性は低かった。
【0098】
(試験例2)
無機粒子(窒化ケイ素、ゼオライト、及びハイドロタルサイト)それぞれの、SARS-CoV-2 JPN/TY/WK-521株に対する抗ウイルス性を調べた。具体的には以下のようにして行った。
【0099】
各無機粒子150mgを、15w/v%の濃度になるようにPBS(-)に懸濁して、サンプル液を調製した。一方で、ネガティブコントロールのサンプル液として、無機粒子を懸濁しないPBS(-)を準備した。各サンプルに2×105 TCID50/20μLのウイルス液を添加し、1分間室温で緩やかに転倒混和した。遠心分離(12000rpm、4℃、2分間)し、得られた上清について、TCID50法によるウイルス感染力価の測定、及びウイルスRNA検出(Real time RT PCRによるN遺伝子配列のコピー数定量)を行った。一方で、遠心分離により得られたペレットについては、PBS(-)で3回洗浄した後、ウイルスRNA検出(Real time RT PCR)を行った。
【0100】
TCID
50測定結果を
図1に示し、ウイルスRNA検出(Real time RT PCR)結果を
図2に示す。有意差検定はTukey’s multiple comparison testで行い、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.005である。
図1及び
図2に示されるように、無機粒子でSARS-CoV-2を処理することにより、SARS-CoV-2の感染力とRNAコピー数をどちらも低下させることが分かった。また、この効果は、ハイドロタルサイト及び窒化ケイ素において特に高いことが分かった。
【0101】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。