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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083169
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】フロアーポリッシュ組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20230608BHJP
   C09G 1/00 20060101ALI20230608BHJP
   C09D 5/14 20060101ALI20230608BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230608BHJP
   A01N 59/20 20060101ALN20230608BHJP
   A01P 1/00 20060101ALN20230608BHJP
   A01N 25/04 20060101ALN20230608BHJP
【FI】
C09D201/00
C09G1/00 Z
C09D5/14
C09D7/63
A01N59/20
A01P1/00
A01N25/04 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197390
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】319001710
【氏名又は名称】シーバイエス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】前川 美紀
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 剛
(72)【発明者】
【氏名】菊地原 紀裕
【テーマコード(参考)】
4H011
4J038
【Fターム(参考)】
4H011AA04
4H011BB18
4H011DA15
4J038BA212
4J038CG031
4J038CG141
4J038JA43
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA05
4J038PB05
(57)【要約】
【課題】床面の美麗な外観を長期間にわたって維持することができ、しかも抗ウイルス性を発揮することができるフロアーポリッシュ組成物を提供する。
【解決手段】 フロアーポリッシュベース成分と、(A)2価の銅化合物とを有し、前記(A)2価の銅化合物の含有量がフロアーポリッシュ組成物全体の0.05~1質量%であるフロアーポリッシュ組成物とした。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアーポリッシュベース成分と、(A)2価の銅化合物とを有し、
前記(A)2価の銅化合物の含有量がフロアーポリッシュ組成物全体の0.05~1質量%であるフロアーポリッシュ組成物。
【請求項2】
前記(A)2価の銅化合物が、有機酸銅化合物である請求項1記載のフロアーポリッシュ組成物。
【請求項3】
さらに、(B)アルキルベンゼンスルホン酸および/またはその塩を、フロアーポリッシュ組成物全体の0.05~0.5質量%含有する請求項1または2記載のフロアーポリッシュ組成物。
【請求項4】
さらに、(C)有機酸および/またはその塩(前記(A)成分および(B)成分を除く)を、フロアーポリッシュ組成物全体の0.01~0.5質量%含有する請求項1~3のいずれか一項に記載のフロアーポリッシュ組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の床面を保護し、美観の維持と抗ウイルス性の維持の両立を実現するフロアーポリッシュ組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木質系床材、合成樹脂からなる化学床材、コンクリートや大理石等の石床等の床面には、床材の美観を保つともに、床面の保護を目的として、フロアーフィニッシュ組成物による皮膜が形成されている。上記フロアーフィニッシュ組成物は、「JFPA(日本フロアーポリッシュ工業会)規格-00」、フロアーポリッシュ試験方法通則の用語の定義に規定されている。フロアーポリッシュ組成物は、水性、乳化性、油性の3つに大別され、それぞれ、ポリマータイプとワックスタイプに分類されているが、現在、フロアーフィニッシュ組成物としては、水性ポリマータイプのフロアーポリッシュ組成物が主流となっている。
【0003】
上記水性ポリマータイプのフロアーポリッシュ組成物は、通常、アクリル系共重合物のエマルジョン、ワックスエマルジョン、アルカリ可溶性樹脂、可塑剤、その他の成分からなるものである(例えば、特許文献1,2参照)。
一方、近年、新型コロナウイルスやノロウイルス等の感染症が猛威を振るっており、これらの脅威から身を守るため、生活環境において原因となるウイルスや細菌の除去や増殖の抑制を図ることが求められている。例えば、手すり、ドアノブ、壁、備品等の人の手が触れやすい箇所については、すでに種々の抗菌剤や抗ウイルス剤が使用されるようになっている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭44-24407号公報
【特許文献2】特公昭49-1458号公報
【特許文献3】特許第6935603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況の中、従来、床面を介してのウイルスや細菌の感染のリスクは低いとされていたが、最新の研究によって、床面上の微細な埃がウイルスや細菌の感染源になることが新たに判明した。このため、床面に対してもウイルスや細菌の除去や増殖の抑制を図ることが求められるようになっている。
このため、ウイルスや細菌の除去や増殖の抑制効果を長く維持することのできるフロアーポリッシュ組成物の開発が強く望まれている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、床面の美麗な外観を長期間にわたって維持することができ、しかも抗ウイルス性を発揮することができるフロアーポリッシュ組成物の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、下記の[1]~[4]をその要旨とする。
[1] フロアーポリッシュベース成分と、(A)2価の銅化合物とを有し、前記(A)2価の銅化合物の含有量がフロアーポリッシュ組成物全体の0.05~1質量%であるフロアーポリッシュ組成物。
[2] 前記(A)2価の銅化合物が、有機酸銅化合物である[1]記載のフロアーポリッシュ組成物。
[3] さらに、(B)アルキルベンゼンスルホン酸および/またはその塩を、フロアーポリッシュ組成物全体の0.05~0.5質量%含有する[1]または[2]記載のフロアーポリッシュ組成物。
[4] さらに、(C)有機酸および/またはその塩(前記(A)成分および(B)成分を除く)を、フロアーポリッシュ組成物全体の0.01~0.5質量%含有する[1]~[3]のいずれかに記載のフロアーポリッシュ組成物。
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った。その結果、フロアーポリッシュ組成物において2価の銅化合物を特定量含有させることにより、床面の美観の維持と抗ウイルス性の維持の両立を図ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフロアーポリッシュ組成物は、床面の美麗な外観と抗ウイルス性とを長期間にわたって維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
なお、本発明において、「Xおよび/またはY(X,Yは任意の構成または成分)」とは、Xのみ、Yのみ、XおよびY、という3通りの組合せを意味するものである。
また、本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」または「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
さらに、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)または「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」または「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【0011】
本発明の実施形態の一例に係るフロアーポリッシュ組成物は、一般的に知られているフロアーポリッシュ組成物の組成成分以外に、(A)2価の銅化合物を特定量含有するものである。
以下、本発明の実施形態の一例であるフロアーポリッシュ組成物(以下「本フロアーポリッシュ組成物」とすることがある)について説明する。
【0012】
まず、本フロアーポリッシュ組成物は、フロアーポリッシュベース成分として、例えば、アクリル系共重合物のエマルジョン、ワックスエマルジョン、可塑剤とを有しており、また、アルカリ可溶性樹脂、架橋剤やその他成分を任意に含有するものである。以下、フロアーポリッシュベース成分について説明する。
【0013】
<<フロアーポリッシュベース成分>>
<アクリル系共重合物のエマルジョン>
前記アクリル系共重合物のエマルジョンとしては、例えば、スチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂、等があげられ、とりわけ、床面への塗布作業やはく離等の作業性の点から、アクリルコポリマー共重合体が好ましく用いられ、なかでも、スチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂がより好ましく用いられる。これらは単独で用いることができ、また2種以上を併用することもできる。
【0014】
前記アクリル系樹脂エマルジョンは、例えば、固形分量10~70質量%濃度の水性分散液として得られ、本発明のフロアーポリッシュ組成物中に、通常、固形分として10~40質量%の範囲で添加される。前記アクリル系樹脂エマルジョンとしては、乳化剤、重合開始剤を使用して、広く知られている乳化重合法により製造することが好ましい。前記アクリル系樹脂エマルジョン成分の含有量が前記範囲内にあると、皮膜の光沢向上や歩行による傷付き低減等の美観維持ならびに抗ウイルス成分を有する皮膜の維持性に優れる傾向がみられる。
【0015】
<ワックスエマルジョン>
前記ワックスエマルジョンとしては、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス、蜜蝋、ラノリン、鯨ロウ等の動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックス等の合成炭化水素系ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス等の合成ワックス、エチレン-アクリル酸共重合体,エチレン-メタクリル酸共重合体,エチレン-マレイン酸共重合体,エチレン-酢酸ビニル共重合体等のエチレン-α、β-カルボン酸共重合体等をあげることができる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
これらのワックスエマルジョンのうち、特に、耐ブラックヒールマーク(BHM)性、耐スカッフマーク(SM)性、耐滑り性の向上の点から、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-マレイン酸共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体を用いることが好ましい。
【0017】
本フロアーポリッシュ組成物は、前記ワックスエマルジョンを、純分換算で0.4~7質量%含有することが好ましい。特に2.0~5質量%が好ましい。0.4質量%未満では皮膜の耐久性が低下する傾向がみられ、一方7質量%を超えると皮膜がもろくなる傾向がみられる。
【0018】
<可塑剤>
前記可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等のフタル酸エステル系化合物、ジブチルアジペート、ジブチルジグリコールアジペート等のアジピン酸エステル系化合物、トリブトキシエチルホスフェート等のリン系化合物、クエン酸エステル系化合物、セバシン酸エステル系化合物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等があげられる。なかでも、トリブトキシエチルホスフェート等のリン系化合物や、ジブチルアジペート等のアジピン酸エステル系化合物が、相溶性の点から好適である。これらは単独で用いることができ、また2種以上を併用することもできる。
【0019】
そして、上記可塑剤を用いる場合、その含有量は、本フロアーポリッシュ組成物全体に対し、0.5~5質量%に設定することが好ましく、より好ましくは1~3質量%である。すなわち、可塑剤が上記範囲内にあると、良好なレベリング性と造膜性を達成できる傾向がみられる。
【0020】
また、本フロアーポリッシュ組成物には、前記各成分以外に、適宜、架橋剤、アルカリ可溶性樹脂、アンモニア、アミン等のpH調整剤、帯電防止剤、各種殺菌剤、レベリング剤、界面活性剤((B)成分を除く)、防腐剤、消泡剤、抗菌剤、香料、染料、ウレタン樹脂、ポリイミド、フェノキシ樹脂、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリマレイミド、シアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ポリエステル樹脂、コロイダルシリカ、蛍光増白剤、紫外線吸収剤等を用いることもできる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
【0021】
<架橋剤>
前記架橋剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸亜鉛アンモニア、炭酸カルシウムエチレンジアミン-アンモニア、酢酸亜鉛アンモニア、アクリル酸亜鉛アンモニア、リンゴ酸亜鉛アンモニア、アラニンカルシウムアンモニア等の金属架橋を形成するための多価金属化合物(重金属等)等があげられる。本発明における多価金属とは、2価以上の金属であり、具体的には、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、マンガン、銅、ビスマス、バリウム、アンチモン、ジルコニウム等が挙げられる。これらは単独で用いることができ、また2種以上を併用することもできる。すなわち、本フロアーポリッシュ組成物は、架橋を形成するものであってもなくてもよい。
なお、本発明における多価金属化合物とは、これらの多価金属を含有する化合物である。従来、これらの多価金属化合物は、フロアーポリッシュ用組成物中に含有され、フロアーポリッシュとして塗布された後、乾燥過程で金属と重合体(エチレン性不飽和化合物の重合体)に含まれる酸成分(メタクリル酸やアクリル酸等)とが金属架橋し、耐久性、耐水性および剥離性向上といった性能を付与している。
【0022】
<アルカリ可溶性樹脂>
前記アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸エステル-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル-メタクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸エステル-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-メタクリル酸エステル-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-メタクリル酸エステル-メタクリル酸共重合体、アクリル酸エステル-アクリル酸共重合体、メタクリル酸エステル-アクリル酸共重合体、メタクリル酸エステル-メタクリル酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン-無水マレイン酸共重合体、ロジン変性マレイン酸、シェラック等があげられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
これらのなかでも、特に、濡れ性、皮膜形成の点から、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸エステル-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル-アクリル酸共重合体,スチレン-メタクリル酸エステル-メタクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸エステル-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-メタクリル酸エステル-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-メタクリル酸エステル-メタクリル酸共重合体を用いることが好適である。このように、前記アルカリ可溶性樹脂は、本発明のフロアーポリッシュ組成物中に、必要に応じて配合することができる。
【0024】
そして、本フロアーポリッシュ組成物は、抗ウイルス性を付与するために、前記一般的に知られているフロアーポリッシュベース成分に、(A)2価の銅化合物を特定量配合することが最大の特徴である。
【0025】
<<(A)成分:2価の銅化合物>>
本フロアーポリッシュ組成物に用いられる(A)2価の銅化合物は、特に限定するものではなく、2価の銅無機化合物、2価の銅有機化合物のいずれであってもよいが、フロアーポリッシュの配合成分との相溶性や形成した皮膜の抗ウイルス性の持続性の点で、有機酸銅化合物が好ましく用いられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
【0026】
前記2価の銅無機化合物としては、例えば、硫酸銅、硝酸銅、沃素酸銅、過塩素酸銅、シュウ酸銅、四ホウ酸銅、硫酸アンモニウム銅、アミド硫酸銅および塩化アンモニウム銅、ピロリン酸銅、炭酸銅からなる2価の銅無機酸塩、塩化銅、フッ化銅および臭化銅からなる2価の銅ハロゲン化物、酸化銅、硫化銅、アズライト、マラカイトおよびアジ化銅からなるものがあげられ、なかでも、取り扱い時の作業性、安全性と経済性の点から、硫酸銅と硝酸銅が好ましく用いられる。前記2価の銅有機化合物としては、例えば、2価の銅カルボン酸塩があげられる。
【0027】
前記2価の銅カルボン酸塩の具体例としては、例えば、グルコン酸銅、蟻酸銅、酢酸銅、プロピオン酸銅、酪酸銅、吉草酸銅、カプロン酸銅、エナント酸銅、カプリル酸銅、ペラルゴン酸銅、カプリン酸銅、ミスチン酸銅、パルミチン酸銅、マルガリン酸銅、ステアリン酸銅、オレイン酸銅、乳酸銅、リンゴ酸銅、クエン酸銅、安息香酸銅、フタル酸銅、イソフタル酸銅、テレフタル酸銅、サリチル酸銅、メリト酸銅、シュウ酸銅、マロン酸銅、コハク酸銅、グルタル酸銅、アジピン酸銅、フマル酸銅、グリコール酸銅、グリセリン酸銅、酒石酸銅、アセチルアセトン銅、エチルアセト酢酸銅、イソ吉草酸銅、β‐レゾルシル酸銅、ジアセト酢酸銅、ホルミルコハク酸銅、サリチルアミン酸銅、ビス(2-エチルヘキサン酸)銅、セバシン酸銅およびナフテン酸銅があげられ、なかでも、人体への安全性、フロアーポリッシュ組成物の配合成分との相溶性や形成した皮膜の抗ウイルス性の持続性の点で、有機酸銅化合物であるグルコン酸銅、リンゴ酸銅、クエン酸銅、乳酸銅が好ましく用いられる。
【0028】
その他の2価の銅有機化合物としては、例えば、オキシン銅、アセチルアセトン銅、エチルアセト酢酸銅、トリフルオロメタンスルホン酸銅、フタロシアニン銅、銅エトキシド、銅イソプロポキシド、銅メトキシド、およびジメチルジチオカルバミン酸銅があげられる。
【0029】
前記(A)2価の銅化合物の含有量は、本フロアーポリッシュ組成物全体の0.05~1質量%であり、好ましくは0.1~0.7質量%、より好ましくは0.2~0.5質量%の割合で含有されることである。すなわち、前記(A)2価の銅化合物の含有量が前記範囲内にあると、抗ウイルス性と皮膜強度のバランスに優れる傾向がみられる。
【0030】
<(B)成分:アルキルベンゼンスルホン酸および/またはその塩>
本フロアーポリッシュ組成物は、さらに、(B)アルキルベンゼンスルホン酸および/またはその塩を含有することが好ましい。前記(B)成分としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等があげられ、分散性と貯蔵安定性に優れる点から、とりわけアルキルベンゼンスルホン酸が好ましく用いられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
【0031】
前記(B)成分を含有する場合の含有量は、本フロアーポリッシュ組成物全体の0.05~0.5質量%に設定することが好ましく、より好ましくは0.1~0.4質量%である。すなわち、前記界面活性剤が上記範囲内にあると、2価の銅化合物の分散性が良く、また、フロアーポリッシュとしての性能を維持するという傾向がみられる。なお、本成分を上記範囲よりも多く配合した場合には、皮膜の塗り重ね性や耐水性が低下する傾向がみられる。
【0032】
<(C)成分:有機酸および/またはその塩>
本フロアーポリッシュ組成物は、さらに、(C)有機酸および/またはその塩を有することが好ましい。前記(C)成分を含有する場合の含有量は、本フロアーポリッシュ組成物の0.01~0.5質量%に設定することが好ましく、より好ましくは0.1~0.4質量%である。すなわち、前記有機酸が上記範囲内にあると、(A)2価の銅化合物の分散性が良好となり、また、抗ウイルス性が向上するという傾向がみられる。なお、本成分を上記範囲よりも多く配合した場合には、フロアーポリッシュとしての耐久性が低下する傾向がみられる。
【0033】
本フロアーポリッシュ組成物は、例えば、フロアーポリッシュベース成分と、(A)2価の銅化合物と、その他の任意成分とを混合することにより、好適に製造することができる。このようにして得られる本フロアーポリッシュ組成物は、通常、淡青色から青色を呈する液体である。
【0034】
本フロアーポリッシュ組成物は、床面に塗布して皮膜を形成させることにより、床面を保護するものであり、床面に対する汚れやブラックヒールマーク(靴底が削れて付着した黒い跡)の付着を効果的に防止できる。そして、皮膜中に(A)2価の銅化合物が含有されているため、床面の美観の維持だけでなく、ウイルスや細菌の除去や増殖の抑制を図ることができる。特に、前記皮膜の耐久性に優れるため、美観と抗ウイルス性、抗菌性等の効果が長く持続するという利点を有する。
【実施例0035】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例・比較例に先立って、下記の成分を準備した。各成分とその有効濃度(%)の詳細は下記の通りであり、後記の表1~6の値は、各成分を質量基準の純分で示したものである。
【0036】
<フロアーポリッシュベース成分>
日本フロアーポリッシュ工業会(JFPA)の示す標準フロアーポリッシュの処方に準じたものを使用した。すなわち、フロアーポリッシュベース成分として、アクリル系共重合物のエマルジョン40質量%、ワックスエマルジョン5質量%、可塑剤2質量%を含有し、架橋剤やその他成分を一般的に用いられる範囲で含有するものを用いた。
【0037】
<(A)成分:2価の銅化合物>
・グルコン酸銅(有効濃度100%:ヘルシャスCu、扶桑化学工業社製)
・硫酸銅(有効濃度100%、硫酸銅(II)五水和物、富士フイルム和光純薬社製)
【0038】
<(B)成分:アルキルベンゼンスルホン酸および/またはその塩>
・アルキルベンゼンスルホン酸(有効濃度96%:テイカパワーL-121、テイカ社製)
・ベンゼンオキシビスプロピレンスルホン酸ナトリウム(有効濃度46%:ダウファックス2A-1、ダウ・ケミカル社製)
・アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(有効濃度50%:テイカパワーLN2450、テイカ社製)
【0039】
<(C)成分:有機酸および/またはその塩(A,B成分を除く)>
・クエン酸ナトリウム(有効濃度100%:クエン酸ナトリウム、扶桑化学工業社製)
・グルコン酸亜鉛(有効濃度100%:ヘルシャスZn、扶桑化学工業社製)
・L-グルタミン酸二酢酸・四ナトリウム塩[GLDA 4Na](有効濃度40%:キレストCMG-40、キレスト社製)
・エチレンジアミン四酢酸[EDTA](有効濃度50%:クレワット3K、ナガセケムテックス社製)
・ニトリロ三酢酸[NTA](有効濃度100%:NTA、同仁化学研究所社製)
【0040】
<界面活性剤(A,B,C成分を除く)>
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル(有効濃度100%:非イオン性界面活性剤、ソフタノール70、日本触媒社製)
【0041】
<その他の成分>
・チアゾリン系殺菌剤(有効濃度4%:アクティサイドNV4、ソー・ジャパン社製)
・塩化ベンザルコニウム(有効濃度50%:カチオンG-50、三洋化成工業社製)
【0042】
[実施例1~58、比較例1~12]
後記の表1~6に示す組成(各表の数値の単位は質量%である)のフロアーポリッシュ組成物を作製し、貯蔵安定性、塗り重ね性、皮膜色、耐水性、耐久性、抗ウイルス性(FCV)について評価した。これらの結果を下記の表1~6に併せて示す。
なお、各項目の試験方法、評価基準は、下記に示すとおりである。
【0043】
[貯蔵安定性]
(試験方法)
作製したフロアーポリッシュ組成物を目視で観察した。
【0044】
(評価基準)
〇:均一性が良好であった。
△:沈殿および/または凝集は見られないものの、若干のむらが見られた。
×:沈殿および/または凝集が見られた。
【0045】
[塗り重ね性]
(試験方法)
フロアーポリッシュ組成物を、30cm×30cmの大きさに切り取った黒色ホモジニアスビニル床タイル(MSプレーン5608、東リ社製)に塗布量が15g/m2となるよう滴下し、キムワイプ(登録商標)S-200(クレシア社製)で表面が均一になるように塗り広げ、常温(23℃、以下同じ)で30分間乾燥させた。これらを3回繰り返して皮膜を作製し、その皮膜の状態を目視により観察した。
【0046】
(評価基準)
〇:均一で良好な仕上がりであった。
△:ごく僅かに白スジおよび/または滴下跡が見られた(不十分な状態)。
×:白スジおよび/または滴下跡がはっきりと確認できた(不良な状態)。
【0047】
[皮膜色]
(試験方法)
フロアーポリッシュ組成物を、30cm×30cmの大きさに切り取った白色ホモジニアスビニル床タイル(MSプレーン5626、東リ社製)に塗布量が15g/m2となるよう滴下し、キムワイプ(登録商標)S-200(クレシア社製)で表面が均一になるように塗り広げ、常温で30分間乾燥させた。これらを3回繰り返して皮膜を作製し、その皮膜の色調を、色差計(コニカミノルタ社製)を用いてa値を測定した。
【0048】
(評価基準)
白色 : a値が0以上
淡青色: a値が-2以上0未満
青色 : a値が-2未満
【0049】
[耐水性]
(試験方法)
塗り重ね性試験で作製した黒色ホモジニアスビニル床タイル上に形成された皮膜に対し、さらに24時間常温で乾燥させたものを試験片とし、この試験片の耐水性をJIS K 3920(フロアーポリッシュ試験方法)に準拠して測定した。
すなわち、試験片の皮膜表面の中央部に0.1mLの水を滴下してペトリ皿で覆い、1時間静置した後にペトリ皿を除き、試験片に残っている水滴を柔らかな布等で吸い取ってから1時間放置し、試験片の状態を目視で観察した。
【0050】
(評価基準)
〇:滴下部分に変化は見られなかった(白化現象なし)。
△:滴下部分に白化現象がわずかに見られたか、光沢の低下が見られた。
×:滴下部分に白化現象が明確に見られた。
【0051】
[耐久性]
(試験方法)
フロアーポリッシュ組成物を、30cm×30cmの大きさに切り取った白色ホモジニアスビニル床タイル(MSプレーン5628、東リ社製)に塗布量が15g/m2となるよう滴下し、キムワイプ(登録商標)S-200(クレシア社製)で表面が均一になるように塗り広げ、常温で30分間乾燥させた。これらを3回繰り返して皮膜を作製し、さらに常温で一昼夜乾燥させたものをヒールマーク試験機に供して、評価した。
【0052】
(評価基準)
〇:良好(耐ヒールマーク性や耐スカッフマークを有し、実用性を十分に備えている)
△:普通(耐ヒールマーク性や耐スカッフマークを有するが、実用性は許容の範囲内)
×:不良(耐ヒールマーク性や耐スカッフマーク性に劣り、実用性に劣る)
【0053】
[抗ウイルス試験(FCV)]
(試験方法)
ノロウイルスの代替ウイルスであるネコカリシウイルス(Feline calicivirus、「FCV」と略すことがある)を用いて、JIS Z 2801:2010抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果に準じて、抗ウイルス試験を行った。
すなわち、塗り重ね性試験で作製した黒色ホモジニアスビニル床タイル上に形成された皮膜をビニル床タイルごと5cm×5cm角に切断して試験片とし、皮膜が形成された面を上にして滅菌シャーレ内に静置した。ついで、予め調製したウイルス液を試験片の皮膜が形成された面に滴下し、4cm角に切断したフィルムをかぶせ、ウイルス液がフィルム全体にいきわたるよう軽く押さえた後、温度25℃・湿度90%以上の雰囲気下で24時間保管し、ウイルスを培養した。培養後の試験片に対し、2%FBSを添加したDMEM培地で反応を止め、段階希釈した各希釈液をネコ腎由来細胞(CRFK細胞)に接種して、50%感染週末点法(TCID50/mL)で生存ウイルス量を定量し、下記の評価基準に従って評価した。
【0054】
(評価基準)
◎:4log10 以上
〇:2log10以上4log10未満
△:1log10以上2log10未満
×:1log10未満
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【0060】
【表6】
【0061】
上記の結果から、実施例1~58は、貯蔵安定性、塗り重ね性、皮膜色、耐水性、耐久性、抗ウイルス性(FCV)のいずれも高い評価を得ていることがわかった。
これらに対し、比較例1~12は、前記評価のいずれかが劣り、高い評価を兼ね備えたものはなかった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、建物の床面の保護と抗ウイルス性の両立を実現するフロアーポリッシュ組成物に利用することができる。