(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083186
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】移動式電源車
(51)【国際特許分類】
B60P 3/00 20060101AFI20230608BHJP
H02P 9/04 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
B60P3/00 U
H02P9/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009881
(22)【出願日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2021196713
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】中澤 俊一
(72)【発明者】
【氏名】古荘 弘志
(72)【発明者】
【氏名】大葉 孝明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 充
(72)【発明者】
【氏名】森山 亮
(72)【発明者】
【氏名】田野 稔
(72)【発明者】
【氏名】八重樫 耕
【テーマコード(参考)】
5H590
【Fターム(参考)】
5H590CA07
5H590CA23
5H590CA29
5H590CB01
5H590CC11
5H590CC24
5H590CD01
5H590CD03
5H590CE02
5H590CE04
5H590CE05
5H590CE08
5H590EA07
5H590HA02
5H590HA04
5H590HA30
(57)【要約】
【課題】災害現場において多様なニーズに対応して電力供給を行うことが可能な移動式電源車を提供する。
【解決手段】移動式電源車1は、ディーゼルエンジン11およびLPGエンジン12の2つの内燃機関と、LPGエンジン12によって駆動される交流発電機16および直流発電機17Aと、ディーゼルエンジン11によって駆動される直流発電機17Bとを有し、ディーゼルエンジン11を用いた発電とLPGエンジン12を用いた発電とを選択できるように構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行移動可能な走行体と、前記走行体に設けられる内燃機関および発電装置とを有し、前記内燃機関により前記発電装置を駆動させて発電する移動式電源車であって、
前記発電装置は、交流電力を発電する交流発電装置と、直流電力を発電する直流発電装置とを含むことを特徴とする移動式電源車。
【請求項2】
1つの前記内燃機関により前記交流発電装置および前記直流発電装置を駆動可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載の移動式電源車。
【請求項3】
前記交流発電装置および前記直流発電装置を同時に駆動可能に構成されることを特徴とする請求項2に記載の移動式電源車。
【請求項4】
前記交流発電装置および前記直流発電装置のいずれかを選択的に駆動可能に構成されることを特徴とする請求項2に記載の移動式電源車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行移動可能な移動式電源車に関する。
【背景技術】
【0002】
移動式電源車は、例えば、発電装置や蓄電装置などの電力供給用機器を有しており、この電力供用機器を用いて外部の蓄電装置を充電したり、外部の電気機器等に電力を供給したりすることが可能に構成されている(例えば、下記特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動式電源車は、災害現場における緊急用の電力供給源としても期待されている。電力供給網が破損した災害現場(被災地)では、様々な電気機器に対する多様な電力供給ニーズがあり、これら多様なニーズに対応して電力供給源として支援することができる移動式電源車が望まれている。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、災害現場において多様なニーズに対応して電力供給を行うことが可能な移動式電源車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、走行移動可能な走行体と、前記走行体に設けられる内燃機関(例えば、実施形態におけるLPGエンジン12)および発電装置とを有し、前記内燃機関により前記発電装置を駆動させて発電する移動式電源車であって、前記発電装置は、交流電力を発電する交流発電装置(例えば、実施形態における交流発電機16)と、直流電力を発電する直流発電装置(例えば、実施形態における直流発電機17A)とを含むよう構成される。
【0007】
本発明に係る移動式電源車において、1つの前記内燃機関により前記交流発電装置および前記直流発電装置を駆動可能に構成することが好ましい。
【0008】
また、本発明に係る移動式電源車において、前記交流発電装置および前記直流発電装置を同時に駆動可能に構成してもよい。
【0009】
また、本発明に係る移動式電源車において、前記交流発電装置および前記直流発電装置のいずれかを選択的に駆動可能に構成してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る移動式電源車によれば、発電装置が交流電力を発電する交流発電装置と直流電力を発電する直流発電装置とを含むことにより、電力需要に応じて交流電力および/または直流電力を発電することができるので、災害現場の多様なニーズに対応して電力供給(電源支援)を行うことが可能となる。
【0011】
本発明に係る移動式電源車において、1つの内燃機関により交流発電装置および直流発電装置を駆動可能に構成することで、1つの内燃機関の動力を用いて効率良く交流電力お
よび直流電力の発電を行うことが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る移動式電源車において、交流発電装置および直流発電装置を同時に駆動可能とすることで、1つの内燃機関の動力を用いて交流電力および直流電力を同時に発電することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る移動式電源車において、交流発電装置および直流発電装置のいずれかを選択的に駆動可能に構成することで、電力需要に応じて、1つの内燃機関の動力を用いて交流電力または直流電力を選択的に発電することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る移動式電源車の側面図である。
【
図2】上記移動式電源車の主要機能を示す概念図である。
【
図3】上記移動式電源車の電力供給に関する構成および作用を概略的に示す図である。
【
図4】上記移動式電源車の電力供給に関する構成および作用をより詳細に示すブロック図である。
【
図5】上記移動式電源車のボンベ載置部を概略的に示す平面図である。
【
図6】上記移動式電源車のコントローラと可搬型バッテリとの通信機能についての説明用のブロック図である。
【
図7】上記可搬型バッテリから高所作業車の車載バッテリに給電する場合についての説明用のブロック図である。
【
図8】上記移動式電源車の電力移動装置の構成および作用を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態としての移動式電源車1を示している。この移動式電源車1は、車体2の前部に運転キャブ3を有し、車体2の前後に配設された左右一対の前輪5Fおよび後輪5Rにより走行移動可能なトラック車両(走行体に相当する)をベースに構成されている。運転キャブ3の後方であって車体2の後部には矩形箱状の荷物室7が設けられており、この荷物室7の内部に各種の電力供給用機器が収容されている。
【0016】
移動式電源車1は、
図2に示すように、機能的に発電、蓄電および給電の3つのシステムSM1~SM3を有するとともに、これら3つのシステムSM1~SM3が互いに関連して働くようになっている。これにより、移動式電源車1は、電力供給網が破損した災害現場等における様々な状況下において緊急用の電力供給源として優れた効力を発揮するようになっている。以下、移動式電源車1の電力供給に関する構成および作用について、
図3を追加参照して概略的に説明する。
【0017】
移動式電源車1は、
図3に示すように、複数の内燃機関として、軽油を燃料として作動するディーゼルエンジン11と、LPG(液化石油ガス)を燃料として作動するLPGエンジン12とを有している。ディーゼルエンジン11は、走行用と発電用とを兼用するシャシエンジンとして構成され、LPGエンジン12は発電用としてのみ使用される発電専用エンジンとして構成されている。
【0018】
移動式電源車1は、ディーゼルエンジン11の作動に応じて直流の電力を発電可能に、また、LPGエンジン12の作動に応じて交流、直流の2種類の電力を発電可能に構成されている。具体的には例えば、移動式電源車1には、ディーゼルエンジン11の動力を受けて作動する直流発電機と、LPGエンジン12の動力を受けて作動する交流発電機およ
び直流発電機とが設けられている(発電機は図示せず)。LPGエンジン12の作動に応じて発電された交流電力は、例えば、AC100VやAC200Vとして出力され、被災地における避難所や仮設事務所などに供給可能となっている。移動式電源車1は、発電に用いる内燃機関として、燃料が異なる複数のエンジン(ディーゼルエンジン11およびLPGエンジン12)を備えたことにより、特定の燃料のみで発電を行う構成に比べ燃料調達性が改善される。そのため、燃料切れにより発電不可状態となる可能性を低減でき長時間安定して発電することができる。
【0019】
移動式電源車1は、蓄電装置として、大容量バッテリ13および複数の可搬型バッテリ(モバイルバッテリ)14を有している。大容量バッテリ13は、例えば、リチウムイオン蓄電池を有して構成され、ディーゼルエンジン11および/またはLPGエンジン12の作動に応じて発電された直流電力(電気エネルギ)を大量に蓄えられるように構成されている。移動式電源車1は、大容量バッテリ13を備えたことにより、発電した電力を無駄にすることなく蓄電することができる。大容量バッテリ13に蓄えられた電力は、例えば、DC/ACインバータ(図示せず)を介して交流電力(例えば、AC100VやAC200V)に変換され、災害現場等における電気機器(例えば照明装置)等に供給可能となっている。
【0020】
可搬型バッテリ14は、大容量バッテリ13に蓄電された電力の一部を蓄えられるようになっている。大容量バッテリ13から可搬型バッテリ14への充電は、例えば、DC/DCコンバータ(図示せず)を介して行われる。可搬型バッテリ14は、移動式電源車1の外部に持ち出し可能となっており、避難所や被災家屋等の様々な場所において、緊急用の電源として活用することが可能となっている。
【0021】
移動式電源車1は、急速充電器15を備えている。この急速充電器15は、例えば、LPGエンジン12の作動に応じて発電された交流電力を直流電力に変換して出力できるようになっている。また、急速充電器15は、複数の急速充電規格に対応できるように構成され、電気自動車21や高所作業車22等の作業車のバッテリを急速充電することが可能となっている。
【0022】
次に、移動式電源車1の電力供給に関する構成および作用について、
図4~
図7を追加参照してより詳細に説明する。なお、
図4等に示す白抜きの矢印は、電力(電気エネルギ)の流れを示している。上述したように移動式電源車1は、
図4に示すように、発電、蓄電および給電の3つのシステムSM1~SM3を有している。また、移動式電源車1は、これらのシステムSM1~SM3を制御するコントローラ50と、持ち出し可能な電力供給源(可搬電源)となる複数の可搬型バッテリ14とを備えている。
【0023】
発電システムSM1は、ディーゼルエンジン11およびLPGエンジン12の2つの内燃機関と、LPGエンジン12によって駆動される交流発電機16および直流発電機17Aと、ディーゼルエンジン11によって駆動される直流発電機17Bとを主体として構成される。ディーゼルエンジン11は、軽油を燃料として作動する内燃機関であり、走行用(走行機構の駆動用)と発電用(直流発電機17Bの駆動用)とを兼用するシャシエンジンとして構成されている。一方、LPGエンジン12は、LPGを燃料として作動する内燃機関であり、発電用(交流発電機16および直流発電機17Aの駆動用)としてのみ使用される。走行用のディーゼルエンジン11を発電用としても兼用することにより、LPGエンジン12の他に発電専用の内燃機関を別途設ける場合よりも、発電用の内燃機関の設置スペースを低減することができる。
【0024】
ディーゼルエンジン11の燃料である軽油は、車体2に設けられた燃料タンク33に貯蔵され、ディーゼルエンジン11に供給されるようになっている。燃料タンク33には、
貯蔵された軽油の残量を検出する残量計(図示略)が設けられており、この残量計からの残量検出信号(残量を示す信号)がコントローラ50に入力されるようになっている。直流発電機17Bは、ディーゼルエンジン11の出力(動力)により作動して、直流電力を生成(発電)するように構成されている。なお、ディーゼルエンジン11の動力は、動力伝達機構19を介して直流発電機17Bに伝達されるようになっている。動力伝達機構19は、例えばPTO(パワーテイクオフ)機構により構成され、ディーゼルエンジン11の動力を直流発電機17Bに伝達する状態と、当該動力を直流発電機17Bに伝達しない状態とを切り換えられるように構成されている。
【0025】
ディーゼルエンジン11の動力は、例えば、ディーゼルエンジン11の出力軸に設けられたフライホイールの回転数を1500[rpm]、フライホイールに作用するトルクを200[Nm]とすると、下記の式(1)により求められる(πは円周率)。
200×1500×2π÷60÷1000≒31.4[kW] ・・・ (1)
この場合、直流発電機17Bにより発電される直流電力は、30[kW]程度となる。
【0026】
LPGエンジン12の燃料であるLPGは、ボンベ載置部8(
図5を参照)に載置された複数個(本例では2個)のLPGボンベ31A,31Bに貯蔵されている。ボンベ載置部8は、
図5に示すように、運転キャブ3と荷物室7との間において、荷物室7の右前角部の側壁部7a,7bを内方に引っ込むように形成することによって構成されるスペースに、外気に開放して設けられている。このように外気に開放されたボンベ載置部8にLPGボンベ31A,31Bを載置することにより、LPGボンベ31A,31Bが荷物室7内で温度上昇する部品の影響を受けない。これによりLPGボンベ31A,31Bが規定温度(例えば40℃)を超えて温度上昇することを防止することができる。
【0027】
ボンベ載置部8に載置された2個のLPGボンベ31A,31Bは、ゴムホース等で構成されるガス供給路(図示略)および切換バルブ32(
図4を参照)を介してLPGエンジン12に接続されている。切換バルブ32は、LPGボンベ31AのLPGがLPGエンジン12に供給可能となる状態と、LPGボンベ31BのLPGがLPGエンジン12に供給可能となる状態とを切換え可能に作動するよう構成されている。また、LPGボンベ31A,31Bは、ボンベ載置部8に設置された重量計(図示略)の上にそれぞれ載置されている。重量計は、LPGボンベ31A,31Bの重量を計測するとともに、その計測した重量値を示す重量計測信号をコントローラ50に出力するように構成されている。コントローラ50は、この重量計測信号に基づき、LPGボンベ31A,31BにおけるLPGの残量を推定できるようになっている。なお、LPGエンジン12の仕事量とLPGの消費量との関係が分かっている場合は、その関係に基づきLPGの消費量を求め、それからLPGの残量を推定するようにしてもよい。例えば、LPGエンジン12の仕事量とLPGエンジン12によって駆動される交流発電機16または直流発電機17Aの発電量(消費電力量)は略等しいとみなせるので、当該発電量を計測してその計測値からLPGの消費量を求めてもよい。
【0028】
交流発電機16は、LPGエンジン12の動力により作動して、交流電力を発電するように構成されており、直流発電機17Aは、LPGエンジン12の動力により作動して、直流電力を発電するように構成されている。なお、LPGエンジン12の動力は、動力伝達機構18を介して交流発電機16、直流発電機17Aに伝達されるようになっている。動力伝達機構18は、例えばクラッチやギヤ、ベルト等の機構を有して構成され、LPGエンジン12の動力を交流発電機16と直流発電機17Aの両方に伝達する状態と、当該動力を交流発電機16のみに伝達する状態と、当該動力を直流発電機17Aのみに伝達する状態とに切り換えられるように構成されている。
【0029】
LPGエンジン12の動力は、例えば、LPGエンジン12の出力軸に設けられたフラ
イホイールの回転数を1500[rpm]、フライホイールに作用するトルクを200[Nm]とすると、上記の式(1)により求められる。この場合、交流発電機16により発電される直流電力および直流発電機17Aにより発電される直流電力は、どちらも30[kW]程度となる。なお、LPGエンジン12は、ディーゼルエンジン11に比較して安定した周波数で回転可能である。そのため、LPGエンジン12により交流発電機16を作動させて交流電力を発電することにより、周波数の安定した交流電力を発電することが可能となる。
【0030】
図4に示すように、LPGエンジン12、交流発電機16および直流発電機17Aは、防音筐体34内に収容されている。そのため、LPGエンジン12により交流発電機16および/または直流発電機17Aを作動させて発電を行っても、LPGエンジン12、交流発電機16および直流発電機17Aの作動音が外部に漏れにくくなっている。そのため、LPGエンジン12、交流発電機16および直流発電機17Aによる発電は、ディーゼルエンジン11および直流発電機17Bによる発電に比べ、静粛性が求められる場所(例えば住宅街)や時間帯(例えば深夜や早朝の時間帯)において発電を行う場合に適している。
【0031】
コントローラ50は、上述した重量計からの重量計測信号に基づきLPGボンベ31A,31BにおけるLPGの残量を推定するとともに、その残量に基づき切換バルブ32の作動を制御するようになっている。例えば、LPGボンベ31AのLPGがLPGエンジン12に供給可能な状態に切換バルブ32が設定されて発電が行われているときに、LPGボンベ31AのLPGの残量が規定量まで減少した場合には、LPGボンベ31BのLPGがLPGエンジン12に供給可能となるように切換バルブ32を切り換える。これにより、LPGエンジン12を用いた発電を、長時間継続して行うことが可能となる。
【0032】
コントローラ50は、ディーゼルエンジン11を用いた発電とLPGエンジン12を用いた発電とが、電力需要等の所定の条件に応じて選択的に行われるよう制御するようになっている。例えば、静粛性が求められる場所や時間帯で発電する場合は、LPGエンジン12を用いた発電を選択し、発電の持続性(長時間の連続的発電)が求められる状況では、ディーゼルエンジン11とLPGエンジン12のうち燃料残量の多い方のエンジンを用いた発電を選択する。また、需要電力(各給電対象に供給される負荷電流の合計値)が所定値以上に高くなる場合には、ディーゼルエンジン11を用いた発電とLPGエンジン12を用いた発電とが同時並行的に行われるよう制御する。なお、コントローラ50は、作業者の選択指示(指示入力)があった場合は、その指示に従って選択制御する。このように、移動式電源車1では、ディーゼルエンジン11を用いた発電とLPGエンジン12を用いた発電とを選択できるようになっているので、電力需要や周囲環境(発電を行う場所や時間帯)に対応した適正な発電を行うことができる。
【0033】
コントローラ50は、電力需要等に応じて動力伝達機構18の作動を制御して、交流発電機16による発電を行うか直流発電機17Aによる発電を行うかを選択できるようになっている。例えば、交流電力の需要があり直流電力の需要がない状況では、LPGエンジン12の動力が交流発電機16のみに伝達されるよう動力伝達機構18を作動させ、交流発電機16による交流電力の発電のみが行われるよう制御する。逆に、交流電力の需要がなく直流電力の需要がある状況では、LPGエンジン12の動力が直流発電機17Aのみに伝達されるよう動力伝達機構18を作動させ、直流発電機17Aによる直流電力の発電のみが行われるように制御する。また、交流電力の需要もあり直流電力の需要もある状況では、LPGエンジン12の動力が交流発電機16と直流発電機17Aの両方に伝達されるよう動力伝達機構18を作動させ、交流発電機16による交流電力の発電と直流発電機17Aによる直流電力の発電が同時並行的に行われるよう制御する。このように、移動式電源車1では、1つのLPGエンジン12の動力を用いて交流発電機16による交流電力
の発電と直流発電機17Aによる直流電力の発電とを行うことができるので、効率良く交流電力および直流電力の発電を行うことができる。また、移動式電源車1では、LPGエンジン12の動力を用いて交流発電機16による交流電力の発電と直流発電機17Aによる直流電力の発電とを選択できるようになっているので、電力需要に対応した無駄の無い発電を行うことができる。
【0034】
コントローラ50は、ディーゼルエンジン11の燃料である軽油の残量に応じて、ディーゼルエンジン11を発電のために作動させることを規制できるようになっている。例えば、コントローラ50は、上述した残量計からの残量検出信号に基づき燃料タンク33における軽油の残量を監視する。また、コントローラ50は、移動式電源車1に搭載されたカーナビゲーションシステムにおいて、次の移動予定地が入力されて移動予定地までの移動距離が算出された場合に、その算出値に基づき移動に必要な燃料消費予定量を求める。そして、コントローラ50は、燃料タンク33における軽油の残量が燃料消費予定量を下回る可能性が生じた場合には、発電のために作動中であってもディーゼルエンジン11の作動を停止するように制御する。このように、移動式電源車1では、走行用としても用いられるディーゼルエンジン11の燃料の残量に応じて、ディーゼルエンジン11を発電のために作動させることを規制するようになっているので、燃料不足により走行不能となり移動目的予定地までの移動ができなくなることを回避できる。
【0035】
図4に示すように、蓄電システムSM2は、大容量バッテリ13を主体として構成される。大容量バッテリ13は、リチウムイオン蓄電池を有して構成されるが、別タイプの蓄電池(例えば鉛蓄電池)を有する構成としてもよい。大容量バッテリ13には、LPGエンジン12によって駆動される直流発電機17Aによって発電された直流電力と、ディーゼルエンジン11によって駆動される直流発電機17Bによって発電された直流電力が蓄えられる。大容量バッテリ13に入力(蓄電)される直流電力を30[kW]とすると、空乏状態の大容量バッテリ13を、大容量バッテリ13の容量が30[kWh]の場合は1時間程度で、60[kWh]の場合は2時間程度で満充電とすることができる。
【0036】
図4に示すように、給電システムSM3は、交流電源41、急速充電器15、DC/ACインバータ43、交流電源44および汎用充電器45を主体として構成される。交流電源41は、商用電源の代替電源として機能するものであり、交流発電機16によって発電された交流電力により、例えば、三相AC200Vの電源仕様で30[kW]の交流電力を供給できるように構成されている。交流電源41から出力される交流電力は、例えば、被災地等の災害現場に設置される仮設事務所61等の交流給電対象SJ1に供給される。
【0037】
急速充電器15は、交流発電機16によって発電された交流電力を所定電圧(例えば50V)の直流電力に変換するAC/DCコンバータ15aを有し、変換した直流電力を電気自動車21や高所作業車22等の充電対象車両SJ2に供給し、これらの車載バッテリを急速充電できるように構成されている。また、急速充電器15は、充電対象車両SJ2の急速充電規格の違いに対応して充電することができるようになっている。例えば、電気自動車21の車載バッテリを急速充電する場合には、電気自動車21の急速充電規格(例えば、CHAdeMO(登録商標))に合致した充電方式で行い、高所作業車22の車載バッテリを急速充電する場合には、高所作業車22の急速充電規格に合致した充電方式で行う。また、急速充電器15は、電気自動車充電用の充電プラグと高所作業車充電用の充電プラグとを備えており、これらの充電プラグを適宜使い分けられるようになっている。このように、移動式電源車1では、急速充電器15を備えたことにより、急速充電規格の違いに対応して充電対象車両SJ2の車載バッテリを適正に充電することができる。また、電気自動車充電用の急速充電器と高所作業車充電用の急速充電器とを別々に備える場合に比較して急速充電器の設置スペースを低減することができる。
【0038】
DC/ACインバータ43は、大容量バッテリ13に蓄えられて大容量バッテリ13から供給される直流電力(例えば、9[kW]の電力)を交流電力に変換して交流電源44に供給するようになっている。交流電源44は、商用電源の代替電源として機能するものであり、DC/ACインバータ43から供給される交流電力により、例えば、AC100Vの電源仕様の交流電力を供給できるように構成されている。交流電源44から出力される交流電力は、例えば、被災地等の災害現場に設置される照明装置62等の交流給電対象SJ3に供給される。DC/ACインバータ43および交流電源44は、交流給電対象SJ3の電源要求レベル(例えば、電圧や周波数の許容変動範囲等)に対応した適切な交流電力を供給できるようになっている。
【0039】
なお、上述した交流電源41により、交流電源44と同様のAC100Vの交流電力を交流給電対象SJ3に供給することもできる。その場合、コントローラ50の制御により、交流電源41からの給電と交流電源44からの給電とを、交流給電対象SJ3の電源要求レベルや所定の条件(例えば、給電の際の電力負荷、大容量バッテリ13の蓄電量、給電を行う時間帯、給電を行う場所等)に応じて選択的に切り換えられるようになっている。例えば、交流給電対象SJ3の電源要求レベルが高い場合(周波数変動の許容幅が狭い場合)は、LPGエンジン12の回転数の変動の影響を受けて交流電力の周波数が変動する交流電源41からの給電ではなく、安定した周波数の交流電力を供給できる交流電源44からの給電を選択する。また、静粛性が要求される場所(住宅街等)や時間帯(早朝や深夜)で給電する場合は、静粛性に優れた交流電源44からの給電を選択する(交流電源41からの給電は、エンジン(LPGエンジン12)を作動させる必要があるので、そのような必要がない交流電源44からの給電に比べると静粛性が低い)。また、電力負荷が所定値以下と低い場合や、大容量バッテリ13の蓄電量が所定値以上で余裕がある場合は、場所や時間帯に関わらず、静粛性に優れた交流電源44からの給電を選択してもよい。このように、移動式電源車1では、交流電源41からの給電と交流電源44からの給電とを、交流給電対象SJ3の電源要求レベルや所定の条件に応じて選択的に切り換えられるようになっているので、電源要求レベルや所定の条件に応じた適正な電力供給を行うことができる。
【0040】
汎用充電器45は、大容量バッテリ13に蓄えられて大容量バッテリ13から供給される直流電力(例えば、24[kW]の電力)を、所定電圧(例えば、100V)の直流電力に変換するDC/DCコンバータ45aを備え、変換した直流電力を充電対象SJ4となる各種の受電側バッテリ63や可搬型バッテリ14に供給して充電できるように構成されている。また、汎用充電器45は、受電側バッテリ63の型式に応じて充電条件(充電制御方法)を変更して充電を行うことができるように構成されている。型式は、受電側バッテリ63の種類(リチウムイオン蓄電池か、鉛蓄電池か、ニッケル水素蓄電池か等の種別)および製品仕様を特定するものであり、型式によって充電制御方法(充電電圧や充電電流、充電時間)が異なる。型式は作業者が識別して、その型式に応じた充電制御方法を汎用充電器45において設定するようにしてもよい。また、型式を記憶した制御チップ等(「受電側バッテリコントローラ」と称する)を受電側バッテリ63が有している場合は、その受電側バッテリコントローラと汎用充電器45が通信して型式を識別し、その型式に応じた充電制御方法を自動的に設定するようにしてもよい。例えば、CCCV(定電流定電圧)充電方式(充電プロフィール)に対応する型式の場合は、定電流充電時の電流値、定電圧充電に切り替える際の電圧値、充電を終了する指標となる終末電圧値等を識別し、充電プロフィールに対応した充電を行う。これにより、型式に対応して受電側バッテリ63を適正に充電することができる。
【0041】
また、
図4では1個のみ図示しているが、汎用充電器45は複数設けられており、複数の汎用充電器45に受電側バッテリ63をそれぞれ接続し、複数の受電側バッテリ63を同時に充電することができるようになっている。また、各汎用充電器45に別々に接続さ
れた複数の受電側バッテリ63の優先順位を決め、優先順位の高い少なくとも1つの受電側バッテリ63を選択してそれを優先して充電することもできるようになっている。例えば、各受電側バッテリ63のSOC(充電状態)を識別し、充電率が高い受電側バッテリ63ほど優先順位を高くしてもよい。また、CCCV充電方式により複数の受電側バッテリ63を同時に充電し、充電電圧が所定値(例えば50V)に達したものがあれば、それを優先して選択し、その後はその選択した受電側バッテリ63が満充電となるまで、それのみを充電するようにしてもよい。なお、優先順位はコントローラ50が決め、コントローラ50が各汎用充電器45の作動を制御するようにしてもよい。このように優先順位に基づく充電を行うことにより、優先順位の高い受電側バッテリ63から順に充電することができる。
【0042】
図4に示す複数の可搬型バッテリ14は、例えば、リチウムイオン蓄電池を有して構成される。各可搬型バッテリ14には、大容量バッテリ13に蓄えられた直流電力の一部を、汎用充電器45を介して充電できるようになっている。汎用充電器45は、可搬型バッテリ14と接続された際に可搬型バッテリ14の型式を識別し、その型式に応じた充電条件(充電制御方法)に従った適正な充電を行えるように構成されている。
図6に示すように、可搬型バッテリ14は、自身の電力状況(充電率や出力可能電流値等)を把握するとともに、電力状況に関する情報や自身の型式等の情報を管理するバッテリ制御部14aを有している。このバッテリ制御部14aは、GPS(全地球測位システム)を利用して自身(可搬型バッテリ14)の位置情報を取得するとともに、その位置情報を可搬型バッテリ14の電力状況や型式等の情報と共に発信する機能を有している。移動式電源車1のコントローラ50は、バッテリ制御部14aから発信された位置情報等を受信し、可搬型バッテリ14の位置や充電率等を把握することにより、持ち出された可搬型バッテリ14を適正に管理できるようになっている。
【0043】
可搬型バッテリ14は、汎用充電器45により充電された直流電力を交流電源に変換するDC/ACインバータ(図示略)を備えており、可搬型の交流電源として機能することが可能である。また、可搬型バッテリ14は、移動式電源車1以外の他の車両の車載バッテリと接続されて当該車載バッテリに給電する機能も有している。そのため、移動式電源車1から離れた位置にある車両の車載バッテリに対しても給電することができる。
【0044】
図7は、可搬型バッテリ14から作業車両(本例では、高所作業車とする)の車載バッテリに給電する状態を示している。
図7に示すように、可搬型バッテリ14からの給電を受ける高所作業車22は、車載バッテリ22aと、車載バッテリ22aから供給される電力により作動する作業装置22b(例えば、電動モータ)と、作業装置22bの作動を制御する作業装置制御部22cとを備えている。
【0045】
作業装置制御部22cは、可搬型バッテリ14が車載バッテリ22aと接続された際に、可搬型バッテリ14のバッテリ制御部14aから可搬型バッテリ14の電力状態の情報(型式や出力電流特性、充電率等)を取得するようになっている。そして、可搬型バッテリ14の電力状態に応じて、車載バッテリ22aの要求電力(可搬型バッテリ14に要求する電力)を調整する。具体的には、可搬型バッテリ14の出力電流特性および充電率に応じ、作業装置制御部22cが作業装置22bの作動速度等を増減して要求電力を調整する。これにより、可搬型バッテリ14の電力状態に合わない電力要求が行われたために可搬型バッテリ14に高い負荷がかかり、可搬型バッテリ14が破損したり給電エラーが生じたりすることを回避することができる。
【0046】
なお、作業装置制御部22cは、作業装置22bが作動していない場合のみ可搬型バッテリ14から車載バッテリ22aへの給電を許容し、作業装置22bが作動中の場合には可搬型バッテリ14から車載バッテリ22aへの給電を規制するように構成してもよい。
これにより、作業装置22bが作動中のときに可搬型バッテリ14から車載バッテリ22aへの給電が行われたために可搬型バッテリ14に高い負荷がかかり、可搬型バッテリ14が破損したり給電エラーが生じたりすることを回避することが可能となる。また、作業装置22bが作動中でないときは、可搬型バッテリ14から車載バッテリ22aへの給電が行われるので、車載バッテリ22aの充電率が低下することを抑制することができる。
【0047】
移動式電源車1は、大容量バッテリ13と、他の車両の車載バッテリとの間で電力を双方向に移送できるようになっており、以下、この点について
図8を追加参照して説明する。
図8に示すように、移動式電源車1は、電力移送装置70を備えている。電力移送装置70は、双方向DC/DCコンバータ71を有して構成され、接続された2つのバッテリに蓄えられた電力を、双方向DC/DCコンバータ71を介して2つのバッテリの間で双方向に移送させる。双方向DC/DCコンバータ71は、昇圧回路及び降圧回路を有しており、接続された2つのバッテリの定格電圧が異なる場合、その定格電圧の違いに応じて、2つのバッテリ間で電力を移送する際の電圧を適正値に変換することができる。
【0048】
電力移送装置70は、移動式電源車1の大容量バッテリ13に蓄えられた電力を降圧して、高所作業車22の車載バッテリ22aや電気自動車21の車載バッテリ21aに移送するだけではなく、高所作業車22の車載バッテリ22aや電気自動車21の車載バッテリ21aに蓄えられた電力を昇圧して、移動式電源車1の大容量バッテリ13に移送することもできる。また、電力移送装置70は、高所作業車22の車載バッテリ22aに蓄えられた電力を昇圧して電気自動車21の車載バッテリ21aに移送することも、電気自動車21の車載バッテリ21aに蓄えられた電力を降圧して高所作業車22の車載バッテリ22aに移送することもできる。このような電力移送装置70を備えたことにより、移動式電源車1、電気自動車21および高所作業車22が有する各バッテリ13,21a,22aが蓄える電力を、各バッテリ13,21a,22aの充電率等に応じて適正に分配するとともに、これらの電力を総合的に有効利用することができる。
【0049】
以上のように構成された移動式電源車1によれば、災害現場において多様なニーズに対応して電力供給を行うことが可能である。
【0050】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、上記実施形態の移動式電源車1は、ディーゼルエンジン11およびLPGエンジン12の2つの内燃機関を備えているが、これに限定されるものではない。3つ以上の内燃機関を備えるとともに、各内燃機関に対応する発電機を設けるようにしてもよい。発電に用いる内燃機関としては、ガソリンエンジンや水素エンジンを用いることもできる。
【0051】
上記実施形態では、大容量バッテリ13に蓄えた電力の一部を可搬型バッテリ14により車外に持ち出せるようにしているが、これに限定されるものではない。大容量バッテリ13と電気ケーブルで接続されたDC/ACインバータを可搬型に構成し、このDC/ACインバータを電気ケーブルの長さの範囲内で持ち出して交流電源として用いるようにしてもよい。また、大容量バッテリ13に蓄えた電力の一部を電気自動車の車載バッテリに移送し、この電気自動車を移動式電源車1が進入できないような狭隘地に移動させ、電気自動車の車載バッテリから電力を供給するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 移動式電源車
2 車体
7 荷物室
8 ボンベ載置部
11 ディーゼルエンジン
12 LPGエンジン
13 大容量バッテリ
14 可搬型バッテリ
15 急速充電器
16 交流発電機
17A,17B 直流発電機
21 電気自動車
22 高所作業車
50 コントローラ
70 電力移送装置