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特開2023-83198データ処理方法、訓練方法、情報処理装置、および散乱線補正プログラム
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  • 特開-データ処理方法、訓練方法、情報処理装置、および散乱線補正プログラム 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083198
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】データ処理方法、訓練方法、情報処理装置、および散乱線補正プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20230608BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230608BHJP
   G06V 10/82 20220101ALI20230608BHJP
【FI】
A61B6/03 350K
G06T7/00 350C
G06V10/82
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070211
(22)【出願日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】17/542,245
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VISUAL BASIC
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユジエ・リュウ
(72)【発明者】
【氏名】ツ チェン・リー
(72)【発明者】
【氏名】カイ・リャン
(72)【発明者】
【氏名】ジエン・ジョウ
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ・ユウ
【テーマコード(参考)】
4C093
5L096
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA07
4C093FC26
4C093FE14
5L096AA06
5L096BA06
5L096CA12
5L096HA11
(57)【要約】

【課題】散乱線補正のパラメータを精度良く決定して散乱線補正を行うこと。
【解決手段】本実施形態に係る散乱線補正のためのデータ処理方法は、放射線スキャンで取得される投影データに基づき再構成された第1の放射線画像データを取得し、1つまたは複数のトレーニングされた機械学習モデルを前記投影データと前記第1の放射線画像データとに適用して、散乱カーネルのパラメータを取得し、前記パラメータと前記投影データとを前記散乱カーネルに入力して、推定散乱分布データを取得し、前記推定散乱分布データを用いて前記投影データに散乱線補正を行い、補正後投影データを取得することを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線スキャンで取得される投影データに基づき再構成された第1の放射線画像データを取得し、
1つまたは複数のトレーニングされた機械学習モデルを前記投影データと前記第1の放射線画像データとに適用して、散乱カーネルのパラメータを取得し、
前記パラメータと前記投影データとを前記散乱カーネルに入力して、推定散乱分布データを取得し、
前記推定散乱分布データを用いて前記投影データに散乱線補正を行い、補正後投影データを取得する、
ことを備える散乱線補正のためのデータ処理方法。
【請求項2】
前記補正後投影データから第2の放射線画像データを再構成することをさらに備える、
請求項1に記載のデータ処理方法。
【請求項3】
表示のために前記第2の放射線画像データを出力することをさらに備える、
請求項2に記載のデータ処理方法。
【請求項4】
前記投影データは、コンピュータ断層撮影データであり、
前記補正後投影データは、CTデータであり、
前記放射線スキャンは、X線CTスキャンである、
請求項1に記載のデータ処理方法。
【請求項5】
前記散乱カーネルは畳み込みカーネルである、
請求項1に記載のデータ処理方法。
【請求項6】
前記1つまたは複数のトレーニングされた機械学習モデルは、ニューラルネットワークである、
請求項1に記載のデータ処理方法。
【請求項7】
前記パラメータは、被スキャンジオメトリ、等価の単色エネルギー、反散乱グリッド、1つまたは複数の被スキャン材料に依存するパラメータを含む、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のデータ処理方法。
【請求項8】
散乱分布を定義するターゲットデータと、投影データと、放射線画像データとを有し、パラメータと投影データとを入力として受け付ける散乱線モデルのためのトレーニングデータセットを取得し、
前記トレーニングデータセットにおける前記投影データと前記放射線画像データとを1つまたは複数の機械学習モデルに適用して、前記散乱線モデルの前記パラメータを発生し、
前記散乱線モデルを使用して、前記発生されたパラメータと前記投影データとに基づいて、出力推定散乱分布データを発生し、
前記出力推定散乱分布データと前記ターゲットデータとを損失関数に適用して、損失値を取得し、
前記損失値に基づいて、前記1つまたは複数の機械学習モデルを更新する、
ことを備える、1つまたは複数の機械学習モデルをトレーニングする訓練方法。
【請求項9】
前記1つまたは複数の機械学習モデルのそれぞれは、個別のニューラルネットワークである、
請求項8に記載の訓練方法。
【請求項10】
前記ターゲットデータは散乱分布を定義する、
請求項8に記載の訓練方法。
【請求項11】
前記トレーニングデータセットを取得することは、
生投影データと生再構成画像データとを取得することと、
第1の前処理を前記生再構成画像データに行い、前記放射線画像データを発生することと、
第2の前処理を前記生投影データに行い、前記投影データを作成することと、
を含む、
請求項8乃至10のいずれか一項に記載の訓練方法。
【請求項12】
前記1つまたは複数の機械学習モデルは、少なくとも2つの機械学習モデルを含み、
前記少なくとも2つの機械学習モデルの各機械学習モデルは、前記散乱線モデルの前記パラメータの1つまたは複数の個別のパラメータを出力する、
請求項8に記載の訓練方法。
【請求項13】
前記損失値は、前記損失関数の勾配である、
請求項8に記載の訓練方法。
【請求項14】
前記散乱線モデルは、畳み込みカーネルである、
請求項8に記載の訓練方法。
【請求項15】
放射線スキャンで取得される投影データに基づき再構成された第1の放射線画像データを取得するデータ取得部と、
1つまたは複数のトレーニングされた機械学習モデルを前記投影データと前記第1の放射線画像データとに適用して、散乱線モデルのパラメータを発生するパラメータ発生部と、
前記パラメータと前記投影データとを入力として用いて前記散乱線モデルを適用して、推定散乱分布データを発生する推定散乱分布データ発生部と、
前記推定散乱分布データを用いて前記投影データに対して散乱線補正を実行し、補正後投影データを発生する散乱線補正部と、
を備える情報処理装置。
【請求項16】
前記1つまたは複数のトレーニングされた機械学習モデルは、ニューラルネットワークである、
請求項15に記載の情報処理装置。
【請求項17】
前記パラメータは、被スキャンジオメトリ、等価の単色エネルギー、反散乱グリッド、および1つまたは複数の被スキャン材料に依存するパラメータを含む、
請求項15または16に記載の情報処理装置。
【請求項18】
前記補正後投影データから第2の放射線画像を再構成する再構成部をさらに備える、請求項15に記載の情報処理装置。
【請求項19】
前記1つまたは複数のトレーニングされた機械学習モデルは、投影データと放射線画像データとの両方を入力として受け付ける第1のトレーニングされた機械学習モデルを含む、
請求項15に記載の情報処理装置。
【請求項20】
前記1つまたは複数のトレーニングされた機械学習モデルは、
入力として投影データを受け付けるが放射線画像データを受け付けない第1のトレーニングされた機械学習モデルを含み、
入力として放射線画像データを受け付けるが投影データを受け付けない第2のトレーニングされた機械学習モデルを含む、
請求項15に記載の情報処理装置。
【請求項21】
コンピュータに、
放射線スキャンで取得される投影データに基づき再構成された第1の放射線画像データを取得し、
1つまたは複数のトレーニングされた機械学習モデルを前記投影データと前記第1の放射線画像データとに適用して、散乱カーネルのパラメータを取得し、
前記パラメータと前記投影データとを前記散乱カーネルに入力して、推定散乱分布データを取得し、
前記推定散乱分布データを用いて前記投影データに散乱線補正を行い、補正後投影データを取得すること、
を実現させる散乱線補正プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の実施形態は、概して、例えば、データ処理方法、訓練方法、情報処理装置、および散乱線補正プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線撮影は、例えば患者身体の内部部材などの体内のオブジェクトの内部構造の画像を生成(例えば、再構成)できる。例えば、コンピュータ断層撮影(computed tomography:CT)スキャンは、異なる角度から撮影されたオブジェクトの複数のX線画像を用いて、当該オブジェクト内部のボリューム画像を再構成する。しかし、X線散乱により、再構成された画像の品質が劣化することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第10542944号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、散乱線補正のパラメータを精度良く決定して散乱線補正を行うことにある。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係る散乱線補正のためのデータ処理方法は、放射線スキャンで取得される投影データに基づき再構成された第1の放射線画像データを取得し、1つまたは複数のトレーニングされた機械学習モデルを前記投影データと前記第1の放射線画像データとに適用して、散乱カーネルのパラメータを取得し、前記パラメータと前記投影データとを前記散乱カーネルに入力して、推定散乱分布データを取得し、前記推定散乱分布データを用いて前記投影データに散乱線補正を行い、補正後投影データを取得する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A図1Aは、医用撮像システムの実施形態の一例を示す図。
図1B図1Bは、スキャニング装置の実施形態の一例を示す図。
図2図2は、散乱の実施形態の一例を示す図。
図3図3は、画像再構成処理の実施形態の一例における情報のフローを示す図。
図4図4は、画像再構成処理の実施形態の一例を示す図。
図5図5は、画像再構成処理の実施形態の一例を示す図。
図6図6は、画像再構成処理の実施形態の一例を示す図。
図7図7は、トレーニング処理の実施形態の一例における情報のフローを示す図。
図8図8は、ニューラルネットワークトレーニング処理の実施形態の一例を示す図。
図9図9は、ニューラルネットワークトレーニング処理の実施形態の一例を示す図。
図10図10は、医用撮像システムの実施形態の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
撮像データ処理方法(データ処理方法)のいくつかの実施形態は、放射線スキャンで取得される投影データセットに基づいて再構成される第1の放射線画像データを得て、1つまたは複数のトレーニングされた機械学習モデルを前記投影データセットに適用して、散乱カーネルのパラメータセットを得て、前記パラメータセットと前記投影データセットを散乱カーネルに入力して、推定散乱分布データを得て、前記推定散乱分布データを用いて前記投影データセットに対して散乱線補正を行い、補正された投影データセットを得る、ことを含む。
【0008】
訓練方法のいくつかの実施形態は、入力としてパラメータセットと投影データとを受け付ける散乱線モデルのトレーニングデータセットであって、投影データと、放射線画像データと、散乱分布と定義するターゲットデータと、を含むトレーニングデータセットを得て、前記投影データと前記放射線画像データを1つまたは複数の機械学習モデルに適用して、前記散乱線モデルの前記パラメータを発生し、前記散乱線モデルを使用して、前記パラメータセットと前記投影データに基づき出力推定散乱分布データを発生し、前記出力推定散乱分布データと前記ターゲットデータを損失関数に適用して、損失値を得て、前記1つまたは複数の機械学習モデルを前記損失値に基づいて更新する、ことを含む。
【0009】
情報処理装置のいくつかの実施形態は、1つまたは複数のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体と、1つまたは複数のプロセッサとを備える。前記1つまたは複数のプロセッサが前記1つまたは複数のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体と連携することで、前記装置は放射線スキャンで取得される投影データセットに基づき再構成された第1の放射線画像データを得て、1つまたは複数のトレーニングされた機械学習モデルを前記投影データセットと前記第1の放射線画像データに適用して、散乱線モデルのパラメータセットを得て、前記散乱線モデルを適用して、前記パラメータセットと前記投影データセットとを入力として用いて、推定散乱分布データを得て、散乱線補正を前記投影データセットに前記推定散乱分布データを用いて行い、補正後投影データセットを得る。
【0010】
以下の段落で説明のための実施形態について記載する。その他の実施形態は、代替例、等価例、および変形例を含んでよい。また、説明のための実施形態はいくつかの新しい特徴を含んでよく、そして、特定の特徴はここに記載する装置、システム、方法の実施形態の一部において必須でなくてもよい。さらに、いくつかの実施形態は、下記の説明のための実施形態のうちの2つ以上からの特徴を含む。
【0011】
また、ここでは、接続詞「または」は一般的には包括の「または」を意味するが、排他的「または」であると明示される場合または文脈から排他的「または」でなければならない場合は、「または」は排他的「または」を意味する場合がある。さらに、ここで使用されているように、「第1」、「第2」等は順序的、連続的、または優先的関係を必ずしも示さないが、特に指定のない限り、ある部材、オペレーション、要素、グループ、コレクション、セット等を他のものより明確に区別するように使用される。
【0012】
また、本明細書および図面において、類似する参照番号は複数のビューを通して同一または対応する部材を示す。
【0013】
図1Aは、医用撮像システム10の実施形態の一例を示す。医用撮像システム10は、少なくとも1つのスキャニング装置100と、それぞれが空間構成されたコンピューティング装置(例えば、空間構成されたデスクトップコンピュータ、空間構成されたラップトップコンピュータ、空間構成されたサーバ)である1つまたは複数の画像発生装置110と、表示装置120と、を備える。
【0014】
スキャニング装置100は、被検体(例えば患者)の領域(例えば、エリア、ボリューム、スライス)の放射線スキャンを行い、投影データを取得するように構成される。被検体の領域は1つまたは複数のオブジェクト(例えば、臓器、血管)を含んでよい。放射線スキャンのスキャニングモダリティは、例えば、コンピュータ断層撮影(computed tomography:CT)、陽電子放出断層撮影(positron emission tomography:PET)、X線撮影、およびトモシンセシスであってよい。
【0015】
当該1つまたは複数の画像発生装置110は、スキャニング装置100から投影データを得て、当該投影データに基づいて被スキャン領域の再構成を定義する放射線画像データを発生する。また、再構成は、被スキャン領域の1つまたは複数の再構成された画像を含む。放射線画像データを発生するために、例えば、投影データが異なる角度または位置から取得された複数のグループの投影データを含む場合には、当該1つまたは複数の画像発生装置110は、当該投影データに再構成処理を行う。再構成処理の例として、フィルタ補正逆投影(例えば、ラドン変換)および近似画像再構成がある。
【0016】
当該1つまたは複数の画像発生装置110が被スキャン領域の再構成を発生した後、当該1つまたは複数の画像発生装置110は再構成を表示装置120に送り、表示装置120は当該再構成から再構成された1つまたは複数の再構成画像を表示する。
【0017】
図1Bは、スキャニング装置100の実施形態の一例を示す。スキャニング装置100は、ボウタイフィルタ1003だけでなく、被検体51に対して反対側に位置する放射線エミッタ1001と放射線検出器1002とを備える。放射線エミッタ1001は、被検体51の被スキャン領域を通り放射線検出器1002により検出される放射線55(例えばX線)を出射する。放射線検出器1002は、検出された放射線55に基づいて投影データ1010(例えば、複数のグループの投影データ1010)を発生する。本実施形態では、放射線エミッタ1001は、先細りビーム(例えば、長方錘、方錘、円錘、楕円錘)の形状で放射線55を出射する。従って、放射線検出器1002は、湾曲した検出面を有する。しかし、いくつかの実施形態では、放射線エミッタ1001は平行ビームの形状で放射線を出射する、または、放射線検出器1002は平坦な検出面を有する。
【0018】
また本実施形態は、放射線検出器1002の検出面側上または付近にコリメータ装置1004を備える。図2に示すように、コリメータ装置1004は複数のコリメータ板10041を備える。コリメータ板10041は、板面が放射線エミッタ1001により出射される放射線55の放射方向に対して平行に延びるように設けられる。さらにコリメータ板10041は、放射線検出器1002の検出要素10021(例えば画素)の境界に位置してよい。
【0019】
また本実施形態では、放射線エミッタ1001と放射線検出器1002は、被検体51を中心に回転するように構成される。このように、被検体51に対して異なる角度で、放射線エミッタ1001は被検体51の被スキャン領域を通り放射線検出器1002により検出される放射線55を出射する。また、当該角度のそれぞれで、放射線検出器1002は個別のグループの投影データ1010を発生する。当該角度は集合的に角度スキャニング範囲を定義する。例えば、一部の実施形態では角度スキャニング範囲は0から180°であり、また一部の実施形態では角度スキャニング範囲は0から360°である。さらに、スキャニング装置100の一部の実施形態は、900から1,200個の角度で個別のグループの投影データを発生する。このように、例えばスキャニング装置100が0から180°の範囲に等間隔わたる900個の角度で投影データグループを発生すると、角度間の増分は0.2°となるだろう。また、例えばスキャニング装置100が0から360°の範囲に等間隔わたる1,200個の角度で投影データグループを発生すると、角度間の増分は0.3°となるだろう。
【0020】
放射線ビームが被検体51を通るとき、放射線55の一部は散乱することがある。例えば、図2は、散乱の実施形態の一例を示す。放射線55は、散乱されなかった放射線(例えばX線)を含む主フラックス56を含む。主フラックス56に加えて、放射線55は、1回の散乱イベントを経験した放射線(放射レイ)を含む1回散乱フラックス57も含む。放射線55はまた、複数回の散乱された放射線(放射レイ)を含むマルチ散乱フラックス58(複数回散乱フラックスと称されることがある)も含む。放射線検出器1002は、主フラックス56(P(u,v))と(1回散乱フラックス57と複数回散乱フラックス58を含む)散乱フラックスS(u,v)とを両方含む合計フラックスT(u,v)を検出できる。散乱フラックスS(u,v)は、推定散乱分布データにより説明、または、その他定義されてよい。散乱フラックスS(u,v)の放射レイは、ここでは「散乱線」と称されることがある。
【0021】
コリメータ板10041がz軸方向に、または、約z軸方向に延びるため、z軸方向をトラバースする(z軸方向に垂直な指向性コンポーネントを有する)散乱線を、コリメータ装置1004で遮断できる。しかし、z軸方向に進む(z軸方向に垂直な指向性コンポーネントを有さない、または、z軸方向に垂直な指向性コンポーネントが小さい)散乱線は、コリメータ装置1004で遮断できない。このように、散乱フラックスS(u,v)はz軸方向に進む散乱線を含み、z軸方向をトラバースする散乱線を含まない可能性がある。
【0022】
放射線撮像において、放射線検出器1002により検出される散乱された放射線は画像の品質を落とし得る。例えば、コンピュータ断層撮影(computed tomography:CT)(例えば、広域ビームジオメトリを有するコーンビームCT)における散乱されたX線は、高品質(例えば散乱フリー)な再構成画像を迅速かつ正確に発生する上で、悪い影響を及ぼし得る。効率の悪い散乱シミュレーション及び補償が画像品質に影響を及ぼし、結果として、CT画像再構成において画像コントラストの悪化、アーチファクトやその他のエラーを生じ得る。合計フラックスT(u,v)において検出された散乱線を補正し主フラックス56を分離するために、測定された投影データ(合計フラックスT(u,v))を使用して、まず散乱フラックスS(u,v)を(例えば、散乱分布により説明されるように)推定し、次に主フラックス56を残しつつ推定された散乱フラックスS(u,v)を合計フラックスT(u,v)から除去することができる。
【0023】
散乱線モデル(例えば、畳み込みカーネルなどの散乱カーネル)を、推定散乱分布(散乱フラックスS(u,v))を計算するために使用できる。散乱カーネルは、例えば、畳み込みカーネルであってもよい。すなわち、散乱線モデルは、畳み込みカーネルであってもよい。また、いくつかの散乱線モデルは、1回散乱フラックス57とマルチ散乱フラックス58とに相当する。推定散乱分布は、被スキャン領域内のオブジェクトの形状と、被スキャン領域内のオブジェクトの分布と、オブジェクトを構成する材料と、を含む変数に依存する。例えば、ある医用コンテキストでは、推定散乱分布は患者の形状と、患者内の患者の臓器の分布とに依存できる。散乱線モデルの各種実施形態は、これらの変数の一部または全てに相当し得るが、これらの散乱線モデルの精度は、パラメータ1103が正確でない場合は低下するだろう。
【0024】
散乱線モデルのいくつかの実施形態は、下記のダブルガウシアン・カーネルモデルなどのダブルガウシアン・カーネルモデルである。
【数1】
このダブルガウシアン・カーネルモデルG(c,r)は、レイリーおよびコンプトン散乱カーネルを、第1のレイリーパラメータZとコンプトンパラメータZの乗算に組み合わせる。ZとZは、等価の単色エネルギー(E)と被スキャンオブジェクトの材料に依存する。パラメータβ、α、β、およびαは、被スキャンジオメトリと等価の単色エネルギーと使用される反散乱グリッドだけでなく、被スキャンオブジェクトのレイリーパラメータにも依存する。(c,r)は、投影における検出器画素の列と行のインデックスであり、(u,v)は検出器の中心に対する座標距離である。よって、Z、Z、β、α、β、およびαは調整可能なパラメータである。また、調節可能なパラメータを有する他の散乱線モデルを使用できる。例えば、散乱カーネルのパラメータは、被スキャンジオメトリ、等価の単色エネルギー、反散乱グリッド、1つまたは複数の被スキャン材料に依存するパラメータを含む。
【0025】
図3は、画像再構成処理の実施形態の一例における情報のフローを示す。すなわち、図3は、データ処理方法の処理手順の概要の一例を示す図である。投影データ1010(例えば、CT投影データ)は、投影データ1010に基づいて放射線画像データ1101(第1の放射線画像データ)を発生する第1の再構成処理201Aに入力される。すなわち、放射線スキャンで取得される投影データ1010に基づき再構成された第1の放射線画像データ1101が取得される。例えば、投影データ1010は、コンピュータ断層撮影データであり、放射線スキャンはX線CTスキャンである。放射線画像データ1101は、被スキャン領域の1つまたは複数の再構成画像を定義し、投影データ1010は異なる角度または位置で取得された複数のセットの投影データ1010を含んでよい。再構成処理の例として、フィルタ逆投影(例えば、ラドン変換)および近似画像再構成がある。
【0026】
1つまたは複数のトレーニングされたニューラルネットワーク1501は、放射線画像データ1101と投影データ1010とを入力として用いて適用され、1つまたは複数のトレーニングされたニューラルネットワーク1501は、散乱線モデル1505(例えば、物理散乱カーネルとも称されることがある散乱カーネル)のパラメータ1103を出力する。例えば、1つまたは複数のトレーニングされた機械学習モデルを投影データ1010と第1の放射線画像データ1101とに適用して、散乱カーネルのパラメータ1103が取得される。すなわち、1つまたは複数のトレーニングされた機械学習モデルは、投影データ1010と放射線画像データ1101との両方を入力として受け付ける第1のトレーニングされた機械学習モデルを含んでいてもよい。また、1つまたは複数のトレーニングされたニューラルネットワーク1501は、z軸方向に沿って進む散乱線であって、z軸方向に延びるコリメータ板10041に遮断されない散乱線のために最適化されるパラメータ1103を出力してよい。1つまたは複数のトレーニングされたニューラルネットワーク1501は、放射線画像データ1101と投影データ1010の両方から特徴を抽出し、当該特徴に基づいてパラメータ1103を発生してよい。例えば、1つまたは複数のトレーニングされたニューラルネットワーク1501は、放射線画像データ1101から患者の形状と臓器の分布を抽出し、投影データ1010から光子吸収情報を抽出してよく、これによりパラメータ1103の精度を改善してよい。また、例えば、1つまたは複数のトレーニングされたニューラルネットワーク1501は、多層パーセプトロンニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、ディープスタッキング(deep stacking)ニューラルネットワーク、回帰ニューラルネットワーク、およびモジュラーニューラルネットワークのうちの1つまたは複数を含んでよい。すなわち、1つまたは複数のトレーニングされた機械学習モデルは、ニューラルネットワークである。
【0027】
トレーニングされたニューラルネットワーク1501を1つだけ含む実施形態では、当該1つのトレーニングされたニューラルネットワーク1501がパラメータ1103の全てを出力してよい。複数のトレーニングされたニューラルネットワーク1501を含む実施形態では、トレーニングされたニューラルネットワーク1501のそれぞれがパラメータ1103の個別のサブセットを出力してよく、サブセットは重ならなくてよい(すなわち、各パラメータ1103は、トレーニングされたニューラルネットワーク1501のうちの1つ、および1つだけにより出力される)。なお、1つまたは複数のトレーニングされた機械学習モデルは、入力として投影データ1010を受け付けるが放射線画像データ1101を受け付けない第1のトレーニングされた機械学習モデルを含み、入力として放射線画像データ1101を受け付けるが投影データ1010を受け付けない第2のトレーニングされた機械学習モデルを含んでいてもよい。
【0028】
その後、散乱線モデル1505は、パラメータ1103と投影データ1010とを入力として用いて適用され、散乱線モデル1505は、投影データ1010の一部または全てのための個別の散乱分布(例えば、散乱フラックスS(u,v))を定義する推定散乱分布データ1105を出力する。例えば、パラメータ1103と投影データ1010とを散乱カーネルに入力して、推定散乱分布データ1105が取得される。このように、推定散乱分布データ1105は、投影データ1010のための合計散乱分布を定義してよい。例えば、投影データ1010が複数のセットの投影データ1010(例えば、異なる角度または位置で取得された複数のセット)を含む場合、推定散乱分布データ1105はセットごとに個別の散乱分布を定義してよく、推定散乱分布データ1105の全ての組み合わせは、投影データ1010全ての合計散乱分布を定義してよい。
【0029】
その後、推定散乱分布データ1105と投影データ1010は、推定散乱分布データ1105に基づいて投影データ1010を補正する補正処理203に入力され、散乱が低減または除去された補正後投影データ1107を生成する。すなわち、推定散乱分布データ1105を用いて投影データ1010に散乱線補正を行い、補正後投影データ1107が取得される。例えば、補正後投影データ1107は、CTデータである。その後、補正後投影データ1107は、第1の再構成処理201Aと同じでも第1の再構成処理201Aと異なっていてもよい第2の再構成処理201Bに入力される。第2の再構成処理201Bは、補正後投影データ1107に基づいて補正後放射線画像データ1109(第2の放射線画像データ)を発生する。すなわち、補正後投影データ1107から第2の放射線画像データ1109が再構成される。補正後放射線画像データ1109は、被スキャン領域の1つまたは複数の再構成された画像を定義する。
【0030】
図4は、画像再構成処理の実施形態の一例を示す。ここで説明される本操作フローおよび他の操作フローはそれぞれ所与の順番で示されているが、いくつかの実施形態では、当該操作の少なくとも一部を提示された順番とは異なる順番で行ってよい。異なる順番の例として、並列、並行、重複、再順序付け、同時、インクリメンタル、交互の順番が含まれる。操作フローのいくつかの実施形態は、ここで説明される2以上の操作フローからのブロックを含んでよい。このように、ここで説明される操作フローの他の実施形態は、ブロックを省略、ブロックを追加、ブロックの順序を変更、ブロックを組み合わせ、またはブロックを更に多くのブロックに分割してよい。
【0031】
さらに、ここで説明される操作フローは画像発生装置110により実行されるが、操作フローのいくつかの実施形態は2以上の画像発生装置110により、または、1つまたは複数の他の空間構成されたコンピューティング装置により実行される。
【0032】
フローはブロックB400でスタートしブロックB410へ移り、画像発生装置110は、投影データ(例えば、複数セットの投影データ)を得る。投影データ1010は、1つまたは複数のスキャニング装置100から、または、投影データ1010を記憶する装置(例えば、ネットワークに接続された記憶装置などの外部記憶装置)から得てよい。
【0033】
次に、ブロックB420で、画像発生装置110は、投影データ1010に基づいて第1の放射線画像データ1101を発生する。第1の放射線画像データ1101は、第1の再構成画像を定義する。
【0034】
その後フローはブロックB430へ移り、画像発生装置110は、散乱線モデル1505のためのパラメータ1103を発生するために、第1の放射線画像データ1101と投影データ1010を入力として用いて1つまたは複数のトレーニングされた機械学習モデルを適用する。その後、ブロックB440で、画像発生装置110は、推定散乱分布データ1105を発生するために、投影データ1010とパラメータ1103とを入力として用いて、散乱線モデル1505を適用する。
【0035】
フローはその後ブロックB450へ進み、画像発生装置110は、投影データ1010と推定散乱分布データ1105に基づいて補正後投影データ1107を発生する。例えば、画像発生装置110は、投影データ1010から推定散乱分布データ1105をサブトラクション(または他の方法では除去)してよい。このように、画像発生装置110は、(投影データ1010により説明される)合計フラックスT(u,v)から(推定散乱分布データ1105により定義される)散乱フラックスS(u,v)をサブトラクションして、(補正後投影データ1107により説明される)主P(u,v)を得ることができる。
【0036】
フローはその後ブロックB460へ進み、画像発生装置110は、補正後投影データ1107に基づいて、1つまたは複数の第2の再構成画像(1つまたは複数の補正後再構成画像)を定義する第2の放射線画像データ(補正後放射線画像データ)1109を発生する。また、画像発生装置110は、当該1つまたは複数の第2の再構成画像を表示装置120に表示してよい。すなわち、表示のために、第2の放射線画像データ1109が出力される。
【0037】
最後に、フローはブロックB470で終了する。
【0038】
図5は、画像再構成処理の実施形態の一例を示す。フローはブロックB500でスタートしブロックB505へ移り、画像発生装置110は、投影データ(例えば、複数のセットの投影データ)1010を得る。投影データ1010は、1つまたは複数のスキャニング装置100から、または、投影データ1010を記憶する装置から得てよい。次に、ブロックB510で、画像発生装置110は、投影データ1010に基づいて第1の放射線画像データ(例えば、1つまたは複数の第1の再構成画像)1101を発生する。
【0039】
その後フローはブロックB515へ移り、画像発生装置110は、散乱線モデル1505の選択を得る。例えば、画像発生装置110は、ユーザ入力から当該選択を得てよい、または、画像発生装置110は、当該選択を発生してもよい。画像発生装置110が当該選択を発生する実施形態では、当該選択の発生は投影データ1010または第1の放射線画像データ1101に基づいてよい。
【0040】
次に、ブロックB520では、画像発生装置110は、1つまたは複数のトレーニングされた機械学習モデルのそれぞれの選択を得る。例えば、画像発生装置110は、ユーザ入力から当該それぞれの選択を得てよい、または、画像発生装置110は、当該それぞれの選択を発生してもよい。画像発生装置110が当該それぞれの選択を発生する実施形態では、当該それぞれ選択の発生は、投影データ1010、第1の放射線画像データ1101、または選択された散乱線モデルに基づいてよい。
【0041】
その後フローはブロックB525へ移り、画像発生装置110は、選択された散乱線モデルのためのパラメータ1103を発生するために、第1の放射線画像データ1101と投影データ1010を入力として用いて、選択された1つまたは複数のトレーニングされた機械学習モデルを適用する。その後、ブロックB530で画像発生装置110は、推定散乱分布データを発生するために、投影データ1010とパラメータ1103とを入力として用いて、選択された散乱線モデルを適用する。
【0042】
その後フローはブロックB535へ進み、画像発生装置110は、投影データ1010と推定散乱分布データ1105に基づいて補正後投影データ1107を発生する。その後フローはブロックB540へ進み、画像発生装置110は、補正後投影データ1107に基づいて、1つまたは複数の第2の再構成データ(1つまたは複数の補正後再構成画像)を定義する第2の放射線画像データ(補正後放射線画像データ)1109を発生する。次にブロックB545で、画像発生装置110は、第2の放射線画像データ1109を表示装置120に出力する。
【0043】
最後に、フローはブロックB550で終了する。
【0044】
図6は、画像再構成処理の実施形態の一例を示す。フローはブロックB600でスタートしブロックB605へ移り、画像発生装置110は、投影データ(例えば、複数のセットの投影データ)1010を得る。投影データ1010は、1つまたは複数のスキャニング装置100から、または、投影データ1010を記憶する装置から得てよい。次に、ブロックB610で、画像発生装置110は、投影データ1010に基づいて第1の放射線画像データ1101を発生する。
【0045】
その後フローはブロックB615へ進み、画像発生装置110は、投影データ1010を前処理する、または、第1の放射線画像データ1101を前処理する。いくつかの実施形態では、当該前処理は投影データ1010または第1の放射線画像データ1101から1つまたは複数の特徴を抽出する。例えば、当該前処理は被スキャン領域内のオブジェクト(例えば臓器)の形状および位置を抽出してよく、また、被スキャン領域の材料または当該材料のプロパティを特定してよい。さらに、当該前処理は当該データを1つまたは複数のトレーニングされた機械学習モデル(または図7に示す1つまたは複数の散乱線モデル)に入れてよい。
【0046】
機械学習モデル用に前処理されていなく散乱線モデル用に前処理されていない投影データと放射線画像データ(例えば、図6のブロックB615、図8のブロックB815、図9のブロックB920、および図7の前処理1(1601A)から前処理N(1601C)のいずれの処理も行われていない投影データ)は、ここでは生投影データと生放射線画像データと称されることがある。生投影データと生放射線画像データは、機械学習用にも散乱線モデル用にも(ブロックB615で行われるように)前処理を施されていないが、生投影データと生放射線画像データはデジタル信号へ適用されるその他の処理を施されていてもよい。例えば、生投影データはセンサーオフセット補正やログ変換を施されていてよい。また例えば、生投影データと生放射線画像データは、キャリブレーション、ビーム硬化補正、リングアーチファクト補正、ノイズリダクションを施されていてよい。
【0047】
その後フローはブロックB620へ移り、画像発生装置110は、ブロックB615の前処理の結果に少なくとも部分的に基づいて、散乱線モデル1505の選択を得る。例えば、画像発生装置110は、被スキャン領域内のオブジェクトの形状および位置に基づいて、または、被スキャン領域の材料または当該材料のプロパティに基づいて、当該選択を発生してよい。また、画像発生装置110は、被スキャン領域内のオブジェクトの形状および位置に基づいて、又は、被スキャン領域の材料または当該材料のプロパティに基づいて、散乱線モデルのリストを発生し、当該リストをユーザに提示し、当該リスト内の散乱線モデル1505の選択をユーザから受け付けてよい。
【0048】
次に、ブロックB625で画像発生装置110は、1つまたは複数のトレーニングされた機械学習モデルのそれぞれの選択を得る。例えば、画像発生装置110は、ユーザ入力から当該それぞれの選択を得てよい、または、画像発生装置110は、当該それぞれの選択を発生してよい。画像発生装置110が当該それぞれの選択を発生する実施形態では、当該それぞれ選択の発生は、投影データ1010、第1の放射線画像データ1101、ブロックB615で行われた前処理、または選択された散乱線モデルに基づいてよい。
【0049】
その後フローはブロックB630へ移り、画像発生装置110は、選択された散乱線モデルのためのパラメータ1103を発生するために、第1の放射線画像データ1101と投影データ1010とを入力として用いて、選択された1つまたは複数のトレーニングされた機械学習モデルを適用する。投影データ1010がブロックB615で前処理された場合は、前処理された投影データを、選択された1つまたは複数のトレーニングされた機械学習モデルへの入力として使用してよい。第1の放射線画像データ1101がブロックB615で前処理された場合は、前処理された第1の放射線画像データを、選択された1つまたは複数のトレーニングされた機械学習モデルへの入力として使用してよい。また、いくつかの実施形態は、生の第1の放射線画像データまたは生の投影データを入力として用いる。その後ブロックB635で、画像発生装置110は、推定散乱分布データ1105を発生するために、投影データとパラメータ1103とを入力として用いて、選択された散乱線モデルを適用する。
【0050】
その後フローはブロックB640へ進み、画像発生装置110は、投影データ1010と推定散乱分布データ1105に基づいて、補正後投影データ1107を発生する。その後フローはブロックB645へ進み、画像発生装置110は、補正後投影データ1107に基づいて、1つまたは複数の第2の再構成データ(1つまたは複数の補正後再構成画像)を定義する第2の放射線画像データ(補正後放射線画像データ)1109を発生する。次にブロックB650で、画像発生装置110は、第2の放射線画像データ1109を表示装置120に出力する。
【0051】
最後に、フローはブロックB655で終了する。
【0052】
図7は、トレーニング処理の実施形態の一例における情報のフローを示す。すなわち、図7は、1つまたは複数の機械学習モデルをトレーニングする訓練方法データ処理方法の処理手順の概要の一例を示す図である。1つまたは複数の機械学習モデルのそれぞれは、個別のニューラルネットワークであってもよい。また、1つまたは複数の機械学習モデルは、少なくとも2つの機械学習モデルを含んでいてもよい。このとき、少なくとも2つの機械学習モデルの各機械学習モデルは、散乱線モデル1505のパラメータ1103A~Cの1つまたは複数の個別のパラメータを出力する。前処理オペレーション1601A~Cが、投影データ1010(例えば、複数のセットの投影データ1010)と対応する放射線画像データ1101(対応する投影データ1010から発生される放射線画像データ1101)に対して、トレーニングデータセット700から行われる。スキャニングオペレーションからの投影データ1010を投影データセット703と共に記憶してよく、また、対応する放射線画像データ1101を対応する放射線画像データセット705に記憶してよい。複数の投影データセット703と対応する放射線画像データセット705とを含む大量のトレーニングデータセット700を、X線散乱が依存し得るいくつかの要因、例えばスキャニング装置ジオメトリ(例えばCTスキャニング装置ジオメトリ)、ソースエネルギースペクトラム、および患者のサイズおよび臓器分布、を説明するために使用できる。このように、いくつかの実施形態では、トレーニングデータセット700は、複数のファントム投影データセット703(および対応する放射線画像データセット705)と、複数の患者投影データセット703(および対応する放射線画像データセット705)とを含み得る。複数のファントム投影データセット703の各ファントムは、所定の人間の解剖学的構造により、各ファントムが構成される形状、サイズ、材料の調節を介して選択可能である。加えて、および、患者の代表的母集団を考慮して、複数の患者投影データセット703は、単純な及び複雑な解剖学的構造の患者を含むように選択できる。当該データは、患者の形状、患者の解剖学的構造、臓器分布、サイズ、金属含有物、コントラストを特に含むバリエーション付きの典型的な患者データを含む。また、患者投影データセット703は、スキャニングkVpおよび線量におけるバリエーションを含むように選択できる。
【0053】
また、各投影データセット703は対応するターゲットデータ707を有する。対応するターゲットデータ707は、散乱フラックスS(u,v)の少なくとも一部が除去された場合に対応する投影データセット703からの投影データが何であるか、を定義してよい。このように、対応するターゲットデータ707は、対応する投影データ703の散乱フラックスS(u,v)の一部(例えば、全てまたはほぼ全て)または全てを除外しつつ、対応する投影データ703の主フラックス56を定義してよい。ニューラルネットワーク1501A~Cはパラメータ1103A~Cを出力するようにトレーニングされ、これらのパラメータ1103A~Cは、散乱線モデル1505により適用されると、可能な限り近いターゲットデータ707に一致する推定散乱分布データ1105を散乱線モデル1505に出力させる。
【0054】
投影データセット703の対応するターゲットデータ707は、1つまたは複数の放射線検出器1002での散乱分布(例えば合計散乱分布)を定義してよい。例えば、いくつかの実施形態では、合計散乱分布におけるポイント
【数2】
での光子フラックスの具体的な強度を、下記のような放射伝達方程式のフォーマットで記述してよい。すなわち、ターゲットデータ707は、推定散乱分布を定義する。
【数3】
ここで、
【数4】
はポイント
【数5】
、エネルギーE、方向
【数6】
での光子フラックスの具体的な強度であり、
【数7】
はX線源とボウタイ散乱に依存し、
【数8】
はオブジェクトの面上のポイントを示し、
【数9】
は境界面の垂直方向であり、
【数10】
はX線CT,コンプトン、およびレイリー散乱の散乱断面であり、
【数11】
は合計減衰係数である。
【0055】
トレーニング中に、前処理オペレーション1601A~Cは、(個別の投影データセット703からの)投影データ1010と(個別の放射線画像データセット705からの)対応する放射線画像データ1101に対して行われる。本実施形態では、前処理1(1601A)が放射線画像データ1101に行われ、前処理2(1601B)から前処理N(1601C)が投影データ1010に行われる。なお、Nは2より大きい正の整数(例えば、3,4,5,10,15)である。他の実施形態では、1より多い前処理オペレーションが放射線画像データ1101に行われる。また、いくつかの実施形態では、1より多い前処理オペレーションの出力が、散乱線モデル1505に入力される。また、いくつかの実施形態では、投影データ1010を入力として受け付ける全ての前処理オペレーションの出力が、ニューラルネットワーク1501A~Cの少なくとも1つに入力される。
【0056】
ニューラルネットワーク1501A~Cは、前処理オペレーション1601A~Cの少なくとも一部の出力を入力として受け付ける。実施形態に応じて、ニューラルネットワーク1501A~Cのそれぞれが前処理オペレーション1601A~Cのうちの1つだけの出力を受け付けてよい、また、ニューラルネットワーク1501A~Cのそれぞれが前処理オペレーション1601A~Cのうちの2以上の出力を受け付けてもよい。例えば、図7では、ニューラルネットワーク1(1501A)は、前処理1(1601A)と前処理2(1601B)のうちの片方または両方の出力を入力として受け付けてよく、ニューラルネットワーク2(1501B)は前処理1(1601A)と前処理2(1601B)のうちの片方または両方の出力を入力として受け付けてよい。
【0057】
ニューラルネットワーク1501A~Cのそれぞれは、パラメータ1103A~Cの1つまたは複数の個別のパラメータを出力する。また、散乱線モデル1505に入力される各パラメータ1103A~C(例えば、式(1)のパラメータのそれぞれ)は、ニューラルネットワーク1501A~Cのうちの1つ及び1つのみにより出力されてよい。
【0058】
パラメータ1103A~Cおよび前処理N(1601C)の出力は、推定散乱分布データ1105を出力する散乱線モデル1505に入力される。いくつかの実施形態では、推定散乱分布データ1105(S(view,c,r)を下記のように記述できる。
【数12】
ここで、CとCはスキャンジオメトリに依存する係数であり、Iはボウタイフィルタ1003後の入力エアカウントである。前方散乱線モデルであり得るPInPは、前処理1(1601A)と前処理2(1601B)を記述してよい。また、G(c,r)を式(1)により記述してよい。
【0059】
推定散乱分布データ1105とターゲットデータ707は1つまたは複数の損失関数1601に入力される。いくつかの実施形態では損失関数1601は1つだけであり、他の実施形態では損失関数1601は複数ある。例えば、いくつかの実施形態は、ニューラルネットワーク1501A~Cごとに個別の損失関数1601を備え、またいくつかの実施形態は、ニューラルネットワーク1501A~Cのサブセットに対して個別の損失関数1601を備える(ニューラルネットワーク1および2(1501A~B)に対する損失関数1601と、ニューラルネットワークN(1501C)に対する損失関数1601)。このように、損失関数1601は、対応するニューラルネットワークを1つだけ有してよく、また、損失関数1601は、対応するニューラルネットワークを複数有してもよい。
【0060】
1つまたは複数の損失関数1601は、推定散乱分布データ1105とターゲットデータ707に基づいて、本実施形態では勾配である個別の損失値1605を出力する。個別の損失値1605(例えば、勾配)は、微分可能な散乱線モデル1505を介して、その後対応するニューラルネットワーク1501A~Cを介してバックプロパゲートされる。例えば、ニューラルネットワーク1501A~Cのそれぞれが個別の対応する損失関数1601を有する場合、各損失関数1601の個別の損失値1605は散乱線モデル1505を介して、その後損失関数1601の(ニューラルネットワーク1501A~Cのうちの)個別の対応するニューラルネットワークを介してバックプロパゲートされる。
【0061】
例えば、バックプロパゲーションは、最急降下法(例えば、可変学習率付き、可変学習率およびモメンタム付き、レジリエントバックプロパゲーション(Resilient backpropagation))、準ニュートン法(例えば、ブロイデン・フレッチャー・ゴールドファーブ・シャノン法、1ステップ割線法、レーベンバーグ・マーカート法)または共役勾配法(例えば、フレッチャー・リーブス更新、ポラク・リビエール更新、パウエル・ビールリスタート(Powell-Beale restart)、スケール共役勾配法)のうちの1つまたは複数を用いてよい。バックプロパゲーションを行うための最適化法は、勾配降下法、バッチ勾配降下法、確率的勾配降下法、およびミニバッチ確率的勾配降下法のうちの1つまたは複数を使用できる。加えて、最適化は、ディープネットワークにおける確率的勾配降下法の収束率を速める最適化アプローチにおいて、1つまたは複数のモメンタム更新法を用いて加速させることができる。モメンタム更新法は、例えば、ネステロフモメンタム法、または、Adagradサブ勾配法、Adagrad法のAdadeltaまたはRMSPropパラメータ更新バリエーション、Adam適応最適化法などの適応法を含む。また、最適化法は、ヤコビ行列を更新ステップに組み入れることで、二次法を適用できる。
【0062】
バックプロパゲーションが終了した後、図7のトレーニング処理を繰り返すことができる。1つまたは複数のニューラルネットワーク1501A~Cのトレーニングが完了したかを判断するために使用される事前に定義された停止基準が満たされるまで、トレーニング処理を繰り返すことができる。例えば、事前に定義された停止基準は、新規エラー(例えば損失値1605)または実行された繰り返しの総数が事前に定義された値を超えているかを評価できる。例えば、新規エラーが事前に定義された閾値を下回る、または、繰り返しの最大回数に達すると、停止基準を満たすことができる。
【0063】
図8は、ニューラルネットワークトレーニング処理の実施形態の一例を示す。フローは、ブロックB800で開始しブロックB805へ移り、画像発生装置110は、トレーニングデータセットと、1つまたは複数のニューラルネットワークと、散乱線モデル1505と、を得る。すなわち、散乱線モデル1505のためのトレーニングデータセットが取得される。トレーニングデータセットは、散乱分布を定義するターゲットデータと、投影データと、放射線画像データとを有する。散乱線モデル1505は、パラメータと投影データとを入力として受け付ける。トレーニングデータセットを取得することは、生投影データと生再構成画像データとを取得することと、第1の前処理(例えば、図7に示す前処理1(1601A)など)を生再構成画像データに行い、放射線画像データを発生することと、第2の前処理(例えば、図7に示す前処理2(1602B)など)を生投影データに行い、投影データを作成することとを含む。次に、ブロックB810で、画像発生装置110は、投影データセットと、放射線画像データセットと、ターゲットデータと、をトレーニングデータセット700から選択する。投影データセットと、放射線画像データセットと、ターゲットデータとは互いに対応する。
【0064】
その後フローはブロックB815へ移り、画像発生装置110は、投影データセットからの投影データ(生投影データ)または放射線画像データセットからの放射線画像データ(生放射線画像データ)に対して前処理を行う。その後フローはブロックB820へ進み、画像発生装置110は、1つまたは複数のニューラルネットワークを適用して、生投影データまたは前処理後投影データと、生放射線画像データまたは前処理後放射線画像データと、を入力として用いて、散乱線モデル1505のための1つまたは複数のパラメータを発生する。すなわち、トレーニングデータセットにおける投影データと放射線画像データとを1つまたは複数の機械学習モデルに適用して、散乱線モデル1505のパラメータ1103A~Cが発生される。
【0065】
次にブロックB825で、画像発生装置110は、散乱線モデル1505を適用して、1つまたは複数のパラメータと、生投影データまたは前処理後投影データとを入力として用いて、推定散乱分布データを発生する。すなわち、散乱線モデル1505を使用して、発生されたパラメータ1103A~Cと投影データとに基づいて、出力推定散乱分布データが発生される。
【0066】
その後フローはブロックB830へ移り、画像発生装置110は、1つまたは複数の損失関数1601を適用して、ターゲットデータと出力推定散乱分布データを入力として用いて、1つまたは複数の勾配を発生する。換言すれば、出力推定散乱分布データとターゲットデータとを損失関数1601に適用して、損失値1605が取得される。各ニューラルネットワークは1つの損失関数1601にのみ対応するが、各損失関数は当該ニューラルネットワークのうちの1つまたは複数に対応してよい。また、各ニューラルネットワークは1つの勾配にのみ対応するが、各勾配は当該ニューラルネットワークの1つまたは複数に対応してよい。
【0067】
次にブロックB835で、画像発生装置110は、散乱線モデル1505を介して、その後1つまたは複数のニューラルネットワークのうちの対応するニューラルネットワークを介して、1つまたは複数の勾配をバックプロパゲートする。すなわち、損失値1605に基づいて、1つまたは複数の機械学習モデルが更新される。
【0068】
その後ブロックB840で、画像発生装置110は、1つまたは複数のニューラルネットワークのトレーニングが終了したか(例えば、事前に定義された停止基準が満たされたか)判断する。画像発生装置110が、1つまたは複数のニューラルネットワークのトレーニングが終了していない、と判断する場合(B840=No)、フローは、ブロックB810へ戻り、画像発生装置110は、投影データセットと、放射線画像データセットと、ターゲットデータと、をトレーニングデータセット700から選択する。選択された投影データセットと、放射線画像データセットと、ターゲットデータとは、過去に選択されたものであっても、過去に選択されていないものでもよい。画像発生装置110が、1つまたは複数のニューラルネットワークのトレーニングが終了した、と判断する場合(B840=Yes)、フローはブロックB845へ進み、画像発生装置110は、1つまたは複数のトレーニングされたニューラルネットワークを記憶または出力し、フローが終了する。
【0069】
図9は、ニューラルネットワークトレーニング処理の実施形態の一例を示す。フローはブロックB900でスタートしブロックB905へ移り、画像発生装置110は、トレーニングデータセットと、N個のニューラルネットワーク(Nは正の整数)と、散乱線モデル1505と、L個の損失関数(Lは正の整数)と、を得る。その後フローはブロックB910へ進み、画像発生装置110は、ネットワークインデックスnを1(n=1)に設定し、損失関数インデックスiを1(i=1)に設定する。
【0070】
その後フローはブロックB915へ進み、画像発生装置110は、投影データセットと、放射線画像データセットと、ターゲットデータと、をトレーニングデータセット700から選択する。投影データセットと、放射線画像データセットと、ターゲットデータと、は互いに対応する。その後フローはブロックB920へ移り、画像発生装置110は、投影データセットからの投影データ(生投影データ)または放射線画像データセットからの放射線画像データ(生放射線画像データ)に対して前処理を行う。その後フローはブロックB925へ進み、画像発生装置110は、ニューラルネットワークnを適用して、生投影データまたは前処理後投影データと、生放射線画像データまたは前処理後放射線画像データと、を入力として用いて、散乱線モデル1505のための1つまたは複数のパラメータを発生する。
【0071】
その後フローはブロックB930へ移り、画像発生装置110は、別のニューラルネットワークを適用すべきか(例えば、n<Nか)を判断する。画像発生装置110が別のニューラルネットワークを適用すべきと判断する場合は(B930=Yes)、フローはブロックB935へ進み、画像発生装置110は、ネットワークインデックスnを1つ増加し(例えば、n=n+1)、その後フローはブロックB925へ戻る。画像発生装置110が別のニューラルネットワークを適用すべきではないと判断する場合は(B930=No)、フローはブロックB940へ移る。
【0072】
ブロックB940で、画像発生装置110は、散乱線モデル1505を適用して、発生されたパラメータ1103A~Cと、生投影データまたは前処理後投影データと、を入力として用いて、出力推定散乱分布データを発生する。
【0073】
その後フローはブロックB945へ移り、画像発生装置110は、損失関数iを適用して、ターゲットデータと出力推定散乱分布データとを入力として用いて、勾配i(損失値の一例)を発生する。各ニューラルネットワークは1つの損失関数にのみ対応するが、各損失関数は当該ニューラルネットワークのうちの1つまたは複数に対応してよい。また、各ニューラルネットワークは1つの勾配にのみ対応するが、各勾配は当該ニューラルネットワークの1つまたは複数に対応してよい。次にブロックB950で、画像発生装置110は、散乱線モデル1505を介して、その後損失関数iに対応する任意のニューラルネットワークを介して、勾配iをバックプロパゲートする。
【0074】
その後フローはブロックB955へ進み、画像発生装置110は、別の損失関数を適用すべきか(例えばi<Lか)を判断する。画像発生装置110が別の損失関数を適用すべきと判断する場合は(B955=Yes)、フローはブロックB960へ進み、画像発生装置110は、損失関数インテックスiを1つ増加し(例えば、i=i+1)、フローはブロックB945へ戻る。画像発生装置110が別の損失関数を適用すべきではないと判断する場合は(B955=No)、フローはブロックB965へ移る。
【0075】
その後ブロックB965で、画像発生装置110は1つまたは複数のニューラルネットワークのトレーニングが終了したか(例えば、1つまたは複数の事前に定義された停止基準が満たされたか)判断する。画像発生装置110が、1つまたは複数のニューラルネットワークのトレーニングは終了していない、と判断する場合(B965=No)、フローはブロックB910へ戻る。画像発生装置110が、1つまたは複数のニューラルネットワークのトレーニングは終了した、と判断する場合(B965=Yes)、フローはブロックB970へ進み、画像発生装置110は、1つまたは複数のトレーニングされたニューラルネットワークを記憶または出力し、フローが終了する。
【0076】
図10は、医用撮像システム10の実施形態の一例を示す。医用撮像システム10は、空間構成されたコンピューティング装置である画像発生装置110と、スキャニング装置100と、表示装置120と、を備える。本実施形態では、画像発生装置110とスキャニング装置100は、1つまたは複数のネットワーク199を介して通信する。ネットワーク199は、ワイヤードネットワーク、ワイヤレスネットワーク、LAN、WAN、MAN、およびPANを含んでよい。また、いくつかの実施形態では、当該装置は他のワイヤードまたはワイヤレスチャネルを介して通信する。
【0077】
画像発生装置110は、1つまたは複数のプロセッサ111と、1つまたは複数のI/Oコンポーネント112と、ストレージ113と、を備える。また、画像発生装置110のハードウェアコンポーネントは、1つまたは複数のバス114または他の電気接続を介して通信する。バス114の例として、ユニバーサルシリアルバス(universal serial bus:USB)、IEEE1394バス、PCIバス、アクセラレーテッドグラフィックスポート(Accelerated Graphics Port:AGP)バス、シリアルATアタッチメント(Serial AT Attachment:SATA)バス、スモールコンピュータシステムインターフェース(Small Computer System Interface:SCSI)バスがある。
【0078】
1つまたは複数のプロセッサ111は、マイクロプロセッサ(例えば、シングルコアマイクロプロセッサ、マルチコアマイクロプロセッサ)を備える1つまたは複数の中央演算処理装置(central processing units:CPU)又は、1つまたは複数のグラフィックスプロセッシングユニット(graphics processing units:GPU)又は、1つまたは複数の特定用途向け集積回路(application-specific integrated circuit:ASIC)又は、1つまたは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ(field-programmable-gate array:FPGA)又は、1つまたは複数のデジタルシグナルプロセッサ(digital signal processor:DSP)又は、他の電子回路(例えば、他の集積回路)を備える。I/Oコンポーネント112は、表示装置120と、スキャニング装置100と、ネットワーク199と、他の入力または出力装置(図示せず)と通信する通信コンポーネント(例えば、GPU、ネットワークインターフェースコントローラ)を備える。他の入力または出力装置は、キーボード、マウス、印刷装置、タッチスクリーン、ライトペン、光学記憶装置、スキャナ、マイクロフォン、ドライブ、ジョイスティック、およびコントロールパッドを含んでよい。
【0079】
ストレージ113は、1つまたは複数のコンピュータ読み取り可能記憶媒体を備える。ここで使用されるように、コンピュータ読み取り可能記憶媒体は、例えば磁気ディスク(例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク)、光学ディスク(例えば、CD、DVD、ブルーレイ)、光磁気ディスク、磁気テープ、および半導体メモリ(例えば、不揮発性メモリカード、フラッシュメモリ、半導体ドライブ、SRAM、DRAM、EPROM、EEPROM)などの製品を含むコンピュータ読み取り可能媒体を指す。ROMとRAMの両方を備えてよいストレージ113は、コンピュータ読み取り可能データまたはコンピュータ実行可能命令を記憶できる。
【0080】
追加して、画像発生装置110は、データ取得モジュール(データ取得部)113Aと、前処理モジュール(前処理部)113Bと、パラメータ発生モジュール(パラメータ発生部)113Cと、推定散乱分布データ発生モジュール(推定散乱分布データ発生部)113Dと、散乱線補正モジュール(散乱線補正部)113Eと、再構成モジュール(再構成部)113Fと、損失関数モジュール(損失値計算部)113Gと、バックプロパゲーションモジュール(逆伝播部)113Hと、通信モジュール(通信部)113Jと、を備える。モジュールは、ロジック又は、コンピュータ読み取り可能データ又は、コンピュータ実行可能命令を含む。図10に示される実施形態では、モジュールはソフトウェア(例えば、Assembly、C、C++、C♯、Java(登録商標)、BASIC、Perl、Visual Basic)で実装される。しかし、いくつかの実施形態では、モジュールはハードウェア(例えば、カスタマイズされた回路)で実装される、または、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせで実装される。モジュールが少なくとも部分的にソフトウェアで実装されると、当該ソフトウェアをストレージ113に記憶できる。また、いくつかの実施形態では、画像発生装置110は追加の又はより数の少ないモジュールを備え、当該モジュールはより数の少ないモジュールに組み合わせられる、または、当該モジュールはより数の多いモジュールに分割される。さらに、ストレージ113は、ニューラルネットワーク(または他の機械学習モデル)を記憶するニューラルネットワークレポジトリ113Kと、散乱線モデル1505を記憶する散乱線モデルレポジトリ113Lと、トレーニングデータセット700と、を備える。
【0081】
データ取得モジュール113Aは、例えばスキャニング装置100から又は外部装置(例えば、ネットワーク199を介して通信する記憶装置)から投影データ1010を画像発生装置110に取得させる命令を含む。例えば、データ取得モジュール113Aのいくつかの実施形態は、図4のブロックB410、図5のブロックB505、図6のブロックB605に説明されるオペレーションの少なくとも一部を画像発生装置110に行わせる命令を含む。すなわち、データ取得部は、例えば、放射線スキャンで取得される投影データ1010に基づき再構成された第1の放射線画像データ1101を取得する。
【0082】
前処理モジュール113Bは、画像発生装置110に前処理オペレーション1601A~Cを投影データ1010または放射線画像データ1101に対して行わせる命令を含む。例えば、前処理モジュール113Bのいくつかの実施形態は、図6のブロックB615、図8のブロックB815、図9のブロックB920に説明されるオペレーションの少なくとも一部を画像発生装置110に行わせる命令を含む。
【0083】
パラメータ発生モジュール113Cは、1つまたは複数のニューラルネットワーク(または他の機械学習モデル)を適用して、投影データ(例えば、生投影データ、前処理後投影データ)と放射線画像データ(例えば生放射線画像データ、前処理後放射線画像データ)を入力として用いて、画像発生装置110に散乱線モデル1505のためのパラメータ1103を発生させる命令を含む。例えば、パラメータ発生モジュール113Cのいくつかの実施形態は、図4のブロックB430、図5のブロックB525、図6のブロックB630、図8のブロックB820、図9のブロックB925に説明されるオペレーションの少なくとも一部を画像発生装置110に行わせる命令を含む。すなわち、パラメータ発生部は、1つまたは複数のトレーニングされた機械学習モデルを投影データ1010と第1の放射線画像データ1101とに適用して、散乱線モデル1505のパラメータ1103を発生する。
【0084】
推定散乱分布データ発生モジュール113Dは、1つまたは複数の散乱線モデル1505を適用して、投影データ(例えば、生投影データ、前処理後投影データ)と発生されたパラメータ1103を入力として用いて、画像発生装置110に推定散乱分布データ1105を発生させる命令を含む。例えば、推定散乱分布データ発生モジュール113Dのいくつかの実施形態は、図4のブロックB440、図5のブロックB530、図6のブロックB635、図8のブロックB825、図9のブロックB940に説明されるオペレーションの少なくとも一部を画像発生装置110に行わせる命令を含む。すなわち、推定散乱分布データ発生部は、パラメータ1103と投影データ1010とを入力として用いて散乱線モデル1505を適用して、推定散乱分布データ1105を発生する。
【0085】
散乱線補正モジュール113Eは、投影データ(例えば、生投影データ、前処理後投影データ)と推定散乱分布データ1105に基づいて画像発生装置110に補正後投影データ1107を発生させる命令を含む。例えば、散乱線補正モジュール113Eのいくつかの実施形態は、図4のブロックB450、図5のブロックB535、図6のブロックB640に説明されるオペレーションの少なくとも一部を画像発生装置110に行わせる命令を含む。すなわち、散乱線補正部は、推定散乱分布データ1105を用いて投影データ1010に対して散乱線補正を実行し、補正後投影データ1107を発生する。
【0086】
再構成モジュール113Fは、投影データ(例えば、補正後投影データ1107)に基づいて画像発生装置110に放射線画像データ(例えば、補正後放射線画像データ)を発生させる命令を含む。例えば、再構成モジュール113Fのいくつかの実施形態は、図4のブロックB420とB460、図5のブロックB510とB540、図6のブロックB610とB645に説明されるオペレーションの少なくとも一部を画像発生装置110に行わせる命令を含む。すなわち、再構成部は、補正後投影データ1107から第2の放射線画像データ1109を再構成する。
【0087】
損失関数モジュール113Gは、推定散乱分布データ1105とターゲットデータ707とに基づいて画像発生装置110に損失関数1601の損失値(例えば、勾配)1605を計算させる命令を含む。例えば、損失関数モジュール113Gのいくつかの実施形態は、図8のブロックB830と図9のブロックB945に説明されるオペレーションの少なくとも一部を画像発生装置110に行わせる命令を含む。
【0088】
バックプロパゲーションモジュール113Hは、散乱線モデル1505とニューラルネットワーク(例えば、ニューラルネットワークを修正するために)を介して損失値(例えば、勾配)1605を画像発生装置110にバックプロパゲートさせ、ニューラルネットワークトレーニングが完了したかを画像発生装置110に判断させる命令を含む。例えば、バックプロパゲーションモジュール113Hのいくつかの実施形態は、図8のブロックB835~B840と図9のブロックB950~B965に説明されるオペレーションの少なくとも一部を画像発生装置110に行わせる命令を含む。
【0089】
通信モジュール113Jは、画像発生装置110にスキャニング装置100と(データセットを記憶し得る)外部記憶装置を含む他の装置と通信させる命令を含む。
【0090】
また、画像発生装置110のいくつかの実施形態は、損失関数モジュール113G、バックプロパゲーションモジュール113H、トレーニングデータセット700を省き、ニューラルネットワークをトレーニングしない。
【0091】
請求項の範囲は上述の実施形態に限定されず、各種変形例および同等のアレンジメントを含む。
【0092】
実施形態における技術的思想を散乱線補正プログラムで実現する場合、当該散乱線補正プログラムは、コンピュータに、放射線スキャンで取得される投影データ1010に基づき再構成された第1の放射線画像データ1101を取得し、1つまたは複数のトレーニングされた機械学習モデルを投影データ1010と第1の放射線画像データ1101とに適用して、散乱カーネルのパラメータ1103を取得し、パラメータ1103と投影データ1010とを散乱カーネルに入力して、推定散乱分布データ1105を取得し、推定散乱分布データ1105を用いて投影データ1010に散乱線補正を行い、補正後投影データ1107を取得すること、を実現させる。散乱線補正プログラムにおける各種処理の手順および効果は、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0093】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、散乱線補正のパラメータを決定することができる。
【0094】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0095】
10 医用撮像システム
51 被検体
55 放射線
56 主フラックス
57 1回散乱フラックス
58 複数回散乱フラックス
100 スキャニング装置
110 画像発生装置
111 プロセッサ
112 I/Oコンポーネント
113 ストレージ
114 バス
113A データ取得モジュール(データ取得部)
113B 前処理モジュール(前処理部)
113C パラメータ発生モジュール(パラメータ発生部)
113D 推定散乱分布データ発生モジュール(推定散乱分布データ発生部)
113E 散乱線補正モジュール(散乱線補正部)
113F 再構成モジュール(再構成部)
113G 損失関数モジュール(損失値計算部)
113H バックプロパゲーションモジュール(逆伝播部)
113J 通信モジュール(通信部)
113K ニューラルネットワークレポジトリ
113L 散乱線モデルレポジトリ
120 表示装置
199 ネットワーク
700 トレーニングデータセット
1001 放射線エミッタ
1002 放射線検出器
1003 ボウタイフィルタ
1004 コリメータ装置
10021 検出要素
10041 コリメータ板
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10