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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008325
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】エアフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/16 20060101AFI20230112BHJP
   B01D 39/12 20060101ALI20230112BHJP
   D04H 1/593 20120101ALI20230112BHJP
【FI】
B01D39/16 A
B01D39/12
D04H1/593
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111795
(22)【出願日】2021-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000162940
【氏名又は名称】興研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002882
【氏名又は名称】弁理士法人白浜国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】深沢 康彦
【テーマコード(参考)】
4D019
4L047
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019BA02
4D019BA13
4D019BB02
4D019BB03
4D019BB10
4D019BD01
4D019CA05
4D019CB06
4D019DA02
4D019DA03
4L047AA02
4L047AA14
4L047AA21
4L047AA23
4L047BA12
4L047CA02
4L047CA05
4L047CA19
4L047CC12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数層で形成されたエアフィルタにおいて、フィルタ層どうしを一体化させる接着剤によって捕集効率が低下することを抑えることが可能なエアフィルタを提供する。
【解決手段】エアフィルタ1が通気性の合成樹脂繊維層である第1フィルタ層10と、第1フィルタ層をサンドウィッチする通気性の第2フィルタ層20とを含み、第1フィルタ層と第2フィルタ層とは、通気性の間隙を形成するように分布している複数条の繊維状ホットメルトからなる接着剤層30を介して一体化している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性の合成樹脂繊維層である第1フィルタ層と通気性の第2フィルタ層とを含むエアフィルタであって、
前記第1フィルタ層が前記第2フィルタ層にサンドウィッチされていて、前記第1フィルタ層と前記第2フィルタ層とが通気性の間隙を形成するように分布している複数の繊維状ホットメルトからなる接着剤層を介して一体化しており、前記第1フィルタ層を形成している繊維が連続繊維であることを特徴とする前記エアフィルタ。
【請求項2】
前記第2フィルタ層は、前記第2フィルタ層を形成している材料の熱伝導率が前記第1フィルタ層を形成している材料の熱伝導率よりも高く、前記第1フィルタ層および前記第2フィルタ層それぞれを形成している材料の溶融温度が前記繊維状ホットメルトの溶融温度よりも高い請求項1記載のエアフィルタ。
【請求項3】
前記第1フィルタ層および前記第2フィルタ層のそれぞれを形成している材料と、前記ホットメルト接着剤との溶融温度の差が少なくとも40℃である請求項2記載のエアフィルタ。
【請求項4】
前記第2フィルタ層は、金属メッシュである請求項3記載のエアフィルタ。
【請求項5】
前記第1フィルタ層と前記接着剤層それぞれの坪量は3~30g/mと5~30g/mの範囲にあり、前記金属メッシュの番手が60~625の範囲にある請求項4記載のエアフィルタ。
【請求項6】
前記第1フィルタ層は、繊維径が0.8~20μmの細径繊維で形成され、前記細径繊維は長さ方向に直交する方向の断面の形状が扁平なものである請求項1記載のエアフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層構造を有するエアフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ナノファイバー等の細径繊維のシート状集合体がエアフィルタとして使用されることは周知である。また、そのシート状集合体を通気性のシートでサンドウィッチすることによって、シート状集合体の両表面が被覆保護された層構造を有するエアフィルタは公知である。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の多層繊維構造体では、上層が300~500nmの超極細繊維からなる不織布、中間層が直径10~200nmの超極細繊維からなる不織布、下層が直径0.80~100μmの繊維からなる不織布であって、これら3層がカレンダー加工による熱圧着により接着されている。フィルタとして機能する中間層は、上層と下層とを形成している不織布によって被覆され、保護されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-89226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の多層繊維構造体は、上層,中間層,下層をカレンダー加工による熱圧着で接着するというものであるから、超極細繊維で形成される上層や中間層では、少なくともカレンダーロールによって加熱、加圧された部位とその周辺との広範囲において、各層が平面方向においても厚さ方向においても圧縮されたり、溶着したりすることによって通気性の透孔が減少し、各層における本来の捕集性能が低下したり、通気抵抗が上昇したりするということが懸念される。
【0006】
そこで、本発明では、多層構造、すなわち複数層を有するエアフィルタにおいて、各層を互いに接合してもエアフィルタとしての通気性の低下を低く抑えることが可能なエアフィルタの提供を課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明が対象とするのは、通気性の合成樹脂繊維層である第1フィルタ層と通気性の第2フィルタ層とを含むエアフィルタである。
【0008】
かかるエアフィルタにおいて、本発明が特徴とするところは、次のとおりである。すなわち、前記第1フィルタ層が前記第2フィルタ層にサンドウィッチされていて、前記第1フィルタ層と前記第2フィルタ層とが通気性の間隙を形成するように分布している複数条の繊維状ホットメルトからなる接着剤層を介して一体化しており、前記第1フィルタ層を形成している繊維が連続繊維である。
【0009】
本発明の実施態様の一つにおいて、前記第2フィルタ層は、前記第2フィルタ層を形成している材料の熱伝導率が前記第1フィルタ層を形成している材料の熱伝導率よりも高く、前記第1フィルタ層および前記第2フィルタ層それぞれを形成している材料の溶融温度が前記繊維状ホットメルトの溶融温度よりも高い。
【0010】
本発明の実施態様の他の一つにおいて、前記第1フィルタ層および前記第2フィルタ層のそれぞれを形成している材料と、前記ホットメルト接着剤との溶融温度の差が少なくとも40℃である。
【0011】
本発明の実施態様の他の一つにおいて、前記第2フィルタ層は、金属メッシュである。
【0012】
本発明の実施態様の他の一つにおいて、前記第1フィルタ層と前記接着剤層それぞれの坪量は3~30g/mと5~30g/mの範囲にあり、前記金属メッシュの番手が60~625の範囲にある。
【0013】
本発明の実施態様の他の一つにおいて、前記第1フィルタ層は、繊維径が0.8~20μmの細径繊維で形成され、前記細径繊維は長さ方向に直交する方向の断面の形状が扁平なものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るエアフィルタは、第1フィルタ層が第2フィルタ層にサンドウィッチされているものであって、第1フィルタ層と第2フィルタ層とは、繊維状のホットメルトからなる接着剤層を介して一体化しているものであるから、その繊維状のホットメルトに接触している部位においてのみ通気性が低下したり、失われたりして、その他の部位においてはエアフィルタ本来の通気性を発揮することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】エアフィルタの斜視図。
図2図1のA-A線切断面を拡大して示す図。
図3】第1フィルタ層を拡大して示す図(写真)。
図4】第1フィルタ層の一部分をさらに拡大して示す図(写真)。
図5】第2フィルタ層と接着剤層とを示す図(写真)。
図6】エアフィルタの断面図(写真)。
図7】加熱後のエアフィルタの図6と同様な図(写真)。
図8】エアフィルタの捕集効率と圧力損失を測定するためのシステムの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付の図面を参照して、本発明に係るエアフィルタの詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0017】
図1,2は、本発明に係るエアフィルタの一例を示す円盤状のエアフィルタ1の斜視図と、その斜視図におけるA-A線切断面の拡大図である。図示例において、エアフィルタ1は厚さ方向Yと、その厚さ方向Yの上方に位置する上面5と、厚さ方向の下方に位置する下面6とを有する。ただし、図示例のエアフィルタ1は、上面5と下面6とを区別することなく使うことができる。かかるエアフィルタ1は、図2に示されているように、中間層を形成している一層の第1フィルタ層10と、エアフィルタ1の上下面5,6のそれぞれを形成している二層の第2フィルタ層20と、第1フィルタ層10と第2フィルタ層20のそれぞれとを一体化する接着剤層30とを含んでいる。
【0018】
図2に示す断面構造においては、便宜上、第1フィルタ層10の上面と対向している第2フィルタ層20には参照符号21が使用され、第1フィルタ層10の下面と対向している第2フィルタ層20には参照符号22が使用されている。また、接着剤層30については、図示の如く、上下方向Yの上方に位置する接着層30には参照符号31が使用され、上下方向Yの下方に位置する接着剤層30には参照符号32が使用されている。
【0019】
第1フィルタ層10は、合成樹脂で形成された繊維の集合体、すなわち本発明における合成樹脂繊維層である。本発明は、その合成樹脂の種類や繊維の形状を特定するものではない。しかし、エアフィルタ1が、例えば、大気じんに対して高い捕集性能の発揮を目的とするものである場合には、合成樹脂繊維層における繊維として、繊維径10~1000nmの極細繊維を使用したり、繊維径が10~3000nmの極細繊維を使用したり、繊維径が0.5~20μmの細径繊維を使用したりすることができる。また、合成樹脂としては、エアフィルタ1が使用されるときの温度条件に応じて、適宜の溶融温度または耐熱温度を有するものを選ぶことができる。例えば、エアフィルタ1が室温のエアに対して使用されるものである場合には、ポリエチレンやポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル等の室温よりもはるかに高い溶融温度を有する熱可塑性合成樹脂を使用することができる。また、エアフィルタ1が100℃以上ののエアに接触する可能性がある場合には、例えば、250℃以上の軟化温度を有するポリアミドイミド樹脂からなる繊維や金属繊維等を使用することができる。
【0020】
第2フィルタ層20は、第1フィルタ層10に対する通気性の被覆保護層としての機能と、比較的大きな粒子を捕集する機能とを有するものである。かかる第2フィルタ層20は、第1フィルタ層10よりも高い通気度を有し、第1フィルタ層10を形成している合成樹脂繊維よりも耐熱温度が高い金属または合成樹脂で形成されることが好ましいものである。金属で形成される場合の第2フィルタ層20の例には、金属メッシュがある。本発明において使用する金属メッシュは、60~625メッシュの範囲にあるものが好ましい。ただし、エアフィルタ1の用途によっては、そのメッシュ数がさらに限定的なものになることがある。
【0021】
接着剤層30は、第1フィルタ層10と第2フィルタ層20とを一体化させておくためのもので、ホットメルト接着剤によって形成される。ここでいうホットメルト接着剤とは、エアフィルタ1が使用される温度条件下では固形のものであるが、エアフィルタ1を製造する工程においては、所要温度にまで加熱すると溶融するものである接着剤を意味している。そのホットメルト接着剤は、第1フィルタ層10を形成している合成樹脂繊維に使用される合成樹脂材料および第2フィルタ層20を形成している材料の溶融温度よりも低い溶融温度、より好ましくは40℃以上低い溶融温度を有するものを使用して、塗布するときに加熱されて溶融状態にあるホットメルト接着剤によって、それらの材料が変形したり、変質したりすることがないようにすることが好ましい。ただし、第1フィルタ層10および/または第2フィルタ層20を形成する材料が明確な溶融温度を有するものでない場合には、その材料の耐熱温度とホットメルト接着剤の溶融温度とを比較する。そのホットメルト接着剤はまた、エアフィルタ1が使用される温度条件に基づいても選定される。エアフィルタ1におけるホットメルト接着剤は、第1フィルタ層10または第2フィルタ層20に対してドット状やΩ(オメガ)状等の平面形状に塗布することもできれば、連続繊維を形成するかの如くライン状に塗布することもできる。ライン状に塗布する場合には、塗布機の選択によって、スパイラル状のラインを画くように塗布したり、互いに並行する複数条のラインを画くように塗布したりすることができる。並行する複数条のラインは、直線であってもよいし、サインカーブ状の如く起伏を繰り返すものであってもよい。また、メルトブロー装置を使用して複数条の連続繊維が形成されるように塗布することもできる。加えて、メルトブロー装置を使用する場合には、複数条の連続繊維が互いに交差しながら不規則な弧を画くように塗布することが好ましい。このようにして得られる連続繊維状のホットメルト接着剤は、それが第1フィルタ層10の表面部分において不規則に分布している複数条の極細繊維や細径繊維をまたいで延びているものであると、第1フィルタ層10におけるそれら繊維相互の位置関係を維持し、極細繊維や細径繊維の分布状態を安定化させることができるという効果を奏するものになる。同様な効果は、スパイラルを画いて一方向へ延びるホットメルト接着剤のラインどうしが、その一方向と交差する方向において部分的に重なり合う態様、起伏を繰り返しながら一方向へ延びるホットメルト接着剤のラインがその一方向と交差する方向において部分的に重なり合う態様にある場合においても得ることができる。ホットメルト接着剤がこのような効果を奏することができるように分布する態様は、本発明において特に好ましいものである。
【0022】
図3は、本発明の一実施態様における第1フィルタ層10の表面状態を180倍に拡大して示す図(写真)である。図の第1フィルタ層10は、図2のエアフィルタ1に示されている第2フィルタ層20のうちの上方に位置する第2フィルタ層21と接着剤層31とが第1フィルタ層10に未だ重ねられていないという状態にある。このような状態にある第1フィルタ層10を示す図3では、第1フィルタ10を形成している多数の連続繊維11が見えている。連続繊維11は、合成樹脂としてポリアミドイミド(ガラス転移温度260℃)を使用し、この樹脂を電解紡糸法で紡糸することによって得たものであって、目付は9.6~12.6g/mの範囲にある。連続繊維11は、互いに交差し、不規則な形状の通気孔を多数作ることによって第1フィルタ層10を形成している。
【0023】
図4は、図3の部分拡大図であって、第1フィルタ層10の一部分が3000倍に拡大されている。図中の連続繊維11は、その形状が一定ではないが、帯状を成すものが多く、それら連続繊維11の長さ方向に交差する方向である幅方向の断面形状は扁平である。図中の繊維12では、その扁平な繊維の幅方向が見えている。また、その幅の一例は、図中に示すように5.30μmであった。また、図中の繊維13では、繊維の厚さ方向が見えていて、その厚さは図中に示すように829nmであった。
【0024】
図5の写真は、図3の状態にあるエアフィルタ1から第1フィルタ層10を取り除いて得られる第2フィルタ層20を60倍に拡大して示している。その図5には、第2フィルタ層20のうちの一部である第2フィルタ層21(図2参照)と、接着剤層30のうちの一部である接着剤層31を形成する繊維状のホットメルト接着剤とが見えている。図における第2フィルタ層21は、複数条の縦ワイヤ23と複数条の横ワイヤ24とで形成されたワイヤメッシュであって、互いに交差する縦ワイヤ23と横ワイヤ24とが多数の通気孔25を形成している。本発明において、第2フィルタ層20を形成するワイヤメッシュのメッシュ数は60~625メッシュの範囲にあることが好ましい。また、図示の如く不定形な網の目状態を形成するように塗布された繊維状のホットメルト接着剤からなる接着剤層31は、繊維状を成す1本の接着剤の幅はワイヤメッシュのメッシュのサイズを超えることがなく、その目付が5~30g/mの範囲にあることが好ましい。
【0025】
図6は、実物のエアフィルタ1の断面の一部分を150倍に拡大して示す図(写真)である。図2の断面に相当する断面を示すこの図では、ワイヤメッシュで形成された第2フィルタ層21,22のそれぞれと、これら第2フィルタ層21と22との間に介在する第1フィルタ層10とが見えている。第1フィルタ層10と第2フィルタ層21との間、および第1フィルタ層10と第2フィルタ層22との間には、ホットメルト接着剤で形成された接着剤層31と32とが存在するのであるが、不鮮明であるこの図6では、それら接着剤層31,32の存在を確認することが難しい。
【0026】
図7は、図6のエアフィルタ1と同じ仕様のエアフィルタ1を150℃で1時間加熱したときの状態を示す図6と同様な断面図(写真)であるが、図7の倍率は180倍である。図7のエアフィルタ1を図6のそれと対比してみると、第1フィルタ層10の厚さが薄くなっている。また、接着剤層31と32とでは、図5においては連続繊維の如くに切れ目なく延びていたホットメルト接着剤が繊維の長さ方向において分断されていて、接着剤層31,32それぞれにおける一部のものが第2フィルタ21,22それぞれにおける外面の側に流れ出ているように見える。また、加熱する前にはホットメルト接着剤で部分的に覆われていたワイヤメッシュの目が、ホットメルト接着剤の分断と変形とによってその全体が露出するように変化して、ワイヤメッシュの通気性の維持および/または向上に寄与しているものと考えられた。
【0027】
このように観察されたエアフィルタ1について、下記構成を有するものをさらに製作し、評価した結果は、以下のとおりであった。
【0028】
1.エアフィルタの構成
(1)第1フィルタ層
ポリアミドイミドを電解紡糸法で処理して、繊維径が0.8~20μmの範囲にある連続繊維であって、目付が3~30g/mの範囲にある合成樹脂製の細径繊維からなる第1フィルタ層10の前駆体を得た。
【0029】
(2)第2フィルタ層
第2フィルタ層20の前駆体として、250メッシュのステンレス製のワイヤメッシュを用意した。
【0030】
(3)繊維状のホットメルト接着剤
融点が80℃のポリオレフィン系ポリマーをメルトブロー法によって、第2フィルタ層20の前駆体であるステンレス製のワイヤメッシュの上に吐出させ、目付6.6~7.9g/mを有し、ポリオレフィン系ポリマーが連続繊維の形態でワイヤメッシュに塗布されて層状を呈しているホットメルト接着剤を得た。
【0031】
(4)ホットメルト接着剤が塗布された状態にあるステンレスメッシュは、第1フィルタ層10の前駆体の両面それぞれに重ねることで、第1フィルタ層10の前駆体に接着し、さらに直径100mmの円盤状のものとなるようにカットすることで評価用のエアフィルタ1を得た。
【0032】
2.エアフィルタの評価
(1)評価用のエアフィルタ1は、図8に示す評価システムにセットすることで、圧力損失と粉じんの粒径ごとの捕集効率とを測定した。図8に明示してはいないが、図8の評価システムは、上流側粉じん数と下流側粉じん数とを測定することができるように条件設定することができる。なお、図示してはいないが、図8の評価システムは圧力損失を測定することができるようにも作られている。
【0033】
(2)評価システムの運転条件は、下記のとおりであった。
a.エアフィルタ1の有効径:70mm
b.流量:0.3L/分
c.試験機:KC-22B(粉じん数測定用)
d.粉じん:大気じん
e.希釈器:PALAS VKL10(上流側のみ10倍に希釈するためのもの)
f.試験機:リオンKC-22B(粉じん数測定用)
g.運転時間:エアフィルタ1がセットしてある評価システムを1分間運転した後に粒径ごとの粉じん数と捕集効率を測定し、次いでエアフィルタ1を150℃で1時間加熱してから室温にまで冷却し、その後さらに評価システムを1分間運転して粒径ごとの粉じん数と捕集効率を再度測定した。
【0034】
(3)1分間運転後の粉じん個数から算出した粒径ごとの捕集効率のN=3での測定結果は、表1のとおりであり、150℃で1時間加熱してからさらに1分間運転した後の粒径ごとの粉じんの捕集効率の測定結果は表2のとおりであった。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
3.評価結果
(1)エアフィルタ1は、150℃,1時間の加熱前後において、捕集効率と圧力損失は著しく変化するということがなく、その結果は許容できる程度であった。そのような結果には、加熱による繊維状ホットメルト接着剤の状態の変化が寄与していると考えられる。
【0038】
(2)150℃,1時間の加熱前後において、エアフィルタ1の厚さは約0.41mmから約0.26mmに変化した。この変化にもまた、繊維状ホットメルト接着剤の状態の変化が寄与していると考えられる。
【0039】
(3)150℃,1時間の加熱によって、繊維状ホットメルト接着剤は溶融して、一部のものが第2フィルタ20であるステンレスメッシュの外側に流れ出ることがあった(図7参照)。繊維状ホットメルト接着剤のこのような挙動を利用すると、本発明に係るエアフィルタ1は、エアフィルタ1どうしを接着して一体化させたり、エアフィルタ1の取り付け具に対してエアフィルタ1を接着して一体化させたりすることが可能になる。
【0040】
図示例に基づいて説明した本発明に係るエアフィルタ1は、図示例とは異なり、第2フィルタ20のうちで上面5を形成する第2フィルタ21と、下面6を形成する第2フィルタ22とが同じ仕様、同じ性能のものである他に、これら第2フィルタ21,22が異なる態様のもの、例えば使用材料が異なる態様のもの、メッシュ数が異なる態様のもの等で実施することも可能である。ホットメルト接着剤層31,32もまた、同じ仕様、同じ性状のもので実施することができる他に、繊維状の態様や目付が異なる態様で実施することもできる。また、図示例において第1フィルタ層10、第2フィルタ層20(21,22)およびホットメルト接着剤層30(31,32)によって形成されている5層構造のエアフィルタ1は、第1フィルタ層10を2層以上の多層構造のものにしたり、第2フィルタ層21および/または第2フィルタ層22を2層以上の多層構造のものにしたりすることができる。これら多層構造を採用する場合に重ね合わせるフィルタ層は、同じ仕様のものに限られるわけではない。
【符号の説明】
【0041】
1 エアフィルタ
5 上面
6 下面
10 第1フィルタ層
11 連続繊維
12 連続繊維
13 連続繊維
20 第2フィルタ層
21 第2フィルタ層
22 第2フィルタ層
23 縦ワイヤ
24 横ワイヤ
30 接着剤層
31 接着剤層
32 接着剤層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8