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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083257
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】接続システム
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20230608BHJP
【FI】
F17C13/00 302D
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022193329
(22)【出願日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】10 2021 131 892.0
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】516077644
【氏名又は名称】アリアーネグループ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】ベルト ホレンバッハ
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB12
3E172BA06
3E172BC04
3E172BC05
3E172BC07
3E172BC08
3E172BD10
3E172DA90
3E172EA03
3E172EA43
3E172EB03
3E172EB13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】組み合わされた材料の不均等な熱膨張係数によって熱的に引き起こされる機械的応力が、接続要素に半径方向の負荷をもたらさない極低温タンクのための接続システムを提供する。
【解決手段】本発明は、極低温タンクのための接続システムに関し、その極低温タンクのタンク壁は、第1材料で形成され、接続システムは、タンクに接続されるコンポーネントのためのコネクタを有し、コネクタは、第2材料で形成され、第2材料で形成された相手部材が、タンクの内側に配置され、第1及び第2材料は、異なる熱膨張係数(α、α)を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温タンク(102)のための接続システム(100)であって、
前記極低温タンク(102)のタンク壁(104)は、第1材料(106)で形成され、
前記接続システム(100)は、前記タンク(102)に接続されるコンポーネント(116)のためのコネクタ(110)を有し、
前記コネクタ(110)は、第2材料(120)で形成され、前記コネクタ(110)は、前記タンクの外側(124)に配置され、前記タンク壁(104)の通路開口部(126)と本質的に一致し、
少なくとも1つのシール要素(130)が設けられ、前記第1及び第2材料(106、120)は、異なる熱膨張係数(α、α)を有する接続システムにおいて、
前記第2材料(120)で形成された相手部材(140)が、前記タンクの内側(136)に配置され、
前記タンク壁(104)が、前記相手部材(140)、前記コネクタ(110)、及び前記少なくとも1つのシール要素(130)の間に挟まれるように、前記相手部材(140)は、少なくとも2つの締結要素(146、148)を用いて前記コネクタ(110)と接続でき、
熱的に誘発される機械的応力を補償するために、前記コネクタ(110)及び前記相手部材(140)の、前記タンク壁(104)に平行なわずかな変位可能性が残っていることを特徴とする、接続システム(100)。
【請求項2】
前記コネクタ(110)は、本質的にスリーブ状のデザインを有し、前記タンクの外側(124)に面する第1端部(160)に連続締結フランジ(164)と、前記第1端部から離れて向いた第2端部(168)に前記コンポーネント(116)のための接続フランジ(172)とを有することを特徴とする、請求項1に記載の接続システム(100)。
【請求項3】
前記少なくとも2つの締結要素(146、148)は、ねじ付きボルト(150、152)として設計されていることを特徴とする、請求項2に記載の接続システム(100)。
【請求項4】
前記相手部材(140)は、本質的に円形のデザインを有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の接続システム(100)。
【請求項5】
前記コネクタ(110)、前記相手部材(140)、及び少なくとも1つのシール要素(130)は、長手方向中心線(134)に対して本質的に回転対称に設計されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の接続システム(100)。
【請求項6】
前記締結フランジ(164)は、ねじ付きボルト(150、152)の数に対応する数の好ましくは不連続なねじ穴(178、180)を有し、前記相手部材(140)は、前記ねじ付きボルト(150、152)のための対応する数のねじ無し貫通穴(182、184)を有し、又はその逆であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の接続システム(100)。
【請求項7】
前記コネクタ(110)の前記締結フランジ(164)、又は前記相手部材(140)が、前記不連続なねじ穴(178、180)を備えるか否かに応じて、前記少なくとも1つのシール要素(130、132)は、前記タンクの外側(124)と前記締結フランジ(164)の間、及び/又は前記相手部材(140)と前記タンクの内側(136)の間に配置されることを特徴とする、請求項6に記載の接続システム(100)。
【請求項8】
前記第1材料(106)は、ガラス繊維強化プラスチック、又は炭素繊維強化プラスチックなどの繊維複合プラスチックであることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の接続システム(100)。
【請求項9】
前記第2材料(120)は、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼などの金属、又は金属合金で形成されていることを特徴とする、請求項8に記載の接続システム(100)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのシール要素(130)は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのプラスチックで形成されていることを特徴とする、請求項8又は9に記載の接続システム(100)。
【請求項11】
前記少なくとも1つのシール要素(130)は、好ましくは、本質的に円形フラットシール(200)として、又はばね式シールとして設計されていることを特徴とする、請求項10に記載の接続システム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温タンクのための接続システムに関し、そのタンク壁が第1材料で形成され、接続システムは、タンクに接続されるコンポーネントのためのコネクタを有し、コネクタは第2材料で形成され、コネクタは、タンクの外側に配置され、タンク壁の通路開口と本質的に一致し、少なくとも1つのシール要素が設けられ、第1及び第2材料は、異なる熱膨張係数を有する。
【背景技術】
【0002】
非常に冷たい(極低温)の水素(LH2:20K、又は-253.15℃)と酸素(LOX:90K、又は-183.15℃)を意味する液体は、高いエネルギー密度からロケットの推進剤として使用されている。原則として、打ち上げ用ロケットのタンクはアルミニウム製であり、ラインやセンサなどの接続部品は、タンク壁のねじ付きレセプタクルに直接接続される。金属製のシールが、通常、ねじ接続部のシールに使用される。
【0003】
荷重最適化設計により、燃料タンクの製造に炭素繊維強化プラスチック(CFK、又は英語ではCFRP)を使用することで、金属設計に比べて大幅な重量的優位を達成することができる。このとき、異なる材料の熱膨張係数が不均等であると、熱による機械的応力や変形が発生する場合がある。特に、CFKの部品は、ねじ付きレセプタクルを実現するのに非常に手間がかかるという欠点がある。さらに、これまで極低温金属容器に使用されてきた金属輪郭シールは、その薄い接触線と場合によっては硬いシールエッジにより、複合材料のマトリックスと強化繊維を損傷し、それによって漏れと強度損失を引き起こすおそれがある。
【0004】
熱膨張係数が異なるため、CFK部品を金属部品と組み合わせることに対して、さらに別の課題をもたらす。CFKの熱膨張係数αは、繊維方向で約0.2×10-6-1であり、繊維方向に垂直な方向で30×10-6-1のレベルである。一方で、鋼の場合、熱膨張係数αは全方向で約12×10-6-1~15×10-6-1であり、アルミニウムの場合、約23×10-6-1である。そのため、約200℃まで冷却すると、金属部品は大きく収縮するが、CFK部品は繊維方向にほとんど変化しない。CFK部品は、金属部品と比較して、繊維方向に対して垂直方向に大幅に収縮する。
【0005】
上記の影響により、金属部品とCFK部品の半径方向の収縮率が変化する可能性がある。例えば、金属部品がCFK部品に強くねじ込まれている場合、接続要素は好ましくない曲げ応力にさらされる可能性がある。また、CFK部品に直接組み込まれた金属製インサートも、さまざまな熱膨張率によって引き起こされる機械的応力を受けることになる。このため、インサートとマトリックスの剥離、及びそれに伴う漏れの危険性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、組み合わされた材料の不均等な熱膨張係数によって熱的に引き起こされる機械的応力が、接続要素に半径方向の負荷をもたらさない極低温タンクのための接続システムを示すことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
冒頭に述べた目的は、第2材料で形成された相手部材が、タンクの内側に配置され、タンク壁が、相手部材、コネクタ、及び少なくとも1つのシール要素の間に挟まれるように、相手部材は、少なくとも2つの締結要素を用いてコネクタと接続でき、コネクタ及び相手部材の、タンク壁に平行なわずかな変位可能性が、熱的に誘発される機械的応力を補償するために残っているという事実によって達成される。
【0008】
コネクタと相手部材が材質的に均一であるため、タンク内が約-183℃以下の深冷(極低温)温度で、外気温が約20℃と比較的高い場合でも、コネクタと相手部材の低温による半径方向の収縮がほぼ同じであり、接続システム内部の熱による機械的応力は低減される。また、タンクの側面に当接する相手部材により、コネクタからタンク壁に導入される力は、より広い領域で作用する。
【0009】
コネクタは、好ましくは、本質的にスリーブ状の設計であり、タンクの外側に面する第1端部に連続締結フランジと、第1端部から離れる方向に向く第2端部にコンポーネントのための接続フランジとを有する。その結果、標準的なコンポーネントをコネクタとして使用することができる。
【0010】
技術的に有利な実施形態では、少なくとも2つの締結要素は、ねじ付きボルトとして設計される。これにより、コネクタと相手部材の軸方向張力のレベルを調整でき、よって結果として生じるタンク壁に作用するクランプ力を調整することができる。これにより、シール効果を損なうことなく、タンク壁に対して前述のコンポーネントの少なくともわずかな半径方向の変位、又はタンク壁に対する「フローティング(浮動)ベアリング」が可能になる。
【0011】
相手部材は、本質的に円形のデザインを有することが好ましい。これにより、周囲に均一な力を加えることができる。
【0012】
さらなる発展形態では、コネクタ、相手部材、及び少なくとも1つのシール要素は、長手方向中心線に対して本質的に回転対称に設計されている。これにより、費用対効果の高い製造可能性が提供される。コネクタ、相手部材、及びシール要素はそれぞれ、好ましくは円形の開口部を有し、これらは、約20℃の室温における接続システムの組み立て状態において、好ましくはそれぞれが互いに一致し、タンク壁の通路開口部と一致するように配置される。
【0013】
締結フランジは、好ましくは、ねじ付きボルトの数に対応する数の好ましくは不連続のねじ穴を有し、相手部材は、ねじ付きボルトのための対応する数のねじ無し貫通穴を有し、又はその逆であってもよい。原理的に、不連続のねじ穴又はねじ付きの止まり穴を設けることで、シール要素は十分なものとなる。不連続のねじ穴が設けられたコンポーネントは、その不連続のねじ穴と一致するように設計されたそれぞれのねじ無し貫通穴を有する。
【0014】
好ましい更なる展開として、コネクタの締結フランジ又は相手部材に不連続のねじ穴が設けられているかどうかに応じて、少なくとも1つのシール要素が、タンクの外側と締結フランジとの間、及び/又は相手部材とタンクの内側との間に配置されることを提案する。これにより、組み立て時の柔軟性が向上する。相手部材又はコネクタに不連続のねじ穴が設けられているかどうかに応じて、ねじ付きボルトはタンク内部からねじ込まれるか、タンクの外部環境からねじ込まれる。ここでの前提条件は、タンク内部に適切にアクセスできることである。
【0015】
第1材料は、好ましくは、ガラス繊維強化プラスチック、又は炭素繊維強化プラスチックなどの繊維複合プラスチックである。これにより、アルミニウム製タンクと比較して、より軽量なタンクを実現できる。
【0016】
第2材料は、好ましくは、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼などの金属、又は金属合金で形成される。これにより、コンポーネントをタンクや、例えば、ライン、パイプ、センサなどに機械的に堅牢に接続できる。
【0017】
好ましい更なる展開の場合、少なくとも1つのシール要素は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのプラスチックで形成される。軟質プラスチックは、タンク壁がその上に固定された金属部品によって損傷するのを防ぐと同時に、信頼性のあるシール効果を生み出す。
【0018】
有利なさらなる展開において、少なくとも1つのシール要素は、好ましくは、本質的に円形のフラットシールとして、又はばね式シール(spring-loaded seal)として設計される。これにより、変位性に影響を与えず、シール要素が1つしか無い場合でも、信頼性の高いシール効果を得ることができる。
【0019】
本発明の好ましい例示的な実施形態を、概略図に基づいて以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】先行技術による接続システムの概略縦断面図である。
図2】本発明による接続システムの概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、先行技術による接続システムの概略縦断面図を示す。図面Iの左半分の接続システムは約20℃(室温)の温度Tであるのに対し、図面IIの右半分の接続システムは-183.15℃(酸素の沸点)以下の極低温である。
【0022】
とりわけ、接続システム10は、詳細には図示されていないタンク16のタンク壁14に接続される部品(ここでは図示せず)のための接続スピゴット12を備える。接続スピゴット12は、タンク壁14に当接する働きをする円形フランジ18を有し、タンク壁14から離れる方向に向く管状接続部20から続いている。タンク壁14の外側22とフランジ18のシール面24との間に、シール要素26が設けられることが好ましい。タンク壁14は、炭素繊維強化プラスチックなどの繊維複合プラスチックで製造され、接続スピゴット12は、鋼、チタン、又はアルミニウムなどの金属材料で形成される。
【0023】
フランジ18は、互いに均一に間隔をあけて周方向に配置された複数の貫通穴を有し、そのうちの2つの貫通穴30、32のみが、すべての追加した貫通穴の代表としてここに示されている。フランジ18は、貫通穴の数に対応する複数のねじ付きボルトによってタンク壁14に固定されており、それらボルトはそれぞれ、タンク壁側の割り当てられたねじ付きインサートにねじ込まれている。ここで、タンク16の外側22から導入されたねじ付きインサートは、タンク壁14を貫通していない。ねじ付きボルト及びねじ付きインサートのうち、それぞれの2つのねじ付きボルト34、36、及び2つのねじ付きインサート38、40(いわゆる「インサート」)のみが、すべての追加したものの代表として図示されている。
【0024】
温度による膨張及び収縮効果とは別に、接続システム10は、長手方向中心線46に対して回転対称の構造を有している。接続システム10は、図面Iの左半分において、室温又は約20℃の温度Tにあるのに対し、図面IIの後半において、接続システム10は-183.15℃以下の極低温にある。
【0025】
炭素強化プラスチックで形成された材料又は素材は、繊維方向に約0.2×10-6-1、繊維方向と垂直な方向に30×10-6-1のレベルの熱膨張係数αを有する一方、鋼のような材料では、熱膨張係数αは、すべての空間方向に約12×10-6-1から15×10-6-1となり、アルミニウムでは約23×10-6-1となる。使用される材料のこれらの熱膨張係数α1、2は、互いに著しく乖離しているので、タンク16が、室温から極低温の酸素で満たされるときに生じるように、約200℃に冷却されると、白矢印50で示すように、タンク16の最小限の収縮しかないタンク壁14に関連して、接続スピゴット12に著しい収縮効果が生じる。例えば、このことは、ねじ付きボルト36に、その長手方向中心線52に対して横方向の相当な機械的半径方向負荷をもたらす。ねじ付きボルト36への熱的に誘発された機械的負荷は非常に高くなり、ねじ付きボルトは塑性変形を受ける可能性がある。これは断面的に強く湾曲した外輪郭54によって象徴的に示される。よって象徴的に示されるように、後者が塑性変形を受けるほど高くなり得る。
【0026】
上記の接続システム10のこれらの温度によって誘発される収縮効果は、接続システム10のタンク壁14と接続スピゴット12との間に望ましくない機械的応力をもたらすが、これは本発明による接続システムでは大幅に回避される(図2参照)。
【0027】
図2は、本発明による接続システムの概略縦断面を示し、接続システムは、図面の左半分IIIで約20℃(室温)の温度Tであるのに対し、図面の右半分IVの接続システムは-183.15°℃(酸素の沸点)以下の極低温である。
【0028】
とりわけ、タンク壁104が第1材料106で形成された極低温タンク102のための接続システム100は、コンポーネント116に接続するためのコネクタ110を備える。コネクタ110は、第2材料120で形成される。コネクタ110は、タンク壁104の通路開口部126と本質的に一致(正確に合致)してタンクの外側124に配置されている。厳密には例として、ここではシール要素130が密閉目的のために設けられている。熱的に誘発される収縮又は膨張効果とは別に、接続システム100は、長手方向中心線134に対して本質的に回転対称である構造を有する。
【0029】
タンク壁104の第1材料106は、炭素繊維強化プラスチック(CFK)のような繊維複合プラスチックを含む。あるいは、タンク壁104は、ガラス繊維強化プラスチック(GFK)、又はアラミド(登録商標)繊維で強化されたプラスチックで形成することも可能である。第1材料106は、繊維方向に約0.2×10-6-1で、繊維方向に垂直な方向に約30×10-6-1となる熱膨張係数αを有する。コネクタ110の第2材料120は、アルミニウム、鋼、又はチタンのような均質な金属材料である。第2材料120が鋼又はアルミニウムである場合、方向に依存しない熱膨張係数αは、鋼の場合、12×10-6-1から15×10-6-1の範囲内にあり、アルミニウムの場合、約23×10-6-1となる。同様に第2材料120で形成されたほぼ円形の相手部材(カウンターパート)140は、タンクの内側136に配置され、少なくとも2つの締結要素を用いてコネクタ110と接続することができ、タンク壁104が相手部材140、コネクタ110、及びシール要素130の間で確実にクランプ又は支持されるようにする。熱膨張係数の変化により熱的に誘発される機械的応力を補償するために、タンク壁104に平行なコネクタ110と相手部材140の少なくともわずかな変位可能性が残されている。相手部材140の材料厚さは、タンク壁104の材料厚さにほぼ対応する。
【0030】
好ましくは互いに周囲に一様に配置された締結要素のうち、2つの締結要素146、148のみが示され、残りの全てのものを代表するものとしてここにラベル付けされる。締結要素146、148は、ここでは単なる例としてねじ付きボルト150、152として設計されている。シール要素130は、本質的にU字型の断面形状を有する連続溝154(リング溝)に受容され、締結要素146、148のそれぞれ1つのための通路開口部156、158、ならびに図2には示すことができない締結要素のための通路開口部を有する。締結フランジ164の連続溝154は、ここでは、締結要素146、148及び不可視の締結要素のいずれかの側で半径方向(半径方向内向き及び外向き)に延在するが、締結フランジ164の接触面174の半径方向幅全体を占めていない。
【0031】
コネクタ110は、本質的にスリーブ状の設計を有し、タンクの外側124に面する第1端部160に連続した締結フランジ164と、そこから軸方向に離れた第2端部168にコンポーネント116を接続するための接続フランジ172とを有する。締結フランジ164のU字溝154は、ブレース(braced)された状態のシール要素130が、締結フランジ164の接触面174と面一になる程度まで、相手部材140、タンク壁104、及びコネクタ110によって軸方向に本質的に圧縮されるように設計されている。
【0032】
シール要素130及びU字溝154の代わりに、図2上に破線の輪郭のみで図示したように、締結フランジ164内の締結要素146、148に対して半径方向外側にのみ延びる連続したU字溝内にシール要素(図面を見易くするためにラベル付けされていない)を設けることが可能である。このような配置において、シール要素は、プロファイルシールなどとして設計することもできる。
【0033】
締結フランジ164は、ねじ付きボルト150、152の数に対応する数の好ましくは不連続なねじ穴178、180を有する一方、ねじ付きボルト150、152を通すための対応する数のねじ無し貫通穴182、184が相手部材140に導入されている。ねじ付きボルト150、152をタンク壁104に通すことができるように、タンク壁104は同様に、ねじ付きボルト150、152の数に対応する数のねじ無し貫通穴186、188を好ましくは互いに均一に間隔をあけて周辺に有する。コネクタ110のねじ穴178、180、相手部材140の貫通穴182、184、及びタンク壁104の貫通穴186、188は、それぞれ、設計上、互いに本質的に一致している。図2の図示とは反対に、不連続なねじ穴178、180を相手部材140に導入することもでき、その場合、コネクタ110の締結フランジ164(図示せず)の内部に対応する数のねじ無し貫通穴が設けられる。そのような場合、締結要素146、148は、図2の図解に関連して、180°ねじられ、すなわち、タンクの外側124から進行して挿入される。これは、タンク内部へのアクセスがより困難であることを考慮すると、有利である。
【0034】
相手部材140にある軸方向に不連続なねじ穴178、180は、接続システム100を密封するために必要な技術的労力を低減する。コネクタ110の締結フランジ164又は相手部材140が不連続なねじ穴178、180を備えるか否かに応じて、シール要素130は、タンク壁104とコネクタ110の締結フランジ164との間、及び/又は相手部材140とタンクの内側136との間に配置される。接続システム100の漏れ経路を完全に密閉するために、追加の密閉要素をおそらく設けなくてはならない可能性がある。
【0035】
シール要素130は、ここでは完全に一例として小さな軸方向高さHを有する円形フラットシール200として設計されているが、代替的にOリング、又はばね式シールで実現することもできる。シール要素130は、好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE又はTeflon(登録商標))で実現される。
【0036】
図面IIIの最初の左半分の接続システム100は室温であり、つまり約20℃の温度Tである。-183.15℃以下の温度の液体酸素などの極低温燃料又は深冷燃料でタンク102を充填すると、接続システム100は、200℃以上のオーダーで集中的に冷却され、第2の金属材料120で形成されたコネクタ110と相手部材140の著しい機械的収縮効果を伴う。しかし、コネクタ110及び相手部材140の材料の均一性が与えられると、2つの矢印210、212で示されるように、冷却による収縮率は本質的に同じであるので、従来知られている接続システムとは対照的に、締結要素148がタンク壁104の内側の貫通穴188に大きすぎる半径方向の力で当接されない限り、割り当てられた長手方向中心線214を横切る締結要素148の塑性変形は生じない。タンク壁104の貫通穴186についても、その中に配置された締結要素146に関して同じことが当てはまる。このような背景から、タンク壁104の貫通穴186、188の断面は、相手部材140の貫通穴182、184の断面よりも大きな寸法を有し、コネクタ110及び相手部材140の熱的に誘発される収縮及び膨張率を補償するために、十分な半径方向のクリアランスを確保することが有利である。シール要素130は、一方では流体シールを確立するために用いられ、他方では、金属材料で形成されたコネクタ110と、金属材料で同様に形成された相手部材140との間で、両側から機械的にクランプされることから、繊維複合プラスチックで形成されたタンク壁104が機械的に損傷する危険を低減するために使用される。
【0037】
最後に、図2の取り付け状態において、タンク壁104の通路開口部126、及び本質的に円筒形の通路開口部224、226は、通過する流体に対して可能な限り低い流れ抵抗を達成するように、互いにほぼ一致して配置される。
【0038】
本発明は、極低温タンク(102)のための接続システム(100)に関し、そのタンク壁(104)が、第1材料(106)で形成され、接続システム(100)は、タンク(102)に接続されるコンポーネント(116)のためのコネクタ(110)を有し、コネクタ(110)は、第2材料(120)で形成され、コネクタ(110)は、タンクの外側(124)に配置され、タンク壁(104)の通路開口部(126)と本質的に一致し、少なくとも1つのシール要素(130)が設けられ、第1及び第2材料(106、120)は、異なる熱膨張係数(α、α)を有する。
【0039】
本発明は、第2材料(120)で形成された相手部材(140)が、タンクの内側(136)に配置され、タンク壁(104)が、相手部材(140)、コネクタ(110)、及び少なくとも1つのシール要素(130)の間に挟まれるように、相手部材(140)は、少なくとも2つの締結要素(146、148)を用いてコネクタ(110)と接続でき、コネクタ(110)及び相手部材(140)の、タンク壁(104)に平行なわずかな変位可能性が、熱的に引き起こされる機械的応力を補償するために残っていることを規定する。
【0040】
コネクタ(110)と相手部材(140)は、材料的に均一であり、200℃の範囲内で高温変動があった場合、同一の熱収縮率と膨張率となり、どちらも締結要素(146、148)に作用する横方向の力が発生するのを防ぐ。
【符号の説明】
【0041】
10 接続システム(SdT)
12 接続スピゴット
14 タンク壁
16 タンク
18 フランジ
20 コネクタ
22 外側(タンク壁)
24 シール面
26 シール要素
30、32 貫通穴
34、36 ねじ付きボルト
38、40 ねじ付きインサート
46 長手方向中心線
50 白矢印
52 長手方向中心線(ねじ付きボルト)
54 外輪郭(ねじ込み式ボルト)
100 接続システム
102 タンク
104 タンク壁
106 第1材料(繊維複合樹脂)
110 コネクタ
116 コンポーネント
120 第2材料(金属)
124 タンクの外側
126 通路開口部(タンク壁面)
130 シール要素
134 長手方向中心線
136 タンクの内側
140 相手部材
146、148 締結要素
150、152 ねじ付きボルト
154 溝
156、158 通路開口部(シール要素)
160 第1端部(コネクタ)
164 締結フランジ(コネクタ)
168 第2端部(コネクタ)
172 接続フランジ(コネクタ)
174 接触面(締結フランジ)
178、180 ねじ穴(コネクタ)
182、184 貫通穴(相手部材)
186、188 貫通穴(タンク壁)
200 フラットシール
210、212 矢印
214 長手方向中心線
216、218 貫通穴(タンク壁)
224 貫通穴(コネクタ)
226 貫通穴(対向)
α 熱膨張係数
α 熱膨張係数
H 高さ(シール要素)
1、2 温度
I 描画の1分目
II 描画の2分目
III 描画の3分目
IV 描画の4分目
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-01-19
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温タンク(102)のための接続システム(100)であって、
前記極低温タンク(102)のタンク壁(104)は、第1材料(106)で形成され、
前記接続システム(100)は、前記タンク(102)に接続されるコンポーネント(116)のためのコネクタ(110)を有し、
前記コネクタ(110)は、第2材料(120)で形成され、前記コネクタ(110)は、前記タンクの外側(124)に配置され、前記タンク壁(104)の通路開口部(126)と本質的に一致し、
少なくとも1つのシール要素(130)が設けられ、前記第1及び第2材料(106、120)は、異なる熱膨張係数(α、α)を有する接続システムにおいて、
前記第2材料(120)で形成された相手部材(140)が、前記タンクの内側(136)に配置され、
前記タンク壁(104)が、前記相手部材(140)、前記コネクタ(110)、及び前記少なくとも1つのシール要素(130)の間に挟まれるように、前記相手部材(140)は、少なくとも2つの締結要素(146、148)を用いて前記コネクタ(110)と接続でき、
熱的に誘発される機械的応力を補償するために、前記コネクタ(110)及び前記相手部材(140)の、前記タンク壁(104)に平行なわずかな変位可能性が残っていることを特徴とする、接続システム(100)。
【請求項2】
前記コネクタ(110)は、本質的にスリーブ状のデザインを有し、前記タンクの外側(124)に面する第1端部(160)に連続締結フランジ(164)と、前記第1端部から離れて向いた第2端部(168)に前記コンポーネント(116)のための接続フランジ(172)とを有することを特徴とする、請求項1に記載の接続システム(100)。
【請求項3】
前記少なくとも2つの締結要素(146、148)は、ねじ付きボルト(150、152)として設計されていることを特徴とする、請求項2に記載の接続システム(100)。
【請求項4】
前記相手部材(140)は、本質的に円形のデザインを有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の接続システム(100)。
【請求項5】
前記コネクタ(110)、前記相手部材(140)、及び少なくとも1つのシール要素(130)は、長手方向中心線(134)に対して本質的に回転対称に設計されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の接続システム(100)。
【請求項6】
前記締結フランジ(164)は、ねじ付きボルト(150、152)の数に対応する数の好ましくは不連続なねじ穴(178、180)を有し、前記相手部材(140)は、前記ねじ付きボルト(150、152)のための対応する数のねじ無し貫通穴(182、184)を有し、又はその逆であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の接続システム(100)。
【請求項7】
前記コネクタ(110)の前記締結フランジ(164)、又は前記相手部材(140)が、前記不連続なねじ穴(178、180)を備えるか否かに応じて、前記少なくとも1つのシール要素(130、132)は、前記タンクの外側(124)と前記締結フランジ(164)の間、及び/又は前記相手部材(140)と前記タンクの内側(136)の間に配置されることを特徴とする、請求項6に記載の接続システム(100)。
【請求項8】
前記第1材料(106)は、ガラス繊維強化プラスチック、又は炭素繊維強化プラスチックなどの繊維複合プラスチックであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の接続システム(100)。
【請求項9】
前記第2材料(120)は、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼などの金属、又は金属合金で形成されていることを特徴とする、請求項8に記載の接続システム(100)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのシール要素(130)は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのプラスチックで形成されていることを特徴とする、請求項8に記載の接続システム(100)。
【請求項11】
前記少なくとも1つのシール要素(130)は、好ましくは、本質的に円形フラットシール(200)として、又はばね式シールとして設計されていることを特徴とする、請求項10に記載の接続システム(100)。
【外国語明細書】