(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083268
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】ルミネッセントコンポーネント
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20230608BHJP
C09K 11/02 20060101ALI20230608BHJP
C09K 11/66 20060101ALI20230608BHJP
F21V 9/38 20180101ALI20230608BHJP
F21V 9/32 20180101ALI20230608BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20230608BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20230608BHJP
C09K 11/08 20060101ALN20230608BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230608BHJP
F21Y 115/15 20160101ALN20230608BHJP
【FI】
G02B5/20
C09K11/02 Z
C09K11/66
F21V9/38
F21V9/32
F21S2/00 482
H01L33/50
C09K11/08 J
F21Y115:10
F21Y115:15
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023019985
(22)【出願日】2023-02-13
(62)【分割の表示】P 2020104606の分割
【原出願日】2020-06-17
(31)【優先権主張番号】19 180 680.1
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】514211884
【氏名又は名称】アファンタマ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】ノーマン アルベルト リュヒンガー
(72)【発明者】
【氏名】リン ファンチエン
(72)【発明者】
【氏名】トム ミッチェル-ウィリアムズ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ローアー
(57)【要約】
【課題】優れた性能及び安定性を有するルミネッセントコンポーネントを提供すること。
【解決手段】ルミネッセントコンポーネントは、第1のポリマーP1中に埋め込まれたペロブスカイト結晶の部類の第1ルミネッセント結晶11を含む第1の要素1と、第2の固体ポリマー組成物を含む第2の要素2とを含み、前記第2のポリマー組成物は、第2のポリマーP2中に埋め込まれた第2のルミネッセント結晶12を任意選択的に含んでいてもよい。かかるコンポーネントの製造方法及びかかるコンポーネントを含むデバイスの製造方法も開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルミネッセントコンポーネント(4)におけるポリマー(P2)の使用であって、
・前記ポリマー(P2)はTg>115℃の架橋ポリマーからなる群から選択され、
・前記ルミネッセントコンポーネントは、Tg<95℃のポリマー(P1)中に埋め込まれたペロブスカイト結晶構造のルミネッセント結晶(11)を含み、
ここで、各Tgは、第2回目の加熱サイクルの間に、-90℃で開始して最高250℃まで20K/分の加熱速度を適用して、DIN EN ISO 11357-2:2014-07に従って求められる、ルミネッセントコンポーネント(4)におけるポリマー(P2)の使用。
【請求項2】
第1の要素(1)及び第2の要素(2)を含むルミネッセントコンポーネント(4)であって、
・前記第1の要素(1)は第1の固体ポリマー組成物を含み、前記第1のポリマー組成物は第1のポリマー(P1)中に埋め込まれた第1のルミネッセント結晶(11)を含み、
ここで、
・前記第1のルミネッセント結晶は、ペロブスカイト結晶構造を有するものであり、第1の波長よりも短い波長の光による励起に応じて第1の波長の光を放出し、
・前記第1のポリマー(P1)はTg<95℃のポリマーからなる群から選択され、
・前記第2の要素(2)は第2の固体ポリマー組成物を含み、前記第2のポリマー組成物は第2のポリマー(P2)中に埋め込まれた第2のルミネッセント結晶(12)を任意選択的に含んでいてもよく、
ここで、
・前記任意選択の第2のルミネッセント結晶(12)は前記第1のルミネッセント結晶(11)と異なるものであり、第2の波長よりも短い波長の光による励起に応じて第2の波長の光を放出し、
・前記第2のポリマー(P2)は、Tg>115℃の架橋ポリマーからなる群から選択され、
前記第2の要素は、前記第1の要素を少なくとも部分的に覆い、それにより前記第1の要素を封止し、
前記Tgは請求項1に定義したとおりに求められる、ルミネッセントコンポーネント(4)。
【請求項3】
P1及び/又はP2が、以下のパラメータ:
・P1は、炭素に対する(酸素+窒素+硫黄+リン+フッ素+塩素+臭素+ヨウ素)の合計のモル比が<0.9、好ましくは<0.4、好ましくは<0.3、最も好ましくは<0.25である;
・P2は、炭素に対する(酸素+窒素+硫黄+リン+フッ素+塩素+臭素+ヨウ素)の合計のモル比が<0.9、好ましくは<0.4、好ましくは<0.3、最も好ましくは<0.20である;
・P1のWVTRは、<1(g・mm)/(m2・day)、好ましくは<0.5(g・mm)/(m2・day)、最も好ましくは<0.2(g・mm)/(m2・day)である;
・P2のWVTRは、<1(g・mm)/(m2・day)、好ましくは<0.5(g・mm)/(m2・day)、最も好ましくは<0.2(g・mm)/(m2・day)である;
・P1のOTRは、>1(cm3・mm)/(m2・day・atm)、好ましくは>5(cm3・mm)/(m2・day・atm)、好ましくは>25(cm3・mm)/(m2・day・atm)、最も好ましくは>125(cm3・mm)/(m2・day・atm)である;
・P2のOTRは、<50(cm3・mm)/(m2・day・atm)、好ましくは<10(cm3・mm)/(m2・day・atm)、好ましくは<5(cm3・mm)/(m2・day・atm)、最も好ましくは<1(cm3・mm)/(m2・day・atm)である;
・P1及びP2の光透過率は、100μmの厚さで、>70%、好ましくは>80%、最も好ましくは>90%である;
・第1のポリマー(P1)は第2のポリマー(P2)中に可溶性でなく、その逆もまた同様である;
のうちの1つ又は2つ以上に従う、請求項2に記載のルミネッセントコンポーネント。
【請求項4】
前記第1のポリマー(P1)がアクリレートポリマーからなる群から選択され、前記第2のポリマー(P2)が好ましくはアクリレートポリマーからなる群から選択される、請求項2又は3に記載のルミネッセントコンポーネント。
【請求項5】
前記第1のポリマー(P1)は式(III)及び(V)の反復単位を含み、及び/又は、前記第2のポリマー(P2)は式(VI)の反復単位と任意選択的に式(III)の反復単位を含む請求項2~4のいずれか一項に記載のルミネッセントコンポーネント:
【化1】
(式中、R
9はH又はCH
3を表し、
R
10は環式、直鎖もしくは分岐C
1-25アルキル、又はC
6-26アリール基を表し、それぞれ、任意選択的に、1又は2個以上の環式、直鎖もしくは分岐C
1-20アルキル、フェニル又はフェノキシにより置換されていてもよく、
nは0又は1を表し、
Xは1~8個の炭素原子及び1~4個の酸素原子を含むアルコキシレートから成る群から選択されるスペーサーを表す。);
【化2】
(式中、R
21は互いに独立にH又はCH
3を表し;
R
23は、環式、直鎖又は分岐C
1-25アルキル、又はC
6-26アリール基を表し、これらはそれぞれ任意選択的に1又は2個以上の環式、直鎖又は分岐C
1-20アルキル、フェニル又はフェノキシにより置換されていてもよく;
X
22は、互いに独立に、アルコキシレートからなる群から選択されたスペーサーを表し、両方の置換基X
22の全体で8~40個の炭素原子及び2~20個の酸素原子が含まれる。);
【化3】
(式中、R
31は互いに独立にH又はCH
3を表し;
R
33は、環式C
5-25アルキル、又はC
6-26アリール基を表し、これらはそれぞれ任意選択的に1又は2個以上の環式、直鎖又は分岐C
1-20アルキル、フェニル又はフェノキシにより置換されていてもよく;
X
32は、互いに独立であり、存在しないか、又はアルコキシレートからなる群からのスペーサーを表し、両方の置換基X
22の全体で1~8個の炭素原子及び1~8個の酸素原子が含まれる。)
【請求項6】
前記第1のルミネッセント結晶(11)が式(I):
[M1A1]aM2
bXc (I)
(式中、
A1は1又は2種以上の有機カチオンを表し、
M1は1又は2種以上のアルカリ金属を表し、
M2は、M1以外の1又は2種以上の金属金属を表し、
Xは、ハライド、擬ハライド及びスルフィドからなる群から選択された1又は2種以上のアニオンを表し、
aは1~4を表し、
bは1~2を表し、
cは3~9を表し、
M1又はA1のいずれか、あるいは、M1及びA1が存在する。)
の化合物から選択され、及び/又は
前記第1のルミネッセント結晶(11)が3~100nmのサイズを有するものである、請求項2~5のいずれか一項に記載のルミネッセントコンポーネント。
【請求項7】
前記第2のルミネッセント結晶(12)がコア-シェルQD及びミクロンサイズの蛍光体のうちの1又は2種以上から選択される、請求項2~6のいずれか一項に記載のルミネッセントコンポーネント。
【請求項8】
さらに、ペロブスカイト結晶、コア-シェルQD及びミクロンサイズの蛍光体のうちの1又は2種以上から選択された第3のルミネッセント結晶(13)を含む、請求項2~7のいずれか一項に記載のルミネッセントコンポーネント。
【請求項9】
フィルム(4)、特にQDバックライトフィルム又はダウンコンバージョンフィルムの形態にある請求項2~8のいずれか一項に記載のルミネッセントコンポーネントであって、前記フィルムが以下の層構造:
・第1の要素(1)の層-第2の要素(2)の層;もしくは
・第2の要素(2)の層-第1の要素(1)の層-第2の要素(2)の層;又は
・保護層(5)-第2の要素(2)の層-第1の要素(1)の層-第2の要素(2)の層-保護層(5);
を含む、請求項2~8のいずれか一項に記載のルミネッセントコンポーネント。
【請求項10】
前記保護層が、
・ガラス;
・湿気バリヤー特性を有するポリマー;
・酸素バリヤー特性を有するポリマー;
・酸化物層でコートされたポリマー(好ましくはSiOx又はAlOxでコートされたPET);
からなる群から選択された、請求項9に記載のルミネッセントコンポーネント。
【請求項11】
・1つ又は2つ以上の前記第1の要素(1)が基材(3)上に配置され、前記第2の要素(2)を含む1つの層により覆われたか、又は
・前記第1の要素(1)を含む1つの層が基材(3)上に配置され、前記第2の要素(2)を含む1つの層によりコートされた、
請求項2~8のいずれか一項に記載のルミネッセントコンポーネント。
【請求項12】
複数の第1の要素(1)がマトリックス(5)中に分散され、前記第2の要素(2)により完全に覆われた、請求項2~8のいずれか一項に記載のルミネッセントコンポーネント。
【請求項13】
・請求項1~12のいずれか一項に記載のルミネッセントコンポーネントと、
・青色光を放出するための光源、
を含み、
前記光源が前記ルミネッセントコンポーネントを励起するために配置された、発光デバイス。
【請求項14】
・ディスプレイ、特に液晶ディスプレイ、OLEDディスプレイ、QLEDディスプレイ、ミクロLEDディスプレイ;及び
・照明デバイス、特に、LED、OLED、QLED;
からなる群から選択される、請求項13に記載の発光デバイス。
【請求項15】
ルミネッセントコンポーネント(4)が青色光に曝されたことに応じて白色光を放出するための、特に液晶ディスプレイにおいてバックライトとしての、請求項2~11のいずれか一項に記載のルミネッセントコンポーネントの使用。
【請求項16】
下記の工程を含む請求項2~12のいずれか一項に記載のルミネッセントコンポーネントの製造方法:
-方法A-
・1又は2つ以上の層で任意選択的にコートされていてもよい基材を用意する工程;
・前記基材に、第1のポリマーP1のモノマー又はオリゴマーと、第1のルミネッセント結晶11と、任意選択的に溶剤と、任意選択的にさらなる材料と、任意選択的に第3のルミネッセント結晶13とを含む第1の液体ポリマー組成物を適用する工程;
・任意選択的に、前記液体の第1のポリマー組成物を高温で加熱して揮発性溶剤を除去する工程;
・前記第1の液体ポリマー組成物を硬化させて第1の要素を得る工程;
・前記第1の要素のこうして得られた硬化した表面に、第2のポリマーP2のモノマー又はオリゴマーと、任意選択的に第2のルミネッセント結晶12と、任意選択的に溶剤と、任意選択的にさらなる材料とを含む第2の液体ポリマー組成物を適用する工程;
・任選択的に、前記液体の第2のポリマー組成物を高温で加熱して揮発性溶剤を除去する工程;
・前記液体の第2のポリマー組成物を硬化させて、前記第1の要素を覆い、それにより前記第1の要素を封止する第2の要素を得る工程;
・任意選択的に、さらなるコーティング又は仕上げ工程を適用する工程;
又は
-方法B-
・1又は2つ以上の層で任意選択的にコートされていてもよい基材を用意する工程;
・前記基材に、先に定義したとおりの第2の液体ポリマー組成物を適用する工程;
・任意選択的に、前記液体の第2のポリマー組成物を高温で加熱して揮発性溶剤を除去する工程;
・前記第2のポリマー組成物を硬化させて第2の要素を得る工程;
・前記第2の要素のこうして得られた硬化した表面に、先に定義したとおりの第1の液体ポリマー組成物を適用する工程;
・任選択的に、前記液体の第1のポリマー組成物を高温で加熱して揮発性溶剤を除去する工程;
・前記液体の第1のポリマー組成物を硬化させて、第1の要素であって、その下面で前記第2の要素により覆われ、それにより封止された第1の要素を得る工程;
・さらなるコーティング又は仕上げ工程を適用する工程;
又は
-方法C-
・それぞれ第2の要素の1つの層でコートされた2つの基材を用意する工程;
・これらのコートされた基材により第1の要素の1つの層をラミネートする工程;
あるいは
-方法D-
・第1のポリマーP1のモノマー又はオリゴマーと、第1のルミネッセント結晶11と、任意選択的に溶剤と、任意選択的にさらなる材料と、任意選択的に第3のルミネッセント結晶13とを含む第1の液体ポリマー組成物を用意する工程;
・下記a)又はb)の一方:
a)噴霧乾燥又は沈殿のうちの一方により第1の液体ポリマー組成物から複数の第1の要素(1)を得る工程、又は
b)第1の液体ポリマー組成物を硬化させて第1の固体ポリマー組成物とし、第1の固体ポリマー組成物を粉砕して複数の第1の要素(1)を得る工程、
のうちの一方により用意する工程;
・前記第1の要素(1)を先に定義したとおりの第2の液体ポリマー組成物中に混合する工程;
・1又は2つ以上の層で任意選択的にコートされていてもよい基材を用意する工程;
・前記基材に、第1の要素(1)を含む前記第2の液体ポリマー組成物を適用する工程;
・任選択的に、前記液体の第2のポリマー組成物を高温で加熱して揮発性溶剤を除去する工程;
・前記液体の第2のポリマー組成物を硬化させて、前記第1の要素を覆い、それにより前記第1の要素を封止する第2の要素を得る工程;
・任意選択的に、さらなるコーティング又は仕上げ工程を適用する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルミネッセント結晶(luminescent crystals)(LC)、それを含むコンポーネント及びデバイスの分野に関する。特に、本発明は、ルミネッセントコンポーネント、かかるコンポーネントを含む発光デバイス、ルミネッセントコンポーネントの使用、かかるコンポーネントにおける特定のポリマーの使用、並びにルミネッセントコンポーネント及び発光デバイスの製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2011/053635号は、密封されたナノサイズのルミネッセント結晶(LC)の組成物及び容器を含む発光ダイオード(LED)デバイスを開示している。
【0003】
国際公開第2017/106979号は、第1のポリマー中にあるルミネッセント結晶であって、ポリマー又は無機マトリックス中に封入されたルミネッセント結晶を含むルミネッセントコンポーネントを開示している。国際公開第2018/028869号は、ペロブスカイト結晶の部類のルミネッセント材料及びその製造方法を開示している。
【0004】
米国特許出願公開第2018/0298278号明細書は、特定のマトリックス中に分散されたペロブスカイトナノ粒子を含む複合ルミネッセント材料を開示している。この文献は、低い量子収率及び低い安定性などの既知の複合ルミネッセント材料の欠点を改善することを目的としており、改善された製造方法によりそれらを解消することを提案している。開示されている方法は適切であるが、商業的規模で実施することが困難であり、量子収率及び安定性は依然として不十分であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/053635号
【特許文献2】国際公開第2017/106979号
【特許文献3】国際公開第2018/028869号
【特許文献4】米国特許出願公開第2018/0298278号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既知のルミネッセントコンポーネントは、特にペロブスカイト構造のLCを含む場合、酸素又は湿気に対する安定性を改善するためにバリヤーフィルムを含むことがある。多くの用途に対して適切であるが、これらのルミネッセントコンポーネント及び発光デバイスは、特に、高い温度及び高い湿度並びに青色光照射の点で、安定性を欠く。
【0007】
従って、本発明の1つの目的は、最新の技術水準のこれらの欠点のうちの少なくとも幾つかを軽減することである。特に、本発明の1つの目的は、高発光性であると同時に、改善された安定性、特に温度及び湿度並びに青色光照射に対して改善された安定性を示すルミネッセントコンポーネントを提供することである。本発明のさらなる目的は、新規な照明デバイス、並びにかかるコンポーネント及びデバイスの製造方法、特に商業生産に適する製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの目的は、請求項2に規定したとおりのルミネッセントコンポーネント、請求項13に規定したとおりの照明デバイス、及び請求項16に規定したとおりの製造方法により達成される。本発明のさらなる態様は、本明細書及び独立請求項に開示されており、好ましい実施形態は、本明細書及び従属請求項に開示されている。本発明は、特に、
・ルミネッセントコンポーネント及びその使用(第1の態様);
・照明デバイス(第2の態様);
・ルミネッセントコンポーネント及びデバイスの製造(第3の態様);
を提供する。
【0009】
本発明を以下で詳細に説明する。本明細書に提示/開示する様々な実施形態、好ましさ及び範囲は、自在に組み合わせてもよいことが理解されるべきである。さらに、具体的な実施形態に応じて、選択した定義、実施形態又は範囲は適用されないことがある。
【0010】
特に断らない限り、以下の定義が本明細書で適用される。
本発明の文脈で使用される語句「a」、「an」、「the」及び類似の用語は、本明細書で特に断らない限り、又は、文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及複数形の両方をカバーすると理解されるべきである。さらに、用語「含む又は含有する(containing)」は、「含む(comprising)」と「実質的に・・・からなる(essentially consisting of)」「からなる(consisting of)」の全てを包含する。百分率は、本開示で特に断らない限り、又は、文脈と明らかに矛盾しない限り、質量%として示されている。「独立に」は、1つの置換基/イオンが、名称を挙げた置換基/イオンのうちの1つから選択できること、又は、上記のものの1つより多くのものの組み合わせであることができる。
【0011】
用語「ルミネッセント結晶」(LC)は、当該技術分野で知られており、半導体材料製の3~100nmの結晶に関する。この用語は、量子ドット、典型的には3~15nmの範囲内の量子ドット、及び、ナノ結晶、典型的には15nmよりも大きく最大で100nm(好ましくは最大で50nm)の範囲内のナノ結晶を包含する。好ましくは、ルミネセント結晶は、おおよそ等軸晶系(isometric)(例えば球晶又は立方晶系)である。3つの直交軸の寸法のすべてのアスペクト比(最長:最短方向)が1~2である場合は、粒子はおおよそ等方的であると見なされる。よって、LCの集合は、好ましくは50~100%(n/n)、好ましくは66~100%(n/n)、より好ましくは75~100%(n/n)の等方的結晶を含む。
【0012】
LCは、その用語が示すように、ルミネッセンス(発光)を示す。本発明の文脈において、ルミネッセント結晶なる用語は、単結晶の形態にある粒子と多結晶性粒子の両方を包含する。後者の場合、1つの粒子は、結晶性又は非晶質の相境界により接続された幾つかの結晶ドメイン(グレイン)からなっていてもよい。ルミネッセント結晶は、直接遷移(典型的には1.1~3.8eV、より典型的には1.4~3.5eV、よりいっそう典型的には1.7~3.2eVの範囲内)を示す半導体材料である。バンドギャップ以上の電磁線を照射することによって、価電子帯の電子が伝導帯に励起されて電子の正孔が価電子帯に残る。形成された励起子(電子-電子・正孔対)は、フォトルミネッセンスの形で放射的に再結合し、最大強度はLCバンドギャップ値を中心とし、少なくとも1%のフォトルミネッセンス量子収率を示す。外部の電子及び電子正孔源と接触すると、LCはエレクトロルミネセンスを示すことができる。本発明の文脈において、LCは、メカノルミネッセンス(mechanoluminescence)(例えば、ピエゾルミネッセンス(piezoluminescence))、化学ルミネッセンス、電気化学ルミネッセンス又は熱ルミネッセンスを示さない。
【0013】
用語「量子ドット」(QD)は知られており、特に、典型的には3~15nmの直径を有する半導体ナノ結晶に関する。この範囲では、QDの物理的半径は、バルク励起ボーア半径(bulk excitation Bohr radius)よりも小さく、量子閉じ込め効果が優勢になる。その結果、QDの電子状態はQDの組成及び物理的サイズの関数であり、それゆえ、バンドギャップはQDの組成及び物理的サイズの関数であり、すなわち吸収/発光の色はQDのサイズと関連している。QDのサンプルの光学的品質は、それらの均質性と直接関連する(より単分散性のQDであるほど、より小さい半値幅(FWHM)の発光を示す)。量子ドットがボーア半径より大きなサイズに達すると、量子閉じ込め効果が妨げられ、励起子再結合のための無放射経路が支配的になるので、サンプルはもはや発光しないことがある。従って、QDはナノ結晶の特定のサブグループであり、特にそのサイズ及びサイズ分布によって定義される。
【0014】
用語「ペロブスカイト結晶」は知られており、特に、ペロブスカイト構造の結晶性化合物を包含する。かかるペロブスカイト構造は知られており、一般式M1M2X3(式中、M1は配位数12(cuboctaeder)のカチオンであり、M2は配位数6(octaeder)のカチオンであり、Xは、格子の立方晶、擬立方晶、正方晶又は斜方晶位置にあるアニオンである。)の立方晶、擬立方晶、正方晶又は斜方晶の結晶として記述される。これらの構造において、選択されたカチオン又はアニオンは他のイオン(確率的に又は正規に最大30原子数%まで)により置き換えられてもよく、それによって、まだその元の結晶構造を維持しているドープされたペロブスカイト又は非化学量論的ペロブスカイトがもたらされる。かかるルミネッセント結晶の製造は、例えば国際公開第2018/028869号から知られている。
【0015】
用語「ポリマー」は知られており、反復単位(「モノマー」)を含む有機及び無機の合成物質を包含する。用語「ポリマー」は、ホモポリマーとコポリマーを包含する。さらに、架橋ポリマー及び非架橋ポリマーも包含される。文脈に応じて、用語「ポリマー」は、そのモノマー及びオリゴマーを包含する。例として、ポリマーは、アクリレートポリマー、カーボネートポリマー、スルホンポリマー、エポキシポリマー、ビニルポリマー、ウレタンポリマー、イミドポリマー、エステルポリマー、フランポリマー、メラミンポリマー、スチレンポリマー、ノルボルネンポリマー、シリコーンポリマー及び環式オレフィンコポリマーを包含する。ポリマーは、当該技術分野における従前のとおり、重合開始剤、安定剤、充填剤、溶剤などの他の材料を含んでもよい。
【0016】
ポリマーは、物理的パラメータ、例えば極性、ガラス転移温度Tg、ヤング率及び光透過率などによってさらに特徴づけることができる。
透過率:典型的には、本発明の文脈において使用されるポリマーは、ルミネッセント結晶により光が放出されることが可能であり、また、ルミネッセント結晶を励起させるために使用される光源の可能な光が透過するように可視光に対して光透過性である、すなわち、不透明でない。光透過率は、白色光干渉分析法又は紫外-可視(UV-Vis)分光分析法により求めることができる。
【0017】
ガラス転移温度(Tg)は、ポリマーの分野で確立したパラメータである。ガラス転移温度は、非晶質又は半結晶質ポリマーがガラス(硬い)状態から、より柔軟な、コンプライアントな、又はゴム状の状態に変化する温度を指す。高いTgを有するポリマーは、「硬質(hard)」と見なされるのに対し、低いTgを有するポリマーは「軟質(soft)」と見なされる。分子レベルでは、Tgは不連続な熱力学的転移でなく、その前後にわたってポリマー鎖の可動性が著しく増加する温度範囲である。しかしながら、慣例では、DSC測定の熱流曲線の2つのフラットな領域に対する接線で囲まれた温度範囲の中点として定義される単一の温度として報告される。Tgは、DSCを使用して、DIN EN ISO 11357-2又はASTM E1356に従って求めることができる。ポリマーがバルク材料の形態で存在する場合、この方法は特に適する。あるいは、ISO 14577-1又はASTM E2546-15に従って、ミクロ又はナノインデンテーションにより温度依存ミクロ又はナノ硬度を測定することによって、Tgを求めることもできる。この方法は、ここに開示されるとおりのルミネッセントコンポーネント及び照明デバイスに適する。好適な分析装置はMHT(Anton Paar)、Hysitron TI Premier(Bruker)又はNano Indenter G200(Keysight Technologies)として入手可能である。温度制御ミクロ及びナノインデンテーションにより得られたデータをTgに変換することができる。典型的には、塑性変形仕事もしくはヤング率又は硬さは温度の関数として測定され、Tgはこれらのパラメータが著しく変化する温度である。ヤング率(Young’modulusもしくはYoung modulus)又は弾性率は、固体材料の剛性を評価する機械的特性である。ヤング率又は弾性率は、一軸変形の線形弾性領域における材料の応力(単位面積当たりの力)と歪(比例変形)との間の関係を規定する。
【0018】
用語「マトリックス」は、当該技術分野で知られており、本発明の文脈で、不連続相又は粒子相を取り囲む連続相を意味する。連続な材料は、従って、粒子相を封入している。
【0019】
用語「溶剤」は、当該技術分野で知られており、特に、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル(グリコール-エーテルを包含する)、エステル、アルコール、ケトン、アミン、アミド、スルホン、ホスフィン及びアルキルカーボネートを包含する。上記の有機化合物は、1又は2個以上の置換基、例えば、ハロゲン(例えばフルオロ、クロロ、ヨード又はブロモなど)、ヒドロキシ、C1-4アルコキシ(例えばメトキシ又はエトキシなど)及びアルキル(例えばメチル、エチル、イソプロピルなど)により置換されていても置換されていなくてもよい。上記の有機化合物は、直鎖状、分岐状及び環状の誘導体を包含する。分子内に不飽和結合が存在していてもよい。上記の化合物は、典型的には、4~24個の炭素原子、好ましくは8~22個の炭素原子、最も好ましくは12~20個の炭素原子を有する。
【0020】
用語「界面活性剤」、「配位子」、「分散剤(dispersant)」及び「分散助剤(dispersing agent)」は当該技術分野で知られており、本質的に同じ意味を有する。本発明の文脈において、これらの用語は、粒子の分離を改善するため、及び、凝集又は沈降を防止するために懸濁液又はコロイドにおいて使用される、溶剤以外の有機物質を意味する。理論に束縛されるわけではないが、界面活性剤は、粒子を溶剤に加える前又は加えた後で粒子の表面に物理的又は化学的に付着し、それによって、所望の効果を提供すると考えられる。用語「界面活性剤」は、ポリマー材料及び小さな分子を包含し、界面活性剤は典型的には極性官能性末端基及び無極性末端基を含む。本発明の文脈において、溶剤(例えばトルエン)は界面活性剤とはみなさない。
【0021】
用語「懸濁液」は知られており、固体である内相(i.p.)と液体である外相(e.p.)との不均質流体に関する。外相は、1又は2種以上の分散剤/界面活性剤、任意選択的に1又は2種以上の溶剤、及び、任意選択的に1又は2種以上のプレポリマーを含む。
【0022】
用語「溶液処理(solution-processing)」は、当該技術分野で知られており、溶液に基づく(=液体)出発物質の使用による、基材へのコーティング又は薄膜の適用を意味する。本発明の文脈において、溶液処理は、商品、例えば電子デバイス、光デバイス、及び(装飾)コーティングなどを含む物品の製造に関し、本明細書に記載したとおりの複合材料を含むコンポーネント/中間製品の製造にも関する。典型的には、懸濁液(1つ又は複数)の適用は、周囲条件で行われる。
【0023】
本発明の実施形態、態様及び利点を示す又は導く実施形態、例、実験を、それらについての以下の詳細な説明からより良く理解されるであろう。かかる記載は添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に従うルミネッセントコンポーネント(4)の概略図である。A:第1のルミネッセント結晶(11)のみ。B:第1のルミネッセント結晶(11)及び第2のルミネッセント結晶(12)。C:第1のルミネッセント結晶(11)及び第3のルミネッセント結晶(13)。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に従うフィルムの形態のルミネッセントコンポーネント(4)の概略図である。かかるコンポーネントはディスプレイデバイスに特に好適である。A:追加のバリヤーなし。B:透明な単一層バリヤー(基礎構造なし)。C:透明な多層バリヤー(基礎構造あり)。D:第1の要素が第2の要素により完全に覆われており、両側に追加のバリヤーがないシート状コンポーネント。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に従う離散要素の形態のルミネッセントコンポーネントの概略図である。A:照明デバイスに特に好適な、フラットな基材(3)を備えたコンポーネント。B:ピクセルに特に好適な、構造化基材(3)を備えたコンポーネント。
【
図4】
図4は、本発明の別の実施形態に従うマトリックス型の発光デバイスを示す。
【
図5】
図5は、本発明に従うコンポーネント(例4)を含む選択したルミネッセントコンポーネントの150時間の劣化後の相対フォトルミネッセンス量子収率(PLQY)変化を示す。
【
図6】
図6は、本発明に従うコンポーネント(例6)を含む選択したルミネッセントコンポーネントの150時間の劣化後の相対フォトルミネッセンス量子収率(PLQY)変化を示す。
【
図7】
図7は、本発明に従うコンポーネント(例10)を含む選択したルミネッセントコンポーネントの500時間の劣化後のΔy(CIE 1931色空間色度図の色座標yの変化)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の第1の態様に従うと、ルミネッセントコンポーネント4が提供される。このルミネッセントコンポーネントは、第1のポリマーP1中に埋め込まれたペロブスカイト結晶の部類からの第1ルミネッセント結晶11を含む第1の要素1と、第2の固体ポリマー組成物を含む第2の要素2とを含み、前記第2のポリマー組成物は、第2のポリマーP2中に埋め込まれた第2のルミネッセント結晶12を任意選択的に含んでいてもよい。本発明によると、P1とP2は異なる。
【0026】
一実施形態において、本発明は、第1の要素1及び第2の要素2を含むルミネッセントコンポーネント4を提供する。前記第1の要素1は第1の固体ポリマー組成物を含み、前記第1のポリマー組成物は第1のポリマーP1中に埋め込まれた第1のルミネッセント結晶11を含む。前記第1のルミネッセント結晶は、ペロブスカイト結晶構造を有するものであり、第1の波長よりも短い波長の光による励起に応じて第1の波長の光を放出する。前記第1のポリマーP1は、Tg<95℃(好ましくは<90℃、好ましくは<80℃、最も好ましくは<70℃)のポリマーからなる群から選択される。
【0027】
前記第2の要素2は、第2のポリマーP2中に埋め込まれた第2のルミネッセント結晶12を任意選択的に含んでいてもよい第2の固体ポリマー組成物を含む。前記任意選択の第2のルミネッセント結晶12は前記第1のルミネッセント結晶11と異なるものであり、第2の波長よりも短い波長の光による励起に応じて第2の波長の光を放出する。前記第2のポリマーP2は、Tg>115℃(好ましくは>120℃、好ましくは>130℃、好ましくは>140℃、最も好ましくは>150℃)の架橋ポリマーからなる群から選択される。第2の要素は、第1の要素を少なくとも部分的に覆い、それにより第1の要素を封止する。
【0028】
各Tgは、窒素(5.0)雰囲気(20ml/分)中、-90℃の開始温度及び250℃の終了温度でDIN EN 11357-2:2014-07に準拠してDSCにより求められる。パージングガスは、20ml/分で窒素(5.0)である。第2の加熱サイクルの間にTgが決定される。
【0029】
一実施形態において、本発明は、第1の要素1及び第2の要素2を含むルミネッセントコンポーネント4を提供する。前記第1の要素1は第1の固体ポリマー組成物を含み、前記第1のポリマー組成物は第1のポリマーP1中に埋め込まれた第1のルミネッセント結晶11を含む。前記第1のルミネッセント結晶は、ペロブスカイト結晶構造を有するものであり、第1の波長よりも短い波長の光による励起に応じて第1の波長の光を放出する。前記第1のポリマーP1は、Tg<95℃(好ましくは<90℃、好ましくは<80℃、最も好ましくは<70℃)のポリマーからなる群から選択される。
【0030】
前記第2の要素2は、第2のポリマーP2中に埋め込まれた第2のルミネッセント結晶12を任意選択的に含んでいてもよい第2の固体ポリマー組成物を含む。前記任意選択の第2のルミネッセント結晶12は、前記第1のルミネッセント結晶11と異なるものであり、第2の波長よりも短い波長の光による励起に応じて第2の波長の光を放出する。前記第2のポリマーP2は、WVTR<1(g・mm)(m2・day)(好ましくは<0.5、より好ましくは<0.2(g・mm)(m2・day)のポリマーからなる群から選択される。第2の要素は、第1の要素を少なくとも部分的に覆い、それにより第1の要素を封止する。
【0031】
この実施形態において、P2は架橋ポリマーではない。
【0032】
各Tgは、窒素(5.0)雰囲気(20ml/分)中、-90℃の開始温度及び250℃の終了温度でDIN EN 11357-2:2014-07に準拠してDSCにより求められる。パージングガスは、20ml/分で窒素(5.0)である。第2の加熱サイクルの間にTgが決定される。
【0033】
各WVTRは、40℃/90%r.h.の温度/相対湿度でISO 15106-3:2003により求められる。
【0034】
第1の要素が、ある波長の光を自発的に放出しないが励起に応じてある波長の光を放出すること、特に励起に応じて放出される光の波長よりも短い波長の光による励起に応じてある波長の光を放出することが好ましい。従って、好ましい実施形態において、第1の要素は、励起、例えば青色スペクトルの光による励起に応じて、第1の波長の光、例えば、緑色スペクトルの光を放出する。
【0035】
第2の要素はルミネッセント結晶を含んでいても含んでいなくてもよい。第2の要素がルミネッセント結晶を含む場合には、第2の要素は、ある波長の光を自発的に放出しないが励起に応じてある波長の光を放出すること、特に励起に応じて放出される光の波長よりも短い波長の光による励起に応じてある波長の光を放出することが好ましい。従って、好ましい実施形態において、第2の要素は、励起、例えば青色スペクトルの光による励起に応じて、第2の波長の光、例えば、赤色スペクトルの光を放出する。
【0036】
P1とP2が、接触したとき、少なくとも室温で固相で接触したときに、互いに溶解しないことが好ましい。その結果、第1及び第2の要素は、ルミネッセントコンポーネント4内で1又は2以上の相境界により別々の相のままであることができる。第1の要素及び第2の要素は、そのため、各自の表面を有する。各ポリマー材料を適切に選択することによって、第1のルミネッセント結晶は第1の要素中に閉じ込められ、第1の要素の外側の他のコンポーネント又は環境、例えば空気、水、さらには、ルミネッセント結晶と相互作用することはできない。
【0037】
かかるルミネッセントコンポーネントは、光照射(特に青色光照射)に対する良好な安定性と、温度及び湿度に対する良好な安定性とを同時に示すことが見出された。これは、先行技術と比べて著しい改善点であると考えられる。既知のルミネッセントコンポーネントは、光放射線に対する良好な安定性を示すが、温度及び湿度に対する安定性に欠く。また、温度及び湿度に対する良好な安定性を示すルミネッセントコンポーネントが知られているが、光放射線に対する安定性に欠く。安定性に関する両方の基準、すなわち、一方で光安定性、他方で温度/湿度安定性を満足することは、改良されたルミネッセントコンポーネント及び優れた品質を有する照明デバイスの製造を可能にする。理論に束縛されるわけではないが、第1の要素はソフトな機械的特性(P1の低いTg及び/又はE弾性率により規定される)を有する封止をもたらし、一方、第2の要素はハードな機械的特性(P2の高いTg及び/又はE弾性率により規定される)を有するシーリングポリマーを備えると考えられる。
【0038】
上記の点を鑑み、本発明は、ルミネッセントコンポーネント4中でのポリマーP2の使用に関し、ここで、ポリマーP2は、Tg>115℃(好ましくは>120℃、好ましくは>130℃、好ましくは>140℃、最も好ましくは>150℃)の架橋ポリマーからなる群から選択され、前記ルミネッセントコンポーネントは、Tg<95℃(好ましくは<90℃、好ましくは<80℃、最も好ましくは<70℃)のポリマーP1中に埋め込まれたペロブスカイト結晶構造のルミネッセント結晶11を含む。
【0039】
上記の点を鑑み、本発明は、ルミネッセントコンポーネント4中でのポリマーP2の使用に関し、ここで、ポリマーP2は、WVTR<1(g・mm)/(m2・day)(好ましくは<0.5、より好ましくは<0.2(g・mm)/(m2・day))のポリマーからなる群から選択され、前記ルミネッセントコンポーネントは、Tg<95℃(好ましくは<90℃、好ましくは<80℃、最も好ましくは<70℃)のポリマーP1中に埋め込まれたペロブスカイト結晶構造のルミネッセント結晶11を含む。この実施形態において、P2は好ましくは架橋ポリマーでない。
【0040】
ルミネッセントコンポーネント4が、特に液晶ディスプレイにおけるバックライトとして、青色光が照射されたことに応答して白色光を放出するためのルミネッセントコンポーネント4の使用も提供される。
【0041】
本発明のこの態様、特に、第1のポリマー、第2のポリマー、ルミネッセント結晶の化学組成、及びかかるルミネッセントコンポーネントの適切な構造を以下でさらに詳細に説明する。
【0042】
第1のポリマー:
第1の固体ポリマー組成物は、第1ポリマー(P1)中に埋め込まれた第1のルミネッセント結晶を含む。前記第1のポリマー(P1)は、本明細書に記載のとおりの多種多様なポリマーから選択することができる。これらとしては、アクリレートポリマー、カーボネートポリマー、ビニルポリマー、ウレタンポリマー、エステルポリマー、スチレンポリマー、オレフィンポリマー、シリコーンポリマー、環式オレフィンコポリマーが挙げられる。
【0043】
本発明の実施形態において、第1のポリマーP1は、50℃<Tg<95℃、好ましくは50℃<Tg<90℃、好ましくは50℃<Tg<80℃、最も好ましくは50℃<Tg<70℃のガラス転移温度を有する。そのため、P1は、特にP2と比較した場合に「軟質」ポリマーであると見なすことができる。
【0044】
本発明の実施形態において、第1のポリマー(P1)は、100μmの厚さで、>70%、好ましくは>80%、最も好ましくは>90%の透過率で可視光に対して透過性である。
【0045】
本発明の実施形態において、第1のポリマー(P1)はアモルファスである(結晶性でない;半結晶性でない)。
【0046】
本発明の実施形態において、第1のポリマー(P1)は架橋ポリマーである。架橋は、2つのポリマー鎖を結合するために共有結合又は比較的短いシーケンスの化学結合を形成するプロセスについての一般的な用語である。架橋ポリマーは、例えば酸化性溶媒中での酸化により共有結合を切断せずには溶媒中に溶解することはできない。しかしながら、架橋ポリマーは溶媒に曝された時に膨潤することがある。アクリレートの場合、架橋は、例えば、少なくとも0.5質量%の2官能性及び/又は多官能性アクリレートプレポリマーと単官能性アクリレートプレポリマーとの混合物を硬化させることにより達成することができる。
【0047】
本発明の実施形態において、第1のポリマー(P1)は、炭素に対する(酸素+窒素+硫黄+リン+フッ素+塩素+臭素+ヨウ素)の合計のモル比が<0.9、好ましくは<0.4、好ましくは<0.3、最も好ましくは<0.25である。
【0048】
本発明の実施形態において、第1のポリマー(P1)は、40℃/90%r.h.の温度/相対湿度で(g・mm)/(m2・day)で表される水蒸気透過度(WVTR)が、WVTR<1(g・mm)/(m2・day)、好ましくは<0.5(g・mm)/(m2・day)、最も好ましくは<0.2(g・mm)/(m2・day)である。本発明の実施形態において、第1のポリマー(P1)は、23℃/0%r.h.の温度/相対湿度で(cm3・mm)/(m2・day・atm)で表される酸素透過度(OTR)が、>1(cm3・mm)/(m2・day・atm)、好ましくは>5(cm3・mm)/(m2・day・atm)、好ましくは>25(cm3・mm)/(m2・day・atm)、最も好ましくは>125(cm3・mm)/(m2・day・atm)である。
【0049】
本発明の実施形態において、第1のポリマー(P1)は、アクリレートポリマー、好ましくは架橋アクリレートポリマーからなる群から選択され、第2のポリマー(P2)は、好ましくはアクリレートポリマー、好ましくは架橋アクリレートポリマーからなる群から選択される。架橋アクリレートは、例えば、単官能性アクリレート中で少なくとも0.5質量%の2官能性及び/又は多官能性プレポリマーを使用することによって得られる。
【0050】
本発明の1つの好ましい実施形態において、第1のポリマー(P1)はアクリレートである。有利には、第1のポリマーは単官能性アクリレート(III)と多官能性アクリレート(IV)の反復単位とを含有する(すなわち、含む、又は、からなる)。用語が暗示するように、単官能性アクリレートは1個のアクリレート官能基を含むのに対し、多官能性アクリレートは2、3、4、5又は6個のアクリレート官能基を含む。本開示で用いる場合には、用語「アクリレート」は(メタ)アクリレートも包含する。単官能性アクリレート反復単位(III)及び多官能性アクリレート反復単位(IV)の量は、広い範囲にわたって様々な値をとり得る。適切であるものは、例えば、10~90質量%、好ましくは50~80質量%の単官能性アクリレート反復単位を含む第1のポリマーである。適切であるものは、例えば、10~90質量%、好ましくは20~50質量%の多官能性アクリレート反復単位を含む第1のポリマーである。
【0051】
1つの好ましい実施形態において、反復単位は、式(III)の単官能性アクリレートを含む。
【0052】
【0053】
ここで、R9はH又はCH3を表し、
R10は環式、直鎖もしくは分岐C1-25アルキル、又はC6-26アリール基を表し、それぞれ、任意選択的に、1又は2個以上の環式、直鎖もしくは分岐C1-20アルキル、フェニル又はフェノキシにより置換されていてもよく、
nは0又は1を表し、
Xは1~8個の炭素原子及び1~4個の酸素原子を含むアルコキシレートから成る群から選択されるスペーサーを表す。
【0054】
用語「環式Cx-yアルキル基」は、x~y個の炭素原子を環員として含む縮合環系を包含する単環式基及び多環式基を包含するものとする。環式アルキル基は、1つの二重結合を有する基を含んでいてもよい。
【0055】
式(III)の化合物は、まとめてアクリレートとも呼ばれる、R9がHである場合の式(III-1)及び(III-2)のアクリレートと、R9がメチルである場合の式(III-3)及び(III-4)のアクリレートとを包含する。
【0056】
さらに、式(III)の化合物は、nが0であり、Xが存在しない場合の式(III-1)及び式(III-3)の単純なアクリレートも包含する。
【0057】
【0058】
ここで、R10は先に定義したとおりである。
【0059】
さらに、式(III)の化合物は、式(III-2)及び式(III-4)のアルコキシル化アクリレートも包含する。
【0060】
【0061】
ここで、R10は先に定義したとおりである。
【0062】
R10は、好ましくは、環式C5-25アルキル、非環式(直鎖又は分岐)C1-25アルキル、又はC6-26アリールを表し、これらはそれぞれ任意選択的に1又は2個以上の環式、直鎖又は分岐C1-20アルキル、フェニル又はフェノキシにより置換されていてもよく、
R10は、より好ましくは、飽和環式C5-25アルキル基を表し、ここで、環式アルキルは、任意選択的に1~6個の置換基により置換されていてもよい単環式及び多環式基を包含し、各置換基はC1-4アルキルから独立に選択される。
R10は、最も好ましくは、1~6個の置換基により置換された飽和多環式C6-25アルキル基を表し、各置換基はC1-4アルキルから独立に選択される。
R10は、さらに最も好ましくは、任意選択的に1~6個の置換基を含んでいてもよい飽和多環式C8-25アルキル基を表し、各置換基はC1-4アルキルから独立に選択される。
【0063】
R10の具体例としては、イソボルニル、ジシクロペンタニル、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレートが挙げられる。
【0064】
式(III-1)及び(III-3)のアクリレートの具体例としては、イソボルニルアクリレート(CAS 5888-33-5)、イソボルニルメタクリレート(CAS 7534-94-3)、ジシクロペンタニル-アクリレート(CAS 79637-74-4、FA-513AS(Hitachi Chemical、日本))、ジシクロペンタニル-メタクリレート(CAS 34759-34-7、FA-513M(Hitachi Chemical、日本))、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート(CAS 86178-38-3)、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルメタクリレート(CAS 7779-31-9)、4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート(CAS 84100-23-2)、4-tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート(CAS 46729-07-1)が挙げられる。
【0065】
式(III-2)及び(III-4)のアクリレートの具体例としては、ポリ(エチレングリコール)フェニルエーテルアクリレート(具体的には2-フェノキシエチルアクリレート)、O-フェニルフェノキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコールo-フェニルフェニルエーテルアクリレート(CAS 72009-86-0)、ポリ(エチレングリコール)エーテルエーテルメタクリレート、ジ(エチレングリコール)エーテルエーテルアクリレート、ポリ(エチレンオキシド)ノニルフェニルエーテルアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)4-ノニルフェニルエーテルアクリレート、エチレングリコールジシクロペンテニルエーテルアクリレート、エチレングリコールジシクロペンテニルエーテルメタクリレートが挙げられる。
【0066】
1つの好ましい実施形態において、多官能性単位は式(V)の2官能性アクリレートを含む。
【0067】
【0068】
ここで、R21は互いに独立にH又はCH3を表し;
R23は、環式、直鎖又は分岐C1-25アルキル、又はC6-26アリール基を表し、これらはそれぞれ任意選択的に1又は2個以上の環式、直鎖又は分岐C1-20アルキル、フェニル又はフェノキシにより置換されていてもよく;
X22は、互いに独立に、アルコキシレートからなる群から選択されたスペーサーを表し、両方の置換基X22の全体で8~40個の炭素原子及び2~20個の酸素原子が含まれる。
R23は、好ましくは、任意選択的に1又は2個以上の環式、直鎖又は分岐C1-20アルキル、フェニル又はフェノキシにより置換されていてもよいC6-26アリール基を表す。
R23は、特に好ましくは、任意選択的に1又は2個以上の環式、直鎖又は分岐C1-20アルキルにより置換されていてもよいC6-26アリール基を表す。アリール基としては、単環式及び多環式アリールが挙げられ、当該単環式及び多環式アリールは、任意選択的に1~4個の置換基により置換されていてもよく、前記置換基はC1-4アルキル、フェニル及びフェノキシからなる群から選択される。
R23は、特に好ましくは、フェニル、ベンジル、2-ナフチル、1-ナフチル、9-フルオレニルを表す。
R23は、最も好ましくは、ビスフェノールA又はフルオレン-9-ビスフェノールを表す。
X22は、好ましくは、エトキシレート及び/又はイソプロポキシレートからなる群から選択されたスペーサ基を表し、両方の置換基X22の全体で8~24個の炭素原子及び4~8個の酸素原子が含まれる。
X22は、最も好ましくは、エトキシレート及び/又はイソプロポキシレートからなる群から選択されたスペーサ基を表し、両方の置換基X22の全体で4~20個の炭素原子及び2~10個の酸素原子が含まれる。
【0069】
好ましいグループのジアクリレートは式(V-1)により表されるものである。
【0070】
【0071】
ここで、RはH又はCH3を表し、m+nは4~10である。
【0072】
2官能性アクリレートの具体例としては、1,10-デカンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ビスフェノールAエトキシレートジアクリレート(CAS 64401-02-1、例えばMiramer M240(Miwon Korea)、Miramer M2100(Miwon Korea)、Fancryl FA-324A(Hitachi Chemical、日本)、Fancryl FA-326A(Hitachi Chemical、日本)、Fancryl FA-328A(Hitachi Chemical、日本)、Fancryl FA-321A(Hitachi Chemical、日本)など)、ビスフェノールAエトキシレートジメタクリレート(例えばMiramer M241(Miwon Korea)、Miramer M2101(Miwon Korea)、Fancryl FA-324M(Hitachi Chemical、日本)、Fancryl FA-326M(Hitachi Chemical、日本)、Fancryl FA-328M(Hitachi Chemical、日本)、Fancryl FA-321M(Hitachi Chemical、日本)など)、変性フルオレン-9-ビスフェノールジアクリレート(CAS、変性フルオレン-9-ビスフェノールジメタクリレート)が挙げられる。
【0073】
3官能性アクリレートの具体例としては、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(CAS 28961-43-5)、イソプロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(CAS 53879-54-2)、イソプロポキシル化グリセリントリアクリレート(CAS 52408-84-1)が挙げられる。
【0074】
4官能性アクリレートの具体例としては、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート(CAS 94108-97-1)、エトキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート(CAS 51728-26-8)が挙げられる。
【0075】
5官能性アクリレートの具体例としては、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート(CAS 60506-81-2)が挙げられる。
6官能性アクリレートの具体例としては、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(CAS 29570-58-9)が挙げられる。
【0076】
第2のポリマー:
第2の固体ポリマー組成物は、第2のポリマー(P2)中に埋め込まれた第2のルミネッセント結晶を任意選択的に含んでいてもよい。前記第2のポリマー(P2)は、本明細書に記載のとおりの多種多様なポリマーから選択することができる。
【0077】
本発明の実施形態において、第2のポリマーP2は、Tg>115℃、好ましくは>120℃、好ましくは>130℃、好ましくは>140℃、最も好ましくは>150℃のガラス転移温度を有する。P2は、特にP1と比較した場合に「硬質」ポリマーであると見なすことができる。
【0078】
本発明の実施形態において、第2のポリマー(P2)は、100μmの厚さで、>70%、好ましくは>80%、最も好ましくは>90%の透過率で可視光に対して透過性である。用語「光透過率」は先に定義したとおりである。
【0079】
本発明の実施形態において、第2のポリマー(P2)はアモルファスである(結晶性でない;半結晶性でない)。
【0080】
本発明の実施形態において、第2のポリマー(P2)は架橋ポリマーである。用語「架橋」は先に定義したとおりである。
【0081】
本発明の実施形態において、第2のポリマー(P2)は、炭素に対する(酸素+窒素+硫黄+リン+フッ素+塩素+臭素+ヨウ素)の合計のモル比が<0.9、好ましくは<0.4、好ましくは<0.3、最も好ましくは<0.20である。
【0082】
本発明の実施形態において、第2のポリマー(P2)は、40℃/90%r.h.の温度/相対湿度で(g・mm)/(m2・day)で表される水蒸気透過度(WVTR)が、WVTR<1(g・mm)/(m2・day)、好ましくは<0.5(g・mm)/(m2・day)、最も好ましくは<0.2(g・mm)/(m2・day)である。
【0083】
本発明の実施形態において、第2のポリマー(P2)は、23℃/0%r.h.の温度/相対湿度で(cm3・mm)/(m2・day・atm)で表される酸素透過度(OTR)が、<50(cm3・mm)/(m2・day・atm)、好ましくは<10(cm3・mm)/(m2・day・atm)、好ましくは<5(cm3・mm)/(m2・day・atm)、最も好ましくは<1(cm3・mm)/(m2・day・atm)である。
【0084】
上述のように、本発明の文脈において第2のポリマーとして多種多様なポリマーが適する。好適な第2のポリマー(P2)としては、アクリレートポリマー、カーボネートポリマー、スルホンポリマー、フェニレンオキシドポリマー、エポキシポリマー、ビニルポリマー、ウレタンポリマー、エステルポリマー、スチレンポリマー、イミドポリマー、ノルボルネンポリマー及び環式オレフィンコポリマーが挙げられる。特に好適なポリマーP2としては、エポキシポリマー、ウレタンポリマー及びアクリレートポリマーや、ノルボルネンポリマー及び環式オレフィンコポリマー、又はそれらのコポリマー及びそれらの混合物(ブレンド)が挙げられる。
【0085】
本発明の1つの好ましい実施形態において、第2のポリマー(P2)はアクリレートである。一実施形態において、第2のポリマーは単官能性アクリレート(III)の反復単位を含む。有利には、第2のポリマーは、任意選択的に、単官能性アクリレート(III)の反復単位と多官能性アクリレート(VI)の反復単位とを含有してもよく、P2の多官能性アクリレートは2、3、4、5又は6個のアクリレート官能基を含んでもよい。
【0086】
単官能性単位は先に定義したとおりの式(III)で表される。P2の文脈において、式(III-1)及び(III-3)のアクリレートが好ましい。
【0087】
P2の文脈において、置換基R10は、好ましくはC5-25の環式アルキル基を表す。環式アルキル基としては、単環式基及び多環式基が挙げられ、C1-4アルキルの群からの1~6個の置換基を含む任意選択的に置換された基も挙げられる。
【0088】
P2の文脈において、置換基R10は、より好ましくは、C1-4アルキルの群からの1~6個の置換基を含む置換された基を含む、環式リング上に不飽和二重結合を有するC5-25の多環式アルキル基を表す。
【0089】
P2の文脈において、置換基R10は、より好ましくは、イソボルニル、ジシクロペンタニル(di-cp)、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシルを表す。
【0090】
P2の文脈において、R10は、特に好ましくは、ジシクロペンテニルを表す。
【0091】
P2の文脈において、アクリレート(III)の具体例としては、イソボルニルアクリレート(CAS 5888-33-5)、イソボルニルメタクリレート(CAS 7534-94-3)、ジシクロペンタニル-アクリレート(CAS 79637-74-4、FA-513AS(Hitachi Chemical、日本))、ジシクロペンタニル-メタクリレート(CAS 34759-34-7、FA-513M(Hitachi Chemical、日本))、ジシクロペンテニル-アクリレート(CAS 33791-58-1、FA-511AS(Hitachi Chemical、日本))、ジシクロペンテニル-メタクリレート(CAS 31621-69-9)、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート(CAS 86178-38-3)、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルメタクリレート(CAS 7779-31-9)、4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート(CAS 84100-23-2)、4-tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート(CAS 46729-07-1)が挙げられる。
【0092】
1つの好ましい実施形態において、多官能性単位は式(VI)の2官能性アクリレートを含む。
【0093】
【0094】
ここで、R31は互いに独立にH又はCH3を表し;
R33は、環式C5-25アルキル、又はC6-26アリール基を表し、これらはそれぞれ任意選択的に1又は2個以上の環式、直鎖又は分岐C1-20アルキル、フェニル又はフェノキシにより置換されていてもよく;
X32は、互いに独立であり、存在しない(R33は単結合により酸素に直接結合している)か、又はアルコキシレートからなる群からのスペーサーを表し、両方の置換基X22の全体で1~8個の炭素原子及び1~8個の酸素原子が含まれる。
R33は、好ましくは、R32はについて定義したとおりの基を表す。
R33は、特に好ましくは、ビスフェノールA又はフルオレン-9-ビスフェノールを表す。
X32は、好ましくは、単結合を表し、それによって、R33は隣接する酸素に直接結合する。
X22は、最も好ましくは、エトキシレート及び/又はイソプロポキシレートからなる群からのスペーサを表し、両方の置換基X22の全体で1~6個の炭素原子及び1~6個の酸素原子が含まれる。
【0095】
好ましいグループのジアクリレートは式(VI-1)により表されるものである。
【0096】
【0097】
ここで、RはH又はCH3を表し、m+nは0~3である。
【0098】
2官能性アクリレートの具体例としては、ビスフェノールAエトキシレートジアクリレート(CAS 24447-78-7、Fancryl FA-320A(Hitachi Chemical、日本)など)、ビスフェノールAエトキシレートジアクリレート(CAS 64401-02-1、Fancryl FA-320AP(Hitachi Chemical、日本)など)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(CAS 42594-17-2、Miramer M262(Miwon、韓国))、ビスフェノールAエトキシル化ジメタクリレート(CAS 24448-20-2、Fancryl FA-320M(Hitachi Chemical、日本)、ビスフェノールAエトキシル化ジメタクリレート(CAS 41637-38-1、Fancryl FA-320MP(Hitachi Chemical、日本))が挙げられる。
【0099】
1つの好ましい実施形態において、多官能性単位は3、4、5及び6官能性アクリレートを含む。これらの多官能性アクリレートは、架橋密度を増大させ、そして、第2のポリマーの所望のバリヤー特性を増進することができる。
【0100】
3官能性アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート(CAS 15625-89-5)、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(CAS 28961-43-5)、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(CAS 40220-08-4)が挙げられる。
【0101】
4官能性アクリレートの具体例としては、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート(CAS 94108-97-1)、ペンタエリトリトールテトラアクリレート(CAS 4986-89-4)、エトキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート(CAS 51728-26-8)が挙げられる。
【0102】
5官能性アクリレートの具体例としては、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート(CAS 60506-81-2)が挙げられる。
【0103】
6官能性アクリレートの具体例としては、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(CAS 29570-58-9)が挙げられる。
【0104】
第1のルミネッセント結晶:
好適な第1のルミネッセント結晶11はペロブスカイト構造を有するものである。有利には、第1のルミネッセント結晶は、
[M1A1]aM2
bXc (I)
(式中、
A1は、ホルムアミジニウム、アンモニウム、グアニジニウム、プロトン化チオウレア、イミダゾリウム、ピリジニウム及びピロリジニウムからなる群から選択された1又は2種以上の有機カチオンを表し、
M1は、1又は2種以上のアルカリ金属を表し、好ましくはCs、Rb、K、Na及びLiから選択された1又は2種以上のアルカリ金属を表し、
M2は、M1以外の1又は2種以上の金属、好ましくはGe、Sn、Pb、Sb及びBiからなる群から選択された1又は2種以上の金属を表し、
Xは、ハライド及び擬ハライド並びにスルフィドからなる群から選択された1又は2種以上のアニオン、好ましくはクロリド、ブロミド、ヨージド、シアニド、チオシア、イソチオシアナート及びスルフィド、特に好ましくはCl、Br及びIからなる群から選択された1又は2種以上のハライドを表し、
aは1~4、好ましくは1を表し、
bは1~2、好ましくは2を表し、
cは3~9、好ましくは3を表し、
M1又はA1のいずれか、あるいは、M1及びA1が存在する。)
の化合物から選択される。式(I)のかかる化合物は公知であり、国際公開第2018/028869号に記載されている。国際公開第2018/028869号の内容を、参照により援用する。
【0105】
一実施形態において、有機カチオンA1は式(I)の化合物中に存在し、一方、金属カチオンM1は存在しない(A1≠0;M1=0;「有機カチオンペロブスカイト」、又は単に「有機ペロブスカイト」)。一実施形態において、有機カチオンA1は式(I)の化合物中に存在せず、一方、金属カチオンM1が存在する(A1=0;M1≠0;「無機カチオンペロブスカイト」、又は単に「無機ペロブスカイト」)。一実施形態において、有機カチオンA1及び金属カチオンM1が存在する(A1≠0;M1≠0;「ハイブリッドカチオンペロブスカイト」、又は単に「ハイブリッドペロブスカイト」)。
【0106】
式(I)の化合物としては、化学量論的化合物及び非化学量論的化合物が挙げられる。a、b及びcが自然数(すなわち正の整数)を表す場合に式(I)の化合物は化学量論的であり、a、b及びcが自然数を除く有理数を表す場合に式(I)の化合物は非化学量論的である。
【0107】
好適な有機カチオンA1は、ホルムアミジニウム(IV-1)、アンモニウムカチオン(IV-2)、グアニジニウムカチオン(IV-3)、プロトン化チオウレアカチオン(IV-4)、イミダゾリウムカチオン(IV-5)、ピリジニウムカチオン(IV-6)及びピロリジニウムカチオン(IV-7)からなる群から選択できる。
【0108】
【0109】
ここで、置換基Rは、互いに独立に、水素、あるいは、C1-4アルキル、もしくはフェニル、又はベンジルを表し、Rが炭素に結合している場合には、置換基Rは、さらに、互いに独立に、ハライド又は擬ハライドを表す。
【0110】
(IV-1)の場合、R2は好ましくは水素を表し、R1は好ましくはメチル、もしくは水素、又はハライドもしくは擬ハライドを表す。好ましいカチオンは、アセトアミジニウム及びホルムアミジニウム(FA)からなる群から選択される。FAが好ましいカチオンである。
【0111】
(IV-2)の場合、Rは好ましくは水素及びメチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、フェニル、ベンジルを表す。好ましいカチオンは、ベンジルアンモニウム、iso-ブチルアンモニウム、n-ブチルアンモニウム、t-ブチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、メチルアンモニウム(MA)、フェネチルアンモニウム、iso-プロピルアンモニウム、及びn-プロピルアンモニウムからなる群から選択される。MAが好ましいカチオンである。
【0112】
(IV-3)の場合、R2は好ましくは水素を表し、その場合、母体の化合物はグアニジニウムカチオンとなる。
(IV-4)の場合、R2は好ましくは水素を表し、その場合、母体の化合物はプロトン化チオウレアカチオンとなる。
(IV-5)の場合、R2は好ましくはメチル又は水素を表す。イミダゾリウムが好ましいカチオンである。
【0113】
(IV-6)の場合、R2は好ましくはメチル又は水素を表す。ピリジニウムが好ましいカチオンである。
(IV-7)の場合、R2は好ましくはメチル又は水素を表す。ピロリジニウムが好ましいカチオンである。
【0114】
一実施形態において、本発明は、A1=FAである場合の式(I)のLCに関する。
【0115】
一実施形態において、本発明は、M1=Csである場合の式(I)のLCに関する。
一実施形態において、本発明は、M2=Pbである場合の式(I)のLCに関する。
【0116】
一実施形態において、本発明は、XがCl、Br、Iのリストから選択される少なくとも2種の元素の組み合わせである場合の式(I)のLCに関する。一実施形態において、本発明は、XがCl、Br及びIのリストから選択される1種の元素を表す場合の式(I)のLC/QDに関する。
【0117】
一実施形態において、本発明は、FA1Pb1X3、特にFAPbBr3、FAPbBr2Iから選択される、式(I)のLCに関する。
【0118】
さらなる一実施形態において、本発明は、さらにドーパントを含む式(I)のLC、すなわち、M1の一部が他のアルカリ金属で置き換えられた場合、もしくはM2の一部が他の遷移金属又は希土類元素で置き換えられた場合、もしくはXの一部が他のハロゲナイドで置き換えられた場合、又はA1の一部が本開示において定義したとおりの他のカチオンで置き換えられた場合の式(I)のLCに関する。ドーパント(すなわち置換イオン)は、一般的に、置き換え対象のイオンに関して1%未満の量で存在する。
【0119】
第2のルミネッセント結晶:
上で概説したように、さらなる部類のLC、第2のルミネッセント結晶12が存在しても存在していなくてもよい。第2のルミネッセント結晶12は、もし存在する場合、第2のポリマーP2中に埋め込まれる。かかる第2のLCは、当業者に知られている多種多様な公知のLCから選択することができる。好適な第2のLC(12)は、コア-シェルQD及びミクロンサイズの蛍光体(phosphors)のうちの1又は2種以上から選択することができる。特に好適なものはコア-シェルQD、例えばCdSe又はInP系QDなどであり、最も好ましくはInP系QDである。特に好適なミクロンサイズの蛍光体はKSF(K2SiF6:Mn4+)から選択される。
【0120】
有利には、第2のルミネッセント結晶12はペロブスカイト構造を有するものでない。そのため、第2のルミネッセント結晶12は、本開示で記載したとおりの式(I)の化合物を除く。
【0121】
第3のルミネッセント結晶:
上で概説したように、さらなる部類のLC、第3のルミネッセント結晶13が存在しても存在していなくてもよい。第3のルミネッセント結晶13は、もし存在する場合、第1のポリマーP1中に埋め込まれる。かかる第3のLCは、当業者に知られている多種多様な公知のLCから選択することができる。好適な第3のLC(12)は、コア-シェルQD及びミクロンサイズの蛍光体(phosphors)及びペロブスカイトのうちの1又は2種以上から選択することができる。特に好適なものはコア-シェルQD、例えばCdSe又はInP系QDなどであり、最も好ましくはInP系QDである。特に好適なミクロンサイズの蛍光体はKSF(K2SiF6:Mn4+)から選択される。
【0122】
第3のルミネッセント結晶は、ペロブスカイト構造を有するものであることができる。そのため、第3のルミネッセント結晶13としては、本開示で記載したとおりの式(I)の化合物が挙げられるが、第1のルミネッセント結晶と異なっていてもよく、従って、異なるルミネッセンス波長を有する。これは、第1のルミネッセント結晶と比べて、第3のルミネッセント結晶について、異なる化学組成及び異なるサイズを選択することによって達成される。
【0123】
一実施形態において、ルミネッセントコンポーネントは、全体で、2~30、好ましくは2~5個の異なるルミネッセント結晶11(もし存在する場合には12、13)を含み、調節可能な発光スペクトルのルミネッセントコンポーネントをもたらす。
【0124】
ルミネッセント結晶11(もし存在する場合には12、13)の濃度は、広範囲にわたる様々な値をとりうる。第1のLCのみを含み、第2のLCも第3のLCも含まないルミネッセントコンポーネントの場合、単一の第1のLCがルミネッセントコンポーネント中に提供されるだけでなく、その発光度(luminosity)を高めるために、複数の第1のLCが提供される。第1のLC及び第2のLCのみを含み、第3のLCを含まないルミネッセントコンポーネントの場合、その発光度を高めるために、複数の第1のLC及び複数の第2のLCがルミネッセントコンポーネント中に提供される。第1、第2及び第3のLCを含むルミネッセントコンポーネントの場合、その発光度を高めるために、複数の第1のLC、複数の第2のLC、及び各種の複数のさらなるLCがルミネッセントコンポーネント中に提供される。好ましくは、P1に対する第1のルミネッセント結晶の濃度は0.01質量%~10.0質量%、好ましくは0.02質量%~7.6質量%、最も好ましくは0.05質量%~1.0質量%である。
【0125】
さらなる材料:
第1の要素はさらなる材料を含んでもよい。かかるさらなる材料としては、溶剤、可塑剤、安定化剤(例えば界面活性剤、配位子、分散剤)、粘度調整剤、触媒(例えば重合開始剤)、反応しなかったモノマー、反可塑剤が挙げられる。かかるさらなる材料は当業者に知られている。それらのタイプ及び量の選択は当業者にとって定型的な作業である。
【0126】
一実施形態において、第1の要素1は、第1のポリマーP1と、溶剤、特に沸点(bp)>100℃の無極性溶剤とを含む。好ましくは、無極性溶剤は、4~24個の炭素原子、好ましくは8~22個の炭素原子、最も好ましくは12~20個の炭素原子を有する脂肪族溶剤である。溶剤は、<20質量%、好ましくは<10質量%、最も好ましくは<5質量%の量で存在することができる。
【0127】
さらなる実施形態において、ポリマーP1は、Tgを低下させるために可塑剤化合物をさらに含む。かかる可塑剤化合物は反応性(重合性)又は非反応性(重合性でない)であることができる。反応性可塑剤としては、例えばラウリルアクリレート、ステアリルアクリレートなどのアクリル酸エステル挙げられる。非反応性可塑剤としては、例えばビス(2-エチルヘキシル)フタレートなどのエステルが挙げられる。
【0128】
さらなる実施形態において、ポリマーP1は反可塑剤化合物をさらに含む。反可塑剤はある濃度でヤング率を増加させるとともにガラス転移温度を低下させる任意の小さな分子又はオリゴマー添加剤である。
【0129】
一実施形態において、第2の要素は第2のポリマーP2からなる。
【0130】
1つの代替的に実施形態において、第2の要素2はさらなる材料を含む。かかるさらなる材料としては、溶剤、安定化剤(例えば界面活性剤、配位子、分散剤)、粘度調整剤、触媒(例えば重合開始剤)、反応しなかったモノマー、散乱粒子が挙げられる。かかるさらなる材料は当業者に知られており、上の第1の要素1の文脈においても述べた。それらのタイプ及び量の選択は当業者にとって定型的な作業である。
【0131】
一実施形態において、第2の要素2は、第2のポリマーP2を含むが溶剤を含まない
【0132】
一実施形態において、第2の要素2は、第2のポリマーP2と、有機散乱粒子及び無機散乱粒子からなる群から選択された散乱粒子とを含む。散乱粒子用の材料は、シリコーン(例えばオルガノポリシロキサン)、チタニア、ジルコニア、アルミナ、シリカを含む。
【0133】
一実施形態において、第1及び第2のポリマー組成物は、硬化(hardened/cured)したポリマーと各タイプのルミネッセント結晶とに加えて、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤及び両イオン性界面活性剤からなる群から選択された、好ましくは両イオン性界面活性剤からなる群から選択された1種又は2種以上の界面活性剤を含む。
【0134】
意図される用途を考慮して、硬化したポリマーP1及びP2を含む第1及び第2のポリマー組成物は、好ましくは、すなわちルミネッセント結晶により光が放出されることが可能であり、また、ルミネッセント結晶を励起させるために使用される光源の可能な光が透過するように光透過性である、すなわち、不透明でない。
【0135】
さらなる要素:
ルミネッセントコンポーネントは、第1及び第2の要素に加えて、例えば保護層、基材などのさらなる要素を含む。
【0136】
保護層:
保護層の1つのオプションはバリヤー層である。ルミネッセントコンポーネント4は、任意選択的に1又は2層以上のバリヤー層5を含んでもよい。かかるバリヤー層はルミネッセントコンポーネントの、バリヤー層がなければ露出する表面の上に配置される。好ましい一実施形態において、四角形のシート状ルミネッセントコンポーネントの場合には、バリヤーフィルムがルミネッセントコンポーネントの両面に取り付けられる。
【0137】
かかる保護層(例えばバリヤーフィルム)は当該技術分野で知られており、典型的には、低い水蒸気透過度(WVTR)及び/又は低い酸素透過度(OTR)を有する1種の材料/複数の材料の組み合わせを含む。かかる材料を選択することによって、水蒸気及び/又は酸素に曝されることに応じたコンポーネント中のLCの劣化が抑えられるか又は回避される。バリヤー層又はフィルムは、好ましくは、40℃の温度/90%r.h.及び大気圧で<10(g)/(m2・day)、より好ましくは1(g)/(m2・day)未満、最も好ましくは0.1(g)/(m2・day)未満のWVTRを有する。
一実施形態において、バリヤーフィルムは酸素に対して透過性であることができる。別の一実施形態において、バリヤーフィルムは、酸素に対して不透過性であり、23℃の温度/90%r.h.及び大気圧で<10(mL)/(m2・day)、より好ましくは<1(mL)/(m2・day)、最も好ましくは<0.1(mL)/(m2・day)の酸素透過度(OTR)を有する。
一実施形態において、バリヤーフィルムは光に対して透過性である、すなわち、可視光透過率>80%、好ましくは>85%、最も好ましくは>90%である。
【0138】
好適なバリヤーフィルムは単一層の形態で存在することができる。かかるバリヤーフィルムは当該技術分野で知られており、ガラス、セラミック、金属酸化物及びポリマーを含む。好適なポリマーは、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、環式オレフィンコポリマー(COC)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、高密度ポリエチレン(HDPE)及びポリプロピレン(PP)からなる群から選択することができ、好適な無機材料は金属酸化物、SiOx、SixNy、AlOxからなる群から選択することができる。最も好ましくは、ポリマー湿気バリヤー材料はPVdC及びCOCからなる群から選択された材料を含む。
【0139】
最も好ましくは、ポリマー酸素バリヤー材料はEVOHポリマーからなる群から選択された材料を含む。
【0140】
好適なバリヤーフィルムは多層の形態で存在することができる。かかるバリヤーフィルムは当該技術分野で知られており、一般的に、基材、例えば10~200μmの範囲内の厚さを有するPETなどと、SiOx及びAlOxからなる群からの材料を含む薄い無機層又はポリマーマトリックス中に埋め込まれた液晶に基づく有機層もしくは所望のバリヤー特性を有するポリマーを含む有機層とを含む。かかる有機層用の可能なポリマーは例えばPVdC、COC、EVOHを含む。
【0141】
基材:
ルミネッセントコンポーネント4は任意選択的に基材3を含んでもよい。かかる基材は当該技術分野で知られており、かかる基材としては、フィルム及びマトリックス(以下で概説)に特に適する平坦な基材(
図2、
図3A)、及びピクセル(以下で概説)に特に適する構造化基材(
図3B)が挙げられる。
【0142】
構造:
ルミネッセントコンポーネントは、フィルム(
図2参照)、ピクセル(
図3参照)、及びマトリックス(
図4参照)などの様々な構造で存在することができる。有利な効果、特に温度及び湿度に対する安定性を達成するために、第2の要素は前記第1の要素を少なくとも部分的に覆い、それにより前記第1の要素を封止する。この方策によって、環境への第1の要素の直接の接触が抑えられ又は回避される。コンポーネント及びデバイスの構造に応じて、第1の要素の選択された表面が第2の要素により覆われる。例えば、1つの表面(例えばピクセル状構造体の上面)が覆われる。あるいは、2つの表面(例えばフィルム状構造の両面)が覆われる。そのため、表現「少なくとも部分的に覆う」は、第1の要素の表面の少なくとも50%で最高100%までを指す。有利には、第2の要素は第1の要素に直接接触していて封止効果を達成する。
【0143】
一実施形態において、ルミネッセントコンポーネントは、第2の要素が第1の要素(又は、もし1つより多くの要素が存在する場合には複数の第1の要素)の全表面の>50%、好ましくは>70%、好ましくは>90%、最も好ましくは>99%を覆うように構成される。
図2Aに基づいてこの状況をさらに例示するために、厚さ100μmの1つの層としての第1の要素(1)がその表面で2つの第2の要素(2)の間に挟まれてなる10cm×10cmのフィルムの形態にあるルミネッセントコンポーネント(4)を仮定すると、かかる第2の要素は第1の要素の99.8%を覆い、0.2%が覆われない(端部)。
【0144】
一実施形態において、ルミネッセントコンポーネントはフィルムの形態、すなわちルミネッセントコンポーネントの厚さを超える長さ及び幅、好ましくは厚さの少なくとも10倍の長さ及び幅を有するフィルムの形態を有することができる。このフィルム又は層の厚さは広範囲にわたる様々な値をとりうるが、典型的には1~500ミクロンである。一実施形態において、本開示で記載したとおりのルミネッセントコンポーネントはフィルムの形態にあり、前記フィルムは以下の層構造を含む:
・第1の要素の層-第2の要素の層(すなわち、P1は片面でP2により覆われる);もしくは
・第2の要素の層-第1の要素の層-第2の要素の層(すなわち、P1は両面でP2により覆われる);又は
・バリヤー層(5)-第2の要素の層-第1の要素の層-第2の要素の層-バリヤー層(5)(すなわち、P1は両面でP2により覆われ、さらに両面でバリヤー層により保護される)。
・バリヤー層(5)-第2の要素中に埋め込まれた第1の要素の層-バリヤー層(5)(すなわち、P1はP2により完全に覆われ、さらに両面でバリヤー層により保護される)。
【0145】
フィルム状コンポーネントの一実施形態において、第1の要素は、フィルムの端部で第2の要素により覆われない(第1の要素は空気に曝される)。
【0146】
かかるフィルムは、LCDディスプレイにおけるQDバックライトフィルム又はダウンコンバージョンフィルムとして特に有用である。
【0147】
一実施形態において、フィルム状コンポーネントの第2の要素の厚さは>1μm、好ましくは>10μm、好ましくは>30μm、好ましくは>50μm、最も好ましくは>100μmである。
【0148】
一実施形態において、フィルム状コンポーネントの第2の要素は散乱粒子を0.1~30質量%含む。
【0149】
一実施形態において、ルミネッセントコンポーネントはピクセルの形態を有することができ、特に、
・1つ又は2つ以上の第1の要素(1)が基材(3)上に配置され、前記第2の要素(2)を含む1つの層により覆われる;又は
・前記第1の要素(1)を含む1つの層が基材(3)上に配置され、前記第2の要素(2)を含む1つの層によりコートされる。
【0150】
一実施形態において、ルミネッセントコンポーネントは、複数の第1の要素(1)がマトリックス中に分散され、第2の要素(2)により完全に覆われた、マトリックスの形態を有することができる。第1の要素の平均直径が1μm~500μm、好ましくは5μm~100μmであることが好ましい。好ましくは、第2の要素は第1の要素を完全に包み込む。
【0151】
本発明のコンポーネント4は良好な安定性を示す。本コンポーネント4の実施形態は、例えば90℃/周囲湿度(すなわち、<5%r.h.)で改善された熱安定性を示し、例えば280mW/cm2(波長460nm)で改善された青色光照射安定性を示した。本コンポーネント4の実施形態は、例えば60℃/90%r.h.で湿気に対する改善された安定性を示し、例えば280mW/cm2(波長460nm)で改善された青色光照射安定性を示した。
【0152】
本コンポーネント4の実施形態は、好ましくは青色光により励起された場合に、>60%、好ましくは>80%、最も好ましくは>90%の量子収率を示した。さらに、材料の選択、結晶サイズ、及び第1のLCの徹底的な被覆によって、鋭い分布を放出光で達成することができ、その結果、もたらされる放出光のクオリティは優れる。好ましくは、上記要素のそれぞれの固体ポリマー組成物の可視放射についてのFWHM(半値幅)は<50nm、好ましくは<40nm、最も好ましくは<30nmである。例えば、525nmにおける発光ピークについて23nmのFWHMを観測でき、同時に、コンポーネントについて例えば86%の高いルミネッセンス量子収率が測定される(実施例4)。
【0153】
本本コンポーネント4の実施形態は、欧州連合によるRoHS(「有害物質の制限」)指令に適合する。本特許出願の出願時では、適用可能な指令2011/65/EUは概して以下の元素の使用を制限した:鉛(Pb)<1000質量ppm、水銀(Hg)<1000ppm、カドミウム(Cd)<100ppm、六価クロム(Cr6+)<1000ppm、ポリ臭化ビフェニル(PBB)<1000ppm、ポリ臭化ジフェニルエーテル<1000ppm。一方、これは、優れた量子収率/性能をなお提供するCdフリー材料を選択することにより達成される。RoHS指令バージョン2(2011/65/EU)によるPbについての制限は1000ppm未満であり、これはコンポーネント自体の全体で達成される。好ましくは、本実施形態の第1の要素及び第2の要素の総計での全Pb濃度は1000ppm未満、より好ましくは30ppm以上1000ppm未満、最も好ましくは100ppm以上900ppm未満である。別の好ましい実施形態において、本実施形態の第1の要素についての全Pb濃度は1000ppm未満、より好ましくは30ppm以上1000ppm未満、最も好ましくは100ppm以上900ppm未満である。適切な濃度の第1ルミネッセント結晶と、ことによると第2又は第3のルミネッセント結晶とについて、それぞれ適切な濃度を選択することによって、好ましくは、コンポーネント中の元素について適切な濃度を選択することによって、RoHSコンプライアンスを達成することができる。対象の濃度はMS又はXRF測定により測定することができる。
【0154】
要約すると、高い量子収率、RoHSコンプライアンス、発光スペクトルにおける安定なピーク位置及び狭いFWHM、並びに、温度及び湿度と青色光照射に対する高い安定性などの有利な特性が観測されたことは、先行技術に対する本発明の主要な成果を表す。
【0155】
光学的特性をさらに特定することに関して、ルミネッセントコンポーネントは10~95%、好ましくは80~95%の曇り度を有することが好ましい。曇りは、RI>2.0で100~1000nmのサイズの散乱粒子によって、もしくはミクロ構造もしくはミクロ結晶ポリマー構造によって、もしくはミクロサイズの第2のルミネッセント結晶によって、又は要素自体によって導入することができる。
【0156】
本発明の第2の態様によると、発光デバイスが提供される。ルミネッセントコンポーネントは、好ましくは。他のコンポーネントとともに発光デバイス、例えばディスプレイ又は照明デバイスに組み立てられる半製品である。そのため、発光デバイスは上記実施形態のいずれかに従うルミネッセントコンポーネントと、青色光を放出するための光源とを含む。光源はルミネッセントコンポーネントを励起するために配置される。そのため、光源はルミネッセントコンポーネントと光学的に連通している。青色光は、400~490nmの範囲内の波長を有すると考えられている。そのため、デバイスは、ルミネッセントコンポーネントのルミネッセント結晶により決まる波長の光を放出するように構成される。
【0157】
本発明の実施形態において、本開示に記載の発光デバイスは、ディスプレイ、特に液晶ディスプレイ、OLEDディスプレイ、QLEDディスプレイ(エレクトロルミネッセント)、ミクロLEDディスプレイ;及び照明デバイス、特に、LED、OLED、QLEDからなる群から選択される。従って、LCD、OLED、LED又はミクロLEDの一部として、コンポーネントはかかるディスプレイ(例えばモバイル又は定置式コンピュータ、通信又はテレビデバイスのディスプレイ)又はかかる照明デバイスに寄与することができる。
【0158】
本発明のさらに別の実施形態において、光源はOLEDスタックである。この場合、ルミネッセントコンポーネントは、好ましくは、OLEDスタック全体又はその少なくとも部分を覆うように配置される。
【0159】
本発明の別の態様によると、上記実施形態のうちのいずれかのルミネッセントコンポーネントは、ルミネッセントコンポーネントが青色光に曝されたことに応じて白色光を放出するために、特に液晶ディスプレイにおいてバックライトとして使用される。この目的のため、ルミネッセントコンポーネントにおけるルミネッセント反応を励起するために青色光光源がデバイスに設けられてもよい。ルミネッセントコンポーネントが、緑色光を放出する第1の要素と赤色光を放出する第2の要素を含む場合、光源の青色光放出と相まって、それぞれ第1及び第2の要素におけるルミネッセント結晶の励起に応じた赤色及び緑色光の放出と、第1及び第2の要素を励起するためにも使用された光源に由来する青色光の透過との組み合わせとして、ルミネッセントコンポーネントは白色光を放出する。放出された赤色、緑色及び青色光の強度割合は好ましくはそれぞれ1/3の範囲内である。
【0160】
本発明の第3の態様によると、ルミネッセントコンポーネント及び発光デバイスの製造方法が提供される。かかる製造はフィルム又はピクセルの公知の作製方法に準じる。例えばコーティング法及び印刷技術が好適である。本発明のルミネッセントコンポーネント及び照明デバイスを作製するために公知の製造設備を使用できることが有利であると考えられる。大別すると、製造は、(i)第1の要素を用意し、硬化させた後、第1の要素を第2の要素とともにコーティング/印刷及び硬化させるか、又は(ii)第2の要素を用意し、硬化させた後、第2の要素を第1の要素とともにコーティング/印刷及び硬化させることを含む。
【0161】
一実施形態(方法A)において、ルミネッセントコンポーネント4の製造方法は、
・1又は2つ以上の層で任意選択的にコートされていてもよい基材を用意する工程;
・前記基材に、第1のポリマーP1のモノマー又はオリゴマーと、第1のルミネッセント結晶11と、任意選択的に溶剤と、任意選択的にさらなる材料と、任意選択的に第3のルミネッセント結晶13とを含む第1の液体ポリマー組成物を適用する工程;
・任意選択的に、前記液体の第1のポリマー組成物を高温で加熱して揮発性溶剤を除去する工程;
・前記第1の液体ポリマー組成物を硬化させて第1の要素を得る工程;
・前記第1の要素のこうして得られた硬化した表面に、第2のポリマーP2のモノマー又はオリゴマーと、任意選択的に第2のルミネッセント結晶12と、任意選択的に溶剤と、任意選択的にさらなる材料とを含む第2の液体ポリマー組成物を適用する工程;
・任選択的に、前記液体の第2のポリマー組成物を高温で加熱して揮発性溶剤を除去する工程;
・前記液体の第2のポリマー組成物を硬化させて、前記第1の要素を覆い、それにより前記第1の要素を封止する第2の要素を得る工程;
・任意選択的に、さらなるコーティング又は仕上げ工程を適用する工程;
を含む。
【0162】
この実施形態によると、第1の要素が最初に製造され、その後、第2の要素の製造が行われ、ルミネッセントコンポーネントが得られる。
【0163】
一実施形態(方法B)において、ルミネッセントコンポーネント4の製造方法は、
・1又は2つ以上の層で任意選択的にコートされていてもよい基材を用意する工程;
・前記基材に、先に定義したとおりの第2の液体ポリマー組成物を適用する工程;
・任意選択的に、前記液体の第2のポリマー組成物を高温で加熱して揮発性溶剤を除去する工程;
・前記第2のポリマー組成物を硬化させて第2の要素を得る工程;
・前記第2の要素のこうして得られた硬化した表面に、先に定義したとおりの第1の液体ポリマー組成物を適用する工程;
・任選択的に、前記液体の第1のポリマー組成物を高温で加熱して揮発性溶剤を除去する工程;
・前記液体の第1のポリマー組成物を硬化させて、その下面で前記第2の要素により覆われ、それにより封止された第1の要素を得る工程;
・任意選択的に、さらなるコーティング又は仕上げ工程を適用する工程;
を含む。
【0164】
この実施形態によると、第2の要素が最初に製造され、その後、第1の要素の製造が行われ、ルミネッセントコンポーネントが得られる。
【0165】
一実施形態(方法C)において、ルミネッセントコンポーネント4の製造方法は、
・それぞれ第2の要素の1つの層でコートされた2つの基材を用意する工程;
・これらのコートされた基材により第1の要素の1つの層をラミネートする工程;
を含む。
【0166】
この実施形態によると、第1の要素は2つの第2の要素の間に挟まれる。
【0167】
一実施形態(方法D)において、ルミネッセントコンポーネント4の製造方法は、
・先に定義したとおりの第1の液体ポリマー組成物を、
a)噴霧乾燥又は沈殿のうちの一方により第1の液体ポリマー組成物から複数の第1の要素(1)を得ること、又は
b)第1の液体ポリマー組成物を硬化させて第1の固体ポリマー組成物とし、第1の固体ポリマー組成物を粉砕して複数の第1の要素(1)を得ること、
のうちの一方により用意する工程;
・こうして得られた第1の要素(1)を先に定義したとおりの第2の液体ポリマー組成物中に混合する工程;
・1又は2つ以上の層で任意選択的にコートされていてもよい基材を用意する工程;
・前記基材に、第1の要素(1)を含む前記第2の液体ポリマー組成物を適用する工程;
・任選択的に、前記液体の第2のポリマー組成物を高温で加熱して揮発性溶剤を除去する工程;
・前記液体の第2のポリマー組成物を硬化させて、前記第1の要素を覆い、それにより前記第1の要素を封止する第2の要素を得る工程;
・任意選択的に、さらなるコーティング又は仕上げ工程を適用する工程;
を含む。
【0168】
この実施形態によると、
図4に示したようなコンポーネント4が得られる。
【0169】
例えば適用(例えばコーティング、印刷)、重合(例えば放射線重合、熱重合、触媒重合)、仕上げ(例えばさらなる層でコーティング)などの個々の工程はそれら自体知られているが、本開示で使用される特定の出発材料にはまだ適用されていない。
【0170】
上記の第1の液体ポリマー組成物(第1のポリマーP1のモノマー又はオリゴマーと、第1のルミネッセント結晶11と、任意選択的に溶剤と、任意選択的にさらなる材料と、任意選択的に第3のルミネッセント結晶13とを含む)は、ルミネッセント結晶を含む予備濃縮物(pre-concentrate)を、第1のポリマーP1のモノマー又はオリゴマーを含む組成物と組み合わせることにより調製することができる。かかる予備濃縮物は、好ましくは、界面活性剤、分散剤、配位子の部類から選択されたさらなる材料を含む。かかる予備濃縮物も本発明の対象である。
【実施例0171】
本発明をさらに説明するために、以下の例を提供する。これらの例は本発明の範囲を限定するという意図なしに提供される。特に記載がない場合、化学物質の全てはAldrichから購入した。
【0172】
例1~4:本発明に従うルミネッセントコンポーネントの合成(P2中の完全に覆われたP1、
図2D参照。例1、2及び3は比較のため、例4は本発明に従う。)
【0173】
インク形成:
PbBr2及びFABrをミリングすることによりホルムアミジニウム鉛トリブロミド(FAPbBr3)を合成した。すなわち、16mmolのPbBr2(5.87g,98%,ABCR,Karlsruhe(ドイツ))及び16mmolのFABr(2.00g,Greatcell Solar Materials,Queanbeyan(オーストラリア))をイットリウム安定化ジルコニアビーズ(直径5mm)と6時間ミリングして純粋な立方晶FAPbBr3を得た(XRDにより確認)。オレンジ色のFAPbBr3粉末をオレイルアミン(80-90,Acros Organics,Geel(ベルギー))(FAPbBr3:オレイルアミン質量比=100:15)及びトルエン(>99.5%,puriss,Sigma Aldrich)に加えた。FAPbBr3の最終濃度は1質量%であった。次に、周囲条件(特に定義しない場合、周囲条件は全ての実験について35℃、1atm、空気中である)で直径200μmのイットリウム安定化ジルコニアビーズを使用して混合物をボールミリングにより1時間分散させ、緑色のインクを得た。
【0174】
フィルム形成:
第1のフィルム(P1-ガラス)の場合、スピードミキサーで0.1gの上記緑色インクを、1質量%の光開始剤ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TCI Europe,オランダ)を含むUV硬化性モノマー/架橋剤混合物(0.7g,FA-513AS,Hitachi Chemical,日本/0.3gのMiramer M240,Miwon,韓国)と混合し、室温で真空(<0.01mbar)によりトルエンを蒸発させた。得られた混合物を厚さ約100μmで2枚のガラススライド(18×18mm)の間で、UV(水銀ランプ及び石英フィルタを備えたUVAcube100,Hoenle,ドイツ)中で60秒間硬化させた。第2のフィルム(P2-ガラス)は、0.1gの緑色インクと、1質量%の光開始剤ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドを含むUV硬化性モノマー/架橋剤混合物(0.7g、FA-DCPA,Hitachi Chemical,日本/0.3gのFA-320M,Hitachi Chemical,日本)とを用いて、上記と同様に作製した。第3のフィルム(P1/P1-ガラス)は、第1のフィルムについて上記のようにフィルムを作製したが、2枚のガラススライドからこのフィルムを剥がすことによって作製した。この自立フィルムを、次に、1質量%の光開始剤ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドを含む(0.7g,FA-513AS,Hitachi Chemical,日本/0.3gのMiramer M240,Miwon,韓国)の上記のものと同様のマトリックス中で2枚のガラススライドの間にコートし、硬化させた。第4のフィルム(P1/P2-ガラス)は、第1のフィルムについて上に記載したようにフィルムを作製したが、2枚のガラススライドからこのフィルムを剥がすことによって作製した。この自立フィルムを、次に、1質量%の光開始剤ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドを含む(0.7g,FA-DCPA,Hitachi Chemical,日本/0.3gのFA-320M,Hitachi Chemical,日本)の異なるマトリックス中で2枚のガラススライドの間にコートし、上記のように硬化させた。マトリックスが自立フィルムを完全に覆うように第3及び第4のフィルムをコートした。
【0175】
分析:
表1は、得られた当初の、及び、サンプルを高温試験(90℃/ドライ)(すなわち、周囲湿度、約2%の相対湿度)、高温/高湿度試験(60℃/90%rH)及び高光束試験(青色LED光,460nm青色発光,280mW/cm2,50℃,LEDcube100,Hoenle,ドイツ)に150時間かけた場合の劣化後のフィルムの光学的特性を示す。光強度は、VIS域センサーを備えたUVメーター(Hoenle,ドイツ)により測定した。フィルムの結果としてもたらされた光学的特性は、積分球を備えた分光蛍光計(Quantaurus絶対PL量子収率測定システムC1134711,Hamamatsu)により測定した。
【0176】
【0177】
結論:
これらの結果は、本発明で記載したとおりのルミネッセントコンポーネント(例4)が、全ての試験条件で、優れた当初の特性と、加速劣化後に高い光学的性能を維持することを示している(
図5)。例1及び例3は90℃/ドライ及び60℃/90%rHで劣化後に劣った性能を示し、例2は、高光束で劣化後に劣った性能を示したので、これらのコンポーネントはTVなどの用途に適さない。
【0178】
例5~6:本発明に従うルミネッセントコンポーネントの合成(P2中の完全に覆われたP1片、
図4参照。例5は比較のため、例6は本発明に従う。)
【0179】
インク形成:
インクは例1~4に記載したように調製した。
【0180】
フィルム形成:
第1のフィルム(P1-ガラス)は、例1の第1のフィルムと同様に作製した。第2のフィルム(P1/P2-ガラス)は、上で第1のフィルムについて記載したようにフィルムを作製することにより作製した。次に、2枚のガラススライドからこのフィルムを剥がし、約0.5mm×0.5mm×0.1mmのサイズの小片に切断した。これらのP1片を、次に、1質量%の光開始剤ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドを含む(0.7g,FA-DCPA,Hitachi Chemical,日本/0.3gのFA-320M,Hitachi Chemical,日本)のマトリックス中に、質量比1:3(P1片:マトリックス)で質量混合し、その後、上記のようにコートし、硬化させた。マトリックスがP1片を完全に覆うように第2のフィルムをコートした。
【0181】
分析:
表2は、得られた当初の、及び、サンプルを高温試験(90℃/ドライ)(すなわち、周囲湿度、約2%の相対湿度)、高温/高湿度試験(60℃/90rH)及び高光束試験(青色LED光,460nm青色発光,350mW/cm2,50℃,LEDcube100,Hoenle,ドイツ)に150時間かけた場合の劣化後のフィルムの光学的特性を示す。光強度は、VIS域センサーを備えたUVメーター(Hoenle,ドイツ)により測定した。フィルムの結果としてもたらされた光学的特性は、積分球を備えた分光蛍光計(Quantaurus絶対PL量子収率測定システムC1134711,Hamamatsu)により測定した。
【0182】
【0183】
結論:
これらの結果は、本発明で記載したとおりのルミネッセントコンポーネント(例6)が、全ての試験条件で、優れた当初の特性と、加速劣化後に高い光学的性能を維持することを示している(
図6)。例1及び例3は90℃/ドライ及び60℃/90%rHで劣化後に劣った性能を示し、例5は、90℃/ドライで劣化後に劣った性能を示したので、このコンポーネントはTVなどの用途に適さない。
【0184】
例7~10:本発明に従うルミネッセントコンポーネントの合成(P2中の部分的に覆われたP1、
図2A、2B、2C参照)。例7、8及び9は比較のため、例10は本発明に従う。
【0185】
インク形成:
インクは例1~4に記載したように調製した。
【0186】
フィルム形成:
第1のフィルム(P1-バリヤー)の場合、例5~6からの0.3gの緑色インクを、1質量%の光開始剤ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TCI Europe、オランダ)を含むUV硬化性モノマー/架橋剤混合物(2.1g,FA-513AS,Hitachi Chemical,日本/0.9gのMiramer M240,Miwon,韓国)とスピードミキサーで混合し、室温で真空(<0.01mbar)によりトルエンを蒸発させた。得られた混合物を2枚のバリヤーフィルム(TBF1004,i-components,韓国)の間に厚さ100μmでコートした。このバリヤーフィルムは、製造業者の検査報告に基づくと、0.022g/(m2・day)のWVTR(Mocon試験)を示した。硬化は、2基の水銀ランプ及び石英フィルタを備えたUVベルト(BE20/120W/II,Beltron,ドイツ)で行った。硬化条件は、両方のランプについてランプ強度31%及びライン速度4.1m/分であり、UVインテグレータタイプD(Beltron,ドイツ)により測定した場合に約850mJ/cm2のUVエネルギーをもたらすものであった。
【0187】
第2のフィルム(P2-バリヤー)は、0.3gの緑色インクと、1質量%の光開始剤ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドを含むUV硬化性モノマー/架橋剤混合物(2.1g,FA-DCPA,Hitachi Chemical,日本/0.9gのFA-320M,Hitachi Chemical,日本)とを用いて、上記と同様に作製した。コーティング厚さは100μmであり、硬化条件は、両方のランプについてランプ強度75%及びライン速度5m/分であり、約1700mJ/cm2のUVエネルギーをもたらすものであった。
【0188】
第3のフィルム(P1/P1-バリヤー)は、2枚の別々のバリヤーフィルム(TBF1004,i-components,韓国)上に、最初に、1質量%の光開始剤ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TCI Europe,オランダ)を含むUV硬化性モノマー/架橋剤混合物(2.1g,FA-DCPA,Hitachi Chemical,日本/0.9gのMiramer M240,Miwon,韓国)により30μmのオーバーコートをコーティングすることにより作製した。オーバーコートを酢酸セルロースビューホイルで覆い、その後、UVベルトを用いて、約425mJ/cm2のUVエネルギーをもたらす、両方のランプについてランプ強度31%及びライン速度8.2m/分で硬化を行った。次に、0.3gの緑色インクと、1質量%の光開始剤ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドを含むUV硬化性モノマー/架橋剤混合物(2.1g,FA-513AS,Hitachi Chemical,日本/0.9gのMiramer M240,Miwon,韓国)とを混合し、上記のようにトルエンを蒸発させた。この混合物を、2枚のオーバーコートされたバリヤーフィルムの間にコート(厚さ100μm)し、約3400mJ/cm2のUVエネルギーをもたらす、両方のランプについてランプ強度31%及びライン速度1.0m/分で、硬化させた。
【0189】
第4のフィルム(P2/P1-バリヤー)は、2枚のバリヤーフィルム(TBF1004,i-components,韓国)上に、最初に、1質量%の光開始剤ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TCI Europe,オランダ)を含むUV硬化性モノマー/架橋剤混合物(2.1g,FA-DCPA,Hitachi Chemical,日本/0.9gのFA-320M,Hitachi Chemical,日本)により30μmのオーバーコートをコーティングすることにより作製した。オーバーコートを酢酸セルロースビューホイルで覆い、その後、UVベルトを用いて、約425mJ/cm2のUVエネルギーをもたらす、両方のランプについてランプ強度31%、ライン速度8.2m/分で硬化を行った。次に、0.3gの緑色インクと、1質量%の光開始剤ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドを含むUV硬化性モノマー/架橋剤混合物(2.1g,FA-513AS,Hitachi Chemical,日本/0.9gのMiramer M240,Miwon,韓国)とを混合し、上記のようにトルエンを蒸発させた。この混合物を、2枚のオーバーコートされたバリヤーフィルムの間にコート(厚さ100μm)し、約3400mJ/cm2のUVエネルギーをもたらす、両方のランプについてランプ強度31%及びライン速度1.0m/分で硬化させた。全部で4つのフィルムからサイズ3cm×3cmのサンプルを切り出し、劣化について試験した。第3のフィルム(P1/P1-バリヤー)及び第4のフィルム(P2/P1-バリヤー)からサンプルを切り出すことによって、LCを含むP1層を切断面で環境に曝した。
【0190】
分析:
表3は、得られた当初の、及び、サンプルを高温試験(90℃/ドライ)(すなわち、周囲湿度、約2%の相対湿度)、高温/高湿度試験(60℃/95%rH)及び高光束試験(青色LED光,460nm青色発光,280mW/cm2,50℃,LEDcube100,Hoenle,ドイツ)に500時間かけた場合の劣化後のフィルムの光学的特性を示す。光強度は、VIS域センサーを備えたUVメーター(Hoenle,ドイツ)により測定した。フィルムの性能は、サンプルをマゼンタバックライトユニット上に配置し、分光放射計(CS-2000,コニカミノルタ)により光学的特性を測定することにより得た。
【0191】
【0192】
Tgの分析:
本発明において記載したとおりのルミネッセントコンポーネントの要素のガラス転移温度を、窒素雰囲気(20ml/分)中、開始温度-90℃及び終了温度250℃、加熱速度20K/分で、DIN EN ISO 11357-2:2014-07に従ってDSCにより求めた。パージガスは、20ml/分で窒素(5.0)であった。DSCシステムDSC 204 F1 Phoenix(Netzsch)を使用した。2回目の加熱サイクルでTgを求めた(-90℃から250℃までの最初の加熱はガラス転移に加えてオーバーレイ効果を示した)。第1のサンプル(P1+LC)は、例1~4からの0.3gの緑色インクを、1質量%の光開始剤ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TCI Europe,オランダ)を含むUV硬化性モノマー/架橋剤混合物(2.1g,FA-513AS,Hitachi Chemical,日本/0.9gのMiramer M240,Miwon,韓国)とスピードミキサーで混合し、その後、トルエンを室温で真空(<0.01mbar)により蒸発させることによって、例7からの上記フィルムと同様に作製した。得られた混合物を2枚の100μm酢酸セルロースビューホイルの間に30~40μmの厚さでコートした。硬化は、2基の水銀ランプ及び石英フィルタを備えたUVベルト(BE20/120W/II,Beltron,ドイツ)で行った。硬化条件は、両方のランプについてランプ強度31%及びライン速度1.0m/分であり、UVインテグレータタイプD(Beltron,ドイツ)により測定した場合に約3400mJ/cm2のUVエネルギーをもたらすものであった。第1のサンプル(P2)は、1質量%の光開始剤ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TCI Europe,オランダ)を含むUV硬化性モノマー/架橋剤混合物(2.1g,FA-DCPA,Hitachi Chemical,日本/0.9gのFA-320M,Hitachi Chemical,日本)をスピードミキサーで混合することによって、例10からの上記フィルムと同様に作製した。得られた混合物を2枚の100μm酢酸セルロースビューホイルの間に30~40μmの厚さでコートした。硬化は、2基の水銀ランプ及び石英フィルタを備えたUVベルト(BE20/120W/II,Beltron,ドイツ)で行った。硬化条件は、両方のランプについてランプ強度31%及びライン速度1.0m/分(約3400mJ/cm2のUVエネルギー)であった。サンプル(P1+LC)とサンプル(P2)の両方について、ビューホイルを除去し、残ったフィルムをTg分析に2回かけた。(P1+LC)についてのTgは77℃及び74℃であったのに対し、(P2)については、Tgは143℃及び142℃であった。
【0193】
結論:
これらの結果は、本発明で記載したとおりのルミネッセントコンポーネント(例10)が、全ての試験条件で、優れた当初の特性と、加速劣化後に高い光学的性能を維持することを示している(
図7)。例7は90℃/ドライ及び60℃/90%rHで劣化後に劣った性能を示し、例8は、高光束で劣化後にかなり劣った性能を示し、一方、例9は、90℃/ドライで顕著な劣化を示したので、これらのフィルム系はTVなどの用途に適さない。