(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083270
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】クレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 13/18 20060101AFI20230608BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20230608BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20230608BHJP
B66C 15/00 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
B66C13/18
H02M3/155 B
H02M3/155 C
H02M7/48 M
B66C15/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037707
(22)【出願日】2023-03-10
(62)【分割の表示】P 2019560826の分割
【原出願日】2018-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2017245331
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】田坂 泰久
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 英昭
(57)【要約】
【課題】スイッチの劣化を検出可能なパワーエレクトロニクス機器を提供する。
【解決手段】パワーエレクトロニクス機器200は、DCリンクコンデンサ220および突入電流防止回路210を備える。判定器244は、判定期間においてスイッチRY1、MC1に遮断指令または導通指令を与え、そのときのDCリンクコンデンサ220の電圧VDCまたは突入電流防止回路210に流れる電流IINにもとづいてスイッチRY1,MC1の異常を検出する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
吊り作業部と、
前記吊り作業部を駆動する駆動部と、
前記駆動部に電力を供給する蓄電システムと、
を備え、
前記蓄電システムの異常を診断する機能を有し、
前記異常の存在を報知する異常報知部をさらに備え、
前記異常報知部は、
異常が生じていると判断され、異常の報知、或いは作業の制限がされている状態において、所定のモード変更操作により、前記蓄電システムを利用しないモードを開始する、クレーン。
【請求項2】
前記異常報知部は、異常の種別に応じて報知内容を変更し、
作業が制限されるレベルの異常の場合は所定の第1レベルの異常を報知し、
交換、或いはメンテナンスが推奨されるが、作業は制限されないレベルの異常が生じている場合は、第1レベルより低いレベルの第2レベルの異常を報知する、請求項1に記載のクレーン。
【請求項3】
異常が生じていると判断され、異常の報知、或いは作業の制限がされている状態において、所定のモード変更操作により、前記蓄電システムを利用しない作業モードで作業を開始する、請求項1または2に記載のクレーン。
【請求項4】
走行部をさらに備え、
前記蓄電システムを利用しないモードは、前記走行部の走行速度、前記吊り部の動作速度、の少なくともひとつが制限される、請求項1から3のいずれかに記載のクレーン。
【請求項5】
前記異常報知部は、遠隔操作の場合は遠隔操作手段に備えられた報知手段に異常を報知する、請求項1から4のいずれかに記載のクレーン。
【請求項6】
前記異常報知部は、自動運転の場合は、通信手段を介して、管理棟に供えられた報知手段に異常を報知する、請求項1から4のいずれかに記載のクレーン。
【請求項7】
前記異常報知部は、手動運転の場合は、運転室内に設けられた報知手段に異常を報知する、請求項1から4のいずれかに記載のクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンおよびパワーエレクトロニクス機器に関する。
【背景技術】
【0002】
1. クレーン等の作業機械において、交流電源、交流電動機、及び蓄電池が直流母線を介して相互に接続される(例えば特許文献1)。交流電源は、交流電力を直流電力に変換するコンバータ装置を介して直流母線に接続される。蓄電池は、蓄電池の充放電のタイミングと電力量を制御する充電/放電コントローラを介して直流母線に接続される。交流電動機は、直流電力を交流電力に変換するインバータを介して直流母線に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-131311号公報
【特許文献2】特開2007-295699号公報
【特許文献3】特開2005-116485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1. クレーンのハイブリッド化にパワーエレクトロニクス機器が用いられる。パワーエレクトロニクス機器は、蓄電器とコンバータとを主構成とし、クレーンのDCバスに接続される。クレーンの起動操作により、パワーエレクトロニクス機器も起動する。DCバスと蓄電器とを電気的に接続するに際し、安全面で信頼性の高いパワーエレクトロニクス機器が望ましい。
【0005】
2.
図1は、従来のパワーエレクトロニクス機器のブロック図である。パワーエレクトロニクス機器100Rは、負荷であるモータ102、コンバータ装置110および負荷駆動装置120を備える。コンバータ装置110は、バッテリなどの直流電源104からの直流電圧V
Eを昇圧してDCリンク電圧V
DCを生成し、DCリンク130を介して負荷駆動装置120に供給する。負荷駆動装置120はたとえばモータ駆動装置であり、負荷であるモータ102を駆動するインバータ122を含む。DCリンク130には、大容量のDCリンクコンデンサ132が接続される。またインバータ122の入力にも、大容量の平滑コンデンサ124が接続される。
【0006】
パワーエレクトロニクス機器100Rの起動時に、DCリンクコンデンサ132、平滑コンデンサ124の電荷はゼロである。このようなコンデンサに、直流電圧VEが印加されると突入電流が流れる。これを防止するために、充電抵抗RJ、リレーRY1、電磁接触器MC1が設けられる。はじめにリレーRY1がオンされ、充電抵抗RJおよびダイオードD11を介してDCリンクコンデンサ132が緩やかに充電される。また、平滑コンデンサ124は充電抵抗R2を介して緩やかに充電される。
【0007】
DCリンクコンデンサ132、平滑コンデンサ124の充電がある程度進むと、あるいはそれらの充電が完了すると、電磁接触器MC1および電磁接触器MC2がオンされる。
【0008】
リレーや電磁接触器(以下、スイッチと総称する)は機械的な接点を有するため、酸化や摩耗により経時的に劣化する。
【0009】
図1のパワーエレクトロニクス機器100Rでは、特にリレーRY1や電磁接触器MC1の経時的な劣化が問題となる。そこで一般的には、これらのスイッチに補助接点付きの部品を採用し、アンサーバック信号を利用した故障検出(溶着や開放検出)が広く行われている。
【0010】
図2は、従来のパワーエレクトロニクス機器のブロック図である。
図2のパワーエレクトロニクス機器100Sは、補助接点を有しないスイッチを用いる代わりに、負極(N極)側に冗長なスイッチRY2をさらに備える。そして、正極側のスイッチRY1(MC1)と負極側のスイッチRY2を順に導通、あるいは遮断し、各状態での電圧あるいは電流が正常時の期待値から逸脱したときに、異常と判定する。
【0011】
図1のパワーエレクトロニクス機器100Rに用いる補助接点付きのスイッチは、一般的に高価であり、また大型である場合が多く、採用に支障がある場合もある。
【0012】
また
図2のパワーエレクトロニクス機器100Sでは、冗長なスイッチRY2を追加する必要があるため、パワーエレクトロニクス機器100Sのサイズが大きくなり、コストが高くなる。
【0013】
本発明はかかる状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、起動時により安全性の高いパワーエレクトロニクス機器を搭載したクレーン、及びこのクレーンに搭載されるパワーエレクトロニクス機器を提供することである。またそのある態様の例示的な目的のひとつは、スイッチの劣化を検出可能なパワーエレクトロニクス機器の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のある態様はクレーンに関する。クレーンは、本体部と、吊り作業部と、走行部、および吊り作業部、を駆動する駆動部と、駆動部に電力を供給する蓄電システムと、を備える。クレーンは、起動時、或いは終了時に、蓄電システムの異常を診断する機能を有する。
【0015】
2. 本発明のある態様はパワーエレクトロニクス機器に関する。パワーエレクトロニクス機器は、コンデンサと、直流電源とコンデンサとの間に設けられるスイッチを含む突入電流防止回路と、判定期間においてスイッチに遮断指令または導通指令を与え、そのときのコンデンサの電圧または突入電流防止回路に流れる電流にもとづいてスイッチの異常を検出する判定器と、を備える。
【0016】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のある態様によれば、起動時により安全性の高いパワーエレクトロニクス機器を搭載したクレーン、及びこのクレーンに搭載されるパワーエレクトロニクス機器を提供できる。また本発明のある態様によれば、スイッチの劣化を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】従来のパワーエレクトロニクス機器のブロック図である。
【
図2】従来のパワーエレクトロニクス機器のブロック図である。
【
図3】実施の形態に係るエレクトロニクス機器のブロック図である。
【
図6】変形例に係るパワーエレクトロニクス機器を示すブロック図である。
【
図7】
図7A及び
図7Bは、それぞれ本実施例によるクレーンシステムの概略正面図及び概略側面図である。
【
図8】
図8は、クレーンシステムの電力系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施の形態の概要)
本明細書に開示される一実施の形態は、クレーンに関する。クレーンは、本体部と、吊り作業部と、走行部、および吊り作業部、を駆動する駆動部と、駆動部に電力を供給する蓄電システムと、を備える。クレーンは、起動時、或いは終了時に、蓄電システムの異常を診断する機能を有する。
【0020】
クレーンは、起動時に異常を検知して異常の存在を報知するか、終了時に異常を検知して異常の存在を報知する異常報知部を備えてもよい。
【0021】
異常報知部は、遠隔操作の場合は遠隔操作手段に備えられた報知手段に、自動運転の場合は、通信手段を介して、管理棟に供えられた報知手段に、手動運転の場合は、運転室内に設けられた報知手段に、異常を報知してもよい。
【0022】
異常報知部は、異常の種別に応じて報知内容を変更してもよい。作業が制限されるレベルの異常の場合は所定の第1レベルの異常を報知し、交換、或いはメンテナンスが推奨されるが、作業は制限されないレベルの異常が生じている場合は、第1レベルより低いレベルの第2レベルの異常を報知してもよい。
【0023】
異常が生じていると判断され、異常の報知、或いは作業の制限がされている状態において、所定のモード変更操作により、蓄電システムを利用しない作業モードで作業を開始してもよい。
【0024】
蓄電システムを利用しない作業モードは、走行速度、吊り部の動作速度、の少なくとも一つが制限されてもよい。
【0025】
本明細書に開示される一実施の形態は、パワーエレクトロニクス機器に関する。パワーエレクトロニクス機器は、コンデンサと、直流電源とコンデンサとの間に設けられるスイッチを含む突入電流防止回路と、判定期間においてスイッチに遮断指令または導通指令を与え、そのときのコンデンサの電圧または突入電流防止回路に流れる電流にもとづいてスイッチの異常を検出する判定器と、を備える。この実施の形態によると、補助接点付きのスイッチや、冗長なスイッチを用いずに、スイッチの劣化を検出できる。またパワーエレクトロニクス機器のコストを下げることができる。
【0026】
判定器は、スイッチに導通指令を与えてコンデンサを充電する充電期間中に、スイッチに一時的に遮断指令を与え、そのときの突入電流防止回路に流れる電流の変化にもとづいて異常の有無を判定してもよい。スイッチに遮断指令を与える間、スイッチが正常に遮断されていれば、電流はゼロとなる。反対にスイッチに溶着等の劣化が生じている場合、電流が流れ続ける。したがって、現在のスイッチの状態(導通・遮断)と、電流の変化にもとづいてスイッチの異常を判定できる。
【0027】
判定器は、スイッチに導通指令を与えてコンデンサを充電する充電期間中に、スイッチに一時的に遮断指令を与え、そのときのコンデンサの電圧の変化にもとづいて異常の有無を判定してもよい。スイッチに遮断指令を与える間、スイッチが正常に遮断されていれば、コンデンサへの充電が停止するため、電圧の変化はゼロとなる。反対にスイッチに溶着等の劣化が生じている場合、コンデンサへの充電電流が流れ続けるため、コンデンサの電圧は増加し続ける。したがって、現在のスイッチの状態(導通・遮断)と、コンデンサの電圧変化にもとづいてスイッチの異常を判定できる。
【0028】
パワーエレクトロニクス機器は、突入電流防止回路とコンデンサの間に設けられるコンバータ装置をさらに備えてもよい。スイッチに遮断指令を与えた状態においてコンバータ装置をスイッチング動作させ、そのときの突入電流防止回路に流れる電流にもとづいて、異常の有無を判定してもよい。
【0029】
スイッチに遮断指令を与えた状態において、スイッチが正常に遮断されていれば、コンバータ装置をスイッチング動作させても、突入電流防止回路に流れる電流はゼロである。反対にスイッチに溶着等の劣化が生じている場合、突入電流防止回路を経由して電流が流れる。したがって、電流にもとづいて異常の有無を判定できる。
【0030】
パワーエレクトロニクス機器は、突入電流防止回路とコンデンサの間に設けられるコンバータ装置をさらに備えてもよい。スイッチに遮断指令を与えた状態においてコンバータ装置をスイッチング動作させ、そのときのコンデンサの電圧にもとづいて、異常の有無を判定してもよい。
【0031】
スイッチに遮断指令を与えた状態において、スイッチが正常に遮断されていれば、コンバータ装置をスイッチング動作させても、突入電流防止回路に流れる電流はゼロであり、したがってコンデンサの電圧は上昇しない。反対にスイッチに溶着等の劣化が生じている場合、突入電流防止回路を経由して電流が流れるため、コンデンサの電圧は上昇する。したがって、コンデンサの電圧にもとづいて異常の有無を判定できる。
【0032】
(実施の形態)
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0033】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0034】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0035】
本明細書において参照する波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
【0036】
図3は、実施の形態に係るエレクトロニクス機器のブロック図である。パワーエレクトロニクス機器200は、直流電源202、突入電流防止回路210、DCリンクコンデンサ220、コンバータ装置230を備える。
【0037】
直流電源202は、バッテリやキャパシタ、あるいは外部のコンバータであり、直流電圧(入力電圧ともいう)V
Eを生成する。DCリンク204には、DCリンクコンデンサ220が接続される。また
図3には図示しないが、DCリンク204には、
図1や
図2に示すような負荷駆動装置が接続される。負荷の種類は特に限定されない。
【0038】
パワーエレクトロニクス機器200の起動直後において、DCリンクコンデンサ220の電荷が少なく、DCリンク電圧VDCが低い状態において、入力電圧VEが低インピーダンス経路を介してDCリンクコンデンサ220に印加されると突入電流が流れる。これを防止するために、直流電源202とDCリンクコンデンサ220の間には、突入電流防止回路210が設けられる。
【0039】
突入電流防止回路210は、直流電源202とDCリンクコンデンサ220との間に設けられる少なくともひとつのスイッチを含む。本実施の形態では、突入電流防止回路210は、第1スイッチMC1と、第1スイッチMC1と並列な経路に直列に設けられる充電抵抗RJおよび第2スイッチRY1を含む。たとえば第1スイッチMC1は電磁接触器であり、第2スイッチRY1はリレーである。
【0040】
コンバータ装置230は、突入電流防止回路210とDCリンクコンデンサ220の間に設けられる。コンバータ装置230は、動作状態において、入力電圧VEを昇圧し、DCリンク204に直流電圧VEより高いDCリンク電圧VDCを発生させる(力行運転)。コントローラ240は、コンバータ装置230を制御するコンバータコントローラ242を含む。コンバータコントローラ242は、コンバータ装置230のゲート信号のデューティ比を規定する制御信号SCTRLを生成する。
【0041】
コントローラ240には、DCリンク電圧VDCを示すデジタルのフィードバック信号DVDCがフィードバックされている。コントローラ240は、フィードバック信号DVDCが、DCリンク電圧VDCの目標電圧を規定する目標値DREFに近づくように、フィードバックによってデューティ比を調節する。
【0042】
ゲートドライバ232は、制御信号SCTRLが示すデューティ比にもとづいて、コンバータ装置230のトランジスタM1,M2を駆動する。
【0043】
電流センサ234はたとえばカレントトランスであり、リアクトルL1に流れる電流ILを検出する。コントローラ240には、電流ILを示すデジタル値DILや、入力電圧VEを示すデジタル値DVEが入力される。コンバータコントローラ242におけるフィードバック制御に、入力電圧VEや、コンバータ装置230のリアクトルL1に流れる電流ILを反映してもよい。
【0044】
直流電源202が充電可能なバッテリあるいはキャパシタを含む場合、コンバータ装置230を回生運転させることが可能であり、DCリンク204側の余剰なエネルギーを直流電源202に回収してもよい。
【0045】
コントローラ240は、突入電流防止回路210に含まれるスイッチMC1,RY1のオン、オフを制御するとともに、スイッチMC1,RY1の異常を検出する機能を備える。
【0046】
パワーエレクトロニクス機器200の起動直後の充電期間において、コントローラ240はコンバータ装置230を停止状態とし、第2スイッチRY1をオンする。これにより、抵抗RJ、第2スイッチRY1、ダイオードD11を介して充電電流ICHGが流れ、DCリンクコンデンサ220が充電される。
【0047】
DCリンクコンデンサ220への突入電流のおそれが無い程度に、DCリンク電圧VDCが上昇すると、第1スイッチMC1がオンされる。その後、コントローラ240は、コンバータ装置230の動作を開始する。
【0048】
突入電流防止回路210のスイッチの異常検出について説明する。コントローラ240は、判定器244を含む。判定器244は、判定期間においてスイッチMC1,RY1に遮断指令または導通指令を与え、その指令(スイッチの使用状況)と、そのときのDCリンクコンデンサ220の電圧VDCまたは突入電流防止回路210に流れる電流の組み合わせにもとづいてスイッチMC1,RY1の異常を検出する。
【0049】
電流センサ234は、突入電流防止回路210に流れる電流(入力電流という)IINを検出しているものと把握することができる。入力電流IINは、コンバータ装置230の動作状態ではリアクトル電流ILに他ならず、充電期間中は、充電電流ICHGに他ならない。
【0050】
以下、判定器244による異常検出について、3つの実施例を参照して説明する。
【0051】
(第1実施例)
図4は、判定器244による異常検出を説明する図である。
時刻t
0に、コントローラ240は、第2スイッチRY1に導通指令を与えてDCリンクコンデンサ220の充電を開始する。コントローラ240は、充電期間に判定期間τ
DET1を挿入し、判定期間τ
DET1の間、第2スイッチRY1に一時的(t
1~t
2)に遮断指令を与える。判定器244は、判定期間τ
DET1における突入電流防止回路に流れる入力電流I
INの変化にもとづいて異常の有無を判定する。
【0052】
第2スイッチRY1に遮断指令を与える間、第2スイッチRY1が正常に遮断されていれば、入力電流IINは実線で示すようにゼロとなる。反対に第2スイッチRY1に溶着等の劣化が生じている場合、一点鎖線で示すように非ゼロの入力電流IINが流れ続ける。したがって判定器244は、判定期間τDET1における入力電流IINにもとづいてスイッチの異常を判定できる。たとえば判定器244は、判定期間τDET1におけるデジタル値DILが所定のしきい値より高いとき異常、低いとき正常と判定してもよい。
【0053】
判定期間τDET1の終了時刻t2に、第2スイッチRY1を再びオンしてもよい。そしてDCリンク電圧VDCが入力電圧VEと実質的に等しい電圧レベルまで上昇し、突入電流のおそれがなくなる時刻t3に、第1スイッチMC1に導通指令を与えてもよい。その後、時刻t4にコンバータ装置230が動作開始する。
【0054】
なお、判定期間τDET1の終了時刻t2に、突入電流のおそれがない程度にDCリンク電圧VDCが十分に高い場合には、時刻t2に直ちに第1スイッチMC1をオンし、第1スイッチMC1を介してDCリンクコンデンサ220を充電するようにしてもよい。
【0055】
(第2実施例)
引き続き
図4を参照する。第2実施例において判定器244は、判定期間τ
DET1におけるDCリンク電圧V
DCの変化にもとづいて異常の有無を判定する。第2スイッチRY1に遮断指令を与える間、第2スイッチRY1が正常に遮断されていれば、DCリンクコンデンサ220への充電が停止するため、実線で示すようにDCリンク電圧V
DCの上昇が停止し、その電圧変化はゼロとなる。反対に第2スイッチRY1に溶着等の劣化が生じている場合、DCリンクコンデンサ220に充電電流I
CHGが流れ続けるため、一点鎖線で示すようにDCリンク電圧V
DCは増加し続ける。したがって判定器244は、判定期間τ
DET1におけるDCリンク電圧V
DCにもとづいて第2スイッチRY1の異常を判定できる。たとえば判定器244は、判定期間τ
DET1におけるデジタル値D
VDCの変化量が実質的にゼロのときに正常、非ゼロのときに異常と判定してもよい。より具体的には判定期間の開始時刻t
1と終了時刻t
2それぞれにおいて、デジタル値D
VDCをサンプリングし、それらの差分が所定のしきい値より大きいときに異常、小さいときに正常と判定してもよい。
【0056】
続いて、第1実施例あるいは第2実施例における判定期間τDET1について説明する。たとえば判定期間τDET1は、充電開始時刻t0から所定の遅延時間の経過後を、判定期間τの開始時刻t1としてもよい。
【0057】
あるいは起動直後の入力電圧VEをモニターし、入力電圧VEに係数K(K<1)を乗じてしきい値K×VEを決定し、DCリンク電圧VDCがしきい値に到達した時刻を判定期間τの開始時刻t1としてもよい。
【0058】
あるいは充電期間中の入力電流IINを監視し、入力電流IINがピークを経た後に、所定の基準値まで低下した時刻を、判定期間τの開始時刻t1としてもよい。
【0059】
(第3実施例)
図5は、判定器244による異常検出を説明する図である。充電期間の終了後の非充電期間中に、判定期間τ
DET2が挿入される。この判定期間τ
DET2の間、コントローラ240は第1スイッチMC1、第2スイッチRY1を両方に遮断指令が与えられる。そしてコンバータ装置230を動作状態とする。
【0060】
たとえば判定期間τ
DET2は、
図4における時刻t
3の近傍に挿入してもよい。この場合、DCリンク電圧V
DCは、実質的に入力電圧V
Eと等しい。コンバータ装置230をスイッチング動作させたときに、突入電流防止回路210のスイッチMC1,RY1が正常にオフしていれば、実線で示すように、DCリンク電圧V
DCは上昇せず、もとの電圧レベル(ここではV
E)を維持する。もしスイッチMC1,RY1のいずれかに異常が生じていれば、一点鎖線で示すように、コンバータ装置230の昇圧動作の結果、DCリンク電圧V
DCが上昇する。したがって判定器244は、判定期間τ
DET2における電圧変化量にもとづいて、スイッチMC1,RY1の異常を検出できる。
【0061】
たとえば判定器244は、判定期間τDET2におけるデジタル値DVDCの変化量が実質的にゼロのときに正常、非ゼロのときに異常と判定してもよい。より具体的には判定期間の開始時刻t1と終了時刻t2それぞれにおいて、デジタル値DVDCをサンプリングし、それらの差分が所定のしきい値より大きいときに異常、小さいときに正常と判定してもよい。
【0062】
(第4実施例)
引き続き
図5を参照する。第4実施例において判定器244は、判定期間τ
DET2における入力電流I
INの変化にもとづいて異常の有無を判定する。判定期間τ
DET2において第1スイッチMC1、第2スイッチRY1が両方とも正常に遮断されていれば、入力電流I
INは実線で示すようにゼロである。反対に第1スイッチMC1、第2スイッチRY1のいずれかに異常が生じていると、入力電流I
INは一点鎖線で示すように非ゼロとなる。したがって判定器244は、判定期間τ
DET2における入力電流I
INにもとづいてスイッチの異常を判定できる。たとえば判定器244は、判定期間τ
DET2におけるデジタル値DI
Lが所定のしきい値より高いとき異常、低いとき正常と判定してもよい。
【0063】
第3実施例、第4実施例において、判定期間τDET2は、パワーエレクトロニクス機器200の終了時に挿入してもよい。この場合、DCリンク電圧VDCの初期値は、昇圧後の高い電圧となる。
【0064】
(変形例)
実施の形態では、コンバータ装置230の前段に設けられる突入電流防止回路210のスイッチの異常検出を説明したが、本発明の適用はそれに限定されない。
図1や
図2に示すように、負荷駆動装置120の前段には、抵抗R2およびスイッチMC2を含む突入電流防止回路が設けられており、スイッチMC2の異常検出にも本発明は適用できる。
図6は、変形例に係るパワーエレクトロニクス機器300を示すブロック図である。直流電源302は、DCリンク304にDCリンク電圧V
DCを発生するコンバータを含む。
【0065】
突入電流防止回路310は、直流電源302と平滑コンデンサ320の間に設けられる。この変形例では突入電流防止回路310は、抵抗R2と、スイッチMC2、RY2を含む。負荷駆動装置330は、平滑コンデンサ320に生ずる直流電圧にもとづいてモータなどの負荷306を駆動する。
【0066】
コントローラ340は、スイッチMC2、RY2および負荷駆動装置330を制御し、スイッチMC2、RY2の異常を検出する。検出方法は、上述した第1実施例~第4実施例と同じ方法を採用できる。
【0067】
第1、第2実施例を採用する場合、上述の説明および
図4のV
EをV
DCと読み替え、V
DCをV
INと読み替えれば良い。第3、第4実施例を採用する場合、判定期間τ
DET2の間、スイッチMC2,RY2に遮断指令を与え、負荷駆動装置330を動作させ、そのときの電圧V
INの変化あるいは電流I
1の変化を検出すればよい。
【0068】
産業機械、建設機械、搬送車両に適用されるパワーエレクトロニクス機器は、産業機械、建設機械、搬送車両の起動に対応して起動してもよく、起動時において、コンデンサの電圧0Vであり、パワーエレクトロニクス機器は、起動後にコンデンサを充電してもよい。
【0069】
なお、補助接点付きのスイッチ、冗長なスイッチRY2を有するパワーエレクトロニクス機器にも、保護の2重化の観点から、本発明を適用することができるが、補助接点付きのスイッチ、冗長なスイッチRY2が無いパワーエレクトロニクス機器であれば、シンプルな構成、サイズダウン、コストダウン等の効果が、より一層顕著となることが理解される。
【0070】
なお、パワーエレクトロニクス機器において、異常と称するものを検知した場合に、産業機械等に搭載される上位のコントローラに通知したり、産業機械等に設けられた表示部等に異常表示したり、産業機械等を停止させたりすれば、安全性の向上に寄与することとなる。また予備的、予報的に報知してもよく、この場合、産業機械等を停止させない故障予知の観点から優れている。
【0071】
なおパワーエレクトロニクス機器の用途は特に限定されるものではないが、たとえば、射出成形機やプレスなどの産業機械、ショベルやクレーンなどの建設機械、フォークリフトや無人搬送車等の搬送車両(統括して産業機械等と称する)に適用できる。
【0072】
図7A及び
図7Bは、それぞれ本実施例によるクレーンシステムの概略正面図及び概略側面図である。複数の柱40が桁41を支えている。柱40と桁41とによって門型フレームが構成される。柱40の下端に車輪42が取り付けられており、門型フレームがレール43に沿って走行する。
図4Aの紙面に垂直な方向及び
図4Bの左右方向が走行方向に相当する。桁41にトロリー45が搭載されている。トロリー45に巻き上げ機46が搭載されている。門型フレーム、車輪42により本体部が構成され、トロリー45、巻き上げ機46、吊り作業部(吊り下げ具47とワイヤ)により作業部が構成される。
【0073】
複数の電動アクチュエータがそれぞれの作動部を駆動する。例えば、門型フレームに搭載された走行用モータ51が車輪42を駆動する。トロリー45に搭載された横行用モータ52が、トロリー45を横行方向に移動させる。
図4Aの左右方向及び
図4Bの紙面に垂直な方向が横行方向に相当する。巻き上げ機46は巻上げモータ53を含み、先端にフック等の吊り下げ具47が取り付けられたワイヤを巻上げ及び繰り出す。このように、巻上げモータ53、横行用モータ52、及び走行用モータ51等の電動アクチュエータが、それぞれ吊り下げ具47、トロリー45、車輪42を動作させる。
【0074】
門型フレームに、交流電源60、電力変換装置(DC-DCコンバータ)65、蓄電装置67、及び電力変換装置(DC-DCコンバータ)68が搭載されている。交流電源60は、エンジン61と発電機62とを含む。交流電源60は、巻上げモータ53、横行用モータ52、及び走行用モータ51に駆動用の電力を供給する。さらに、交流電源60から供給される電力によって蓄電装置67が充電される。
【0075】
電力変換装置68、蓄電装置(蓄電器)67は、直流母線70(DCバス)に蓄電システム(パワーエレクトロニクス機器)90として取り付けられる。このような蓄電システム(パワーエレクトロニクス機器)90を備えないクレーンに後付で取り付けることもできる。
【0076】
図8は、クレーンシステムの電力系統図である。交流電源60が整流器63及び電力変換装置65を介して直流母線70に接続されている。電力変換装置65は、交流電源60から出力され整流器63で整流された直流電力を、目標とする電圧の直流電力に変換して直流母線70に供給する。直流母線70の正側母線70Pと負側母線70Nとの間に平滑コンデンサ72が接続されている。
【0077】
蓄電装置67が電力変換装置68を介して直流母線70に接続されている。電力変換装置68は、蓄電装置67の充放電を制御する。蓄電装置67の放電時には、電力変換装置68が蓄電装置67の出力電圧を昇圧して蓄電装置67から直流母線70に電力を供給する。蓄電装置67の充電時には、電力変換装置68が直流母線70の電圧を降圧して直流母線70から蓄電装置67に電力を供給する。
【0078】
走行用モータ51が、インバータ54及び電力変換装置(DC-DCコンバータ)57を介して直流母線70に接続されている。横行用モータ52が、インバータ55及び電力変換装置(DC-DCコンバータ)58を介して直流母線70に接続されている。巻上げモータ53が、インバータ56及び電力変換装置(DC-DCコンバータ)59を介して直流母線70に接続されている。電力変換装置57、58、59は、それぞれ直流母線70の電圧を昇圧し、昇圧された電力をインバータ54、55、56に供給する。
【0079】
コントローラ80が、電力変換装置57、58、59、65、68、及びインバータ54、55、56を制御することにより、直流母線70から走行用モータ51、横行用モータ52、及び巻上げモータ53に電力を供給する。コントローラ80は、直流母線70の電圧を予め設定された目標値に維持するように電力変換装置57、58、59、65、及び68を制御する。巻上げモータ53が巻下げ動作をするときには、コントローラ80がインバータ56及び電力変換装置59を制御して、巻上げモータ53で発生した回生電力を降圧して直流母線70に供給する。この回生電力により蓄電装置67を充電することができる。
【0080】
電力変換装置68と蓄電装置67の間には、突入電流防止回路76Aが設けられる。
【0081】
コントローラ80は、クレーンの起動時、或いは終了時に、蓄電システム90の異常を診断する機能を有する。クレーンシステムは起動操作をトリガーとして起動する。起動操作は、起動ボタンや起動キー等の起動手段によって構成されてもよい。起動操作は、運転室でオペレータが実行できる。遠隔操作の場合は、起動手段は、遠隔でクレーンを制御する制御室(管理室)に備えられてもよく、運転室外で使用可能な遠隔操作手段に備えられてもよい。クレーンは、起動手段への終了操作をトリガーとして終了してもよいし、別途専用のボタン(終了手段)を設けてもよい。
【0082】
診断対象の蓄電システムの異常は、特に限定されないが、たとえば蓄電手段(バッテリやキャパシタ、これらの組み合わせ)の異常(内部抵抗異常、劣化異常、温度異常、電圧異常)であってもよいし、接続手段(スイッチ)あるいは抵抗やコンデンサの異常を含めてもよい。直列接続された複数の蓄電手段を有する場合は、それぞれの蓄電手段に電圧が均等にバランスしていると寿命が延びるため、起動時あるいは終了時に電圧状態を検出してもよい。またこの際それぞれの蓄電手段の内部抵抗や温度を計測することで、内部抵抗異常、温度異常をクレーンの動作に先立って検出することができる。
【0083】
クレーンシステムはさらに異常報知部92を備える。異常報知部92は、起動時に異常を検知して異常の存在を報知するか、終了時に異常を検知して異常の存在を報知する。
【0084】
異常報知部92は、遠隔操作の場合は遠隔操作手段に備えられた報知手段に、自動運転の場合は、通信手段を介して、管理棟に供えられた報知手段に、手動運転の場合は、運転室内に設けられた報知手段に、異常を報知する。
【0085】
異常報知部92は、異常の種別、あるいは緊急度に応じて報知内容を変更することができる。たとえば、作業が制限されるレベルの異常の場合は所定の第1レベルの異常を報知し、交換、或いはメンテナンスが推奨されるが、作業は制限されないレベルの異常が生じている場合は、第1レベルより低いレベルの第2レベルの異常を報知してもよい。
【0086】
クレーンは、異常が生じていると判断され、異常の報知、或いは作業の制限がされている状態において、所定のモード変更操作により、蓄電システム90を利用しない作業モードで作業を開始してもよい。この蓄電システム90を利用しない作業モードは、走行速度、吊り部の動作速度、の少なくとも一つが制限されてもよい。
【0087】
図8のクレーンシステムと、
図3のパワーエレクトロニクス機器300は、以下のように対応付けることができる。
図8 図3
コントローラ80 コントローラ240、ゲートドライバ232
蓄電装置67 直流電源202
突入電流防止回路76A 突入電流防止回路210
電力変換装置68 コンバータ装置230
平滑コンデンサ72 DCリンクコンデンサ220
正側母線70P DCリンク204
【0088】
コントローラ80が監視する異常のひとつは、突入電流防止回路76Aのリレーや電磁接触器の劣化や故障でありうる。この場合、コントローラ80は、
図3や
図4を参照して説明した方法によって、リレーや電磁接触器の劣化や故障を検出してもよい。
【0089】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0090】
200 パワーエレクトロニクス機器
202 直流電源
204 DCリンク
210 突入電流防止回路
220 DCリンクコンデンサ
230 コンバータ装置
232 ゲートドライバ
234 電流センサ
240 コントローラ
242 コンバータコントローラ
244 判定器
MC1 第1スイッチ
RY1 第2スイッチ
300 パワーエレクトロニクス機器
302 直流電源
304 DCリンク
306 負荷
310 突入電流防止回路
320 平滑コンデンサ
330 負荷駆動装置
332 負荷
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、産業機械に利用できる。