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特開2023-8346網射出装置、網発射装置の設計方法および宇宙デブリ・不審飛行体の捕獲・処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008346
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】網射出装置、網発射装置の設計方法および宇宙デブリ・不審飛行体の捕獲・処理方法
(51)【国際特許分類】
   B64D 7/08 20060101AFI20230112BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20230112BHJP
   B64G 1/22 20060101ALI20230112BHJP
   F41B 15/00 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
B64D7/08
B64C39/02
B64G1/22 100Z
F41B15/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111851
(22)【出願日】2021-07-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100190230
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 良吉
(72)【発明者】
【氏名】小島 広久
(57)【要約】      (修正有)
【課題】網を均等に展開するように射出でき、宇宙航行体や航空機に搭載しやすい小型化された網射出装置を提供する。
【解決手段】網射出方向に開口した網収納凹部30を備えた装置本体10と、網収納凹部30に収容され、捕獲対象物を捕獲するための網60と、網60の外周のそれぞれの箇所に直接または、紐を介して取付けられた複数の錘40と、装置本体10に設けられ、複数の錘40を、網射出方向から所定角度で広がる放射状の方向に、バネを用いてそれぞれ射出する複数の錘射出機構20と、外部からの信号に応じて複数の錘射出機構20を作動させるアクチュエータと、を有し、複数の錘射出機構20が複数の錘40を射出することにより、錘40に接続された網60を網収容凹部30から網射出方向に射出して展開するように構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
網射出方向に開口した網収納凹部を備えた装置本体と、
前記網収納凹部に収容され、捕獲対象物を捕獲するための網と、
前記網の外周のそれぞれの箇所に直接または、紐を介して取付けられた複数の錘と、
前記装置本体に設けられ、前記複数の錘を、前記網射出方向から所定角度で広がる放射状の方向に、バネを用いてそれぞれ射出する複数の錘射出機構と、
外部からの信号に応じて前記複数の錘射出機構を作動させるアクチュエータと、
を有し、
前記複数の錘射出機構が前記複数の錘を射出することにより、当該錘に接続された前記網を前記網収容凹部から前記網射出方向に射出して展開するように構成された、網射出装置。
【請求項2】
射出した後の前記網を前記装置本体に係留するための紐をさらに有する請求項1に記載の網射出装置。
【請求項3】
各前記複数の錘は略円柱状を有し、
各前記複数の錘射出機構は、一端部に射出口を有し内部に前記錘を保持する略筒状のガイドと、前記ガイドの内部の他端部側に配置されて前記錘を射出口方向に付勢するバネと、前記錘を係止するストッパーと、を含み、
前記ストッパーによる前記錘の係止は、前記アクチュエータによって解除され、それにより前記錘が前記バネによって前記射出口から射出されるように構成されている、請求項1に記載の網射出装置。
【請求項4】
前記アクチュエータは、全ての前記ストッパーを固定する一本の締結線と、当該締結線を切断する切断装置を含み、前記切断装置を作動させて前記締結線を切断することにより、各ストッパーによる錘の係止を同時に解除して、錘を同時に射出することを特徴とする、請求項3に記載の網射出装置。
【請求項5】
前記バネは、前記ガイドの内部に、前記他端部側から挿入して配置できるようになっている、請求項3に記載の網射出装置。
【請求項6】
前記網収納凹部を覆う蓋をさらに有し、当該蓋は、前記複数の錘と同数の分離した小部分からなり、各小部分は、各錘と一体的に射出されるように構成されている、請求項1に記載の網射出装置。
【請求項7】
前記網収納凹部を覆う蓋をさらに有し、当該蓋は、ヒンジ部分を介して装置本体に枢支され、前記網の射出時に前記網収容凹部を開放するように構成されている、請求項1に記載の網射出装置。
【請求項8】
網射出方向に開口した網収納凹部を備えた装置本体と、
前記網収納凹部に収容され、捕獲対象物を捕獲するための網と、
前記網の外周のそれぞれの箇所に取付けられた複数の錘と、
前記装置本体に設けられ、前記複数の錘を、前記網射出方向から所定角度で広がる放射状の方向に、バネを用いてそれぞれ射出する複数の錘射出機構と、
を有する網射出装置の設計方法であって、
前記網の形状と当該網を形成する紐の直径dを決定するステップと、
前記決定した網の形状から前記紐の全長Lallを算出するとともに、前記直径dから当該紐の断面積Aを算出し、前記全長Lallに前記断面積Aを乗じて前記網の体積Vstrを算出するステップと、
前記網収容凹部の体積Vを、前記網の体積Vstrを所定の充填率pで除算した値に設定するステップと
を含む、網射出装置の設計方法。
【請求項9】
網射出方向に開口した網収納凹部を備えた装置本体と、
前記網収納凹部に収容され、捕獲対象物を捕獲するための網と、
前記網の外周のそれぞれの箇所に取付けられた複数の錘と、
前記装置本体に設けられ、前記複数の錘を、前記網射出方向から所定角度Θで広がる放射状の方向に、バネを用いてそれぞれ射出する複数の錘射出機構と、
を有する網射出装置の設計方法であって、
前記捕獲対象物の大きさを想定するステップと、
前記想定した対象物の大きさに基づいて前記網の中心から当該網の外周までの距離Rを設定するステップと、
捕獲時の前記装置本体から前記捕獲対象物までの距離Dを設定するステップと、
前記設定した距離R及び距離Dに基づいて前記所定角度Θを式Θ=tan-1(D/R)で算出した値に設定するステップと
を含む、網射出装置の設計方法。
【請求項10】
請求項1の網射出装置を宇宙航行体に搭載し、当該網射出装置から宇宙デブリに向けて網を射出し、宇宙デブリに絡ませて当該宇宙デブリを捕獲し、前記宇宙航行体ごと大気圏に突入させて除去する、宇宙デブリの除去方法。
【請求項11】
請求項1の網射出装置を宇宙航行体に搭載し、当該網射出装置から宇宙デブリに向けて導電性テザー付きの網を射出し、当該宇宙デブリに絡ませて前記網射出装置から放すことにより、当該宇宙デブリを、当該導電性テザーに加わるローレンツ力で失速させ、大気圏に突入させて除去する、宇宙デブリの除去方法。
【請求項12】
請求項1の網射出装置を航空機に搭載し、当該網射出装置から不審飛行体に向けて網を射出し、当該不審飛行体に絡ませて、当該不審飛行体捕獲する、不審飛行体の捕獲方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網射出装置、網発射装置の設計方法及びこれを用いた宇宙デブリや不審飛行物体を捕獲・処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、宇宙空間の地球を周回するゴミ、いわゆる宇宙デブリは、万一宇宙船や宇宙ステーションと衝突すると深刻な損害をもたらすので、その除去が課題になっている。
ドローンも、安価な無人航空機としての応用が進み、飛行禁止区域を不正な目的で飛行させたり、無人兵器として攻撃に使われたりする場合もある。このようなドローンを含む不審飛行体の捕獲と無効化が課題になっている。
【0003】
宇宙デブリや不審飛行体を捕獲する方法として、ロボットアーム、ハプーン、テザーネット(網)が研究されており、テザーネット(網)を用いた対象物体の捕獲システム・装置は、防犯装置、ドローン捕獲システムとして、いくつかの文献で特許化されている(特許文献1~5)。また、宇宙デブリ捕獲実験が欧州で行われている。
【0004】
対象物体捕獲用の網射出装置は、収納箱に収納した網の周囲にいくつかの錘を装着し、対象物体からある程度の距離離れた所から錘・網を収納箱から射出し、網を対象物体に絡ませることにより、対象物体を捕獲・拘束することを意図したものである。網の広さが対象物体に比べ十分に広い場合、対象物体を容易に捕獲・拘束できる利点を有する。
【0005】
網射出装置を実現するためには、網、網を収納するための収納箱・ケース、網の外周の数か所または網の外周の数か所に装着した紐の先端に取り付けた錘、網を前方へ放射状に射出し、網を展開するための射出機構が必要である。
【0006】
網を前方へ射出するための力を生み出す方法としては、弾薬による方法(特許文献1)や、射出用ガスを使用する方法 (特許文献2)、バネを使用する方法(特許文献4,5)が提案されている。網を展開する機構としては、錘を前方に射出するための火薬とは別の火薬により錘を放射方向に拡散させたり(特許文献1,2)、網射出前の飛翔体を回転させて、その遠心力で錘を放射方向に拡散させたり(特許文献4)、漏斗型のガイドを用いて錘を拡散させたり(特許文献5)している。また、錘の固定・解放手段としては、ソレノイドコイルを通電させて錘を固定する方式が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-513089号公報
【特許文献2】特開2021-063616号公報
【特許文献3】国際公開第WO2018/016017号
【特許文献4】米国特許第10197365号
【特許文献5】特開2016-215874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記既存の網射出装置のうち、網の射出や展開に高圧ガスや火薬を利用する網射出装置では、宇宙での扱いが難しく、地上で使用する場合も、充填や交換が容易でなく、再利用も困難であるという問題がある。このため、特許文献4、5の装置などでは、バネを網の射出手段として用いているが、網の展開については、さらに安定性を向上させることが望ましい。
また、錘の固定・解放に従来のソレノイドコイルを使用する方式は、常時通電が必要なので、ロケットから切り離されるまで電源が入らない宇宙航行体には搭載困難で、不審飛行体の捕獲目的でドローンに搭載する場合、ドローンの電池の容量を消費してしまうという問題もある。
【0009】
また、既存の網射出装置は、網の射出口を塞いだ蓋形状の物体を網射出時に同時に切り離すため、宇宙空間で使用する場合、宇宙デブリを新たに発生させる問題を有する。この問題を防ぐために、蓋を網の一部に接続した状態で射出する場合、作用する力に片寄りが生じ、網が均等に展開しない問題点を有する。
【0010】
宇宙デブリの大きさは大小さまざまであると考えられる。必要な網の広さ、および網目の間隔は捕獲対象の大きさに依存し、網収納のための収納空間体積は網目の間隔、網の一辺の長さ、網の線の太さ、網の収納効率に依存する。さらに、対象物体を確実に捕獲できるよう網が十分に展開された状態に至るまでに要する移動距離は錘の射出角度に依存し、網収納空間体積は錘の射出角度を決めるガイドの角度に依存する。宇宙で使用する場合、重量・体積は小さいことが望ましく、対象物体に網が衝突するときに網が十分に展開された状態であることが捕獲対象の確実な捕獲のために必要なことである。従って、捕獲対象に応じた適切な諸元を選択し、軽量かつ小型の装置を作成しなければならないが、単純な線形関係ではないため、適切な装置諸元を容易に決めることができない問題点を有する。
【0011】
(発明の目的)
本発明は、上記課題を解決するために成されたものであり、バネを用いて網を均等に展開するように射出でき、宇宙でも新たな宇宙デブリを発生させずに使用できるとともに、宇宙航行体や航空機に搭載しやすい小型化された網射出装置及びこの網射出装置の適切な諸元を決める設計方法を提供すること、さらにこれを用いた宇宙デブリや不審飛行物体を捕獲・処理する方法を提供することを目的とする。
【0012】
本発明のさらに他の目的および利点は、一部は明白であり、一部は明細書および図面から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の網射出装置は、
網射出方向に開口した網収納凹部を備えた装置本体と、
前記網収納凹部に収容され、捕獲対象物を捕獲するための網と、
前記網の外周のそれぞれの箇所に直接または、紐を介して取付けられた複数の錘と、
前記装置本体に設けられ、前記複数の錘を、前記網射出方向から所定角度で広がる放射状の方向に、バネを用いてそれぞれ射出する複数の錘射出機構と、
外部からの信号に応じて前記複数の錘射出機構を作動させるアクチュエータと、
を有し、
前記複数の錘射出機構が前記複数の錘を射出することにより、当該錘に接続された前記網を前記網収容凹部から前記網射出方向に射出して展開するように構成されたことを特徴とする。
この構成により、錘を放射状の方向等に射出するので、網を確実に均等に展開させることができる。また、錘の射出手段としてバネを用いたため、火薬や高圧ガスが不要で宇宙空間のような過酷な場所でもより扱いやすいという利点を有する。
【0014】
前記網射出装置は、射出した後の前記網を前記装置本体に係留するための紐をさらに有することが好ましい。
この構成により、捕獲した対象物を網係留装置に確保することができる。
【0015】
各前記複数の錘は略円柱状を有し、
各前記複数の錘射出機構は、一端部に射出口を有し内部に前記錘を保持する略筒状のガイドと、前記ガイドの内部の他端部側に配置されて前記錘を射出口方向に付勢するバネと、前記錘を係止するストッパーと、を含み、
前記ストッパーによる前記錘の係止は、前記アクチュエータによって解除され、それにより前記錘が前記バネによって前記射出口から射出されるように構成されている、ことが好ましい。
この構成により、錘を係止するストッパーを用いたので、係止を解除するアクチュエータとして様々なものが使用でき、上記の常時通電方式のソレノイドコイルを使用する必要がなく、宇宙航行体やドローン等の航空機に搭載しやすくなる。
【0016】
前記アクチュエータは、全ての前記ストッパーを固定する一本の締結線と、当該締結線を切断する切断装置を含み、前記切断装置を作動させて前記締結線を切断することにより、各ストッパーによる錘の係止を同時に解除して、錘を同時に射出するように構成されていることが好ましい。
この構成により、簡単な構造で、複数の錘を同時に射出させることができ、網を均等に展開することができる。
【0017】
前記バネは、前記ガイドの内部に、前記他端部側から挿入して配置できるようになっている、ことが好ましい。
この構成により、錘を固定した状態でバネの挿入が錘射出口の逆方向から行うことができるので、バネの圧縮・固定作業および交換作業を容易に行うことができる。
【0018】
前記網収納凹部を覆う蓋をさらに有し、当該蓋は、前記複数の錘と同数の分離した小部分からなり、各小部分は、各錘と一体的に射出されるように構成されていてもよい。
この構成により、蓋の各小部分は錘や網と接続されているので、蓋が新たなデブリとなることがない。また、各小部分は錘と一体的に射出されるので、作用する力に片寄りが生ずることがなく、網を均等に展開することができる。
【0019】
代替として、前記網収納凹部を覆う蓋をさらに有し、当該蓋は、ヒンジ部分を介して装置本体に枢支され、前記網の射出時に前記網収容凹部を開放するように構成されていてもよい。
この構成により、蓋が装置本体から離れることがないので、新たなデブリを発生させることがない。
【0020】
本発明の網射出装置の設計方法は、前記網射出装置を設計する方法であって、
前記網の形状と当該網を形成する紐の直径dを決定するステップと、
前記決定した網の形状から前記紐の全長Lallを算出するとともに、前記直径dから当該紐の断面積Aを算出し、前記全長Lallに前記断面積Aを乗じて前記網の体積Vstrを算出するステップと、
前記網収容凹部の体積Vを、前記網の体積Vstrを所定の充填率pで除算した値に設定するステップと、を含む方法である。
この設計方法により、網収容凹部の体積を必要十分な値とすることができ、網射出装置を極力小型化できるので、宇宙航行体や航空機に取付けて使用するのに適したものとすることができる。
【0021】
本発明の網射出装置の設計方法は、前記網射出装置を設計する方法であって、
前記捕獲対象物の大きさを想定するステップと、
前記想定した対象物の大きさに基づいて前記網の中心から当該網の外周までの距離Rを設定するステップと、
捕獲時の前記装置本体から前記捕獲対象物までの距離Dを設定するステップと、
前記設定した距離R及び距離Dに基づいて前記所定角度Θを式Θ=tan-1(D/R)で算出した値に設定するステップと、を含むものであってもよい。
この方法で設計された網射出装置では、捕獲対象物に到達する直前に網が十分に展開するので、捕獲対象物を捕獲しやすくなる。
【0022】
本発明の宇宙デブリの処理方法は、上記の網射出装置を宇宙航行体に取付け、当該網射出装置から宇宙デブリに向けて網を射出し、宇宙デブリに絡ませて当該宇宙デブリを捕獲し、前記宇宙航行体ごと大気圏に突入させて除去することを特徴とする。
【0023】
本発明の宇宙デブリの他の処理方法は、上記の網射出装置を宇宙航行体に取付け、当該網射出装置から宇宙デブリに向けて導電性テザー付きの網を射出し、当該宇宙デブリに絡ませて前記網射出装置から放すことにより、当該宇宙デブリを、当該導電性テザーに加わるローレンツ力で失速させ、大気圏に自然落下させて除去することを特徴とする。
【0024】
本発明の不審飛行体の捕獲方法は、上記の網射出装置を航空機に取付け、当該網射出装置から不審飛行体に向けて網を射出し、当該不審飛行体に絡ませて当該不審飛行体捕獲することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれは、網に取付けた複数の錘を、網射出方向から所定角度で広がる放射状の方向に、バネを用いてそれぞれ射出する複数の錘射出機構を設けたので、取り扱いが容易で、網を均等に展開するように射出できる。また、本発明の実施形態では、錘射出機構に錘を係止するストッパーを設けることにより、従来の常時通電式ソレノイドが不要で、宇宙航行体や航空機に搭載しやすくなる。また、網収納凹部を覆う蓋を、錘と一体化するか、装置本体に枢支して開閉する構造にすることにより、新たな宇宙デブリ発生を防ぐことができる。また、網収容凹部の体積を、網の体積と所定の充填率から決定する設計方法により、小型化して宇宙航行体や航空機に搭載しやすい網射出装置を提供することができる。その結果、宇宙デブリや不審飛行体等を捕獲する性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明をより完全に理解するために、以下の説明および添付の図面を参照する。
図1】本発明の実施形態の網射出装置の一例を示す断面図。
図2図1の網射出装置の本体構造体を示す斜視図。
図3図1の網射出装置の錘射出機構を示す概略図。
図4】バネ固定板を示す概略図。
図5】錘ストッパーと通常型の錘を示す概略図。
図6】錘ストッパーを固定・解放するための固定用締結線の経路を示す図。
図7】錘ストッパーの回転角度を示す図。
図8】錘射出機構の動作を示す図。
図9】蓋つき錘を示す概略図。
図10】本体構造に取り付けられた通常型の開閉蓋を示す図。
図11】網の形状の説明図であり、(a)は正方形の網、(b)は蜘蛛の巣状の網を示す。
図12】展開完了時の網と捕獲対象まで距離と錘射出角度との関係を示す説明図。
図13】本発明の網射出装置により宇宙デブリを処理する第1の方法を示す説明図。
図14】本発明の網射出装置により宇宙デブリを処理する第2の方法を示す説明図。
図15】本発明の網射出装置により不審飛行体を捕獲する方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の網射出装置について、図面を用いて説明する。
【0028】
図1は網射出装置の一例を示す断面図、図2はガイド固定のための本体構造体を上部から見た斜視図である。網射出装置10は、本体構造体11、錘射出機構20、網収納ケース30、錘40(蓋つき錘40A)、網係留用テザー接続支柱50、網60を有する。尚、本体構造体11と網収納ケース30を合わせて「装置本体」とも呼び、網収納ケース内部を「網収納凹部」とも呼ぶ。
【0029】
(本体構造体)
図2に示すように、本体構造体11は網射出開口部11aを有し、網射出開口部11a側から見て、錘の数(n)に応じて正n角柱、またはほぼ円筒形である。ただし、ほぼ円筒形の場合、開閉蓋が取り付け可能な辺を有する。本体構造体11は側面に側面中央支柱11bを有する。本体構造体11には内部空間があり、網収納ケース30(図1参照)が底面中央に設置されている。本体構造体11の形が正n角柱の場合、正n角形の角部分の内側に錘射出機構20(図1参照)が設置されており、本体構造体11の形が円筒形の場合、円中心等角度で円筒形内側に錘射出機構20が設置されている。
【0030】
本体構造体11の上部内周部分には、錘ガイド21上部(図3参照)を本体構造体11に固定するための治具形状部11dがあり、中央には穴11eがあり、錘の射出口を兼ねている。治具形状部11dの穴11e内部には錘ガイド21の向きを指定するためのキー(図示省略)があり、また上部には錘40と網60を締結している紐61(図11参照)を錘ガイド21へ誘導するための溝11fが上部にある。
【0031】
本体構造体11の底面部分には、錘ガイド21を挿入するための穴11gがあり、穴を塞ぐ板を取りつけるための窪み(図示省略)が本体構造体11の底面裏側に設けられている。
【0032】
本体構造体11の上部内周部分の治具形状部11dの穴11eおよび底面部分にある錘ガイド21挿入のための穴11gの中心線は、本体構造体11の底面中央から上部に向かう方向に対し、放射状に傾斜角Θが付けられている。これは錘40を放射状に射出し、網60を展開するためである。
【0033】
(錘射出機構)
錘射出機構20は、図3に示すように、錘ガイド21、圧縮バネ22、バネ固定板23、錘ストッパー24、ストッパー台座25、からなり、作動アクチュエータとしてのストッパー固定用締結線26(以後、締結線26と呼ぶ)及び締結線切断装置27とともに使用される。
【0034】
錘ガイド21は薄い板厚の円筒状をしており、側面の一部に錘ストッパー24の一部を通すための窓21aが設けられている。また、錘ガイド21の上部と下部に切欠き(図示省略)が設けてあり、錘ガイド21の側面の窓21aの向きが、本体構造体11の内部において外周方向の向きに定まるように、本体構造体11の治具形状部11d(図示省略)に設けられたキー部分(図示省略)に填め込まれる。
【0035】
圧縮バネ22はバネ固定板23に片側が固定された状態で錘射出口21bの反対側から錘ガイド21の円筒内部に挿入される。
【0036】
バネ固定板23には、図4に示すように、圧縮バネ22を装着するための穴23aがあり、穴に圧縮バネ22の片側の一部を挿入することで圧縮バネ22をバネ固定板23に固定する。
【0037】
バネ固定板23には、圧縮バネ22を固定する側に傾斜角度Θの斜面23bがあり、斜面23bはバネ固定板23が本体構造体11へ固定された状態で外側へ傾いている。
【0038】
バネ固定板23には錘ガイド21の下部に設けられた切り欠き部分(図示省略)に填まり込むキー23cおよび本体構造体11へ固定するためのボルト穴23dがあり、バネ固定板23は本体構造体11の底面裏側の窪み部分11h(図1参照)にボルト固定される。
【0039】
錘ストッパー24は、図5に示すように、カム形状で枢支部分24aを有し、図3に示すように、枢支部分24aで回転可能にストッパー台座25に枢支される。但し、錘ストッパー24の形状はこれに限られず、ロッド形状部分を有するもので、ストッパー台座25に平行移動可能に装着されていてもよい。
【0040】
錘ストッパー24の一部は錘ガイド21の窓21aを通過して錘ガイド21内部に挿入され、錘ガイド21に沿って圧縮された圧縮バネ22の上部に置かれた錘40をその位置で保持し、圧縮バネ22の反発エネルギーを蓄える。
【0041】
カム形状の錘ストッパー24は枢支部分24aで回転し、圧縮バネ22を圧縮、圧縮状態を解放できる角度の範囲を回転することができる。尚、前記ロッド形状の錘ストッパー(図示省略)の場合は圧縮バネ22の圧縮状態を維持および解放できる位置の範囲でストッパー台座25に対し水平移動できる。
【0042】
錘ストッパー24は、錘ガイド21の窓21aを通過して錘ガイド21内部に挿入され、圧縮バネ22を圧縮した状態での錘40の位置を保持した状態のとき錘40に接する面24bを有し、その面24bの法線方向は錘ガイド21の円筒の中心軸と平行である。尚、平行移動するロッド形状の錘ストッパー(図示省略)の場合は、錘ガイド21の窓21aを通過して錘ガイド21に内部に挿入される部分はロッド形状をしている。
【0043】
ストッパー台座25には錘ストッパー24の回転を可能にする枢支保持部25aが設けられている。尚、ロッド形状の錘ストッパー(図示省略)の場合は、平行移動を可能にするスライド部がストッパー台座25に設けられている。枢支保持部25aの回転軸は、錘ガイド21の円筒の中心軸に対し垂直であり、かつ、正n角柱の本体構造体11の中心から頂点に向かう線に垂直または円柱形状をした本体構造体11の円中心から外部へ向かう線に対し垂直である。尚、水平移動するロッド形状の錘ストッパー(図示省略)の移動方向は、正n角柱の本体構造体11の中心から頂点に向かう線に対し平行または円柱形状をした本体構造体11の円中心から外部へ向かう線に対し平行である。
【0044】
ストッパー台座25は錘ガイド21の外側に隣接した位置で、本体構造体11の底面にボルト固定される。
【0045】
錘ストッパー24は、圧縮バネ22の圧縮状態での錘40の位置を保持するための角度・位置で、一本の締結線26で固定される。
【0046】
錘ストッパー24は、締結線26を通すための穴24cを有する。錘ストパー24は、代替として、締結線26を引っ掛けるための馬蹄形状部を有してもよい。
【0047】
締結線26は、図6に示すように、全ての錘ストッパー24が圧縮バネ22を圧縮し錘40を定位置に保持できる長さで、網射出機構20と本体構造体11の側面中央支柱11bの外側を交互に経由するような経路で敷設されている。
【0048】
締結線26には、例えば、太さ1mm程度のナイロンテグスを用いる。締結線26は、本体構造体11の側面中央支柱11bに設置された締結線切断装置27の中を通り、3つの締結線ガイド28a~28cに沿って敷設され、締結線26の両端は締結線ガイド28bの部分で固定されている。この締結線ガイド28a~28cは、ストッパー24解放時に締結線26の下方向への動きを妨げない緩やかな凹部を有し、ストッパー24固定時には締結線26はこの凹部に位置決めされる。
【0049】
締結線切断装置27の内部にはニクロムコイルが内蔵されており、直流電流を流すことにより発熱し、発熱した熱で締結線26を溶断する。尚、締結線切断装置27は締結線26を溶断する方式のものに限られず、例えば、ソレノイド又はモータ駆動の刃物を用いて締結線26を切断する方式のものでもよい。
【0050】
締結線26が締結線切断装置27により溶断されると、全てのカム形状の錘ストッパー24の枢支部分24aまわりの回転固定が解除される。その結果、図7及び図8に示すように、各錘ストッパー24は、錘40を介した圧縮バネ22の押圧力により図7に示すように枢支部分24aまわりに90度回転し、圧縮バネ22の圧縮を解放する。尚、ロッド形状の錘ストッパー(図示省略)の場合は、締結線26の溶断により、水平移動固定が解除され、ロッド形状の錘ストッパーはスライドして、圧縮バネ22の圧縮を解放する。
【0051】
圧縮状態が解放された圧縮バネ22は、図8(c)に示すように錘ガイド21に沿って錘40を押し、錘ガイド21の錘射出口21bから錘40を射出する。
【0052】
(網収納ケース)
網収納ケース30は、図1に示すように、外形が正n角錐台または円錐台形状をしており、狭いテーパー側が底面、広いテーパー側が網射出口30a側であり、内側がカップ状の形状をしており、内側に網60を収納するための空間がある。正n角錐台の形をした網収納ケース30を、対称位置にある角および対称軸を含む面で切断した断面で見た場合、側面同士のなす角は2Θであり、円錐台の形状をした網収納ケースの側面の頂角は2Θである。
【0053】
網収納ケース30は網射出口30a側を上方に向いた状態で、正n角錐台の形をした網収納ケース30の場合は底面の角が射出機構20の錘ガイド21に隣接するように底面側で本体構造体11の底面中央にボルト固定され、円錐台の形をした網収納ケース30の場合、底面側で本体構造体11の底面中央にボルト固定される。
【0054】
(蓋の選択)
網60の広さが広くなく、本体構造体11の大きさが小さく、網収納ケース30の網射出口30aの面積が小さい場合(例えば100cm2以下の場合)、網60を牽引・展開するための錘40には、網収納ケース30の網射出口30aを塞ぐ役目を担う蓋をつけ、蓋つき錘40A(図9参照)と呼ぶことにする。
【0055】
一方、網の広さが広く、本体構造体11が大きく、網収納ケース30の網射出口30aの面積が大きい場合には(例えば100cm2以上の場合)、蓋つき錘40Aの構成とはせず、別途、網収納ケース30の網射出口30aを塞ぐ蓋を設ける。以後、開閉蓋45(図10参照)と呼ぶことにする。また、蓋をつけない錘は蓋なし錘40Bとも呼ぶことにする。
【0056】
(蓋つき錘)
蓋つき錘40Aは、図9に示すように、錘本体41と蓋42から構成される。錘本体41は錘ガイド21の円筒内部に入り、錘ガイド21内を移動可能な隙間ができる直径の円柱形状をしており、錘本体41と網60とを締結するための紐61(図11参照)を結線するための穴41a、および圧縮バネ22が圧縮された状態での位置にて錘ストッパー24により錘40Aの位置を保持できるための溝41bを側面に有する。また蓋つき錘40Aの錘本体41の上部面は蓋を取り付けるために傾斜角Θの斜面となっており、蓋42を取り付けるためのボルト穴(図示省略)を有する。
【0057】
蓋つき錘40Aの蓋42は、網収納ケース30の網射出口30aを覆うため、扇型または二等辺三角形状の部分を有し、扇型の中心角と二等辺三角形の頂角α[rad]の大きさは、錘40Aの数(n)に応じて次式で与えられる。
【数1】
【0058】
網収納ケース30が円錐台形状の場合、網射出口30aを塞ぐことができるよう、蓋つき錘40Aの蓋42の扇型の半径は円形の網収納ケース30の網射出口30aの半径と等しい、もしくはやや大きいものとする。また、蓋42の扇型の部分の外側には錘本体41に接続するための長方形状の部分42aが存在する。
【0059】
網収納ケース30が正n角錐台形状の場合、網射出口30aを塞ぐことができるよう、蓋つき錘40Aの蓋42の二等辺三角形部分の底辺の長さは、網収納ケース30の上面側である正n角形の1辺長さと等しい、もしくはやや大きいものとする。また、蓋42の二等辺三角形部分の底辺側には錘本体41に接続するための長方形状の部分42aが存在する。
【0060】
蓋つき錘40Aの蓋42は薄い板であり、その板厚は1mmから2mm程度である。蓋42には錘40Aにボルト固定できる穴(図示省略)があけられている。蓋つき錘40Aの蓋42には、蓋つき錘40Aの重心位置が錘本体41の円柱中心軸に一致するよう、カウンター質量43が蓋42の上面、外側に取り付けられている。
(蓋なし錘)
【0061】
蓋なし錘40Bは、図5(b)に示すように、錘ガイド21の円筒内に挿入したときに僅かな隙間ができる直径の円柱形状部分40aとその上側の二面取り部分40bからなる。この二面取り部分40bの面取り面に平行に、上端面からスリ割り溝40cが設けられており、錘ストッパー24がスリ割り溝40cに入ることで錘40Bの錘ガイド21内での位置が固定される。また、二面取り部分40bは、網60に係留する紐61(図11参照)を締結するための穴40dを有する。
【0062】
(開閉蓋)
開閉蓋45は、図10に示すように、薄い板形状をしている。本体構造体11の外形がn角柱の場合、開閉蓋45は正n角形の形状をしており、本体構造体11の外形が円柱形の場合、ほぼ円形の形をしており、開閉のためのヒンジ46を取り付けるための辺を一部に有する。
【0063】
開閉蓋45はヒンジ46で本体構造体11に接続され、ヒンジ46には回転バネ47が取り付けられており、180度回転可能である。開閉蓋45を閉じて、網射出口30aを覆ったとき、回転バネ47は圧縮される方向である。
【0064】
開閉蓋45には蓋固定用締結線48を締結するための穴45aがあけられている。開閉蓋45は、閉じて網射出口30aを覆った状態で、蓋固定用締結線48で固定される。蓋固定用締結線48には太さは1mm程度のナイロンテグスを用いる。蓋固定用締結線48は本体構造体11の側面中央支柱11bの内側に設置された蓋固定用締結線切断装置49の中を通る。
【0065】
蓋固定用締結線切断装置49の内部にはニクロムコイルが内蔵されており、直流電流を流すことにより発熱し、発熱した熱で蓋固定用締結線48を溶断することで、回転バネ47の回転力により開閉蓋45を開く。
(網係留用テザー接続支柱)
【0066】
網係留用テザー接続支柱50は、図1に示すように、細い中空円柱の形をしており、下側にはネジ山が切ってあり、本体構造体11へ固定される。上部外側には、本体構造体11へ固定する際、レンチで回転できるよう、六角の形状が施されている。網係留用テザー接続支柱50の中空部分を通して、網係留用紐51が本体構造体11の底面に締結されている。
【0067】
(網)
網60の素材は、例えば、ケブラー(登録商標)を使用する。網60は正方形の格子状(以下、単に「正方形」ともいう)もしくは正n角形の蜘蛛の巣状(以下、単に「蜘蛛の巣状」ともいう)とする。網目の間隔(δ)は捕獲対象の最小一辺の長さの半分程度とする。網目の結び目は解けないように二重つなぎで作成する。網60の外周には網60の中心から見て等角度に放射状に紐61がn本接続してあり、蓋つき錘40Aの穴41aまたは蓋なし錘40Bの穴40dに紐61を通過させ、網60に接続している。紐61の長さは網目の間隔1つまたは2つ分程度である。
【0068】
(網のサイズ決定方法)
以下、図11(a)に示す正方形の網60でもって説明する。網目の間隔をδ、間隔の個数をkとすると、網60の一辺の長さLは次で与えられる。
【数2】
【0069】
網60を形成するための紐の本数は縦紐に(k+1)本、横紐(k+1)本であり、合計2(k+1)本の紐が必要となる。よって、網を形成するための紐の長さの合計Lallは、結び目に要する長さを無視すれば、次式で与えられる。
【数3】
【0070】
網60の紐の直径をdとすると、紐の断面積Aは次式で与えられる。
【数4】
【0071】
従って、正方形の網60を形成する紐の体積Vstrは次式で与えられる。
【数5】
【0072】
一方、網収納ケース30の網60を収容する空間の体積をV(以後、収容体積と呼ぶ)とする。収容体積Vを紐の体積Vstrと同じにすると、収容する空間に完璧に網60を充填するのは不可能であり、また、網同士や網と収納ケース側面との摩擦力が作用することを考慮すると、錘40を射出し、網を網収納ケース30から牽引して展開するためには、網を網収納ケース30内で空間を持たせて収納した方がよい。ここでは収容体積Vに対する紐の体積Vstrの割合を充填率pと定義する。
【数6】
【0073】
今、便宜上、以下のように定義する
【数7】
【数8】
【0074】
網60を網収納ケース30内に充填率pで収納する場合、次の等式が成り立つ。
【数9】
【0075】
網収納ケース30の収容体積V、充填率p、網の紐の直径をd、および網目の間隔δが与えられたとき、正方形の網の一辺の長さLは、式(9)の2次方程式を解くことで次で与えられる。なお、負の値を与える式は網を形成する一辺の長さLとして不適切であるので除外してある。
【数10】
収容体積Vが十分に大きい場合、式(10)は大よそ次式のように近似できる。
【数11】
【0076】
次に、蜘蛛の巣状の網の場合について、図11(b)に示した文字を用いて説明する。蜘蛛の巣状の網は正n角形をしており、頂点と網の中心点Oを結ぶ紐62、頂点の中点Mと網の中心点を結ぶ縦紐63、頂点を結ぶ横紐64および外周正n角形を相似に小さくした形状を形成するための横紐65から形成される。今、網のn分の1の二等辺三角形部分を(1/n)網部分と呼ぶことにする。
【0077】
紐62の長さをLとする。二等辺三角形部分の頂角は式(1)と同じく、αである。このとき、紐64の長さL’は次式で与えられる。
【数12】
また、縦紐63の長さL”(1/n)は次式で与えられる。
【数13】
縦紐63を均等にk分割した個所に横紐65を結ぶとする。このとき、横紐65同士の間隔δは、次の式となる。
【数14】
【0078】
網の中心点からj番目の横紐65の長さL’は相似関係から
【数15】
で与えられる。(1/n)網部分には1本の横紐64と(k-1)本の横紐65があり、長さの合計は次式で与えられる。
【数16】
【0079】
網60の全体は(1/n)網部分がn個集合したものである。従って、蜘蛛の巣状の形をした網60を形成する紐の総長さLallは次の式で与えられる。
【数17】
【0080】
紐の断面積Aは式(4)で与えられるので、蜘蛛の巣状の網の体積Vstrは次式で与えられる。
【数18】
【0081】
正方形の網の場合と同様に、網60は網収納ケース30の収容体積V内に充填率pで収納する場合、次の等式が成り立つ。
【数19】
従って、正n角形の蜘蛛の巣状の網60を直径dで作成し、収容体積Vの網収納ケース30に充填率pで収容しようとした場合、(1/n)網部分の紐62の長さLは次式で決定される。
【数20】
【0082】
(網収納ケースの収納体積の計算方法)
網収納ケース30の収容体積Vの計算方法について説明する。
【0083】
まず、正n角錐台の場合について説明する。網収納ケース30の収納部深さをh、収納部底面の正n角形の一辺の長さをrとする。このとき、底面の正n角形の頂点と底面の中心点の間の距離r’は
【数21】
また、底面の面積Sは
【数22】
で与えられる。
網収納ケース30は錘ガイド21に沿って、傾斜角Θのテーパーが付いているので、網射出口側の面積S’は
【数23】
で与えられる。
【0084】
幾何的な関係を考え、網収納ケース30の収容体積Vは次式で与えられる。
【数24】
【0085】
次に円錐台形状の網収納ケース30の場合を説明する。網収納ケース30の収納部の底面の半径をrcirとすると、底面の面積Scirは次式となる。
【数25】
網収納ケース30は錘ガイド21に沿って、傾斜角Θのテーパーが付いているので、網射出口側の面積S’cirは次式となる。
【数26】
網収納ケース30が円錐台形状の場合、収容体積Vは次式で与えられる。
【数27】
【0086】
(捕獲対象物体までの適正な距離)
図12は、展開完了時の網と捕獲対象まで距離と錘射出角度との関係を示す説明図で、(a)が正方形の網、(b)が蜘蛛の巣状の網の場合を示す。
網60の広さ、錘41の射出角度Θを定めた場合、捕獲対象物体を網で捕獲する直前に網60が十分に展開完了していることが望ましい。そのためには捕獲対象物体までの適正な距離が必要である。ここでは捕獲対象物体までの適正な距離を決定する方法について説明する。
捕獲対象物体までの距離をDとする。網60に紐61でもって接続された錘40が射出角度Θで射出され、射出角度Θを維持したまま移動し、網60を展開すると仮定すると、距離Dだけ離れた位置で展開途中の網60の外周(錘40の位置)と網中心との距離Rはおよそ次の式で評価できる。
【数28】
展開が完了した網60の外周と網中心との距離Rは、網60が正方形の場合、R=(√2/2)Lであり、蜘蛛の巣状の網60の場合、紐61の長さをLと同じ、つまり、R=Lと考えることができる。従って、捕獲対象物体までの適正な距離Doptはおよそ次のように設定できる。
正方形の網60の場合
【数29】
ただし、Lは正方形の一辺の長さである。
蜘蛛の巣状の網60の場合
【数30】
ただし、Lは正n角形の蜘蛛の巣状の網60の対角頂点間の距離の半分の長さである。
【0087】
(適正な射出角度)
捕獲対象物体までの距離Dと網60の代表長さLを決めた場合、式(28)(29)(30)を考慮することで適正な射出角度Θoptは次のように決定できる。
正方形の網60の場合
【数31】
蜘蛛の巣状の網60の場合
【数32】
【0088】
提案された構造は、複数の圧縮バネ22の圧縮力の解放が同時に行え、錘40および網の射出方向の精度を向上させるとともに、バネの使用により再利用が容易であり、低コスト化に寄与する。
【0089】
捕獲対象の大きさに比べ、網60の広さがある程度十分に大きい場合、捕獲に問題は生じにくいが、適切な網60の広さ、網目の間隔、錘の射出角度、捕獲対象の大きさ、捕獲対象までの距離Dに依存する。また、網収納ケース30の体積および最適な網射出口30aの面積は、網60の広さ、網目の間隔δ、網の紐の直径dに依存する。
【0090】
したがって、本発明は、捕獲対象の大きさ、距離Dと、網収納ケース30に課された体積要件から、網60の広さ、網目の間隔δ、網の紐の直径d、錘の射出角度Θの関係に基づき、要素の最適な諸元を決定する方法、および決定された諸元を有する部品の配置を具体化するシステムを含む。それらすべて、以下の詳細な開示において例示されるとおりであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲に示される。
【0091】
(宇宙デブリの第1の処理方法)
本発明の宇宙デブリの第1の処理方法は、上記の網射出装置10を宇宙航行体に搭載し、当該網射出装置10から宇宙デブリに向けて網を射出し、宇宙デブリに絡ませて当該宇宙デブリを捕獲し、前記宇宙航行体ごと大気圏に突入させて除去する方法である。
図13は、この方法を概念的に示す図である。まず、本網射出装置10を搭載した宇宙航行体100を打ち上げ、地上からの制御等により対象とする宇宙デブリ110に接近させる。十分宇宙デブリ110に近づいた状態で、宇宙航行体100からの信号または地上からの信号に応じて、本網射出装置10のアクチュエータ(図示省略)を作動させ、各錘40を射出することにより、網60を射出し展開させる(図13(a))。網60は宇宙デブリ110に到達すると、この宇宙デブリ110に絡んでこれを捕獲する(図13(b))。捕獲した宇宙デブリ110は網係留用紐51により本網射出装置10を介して宇宙航行体100に繋がれているので、宇宙デブリ110ごと宇宙航行体100を地球Eの大気圏に突入させる(図13(c))ことにより宇宙デブリ110を焼却処理することができる。
宇宙デブリを宇宙航行体で捕獲して宇宙航行体ごと大気圏に突入させて除去する方法は、欧州連合によるRemoveDEBRIS計画で実証事件が行われているが、本発明の網射出装置は、この方法への応用が期待できる。
【0092】
(宇宙デブリの第2の処理方法)
本発明の宇宙デブリの第2の処理方法は、上記の網射出装置10を宇宙航行体に搭載し、当該網射出装置から宇宙デブリに向けて導電性テザー付きの網60を射出し、当該宇宙デブリに絡ませて前記網射出装置10から放すことにより、当該宇宙デブリを、当該導電性テザードに加わるローレンツ力で失速させ、大気圏に自然落下させて除去する方法である。
図14は、この方法を概念的に示す図である。まず、本網射出装置10の網60には、網係留用紐51の代わりに導電性テザー120を取付け、導電性テザー120の他端部は、任意の接続・切離し可能な手段を介して網射出装置10に接続しておく。次にこの網射出装置10を搭載した宇宙航行体100を打ち上げ、地上からの制御等により対象とする宇宙デブリ110に接近させる。十分宇宙デブリ110に近づいた状態で、宇宙航行体100からの信号または地上からの信号に応じて、本網射出装置10のアクチュエータ(図示省略)を作動させ、各錘40を射出することにより、網60を射出し展開させる(図14(a))。網60は宇宙デブリ110に到達すると、この宇宙デブリ110に絡んでこれを捕獲し、これにより宇宙デブリ110に導電性テザー120が装着される(図14(b))。この導電性テザー120を網射出装置10から切り離すことにより、宇宙デブリ110は導電性テザー120が装着された状態で放出される(図14(c))。このとき、地磁気の影響で導電性テザー120にローレンツ力が加わるため、これが装着された宇宙デブリ110は次第に失速して地球Eの大気圏に自然落下し、焼却されて消滅する。
この導電性テザーを用いた宇宙デブリ処理方法は、現在、宇宙航空研究開発機構等が開発中だが、本発明の網射出装置は、この方法への応用が期待できる。
【0093】
(不審飛行体の捕獲方法)
本発明の不審飛行体の捕獲方法は、上記の網射出装置10を航空機に搭載し、当該網射出装置から不審飛行体に向けて網を射出し、当該不審飛行体に絡ませて、当該不審飛行体を捕獲する方法である。
図15は、この方法を概念的に示す図である。まず、本網射出装置10を搭載した航空機200を、対象とする不審飛行体210に接近させる。この航空機200としては、ヘリコプタ等の有人航空機でも良いが、安全性の観点から大型ドローン等の無人操縦航空機(UAV)が好ましい。十分不審飛行体210に近づいた状態で、航空機200からの信号または地上からの信号に応じて、本網射出装置10のアクチュエータ(図示省略)を作動させ、各錘40を射出することにより、網60を射出し展開させる(図15(a))。網60は不審飛行体210に到達すると、この不審飛行体210に絡んでこれを捕獲する(図15(b))。捕獲した不審飛行体は網係留用紐51により本網射出装置10を介して航空機200に繋がれているので、安全な場所に移動して処理することができる。
【0094】
なお、本実施形態は、上述した実施例に限定されない。当業者であれば、本開示の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。
例えば、上記不審飛行体の捕獲方法では、網60を網係留用紐51で網射出装置10本体に係留して不審飛行体を捕獲したが、網60を網射出装置10本体に係留せずに射出して不審飛行体に絡ませて、これを飛行不能とし、無力化してもよい。
また、上記実施形態では、錘射出機構を作動させるために、ストッパーによる錘の係止を解除するアクチュエータとして、全ての前記ストッパーを固定する一本の締結線と、当該締結線を切断する切断装置を用いたが、これに限られず、常時通電方式でないソレノイドやモータ等他のアクチュエータを用いてもよい。
また、上記各実施形態では、網の形状として正方形の例と、正n角形の蜘蛛の巣状の例を示したが、本発明はこれに限定されず、長方形、辺の長さが同一でないn角形、略円形、略楕円形等、様々な形状の網を用いてもよい。
【符号の説明】
【0095】
10 網射出装置
11 本体構造体
11a 網射出開口部
11b 側面中央支柱
11d 治具形状部
11e 穴
11f 溝
11g 穴
20 錘射出機構
21 錘ガイド
21a 窓
21b 錘射出口
22 圧縮バネ
23 バネ固定板
23a 穴
23b 斜面
23c キー
23d ボルト穴
24 錘ストッパー
24a 枢支部分
24b 面
24c 穴
25 ストッパー台座
25a 枢支保持部
26 ストッパー固定用締結線(締結線)
27 締結線切断装置
28a~28c 締結線ガイド
30 網収納ケース
30a 網射出口
40 錘
40a 円柱形状部分
40b 二面取り部分
40c スリ割り溝
40d 穴
40A 蓋つき錘
40B 蓋なし錘
41 錘本体
41a 穴
41b 溝
42 蓋
42a 長方形状の部分
43 カウンター質量
45 開閉蓋
45a 穴
46 ヒンジ
47 回転バネ
48 蓋固定用締結線
49 蓋固定用締結線切断装置
50 網係留用テザー接続支柱
51 網係留用紐
60 網
61 紐
62 紐
63 縦紐
64 横紐
65 横紐
100 宇宙航行体
110 宇宙デブリ
112 導電性テザー
200 航空機
210 不審飛行体
E 地球


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2021-10-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
網射出方向に開口した網収納凹部を備えた装置本体と、
前記網収納凹部に収容され、捕獲対象物を捕獲するための網と、
前記網の外周のそれぞれの箇所に直接または、紐を介して取付けられた複数の錘と、
前記装置本体に設けられ、前記複数の錘を、前記網射出方向から所定角度で広がる放射状の方向に、バネを用いてそれぞれ射出する複数の錘射出機構と、
外部からの信号に応じて前記複数の錘射出機構を作動させるアクチュエータと、
を有し、
前記複数の錘射出機構が前記複数の錘を射出することにより、当該錘に接続された前記網を前記網収容凹部から前記網射出方向に射出して展開するように構成され
各前記複数の錘は略円柱状を有し、
各前記複数の錘射出機構は、一端部に射出口を有し内部に前記錘を保持する略筒状のガイドと、前記ガイドの内部の他端部側に配置されて前記錘を射出口方向に付勢するバネと、前記錘を解除自在に係止するストッパーと、を含み、
前記アクチュエータは、全ての前記ストッパーに挿通又は係合しながら巡回するように設けられて各前記ストッパーを前記錘を係止した状態で固定する一本の締結線と、当該締結線を切断する切断装置を含み、前記切断装置を作動させて前記締結線を切断することにより、各前記ストッパーによる各前記錘の係止を同時に解除して、各前記錘を各前記バネによって各前記射出口から同時に射出することを特徴とする、網射出装置。
【請求項2】
射出した後の前記網を前記装置本体に係留するための紐をさらに有する請求項1に記載の網射出装置。
【請求項3】
前記バネは、前記ガイドの内部に、前記他端部側から挿入して配置できるようになっている、請求項に記載の網射出装置。
【請求項4】
前記網収納凹部を覆う蓋をさらに有し、当該蓋は、前記複数の錘と同数の分離した小部分からなり、各小部分は、各錘と一体的に固定され、一体的に射出されるように構成されている、請求項1に記載の網射出装置。
【請求項5】
前記網収納凹部を覆う蓋をさらに有し、当該蓋は、ヒンジ部分を介して装置本体に枢支され、前記網の射出時に前記網収容凹部を開放するように構成されている、請求項1に記載の網射出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の網射出装置の設計方法であって、
前記網の形状と当該網を形成する紐の直径dを決定するステップと、
前記決定した網の形状から前記紐の全長Lallを算出するとともに、前記直径dから当該紐の断面積Aを算出し、前記全長Lallに前記断面積Aを乗じて前記網の体積Vstrを算出するステップと、
前記網収容凹部の体積Vを、前記網の体積Vstrを所定の充填率pで除算した値に設定するステップと
を含む、網射出装置の設計方法。
【請求項7】
請求項1に記載の網射出装置の設計方法であって、
前記捕獲対象物の大きさを想定するステップと、
前記想定した対象物の大きさに基づいて前記網の中心から当該網の外周までの距離Rを設定するステップと、
捕獲時の前記装置本体から前記捕獲対象物までの距離Dを設定するステップと、
前記設定した距離R及び距離Dに基づいて前記所定角度Θを式Θ=tan-1(D/R)で算出した値に設定するステップと
を含む、網射出装置の設計方法。
【請求項8】
請求項1の網射出装置を宇宙航行体に搭載し、当該網射出装置から宇宙デブリに向けて網を射出し、宇宙デブリに絡ませて当該宇宙デブリを捕獲し、前記宇宙航行体ごと大気圏に突入させて除去する、宇宙デブリの除去方法。
【請求項9】
請求項1の網射出装置を宇宙航行体に搭載し、当該網射出装置から宇宙デブリに向けて導電性テザー付きの網を射出し、当該宇宙デブリに絡ませて前記網射出装置から放すことにより、当該宇宙デブリを、当該導電性テザーに加わるローレンツ力で失速させ、大気圏に突入させて除去する、宇宙デブリの除去方法。
【請求項10】
請求項1の網射出装置を航空機に搭載し、当該網射出装置から不審飛行体に向けて網を射出し、当該不審飛行体に絡ませて、当該不審飛行体捕獲する、不審飛行体の捕獲方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の網射出装置は、
網射出方向に開口した網収納凹部を備えた装置本体と、
前記網収納凹部に収容され、捕獲対象物を捕獲するための網と、
前記網の外周のそれぞれの箇所に直接または、紐を介して取付けられた複数の錘と、
前記装置本体に設けられ、前記複数の錘を、前記網射出方向から所定角度で広がる放射状の方向に、バネを用いてそれぞれ射出する複数の錘射出機構と、
外部からの信号に応じて前記複数の錘射出機構を作動させるアクチュエータと、
を有し、
前記複数の錘射出機構が前記複数の錘を射出することにより、当該錘に接続された前記網を前記網収容凹部から前記網射出方向に射出して展開するように構成され
各前記複数の錘は略円柱状を有し、
各前記複数の錘射出機構は、一端部に射出口を有し内部に前記錘を保持する略筒状のガイドと、前記ガイドの内部の他端部側に配置されて前記錘を射出口方向に付勢するバネと、前記錘を解除自在に係止するストッパーと、を含み、
前記アクチュエータは、全ての前記ストッパーに挿通又は係合しながら巡回するように設けられて各前記ストッパーを前記錘を係止した状態で固定する一本の締結線と、当該締結線を切断する切断装置を含み、前記切断装置を作動させて前記締結線を切断することにより、各前記ストッパーによる各前記錘の係止を同時に解除して、各前記錘を各前記バネによって各前記射出口から同時に射出することを特徴とする。
この構成により、錘を放射状の方向等に射出するので、網を確実に均等に展開させることができる。また、錘の射出手段としてバネを用いたため、火薬や高圧ガスが不要で宇宙空間のような過酷な場所でもより扱いやすいという利点を有する。
また、この構成により、錘を係止するストッパーを用いたので、係止を解除するアクチュエータとして上記の常時通電方式のソレノイドコイルを使用する必要がなく、宇宙航行体やドローン等の航空機に搭載しやすくなる。
また、この構成により、簡単な構造で、複数の錘を同時に射出させることができ、網を均等に展開することができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
前記網収納凹部を覆う蓋をさらに有し、当該蓋は、前記複数の錘と同数の分離した小部分からなり、各小部分は、各錘と一体的に固定され、一体的に射出されるように構成されていてもよい。
この構成により、蓋の各小部分は錘や網と接続されているので、蓋が新たなデブリとなることがない。また、各小部分は錘と一体的に射出されるので、作用する力に片寄りが生ずることがなく、網を均等に展開することができる。