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特開2023-83469ヒト化プログラム細胞死1遺伝子を持つ非ヒト動物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083469
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】ヒト化プログラム細胞死1遺伝子を持つ非ヒト動物
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/027 20060101AFI20230608BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20230608BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20230608BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20230608BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230608BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20230608BHJP
   C12N 5/07 20100101ALN20230608BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALN20230608BHJP
【FI】
A01K67/027 ZNA
C07K14/705
C12N15/10 Z
C12Q1/02
C12N15/12
C12N5/10
C12N5/07
C12N5/0735
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023069178
(22)【出願日】2023-04-20
(62)【分割の表示】P 2021049567の分割
【原出願日】2015-06-19
(31)【優先権主張番号】62/014,181
(32)【優先日】2014-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/086,518
(32)【優先日】2014-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/138,221
(32)【優先日】2015-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】エレナ ブロバ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー オー. ムジカ
(72)【発明者】
【氏名】カ-マン ビーナス ライ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ジェイ. マーフィー
(57)【要約】
【課題】ヒト化プログラム細胞死1遺伝子を持つ非ヒト動物の提供。
【解決手段】非ヒト動物、ならびにそれを作成および使用するための方法および組成物が提供されており、ここで前記非ヒト動物はプログラム細胞死1(Pdcd1)遺伝子のヒト化を含む。一部の実施形態では、前記非ヒト動物が、ヒト部分および内因性部分(例えば、非ヒト部分)を含むPD-1ポリペプチドを発現するように、前記非ヒト動物は内因性Pdcd1遺伝子に対する遺伝子改変を持つとして記述される場合がある。本発明は、例えば、PD-1ポリペプチドを発現する齧歯類であって、前記PD-1ポリペプチドがヒト部分および内因性部分を備える齧歯類を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2014年6月19日出願の米国仮特許出願第62/014,181号、2014年12月2日出願の第62/086,518号、および2015年3月25日出願の第62/138,221号の優先権の利益を主張するものであり、これらの仮特許出願の内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(配列表の参照による組み込み)
2015年6月4日に作製され、EFS-Webを介して米国特許商標庁に提出された31969_SEQ.txtという名称の23 KBのASCIIテキストファイルの形態をとる配列表が、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
医学研究と開発の焦点ががん免疫療法に向けられ、顕著な改善がなされてきたが、がんは今もなお世界中の医療産業の大きな課題である。この大きな課題は、一つには免疫系のモニタリング機構をうまく逃れるというがん細胞の能力のためであり、これは一部には抗腫瘍免疫の阻害および/または下方制御の結果である。それでも、抗腫瘍免疫を活性化および/または促進するようにデザインされた新しいがん治療の治療可能性を最適に決定し、がん細胞がどのように阻害信号を免疫細胞(例えば、T細胞)に提供するかという分子的な側面を決定するためのインビボシステムは開発されていない。このようなシステムは、インビボでの抗腫瘍環境を促進する候補薬剤の治療有効性を評価するためのアッセイ源を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、がん治療のために使用できる新しい治療薬を特定し開発するための改善されたシステムを許容する非ヒト動物を設計することが望ましいという認識を包含する。本発明は、自己免疫性(または炎症性)疾患、障害または状態を治療するために使用できる新しい治療薬を特定し開発するための改善されたシステムを許容する非ヒト動物を設計することが望ましいという認識も包含する。さらに、本発明は、例えば、抗腫瘍免疫を上方修正するがん治療薬を特定および開発するために使用するには、ヒト化Pdcd1遺伝子を持つ、および/またはそうでなければヒトまたはヒト化PD-1ポリペプチドを発現、含有または生成する非ヒト動物が望ましいという認識も包含する。一部の実施形態では、本発明の非ヒト動物は、PD-1を標的とすることを含む併用療法の特定および開発のための、改善されたインビボシステムを提供している。
【0005】
一部の実施形態では、本発明は、二つの異なる種(例えば、ヒトおよび非ヒト)からの遺伝物質を含むPdcd1遺伝子を備えるゲノムを持つ非ヒト動物を提供している。一部の実施形態では、本明細書に記述された非ヒト動物のPdcd1遺伝子は、ヒトおよび非ヒト部分を含むPD-1ポリペプチドをコードし、ここでヒトおよび非ヒト部分は互いに連結して機能的PD-1ポリペプチドを形成する。一部の実施形態では、本明細書に記述された非ヒト動物のPdcd1遺伝子は、ヒトPD-1ポリペプチドの細胞外領域の全部または一部を含むPD-1ポリペプチドをコードする。
【0006】
一部の実施形態では、本発明はPD-1ポリペプチドを発現する非ヒト動物を提供し、PD-1ポリペプチドはヒト部分および内因性部分を備える。一部の実施形態では、本発明のPD-1ポリペプチドは非ヒトシグナルペプチドを持つ非ヒト動物の細胞に翻訳され、一部の実施形態ではそれは齧歯類シグナルペプチドである。
【0007】
一部の実施形態では、内因性部分は内因性PD-1ポリペプチドの細胞内部分を備える。一部の実施形態では、内因性部分は内因性PD-1ポリペプチドの膜貫通部分もさらに備える。一部の実施形態では、内因性部分は、図8に見られるマウスPD-1ポリペプチドの対応するアミノ酸配列と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一のアミノ酸配列を持つ。一部の実施形態では、内因性部分は、図8に見られるマウスPD-1ポリペプチドの対応するアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を持つ。一部の実施形態では、内因性部分は、図8に見られるマウスPD-1ポリペプチドの対応するアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を持つ。
【0008】
一部の実施形態では、ヒト部分はヒトPD-1ポリペプチドのアミノ酸35~145、27~145、27~169、26~169または21~170を備える。一部の実施形態では、ヒト部分は、図8に見られるヒトPD-1ポリペプチドの対応するアミノ酸配列と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一のアミノ酸配列を備える。一部の実施形態では、ヒト部分は、図8に見られるヒトPD-1ポリペプチドの対応するアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を持つ。一部の実施形態では、ヒト部分は、図8に見られるヒトPD-1ポリペプチドの対応するアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を持つ。
【0009】
一部の実施形態では、ヒト部分および内因性部分を備えるPD-1ポリペプチドは内因性Pdcd1遺伝子によってコードされる。一部の特定実施形態では、内因性Pdcd1遺伝子は内因性Pdcd1エクソン1、4および5を備える。一部の特定実施形態では、内因性Pdcd1遺伝子は内因性Pdcd1エクソン3の全部または一部をさらに備える。一部の特定実施形態では、内因性Pdcd1遺伝子は配列番号:21を備える。一部の特定実施形態では、内因性Pdcd1遺伝子は配列番号:22を備える。一部の特定実施形態では、内因性Pdcd1遺伝子は配列番号:21および配列番号:22を備える。
【0010】
一部の実施形態では、本明細書に記述された非ヒト動物によって発現されるPD-1ポリペプチドは、配列番号:6と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%同一のアミノ酸配列を持つ。一部の実施形態では、本明細書に記述された非ヒト動物によって発現されるPD-1ポリペプチドは、配列番号:6と実質的に同一のアミノ酸配列を持つ。一部の実施形態では、本明細書に記述された非ヒト動物によって発現されるPD-1ポリペプチドは、配列番号:6と同一のアミノ酸配列を持つ。
【0011】
一部の実施形態では、本発明は、ヒトPdcd1遺伝子の一つ以上のエクソンの全部または一部と動作可能なように連結した非ヒトPdcd1遺伝子の一つ以上のエクソンを備えるヒト化Pdcd1遺伝子座を提供する。一部の実施形態では、ヒト化Pdcd1遺伝子座は、ヒトPdcd1遺伝子の一つ以上のエクソンに隣接する5’および3’非ヒトPdcd1非翻訳領域(UTR)をさらに備える。一部の実施形態では、ヒト化Pdcd1遺伝子座は齧歯類プロモーターの制御下にあり、一部の特定の実施形態では、内因性齧歯類プロモーターの制御下にある。
【0012】
一部の実施形態では、ヒト化Pdcd1遺伝子座は、ヒトPdcd1エクソン2に動作可能なように連結した非ヒトPdcd1エクソン1、3、4および5を備える。一部の実施形態では、ヒト化Pdcd1遺伝子座は、非ヒトPdcd1エクソン1、4および5、ヒトPdcd1エクソン2を備え、Pdcd1エクソン3をさらに備え、Pdcd1エクソン3はヒト部分および非ヒト部分を備えるが、ここで前記非ヒトおよびヒトエクソンは動作可能なように連結している。一部の実施形態では、Pdcd1エクソン3のヒト部分はPD-1柄配列をコードするヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、Pdcd1エクソン3のヒト部分は約71 bpのヒトPdcd1エクソン3を含む。一部の実施形態では、Pdcd1エクソン3の非ヒト部分は膜貫通配列をコードするヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、Pdcd1エクソン3の非ヒト部分は約91 bpの齧歯類Pdcd1エクソン3を含む。
【0013】
一部の実施形態では、本発明は、内因性部分およびヒト部分を備えるPdcd1遺伝子を備える、非ヒト動物を提供し、ここで内因性部分およびヒト部分は齧歯類Pdcd1プロモーターと動作可能なように連結している。一部の実施形態では、齧歯類Pdcd1プロモーターは内因性齧歯類Pdcd1プロモーターである。
【0014】
一部の実施形態では、内因性部分は内因性Pdcd1エクソン、1、4および5を備える。一部の実施形態では、内因性部分は内因性Pdcd1エクソン3の全部または一部をさらに備える。一部の実施形態では、内因性Pdcd1遺伝子のエクソン1、3の全部または一部、4および5は、図8に見られる内因性Pdcd1遺伝子の対応するエクソン1、3の全部または一部、4および5と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一である。一部の実施形態では、内因性Pdcd1遺伝子のエクソン1、3の全部または一部、4および5は、図8に見られる内因性Pdcd1遺伝子の対応するエクソン1、3の全部または一部、4および5と実質的に同一である。一部の実施形態では、内因性Pdcd1遺伝子のエクソン1、3の全部または一部、4および5は、図8に見られる内因性Pdcd1遺伝子の対応するエクソン1、3の全部または一部、4および5と同一である。
【0015】
一部の実施形態では、ヒト部分はヒトPD-1ポリペプチドのアミノ酸21~170、26~169、27~169、27~145または35~145をコードする。
【0016】
一部の実施形態では、ヒト部分はヒトPdcd1遺伝子のエクソン2を備える。一部の実施形態では、ヒト部分はヒトPdcd1エクソン3の全部または一部をさらに備える。一部の実施形態では、ヒトPdcd1エクソン2および3の全部または一部は、図8に見られるヒトPdcd1遺伝子の対応するエクソン2および3の全部または一部と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一である。一部の実施形態では、ヒトPdcd1エクソン2および3の全部または一部は、図8に見られるヒトPdcd1遺伝子の対応するエクソン2および3の全部または一部と実質的に同一である。一部の実施形態では、ヒトPdcd1エクソン2および3の全部または一部は、図8に見られるヒトPdcd1遺伝子の対応するエクソン2および3の全部または一部と同一である。一部の実施形態では、ヒト部分は、非ヒト動物の発現のためにコドン最適化された配列を備え、一部の実施形態では齧歯類での発現、一部の特定の実施形態ではマウスでの発現、一部の特定の実施形態ではラットでの発現のためにコドン最適化されている。
【0017】
一部の実施形態では、ヒト部分は、配列番号:23と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一の配列を備える。一部の実施形態では、ヒト部分は配列番号:23と実質的に同一の配列を備える。一部の実施形態では、ヒト部分は配列番号:23と同一の配列を備える。一部の実施形態では、ヒト部分は配列番号:23を備える。
【0018】
一部の実施形態では、本発明は、本明細書に記述された非ヒト動物によって生成される(または発生される)PD-1ポリペプチドを提供する。一部の特定実施形態では、本明細書に記述された非ヒト動物によって生成されるPD-1ポリペプチドは、配列番号:6と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%同一のアミノ酸配列を備える。一部の特定実施形態では、本明細書に記述された非ヒト動物によって生成されるPD-1ポリペプチドは、配列番号:6と実質的に同一のアミノ酸配列を備える。一部の特定実施形態では、本明細書に記述された非ヒト動物によって生成されるPD-1ポリペプチドは、配列番号:6と同一のアミノ酸配列を備える。
【0019】
一部の実施形態では、本発明は、本明細書に記述された非ヒト動物からの単離細胞または組織を提供する。一部の実施形態では、本発明は、本明細書に記述されたPdcd1遺伝子を備える単離細胞または組織を提供する。一部の実施形態では、細胞はリンパ球である。一部の実施形態では、細胞は、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、単球(例えば、活性化単球)、NK細胞、およびT細胞(例えば、活性化T細胞)から選択される。一部の実施形態では、組織は、脂肪、膀胱、脳、乳房、骨髄、目、心臓、腸、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、筋肉、膵臓、血漿、血清、皮膚、脾臓、胃、胸腺、精巣、卵子、およびこれらの組み合わせから選択される。
【0020】
一部の実施形態では、本発明は、ゲノムが本明細書に記述されたPdcd1遺伝子を備える非ヒト胚性幹細胞を提供する。一部の実施形態では、非ヒト胚性幹細胞はマウス胚性幹細胞であり、129系、C57BL/6系、またはBALB/c系からのものである。一部の実施形態では、非ヒト胚性幹細胞はマウス胚性幹細胞であり、129系、C57BL/6系、またはこれらの混合物からのものである。一部の実施形態では、非ヒト胚性幹細胞はマウス胚性幹細胞であり、129系およびC57BL/6系の混合物からのものである。
【0021】
一部の実施形態では、非ヒト胚性幹細胞は、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22またはこれらの組み合わせを備えるPdcd1遺伝子を備えるゲノムを持つ。
【0022】
一部の実施形態では、本発明は、非ヒト動物を作るための本明細書に記述された非ヒト胚性幹細胞の利用法を提供する。一部の特定実施形態では、非ヒト胚性幹細胞はマウス胚性幹細胞であり、本明細書に記述されたPdcd1遺伝子を備えるマウスを作るために使用される。一部の特定実施形態では、非ヒト胚性幹細胞はラット胚性幹細胞であり、本明細書に記述されたPdcd1遺伝子を備えるラットを作るために使用される。
【0023】
一部の実施形態では、本発明は、本明細書に記述されたPdcd1遺伝子を備える非ヒト胚性幹細胞を備える、それから作られる、それから得られる、またはそれから生成される非ヒト胚を提供する。一部の特定実施形態では、非ヒト胚は齧歯類胚であり、一部の実施形態ではマウス胚、一部の実施形態ではラット胎芽である。
【0024】
一部の実施形態では、本発明は、非ヒト動物を作るための本明細書に記述された非ヒト胎芽の利用法を提供する。一部の特定実施形態では、非ヒト胚性幹細胞はマウス胚性幹細胞であり、本明細書に記述されたPdcd1遺伝子を備えるマウスを作るために使用される。一部の特定実施形態では、非ヒト胚はラット胚であり、本明細書に記述されたPdcd1遺伝子を備えるラットを作るために使用される。
【0025】
一部の実施形態では、本発明は、本明細書に記述された標的化ベクター(または核酸構築物)を提供する。一部の実施形態では、本発明は、本明細書に記述されたヒト化Pdcd1遺伝子を備える標的化ベクター(または核酸構築物)を提供する。一部の実施形態では、本発明は、ヒト細胞外領域の全部または一部を備えるPD-1ポリペプチドをコードするPdcd1遺伝子を備える標的化ベクター(または核酸構築物)を提供し、一部の特定実施形態では、ヒトPD-1ポリペプチドのアミノ酸21~170、26~169、27~169、27~145または35~145を備えるPD-1ポリペプチドである。
【0026】
一部の実施形態では、標的化ベクター(または核酸構築物)は、ヒトPdcd1遺伝子の一つ以上のエクソンの全部または一部と動作可能なように連結した非ヒトPdcd1遺伝子の一つ以上のエクソンの全部または一部を備える。一部の実施形態では、標的化ベクター(または核酸構築物)は、ヒトPdcd1遺伝子の一つ以上のエクソンに隣接する5’および3’非ヒトPdcd1非翻訳領域(UTR)を備える。一部の実施形態では、標的化ベクター(または核酸構築物)は一つ以上の選択マーカーを備える。一部の実施形態では、標的化ベクター(または核酸構築物)は一つ以上の部位特異的組み換え部位を備える。一部の実施形態では、標的化ベクター(または核酸構築物)はヒトPdcd1エクソン2を備える。一部の実施形態では、標的化ベクター(または核酸構築物)はヒトPdcd1エクソン2およびヒトPdcd1エクソン3の全部または一部を備える。
【0027】
一部の実施形態では、本発明は、改変非ヒト胚性幹細胞を作るための本明細書に記述された標的化ベクター(または核酸構築物)の利用法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、改変非ヒト胚を作るための本明細書に記述された標的化ベクター(または核酸構築物)の利用法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、改変非ヒト動物を作るための本明細書に記述された標的化ベクター(または核酸構築物)の利用法を提供する。
【0028】
一部の実施形態では、本発明は、内因性Pdcd1遺伝子からPD-1ポリペプチドを発現する非ヒト動物を作る方法を提供しており、ここでPD-1ポリペプチドはヒト配列を備え、方法は、(a)齧歯類胚性幹細胞の内因性Pdcd1遺伝子にゲノムフラグメントを挿入する工程であって、前記ゲノムフラグメントが、ヒトPD-1ポリペプチドの全部または一部をコードするヌクレオチド配列を備える工程と、(b)(a)で生成された齧歯類胚性幹細胞を取得する工程と、(b)の齧歯類胚性幹細胞を使用して齧歯類を作る工程とを含む。
【0029】
一部の実施形態では、ヒト配列はヒトPD-1ポリペプチドのアミノ酸35~145、27~145、27~169、26~169または21~170を備える。
【0030】
一部の実施形態では、ヌクレオチド配列はヒトPdcd1エクソン2を備える。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列はヒトPdcd1エクソン3の全部または一部をさらに備える。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は一つ以上の選択マーカーを備える。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は一つ以上の部位特異的組み換え部位を備える。
【0031】
一部の実施形態では、本発明は、そのゲノムが、ヒト部分および内因性部分を持つPD-1ポリペプチドをコードするPdcd1遺伝子を備え、前記部分が齧歯類Pdcd1プロモーターに動作可能なように連結している非ヒト動物を作る方法を提供し、方法は、ヒト部分および内因性部分を持つPD-1ポリペプチドをコードするPdcd1遺伝子を非ヒト動物のゲノムが備え、前記部分が齧歯類Pdcd1プロモーターに動作可能なように連結しており、それによって前記非ヒト動物を作るように、非ヒト動物のゲノムを改変する工程を含む。
【0032】
一部の実施形態では、齧歯類Pdcd1プロモーターは内因性齧歯類Pdcd1プロモーターである。
【0033】
一部の実施形態では、ヒト部分はヒトPD-1ポリペプチドのアミノ酸35~145、27~145、27~169、26~169または21~170を備える。
【0034】
一部の実施形態では、Pdcd1遺伝子はヒトPdcd1エクソン2を含むように改変される。一部の実施形態では、Pdcd1遺伝子はヒトPdcd1エクソン2およびヒトPdcd1エクソン3の全部または一部を含むように改変される。
【0035】
一部の実施形態では、非ヒト動物のゲノムの改変は非ヒト胚性幹細胞で実施され、その後、前記非ヒト胚性幹細胞で非ヒト動物を生成する。一部の特定実施形態では、非ヒト胚は齧歯類胚性幹細胞であり、一部の実施形態ではマウス胚性幹細胞、一部の実施形態ではラット胚性幹細胞である。
【0036】
一部の実施形態では、本発明は、本明細書に記述された方法によって得られた非ヒト動物を提供する。
【0037】
一部の実施形態では、本発明は非ヒト動物の腫瘍増殖を減少させる方法を提供し、方法は、そのゲノムが、ヒト部分および内因性部分を持つPD-1ポリペプチドをコードするPdcd1遺伝子を備え、前記部分が齧歯類Pdcd1プロモーターと動作可能なように連結している非ヒト動物に、ヒトPD-1を標的とする薬剤を投与する工程を含み、投与は、腫瘍増殖が非ヒト動物で減少する条件下でそれに十分な時間の間行われる。
【0038】
一部の実施形態では、本発明は非ヒト動物の腫瘍細胞を殺す方法を提供し、方法は、そのゲノムが、ヒト部分および内因性部分を持つPD-1ポリペプチドをコードするPdcd1遺伝子を備え、前記部分が齧歯類Pdcd1プロモーターと動作可能なように連結している非ヒト動物に、ヒトPD-1を標的とする薬剤を投与する工程を含み、投与は、薬剤が非ヒト動物の腫瘍細胞の殺傷を媒介する条件下でそれに十分な時間の間行われる。
【0039】
一部の実施形態では、本発明は、ヒトPD-1を標的とする薬剤の薬物動態特性を評価する方法を提供し、方法は、そのゲノムが、ヒト部分および内因性部分を持つPD-1ポリペプチドをコードするPdcd1遺伝子を備える非ヒト動物に薬剤を投与する工程であって、前記部分が齧歯類Pdcd1プロモーターと動作可能なように連結している工程と、ヒトPD-1を標的とする薬剤の一つ以上の薬物動態特性を決定するためにアッセイを実施する工程とを含む。
【0040】
多くの実施形態で、本明細書に記述された非ヒト動物は、そのゲノムがヒト部分および内因性部分を持つPD-1ポリペプチドをコードするPdcd1遺伝子を含む齧歯類であり、前記部分は齧歯類Pdcd1プロモーターと動作可能なように連結している。多くの実施形態では、齧歯類Pdcd1プロモーターは内因性齧歯類Pdcd1プロモーターである。多くの実施形態では、ヒト部分はヒトPD-1ポリペプチドのアミノ酸35~145、27~145、27~169、26~169または21~170を備える。
【0041】
一部の実施形態では、ヒトPD-1を標的とする薬剤はPD-1拮抗薬である。一部の実施形態では、ヒトPD-1を標的とする薬剤はPD-1作動薬である。一部の実施形態では、ヒトPD-1を標的とする薬剤は抗PD-1抗体である。一部の実施形態では、ヒトPD-1を標的とする薬剤は、静脈内、腹腔内、または皮下に投与される。
【0042】
一部の実施形態では、本発明は、非ヒト動物がヒト部分および内因性部分を備えるPD-1ポリペプチドを発現する、非ヒト動物モデルを提供する。
【0043】
一部の実施形態では、本発明は、非ヒト動物が内因性部分およびヒト部分を備えるPdcd1遺伝子を備える、非ヒト動物を提供し、ここで内因性部分およびヒト部分は齧歯類Pdcd1プロモーターと動作可能なように連結している。
【0044】
一部の実施形態では、本発明は、(a)そのゲノムが、内因性部分およびヒト部分を含むPdcd1遺伝子を備える非ヒト動物を提供する工程であって、内因性部分およびヒト部分が非ヒト動物Pdcd1プロモーターと動作可能なように連結している工程と、(b)(a)の齧歯類の一つ以上の腫瘍細胞を移植する工程とによって得らえる非ヒト動物腫瘍モデルを提供し、それによって前記非ヒト動物腫瘍モデルを提供する。
【0045】
一部の実施形態では、本発明の非ヒト動物腫瘍モデルは齧歯類腫瘍モデルである。一部の実施形態では、非ヒト動物Pdcd1プロモーターは齧歯類Pdcd1プロモーターである。
【0046】
一部の実施形態では、本発明は薬剤またはワクチンの特定または検証方法を提供し、方法は、そのゲノムがPD-1ポリペプチドをコードするPdcd1遺伝子を含む非ヒト動物に薬剤またはワクチンを送達する工程であって、PD-1ポリペプチドがヒト部分および内因性部分を含む工程と、薬剤またはワクチンに対する免疫反応、薬剤もしくはワクチンの安全性プロファイル、または疾患、障害もしくは状態への効果の一つ以上をモニターする工程とを含む。一部の実施形態では、安全性プロファイルのモニタリングには、非ヒト動物が、薬剤またはワクチン送達の結果として副作用または有害反応を呈するかどうかを決定することを含む。一部の実施形態では、副作用または有害反応は、罹患率、死亡率、体重の変化、一つ以上の酵素レベルの変化(例えば、肝臓)、一つ以上の臓器の重量の変化、機能の喪失(例えば、感覚、運動、臓器など)、一つ以上の疾患に対する感受性の増加、非ヒト動物のゲノムの改変、食物摂取および一つ以上の疾患の合併症の増加または減少から選択される。一部の実施形態では、疾患、障害または状態が非ヒト動物に誘発される。一部の実施形態では、非ヒト動物に誘発される疾患、障害または状態は、治療を必要とする一人以上のヒト患者が患っている疾患、障害または状態と関連している。一部の特定実施形態では、薬剤は抗体である。
【0047】
一部の特定実施形態では、本発明は、薬品としての使用など医学で使用するための薬剤またはワクチンの開発での本明細書に記述された非ヒト動物の利用法を提供する。
【0048】
一部の実施形態では、本発明は、がん、新生物、感染症、炎症性の疾患、障害または状態、または自己免疫性の疾患、障害または状態を治療するための薬品の製造における、本明細書に記述された非ヒト動物の利用法を提供する。
【0049】
さまざまな実施形態で、本発明のPdcd1遺伝子は本明細書に記述されたPdcd1遺伝子を含む。さまざまな実施形態で、本発明のPdcd1遺伝子は、ヒト部分および内因性部分を持つPD-1ポリペプチドをコードし、前記部分は齧歯類Pdcd1プロモーターと動作可能なように連結している。さまざまな実施形態で、齧歯類プロモーターは内因性齧歯類プロモーターである。さまざまな実施形態で、ヒト部分はヒトPdcd1エクソン2を備える。さまざまな実施形態で、ヒト部分はヒトPdcd1エクソン2を備え、ヒトPdcd1エクソン3の全部または一部をさらに備える。
【0050】
さまざまな実施形態で、本発明のPD-1ポリペプチドは本明細書に記述されたPD-1ポリペプチドを含む。さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物は、全長内因性非ヒトPD-1ポリペプチドを検出可能な程度には発現しない。さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物は、内因性非ヒトPD-1ポリペプチドの細胞外部分を検出可能な程度には発現しない。さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物は、内因性非ヒトPD-1ポリペプチドのN末端免疫グロブリンV領域を検出可能な程度には発現しない。
【0051】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物は齧歯類であり、一部の実施形態ではマウスであり、一部の実施形態ではラットである。一部の実施形態では、本発明のマウスは、129系、BALB/C系、C57BL/6系、および混合129xC57BL/6系から成る群から選択され、一部の特定実施形態では50% 129および50% C57BL/6であり、一部の特定実施形態では25% 129および75% C57BL/6である。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
PD-1ポリペプチドを発現する齧歯類であって、前記PD-1ポリペプチドがヒト部分および内因性部分を備える齧歯類。
(項目2)
前記PD-1ポリペプチドが齧歯類シグナルペプチドで前記齧歯類の細胞に翻訳される、項目1に記載の齧歯類。
(項目3)
前記内因性部分が内因性PD-1ポリペプチドの細胞内部分を備える、項目1または2に記載の齧歯類。
(項目4)
前記内因性部分が内因性PD-1ポリペプチドの膜貫通部分をさらに備える、項目3に記載の齧歯類。
(項目5)
前記内因性部分が、図8に見られるマウスPD-1ポリペプチドの対応するアミノ酸配列と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一のアミノ酸配列を持つ、項目4に記載の齧歯類。
(項目6)
前記内因性部分が、図8に見られるマウスPD-1ポリペプチドの対応するアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を持つ、項目4に記載の齧歯類。
(項目7)
前記ヒト部分がヒトPD-1ポリペプチドのアミノ酸35~145を備える、項目1~6のいずれか一項に記載の齧歯類。
(項目8)
前記ヒト部分がヒトPD-1ポリペプチドのアミノ酸27~145を備える、項目1~6のいずれか一項に記載の齧歯類。
(項目9)
前記ヒト部分がヒトPD-1ポリペプチドのアミノ酸26~169を備える、項目1~6のいずれか一項に記載の齧歯類。
(項目10)
前記ヒト部分が、図8に見られるヒトPD-1ポリペプチドの対応するアミノ酸配列と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一のアミノ酸配列を備える、項目1~6のいずれか一項に記載の齧歯類。
(項目11)
前記ヒト部分が、図8に見られるヒトPD-1ポリペプチドの対応するアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を備える、項目1~6のいずれか一項に記載の齧歯類。
(項目12)
ヒト部分および内因性部分を備える前記PD-1ポリペプチドが内因性Pdcd1遺伝子によってコードされる、項目1~11のいずれか一項に記載の齧歯類。
(項目13)
前記内因性Pdcd1遺伝子が内因性Pdcd1エクソン1、4および5を備える、項目12に記載の齧歯類。
(項目14)
前記内因性Pdcd1遺伝子が内因性Pdcd1エクソン3の全部または一部をさらに備える、項目13に記載の齧歯類。
(項目15)
内因性部分およびヒト部分を備えるPdcd1遺伝子を備える齧歯類であって、前記内因性およびヒト部分が齧歯類Pdcd1プロモーターと動作可能なように連結した齧歯類。
(項目16)
前記齧歯類Pdcd1プロモーターが内因性齧歯類Pdcd1プロモーターである、項目15に記載の齧歯類。
(項目17)
前記内因性部分が内因性Pdcd1エクソン1、4および5を備える、項目15または16に記載の齧歯類。
(項目18)
前記内因性部分が内因性Pdcd1エクソン3の全部または一部をさらに備える、項目17に記載の齧歯類。
(項目19)
内因性Pdcd1遺伝子のエクソン1、3の全部または一部、4および5が、図8に見られる内因性Pdcd1遺伝子の対応するエクソン1、3の全部または一部、4および5と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一である、項目17または18に記載の齧歯類。
(項目20)
前記ヒト部分がヒトPD-1ポリペプチドのアミノ酸26~169をコードする、項目15~19のいずれか一項に記載の齧歯類。
(項目21)
前記ヒト部分がヒトPdcd1遺伝子のエクソン2を備える、項目15~19のいずれか一項に記載の齧歯類。
(項目22)
前記ヒト部分がヒトPdcd1エクソン3の全部または一部をさらに備える、項目21に記載の齧歯類。
(項目23)
ヒトPdcd1エクソン2および3の全部または一部が、図8に見られるヒトPdcd1遺伝子の対応するエクソン2および3の全部または一部と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一である、項目22に記載の齧歯類。
(項目24)
前記ヒト部分が前記齧歯類の発現のためにコドン最適化された配列を備える、項目22に記載の齧歯類。
(項目25)
前記ヒト部分が配列番号:23を備える、項目22に記載の齧歯類。
(項目26)
前記齧歯類がマウスまたはラットである、項目1~25のいずれか一項に記載の齧歯類。
(項目27)
項目1~26のいずれか一項の齧歯類によって生産されるPD-1ポリペプチド。
(項目28)
前記PD-1ポリペプチドが、図8に見られるヒト化PD-1ポリペプチドと少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一のアミノ酸配列を備える、項目27に記載のPD-1ポリペプチド。
(項目29)
そのゲノムがヒト部分および内因性部分を持つPD-1ポリペプチドをコードするPdcd1遺伝子を備え、前記部分が齧歯類Pdcd1プロモーターと動作可能なように連結した、単離齧歯類細胞または組織。
(項目30)
前記齧歯類Pdcd1プロモーターが内因性齧歯類Pdcd1プロモーターである、項目29に記載の齧歯類細胞または組織。
(項目31)
前記ヒト部分がヒトPdcd1エクソン2を備える、項目29または30に記載の単離細胞または組織。
(項目32)
前記ヒト部分がヒトPdcd1エクソン3の全部または一部をさらに備える、項目31に記載の単離細胞または組織。
(項目33)
前記齧歯類細胞または組織がマウス細胞もしくはマウス組織、またはラット細胞もしくはラット組織である、項目29~32のいずれか一項に記載の単離齧歯類細胞または組織。
(項目34)
そのゲノムがヒト部分および内因性部分を持つPD-1ポリペプチドをコードするPdcd1遺伝子を備え、前記部分が齧歯類Pdcd1プロモーターと動作可能なように連結した、齧歯類胚性幹細胞。
(項目35)
前記齧歯類Pdcd1プロモーターが内因性齧歯類Pdcd1プロモーターである、項目34に記載の齧歯類胚性幹細胞。
(項目36)
前記ヒト部分がヒトPdcd1エクソン2を備える、項目34または35に記載の齧歯類胚性幹細胞。
(項目37)
前記ヒト部分がヒトPdcd1エクソン3の全部または一部をさらに備える、項目36に記載の齧歯類胚性幹細胞。
(項目38)
前記齧歯類胚性幹細胞がマウス胚性幹細胞であり、129系、C57BL系、またはそれらの混合である、項目34~37のいずれか一項に記載の齧歯類胚性幹細胞。
(項目39)
前記齧歯類胚性幹細胞がマウス胚性幹細胞であり、129およびC57BL系の混合である、項目38に記載の齧歯類胚性幹細胞。
(項目40)
項目34~39のいずれか一項に記載の胚性幹細胞から生成される齧歯類胚。
(項目41)
内因性Pdcd1遺伝子からPD-1ポリペプチドを発現する齧歯類を作る方法であって、前記PD-1ポリペプチドがヒト配列を備え、前記方法が、
(a)齧歯類胚性幹細胞の内因性Pdcd1遺伝子にゲノムフラグメントを挿入する工程であって、前記ゲノムフラグメントが、ヒトPD-1ポリペプチドの全部または一部をコードするヌクレオチド配列を備える工程と、
(b)(a)で生成された齧歯類胚性幹細胞を得る工程と、
(c)(b)の齧歯類胚性幹細胞を使用して齧歯類を作る工程とを含む方法。
(項目42)
前記ヒト配列がヒトPD-1ポリペプチドのアミノ酸35~145を備える、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記ヒト配列がヒトPD-1ポリペプチドのアミノ酸27~145を備える、項目41に記載の方法。
(項目44)
前記ヒト配列がヒトPD-1ポリペプチドのアミノ酸26~169を備える、項目41に記載の方法。
(項目45)
前記ヌクレオチド配列がヒトPdcd1エクソン2を備える、項目41~44のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記ヌクレオチド配列がヒトPdcd1エクソン3の全部または一部をさらに備える、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記ヌクレオチド配列が一つ以上の選択マーカーを備える、項目41~46のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記ヌクレオチド配列が一つ以上の部位特異的組み換え部位を備える、項目41~47のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
そのゲノムがヒト部分および内因性部分を持つPD-1ポリペプチドをコードするPdcd1遺伝子を備え、前記部分が齧歯類Pdcd1プロモーターと動作可能なように連結した、齧歯類を作る方法であって、前記方法が、
それがヒト部分および内因性部分を持つPD-1ポリペプチドをコードするPdcd1遺伝子を備え、前記部分が齧歯類Pdcd1プロモーターと動作可能なように連結しており、それによって前記齧歯類を作るように、齧歯類の前記ゲノムを改変する工程を含む方法。
(項目50)
前記齧歯類Pdcd1プロモーターが内因性齧歯類Pdcd1プロモーターである、項目49に記載の方法。
(項目51)
前記ヒト部分がヒトPD-1ポリペプチドのアミノ酸35~145を備える、項目49に記載の方法。
(項目52)
前記ヒト部分がヒトPD-1ポリペプチドのアミノ酸27~145を備える、項目49に記載の方法。
(項目53)
前記ヒト部分がヒトPD-1ポリペプチドのアミノ酸26~169を備える、項目49に記載の方法。
(項目54)
前記Pdcd1遺伝子がヒトPdcd1エクソン2を含むように改変される、項目49~53のいずれか一項に記載の方法。
(項目55)
前記Pdcd1遺伝子が、ヒトPdcd1エクソン2およびヒトPdcd1エクソン3の全部または一部を含むように改変される、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記齧歯類がマウスまたはラットである、項目41~55のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
項目41~56のいずれか一項に記載の方法から取得可能な齧歯類。
(項目58)
前記齧歯類がマウスまたはラットである、項目57に記載の齧歯類。
(項目59)
齧歯類の腫瘍増殖を減少させる方法であって、前記方法が、
そのゲノムがヒト部分および内因性部分を持つPD-1ポリペプチドをコードするPdcd1遺伝子を備え、前記部分が齧歯類Pdcd1プロモーターと動作可能なように連結した齧歯類に、ヒトPD-1を標的とする薬剤を投与する工程を含み、
前記投与が、前記齧歯類で腫瘍増殖が減少するのに十分な条件下および時間の間実施される方法。
(項目60)
齧歯類の腫瘍細胞を殺傷する方法であって、前記方法が、
そのゲノムがヒト部分および内因性部分を持つPD-1ポリペプチドをコードするPdcd1遺伝子を備え、前記部分が齧歯類Pdcd1プロモーターと動作可能なように連結した齧歯類に、ヒトPD-1を標的とする薬剤を投与する工程を含み、
前記投与が、前記腫瘍細胞の殺傷を媒介するのに十分な条件下および時間の間実施される方法。
(項目61)
ヒトPD-1を標的とする薬剤の薬物動態特性を評価する方法であって、前記方法が、
そのゲノムがヒト部分および内因性部分を持つPD-1ポリペプチドをコードするPdcd1遺伝子を備え、前記部分が齧歯類Pdcd1プロモーターと動作可能なように連結した齧歯類に、前記薬剤を投与する工程と、
PD-1を標的とする前記薬剤の一つ以上の薬物動態特性を決定するためにアッセイを実施する工程とを含む方法。
(項目62)
前記ヒト部分がヒトPD-1ポリペプチドのアミノ酸35~145を備える、項目59~61のいずれか一項に記載の方法。
(項目63)
前記ヒト部分がヒトPD-1ポリペプチドのアミノ酸27~145を備える、項目59~61のいずれか一項に記載の方法。
(項目64)
前記ヒト部分がヒトPD-1ポリペプチドのアミノ酸26~169を備える、項目59~61のいずれか一項に記載の方法。
(項目65)
前記ヒトPD-1を標的とする薬剤がPD-1拮抗薬である、項目59~64のいずれか一項に記載の方法。
(項目66)
前記ヒトPD-1を標的とする薬剤がPD-1作動薬である、項目59~64のいずれか一項に記載の方法。
(項目67)
前記ヒトPD-1を標的とする薬剤が抗PD-1抗体である、項目59~64のいずれか一項に記載の方法。
(項目68)
前記ヒトPD-1を標的とする薬剤が前記齧歯類に静脈内投与される、項目59~67のいずれか一項に記載の方法。
(項目69)
前記ヒトPD-1を標的とする薬剤が前記齧歯類に腹腔内投与される、項目59~67のいずれか一項に記載の方法。
(項目70)
前記ヒトPD-1を標的とする薬剤が前記齧歯類に皮下投与される、項目59~67のいずれか一項に記載の方法。
(項目71)
前記齧歯類Pdcd1プロモーターが内因性齧歯類Pdcd1プロモーターである、項目59~70のいずれか一項に記載の方法。
(項目72)
前記齧歯類がマウスまたはラットである、項目59~71のいずれか一項に記載の方法。
(項目73)
齧歯類腫瘍モデルであって、前記齧歯類が、ヒト部分および内因性部分を備えるPD-1ポリペプチドを発現する齧歯類腫瘍モデル。
(項目74)
齧歯類腫瘍モデルであって、前記齧歯類が内因性部分およびヒト部分を備えるPdcd1遺伝子を備え、前記内因性およびヒト部分が齧歯類Pdcd1プロモーターと動作可能なように連結した齧歯類腫瘍モデル。
(項目75)
齧歯類腫瘍モデルであって、
a)内因性部分およびヒト部分を備えるPdcd1遺伝子を備える齧歯類を提供する工程であって、前記内因性およびヒト部分が齧歯類Pdcd1プロモーターと動作可能なように連結した工程と、
b)(a)の前記齧歯類の一つ以上の腫瘍細胞を移植し、
それによって前記齧歯類腫瘍モデルを提供する工程とによって得らえる齧歯類腫瘍モデル。
(項目76)
前記齧歯類がマウスまたはラットである、項目73~75のいずれか一項に記載の齧歯類腫瘍モデル。
(項目77)
前記齧歯類がマウスである、項目76に記載の齧歯類腫瘍モデル。
(項目78)
前記マウスが、129系、C57BL/6系、および混合129×C57BL/6系から成る群から選択される、項目77に記載の齧歯類腫瘍モデル。
(項目79)
前記マウスが25% 129および75% C57BL/6である、項目78に記載の齧歯類腫瘍モデル。
【0052】
本明細書で使用される場合、「約」および「およそ」という用語は同意義として使用される。約/およその有無に関わらず、本明細書で使用される任意の数字は、当業者によって理解される任意の正常変動を網羅することが意図される。
【0053】
本発明のその他の特徴、目的および利益は、以下の特定実施形態の詳細説明で明らかである。しかし、本発明の特定の実施形態を示しながらの詳細説明は、例示のみでなされるものであり、限定を意味しないことを理解すべきである。本発明の範囲内のさまざまな変更および修正は、詳細説明から当業者には明らかとなるであろう。
【0054】
以下の図から成る本明細書に含まれる図面は、例示目的のみであり限定を目的としない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】非ヒト(例えば、マウス)およびヒトプログラム細胞死1(Pdcd1)遺伝子のゲノム構造の図(正確な縮尺ではない)を示す。エクソンおよび非翻訳領域(UTR)は各エクソンの下方および各UTRの上方に数字が付けられている。
図2】非ヒトプログラム細胞死1(Pdcd1)遺伝子のヒト化のための例示的方法の図(正確な縮尺ではない)を示す。選択されたヌクレオチド接合部の場所は各接合部の下の線で示されている。これらの選択されたヌクレオチド接合部の配列は配列番号で示される。
図3】実施例1に記述されたアッセイで使用されるプローブのおよその場所を示す、マウスおよびヒトプログラム細胞死1(Pdcd1)遺伝子のゲノム構造の図(正確な縮尺ではない)を示す。
図4】マウスおよび/またはヒト化PD-1を発現する実施例1に記述された内因性Pdcd1遺伝子のヒト化のためのヘテロ接合性の野生型マウスおよびマウスから単離されたCD19およびCD8でゲートされた例示的ヒストグラムを示す。刺激および非刺激細胞集団が示されており、アイソタイプ対照で染色された細胞も示されている。
図5】実施例1に記述された内因性Pdcd1遺伝子のヒト化のためのホモ接合性のマウスの21日にわたる例示的腫瘍増殖曲線を示す。対照:PD-1に特異的でない抗体、a-hPD-1 Ab:ヒトPD-1に対して特異的な抗体。矢印は抗体治療の日を示す。21日目の無腫瘍マウスの数が各治療群に対して示されている。
図6】抗PD-1抗体を使用した治療後の、実施例1に記述された内因性Pdcd1遺伝子のヒト化のためのホモ接合性のマウスにおける脾臓のCD8b、CD3、IFN-gおよびPD-1 mRNAの例示的リアルタイムPCR解析を示す。A、群あたりマウス5匹の平均。B、各治療群の個別マウスの発現レベル。対照:PD-1に特異的でない抗体、α-PD-1:抗PD-1抗体。
図7】0.3~25 mg/kgの抗hPD-1抗体または25 mg/kgの対照抗体(PD-1に特異的でない抗体)を投与された、実施例1に記述の内因性Pdcd1遺伝子のヒト化のためのホモ接合性のマウスにおける60日にわたる例示的腫瘍増殖曲線を示す。矢印は抗体治療の日を示す。60日目の無腫瘍マウスの数が各治療群に対して示されている。
図8-1】例示的マウス、ヒトおよびヒト化Pdcd1およびPD-1配列、ならびに非ヒトPdcd1遺伝子のヒト化のための例示的ヒト核酸配列を示す。mRNA配列については、太字はコード配列および連続的エクソンを示し、示される場合、交互の下線文字で分けられている。ヒト化mRNA配列については、ヒト配列は括弧に入っている。タンパク質配列については、シグナルタンパク質は下線、細胞外配列は太字、免疫グロブリンV領域配列は括弧内、細胞内配列は斜字で示されており、ヒト化タンパク質配列については、非ヒト配列は通常の文字で示され、ヒト配列は太字で示されている。
図8-2】例示的マウス、ヒトおよびヒト化Pdcd1およびPD-1配列、ならびに非ヒトPdcd1遺伝子のヒト化のための例示的ヒト核酸配列を示す。mRNA配列については、太字はコード配列および連続的エクソンを示し、示される場合、交互の下線文字で分けられている。ヒト化mRNA配列については、ヒト配列は括弧に入っている。タンパク質配列については、シグナルタンパク質は下線、細胞外配列は太字、免疫グロブリンV領域配列は括弧内、細胞内配列は斜字で示されており、ヒト化タンパク質配列については、非ヒト配列は通常の文字で示され、ヒト配列は太字で示されている。
図8-3】例示的マウス、ヒトおよびヒト化Pdcd1およびPD-1配列、ならびに非ヒトPdcd1遺伝子のヒト化のための例示的ヒト核酸配列を示す。mRNA配列については、太字はコード配列および連続的エクソンを示し、示される場合、交互の下線文字で分けられている。ヒト化mRNA配列については、ヒト配列は括弧に入っている。タンパク質配列については、シグナルタンパク質は下線、細胞外配列は太字、免疫グロブリンV領域配列は括弧内、細胞内配列は斜字で示されており、ヒト化タンパク質配列については、非ヒト配列は通常の文字で示され、ヒト配列は太字で示されている。
図8-4】例示的マウス、ヒトおよびヒト化Pdcd1およびPD-1配列、ならびに非ヒトPdcd1遺伝子のヒト化のための例示的ヒト核酸配列を示す。mRNA配列については、太字はコード配列および連続的エクソンを示し、示される場合、交互の下線文字で分けられている。ヒト化mRNA配列については、ヒト配列は括弧に入っている。タンパク質配列については、シグナルタンパク質は下線、細胞外配列は太字、免疫グロブリンV領域配列は括弧内、細胞内配列は斜字で示されており、ヒト化タンパク質配列については、非ヒト配列は通常の文字で示され、ヒト配列は太字で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0056】
(用語の定義)
本発明は本明細書に記述された特定の方法および実験条件に限定されないが、それはこのような方法および条件は変化する場合があるからである。本発明の範囲は請求項によって定義されるので、本明細書に使用される用語は、特定の実施形態のみを記述する目的で使用されており、意図しないことも理解される。
【0057】
別段の定めがない限り、本明細書に使用されるすべての用語および語句は、そうでないことが明確に示されている、または用語または語句が使用されている文脈から明らかに明白な場合を除き、その用語および語句が当技術分野で獲得された意味を含む。本明細書で説明したものと類似または同等な任意の方法および材料も、本発明の実施または試験に使用できるが、特定の方法および材料をこれから説明する。本明細書で言及されたすべての出版物は参照により本明細書に組み込まれる。
【0058】
本明細書で一つ以上の対象の値に適用される場合、「およそ」という用語は指定された参照値と類似の値を指す。特定の実施形態では、「およそ」または「約」という用語は、別段定めがない限り、または文脈からそうでないことが明らかな場合(このような数字が可能な値の100%を超える場合を除く)を除いて、指定された参照値のいずれかの方向に25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%またはそれ未満以内の範囲の値を指す。
【0059】
「生物学的に活性」という用語は、生物系、インビトロまたは(例えば、生物中の)インビボで活性を持つ任意の薬剤の特徴を含む。例えば、生物内に存在する時、その生物内で生物学的効果を持つ薬剤は生物学的に活性であるとみなされる。特定の実施形態では、タンパク質またはポリペプチドが生物学的に活性な場合、タンパク質またはポリペプチドの少なくとも一つの生物学的活性を共有するそのタンパク質またはポリペプチドの一部は、「生物学的に活性」な部分と一般的に呼ばれる。
【0060】
「同等」という用語は、お互いに同一ではない場合があるが、それらの間の比較を許容するのに十分類似しており、従って観察された差または類似性に基づいて合理的に結論を出すことができる、二つ以上の薬剤、実在物、状況、状態のセットなどを含む。当業者であれば、文脈内において、同等とみなされるために二つ以上のこのような薬剤、実在物、状況、状況のセットなどに対して、ある所定の状況でどの程度の同一性が必要かを理解するであろう。
【0061】
例えば、保存的アミノ酸置換などでの「保存的」という用語は、類似の化学特性(例えば、電荷または疎水性)を備える側鎖R基を持つ別のアミノ酸残基によるアミノ酸残基の置換を含む。一般的に、保存的アミノ酸置換は、関心タンパク質の機能特性(例えば、リガンドに結合する受容体の能力)を実質的に変化させない。類似の化学特性を備える側鎖を持つアミノ酸群の例には次が含まれる:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンなどの脂肪族側鎖、セリンおよびスレオニンなどの脂肪族-ヒドロキシル側鎖、アスパラギンおよびグルタミンなどのアミド含有側鎖、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンなどの芳香族側鎖、リジン、アルギニン、およびヒスチジンなどの塩基性側鎖、アスパラギン酸およびグルタミン酸などの酸性側鎖、ならびにシステインおよびメチオニンなどの硫黄含有側鎖。保存的アミノ酸置換基には、例えば、バリン/ロイシン/イソロイシン、フェニルアラニン/チロシン、リジン/アルギニン、アラニン/バリン、グルタミン酸/アスパラギン酸、およびアスパラギン/グルタミンが含まれる。一部の実施形態では、保存的アミノ酸置換は、例えばアラニンスキャニング変異誘発などで使用される、アラニンを含むタンパク質の任意の未変性残基の置換である可能性がある。一部の実施形態では、Gonnet et al. (1992) Exhaustive Matching of the Entire Protein Sequence Database, Science 256:1443-45(これは参照により本明細書に組み込まれる)に開示されたPAM250対数尤度マトリクスで正の値を持つ保存的置換が行われる。一部の実施形態では、置換は中等度に保存的な置換であり、ここで置換はPAM250対数尤度マトリクスで負でない値を持つ。
【0062】
「対照」という用語は、結果がそれに対して比較される基準としての「対照」という当技術分野で理解される意味を含む。一般的に、対照は、このような変数についての結論を出すために、変数を分離することによって実験の完全性を増加させるために使用される。一部の実施形態では、対照は、コンパレーターを提供するために、試験反応またはアッセイと同時に実施される反応またはアッセイである。本明細書で使用される場合、「対照」は、「対照動物」を含む場合がある。「対照動物」は本明細書に記述された改変、本明細書に記述されたものとは異なる改変を持つか、または未改変(すなわち、野生型動物)である場合がある。一つの実験では、「試験」(すなわち、試験されている変数)が適用される。第二の実験では、「対照」、試験されている変数は適用されない。一部の実施形態では、対照は歴史的対照(すなわち、以前に実施された試験またはアッセイの、または以前に知られた量または結果)である。一部の実施形態では、対照は印刷されたかまたはそれ以外の方法で保存された記録であるか、またはそれを含む。対照は、陽性対照または陰性対照である場合がある。
【0063】
「破壊」という用語は、(例えば、遺伝子または遺伝子座などの内因性相同配列での)DNA分子での相同組み換えイベントの結果を含む。一部の実施形態では、破壊は、DNA配列の挿入、欠失、置換、交換、ミスセンス変異、もしくはフレームシフト、またはこれらの任意の組み合わせを達成または示す場合がある。挿入は、遺伝子全体または遺伝子のフラグメント(例えば、エクソン)の挿入を含む場合があり、これは内因性配列以外の起源のもの(例えば、異種配列)であってもよい。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物の(例えば、遺伝子によってコードされたタンパク質の)発現および/または活性を増加する場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物の発現および/または活性を減少する場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子またはコードされた遺伝子産物(例えば、コードされたタンパク質)の配列を変える場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子またはコードされた遺伝子産物(例えば、コードされたタンパク質)を切断または断片化する場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子またはコードされた遺伝子産物を延長する場合があり、一部の実施形態では、破壊は融合タンパク質の組立てを達成する場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物のレベルに影響するが活性には影響しない場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物の活性に影響するがレベルには影響しない場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物のレベルに対して顕著な効果を持たない場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物の活性に対して顕著な効果を持たない場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物のレベルまたは活性のいずれに対しても顕著な効果を持たない場合がある。
【0064】
「決定する」、「測定する」、「評価する」、「査定する」、「アッセイする」および「分析する」という用語は互換的に使用されて、測定の任意の形態を指し、要素が存在するかどうかを決定することを含む。これらの用語は、定量的および/または定性的決定の両方を含む。アッセイは相対的または絶対的である場合がある。「の存在をアッセイする」ことは、存在する何かの量を決定するおよび/またはそれが存在するか不在かを決定することである可能性がある。
【0065】
「投与レジメン」または「治療レジメン」という用語は、一部の実施形態では、一つ以上の、一般的には期間を置いて被験者に個別に投与される一式の単位用量を含む。一部の実施形態では、所定の治療薬剤は推奨投与レジメンを持ち、これには一つ以上の用量が関与する場合がある。一部の実施形態では、投与レジメンは、それぞれがお互いに同じ長さの期間を置いた複数の用量を含み、一部の実施形態では、投与レジメンは複数の用量を含み、少なくとも二つのことなる期間がこ個別用量を分離している。
【0066】
「内因性遺伝子座」または「内因性遺伝子」という語句は、親生物または指標生物内に見られる遺伝子座を含む。一部の実施形態では、内因性遺伝子座は天然で見られる配列を持つ。一部の実施形態では、内因性遺伝子座は野生型遺伝子座である。一部の実施形態では、指標生物は野生型生物である。一部の実施形態では、指標生物は遺伝子操作された生物である。一部の実施形態では、指標生物は実験室で繁殖された生物(野生型または遺伝子操作された)である。
【0067】
「内因性プロモーター」という語句は、例えば、野生型生物で、内因性遺伝子と自然に関連するプロモーターを含む。
【0068】
「異種」という用語は、異なる起源からの薬剤または実在物を含む。例えば、ポリペプチド、遺伝子、もしくは遺伝子産物、または特定の細胞もしくは生物に存在することに関連して使用される時、本用語は、関連ポリペプチド、遺伝子、または遺伝子産物が1)人の手によって遺伝子操作されたこと、2)人の手によって(例えば、遺伝子操作によって)細胞または生物(またはその前駆体)に導入されたこと、および/または3)関連細胞または生物(例えば、関連細胞タイプまたは生物タイプ)によって自然には生成されない、またはその中に存在しないことを明確にする。
【0069】
「宿主細胞」という用語は、その中に異種(例えば、外来性)核酸またはタンパク質が導入された細胞を含む。当業者が本開示を読めば、このような用語が特定の主題細胞を指すだけでなく、このような細胞の子孫を指すためにも使用されることを理解するであろう。特定の改変は突然変異または環境の影響のために後続世代にも起こる可能性があるので、このような子孫は、実際は、親細胞と同一でない場合があるが、それでも「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。一部の実施形態では、宿主細胞は原核細胞または真核細胞であるかそれを含む。一般的に、宿主細胞は、細胞が指定される種に関わらず、異種核酸またはタンパク質の受け入れおよび/または生産に適した任意の細胞である。例示的細胞には、原核生物および真核生物(単細胞または多細胞)の細胞、細菌細胞(例えば、大腸菌、バチルス属、ストレプトマイセス属などの株)、マイコバクテリア細胞、真菌細胞、酵母細胞(例えば、出芽酵母、分裂酵母、ピヒア メタノリカなど)、植物細胞、昆虫細胞(例えば、SF-9、SF-21、バキュロウイルス感染昆虫細胞、イラクサギンウワバなど)、非ヒト動物細胞、ヒト細胞、または例えば、ハイブリドーマもしくはクアドローマなどの細胞融合を含む。一部の実施形態では、細胞はヒト、サル、類人猿、ハムスター、ラット、またはマウス細胞である。一部の実施形態では、細胞は原核であり以下の細胞から選択される:CHO(例えば、CHO K1、DXB-11 CHO、Veggie-CHO)、COS(例えば、COS-7)、網膜細胞、Vero、CV1、腎臓(例えば、HEK293、293 EBNA、MSR 293、MDCK、HaK、BHK)、HeLa、HepG2、WI38、MRC 5、Colo205、HB 8065、HL-60、(例えば、BHK21)、Jurkat、Daudi、A431(表皮)、CV-1、U937、3T3、L細胞、C127細胞、SP2/0、NS-0、MMT 060562、セルトリ細胞、BRL 3A細胞、HT1080細胞、骨髄腫細胞、腫瘍細胞、および前述細胞から派生する細胞株。一部の実施形態では、細胞は一つ以上のウィルス遺伝子、例えば、ウィルス遺伝子を発現する網膜細胞(例えば、PER.C6(商標)細胞)を備える。一部の実施形態では、宿主細胞は単離細胞であるかそれを含む。一部の実施形態では、宿主細胞は組織の一部である。一部の実施形態では、宿主細胞は生物の一部である。
【0070】
「ヒト化」という用語は、その構造(すなわち、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列)が、非ヒト動物に天然で見られる特定遺伝子またはタンパク質の構造と実質的にまたは全く同一に対応する部分を含み、関連する特定の非ヒト遺伝子またはタンパク質で見られるものとは異なり、その代わりに対応するヒト遺伝子またはタンパク質で見られる同等構造とより近く対応する部分も含む核酸またはタンパク質を含む。一部の実施形態では、「ヒト化」遺伝子は、実質的にヒトポリペプチドのもののようなアミノ酸配列を持つポリペプチドをコードする遺伝子(例えば、ヒトタンパク質またはその一部―例えば、その特性的部分)である。一例を挙げると、膜受容体の場合、「ヒト化」遺伝子は、ヒト細胞外部分のもののようなアミノ酸配列および非ヒト(例えば、マウス)ポリペプチドのもののような残りの配列を持つ、細胞内部分の全部または一部を持つポリペプチドをコードする遺伝子の場合がある。一部の実施形態では、ヒト化遺伝子は、ヒト遺伝子のDNA配列の少なくとも一部分を備える。一部の実施形態では、ヒト化遺伝子は、ヒト遺伝子のDNA配列全体を備える。一部の実施形態では、ヒト化タンパク質は、ヒトタンパク質に見られる一部分を持つ配列を備える。一部の実施形態では、ヒト化タンパク質は、ヒトタンパク質の配列全体を備え、ヒト遺伝子のホモログまたはオルソログに対応する非ヒト動物の内因性遺伝子座から発現される。
【0071】
例えば、配列の比較での「同一性」という用語は、ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列同一性を測定するために使用できる当技術分野で知られた多くの異なるアルゴリズムによって決定される同一性を含む。一部の実施形態では、本明細書に記述された同一性は、10.0のギャップ開始ペナルティ、0.1のギャップ延長ペナルティを用い、Gonnet類似性マトリックス(MACVECTOR(商標)10.0.2、MacVector Inc.、2008年)を使用したClustalW v. 1.83 (slow) アラインメントを使用して決定される。
【0072】
「単離された」という用語は、(1)(天然および/または実験環境のいずれかで)最初に生成された時にそれが関連していた成分の少なくとも一部から分離された、および/または (2) 人の手によって設計、生産、調製、および/または製造された物質および/または実在物を含む。分離された物質および/または実在物は、それらが最初に関連していたその他の成分の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%超から分離される場合がある。一部の実施形態では、単離された薬剤は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%を超えて純粋である。物質は、それにその他の成分が実質的に含まれない場合、「純粋」である。一部の実施形態では、当業者であれば理解するように、例えば、一つ以上の担体または賦形剤(例えば、緩衝剤、溶媒、水など)などの特定のその他の成分と組み合わされた後でも、物質はまだ「単離された」または「純粋」とさえもみなされる場合があり、このような実施形態では、物質の単離または純度のパーセントはこのような担体または賦形剤を含めることなく計算される。一例を挙げると、一部の実施形態では、自然界に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの生体高分子は、a) 導出の起源またはソースが、自然界の天然状態でそれに付随する成分の一部またはすべてと関連していない時、b) それが、自然界でそれを生産する種と同じ種のその他のポリペプチドまたは核酸を実質的に含まない時、またはc) 自然界でそれを生産する種ではない細胞またはその他の発現系によって発現されるか、またはそうでなければそれからの成分と関連している時、「単離された」とみなされる。従って、例えば、一部の実施形態では、化学的に合成された、または自然界でそれを生産するものとは異なる細胞系で合成されたポリペプチドは、「単離された」ポリペプチドとみなされる。あるいはまたは追加的に、一部の実施形態では、一つ以上の精製技術を受けたポリペプチドは、それが、a)
それが自然界で関連している、および/またはb) 最初に生産された時にそれが関連していたその他の成分から分離されている限りは「単離された」ポリペプチドとみなされることができる。
【0073】
「非ヒト動物」という語句は、ヒトではない任意の脊椎生物を含む。一部の実施形態では、非ヒト動物は、円口類、硬骨魚、軟骨魚(例えば、サメまたはエイ)、両生類、は虫類、哺乳類、および鳥である。一部の実施形態では、非ヒト哺乳類は、霊長類、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ウシ、または齧歯類である。一部の実施形態では、非ヒト動物はラットまたはマウスなどの齧歯類である。
【0074】
「核酸」という語句は、オリゴヌクレオチド鎖であるか、またはオリゴヌクレオチド鎖に組み込むことができる任意の化合物および/または物質を含む。一部の実施形態では、「核酸」はオリゴヌクレオチド鎖であるか、またはホスホジエステル結合でオリゴヌクレオチド鎖組み込むことができる化合物および/または物質である。文脈から明らかになるように一部の実施形態では、「核酸」は個別の核酸残基(例えば、ヌクレオチドおよび/またはヌクレオシド)を含み、一部の実施形態では、「核酸」は個別の核酸残基を備えるオリゴヌクレオチド鎖を含む。一部の実施形態では、「核酸」はRNAであるかまたはそれを備え、一部の実施形態では、「核酸」はDNAであるかまたはそれを備える。一部の実施形態では、「核酸」は、一つ以上の天然核酸残基を備えるかまたはそれらから成る。一部の実施形態では、「核酸」は、一つ以上の核酸類似体を備えるかまたはそれらから成る。一部の実施形態では、核酸類似体は、ホスホジエステル骨格を利用しないという点で「核酸」とは異なる。例えば、一部の実施形態では、「核酸」は、当技術分野では知られており、骨格にホスホジエステル結合の代わりにペプチド結合を持つ、一つ以上の「ペプチド核酸」であるか、またはそれらを備え、それらは本発明の範囲内であるとみなされる。あるいはまたはさらに、一部の実施形態では、「核酸」は、ホスホジエステル結合ではなく、一つ以上のホスホロチオエートおよび/または5’-N-ホスホラミダイト結合を持つ。一部の実施形態では、「核酸」は一つ以上の天然ヌクレオシド(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、およびデオキシシチジン)であるか、または一つ以上の天然ヌクレオシドから成る。一部の実施形態では、「核酸」は、一つ以上のヌクレオシド類似体(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5 プロピニル-シチジン、C-5 プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-ウルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、O(6)-メチルグアニン、2-チオシチジン、メチル化塩基、インターカレート塩基、およびそれらの組み合わせ)であるか、またはそれらから成る。一部の実施形態では、「核酸」は、天然核酸のものと比べて、一つ以上の修飾された糖(例えば、2’-フルオロリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノース、およびヘキソース)を備える。一部の実施形態では、「核酸」は、RNAまたはタンパク質などの機能的遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を持つ。一部の実施形態では、「核酸」は、一つ以上のイントロンを含む。一部の実施形態では、「核酸」は、天然起源物からの単離、相補的鋳型に基づく重合による酵素合成(インビボまたはインビトロ)、組み換え細胞または系での複製、および化学合成の一つ以上によって調製される。一部の実施形態では、「核酸」は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、20、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000またはそれを超える残基の長さである。一部の実施形態では、「核酸」は一本鎖であり、一部の実施形態では、「核酸」は二重鎖である。一部の実施形態では、「核酸」はポリペプチドをコードするか、またはポリペプチドをコードする配列の補体である少なくとも一つの要素を備えるヌクレオチド配列を持つ。一部の実施形態では、「核酸」は酵素活性を持つ。
【0075】
「動作可能なように連結した」という語句には、記述された要素が、それらが意図された方法で機能できるような関係にある並置を含む。コード配列に「動作可能なように連結した」対照配列は、対照配列に適合する条件下でコード配列の発現が達成されるように結合されている。「動作可能なように連結した」配列には、関心の遺伝子と隣接する発現制御配列および、トランスにまたは距離を置いて作用して対象の遺伝子を制御する発現制御配列の両方を含む。「発現制御配列」という用語はポリヌクレオチド配列を含み、これは発現およびそれらが結合されているコード配列のプロセスを引き起こすために必要である。「発現制御配列」には、適切な転写開始、終結、プロモーターおよびエンハンサー配列、スプライシングおよびポリアデニル化シグナルなどの効率的RNAプロセシングシグナル、細胞質mRNAを安定化する配列、翻訳効率を強化する配列(すなわち、コザック配列)、タンパク質安定性を強化する配列、および望ましい場合、タンパク質分泌を強化する配列を含む。このような制御配列の性質は、宿主生物によって異なる。例えば、原核生物では、このような制御配列は一般的に、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列を含む一方、真核生物では、一般的に、このような制御配列はプロモーターおよび転写終結配列を含む。「制御配列」という用語は、その存在が発現およびプロセシングのために必須である要素を含むことを意図しており、その存在が有利である追加的要素、例えば、リーダー配列および融合パートナー配列も含むことができる。
【0076】
「患者」または「被験者」という用語は、例えば、実験、診断、予防、美容、および/または治療目的で、それに対して提供された組成物が投与されるまたは投与される場合がある任意の生物を含む。一般的な患者には動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、および/またはヒトなどの哺乳類)を含む。一部の実施形態では、患者は非ヒト動物である。一部の実施形態では、患者(例えば、非ヒト動物患者)は、本明細書に記述された改変、本明細書に記述されたものとは異なる改変を持つ場合、または改変を持たない(すなわち、野生型非ヒト動物患者)場合がある。一部の実施形態では、非ヒト動物は、一つ以上の障害または状態を患っているかまたはそれらにかかりやすい。一部の実施形態では、非ヒト動物は障害または状態の一つ以上の症状を示す。一部の実施形態では、非ヒト動物は一つ以上の障害または状態と診断されている。
【0077】
「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸の任意の重合鎖を含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、自然界に存在するアミノ酸配列を持つ。一部の実施形態では、ポリペプチドは、自然界に存在しないアミノ酸配列を持つ。一部の実施形態では、ポリペプチドは、お互いに別々に自然界に存在する部分を含むアミノ酸配列を持つ(すなわち、例えば、ヒトおよび非ヒト部分など、二つ以上の異なる生物からのもの)。一部の実施形態では、ポリペプチドは、それが人の手の作用を通して、設計および/または生産されるという点で、遺伝子操作されたアミノ酸配列を持つ。
【0078】
「組み換え」という用語は、組み換え手段によって設計、遺伝子操作、調製、発現、生成または単離されたポリペプチド(例えば、本明細書に記述されたPD-1ポリペプチド)を含むことが意図されており、例えば、宿主細胞中にトランスフェクトされた組み換え発現ベクターを使用して発現されたポリペプチド、組み換え組み合わせヒトポリペプチドライブラリから単離されたポリペプチド(Hoogenboom H. R., (1997) TIB Tech. 15:62-70; Azzazy H., and Highsmith W. E., (2002) Clin. Biochem. 35:425-445; Gavilondo J. V., and Larrick J. W. (2002) BioTechniques 29:128-145; Hoogenboom H., and Chames P. (2000) Immunology Today 21:371-378)、ヒト免疫グロブリン遺伝子に対するトランスジェニック動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylor, L. D., et al. (1992) Nucl. Acids Res. 20:6287-6295; Kellermann S-A., and Green L. L. (2002) Current Opinion in Biotechnology 13:593-597; Little M. et al. (2000) Immunology Today 21:364-370; Murphy, A.J., et al. (2014) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 111(14):5153-5158を参照)または選択された配列要素をお互いにスプライスすることを伴うその他任意の手段によって調製、発現、生成または単離されたポリペプチドを含む。一部の実施形態では、このような選択された配列要素の一つ以上は自然界に存在する。一部の実施形態では、このような選択された配列要素の一つ以上はインシリコで設計される。一部の実施形態では、一つ以上のこのような選択配列要素は、例えば、天然または合成起源の既知の配列要素の変異誘発(例えば、インビボまたはインビトロ)から生じる。例えば、一部の実施形態では、組み換えポリペプチドは、対象のソース生物(例えば、ヒト、マウスなど)のゲノムに見られる配列から成る。一部の実施形態では、組み換えポリペプチドは、変異誘発(例えば、非ヒト動物での、インビトロまたはインビボ)から生じるアミノ酸配列を持ち、従って、組み換えポリペプチドのアミノ酸配列は、ポリペプチド配列から由来するが、インビボで非ヒト動物のゲノム内に自然には存在しない場合がある。
【0079】
「置換」という用語は、それを通して(例えば、ゲノムの)宿主遺伝子座に見られる「置換された」核酸配列(例えば、遺伝子)がその遺伝子座から取り除かれ、異なる「置換用」核酸がその場所に配置されるプロセスを含む。一部の実施形態では、置換された核酸配列および置換用核酸配列は、例えば、それらがお互いに相同である、および/または対応する要素(例えば、タンパク質コード要素、調節要素など)を含むという点でお互いに同等である。一部の実施形態では、置換された核酸配列には、プロモーター、エンハンサー、スプライス供与部位、スプライス受容部位、イントロン、エクソン、非翻訳領域(UTR)のうち一つ以上を含み、一部の実施形態では、置換用核酸配列には、一つ以上のコード配列を含む。一部の実施形態では、置換用核酸配列は置換された核酸配列のホモログである。一部の実施形態では、置換用核酸配列は置換された配列のオルソログである。一部の実施形態では、置換用核酸配列はヒト核酸配列であるかまたはそれを備える。一部の実施形態では、置換用核酸配列がヒト核酸配列であるかまたはそれを備える場合を含め、置換された核酸配列は齧歯類配列(例えば、マウスまたはラット配列)であるかまたはそれを備える。そのように配置された核酸配列は、そのように配置された配列を得るために使用されるソース核酸配列の一部である一つ以上の調節配列を含む場合がある(例えば、プロモーター、エンハンサー、5’-または3’-非翻訳領域など)。例えば、さまざまな実施形態で、置換は、そのように配置された核酸配列(異種配列を備える)からの遺伝子産物の生産を生じる異種配列を伴う内因性配列の代替であるが、内因性配列の発現の代替ではない。置換は、内因性配列によってコードされるポリペプチドと類似の機能を持つポリペプチドをコードする核酸配列を持つ内因性ゲノム配列のものである(例えば、内因性ゲノム配列はPD-1ポリペプチドをコードし、DNAフラグメントは一つ以上のヒトPD-1ポリペプチドをコードする)。さまざまな実施形態で、内因性遺伝子またはそのフラグメントは、対応するヒト遺伝子またはそのフラグメントで置換される。対応するヒト遺伝子またはそのフラグメントは、置換される内因性遺伝子またはそのフラグメントのオルソログである、またはそれと構造および/もしくは機能が実質的に類似しているかもしくは同じヒト遺伝子またはフラグメントである。
【0080】
「プログラム細胞死1タンパク質」または「PD-1タンパク質」という語句には、T細胞調節因子のCD28/CTLA-4ファミリーに属するタイプI膜貫通タンパク質を含む。PD-1タンパク質のタンパク質構造には、細胞内アミノ末端免疫グロブリンV領域、膜貫通領域およびカルボキシ末端細胞外尾部を含み、細胞内尾部は免疫受容体チロシン依存性抑制モチーフ(ITIM)および免疫受容体チロシン依存性スイッチモチーフを含む。PD-1は細胞表面で発現され、B7ファミリー免疫調節リガンドのメンバーのPD-L1およびPD-L2と相互作用する(Collins, M. et al. (2005) Genome Biol. 6:223)。PD-1は、とりわけ、活性化T細胞、B細胞、マクロファージ、単球、マスト細胞で発現され、多くの腫瘍でも発現される。PD-1は、免疫反応の負の調節、特にT細胞反応の負の調節に関与することが示されている。例示として、PD-1タンパク質をコードする、マウスおよびヒトPdcd1遺伝子のヌクレオチドおよびアミノ酸配列が図8に提供されている。当業者であれば本開示を読んだ時に、ゲノムの一つ以上のPdcd1遺伝子(またはすべて)を一つ以上の異種Pdcd1遺伝子(例えば、多型バリアント、サブタイプまたは突然変異体、別の種からの遺伝子、ヒト化形態など)で置換できることを認識するであろう。
【0081】
「PD-1発現細胞」には、PD-1タイプI膜タンパク質を発現する細胞を含む。一部の実施形態では、PD-1発現細胞はその表面上でPD-1タイプI膜タンパク質を発現する。一部の実施形態では、PD-1タンパク質は、細胞間相互作用を媒介するのに十分な量で細胞の表面に発現される。例示的PD-1発現細胞にはB細胞、マクロファージおよびT細胞を含む。PD-1発現細胞は、免疫細胞(例えば、TおよびB細胞)の表面に発現されたPD-1の相互作用を介してさまざまな細胞プロセスを調節し、このような細胞の分化および運命の決定において役割を果たす。一部の実施形態では、本発明の非ヒト動物は、非ヒト動物の一つ以上の細胞の表面上に発現されたヒト化PD-1タンパク質を介して、(本明細書に記述された)さまざまな細胞プロセスの調節を発揮する。一部の実施形態では、本発明の非ヒト動物は、非ヒト動物の一つ以上の細胞の表面上に発現されたヒト化PD-1タンパク質を介して、T細胞受容体(TCR)を通したシグナル伝達の負の調節を発揮する。一部の実施形態では、非ヒト動物は、非ヒト動物の一つ以上の細胞の表面上に発現されたヒト化PD-1タンパク質を介して、免疫反応の負の調節を発揮する。
【0082】
「参照」という用語には、それに対して対象の薬剤、動物、コホート、個人、集団、サンプル、配列または値が比較される、標準または対照薬剤、コホート、個人、集団、サンプル、配列または値を含む。一部の実施形態では、参照薬剤、コホート、個人、集団、サンプル、配列または値は、対象の薬剤、コホート、個人、集団、サンプル、配列または値の試験または決定と実質的に同時に試験および/または決定される。一部の実施形態では、参照薬剤、コホート、個人、集団、サンプル、配列または値は、随意に有形媒体で具現化された歴史的参照である。一部の実施形態では、参照は対照を指す場合がある。本明細書で使用される場合、「参照」は「参照動物」を含む場合がある。「参照動物」は本明細書に記述された改変、本明細書に記述されたものとは異なる改変を持つか、または未改変(すなわち、野生型動物)である場合がある。一般的には、当業者には理解されるであろうように、参照薬剤、動物、コホート、個人、集団、サンプル、配列または値は、対象の薬剤、動物(例えば、哺乳類)、コホート、個人、集団、サンプル、配列または値を決定または特徴付けるために利用されるものと同等の条件下で決定または特徴付けられる。
【0083】
「実質的に」という用語には、対象の特徴または特性の完全またはほぼ完全な範囲または程度を示す定性的条件を含む。生物学分野の当業者であれば、生物学的および化学的な現象はあったとしても、完了まで進む、および/または完全な状態まで進行する、または絶対的な結果を達成または避けることは稀であることを理解するであろう。従って「実質的に」という用語は本明細書では、多くの生物学的および化学的現象に固有の完全性の欠如の可能性をとらえるために使用される。
【0084】
「実質的な相同性」という語句には、アミノ酸または核酸配列間の比較を含む。当業者であれば理解するように、二つの配列はそれらが対応する位置に相同な残基を含む場合、「実質的に相同」であると一般的にみなされる。相同残基は同一の残基である場合がある。あるいは、相同残基は、適切に類似の構造および/または機能的特徴を持つ非同一残基である場合がある。例えば、当業者には周知のように、特定のアミノ酸は「疎水性」または「親水性」アミノ酸、および/または「極性」または「非極性」側鎖を持つものとして一般的に分類される。一つのアミノ酸の同じタイプの別のアミノ酸での置換は、「相同」置換とみなされる場合がよくある。一般的なアミノ酸分類が表1および2に要約されている。
【表1】
【表2】
【0085】
当技術分野で周知のように、アミノ酸または核酸配列は、ヌクレオチド配列に対するBLASTNおよびBLASTP、gapped BLAST、およびアミノ酸配列に対するPSI-BLASTなどの市販のコンピュータプログラムで利用可能なものを含む、さまざまなアルゴリズムの任意のものを使用して比較することができる。例示的なこのようなプログラムは、Altschul et al. (1990) Basic local alignment search tool, J. Mol. Biol., 215(3): 403-410; Altschul et al. (1997) Methods in Enzymology; Altschul et al., ”Gapped BLAST and PSI-BLAST: a new generation of protein database search programs”, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402; Baxevanis et al. (1998) Bioinformatics: A Practical Guide to the Analysis of Genes and Proteins, Wiley; and Misener et al. (eds.) (1999) Bioinformatics Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology, Vol. 132), Humana Pressに記述されている。相同配列を特定することに加えて、上述のプログラムは相同性の程度の指標を一般的に提供する。一部の実施形態では、二つの配列は、残基の関連する区間に渡って、その対応残基の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上が相同の場合、実質的に相同であるとみなされる。一部の実施形態では、関連する区間は完全配列である。一部の実施形態では、関連する区間は少なくとも9、10、11、12、13、14、15、16、17またはそれ以上の残基である。一部の実施形態では、関連する区間は完全配列に沿った隣接残基を含む。一部の実施形態では、関連する区間は完全配列に沿った不連続残基を含む。一部の実施形態では、関連する区間は少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50またはそれ以上の残基である。
【0086】
「実質的な同一性」という語句には、アミノ酸または核酸配列間の比較を含む。当業者であれば理解するように、二つの配列はそれらが対応する位置に同一な残基を含む場合、「実質的に同一」であると一般的にみなされる。当技術分野で周知のように、アミノ酸または核酸配列は、ヌクレオチド配列に対するBLASTNおよびBLASTP、gapped BLAST、およびアミノ酸配列に対するPSI-BLASTなどの市販のコンピュータプログラムで利用可能なものを含む、さまざまなアルゴリズムの任意のものを使用して比較することができる。例示的なこのようなプログラムは、Altschul et al. (1990) Basic local alignment search tool, J. Mol. Biol., 215(3): 403-410; Altschul et al., Methods in Enzymology; Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389-3402; Baxevanis et al. (1998) Bioinformatics: A Practical Guide to the Analysis of Genes and Proteins, Wiley; and Misener et al., (eds.) (1999) Bioinformatics Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology, Vol. 132), Humana Pressに記述されている。同一配列を特定することに加えて、上述のプログラムは同一性の程度の指標を一般的に提供する。一部の実施形態では、二つの配列は、残基の関連する区間に渡って、その対応残基の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上が同一の場合、実質的に同一であるとみなされる。一部の実施形態では、関連する区間は完全配列である。一部の実施形態では、関連する区間は少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50またはそれ以上の残基である。
【0087】
「標的化ベクター」または「標的化構築物」という語句には、標的化領域を備えるポリヌクレオチド分子を含む。標的化領域は、標的細胞、組織または動物の配列と同一または実質的に同一の配列を備え、相同組み換えにより、標的化構築物を、細胞、組織または動物のゲノム内の位置に統合する。部位特異的リコンビナーゼ認識部位(例えば、loxPまたはFrt部位)を使用して狙う標的化領域も含まれる。一部の実施形態では、本発明の標的化構築物は、特に関心のある核酸配列または遺伝子、選択可能マーカー、制御およびまたは調節配列、ならびにこのような配列が関与する組み換えを支援または促進するタンパク質の外からの追加を通して媒介される組み換えを許容するその他の核酸配列をさらに備える。一部の実施形態では、本発明の標的化構築物は対象の遺伝子の全部または一部をさらに備え、対象の遺伝子は、内因性配列によってコードされるタンパク質と類似の機能を持つたんぱく質の全部または一部をコードする異種遺伝子である。一部の実施形態では、本発明の標的化構築物は対象のヒト化遺伝子の全部または一部をさらに備え、対象のヒト化遺伝子は、内因性配列によってコードされるタンパク質と類似の機能を持つたんぱく質の全部または一部をコードする対象のヒト化遺伝子である。
【0088】
「治療有効量」という語句には、投与される対象に対して望ましい効果をもたらす量を含む。一部の実施形態では、この用語は、治療投与レジメンに従って、疾患、障害、および/または状態を患うまたはそれにかかりやすい被験者(例えば、動物)に投与された時、疾患、障害、および/または状態を治療するために十分な量を指す。一部の実施形態では、治療有効量は、疾患、障害、および/または状態の一つ以上の症状の発生率および/または重症度を減少する、および/またはその発症を遅延するものである。当業者であれば、「治療有効量」という用語は実際は、特定個人で治療の成功が達成されることを必要としないことを理解するであろう。むしろ、治療有効量は、このような治療を必要とする被験者に投与された時、かなりの数の被験者に特定の望ましい薬理反応を提供する量であることがある。一部の実施形態では、治療有効量への言及は、一つ以上の特定組織(例えば、疾患、障害または状態によって影響される組織)または体液(例えば、血液、唾液、血清、汗、涙、尿など)で測定された量への言及である場合がある。当業者であれば、一部の実施形態では、特定薬剤または治療の治療有効量は単一用量で処方および/または投与される場合があることを理解するであろう。一部の実施形態では、治療有効量は、例えば、投与レジメンの一部として、複数の用量で処方および/または投与される場合がある。
【0089】
「治療」(また「治療する」または「治療すること」)という用語は、広い意味では、特定の疾患、障害、および/または状態の一つ以上の症状、特徴、および/または原因を部分的または完全に軽減、改善、緩和、阻害、発症を遅延、および/または発生率を減少する物質(例えば、提供された組成物)の任意の投与を含む。一部の実施形態では、このような治療は、関連する疾患、障害および/または状態の兆候を示さない被験者、および/または疾患、障害、および/または状態の早期兆候のみを示す被験者に対して行われる場合がある。あるいはまたはさらに、一部の実施形態では、治療は、関連する疾患、障害および/または状態の一つ以上の確立された兆候を示す被験者に対して行われる場合がある。一部の実施形態では、治療は、関連する疾患、障害、および/または状態を患うとして診断された被験者に対するものである場合がある。一部の実施形態では、治療は、関連する疾患、障害、および/または状態の発症リスクの増加と統計的に相関する一つ以上の感受性因子を持つことが知られている被験者に対するものである場合がある。
【0090】
「バリアント」という用語には、参照実在物とかなりの構造的同一性を示すが、参照実在物と比べて一つ以上の化学的部分の存在が参照実在物から構造的に異なる実在物を含む。多くの実施形態では、「バリアント」は、その参照実在物とは機能的にも異なる。一般的に、特定の実在物が、参照実在物の「バリアント」と正しくみなされるかどうかは、参照実在物とのその構造同一性の程度に基づく。当業者であれば理解するように、すべての生物学的または化学的参照実在物は特定の特徴的構造要素を持つ。「バリアント」は、定義によると、一つ以上のこのような特徴的構造要素を共有する別個の化学的実在物である。いくつかの例を挙げると、小分子は特徴的なコア構造要素(例えば、マクロサイクルコア)および/または一つ以上の特徴的懸垂部分を持つ場合があり、従って小分子のバリアントは、コア構造要素および特徴的懸垂部分を共有するが、その他の懸垂部分および/またはコア内に存在する結合のタイプ(単に対する二重、Eに対するZなど)が異なるものであり、ポリペプチドは、直線または三次元空間でお互いに対して指定された位置を持つおよび/または特定の生物学的機能に寄与する複数のアミノ酸から成る特徴的配列要素を持つ場合があり、核酸は、直線または三次元空間でお互いに対して指定された位置を持つ複数のヌクレオチド残基から成る特徴的配列要素を持つ場合がある。例えば、「バリアントポリペプチド」は、アミノ酸配列の一つ以上の差異および/またはポリペプチド骨格に共有結合した化学的部分(例えば、炭化水素、脂質など)の一つ以上の差異の結果として、参照ポリペプチドとは異なる場合がある。一部の実施形態では、「バリアントポリペプチド」は、参照ポリペプチドと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、または99%の全体的配列同一性を示す。あるいはまたはさらに、一部の実施形態では、「バリアントポリペプチド」は、少なくとも一つの特徴的配列要素を参照ポリペプチドと共有しない。一部の実施形態では、参照ポリペプチドは一つ以上の生物活性を持つ。一部の実施形態では、「バリアントポリペプチド」は参照ポリペプチドの生物活性の一つ以上を共有する。一部の実施形態では、「バリアントポリペプチド」は参照ポリペプチドの生物活性の一つ以上を欠く。一部の実施形態では、「バリアントポリペプチド」は参照ポリペプチドと比べて一つ以上の生物活性のレベル減少を示す。多くの実施形態で、特定位置での少数の配列変更がなければ対象のポリペプチドが親のものと同一のアミノ酸配列を持つ場合、対象のポリペプチドは親または参照ポリペプチドの「バリアント」であるとみなされる。一般的に、親と比べて、バリアントの残基の20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満が置換される。一部の実施形態では、「バリアント」は親と比べて、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1個の置換残基を持つ。しばしば、「バリアント」は、非常に少数の(例えば、5、4、3、2、または1未満)の置換された機能残基(すなわち、特定の生物活性に参加する残基)を持つ。さらに、「バリアント」は一般的には5、4、3、2、または1以下の付加または欠失を持ち、親と比べて付加または欠失を持たないことがよくある。さらに、任意の付加または欠失は一般的には、約25、約20、約19、約18、約17、約16、約15、約14、約13、約10、約9、約8、約7、約6未満であり、通常は約5、約4、約3、または約2残基である。一部の実施形態では、親または参照ポリペプチドは自然界に見られるものである。当業者であれば理解するように、特に対象のポリペプチドが感染因子ペプチドである時、対象の特定ポリペプチドの複数のバリアントは、通常は自然界に見られる場合がある。
【0091】
「ベクター」という用語には、それが関連している別の核酸を輸送することができる核酸分子を含む。一部の実施形態では、ベクターは、染色体外複製および/または、真核および/または原核細胞などの宿主細胞中でそれらが連結している核酸の発現能力がある。動作可能なように連結された遺伝子の発現を方向付けることができるベクターは、本明細書では「発現ベクター」と呼ばれる。
【0092】
「野生型」という用語には、「正常」(変異体、病気の、変更されたなどに対して)な状態または状況で自然界に見られる構造および/または活性を持つ実在物を含む。当業者であれば、野生型遺伝子およびポリペプチドはしばしば複数の異なる形態(例えば、アレル)で存在することを理解するであろう。
【0093】
(発明を実施するための形態)
本発明は、とりわけ、がんの治療のためのPdcd1調節因子(例えば、抗PD-1抗体)の治療有効性を決定するため、およびT細胞反応およびシグナル伝達のアッセイのための、プログラム細胞死1(Pdcd1)をコードするヒト化遺伝物質を持つ改善されたおよび/または遺伝子操作された非ヒト動物を提供する。このような非ヒト動物は、PD-1調節因子の治療有効性およびそれらのPD-1阻害能力の決定の改善を提供する。従って、本発明は、さまざまながんの治療のための抗PD-1療法の開発のため、および免疫反応を増大して非ヒト動物のウィルス感染を治療および/または除去するために特に有用である。特に、本発明は、非ヒト動物の細胞の表面のヒト化PD-1タンパク質の発現をもたらすマウスPdcd1遺伝子のヒト化を包含する。このようなヒト化PD-1タンパク質は、抗腫瘍免疫反応を促進する抗PD-1治療薬の有効性を決定するための、ヒトPD-1細胞の供給源を提供する能力を持つ。一部の実施形態では、本発明の非ヒト動物は、非ヒト動物の細胞の表面上に発現されたヒト化PD-1タンパク質を通したPD-1シグナル伝達の阻害を介して、免疫反応の増大を示す。一部の実施形態では、ヒト化PD-1タンパク質は、ヒトPD-1タンパク質のN末端免疫グロブリンV領域の全部または一部に対応する配列を持つ。一部の実施形態では、ヒト化PD-1タンパク質は、マウスPD-1タンパク質の細胞内尾部に対応する配列を持ち、一部の実施形態では、マウスPD-1タンパク質の膜貫通領域および細胞内尾部に対応する配列を持つ。一部の実施形態では、ヒト化PD-1タンパク質は、ヒトPD-1タンパク質のアミノ酸残基21-170(または26-169、27-169、または27-145、または35-145)に対応する配列を持つ。一部の実施形態では、本発明の非ヒト動物は、非ヒト動物および異種性種(例えば、ヒト)からの遺伝物質を含む内因性Pdcd1遺伝子を備える。一部の実施形態では、本発明の非ヒト動物はヒト化Pdcd1遺伝子を備え、ここでヒト化Pdcd1遺伝子はヒトPDCD1遺伝子のエクソン2およびエクソン3の全体または一部を備える。一部の実施形態では、本発明の非ヒト動物はヒト化Pdcd1遺伝子を備え、ここでヒト化Pdcd1遺伝子は、ヒトPDCD1遺伝子のエクソン2およびエクソン3の最初の71 bp(すなわち、柄をコードする)に対応するヒトPDCD1の883 bpを備える。
【0094】
本発明のさまざまな態様が以下のセクションに詳細に記述されている。セクションの使用は本発明を限定することを意図しない。各セクションは本発明の任意の態様に適用することができる。本明細書では、特に指定のない限り、「または」の使用は「および/または」を意味する。
【0095】
プログラム細胞死1(Pdcd1)遺伝子
Pdcd1(CD279とも呼ばれる)は、アポトーシスを受けているT細胞ハイブリドーマの上方制御された遺伝子として最初に発見された(Ishida, Y. et al. (1992) EMBO J. 11(11):3887-3895)。Pdcd1遺伝子は、N末端免疫グロブリンV(IgV)領域を含むタイプI膜タンパク質(PD-1と呼ばれる)であるPD-1をコードする5つのエクソン、柄(~20アミノ酸の長さ)、膜貫通領域、および免疫受容体チロシン依存性抑制モチーフ(ITIM)および免疫受容体チロシン依存性スイッチモチーフ(ITSM)の両方を含む細胞内尾部から成る。PD-1は、例えば、B細胞、樹状細胞、活性化単球、ナチュラルキラー(NK)細胞および活性化T細胞などの、多くの細胞タイプ上で発現される(Keir, M.E., et al. (2008) Annu. Rev. Immunol. 26:677-704)。PD-1のさまざまなスプライスバリアントも報告されており、どのエクソンを欠くかに基づいて異なる(Nielsen, C. et al. (2005) Cell. Immunol. 235:109-116)。実際に、特定のスプライスバリアントは、自己免疫性疾患の原因因子として観察されている(Wan, B. et al. (2006) J. Immunol. 177(12):8844-8850)。さらに、Pdcd1欠損マウスは自己免疫状態を発症することが報告されており(Nishimura, H. et al. (1998) Intern. Immunol. 10(10):1563-1572; Nishimura, H. et al. (1999) Immunity 11:141-151; Nishimura, H. et al. (2001) Science 291:319-322)、これはPD-1を活性化リンパ球の負調節因子として固める案内をし、自己免疫性疾患の発症を防ぐ役割をする。興味深いことに、腫瘍がPD-1シグナル伝達を使用して、免疫系によるサーベイランスを逃れることが発見されている。従って、PD-1および少なくとも一つのそのリガンド(すなわち、PD-L1)が、PD-1阻害を介した腫瘍微小環境の抗腫瘍活性の促進によるがん療法のための標的として、現在調査されている(例えば、Pedoeem, A. et al. (2014) Clin. Immunol. 153:145-152; およびPhilips, G.K. and Atkins, M. (2014) Intern. Immunol. 8ページを参照)。
【0096】
将来のがん治療のための実用的な標的化療法を開発するためには、PD-1媒介機能およびPD-1経路のより徹底的で詳細な理解が必要である。
【0097】
Pdcd1およびPD-1配列
例示的なマウス、ヒトおよびヒト化Pdcd1およびPD-1配列が図8に記載されている。非ヒトPdcd1遺伝子のヒト化のための例示的ヒト核酸配列も図8に記載されている。
【0098】
ヒト化Pdcd1非ヒト動物
PD-1タンパク質をコードする非ヒト動物の内因性遺伝子座(例えば、Pdcd1遺伝子座)の遺伝子改変から生じる非ヒト動物の細胞表面上に、ヒト化PD-1タンパク質を発現する非ヒト動物が提供されている。本明細書に記述された適切な例には齧歯類、特にマウスが含まれる。
【0099】
一部の実施形態では、ヒト化Pdcd1遺伝子は、異種性種(例えば、ヒト)からの遺伝物質を備え、ヒト化Pdcd1遺伝子は異種性種からの遺伝物質のコード化部分を備えるPD-1タンパク質をコードする。一部の実施形態では、本発明のヒト化Pdcd1遺伝子は、細胞の血漿膜上に発現されるPD-1タンパク質の細胞外部分をコードする異種性種のゲノムDNAを備える。前記ヒト化Pdcd1遺伝子を含む非ヒト動物、非ヒト胚、および細胞を作るための非ヒト動物、胚、細胞および標的化構築物も提供されている。
【0100】
一部の実施形態では、内因性Pdcd1遺伝子は欠損している。一部の実施形態では、内因性Pdcd1は変更されており、内因性Pdcd1遺伝子の一部分が異種性種配列(例えば、ヒトPDCD1配列の全部または一部)で置換されている。一部の実施形態では、内因性Pdcd1遺伝子のすべてまたは実質的にすべてが、異種性遺伝子(例えば、ヒトPDCD1遺伝子)で置換される。一部の実施形態では、異種Pdcd1遺伝子の一部分が、内因性非ヒトPdcd1遺伝子の内因性Pdcd1遺伝子座に挿入される。一部の実施形態では、異種遺伝子はヒト遺伝子である。一部の実施形態では、改変またはヒト化は、内因性Pdcd1遺伝子の二つの複製の一つに対して行われ、ヒト化Pdcd1遺伝子に対してヘテロ接合性の非ヒト動物を生じる。その他の実施形態では、ヒト化Pdcd1遺伝子に対してホモ接合性の非ヒト動物が提供されている。
【0101】
さまざまな態様で、非ヒト動物は、ヒトPDCD1遺伝子の全部または一部を内因性非ヒトPdcd1遺伝子座に含む。従って、このような非ヒト動物は異種Pdcd1遺伝子を持つとして説明することができる。内因性Pdcd1遺伝子座で置換、挿入、改変されたまたは変更されたPdcd1遺伝子、またはこのような遺伝子から発現されたタンパク質は、例えば、PCR、ウェスタンブロット、サザンブロット、制限酵素断片長多型(RFLP)、または対立遺伝子の獲得または欠失アッセイを含む、さまざまな方法を使用して検出できる。一部の実施形態では、非ヒト動物は、ヒト化Pdcd1遺伝子に対してヘテロ接合性である。
【0102】
さまざまな実施形態で、本発明によるヒト化Pdcd1遺伝子は、図8のヒトPDCD1遺伝子に見られる第二のエクソンと少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一の配列を持つ第二のエクソンを持つPdcd1遺伝子を含む。
【0103】
さまざまな実施形態で、本発明によるヒト化Pdcd1遺伝子は、図8のヒトPDCD1遺伝子に見られる第二のエクソンと実質的に同一の配列を持つ第二のエクソンを持つPdcd1遺伝子を含む。
【0104】
さまざまな実施形態で、本発明によるヒト化Pdcd1遺伝子は、図8のヒトPDCD1遺伝子に見られる第二のエクソンと同一の配列を持つ第二のエクソンを持つPdcd1遺伝子を含む。
【0105】
さまざまな実施形態で、本発明によるヒト化Pdcd1遺伝子は、図8のヒト化Pdcd1 mRNA配列に見られる第三のエクソンと少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一の配列を持つ第三のエクソンを持つPdcd1遺伝子を含む。
【0106】
さまざまな実施形態で、本発明によるヒト化Pdcd1遺伝子は、図8のヒト化Pdcd1 mRNA配列に見られる第三のエクソンと実質的に同一の配列を持つ第三のエクソンを持つPdcd1遺伝子を含む。
【0107】
さまざまな実施形態で、本発明によるヒト化Pdcd1遺伝子は、図8のヒト化Pdcd1 mRNA配列に見られる第三のエクソンと同一の配列を持つ第三のエクソンを持つPdcd1遺伝子を含む。
【0108】
さまざまな実施形態で、本発明によるヒト化Pdcd1遺伝子は、配列番号:21または配列番号:23と少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一の配列を備えるPdcd1遺伝子を含む。
【0109】
さまざまな実施形態で、本発明によるヒト化Pdcd1遺伝子は、配列番号:21または配列番号:23と実質的に同一の配列を備えるPdcd1遺伝子を含む。
【0110】
さまざまな実施形態で、本発明によるヒト化Pdcd1遺伝子は、配列番号:21または配列番号:23と同一の配列を備えるPdcd1遺伝子を含む。
【0111】
さまざまな実施形態で、本発明によるヒト化Pdcd1遺伝子は、図8のヒトPDCD1遺伝子に見られる第二のエクソンおよび第三のエクソンの一部分と少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一の配列をそれぞれが持つ第二のエクソンおよび第三のエクソンの一部分を持つPdcd1遺伝子を含む。
【0112】
さまざまな実施形態で、本発明によるヒト化Pdcd1遺伝子は、図8のマウスPdcd1遺伝子に見られる第一、第四および第五のエクソンと少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一の配列をそれぞれが持つ第一、第四および第五のエクソンを持つPdcd1遺伝子を含む。
【0113】
さまざまな実施形態で、本発明によるヒト化Pdcd1遺伝子は、図8のマウスPdcd1遺伝子に見られる第一、第三の一部分、第四および第五のエクソンと少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一の配列をそれぞれが持つ第一、第三の一部分、第四および第五のエクソンを持つPdcd1遺伝子を含む。
【0114】
さまざまな実施形態で、本発明によるヒト化Pdcd1遺伝子は、図8のマウスPdcd1遺伝子に見られる5’非翻訳領域および3’非翻訳領域と少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上)同一の配列をそれぞれ持つ5’非翻訳領域および3’非翻訳領域を持つPdcd1遺伝子を含む。
【0115】
さまざまな実施形態で、本発明によるヒト化Pdcd1遺伝子は、図8のヒト化Pdcd1ヌクレオチドコード配列に見られるヌクレオチドコード化配列と少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一のヌクレオチドコード配列(例えば、cDNA配列)を持つPdcd1遺伝子を含む。
【0116】
さまざまな実施形態で、本発明によるヒト化Pdcd1 mRNA配列は、図8に見られるヒト化mRNA配列と少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一の配列を備える。
【0117】
さまざまな実施形態で、本発明によるヒト化Pdcd1遺伝子は、図8のPD-1ポリペプチド配列に見られるアミノ酸配列と少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一のアミノ酸配列を持つPD-1ポリペプチドをコードする。
【0118】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物によって生産されるヒト化PD-1タンパク質は、図8に見られるヒトPD-1タンパク質の細胞外部分と少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一のアミノ酸配列を持つ細胞外部分を持つ。
【0119】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物によって生産されるヒト化PD-1タンパク質は細胞外部分を持ち、細胞外部分は、図8のヒトまたはヒト化PD-1タンパク質に見られるアミノ酸残基21~170と少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一のアミノ酸配列を備える。
【0120】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物によって生産されるヒト化PD-1タンパク質は細胞外部分を持ち、細胞外部分は、図8のヒトまたはヒト化PD-1タンパク質に見られるアミノ酸残基21~170と実質的に同一のアミノ酸配列を備える。
【0121】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物によって生産されるヒト化PD-1タンパク質は細胞外部分を持ち、細胞外部分は、図8のヒトまたはヒト化PD-1タンパク質に見られるアミノ酸残基21~170と同一のアミノ酸配列を備える。
【0122】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物によって生産されるヒト化PD-1タンパク質は細胞外部分を持ち、細胞外部分は、図8のヒトまたはヒト化PD-1タンパク質に見られるアミノ酸残基26~169と少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一のアミノ酸配列を備える。
【0123】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物によって生産されるヒト化PD-1タンパク質は細胞外部分を持ち、細胞外部分は、図8のヒトまたはヒト化PD-1タンパク質に見られるアミノ酸残基26~169と実質的に同一のアミノ酸配列を備える。
【0124】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物によって生産されるヒト化PD-1タンパク質は細胞外部分を持ち、細胞外部分は、図8のヒトまたはヒト化PD-1タンパク質に見られるアミノ酸残基26~169と同一のアミノ酸配列を備える。
【0125】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物によって生産されるヒト化PD-1タンパク質は細胞外部分を持ち、細胞外部分は、図8のヒトまたはヒト化PD-1タンパク質に見られるアミノ酸残基27~169と少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一のアミノ酸配列を備える。
【0126】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物によって生産されるヒト化PD-1タンパク質は細胞外部分を持ち、細胞外部分は、図8のヒトまたはヒト化PD-1タンパク質に見られるアミノ酸残基27~169と実質的に同一のアミノ酸配列を備える。
【0127】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物によって生産されるヒト化PD-1タンパク質は細胞外部分を持ち、細胞外部分は、図8のヒトまたはヒト化PD-1タンパク質に見られるアミノ酸残基27~169と同一のアミノ酸配列を備える。
【0128】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物によって生産されるヒト化PD-1タンパク質は細胞外部分を持ち、細胞外部分は、図8のヒトまたはヒト化PD-1タンパク質に見られるアミノ酸残基27~145と少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一のアミノ酸配列を備える。
【0129】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物によって生産されるヒト化PD-1タンパク質は細胞外部分を持ち、細胞外部分は、図8のヒトまたはヒト化PD-1タンパク質に見られるアミノ酸残基27~145と実質的に同一のアミノ酸配列を備える。
【0130】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物によって生産されるヒト化PD-1タンパク質は細胞外部分を持ち、細胞外部分は、図8のヒトまたはヒト化PD-1タンパク質に見られるアミノ酸残基27~145と同一のアミノ酸配列を備える。
【0131】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物によって生産されるヒト化PD-1タンパク質は細胞外部分を持ち、細胞外部分は、図8のヒトまたはヒト化PD-1タンパク質に見られるアミノ酸残基35~145と少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一のアミノ酸配列を備える。
【0132】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物によって生産されるヒト化PD-1タンパク質は細胞外部分を持ち、細胞外部分は、図8のヒトまたはヒト化PD-1タンパク質に見られるアミノ酸残基35~145と実質的に同一のアミノ酸配列を備える。
【0133】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物によって生産されるヒト化PD-1タンパク質は細胞外部分を持ち、細胞外部分は、図8のヒトまたはヒト化PD-1タンパク質に見られるアミノ酸残基35~145と同一のアミノ酸配列を備える。
【0134】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物によって生産されるヒト化PD-1タンパク質は、図8に見られるヒトまたはヒト化PD-1タンパク質のN末端免疫グロブリンV領域と少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一のアミノ酸配列を持つN末端免疫グロブリンV領域を持つ。
【0135】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物によって生産されるヒト化PD-1タンパク質は、図8のヒトまたはヒト化PD-1タンパク質に見られるN末端免疫グロブリンV領域と実質的に同一のアミノ酸配列を持つN末端免疫グロブリンV領域を持つ。
【0136】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物によって生産されるヒト化PD-1タンパク質は、図8のヒトまたはヒト化PD-1タンパク質に見られるN末端免疫グロブリンV領域と同一のアミノ酸配列を持つN末端免疫グロブリンV領域を持つ。
【0137】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物によって生産されるヒト化PD-1タンパク質は、図8に見られるマウスPD-1タンパク質の膜貫通領域と少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一の配列を持つ膜貫通領域を持つ。
【0138】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物によって生産されるヒト化PD-1タンパク質は、図8に見られるマウスPD-1タンパク質の細胞内尾部と少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一の配列を持つ細胞内尾部を持つ。
【0139】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物によって生産されるヒト化PD-1タンパク質は、図8のヒトPD-1タンパク質に見られるアミノ酸残基27~169(または26~169)と少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一のアミノ酸配列を持つ。
【0140】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物によって生産されるヒト化PD-1タンパク質は、図8のヒトPD-1タンパク質に見られるアミノ酸残基27~169(または26~169)と実質的に同一のアミノ酸配列を持つ。
【0141】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物によって生産されるヒト化PD-1タンパク質は、図8のヒトPD-1タンパク質に見られるアミノ酸残基27~169(または26~169)と同一のアミノ酸配列を持つ。
【0142】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物によって生産されるヒト化PD-1タンパク質は、図8に見られるヒト化PD-1タンパク質のアミノ酸配列と少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)同一のアミノ酸配列を持つ。
【0143】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物によって生産されるヒト化PD-1タンパク質は、図8に見られるヒト化PD-1タンパク質のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を持つ。
【0144】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物によって生産されるヒト化PD-1タンパク質は、図8に見られるヒト化PD-1タンパク質のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を持つ。
【0145】
特定の多型形態、アレルバリアント(例えば、単一のアミノ酸の差)または代替的にスプライスされたイソフォームを含む、ヒト化PD-1タンパク質を発現する非ヒト動物を作るための組成物および方法が提供されており、これにはこのようなタンパク質をヒトプロモーターおよびヒト調節配列から発現する非ヒト動物を作るための組成物および方法を含む。一部の実施形態では、このようなタンパク質を内因性プロモーターおよび内因性調節配列から発現する非ヒト動物を作るための組成物および方法も提供されている。一部の特定実施形態では、内因性プロモーターおよび内因性調節配列は、内因性齧歯類プロモーターおよび内因性齧歯類調節配列である。方法は、ヒトPD-1タンパク質の全部または一部をコードする遺伝物質を、内因性Pdcd1遺伝子に対応する非ヒト動物のゲノムの正確な位置に挿入し、それによって、全部または一部がヒトであるPD-1タンパク質を発現するヒト化Pdcd1遺伝子を生成する工程を含む。一部の実施形態では、方法は、ヒトPDCD1遺伝子のエクソン2およびエクソン3の全部または一部に対応するゲノムDNAを非ヒト動物の内因性Pdcd1遺伝子に挿入し、それによって、挿入されたエクソンによりコードされるアミノ酸を含有するヒト部分を含むPD-1タンパク質をコードするヒト化遺伝子を生成する工程を含む。
【0146】
適切な場合、ヒト(またはヒト化)PD-1タンパク質の全部または一部をコードする遺伝物質のコード領域またはポリヌクレオチド配列は、非ヒト動物の細胞からの発現のために最適化されたコドンを含むように改変される場合がある(例えば、米国特許第5,670,356号および第5,874,304号を参照)。コドン最適化配列は合成配列であり、非コドン最適化親ポリヌクレオチドによってコードされる同一ポリペプチド(または全長ポリペプチドと実質的に同じ生物学的に活性な全長ポリペプチドの生物学的活性フラグメント)をコードすることが好ましい。一部の実施形態では、ヒト(またはヒト化)PD-1タンパク質の全部または一部をコードする遺伝物質のコード領域は、特定の細胞タイプ(例えば、齧歯類細胞)に対してコドン使用頻度を最適化するように変更された配列を含む場合がある。例えば、非ヒト動物(例えば、齧歯類)の内因性Pdcd1遺伝子に挿入される、ヒトPDCD1遺伝子のエクソン2およびエクソン3の一部分(例えば、71 bp)に対応するゲノムDNAのコドンは、非ヒト動物の細胞での発現のために最適化される場合がある。このような配列はコドン最適化配列として記述される場合がある。
【0147】
ヒト化Pdcd1遺伝子アプローチは、内因性遺伝子の比較的最小限の改変を利用し、非ヒト動物の自然PD-1媒介シグナル伝達をもたらすが、これはさまざまな実施形態では、Pdcd1配列のゲノム配列が単一フラグメントで改変されており、従って必要な調節配列を含むことによって正常機能を維持するためである。従って、このような実施形態では、Pdcd1遺伝子改変はその他の周囲の遺伝子またはその他の内因性Pdcd1相互作用遺伝子(例えば、PD-L1、PD-L2など)に影響を与えない。さらに、さまざまな実施形態で、改変は、細胞膜上の機能的PD-1膜貫通タンパク質の組み立てに影響を与えず、結合および、改変によって影響を受けないタンパク質の細胞質部分を通したその後のシグナル伝達を介して正常なエフェクター機能を維持する。
【0148】
内因性マウスPdcd1遺伝子およびヒトPDCD1遺伝子のゲノム構造の略図(正確な縮尺ではない)が図1に提供されている。ヒトPDCD1遺伝子のエクソン2およびエクソン3の一部分を含むゲノムフラグメントを使用して、内因性マウスPdcd1遺伝子をヒト化するための例示的方法が図2に提供されている。図示されるように、ヒトPDCD1遺伝子のエクソン2およびエクソン3の一部分(例えば、最初の71 bp)を含む883 bpゲノムDNAフラグメントが、標的化構築物によって内因性マウスPdcd1遺伝子座の900 bp配列の場所に挿入されている。883 bpヒトDNAフラグメントは、ヒトDNAから直接クローンを作るか、またはソース配列(例えば、Genbank登録番号NM_005018.2)から合成される場合がある。このゲノムDNAには、リガンド結合に関与するヒトPD-1タンパク質の細胞外部分(例えば、アミノ酸残基27~169または26~169)の実質的にすべてをコードする遺伝子の部分を含む。
【0149】
内因性Pdcd1遺伝子座にヒト化Pdcd1遺伝子を持つ非ヒト動物(例えば、マウス)は、当技術分野で知られている任意の方法で作ることができる。例えば、選択可能なマーカー遺伝子を持つヒトPdcd1遺伝子の全部または一部を導入する標的化ベクターを作ることができる。図2は、ヒトPDCD1遺伝子のエクソン2およびエクソン3の最初の71 bpを含む883 bpヒトDNAフラグメントの挿入物を備えるマウスゲノムの内因性Pdcd1座を含む標的化ベクターを示す。図示されるように、標的化構築物は、内因性マウスPdcd1遺伝子(~61.7 Kb)のエクソン2の上流の配列を含む5’ホモロジーアームに続く薬剤選択カセット(例えば、loxP配列のそばの両側に隣接するネオマイシン耐性遺伝子、~5 Kb)、ヒトPdcd1遺伝子のエクソン2およびエクソン3の最初の71 bpを含むゲノムDNAフラグメント(883 bp)、および内因性マウスエクソン3の残りの配列(すなわち、PD-1タンパク質の膜貫通部分をコードする部分)、内因性マウスPdcd1のエクソン4およびエクソン5を含む3’ホモロジーアーム(~84 Kb)を含む。標的化構築物は、自動削除薬物選択カセット(例えば、loxP配列のそばに隣接したネオマイシン耐性遺伝子、米国特許第8,697,851号、第8,518,392号および第8,354,389号を参照のこと、これらはすべて参照により本明細書に組み込まれる)を含む。胚性幹細胞を電気穿孔すると、内因性野生型Pdcd1遺伝子の900 bpをヒトPDCD1遺伝子の883 bp(すなわち、エクソン2およびエクソン3の最初の71 bp)と交換する改変内因性Pdcd1遺伝子が作られ、これは標的化ベクターに含有される。ヒト化Pdcd1遺伝子が作られ、883 bpのヒトDNAフラグメント(すなわち、ヒトPDCD1遺伝子のエクソン2およびエクソン3の71 bp)によってコードされるアミノ酸を含むヒト化PD-1タンパク質を発現する細胞または非ヒト動物が結果として生じる。薬剤選択カセットは発達依存性の様式で除去される、すなわち、その生殖系細胞に上述のヒト化Pdcd1遺伝子を含むマウスから派生した子孫は、発達中に分化細胞から選択可能マーカーを脱落させる(図2の下部を参照)。
【0150】
マウスのヒト化Pdcd1遺伝子(すなわち、ヒトタンパク質部分およびマウス部分を含むPD-1タンパク質をコードするPdcd1遺伝子を持つマウス)を用いる実施形態が本明細書では広く検討されているが、ヒト化Pdcd1遺伝子を備えるその他の非ヒト動物も提供されている。一部の実施形態では、このような非ヒト動物は、齧歯類Pdcd1プロモーターに動作可能なように連結したヒト化Pdcd1遺伝子を備える。一部の実施形態では、このような非ヒト動物は、内因性Pdcd1プロモーターに動作可能なように連結したヒト化Pdcd1遺伝子を備え、一部の実施形態では、内因性齧歯類Pdcd1プロモーターである。一部の実施形態では、このような非ヒト動物は、内因性遺伝子座からヒト化PD-1タンパク質を発現し、ヒト化PD-1タンパク質はヒトPD-1タンパク質のアミノ酸残基21~170(または26~169、または27~169、27~145または35~145)を備える。このような非ヒト動物には、本明細書に開示されたPD-1タンパク質を発現するように遺伝子改変された動物のいずれかを含み、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ウシ(例えば、雌牛、未去勢オスウシ、バッファロー)、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、イヌ、フェレット、霊長類(例えば、マーモセット、アカゲザル)などの哺乳類が含まれる。例えば、好適な遺伝子改変可能ES細胞が直ちに利用可能でない非ヒト動物については、遺伝子改変を含む非ヒト動物を作るために他の方法が採用される。このような方法には、例えば、非ES細胞ゲノム(例えば、線維芽細胞または誘発された多能性細胞)を改変すること、および体細胞核移植(SCNT)を利用して好適な細胞、例えば除核卵母細胞、に遺伝子改変されたゲノムを導入すること、および改変された細胞(例えば、改変された卵母細胞)を胚の形成に好適な条件下で非ヒト動物に懐胎させることが挙げられる。
【0151】
非ヒト動物ゲノム(例えば、ブタ、メスウシ、齧歯類、ニワトリなどのゲノム)の改変方法には、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)またはTALエフェクターヌクレアーゼ(transcription activator-like effector nuclease、TALEN)を用い、ゲノムを改変してヒト化Pdcd1遺伝子を含める方法が含まれる。
【0152】
一部の実施形態では、本発明の非ヒト動物は哺乳動物である。一部の実施形態では、本発明の非ヒト動物は、例えばトビネズミ上科またはネズミ上科の小さな哺乳動物である。一部の実施形態では、本発明の遺伝子改変動物は齧歯類である。一部の実施形態では、本発明の齧歯類はマウス、ラット、ハムスターから選択される。一部の実施形態では、本発明の齧歯類はネズミ上科から選択される。一部の実施形態では、本発明の遺伝子改変動物は、ヨルマウス科(例えば、マウス様のハムスター)、キヌゲネズミ科(例えば、ハムスター、New Worldラットおよびマウス、ハタネズミ)、ネズミ科(純種のマウスおよびラット、アレチネズミ、トゲマウス、タテガミネズミ)、アシナガマウス科(キノボリマウス、ロックマウス、オジロラット、マダガスカルラットおよびマウス)、トゲヤマネ科(例えば、トゲヤマネ)、およびメクラネズミ科(例えば、メクラネズミ、タケネズミ、および高原モグラネズミ)から選択された科からのものである。一部の実施形態では、本発明の遺伝子改変齧歯類は、純種のマウスまたはラット(ネズミ科)、アレチネズミ、トゲマウス、およびタテガミネズミから選択される。一部の実施形態では、本発明の遺伝子改変マウスはネズミ科のメンバーからのものである。一部の実施形態では、本発明の非ヒト動物は齧歯類である。一部の実施形態では、本発明の齧歯類はマウスおよびラットから選択される。一部の実施形態では、本発明の非ヒト動物はマウスである。
【0153】
一部の実施形態では、本発明の非ヒト動物は、C57BL/A、C57BL/An、C57BL/GrFa、C57BL/KaLwN、C57BL/6、C57BL/6J、C57BL/6ByJ、C57BL/6NJ、C57BL/10、C57BL/10ScSn、C57BL/10Cr、およびC57BL/Olaから選択されるC57BL系のマウスである齧歯類である。一部の実施形態では、本発明のマウスは、129P1、129P2、129P3、129X1、129S1(例えば、129S1/SV、129S1/SvIm)、129S2、129S4、129S5、129S9/SvEvH、129/SvJae、129S6(129/SvEvTac)、129S7、129S8、129T1、129T2である系から成る群から選択される129系である(例えば、Festing et al., 1999, Mammalian Genome 10:836; Auerbach, W. et al., 2000, Biotechniques 29(5):1024-1028, 1030, 1032を参照)。一部の実施形態では、本発明の遺伝子改変マウスは、前述の129系と前述のC57BL/6系との混合である。一部の実施形態では、本発明の遺伝子改変マウスは、前述の129系の混合、または前述のBL/6系の混合である。一部の実施形態では、本明細書に記述された混合の129系は129S6(129/SvEvTac)系である。一部の実施形態では、本発明のマウスはBALB系(例えばBALB/c系)である。一部の実施形態では、本発明のマウスはBALB系と別の前述の系との混合である。
【0154】
一部の実施形態では、本発明の非ヒト動物はラットである。一部の実施形態では、本発明のラットは、ウィスターラット、LEA系、Sprague Dawley系、フィッシャー系、F344、F6およびDark Agoutiから選択される。一部の実施形態では、本明細書に記述されたラット系は、ウィスター、LEA、Sprague Dawley、フィッシャー、F344、F6、およびDark Agoutiから成る群から選択された二つ以上の系の混合である。
【0155】
ヒト化Pdcd1遺伝子を持つ非ヒト動物を用いる方法
PD-1機能の調査ではさまざまなPdcd1変異体およびトランスジェニック非ヒト動物の使用を採用した(例えば、Nishimura, H. et al. (1998) Intern. Immunol. 10(10):1563-1572; Nishimura, H. et al. (1999) Immunity 11:141-151; Nishimura, H. et al. (2001) Science 291:319-322; Iwai, Y. et al. (2004) Intern. Immunol. 17(2):133-144; Keir, M. E. et al. (2005) J. Immunol. 175:7372-7379; Keir, M. E. et al. (2007) J. Immunol. 179:5064-5070; Carter, L.L. et al. (2007) J. Neuroimmunol. 182:124-134; Chen, L. et al. (2007) Europ. Soc. Organ Transplant. 21:21-29; Okazaki, T. et al. (2011) J. Exp. Med. 208(2):395-407;米国特許第7,414,171号、およびヨーロッパ特許第1 334 659 B1を参照、これらは参照により本明細書に組み込まれる)。このような変異体およびトランスジェニック動物は、PD-1発現の分子側面、さまざまな細胞プロセスの機能および調節を決定する上で有用であった。しかし、それらには限界がある。例えば、マウスPdcd1遺伝子のエクソン1への、ヒトPD-1 cDNAのノックインによって作製されたPD-1欠損マウスは、PMA(Carter, L.L.ら、上記参照)で刺激した後でもヒトPD-1を発現しなかった。さらに、異なる遺伝的背景のPD-1変異動物での表現型のかなりの差が、特に、さまざまな機能および/または調節活性をPD-1に割り当てようとする際、調査を複雑化した。それでも、PD-1を過剰発現するその他のトランスジェニック動物が作製されてきた(Chen, L.ら、上記参照)。このような動物は、導入遺伝子の異なる発現パターンを示しており、これは構築物のデザインに合理的に起因しうる。さらに、同じソース遺伝物質(すなわちマウス)を使用したために、PD-1過剰発現は、導入遺伝子の潜在的な位置効果のために、トランスジェニックPD-1ではなく、内因性PD-1に対応していた可能性がある。PD-1トランスジェニックマウスは、一部のPD-1媒介生物機能を明らかにする上で有用なことが示されているが、それらは得られた結果で変動性を示しており、これは少なくとも一部は、マウスを作製するために用いられた異なるアプローチに基づく。従って、PD-1媒介生物学を利用している現在のインビボシステムは不完全である。PD-1媒介生物機能およびシグナル伝達経路の分子側面は、トランスジェニックマウスではその潜在的能力の限界まで利用されていない。
【0156】
本発明の非ヒト動物は、さまざまなアッセイに有用なヒト(またはヒト化)PD-1を発現する、改善されたインビボシステムおよび生体物質(例えば、細胞)の供給源を提供する。さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物は、PD-1を標的とする、および/またはPD-1シグナル伝達を調節する(例えば、PD-L1および/またはPD-L2との相互作用を妨げる)治療薬を開発するために使用される。さまざまな実施形態では、本発明の非ヒト動物は、ヒトPD-1を結合する候補治療薬(例えば、抗体)を特定、スクリーニングおよび/または開発するために使用される。さまざまな実施形態では、本発明の非ヒト動物は、ヒトPD-1のヒトPD-L1および/またはヒトPD-L2との相互作用を阻害する候補治療薬(例えば、抗体)をスクリーニングおよび開発するために使用される。さまざまな実施形態では、本発明の非ヒト動物は、本明細書に記述された非ヒト動物の細胞の表面上のヒト化PD-1の拮抗薬および/または作動薬の結合プロファイルを決定するために使用され、一部の実施形態では、本発明の非ヒト動物は、ヒトPD-1に結合するひとつ以上の候補治療薬抗体のエピトープまたは複数のエピトープを決定するために使用される。
【0157】
さまざまな実施形態では、本発明の非ヒト動物は、抗PD-1抗体の薬物動態プロフィルを決定するために使用される。さまざまな実施形態で、本発明の一つ以上の非ヒト動物およびひとつ以上の対照または参照非ヒト動物がそれぞれ、ひとつ以上の候補治療抗PD-1抗体にさまざまな用量(例えば、0.1 mg/kg、0.2 mg/kg、0.3 mg/kg、0.4 mg/kg、0.5 mg/kg、1 mg/kg、2 mg/kg、3 mg/kg、4 mg/kg、5 mg/mg、7.5 mg/kg、10 mg/kg、15 mg/kg、20 mg/kg、25 mg/kg、30 mg/kg、40 mg/kg、または50 mg/kgまたはそれ以上)で曝露される。候補治療薬抗体は、非経口および非注射投与経路を含む、任意の望ましい投与経路で投薬される場合がある。非経口経路には、例えば、静脈内、動脈内、門脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、髄腔内、くも膜下腔内、側脳室内、頭蓋内、胸腔内または注入のその他の経路を含む。非注射経路には、例えば、経口、鼻、経皮、肺、直腸、口腔、膣、眼を含む。投与は、連続注入、局所投与、インプラント(ゲル、膜など)からの持続放出、および/または静脈内注射による場合もある。非ヒト動物(ヒト化および対照)から血液がさまざまな時点(例えば、0時間、6時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、または最大30日またはそれ以上の日数)で単離される。さまざまなアッセイは、総IgG、抗治療抗体反応、凝集などを含むがこれらに限定されない、本明細書に記述された非ヒト動物から取得されたサンプルを使用して、投与された候補治療抗体の薬物動態プロファイルを決定するために実施される場合がある。
【0158】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物は、PD-1シグナル伝達阻害または調節の治療効果および細胞変化の結果としての遺伝子発現への効果を測定するために使用される。さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物またはそれらから単離された細胞は、非ヒト動物の細胞表面上のヒト化PD-1タンパク質(またはPD-1タンパク質のヒト部分)に結合する候補治療薬に曝露され、それに続く期間の後、例えば、接着、アポトーシス、サイトカイン生産、炎症、増殖、自己免疫寛容およびウィルス感染(または反応)など、PD-1依存性プロセスへの効果について分析された。
【0159】
本発明の非ヒト動物は、ヒト化PD-1タンパク質、従って、細胞、細胞株を発現し、細胞培養物を生成して、例えば、特に拮抗薬または作動薬がヒトPD-1配列もしくはエピトープに特異的であるかまたは、代替的に、PD-L1および/またはPD-L2と関連するヒトPD-1配列またはエピトープに特異的である場合に、PD-1拮抗薬または作動薬の結合または機能をアッセイするための、結合および機能アッセイに使用するためのヒト化PD-1の供給源としての役割を果たすことができる。さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物から単離された細胞を使用して、候補治療抗体によって結合されたPD-1エピトープを決定することができる。さまざまな実施形態で、本明細書に記述された非ヒト動物によって発現されたヒト化PD-1タンパク質は、バリアントアミノ酸配列を備える場合がある。自己免疫性および感染性の疾患と関連するバリアントヒトPD-1タンパク質(例えば、多型)が報告されている(例えば、Lee, Y.H. et al. (2014) Z. Rheumatol. PMID: 24942602; Mansur, A. et al. (2014) J. Investig. Med. 62(3):638-643; Nasi, M. et al. (2013) Intern. J. Infect. Dis. 17:e845-e850; Piskin, I.E. et al. (2013) Neuropediatrics 44(4):187-190; Carter, L.L. et al. (2007) J. Neuroimmunol. 182(1-2):124-134; Wan, B. et al. (2006) J. Immunol. 177(12):8844-8850を参照)。例示的ヒトPD-1バリアントは、NCBIからのSNP GeneViewウェブページに記載されているものを含み、表3に要約されている。さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物はヒト化PD-1タンパク質バリアントを発現する。さまざまな実施形態で、バリアントは、リガンド結合と関連するアミノ酸位置の多型である。さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物は、ヒトPD-1の多型バリアントとの相互作用を通したリガンド結合の効果を決定するために使用される。一部の実施形態では、本発明の非ヒト動物は、表3に見られるヒトPD-1タンパク質バリアントを発現する。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0160】
本発明の非ヒト動物からの細胞は、その場限りで単離して使用するか、または多世代にわたって培養物中で維持することができる。さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物からの細胞は(例えば、ウィルスの使用によって)不死化され、培養物中(例えば、連続培養物中)で無期限に維持される。
【0161】
さまざまな実施形態で、本発明の細胞および/または非ヒト動物は、抗原に対する免疫反応のPD-1媒介機能を決定するために、さまざまな免疫付与レジメンで使用される。一部の実施形態では、ヒト(またはヒト化)PD-1に結合する、またはその一つ以上の機能を阻害する候補治療薬が、本発明の非ヒト動物で特徴付けられる。適切な測定法には、さまざまな細胞アッセイ、増殖アッセイ、血清免疫グロブリン分析(例えば、抗体価)、細胞毒性アッセイ、リガンド・受容体相互作用の特徴付け(例えば、免疫沈降アッセイ)が含まれる。一部の実施形態では、本発明の非ヒト動物は、抗原に対する免疫反応のPD-1媒介機能調節を特徴付けるために使用される。一部の実施形態では、抗原は自己免疫性の疾患、障害または状態と関連している。一部の実施形態では、抗原は炎症性疾患、障害または状態と関連している。一部の実施形態では、抗原は検査抗原(例えば、オボアルブミンまたはOVA)である。一部の実施形態では、抗原は、治療を必要とする一人以上のヒト患者が患っている疾患または状態と関連する標的である。
【0162】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物は、ヒトPD-1を標的とする候補治療薬の薬理・毒性学的側面を検査するための自己抗体生産の力価を決定するために血清アッセイで使用される。一部の実施形態では、本発明の非ヒト動物での自己抗体生産は、非ヒト動物に誘発された一つ以上の自己免疫性の疾患、障害または状態から生じる。
【0163】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物は、ある抗原に対する特異的T細胞依存性およびB細胞依存性反応を含むがそれらに限定されない、免疫反応のPD-1依存性調節を調節する化合物または生物薬剤の治療能力を決定するために、一つ以上の抗原を使用した曝露に使用される。
【0164】
さまざまな実施形態で、本発明の細胞および/または非ヒト動物は、ヒトPD-1シグナル伝達を調節する候補治療薬をスクリーニングおよび開発するために、生存および/または増殖アッセイ(例えば、BまたはT細胞を用いて)で使用される。PD-1の活性化または喪失は、T細胞反応の調節に重要な役割を果たし、PD-1による自己免疫寛容の調節は、PD-1の細胞外領域の特異的エピトープの活性化から生じる可能性があり、従って、本発明の非ヒト動物の細胞および/または本明細書に記述された非ヒト動物を使用して、候補PD-1調節因子(例えば、拮抗薬または作動薬)が特定、特徴付けおよび開発される可能性がある。一部の実施形態では、本発明の細胞および/または非ヒト動物は、PD-1の存在下および不在下で特定細胞(例えば、がん細胞)の増殖またはアポトーシスへの効果を決定するための生存または死亡アッセイで使用される。
【0165】
さまざまな実施形態で、本発明の細胞および/または非ヒト動物は、移植されたヒト細胞または組織に対する生理的(例えば、免疫)反応でのPD-1媒介機能を決定するための、異種(例えば、ヒト)細胞の異種移植に使用される。一部の実施形態では、ヒトPD-1に結合する、またはその一つ以上の機能を阻害する候補治療薬が、本発明の非ヒト動物で特徴付けられる。適切な測定法には、さまざまな細胞アッセイ、増殖アッセイ、血清免疫グロブリン分析(例えば、抗体価)、細胞毒性アッセイ、およびリガンド・受容体相互作用の特徴付け(免疫沈降アッセイ)が含まれる。一部の実施形態では、本発明の非ヒト動物は、抗原に対する免疫反応のPD-1媒介機能調節を特徴付けるために使用される。一部の実施形態では、抗原は新生物と関連している。一部の実施形態では、抗原は自己免疫性の疾患、障害または状態と関連している。一部の実施形態では、抗原は炎症性疾患、障害または状態と関連している。一部の実施形態では、抗原は、治療を必要とする一人以上のヒト患者が患っている疾患または状態と関連する標的である。
【0166】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物は、新しいリンパ球およびその免疫機能のPD-1依存性調節を調節する化合物または生物薬剤の治療能力を決定するための、移植または養子移入実験で使用される。さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物はヒトT細胞で移植され、一部の実施形態ではナイーブT細胞、一部の実施形態では活性化T細胞で移植される。
【0167】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物の細胞は、T細胞依存性反応および機能のPD-1依存性調節を調節する化合物または生物薬剤の治療能力を決定するための、T細胞アッセイで使用される。例示的T細胞アッセイには、ELISpot、細胞内サイトカイン染色、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)制限、ウィルス抑制アッセイ、細胞毒性アッセイ、増殖アッセイおよび調節T細胞抑制アッセイが含まれるがこれらに限定されない。
【0168】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物の細胞は、ヒトPD-1を調節する候補治療薬をスクリーニングおよび開発するために、細胞遊走アッセイで使用される。細胞遊走には、内皮を横切る細胞の移動を伴い、遊走アッセイは、白血球または腫瘍細胞による内皮との相互作用および、内皮の遊走の測定を可能にする。
【0169】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物の細胞は、PD-1依存性調節および/または腫瘍細胞のアポトーシスを調節する化合物の治療能力を決定するための、腫瘍細胞成長(または増殖)アッセイで使用される。
【0170】
さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物の細胞は、T細胞から放出されるサイトカインのPD-1依存性調節を調節する化合物または生物薬剤の治療能力を決定するための、サイトカイン生産アッセイで使用される。一部の実施形態では、本発明の非ヒト動物の細胞は、ヒト化PD-1と、ヒトPD-1またはPD-1リガンド(例えば、PD-L1またはPD-L2)標的化薬剤の相互作用から生じる細胞内サイトカイン放出の検出(および/または測定)のために使用される。
【0171】
さまざまな実施形態で、自己免疫性の疾患、障害または状態の一つ以上の機能のPD-1依存性調節を調節する化合物または生体薬剤の治療能力を決定するためのインビボシステムを提供するために、自己免疫性の疾患、障害または状態が本発明の一つ以上の非ヒト動物に誘発される。本発明の一つ以上の非ヒト動物に誘発される例示的自己免疫性の疾患、障害または状態には、糖尿病、実験的自己免疫性脳脊髄炎(例えば、多発性硬化症のモデル)、リューマチ性関節炎、および全身性エリテマトーデスを含む。
【0172】
本発明の一つ以上の非ヒト動物は、薬剤またはワクチンの分析および検査のためのインビボシステムを提供する。さまざまな実施形態で、候補薬剤またはワクチンが本発明の一つ以上の非ヒト動物に送達され、その後非ヒト動物をモニターして、薬剤またはワクチンに対する免疫反応、薬剤またはワクチンの安全性プロファイル、または疾患または状態に対する効果の一つ以上を決定する場合がある。一部の実施形態では、ワクチンは、例えばヒト免疫不全ウィルスまたは肝炎ウィルス(例えば、HCV)などのウィルスを標的とする。安全性プロファイルを決定するために使用される例示的方法には、毒性、最適な用量濃度、薬剤またはワクチンの有効性、および潜在的リスク因子の測定を含む。このような薬剤またはワクチンはこのような非ヒト動物で改善および/または開発される場合がある。
【0173】
本発明の非ヒト動物は、ヒトPD-1標的化薬剤の薬物動態特性を評価するためのインビボシステムを提供する。さまざまな実施形態で、ヒトPD-1標的化薬剤は、本発明の一つ以上の非ヒト動物に送達または投与され、その後非ヒト動物(またはそれから単離された細胞)をモニターするか、または一つ以上のアッセイを実施して、非ヒト動物に対する薬剤の効果を決定する場合がある。薬物動態特性には、動物がどのように薬剤を処理してさまざまな代謝物にするか(または、有毒代謝物を含む一つ以上の薬剤代謝物の有無の検出)、薬剤半減期、投与後の薬剤の循環レベル(例えば、薬剤の血清濃度)、抗薬物反応(例えば、抗薬物抗体)、薬剤の吸収および分布、投与経路、薬剤の排泄および/またはクリアランス経路を含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、薬剤(例えば、PD-1調節因子)の薬物動態および薬力学特性は、本発明の非ヒト動物で、またはその使用を通してモニターされる。
【0174】
本発明の非ヒト動物は、ヒトPD-1標的化薬剤の標的毒性を評価するためのインビボシステムを提供する。さまざまな実施形態で、ヒトPD-1標的化薬剤は、本発明の一つ以上の非ヒト動物に送達または投与され、その後非ヒト動物(またはそれから単離された細胞)をモニターするか、または一つ以上のアッセイを実施して、非ヒト動物に対する薬剤の標的毒性効果を決定する場合がある。一般的に、薬剤は標的の一つ以上の機能を調節することを目的としている。一例を挙げると、PD-1調節因子は、一つ以上の細胞の表面上のPD-1分子と何らかの方法で相互作用することによりPD-1媒介機能(例えば、PD-1シグナル伝達)を調節することを目的としている。一部の実施形態では、このような調節因子は、調節因子の望ましい薬理作用の誇張である有害作用を持つ場合がある。このような効果は標的効果と呼ばれる。例示的標的効果には、高すぎる用量、慢性活性化/不活性化、および正しい組織での正しい作用を含む。一部の実施形態では、本発明の非ヒト動物で、またはその使用を通して特定されたPD-1標的化薬剤の標的効果は、以前は知られていなかったPD-1の機能を決定するために使用される。
【0175】
本発明の非ヒト動物は、ヒトPD-1標的化薬剤の標的外毒性を評価するためのインビボシステムを提供する。さまざまな実施形態で、ヒトPD-1標的化薬剤は、本発明の一つ以上の非ヒト動物に送達または投与され、その後非ヒト動物(またはそれから単離された細胞)をモニターするか、または一つ以上のアッセイを実施して、非ヒト動物に対する薬剤の標的外毒性効果を決定する場合がある。標的外効果は、薬剤が意図しない標的と相互作用する時(例えば、共通エピトープに対する交差反応)に起こる可能性がある。このような相互反応は、意図するまたは意図しない組織で起こる可能性がある。一例を挙げると、薬剤の鏡像異性体(エナンチオマー)は標的外毒性効果をもたらす可能性がある。らに、薬剤は異なる受容体サブタイプと不適切に相互作用し、それを非意図的に活性化する可能性がある。例示的標的外効果には、誤った標的がある組織の組織とは関係のない、誤った標的の誤った活性化/阻害を含む。一部の実施形態では、ヒトPD-1標的化薬剤の標的外効果は、薬剤を本発明の非ヒト動物に投与した効果と一つ以上の参照非ヒト動物に投与した効果とを比較することによって決定される。
【0176】
一部の実施形態では、アッセイを行うことには、薬剤が投与される非ヒト動物の表現型および/または遺伝子型への効果を決定することを含む。一部の実施形態では、アッセイを行うことには、PD-1調節因子(例えば、拮抗薬または作動薬)のロット間変動を決定することを含む。一部の実施形態では、アッセイを行うことには、本発明の非ヒト動物に投与されたPD-1標的化薬剤の効果と、参照非ヒト動物への効果との差を決定することを含む。さまざまな実施形態で、参照非ヒト動物は、本明細書に記述された改変、本明細書に記述されたものとは異なる改変(例えば、Pdcd1遺伝子の破壊、欠失またはそうでなければ非機能的Pdcd1遺伝子を持つもの)を持つかまたは改変を持たない(すなわち、野生型非ヒト動物)場合がある。
【0177】
ヒトPD-1標的化薬剤の薬物動態特性、標的毒性、および/または標的外毒性を評価するために非ヒト動物で(またはそれらから単離された細胞でおよび/またはそれらを使用して)測定されうる例示的パラメーターには、凝集、オートファジー、細胞分裂、細胞死、補体媒介溶血、DNA完全性、薬物特異抗体力価、薬剤代謝、遺伝子発現アレイ、代謝活性、ミトコンドリア活性、酸化ストレス、食作用、タンパク質生合成、タンパク質分解、タンパク質分泌、ストレス反応、標的組織薬剤濃度、標的外組織薬剤濃度、転写活性などが含まれるがこれらに限定されない。さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物は、PD-1調節因子の薬学的有効量を決定するために使用される。
【0178】
本発明の非ヒト動物は、がんで使用する候補治療薬の開発および特徴付けのための、改善されたインビボシステムを提供する。さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物に腫瘍が移植され、その後に、一つ以上の候補治療薬を投与する場合がある。一部の実施形態では、候補治療薬には、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)または抗体カクテルを含む場合があり、一部の実施形態では、候補治療薬は、例えば、連側的または同時に投薬される単一特異性抗体の投与などの併用療法を含む。腫瘍は、非ヒト動物内の一つ以上の場所で定着するために十分な時間を与えられる場合がある。腫瘍細胞増殖、成長、生存などは、候補治療薬の投与前と後の両方で測定される場合がある。候補治療薬の細胞毒性も、望ましい場合非ヒト動物で測定される場合がある。
【0179】
本発明の非ヒト動物は、ヒトに影響する疾患、障害または状態を効果的に治療するため、候補治療薬および/または治療レジメン(例えば、単剤療法、併用療法、用量範囲試験など)を評価または査定するための一つ以上の疾患モデルの開発に使用される場合がある。さまざまな疾患状態が本発明の非ヒト動物で確立され、その後、疾患状態での一つ以上の分子(例えば、PD-1標的化薬剤)の有効性を決定できるように、一つ以上の候補分子が投与される場合がある。一部の実施形態では、疾患モデルには、自己免疫性、炎症性および/または新生物の疾患、障害または状態を含む。
【0180】
一例を挙げると、本発明の非ヒト動物は、腫瘍または腫瘍細胞の予防および/または治療的治療のための改善された動物モデルを提供する。さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物に一つ以上の腫瘍細胞が移植され、その後に、一つ以上の候補治療薬(例えば、抗体)を投与する場合がある。一部の実施形態では、一つ以上の候補治療薬の投与は、一つ以上の腫瘍細胞の移植および一つ以上の候補治療薬が本発明の非ヒト動物で、前記非ヒト動物の固形腫瘍の定着および/または腫瘍細胞の成長を防ぐ上での有効性について評価された後(例えば、数分または数時間後だが一般的には同じ日)に実施される。一部の実施形態では、一つ以上の候補治療薬の投与は、ひとつ以上の腫瘍細胞の移植の後(例えば、数日後)に実施され、一部の特定実施形態では、一つ以上の移植された腫瘍細胞が本発明の非ヒト動物で所定サイズ(例えば、体積)に達するように十分な時間の後に実施され、一つ以上の定着腫瘍の治療での有効性について一つ以上の候補治療薬が評価される。非ヒト動物は、定着腫瘍の効果的な治療に相関する最適用量または用量範囲を決定できるように、用量によって異なる治療群に配置される場合がある。
【0181】
候補分子は、非経口および非注射投与経路を含む任意の投与方法を使用して、非ヒト動物疾患モデルに投与することができる。非経口経路には、例えば、静脈内、動脈内、門脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、髄腔内、くも膜下腔内、側脳室内、頭蓋内、胸腔内または注入のその他の経路を含む。非注射経路には、例えば、経口、鼻、経皮、肺、直腸、口腔、膣、眼を含む。投与は、連続注入、局所投与、インプラント(ゲル、膜など)からの持続放出、および/または静脈内注射による場合もある。併用療法を本発明の非ヒト動物で評価する時、候補分子は、同じ投与経路または異なる投与経路で投与することができる。投与レジメンを本発明の非ヒト動物で評価する時、候補分子は、一つ以上の疾患モデルが確立されている非ヒト動物で望ましい治療または予防効果を示す投与レジメンを決定するために、2か月毎、毎月、3週間毎、2週間毎、毎週、毎日、可変間隔で、および/または段階的に増大する濃度で投与される場合がある。
【0182】
本発明の非ヒト動物は、感染疾患で使用する候補治療薬の開発および特徴付けのための、改善されたインビボシステムを提供する。さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物は、ウィルス(例えば、MHV、HIV、HCVなど)または病原体(例えば、細菌)の注射で感染させられ、その後、一つ以上の候補治療薬を投与される場合がある。一部の実施形態では、候補治療薬には、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)または抗体カクテルを含む場合があり、一部の実施形態では、候補治療薬は、例えば、連側的または同時に投薬される単一特異性抗体の投与などの併用療法を含み、一部の特定実施形態では、候補治療薬はワクチンを含む場合がある。ウィルスまたは病原体は、ウィルスまたは病原体の感染に関連する一つ以上の症状が非ヒト動物に発症するように、非ヒト動物内の一つ以上の場所または細胞に定着するのに十分な時間を与えられる場合がある。T細胞の増殖および成長は、候補治療薬の投与前と後の両方で測定される場合がある。さらに、生存、血清および/または細胞内サイトカイン分析、肝臓および/または脾臓組織病理が、ウィルスまたは病原体に感染した非ヒト動物で測定される場合がある。一部の実施形態では、本発明の非ヒト動物は、ウィルス感染と関連する臓器障害の程度を決定するために使用される。一部の実施形態では、本発明の非ヒト動物は、特定ウィルスに感染した非ヒト動物のさまざまな臓器のサイトカイン発現プロファイルを決定するために使用される。
【0183】
本発明の非ヒト動物は、ヒト細胞標的化治療薬剤を評価するために用いることができる。さまざまな実施形態で、本発明の非ヒト動物にヒト細胞が移植され、ヒト細胞などを標的とする薬剤候補がこのような非ヒト動物に投与される。次に薬剤の治療有効性が、薬剤の投与後に非ヒト動物のヒト細胞をモニターすることによって決定される。非ヒト動物で試験できる薬剤には、小分子化合物、すなわち1500 kD、1200 kD、1000 kD、または800ダルトン未満の分子量の化合物、および大分子化合物(タンパク質など、例えば抗体)の両方を含み、これらはヒト細胞を標的化する(例えば、結合するおよび/または作用する)ことによってヒト疾患および状態の治療に対して意図する治療効果を持つ。
【0184】
一部の実施形態では、薬剤は抗がん剤であり、ヒト細胞はがん細胞であり、これらは原発がんの細胞または原発がんから定着した細胞株の細胞でありうる。これらの実施形態で、本発明の非ヒト動物はヒトがん細胞を移植され、抗がん剤が非ヒト動物に投与される。薬剤の有効性は、非ヒト動物のヒトがん細胞の成長または転移が、薬剤の投与の結果として阻害されるかどうかを評価することで決定することができる。
【0185】
特定の実施形態では、抗がん剤は抗体分子であり、これはヒトがん細胞上の抗原に結合する。特定の実施形態では、抗がん剤は、ヒトがん細胞上の抗原、およびその他のヒト細胞(例えばB細胞およびT細胞などのヒト免疫系の細胞(または「ヒト免疫細胞」))上の抗原に結合する二重特異性抗体である。
【実施例0186】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物をどのように作成し使用するかを当業者に説明するために提供されており、発明者がその発明として見なすものの範囲を限定することを意図していない。別途示されていない限り、温度は摂氏で示され、圧力は大気圧またはその近くである。
【0187】
(実施例1) 内因性プログラム細胞死1(Pdcd1)遺伝子のヒト化
この例は、齧歯類(例えば、マウス)などの非ヒト哺乳動物のプログラム細胞死1(PD-1)をコードする内因性Pdcd1遺伝子をヒト化する例示的方法を示している。この例に記述された方法は、任意のヒト配列、または望ましいヒト配列(または配列フラグメント)の組み合わせを使用して、非ヒト動物の内因性Pdcd1遺伝子をヒト化するために用いることができる。この例では、GenBank登録番号NM_005018.2(配列番号:23)に見られるヒトPDCD1遺伝子のエクソン2、イントロン2、およびエクソン3の最初の71 bpを含む~883 bpのヒトDNAフラグメントが、マウスの内因性Pdcd1遺伝子のヒト化のために用いられている。内因性Pdcd1遺伝子の細胞外N末端IgV領域をコードする遺伝物質のヒト化のための標的化ベクターは、VELOCIGENE(登録商標)技術を使用して作製された(米国特許第6,586,251号およびValenzuela et al., 2003, Nature Biotech. 21(6):652-659を参照、これらは参照により本明細書に組み込まれる)。
【0188】
簡潔に述べると、マウス細菌人工染色体(BAC)クローンRP23-93N20(Invitrogen)が、ヒトPD-1ポリペプチドのアミノ酸26~169をコードする、~883 bpヒトDNAフラグメントを使用して、内因性Pdcd1遺伝子のエクソン2、イントロン2およびエクソン3の一部を含む配列を欠失して、ヒトPDCD1遺伝子のエクソン2、イントロン2およびエクソン3の一部を挿入するように改変された。エクソン1、エクソン3の一部(すなわち、膜貫通領域をコードする)、4および5ならびに5’および3’非翻訳領域(UTR)を含む内因性DNAが保持された。~883 bpヒトDNAフラグメントの配列解析で、すべてのヒトPDCD1エクソン(すなわち、エクソン2およびエクソン3の71 bp)およびスプライシングシグナルが確認された。配列解析で、配列が参照ゲノムおよびPDCD1転写NM_005018.2に一致したことが判明した。
【0189】
より詳細には、最初に、小さな細菌性の相同的組み換えドナーが、以下を含む合成DNAフラグメントから作製された:[(HindIII)-(マウス上流78bp)-(XhoI/NheI 制限酵素部位)-(ヒトPDCD1 883bp)-(マウス下流75bp)- (HindIII)]。このフラグメントはGenescript Inc.(ニュージャージー州、Piscataway)によって合成され、アンピシリン耐性プラスミドベクターにクローン化された。XhoI-NheI部位を用いて、リコンビナーゼ認識部位のそばに隣接した~4,996 bp自動削除ネオマイシンカセットを結合した(loxP-hUb1-em7-Neo-pA-mPrm1-Crei-loxP、米国特許第8,697,851号、第8,518,392号および第8,354,389号を参照、これらは参照により本明細書に組み込まれる)。その後の選択にはネオマイシンを用いた。隣接HindIII部位を使用して、マウスBACクローンRP23-93N20相同的組み換えの前に、標的化ベクターを直線化した。意図的に、ヒトPDCD1 883bpフラグメントとマウス下流75 bpの間の接合部はエクソン3にオープンリーディングフレームを保った(図2)。結果得られた標的化ベクターは、5’から3’まで、BACクローンRP23-93N20からのマウスゲノムDNAの~61.7 kbを含む5’相同アーム、loxP部位のそばに隣接した自動削除ネオマイシンカセット、883 bpヒトゲノムDNAフラグメント(ヒトPdcd1遺伝子のエクソン2からエクソン3の最初の71 bpを含む)およびBACクローンRP23-93N20からのマウスゲノムDNAの~84 kbを含んでいた。
【0190】
上述の改変RP23-93N20 BACクローンは、マウス胚性幹(ES)細胞を電気穿孔して、エクソン2からエクソン3の一部までヒト化された(すなわち、内因性Pdcd1遺伝子の900 bpの欠失およびヒト配列の883 bpの挿入)内因性Pdcd1を備える改変ES細胞を作るために使用された。ヒト化Pdcd1遺伝子を含む明確に標的化されたES細胞が、ヒトPDCD1配列(例えば、エクソン2およびエクソン3の一部)の存在を検出するアッセイ(Valenzuelaら、上記参照)によって特定され、マウスPdcd1配列(例えば、エクソン2およびエクソン3の一部、および/または1、4および5)の喪失および/または保持を確認した。表4は、上述の内因性Pdcd1遺伝子のヒト化を確認するために使用されたプライマーおよびプローブを示す(図3)。上流挿入点にわたるヌクレオチド配列には以下を含み、これはloxP部位(太字)に隣接して連結した挿入点の自動削除ネオマイシンカセットの5’末端の上流の内因性マウス配列(以下の括弧内に含まれ、XhoI制限部位は斜字で示される)および削除点にあるカセット配列を示す:(TCAAAGGACA GAATAGTAGC CTCCAGACCC TAGGTTCAGT TATGCTGAAG GAAGAGCCCT CTCGAG)ATAACTTCGT ATAATGTATG CTATACGAAG TTATATGCAT GGCCTCCGCG CCGGGTTTTG GCGCCTCCCG CGGGCGCCCC CCTCCTCACG(配列番号:19)。自動削除ネオマイシンカセットの3’末端にある下流挿入点にわたるヌクレオチド配列には以下を含み、これは挿入点の下流のヒトPdcd1ゲノム配列に隣接するカセット配列(以下の括弧内に含まれ、loxP配列は太字およびNheI制限部位は斜字で示される)を示す:(CTGGAATAAC TTCGTATAAT GTATGCTATA CGAAGTTATG CTAGTAACTA TAACGGTCCT AAGGTAGCGA GCTAGC) AAGAGGCTCT GCAGTGGAGG CCAGTGCCCA TCCCCGGGTG GCAGAGGCCC CAGCAGAGAC TTCTCAATGA CATTCCAGCT GGGGTGGCCC TTCCAGAGCC CTTGCTGCCC GAGGGATGTG AGCAGGTGGC CGGGGAGGCT TTGTGGGGCC ACCCAGCCCC(配列番号:20)。ヒトPDCD1ゲノム配列の3’末端の下流挿入点にわたるヌクレオチド配列には以下が含まれ、これはマウスPdcd1ゲノム配列(以下のカッコ内に含まれる)に隣接するヒトPDCD1配列を示す:CCCTTCCAGA GAGAAGGGCA GAAGTGCCCA CAGCCCACCC CAGCCCCTCA CCCAGGCCAG CCGGCCAGTT CCAAACCCTG (GTCATTGGTA TCATGAGTGC CCTAGTGGGT ATCCCTGTAT TGCTGCTGCT GGCCTGGGCC CTAGCTGTCT TCTGCTCAAC)(配列番号:21)。ネオマイシンカセット(残り77 bp)の欠失後、上流挿入点にわたるヌクレオチド配列は以下を含み、これは残りのカセット配列loxP配列(以下の括弧内に含まれ、XhoIおよびNheI制限部位は斜字、loxP配列は太字で示される)と並置されたマウスおよびヒトゲノム配列を示す:TCAAAGGACA GAATAGTAGC CTCCAGACCC TAGGTTCAGT TATGCTGAAG GAAGAGCCCT (CTCGAG ATAACTTCGT ATAATGTATG CTATACGAAG TTATGCTAGT AACTATAACG GTCCTAAGGT AGCGA GCTAGC) AAGAG GCTCTGCAGT GGAGGCCAGT GCCCATCCCC GGGTGGCAGA GGCCCCAGCA GAGACTTCTC AATGACATTC CAGCTGGGGT GGCCCTTCCA(配列番号:22)。
【0191】
次に陽性ES細胞クローンを使用して、VELOCIMOUSE(登録商標)法(例えば、米国特許第7,294,754号およびPoueymirou et al., 2007, Nature Biotech. 25(1):91-99を参照)で雌マウスに移植し、ヒトPDCD1エクソン2およびヒトPDCD1エクソン3の一部の、マウスの内因性Pdcd1遺伝子への挿入を含む一腹の子を作った。内因性Pdcd1遺伝子のエクソン2および3の一部(すなわち、883 bpヒトDNAフラグメント)のヒト化を持つマウスは、ヒトPDCD1遺伝子配列の存在を検出したアレルアッセイ(Valenzuelaら、上記参照)の改良型を使用した尾部断片から単離されたDNAの遺伝子型同定によって再び確認・特定された。子は遺伝子型同定され、ヒト化Pdcd1遺伝子構築物に対してヘテロ接合性の動物のコホートが特徴付けのために選択された。
【表4】
【0192】
(実施例2) 活性化T細胞上のヒト化PD-1の発現
この例は、実施例1に従ってヒト化Pdcd1遺伝子を含むように改変された非ヒト動物(例えば、齧歯類)が、活性化リンパ球の表面上にヒト化PD-1タンパク質を発現することを実証する。この例では、野生型およびヒト化マウスから単離された刺激T細胞のPD-1の発現を決定するために、実施例1に記述された内因性Pdcd1遺伝子のヒト化についてヘテロ接合性のマウスからの活性化T細胞が、抗PD-1抗体で染色された。
【0193】
簡潔に述べると、野生型マウスおよび実施例1に記述された内因性Pdcd1遺伝子のヒト化に対してヘテロ接合性のマウスから脾臓が採取され、機械解離によって単一細胞懸濁液へと処理された。細胞は培養液(10% FBS添加RPMI)で洗浄され、1×10/mLで再懸濁されて、200 μL(細胞200,000個)が96ウェルプレートに蒔かれた。選択されたウェルの細胞が、抗CD3および抗CD28抗体(両方とも1 μg/mL)で72時間刺激された。細胞はFACSのために、製造業者の仕様に従って、CD4、CD8、CD19およびヒト(クローンMIH4、BD Biosciences)またはマウス(クローンJ43、eBioscience)PD1を認識する抗体で染色された。染色された細胞はLSRIIフローサイトメーターにかけられ、Flowjoソフトウェアを使用してデータが分析された。CD8 T細胞は、ヒトおよびマウスPD1の発現に対してゲート化された(CD19CD8)。例示的結果が図4に示されている。
【0194】
図4に示されるように、実施例1に記述されたヒト化Pdcd1遺伝子を持つマウスは、ヒト部分および内因性マウス部分を備えるPD-1ポリペプチドを発現する。ヒト部分は、完全なヒトPD-1ポリペプチドを認識する抗体による認識を介して検出可能なように発現される。
【0195】
(実施例3) PD-1調節因子のインビボ有効性
この例は、PD-1調節因子(例えば、抗PD-1抗体)をスクリーニングし、例えば、腫瘍増殖の阻害および/または腫瘍細胞の殺傷などのさまざまな特徴を決定するために、実施例1に従ってヒト化Pdcd1遺伝子を含むように改変された非ヒト動物(例えば、齧歯類)をインビボアッセイで使用できることを実証する。この例では、腫瘍成長を阻害する最適な抗体用量および抗PD-1抗体が腫瘍細胞の殺傷を媒介する程度を決定するために、実施例1に記述された内因性Pdcd1遺伝子のヒト化に対してホモ接合性のマウスで、いくつかの抗PD-1抗体がスクリーニングされる。
【0196】
簡潔に述べると、マウスは体重によって試験1では5つの治療群または対照群(n=5/群)に、試験2では8つの治療群または対照群に(n=5/群)、試験3では5つの治療群または対照群(n=7/群)に均等に分けられた。0日目に、マウスはイソフルラン吸入で麻酔され、その後DMEM100 μL中に懸濁したMC38.ova細胞を右脇腹に皮下注射された(試験1:5×10、試験2/3:1×10)。MC38.ova(マウス結腸腺がん)細胞は、腫瘍免疫原性を増加するためにニワトリ卵白アルブミンを発現するよう遺伝子操作された。試験1では、治療群は、抗PD-1抗体3つのうちの1つ、または無関係の特異性を持つアイソタイプ対照抗体の200 μgを実験の3、7、10、14および17日目に腹腔内注射された一方、マウスの一群は未治療のままとされた。試験2では、治療群は、投与量当たり10mg/kgまたは5mg/kgの抗PD-1抗体3つのうちの1つ、投与量当たり10mg/kgの抗PD-1抗体(Ab B、IgG4)1つ、または10mg/kgの無関係の特異性を持つアイソタイプ対照抗体を実験の3、7、10、14および17日目に腹腔内注射された。試験3では、治療群は、投与量当たり5mg/kgまたは2.5mg/kgの抗PD-1抗体2つのうちの1つ、または5mg/kgのPD-1に特異的でない対照抗体(対照)を実験の3、7、10、14および17日目に腹腔内注射された。表5はマウスの群に対する実験投与量および治療プロトコルを示す。
【0197】
試験のそれぞれについて、各治療群に対する各実験の14または17日目および23または24日目での、キャリパー測定で決定された平均腫瘍体積および生存パーセントが記録された。腫瘍のないマウスの数も試験終了時(試験1の42日目ならびに試験2および試験3の31日目)に評価された。平均腫瘍体積(mm)(±SD)、生存パーセント、および腫瘍のないマウスの数が各試験について計算された(表7~9)。例示的腫瘍増殖曲線が図5に提供されている。
【0198】
試験1について表6に示されるように、Ab Aで治療されたマウスは試験過程の間、検出可能な腫瘍を発症しなかった。Ab Cで治療されたマウスは、試験の17および24日目で対照と比べて腫瘍体積の持続的減少を示し、マウス5匹中3匹が実験終了まで腫瘍がなかった。対照的に、Ab Bでの治療はこの試験では対照と比べて、腫瘍体積の減少での有意な有効性を示さなかった。試験の23日目までに、Ab Bを投与された群のマウス5匹中1匹が死亡し、アイソタイプ対照抗体治療群のマウス5匹中2匹が死亡した。非治療群およびアイソタイプ対照群では、一部のマウスが腫瘍の自然退縮を示した(それぞれマウス5匹中1匹および5匹中2匹)。
【0199】
試験2について表7に示されるように、10mg/kgのAb Aで治療されたマウスは試験過程の間、検出可能な腫瘍を発症しなかった。10 mg/kgのAb CまたはAb Dのいずれかで治療されたマウスの群は、試験の17および24日目に対照と比べて、腫瘍体積の大幅な減少を示した。10mg/kgのAb CまたはAb Dいずれかで治療された各群のマウス5匹中4匹が、31日目に腫瘍がなかったのに対し、アイソタイプ対照治療群では5匹中1匹のみが腫瘍の自然退縮の結果、腫瘍がなかった。10mg/kgで試験されたAb Bは、試験の17および24日目に対照と比べて腫瘍体積の大幅な減少を示したが、この抗体は最も有効性の少ない抗PD1抗体で、実験の終了時に生存していたマウスは5匹中2匹のみであった。
【0200】
試験用量(5 mg/kgおよび10 mg/kg)での腫瘍抑制の用量依存性反応が、Ab A、Ab CおよびAb D治療群で観察された。5 mg/kgでのAb AまたはAb C療法は有効性が少なく、31日目の実験終了時に腫瘍のないマウスは5匹中4匹だったのに対し、Ab Aの10 mg/kg用量群ではマウス5匹中5匹が腫瘍のないままであった。2元配置ANOVA多重比較のダネットの検定で、参照として10 mg/kgのアイソタイプ対照抗体で治療された群と10 mg/kgのAb A、Ab CまたはAb Dで治療された群との間の腫瘍増殖の差は、p値<0.005で統計的に有意であることが判明した。参照として10 mg/kgのアイソタイプ対照抗体で治療された群と5 mg/kgのAb A、Ab CまたはAb Dで治療された群との間の腫瘍増殖の差も、p値<0.05で統計的に有意であった。
【0201】
試験3について表8に示されるように、5mg/kgのAb AまたはAb Cで治療されたマウス7匹中6匹が実験の終了時に腫瘍がなかったのに対し、アイソタイプ対照群に腫瘍のないマウスはいなかった。IgG4対照群の腫瘍を持つマウス1匹が移植後17日目に死亡した。2.5mg/kgのAb Cで治療されたマウス7匹中4匹のみが、実験終了時に腫瘍がないままであった。試験された抗PD-1抗体とアイソタイプ対照群との間の21日目の腫瘍体積の差は、試験後のダネットの多重検定比較を使用した一元配置ANOVAで決定した時、統計的に有意でありp<0.01であった。試験された4つの抗PD-1抗体はすべて同じように、2.5 mg/kg用量よりも5 mg/kg用量でより有効であった。
【0202】
図5に示されるように、抗PD-1抗体は、実施例1に従って作られたPD-1ヒト化マウスの予防的MC38.ova腫瘍成長モデルの腫瘍成長を有意に阻害した。10 mg/kgでの抗PD-1 Ab療法は、実験の過程全体を通して、すべてのマウス(5匹中5匹)に腫瘍退縮を促進したのに対し、対照群では腫瘍の自然退縮の結果、5匹中1匹のみで腫瘍がないままであった。5 mg/kgでの抗PD-1療法は有効性がわずかに少なく、実験終了時に腫瘍がないマウスは5匹中4匹であった。試験後のダネットの多重検定比較を使用した一元配置ANOVAでは、p値 < 0.05(5 mg/kg)およびp値<0.01(10 mg/kg)で、抗PD-1治療と対照抗体治療との間に有意な差があることが判明した。
【0203】
類似の実験で、実施例1に従って作られたPD-1ヒト化マウスでの無傷の機能的PD-1シグナル伝達が、抗PD-1抗体で治療された腫瘍を持つマウスのCD8 T細胞およびCD3 T細胞反応および脾臓のIFNγ生産を測定することによって調べられた。
【0204】
簡潔に述べると、実験終了時の21日目に抗PD-1または対照抗体で治療されたPD-1ヒト化マウス(75% C57BL/6/25% 129)から脾臓細胞が採取された。全RNAが単離され、オリゴヌクレオチドおよび、マウスCD8b(フォワードプライマー:GCTCTGGCTG GTCTTCAGTA TG、配列番号:24;リバースプライマー:TTGCCGTATG GTTGGTTTGA AC、配列番号:25;プローブ:AGCAGCTCTG CCCTCAT、配列番号:26)、マウスCD3ζ(Mm00446171_m1、Applied Biosystems)、マウスIFN-γ(Mm01168134_m1、Applied Biosystems)、ヒトPD-1(フォワードプライマー:ACTTCCACAT GAGCGTGG、配列番号:27;リバースプライマー:GGGCTGTGGG CACTTCTG、配列番号:28;プローブ:GCAGATCAAA GAGAGCCTGC、配列番号:29)およびマウスPD-1(Mm01285676_m1、Applied Biosystems)に対して特異的なtaqmanプローブミックスを使用して、逆転写cDNAに対してリアルタイムPCRが実施された。サンプルは、マウスシクロフィリンBの発現に対して正規化された。例示的結果が図6に提供されている。
【0205】
図6に示されるように、抗hPD-1抗体の投与は、(実施例1に従って作られた)MC38.ova腫瘍を持つヒト化マウスの脾臓のCD8およびCD3 T細胞の生産増加を誘発した。さらに、腫瘍を持つPD-1ヒト化マウスの抗hPD-1抗体活性はIFNγに依存し、これは細胞表面上のヒト化PD-1を通した適正なシグナル伝達を確認した。全体として、対照治療マウスと比べて、T細胞およびIFNγの増加が両方の治療群で観察された。
【0206】
ヒトPD-1 mRNA発現は、PD-1タンパク質の細胞外部分に対して設計されたヒト特異的プローブで測定され、細胞表面上のヒト化PD-1タンパク質の適正な発現を確認した。さらに、マウスPD-1の細胞外部分を検出するように設計されたプライマーでのマウスPD-1 mRNA発現の測定では、生成物を生産できなかった。
【0207】
まとめると、この例は、本発明の非ヒト動物が、PD-1を標的とする薬剤(例えば、抗体)のインビボでの有効性を評価するために使用でき、このような動物が抗PD-1抗体の治療効果の区別において有用であることを示している。さらに、本明細書に記述された非ヒト動物は、PD-1を標的とする薬剤が腫瘍成長を阻害するおよび/または腫瘍細胞の殺傷を媒介する程度を評価するために使用できる。本発明の非ヒト動物(例えば、マウス)は、T細胞およびサイトカイン発現(例えば、IFN-γ)によって証拠付けられる、ヒト化PD-1を介した機能的PD-1信号伝達および適正なPD-1依存性免疫反応を実証している。
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【0208】
(実施例4) 抗PD-1腫瘍療法の齧歯類モデル
この例は、実施例1によるヒト化Pdcd1遺伝子を含むように改変された非ヒト動物(例えば、齧歯類)は、PD-1調節因子(例えば、抗PD-1抗体)の最適な治療用量を決定するための腫瘍モデルに使用できることを示している。この例では、抗PD-1抗体が、定着腫瘍の治療のための最適治療用量を決定するために、実施例1に記述された内因性Pdcd1遺伝子のヒト化に対してホモ接合性のマウスに投与される。
【0209】
簡潔に述べると、(実施例1に記述された)ヒト化Pdcd1遺伝子を含むマウスに、(上述の)1×10 MC38.Ova細胞が皮下移植され、その後、腫瘍体積が80~120 mmに達した時点で、6つの治療群(群あたりn=8~9)に無作為化された(0日目)。マウスは、0.3~25 mg/kgの段階的増大範囲(すなわち、0.3、1、3、10または25 mg/kg)の抗hPD-1抗体または25 mg/kgのアイソタイプ対照抗体を腹腔内投与された。抗体は0、3、7、10および13日目に投与された。腫瘍体積が、実験の持続期間(60日)の間、週2回キャリパー測定でモニターされた。例示的腫瘍増殖曲線が図7に提供されている。
【0210】
図7に示されるように、対照抗体を投与されたマウスで実験の終了時に腫瘍がなかったマウスはいなかった。対照的に、抗hPD-1抗体の3~25 mg/kgの用量範囲は、異なる治療群で約44~55%の腫瘍のないマウスをもたらした。まとめると、この例は、本発明の非ヒト動物が、定着腫瘍を効果的に治療するためにPD-1を標的にした薬剤(例えば、抗体)の最適用量および/または用量範囲を決定する齧歯類腫瘍モデルとして使用できることを実証している。
【0211】
同等物
本発明の少なくとも一つの実施形態のこのような記述されたいくつかの側面を持つ、さまざまな修正、変更、および改善を当業者であれば容易に思いつくことが当業者には理解されるはずである。このような修正、変更、および改善は本開示の一部であることが意図され、本発明の精神および範囲内であることが意図される。従って、前述の説明および図面は例示のみとしてのものであり、本発明は以下の請求項によって詳細に記述される。
【0212】
請求項で請求項を変更するための「第一の」、「第二の」、「第三の」などの順序の用語の使用は、それ自体は一つの請求項要素の別の要素に対する優位性、先行、もしくは順序、または方法の行為が実施される時間的順序を暗示せず、特定の名称を持つ一つの請求項要素を(順序の用語の使用以外は)同じ名称を持つ別の要素から区別して請求項要素を区別するための標識としてのみ使用される。
【0213】
本明細書および請求項で使用される場合、「a」および「an」という冠詞は、そうでないことが明確に示されない限り、複数参照を含むと理解されるべきである。群の一つ以上の要素の間に「または」を含む請求項または記述は、そうではないことが示されるかまたはそうでなければ文脈から明らかでない限り、一つ、二つ以上、または群のすべての要素が、所定の生成物またはプロセスに存在する、用いられる、またはそうでなければ関連する場合に満足される。本発明は、群の正確に一つの要素が所定の生成物またはプロセスに存在する、用いられる、またはそうでなければ関連する実施形態を含む。本発明は、二つ以上、または群の要素全体が所定の生成物またはプロセスに存在する、用いられる、またはそうでなければ関連する実施形態も含む。さらに、本発明は、別途指定されない限り、または矛盾または不一致が起こることが当業者には明らかでない限り、変形、組み合わせ、および記載された請求項の一つ以上からの一つ以上の限定、要素、句、記述用語などが、同じ基礎請求項に依存する別の請求項(または関連する任意のその他の請求項)に導入される並べ替えすべてを網羅することを理解すべきである。記載されたような要素が存在する場合(例えば、マーカッシュ群または類似の形式で)、要素の各サブグループも開示され、任意の要素を群から除去することができる。当然のことながら、一般的に、本発明、または本発明の態様が特定の要素、特徴などを含むとして言及される場合、本発明の特定実施形態または本発明の態様は、このような要素、特徴などから成る、または実質的にそれらから成る。簡潔にするために、これらの実施形態はすべての場合において、多くの言葉では本明細書に特に記述されていない。これも当然のことながら、本発明の任意の実施形態または態様は、特定の除外が明細書に列挙されているかどうかにかかわらず、請求項から明示的に除外される可能性がある。
【0214】
当業者であれば、アッセイまたは本明細書に記述されたその他のプロセスで得られた値に起因する一般的な標準偏差または誤差を理解するであろう。本発明の背景を説明し、その実践に関して追加的詳細を提供するための本明細書の出版物、ウェブサイトおよびその他の参考資料は、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図8-4】
【配列表】
2023083469000001.app
【外国語明細書】