(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008348
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】加工食品並びにその製造方法および調理方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20230112BHJP
F24C 7/02 20060101ALN20230112BHJP
【FI】
A23L7/10 A
F24C7/02 551B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111853
(22)【出願日】2021-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】512037314
【氏名又は名称】株式会社いしだ屋
(74)【代理人】
【識別番号】100120581
【弁理士】
【氏名又は名称】市原 政喜
(72)【発明者】
【氏名】石川 慎司
(72)【発明者】
【氏名】関 勇一郎
(72)【発明者】
【氏名】栗山 元宏
(72)【発明者】
【氏名】久保田 真美
【テーマコード(参考)】
3L086
4B023
【Fターム(参考)】
3L086AA01
3L086AA13
3L086BF01
3L086DA29
4B023LP03
4B023LP05
4B023LP10
4B023LP19
(57)【要約】
【課題】 特別な技術を用いることなく、電子レンジ等で簡単に加熱調理するだけで吹きこぼれを起こすことなく、食味に優れた米飯を得ること。
【解決手段】 本実施形態の加工食品は、低アミロース米を主原料として事前の水の浸漬が不要な加工米102を、投入された加工米および加えられた水分が加熱され発生する蒸気を放出する蒸気放出手段であって、蒸気放出量を制御して加熱中内圧が所定の圧力とする加圧手段と、水分中に米から溶け出したでんぷんを所定量以上貯留する吹きこぼれ抑制空間とを有する蒸気放出手段を含む電子レンジ加熱調理容器101に組み込んだものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低アミロース米を主原料とする加工米と、
投入された前記加工米および加えられた水分が加熱され発生する蒸気を放出する蒸気放出手段であって、蒸気放出量を制御して加熱中内圧が所定の圧力とする加圧手段と、水分中に米から溶け出したでんぷんを所定量以上貯留する吹きこぼれ抑制空間とを有する蒸気放出手段を含む電子レンジ加熱調理容器と
を備えることを特徴とする加工食品。
【請求項2】
前記加圧手段は、所定以下の開口面積により蒸気放出量を制御することを特徴とする請求項1に記載の加工食品。
【請求項3】
前記蒸気放出手段は、中蓋として取り外し可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の加工食品。
【請求項4】
前記加工米は、事前の水の浸漬が不要な加工米であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の加工食品。
【請求項5】
前記加工米は、予め生米に加工を施すことにより、炊飯する際に事前の水の浸漬が不要であり、かつ炊飯時間も短縮されることを特徴とする請求項4に記載の加工食品。
【請求項6】
前記低アミロース米は、含有アミロースが17%以下であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の加工食品。
【請求項7】
前記蒸気放出手段は、所定の内圧よりも高い内圧まで開封しない強度を有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の加工食品。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の加工食品を加熱調理する加工食品調理方法であって、
前記加工米と所定の量の水とを混合して、前記電子レンジ加熱調理容器手段に投入する投入ステップと、
電子レンジにより、前記加工米と前記所定の量の水とを所定時間加熱して炊飯する加熱ステップと
を備えることを特徴とする加工食品調理方法。
【請求項9】
加工米を加熱調理する加工米調理方法であって、
低アミロース米を主原料とする加工米を洗米し、所定の時間水に浸漬する準備処理ステップと、
前記準備処理をした低アミロース米を主原料とする加工米と、所定の量の水とを混合して、水分が加熱され発生する蒸気を放出する蒸気放出手段であって、蒸気放出量を制御して加熱中内圧が所定の圧力とする加圧手段と、水分中に米から溶け出したでんぷんを所定量以上貯留する吹きこぼれ抑制空間とを有する蒸気放出手段を含む電子レンジ加熱調理用容器に充填する充填ステップと、
電子レンジにより、前記加工米と前記所定の量の水とを所定時間加熱して炊飯する加熱ステップと
を備えることを特徴とする加工食品調理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工食品並びにその製造方法および調理方法に関し、より具体的には、所定の特性を有する生米に加工を施した加工米を用いて炊飯可能な、加工食品並びにその製造方法および調理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米飯は従来、ガスなどの火力や、電気による炊飯器を用いて炊飯が行われてきたが、近年では、電子レンジで加熱調理する手法が様々取り入れられている。しかし、電子レンジによる調理であっても米の炊飯方法は基本的に同じであり、生米を洗米後一定時間水に浸漬させて吸水させ、その後所定の水分とともに加熱して一定時間沸騰させ、アルファ化させるというものである。特に最近では洗米や水浸漬などの手間を減らした、無洗米や早炊き米などが製品化されており、これらにより電子レンジでの炊飯もより現実的なものとなってきている一方、専用の炊飯器と異なり汎用型の電子レンジでは、加熱沸騰時の吹きこぼれなどの問題があり、これらの問題に対処した様々な提案がなされている。
【0003】
例えば、本来炊飯においては、連続して沸騰加熱することによりアルファ化を促進させるが、このような沸騰のさせ方自体が吹きこぼれを生じさせる原因であるため、加熱方法自体を制御して吹きこぼれが出ないように沸騰状態を抑制するという技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照のこと)。すなわち、複数の加熱ステージを設け、全ステージに渡って沸騰しない温度で加熱することにより、吹きこぼれをなくすというものである。また、粥に関するものであるが、電子レンジ調理対応の容器にお粥を充填密封して電子レンジで調理してもお粥が吹きこぼれることがない電子レンジ調理対応の容器入りお粥を提供することを目的とし、白米25gに対してもちきびあるいはうるちきびまたは双方が3g~25g、好ましくは5g~15gの割合で添加されている電子レンジ調理対応の容器入りお粥が提案されている(例えば、特許文献2を参照のこと)。さらに、マイクロ波加熱を用いて、炊飯時に吹きこぼれにより容器や電子レンジ庫内を汚さず手入れのしやすいマイクロ波加熱調理容器を提供することを目的とし、マイクロ波透過性材料からなる調理用容器2と、この調理用容器2の上部開口に設けられる蓋3と、前記調理用容器2の側面外側に配置され内壁4と外壁5との間に断熱層6を設けた断熱容器8を備え、前記容器2の開口端に外側に張り出した張り出し部21Aの外側に縦向き部21Bを立設した段部21が設けられ、該段部21に前記蓋3が載置され、断熱容器8に直接食材を入れるのではなく容器2に入れるので、水蒸気等が断熱層内に浸入せず、さらに、炊飯においては米から大量のおねばが発生しても、おねばは容器2の蓋3の下の空間のみならず、容器2の上端開口端21Cと蓋3の間の空間、すなわちおねば溜りの空間Aに溜まるようになる技術が提案されている(例えば、特許文献3を参照のこと)。
【0004】
一方、炊飯方法については様々な研究がなされてきており、炊飯時に溶出する澱粉成分について、米の品種による差異と食味への影響に関する研究がなされ、モチ種のようなアミロースの含有が少ない品種では、やはり炊飯時のアミロースの溶出が少ないことが報告されている(例えば、非特許文献1を参照のこと)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3-110323号公報
【特許文献2】特開2005-341963号公報
【特許文献3】特開2008-279141号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】炊飯時に溶出する澱粉成分の構造と米飯の付着性、花城 勲,太田 健介,竹田 千重乃 他著、P. 349~354、Journal of applied glycoscience第51巻、2004年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1ないし3の技術は、いずれも炊飯時の吹きこぼれを押さえる技術であるが、特許文献1が常に沸騰しないように加熱を制御するものであり、特許文献2が米以外の他の材料を加えるものであり、特許文献3が特殊な吹きこぼれ防止容器を用いるものである等、本来炊飯に不要なもの、不要な制御を加えるものであり、炊飯の基本要素である米、水および加熱機器、すなわち電子レンジだけを使用した、通常の使用方法のみでは吹きこぼれを回避することができないという問題がある。
【0008】
本発明は上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、特定の特性を有する品種の米を用いるとともに、ディスポーザブルな安価な加熱調理容器を用いることで、簡便な電子レンジを用いた通常の炊飯方法を行っても吹きこぼれなく炊飯することができる加工食品並びにその製造方法および調理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、本願の請求項1に記載の発明は、低アミロース米を主原料とする加工米と、投入された加工米および加えられた水分が加熱され発生する蒸気を放出する蒸気放出手段であって、蒸気放出量を制御して加熱中内圧を所定の圧力とする加圧手段と、水分中に米から溶け出したでんぷんを所定量以上貯留する吹きこぼれ抑制空間とを有する蒸気放出手段を含む電子レンジ加熱調理容器とを備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の加工食品において、加圧手段は、所定以下の開口面積により蒸気放出量を制御することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の加工食品において、蒸気放出手段は、中蓋として取り外し可能であることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の加工食品において、加工米は、事前の水の浸漬が不要な加工米であることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の加工食品において、加工米は、予め生米に加工を施すことにより、炊飯する際に事前の水の浸漬が不要であり、かつ炊飯時間も短縮されることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の加工食品において、低アミロース米は、含有アミロースが17%以下であることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の加工食品において、蒸気放出手段は、所定の内圧よりも高い内圧まで開封しない強度を有することを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の加工食品を加熱調理する加工食品調理方法であって、加工米と所定の量の水とを混合して、電子レンジ加熱調理容器手段に投入する投入ステップと、電子レンジにより、加工米と所定の量の水とを所定時間加熱して炊飯する加熱ステップとを備えることを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の発明は、加工米を加熱調理する加工米調理方法であって、低アミロース米を主原料とする加工米を洗米し、所定の時間水に浸漬する準備処理ステップと、準備処理をした低アミロース米を主原料とする加工米と、所定の量の水とを混合して、水分が加熱され発生する蒸気を放出する蒸気放出手段であって、蒸気放出量を制御して加熱中内圧が所定の圧力とする加圧手段と、水分中に米から溶け出したでんぷんを所定量以上貯留する吹きこぼれ抑制空間とを有する蒸気放出手段を含む電子レンジ加熱調理用容器に充填する充填ステップと、電子レンジにより、加工米と所定の量の水とを所定時間加熱して炊飯する加熱ステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、低アミロース米を主原料とする加工米と、投入された加工米および加えられた水分が加熱され発生する蒸気を放出する蒸気放出手段であって、蒸気放出量を制御して加熱中内圧を所定の圧力とする加圧手段と、水分中に米から溶け出したでんぷんを所定量以上貯留する吹きこぼれ抑制空間とを有する蒸気放出手段を含む電子レンジ加熱調理容器とを備えているので、電子レンジ等で簡便に加熱調理するだけで安価に吹きこぼれなく炊飯することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態の加工食品の一例を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態で用いる電子レンジ加熱調理容器の側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態で用いる電子レンジ加熱調理容器の蒸気抜き機構付き中蓋の一例の斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態で用いる電子レンジ加熱調理容器の上面図である。
【
図5】本発明の一実施形態で用いる電子レンジ加熱調理容器の側面図である。
【
図6】本発明の一実施形態の加工食品の加熱調理方法の一連の流れの一例を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態の加工食品の加工米と水分の混入時の状態を説明するための図である。
【
図8】本発明の一実施形態の加工食品の加熱時の動作を説明するための図である。
【
図9】本発明の一実施形態で用いる電子レンジ加熱調理容器の別の例の斜視図である。
【
図10】本発明の一実施形態で用いる電子レンジ加熱調理容器のさらに別の例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の加工食品並びにその製造方法および調理方法について図面を参照して実施形態を説明する。なお、異なる図面でも、同一の処理、構成を示すときは同一の符号を用いる。
【0021】
[低アミロース米およびその特性]
本発明は、低アミロース米を主原料とする加工米を電子レンジを用いて加熱調理することにより、特別な技術を用いずに吹きこぼれなく炊飯し、専用の炊飯器などで炊いた米飯と食味に大きな差がない米飯を取得することが可能な方法を提案するものである。従来の電子レンジによる炊飯に限らず、炊飯する際には、通常ある程度加熱が進むと吹きこぼれが発生するが、専用の炊飯器は加熱制御や特殊な容器構造等によりこれを防止している。しかし、専用の炊飯器と異なり電子レンジで調理する場合、何らかの対処を行わなければ吹きこぼれが発生し、電子レンジ内部を汚染するだけでなく、吹きこぼれにより旨味も喪失してしまうため、食味も落ちるという課題がある。このような吹きこぼれに対処すべく上述したように特許文献1ないし3はじめ、多くの技術が提案されているが、本願発明はそのような追加の技術を要することなく、吹きこぼれを防止して電子レンジを用い、所定の安価な容器を用い、通常の加熱で容易に吹きこぼれなく炊飯することを目的とする。ここで、いわゆる吹きこぼれは水分中に米から溶け出したでんぷんが水分の表面に膜を張る結果、加熱による沸騰から生成される水蒸気が抜けることができずに、膜も含めて容器の外にこぼれ出すことによって発生することが以前より知られていたが、本願発明者は様々な試行錯誤の結果、米の品種により膜の貼り方が異なることを発見した。すなわち、炊飯時に米の表面から溶出するでんぷんと言ってもすべて同じではなく、でんぷんのうち吹きこぼれにつながる強固な膜を形成するのは主にアミロースであることを発見した。加えて、非特許文献1を参照して上述した通り、もち米をはじめ低アミロース米は炊飯時のアミロースの溶出が少ないとの知見から、アミロースの含有が一定より少ない米の品種を用いることにより、炊飯時のアミロースの溶出がある程度抑制され、吹きこぼれを低減することができるとの知見を得た。アミロース含有量としては17%以下の品種の米であれば電子レンジを用いて通常の加熱方法で炊飯しても吹きこぼれなく炊飯することが確認できたが、アミロース含有量18~20%のいわゆるうるち米では相当の量の吹きこぼれが発生した。そこで、本願発明は、アミロース含有率17%以下の低アミロース米を主原料とした加工米を含む、電子レンジで炊飯するのに適した加工食品を提供するものである。また、このような加工食品に加え、低アミロース米を用いて電子レンジで炊飯する方法を提供するものである。
【0022】
なお、電子レンジで手軽に炊飯するのに適した加工食品としては、吹きこぼれの抑制はもちろん、その他に解決すべき課題がある。まず、一般に炊飯に際して効率よく米を一粒一粒加熱してアルファ化するには、加熱容器内で米粒を対流させることが重要であり、電子レンジで加熱する場合も、使用する容器は水分中を米が対流できるようなスペースを必要とする。また、電子レンジ調理用の加工食品と言っても、洗米や事前の水浸漬が必要であるとすると、結局電子レンジを使用して炊飯しても、専用の炊飯器で炊飯しても手間が大きく変わらず、電子レンジによる加熱調理の意義がないという課題もある。すなわち、加工食品として購入した後、水分を加える程度の簡便な作業のみで炊飯することが必要である。洗米や事前の水浸漬については、近年無洗米や、早炊き米などの製造技術が向上し、様々な加工米が提供され、その目的に応じて、洗米も事前の水浸漬も不要で、食味も勝るとも劣らない加工米が提供されている。また、加熱調理時の対流も、例えば
図1に示すような本実施形態の電子レンジ加熱調理容器101のように十分な容量があるので、加熱調理時に十分な対流を期待することができる。さらに、本実施形態の電子レンジ加熱調理容器101のガス解放機構103により、加熱時には適度な内圧の下で炊飯することができる。加えて、通常の容器で炊飯した場合、低アミロース米を用いても吹きこぼれを完全に防ぐことはできないので、本実施形態では簡易なガス解放機構104を備える中蓋103を採用して簡便に、吹きこぼれを防止することができる。
【0023】
したがって、本願発明の加工食品は、低アミロース米を主原料とすることにより、電子レジで加熱調理する際も吹きこぼれを低減するとともに、低アミロース米を無洗米としたり、早炊き米としたりすることに加え、所定のディスポーザブルで安価な電子レンジ加熱調理容器と組み合わせることにより達成することができる。ここで、本願発明は低アミロース米を主原料とするがこれは、単に低アミロース米のみを使用するという意味だけでなく、炊飯時のアミロースの溶出を一定内に抑制することができる範囲において、低アミロース米を主原料に他の品種のコメを混合することもできる、という意味も含むことができる。
【0024】
[第1実施形態]
図1は、本発明の一実施形態の加工食品の一例を示す図であり、
図2は、本発明の一実施形態で用いる電子レンジ加熱調理容器の斜視図である。また、
図3は、本発明の一実施形態で用いる電子レンジ加熱調理容器の蒸気抜き機構付き中蓋の一例の斜視図であり、
図4は、電子レンジ加熱調理容器の上面図である。さらに、
図5は、本発明の一実施形態で用いる電子レンジ加熱調理容器の側面図である。本実施形態の加工食品の一例は、
図1に示すように、水を加えてすぐに炊飯できるよう、低アミロース米を主原料として、事前の水の浸漬が不要な加工米102を、電子レンジ加熱調理容器101に組み込んだものである。
【0025】
加工米102は、事前の水浸漬が不要な加工米であれば、いずれのものも使用することができ、本実施形態では無洗で事前の水浸漬が不要であれば、炊飯時間の短縮は特に不要だが、いわゆる早炊き米も使用することができる。また、封入される米の量に合わせた所定の水を同梱して、さらに調理を容易にすることもできる。ここで、加工米はさらに容器に入れることができ、その場合は本技術分野で知られた、例えば樹脂製の包装袋とすることができ、その材質、寸法等は本技術分野で知られたいずれかの技術を用いることができる。
【0026】
電子レンジ加熱調理容器101は、基本的に加工米102を保存、運搬する際の包装容器であるが、加熱調理時には加熱調理容器の役割を果たすので、ユーザは特別な容器を用意しなくても包装容器をそのまま用いて電子レンジによる炊飯が可能となる。また、加熱調理容器は安価な素材を用いることにより調理、喫食後洗浄等せずに廃棄するディスポーザブルな容器とすることができる。
図2を参照して電子レンジ加熱調理容器101を説明すると、本実施形態の電子レンジ加熱調理容器101は、
図4および5から理解できるように実際の加熱調理時に吹きこぼれ等を抑える中蓋103を載置できるようになっているが、このため
図3に示すように中蓋103は電子レンジ加熱調理容器101の内面の形状に合致する外形を有しており、さらに蒸気を放出するガス解放機構104を備える。本実施形態では、この中蓋103を用いることにより、中蓋下部と水面との間に適度な空間が形成され炊飯時に吹き上がるでんぷんの膜をある程度受容することが可能となり、ガス解放機構104と相まって外部への吹きこぼれを回避することができる。
【0027】
電子レンジ加熱調理容器101および中蓋103は、シート状の可撓性フィルムで形成され、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート又はこれらを積層したものに酸化アルミニウムや酸化ケイ素等の無機化合物が蒸着された基材層に、ポリプロピレン(PP)等からなる熱融着性層を積層させて形成することができる。例えば、通常の加熱容器に用いられるプラスチック素材が適用可能であり、例えば熱可塑性樹脂からなる単層のフィルム・シート類、熱可塑性樹脂を他の熱可塑性樹脂等と積層した多層フィルムなどが使用して形成することができるが、これに限られず本技術分野で知られた材料を用いることができる。
【0028】
図4および5に示すように、本実施形態の電子レンジ加熱調理容器101は、逆円錐台形であり、内側の中間より上方に、ガス解放機構104を備える中蓋103を載置して使用することができるが、加工食品として保存、運搬、販売される際は、
図2に示すように加工米102を同梱することができる。ガス解放機構104は、本技術分野で知られたいずれかの機構を用いることができ、後述するような様々な実施例を採用することが可能であるが、例えば、中蓋103から上方に所定の空間、例えば円錐台形状に設けて上面に蒸気を放出する穴を設けることができる
なお、本実施形態では、電子レンジ加熱調理容器101に加工米102が同梱されているように記載しているが、これに限られず、別々の経路でユーザが入手し、以上を組み合わせて、電子レンジにより炊飯することもできるし、販売の際に電子レンジ加熱調理容器101と加工米102とを組み合わせて販売する等、その他、本技術分野で知られた方法で本発明を実施することができる。
【0029】
[加工食品の調理方法]
次に、本実施形態の製造方法により製造された加工食品を電子レンジ等で調理する方法を説明する。
図6は、本発明の一実施形態の加工食品の加熱調理方法の一連の流れの一例を示す図であり、
図7は、加工米と水分の混合時の状態を説明するための図である。また、
図8は、本発明の一実施形態の加工食品の加熱時の動作を説明するための図である。
【0030】
まず、電子レンジ加熱調理容器101に梱包されている加工米を取り出して包装袋102を開封し、加工米と加工米の量に合わせた所定の量の水を電子レンジ加熱調理容器101内で混合させ(ステップS601)、中蓋を載置し(ステップS602)、電子レンジ内に載置して加熱を開始する(ステップS603)。上述の様に、本実施形態の電子レンジ加熱調理容器101は、
図7に示すような態様で電子レンジ内において安定して加熱されるので、加熱された水内部で対流が起こり、専用の炊飯器で炊飯したときと同様に米の一粒一粒に効率よく熱を加えることができる。このように加熱され、所定の量の水が加熱されて、米が炊飯される(ステップS604)。
【0031】
さらに、加熱を続けると、米飯および水分への加熱により容器内の内圧が上昇して蒸気がガス解放機構104から放出され、所定の内圧を加え続けることができる。すなわち、
図8に示すように、電子レンジ加熱調理容器101内では、電子レンジで内容物の水分が加熱されて高温になるとともに、水蒸気が発生して内部の圧力が上昇し、ガス解放機構104の上面の穴から水蒸気802が外部に排出される。その状態で安定した内圧の下、所定の時間加熱をすると米飯801が炊きあがり、食に供することが可能となる(ステップS605)。この際、本実施形態の加工米は低アミロース米を主原料とするので、強固な膜の形成がある程度抑制され、ガス解放機構104と相まって吹きこぼれることなく最後まで炊き上げることができる。なお、炊飯中に溶出したいわゆるおねばは、吹きこぼれなければ米表面に再付着し旨味の元となるほか、本実施形態では吹きこぼれしないので加熱を抑制せず一気に炊き上げることができるので、理想的なアルファ化が達成されて食味も向上する。
【0032】
[ガス解放機構]
上記の説明では、本実施形態の一例であるガス解放機構104は、円錐台形状に設けて上面に蒸気を放出する穴が設けられているが、中蓋103により形成される、水面上の空間とにより、水分中に米から溶け出したでんぷんが水分の表面に膜を張る結果、加熱による沸騰から生成される水蒸気が抜けることができずに発生する吹きこぼれの膜を、円錐台形状の凸部で抑えることができ、中蓋103を超えて外にこぼれ出すことを防止している。すなわち、でんぷんを含む膜の吹上は凸部内で抑えつつ、凸部の上部に設けられたガス解放穴から、沸騰により生成される蒸気のみ放出することができ、吹きこぼれを防止することができることから、溶出するアミロースの量の低減と相まって加熱の細かな調整をする必要なく電子レンジで炊飯することが可能になる。
【0033】
このような1つの円錐台形状のガス解放機構のほかにも様々な形状、サイズの解放機構を中蓋103に設けることができる。
図9は、本発明の一実施形態で用いる電子レンジ加熱調理容器の別の例の斜視図であり、
図10は、さらに別の例の斜視図である。
【0034】
図9に示すガス解放機構901~903は、上記のガス解放機構104と個々の解放機構の形状は同じであるが、1つの中蓋910に複数個の円錐台形状の蒸気抜き部が配置される点で異なる。このような構成により、放出蒸気量や加熱時の内圧をきめ細かく制御することができる。なお、ガス解放機構104の体積は0.5~50cm
3が望ましく、ガス解放機構104の上部の蒸気抜き穴の面積は、0.05~5cm
2が望ましい。
【0035】
図10に示するガス解放機構1001は、矩形の形状でありながら蒸気を放出する蒸気抜き穴1002は、ガス解放機構1001の上面ではなく、側面に設けられている。上記のガス解放機構104や901と異なり側面に蒸気抜き穴1002を設ける構成とすることにより、吹きこぼれが一気に上方に放出されるのを回避し蒸気のみを放出することができる。
【0036】
[実施例]
加工食品の一実施例を説明する。
【0037】
加工米としては、いわゆる早炊き米を使用する。所定の量の水を混合して、電子レンジ加熱調理容器に封入し電子レンジ庫内に載置し、所定の加熱時間を設定して加熱した結果、加熱が終了すると吹きこぼれもなく、専用の炊飯装置で炊飯した米と同様の食味の米飯を得ることができた。
【0038】
[加熱調理試験]
加工保存されている加工米を、所定の量の水ととともに電子レンジ加熱調理容器に充填して、中蓋を載置し、500Wの電子レンジで加熱調理した時間とその時の状態を記録した。添加する水分の量は加工米と同量とした。加熱の結果、500Wの電子レンジで加熱から約3分30秒後に電子レンジ加熱調理容器の内圧が高まり、約4分30秒後に蒸気抜き穴から蒸気の噴出が開始され、さらに加熱を続けると、吹きこぼれることなく約6分後に無事炊飯が完了した。食味もほとんど米のみで炊飯した場合と大差はなかった。本実施例では低アミロース米であるミルキークイーンを用いたが、他のうるち米と混合しても、配合比率を適切に設定すれば吹きこぼれはなかった。
【0039】
また、比較例として、本実施例の加工米と同様の早炊き米であるが、通常のうるち米であるあきたこまちを主原料にして電子レンジを用いて通常の容器で調理した結果、先ず500Wで6分ほど加熱するが、4分程度経過して炊飯が進むと吹きこぼれが発生しそうになるので炊飯状況を確認しながら、度々加熱を停止する必要があった。さらに、その後、150~200Wで5分ほど再加熱して余分な水分を除去する必要があった。
【符号の説明】
【0040】
101 電子レンジ加熱調理容器
102 加工米
103、910、1003 中蓋
104、901、902、903、1001 ガス解放機構
701 水分
702 加工米
802 蒸気
1002 蒸気抜き穴