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特開2023-8358プリント配線板とプリント配線板の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008358
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】プリント配線板とプリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
H05K3/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111870
(22)【出願日】2021-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122622
【弁理士】
【氏名又は名称】森 徳久
(72)【発明者】
【氏名】児玉 博明
【テーマコード(参考)】
5E314
【Fターム(参考)】
5E314AA03
5E314AA04
5E314AA25
5E314AA32
5E314AA36
5E314AA42
5E314AA45
5E314BB06
5E314CC15
5E314DD05
5E314DD06
5E314DD07
5E314FF05
5E314GG24
(57)【要約】
【課題】安定した性能のプリント配線板の提供。
【解決手段】本発明のプリント配線板の製造方法は、樹脂絶縁層上にパッドを形成することと、前記樹脂絶縁層と前記パッド上に最上の樹脂絶縁層を形成することと、前記最上の樹脂絶縁層にレーザーを照射することで前記パッドを露出するための開口を形成することと、前記開口の形成後にデスミア処理を行うことと、前記デスミア処理の後に前記開口から露出する前記パッド上にめっきバンプを形成すること、とを含む。前記最上の樹脂絶縁層は、エポキシ系樹脂とポリマー系樹脂と無機フィラーと着色のための顔料とを含む熱硬化性樹脂組成物によって形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂絶縁層と、
前記樹脂絶縁層上に形成されているパッドと、
前記樹脂絶縁層と前記パッド上に形成され、前記パッドを露出する開口を有する最上の樹脂絶縁層と、
前記開口から露出する前記パッド上に形成されているめっきバンプ、とを有するプリント配線板であって、
前記最上の樹脂絶縁層は、エポキシ系樹脂とポリマー系樹脂と無機フィラーと着色のための顔料とを含む熱硬化性樹脂組成物によって形成されている。
【請求項2】
請求項1のプリント配線板であって、前記顔料は緑色の顔料である。
【請求項3】
樹脂絶縁層上にパッドを形成することと、
前記樹脂絶縁層と前記パッド上に最上の樹脂絶縁層を形成することと、
前記最上の樹脂絶縁層にレーザーを照射することで前記パッドを露出するための開口を形成することと、
前記開口の形成後にデスミア処理を行うことと、
前記デスミア処理の後に前記開口から露出する前記パッド上にめっきバンプを形成すること、とを含むプリント配線板の製造方法であって、
前記最上の樹脂絶縁層は、エポキシ系樹脂とポリマー系樹脂と無機フィラーと着色のための顔料とを含む熱硬化性樹脂組成物によって形成されている。
【請求項4】
請求項3のプリント配線板の製造方法であって、さらに、プラスチックフィルムを準備することを含み、前記プラスチックフィルムは前記最上の樹脂絶縁層上に形成され、前記レーザーは前記プラスチックフィルムを介し前記最上の樹脂絶縁層に照射される。
【請求項5】
請求項3のプリント配線板の製造方法であって、前記顔料は緑色の顔料である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、プリント配線板とプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、小径(60μm以下)の開口が形成されたソルダーレジスト層を有する配線基板の製造方法を開示する。特許文献1の技術では、光硬化型のソルダーレジストによってソルダーレジスト層が形成された後、レーザーによって小径の開口が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-152311号公報
【発明の概要】
【0004】
[特許文献1の課題]
特許文献1の技術では、レーザーによってソルダーレジスト層に開口が形成された後、開口内の樹脂残渣を除去するためのデスミア処理が行われる。デスミア処理はアルカリ性過マンガン酸溶液を用いて行われると考えられる。しかしながら、光硬化型のソルダーレジストで形成されたソルダーレジスト層は溶液によってダメージを受けると考えられる。ソルダーレジスト層の特性が損なわれると考えられる。また、開口の形状に与える影響も大きいため、開口内に形成されるめっきバンプの形状も安定しないと考えられる。特許文献1の技術では、安定した性能のプリント配線板が得られないと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のプリント配線板は、樹脂絶縁層と、前記樹脂絶縁層上に形成されているパッドと、前記樹脂絶縁層と前記パッド上に形成され、前記パッドを露出する開口を有する最上の樹脂絶縁層と、前記開口から露出する前記パッド上に形成されているめっきバンプ、とを有する。前記最上の樹脂絶縁層は、エポキシ系樹脂とポリマー系樹脂と無機フィラーと着色のための顔料とを含む熱硬化性樹脂組成物によって形成されている。
【0006】
実施形態のプリント配線板では、最上の樹脂絶縁層は、光硬化型のソルダーレジストではなく、エポキシ系樹脂とポリマー系樹脂と無機フィラーと着色のための顔料とを含む熱硬化性樹脂組成物によって形成されている。上記の熱硬化性樹脂組成物は、光硬化型のソルダーレジストに比べて、デスミア処理に用いられるアルカリ性過マンガン酸溶液によるダメージを受けにくい。そのため、開口の形状にも影響が少ない。従って、安定した性能のプリント配線板が得られる。
【0007】
本発明のプリント配線板の製造方法は、樹脂絶縁層上にパッドを形成することと、前記樹脂絶縁層と前記パッド上に最上の樹脂絶縁層を形成することと、前記最上の樹脂絶縁層にレーザーを照射することで前記パッドを露出するための開口を形成することと、前記開口の形成後にデスミア処理を行うことと、前記デスミア処理の後に前記開口から露出する前記パッド上にめっきバンプを形成すること、とを含む。前記最上の樹脂絶縁層は、エポキシ系樹脂とポリマー系樹脂と無機フィラーと着色のための顔料とを含む熱硬化性樹脂組成物によって形成されている。
【0008】
実施形態のプリント配線板の製造方法によると、最上の樹脂絶縁層が、エポキシ系樹脂とポリマー系樹脂と無機フィラーと着色のための顔料とを含む熱硬化性樹脂組成物によって形成される。上記の熱硬化性樹脂組成物は、光硬化型のソルダーレジストに比べて、デスミア処理に用いられるアルカリ性過マンガン酸溶液によるダメージを受けにくい。そのため、最上の樹脂絶縁層の開口の形状にも影響が少ない。従って、安定した性能のプリント配線板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態のプリント配線板を模式的に示す断面図。
図2A】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
図2B】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
図2C】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
図2D】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
図2E】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
図2F】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
図2G】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
図2H】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
図3】実施形態の第1改変例のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態]
図1は実施形態のプリント配線板2を示す断面図である。図1に示されるように、プリント配線板2は、樹脂絶縁層10と、パッド20と、最上の樹脂絶縁層30と、めっきバンプ50、とを有する。
【0011】
樹脂絶縁層10は、熱硬化性樹脂を用いて形成される。樹脂絶縁層10はシリカ等の無機粒子を含んでもよい。樹脂絶縁層10は、ガラスクロス等の補強材を含んでもよい。
【0012】
パッド20は、樹脂絶縁層10上に形成されている。パッド20は銅によって形成される。パッド20は、シード層22とシード層22上の電解めっき膜24で形成されている。
【0013】
最上の樹脂絶縁層30は、樹脂絶縁層10とパッド20上に形成されている。最上の樹脂絶縁層30には、パッド20を露出する開口40が形成されている。開口40の径は例えば60μm以下である。最上の樹脂絶縁層30は、エポキシ系樹脂とポリマー系樹脂と無機フィラーと着色のための顔料とを含む熱硬化性樹脂組成物によって形成されている。エポキシ系樹脂は、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェニル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂などである。ポリマー系樹脂は、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミドなどである。エポキシ系樹脂とポリマー系樹脂は海島構造を形成する。エポキシ系樹脂(海)の割合が多く、ポリマー系樹脂(島)の割合が少ない。無機フィラーは、例えば、シリカ、アルミナなどである。
【0014】
着色のための顔料は、緑色の顔料である。顔料が含まれることにより、実施形態のプリント配線板2を視認する際に、最上の樹脂絶縁層30と導体部分(めっきバンプ50等)との色の差異が明確になる。導体部分が視認され易くなる。実装の際の作業者の負担が軽減され得る。
【0015】
めっきバンプ50は、開口40から露出するパッド20上に形成されている。めっきバンプ50は、シード層52とシード層52上の電解めっき膜54と電解めっき膜54上のはんだ膜56で形成されている。シード層52と電解めっき膜54は銅によって形成される。はんだ膜56は鉛とスズを主成分とするはんだによって形成される。シード層52は、開口40から露出するパッド20上と、開口40の側面と、開口40の周囲の最上の樹脂絶縁層30上を覆っている。電解めっき膜54は、開口40を充填している。電解めっき膜54の一部は、開口40よりも上方に突出している。はんだ膜56は、電解めっき膜54の上面に形成されている。
【0016】
上記の通り、実施形態のプリント配線板2では、最上の樹脂絶縁層30は、光硬化型のソルダーレジストではなく、エポキシ系樹脂とポリマー系樹脂と無機フィラーと着色のための顔料とを含む熱硬化性樹脂組成物によって形成されている。上記の熱硬化性樹脂組成物は、光硬化型のソルダーレジストに比べて、製造過程で行われるデスミア処理に用いられるアルカリ性過マンガン酸溶液によるダメージを受けにくい。そのため、開口40の形状にも影響が少ない。従って、安定した性能のプリント配線板2が得られる。
【0017】
[実施形態のプリント配線板2の製造方法]
図2A図2Hは実施形態のプリント配線板2の製造方法を示す。図2A図2Hは断面図である。図2Aは、樹脂絶縁層10と、樹脂絶縁層10上に形成されたパッド20とを示す。パッド20はセミアディティブ法によって形成される。パッド20は、シード層22の形成後にシード層22上に電解めっき膜24が形成され、その後フラッシュエッチングが行われることによって形成される。
【0018】
図2Bに示されるように、樹脂絶縁層10とパッド20上に熱硬化性樹脂組成物層30aとプラスチックフィルム32が形成される。熱硬化性樹脂組成物層30aとプラスチックフィルム32は接着性フィルム35を構成する。接着性フィルム35は、プラスチックフィルム32の一方の面に熱硬化性樹脂組成物層30aが配置されて形成されている。接着性フィルム35は、熱硬化性樹脂組成物層30aが樹脂絶縁層10とパッド20に接するように、樹脂絶縁層10とパッド20上に重ねて配置される。この結果、図2Bに示されるように、樹脂絶縁層10とパッド20上に熱硬化性樹脂組成物層30aとプラスチックフィルム32とが形成される。
【0019】
熱硬化性樹脂組成物層30aはこの時点では硬化されていない。熱硬化性樹脂組成物層30aを形成する熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ系樹脂とポリマー系樹脂と無機フィラーと着色のための顔料とを含む。熱硬化性樹脂組成物は、上記の最上の樹脂絶縁層30を形成する熱硬化性樹脂組成物と同じである。
【0020】
プラスチックフィルム32は、熱硬化性樹脂組成物層30aの上面全面を覆っている。プラスチックフィルム32は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等によって形成されるフィルム状部材である。プラスチックフィルム32のうちの熱硬化性樹脂組成物層30aとの接触面は、熱硬化後の離型を容易に行うために離型処理されている。
【0021】
その後、熱硬化性樹脂組成物層30aが熱硬化される。熱硬化性樹脂組成物層30aから最上の樹脂絶縁層30が形成される。
【0022】
図2Cに示されるように、形成された最上の樹脂絶縁層30上からプラスチックフィルム32が除去される。最上の樹脂絶縁層30が露出する。
【0023】
図2Dに示されるように、最上の樹脂絶縁層30にレーザーLが照射される。最上の樹脂絶縁層30に、パッド20を露出する開口40が形成される。開口40の径は例えば60μm以下である。レーザーLは例えばUVレーザーである。その後デスミア処理が行われる。デスミア処理は、アルカリ性過マンガン酸溶液を使用した湿式法によって行われる。デスミア処理により、開口40形成時に発生する樹脂残渣が除去される。
【0024】
図2Eに示されるように、最上の樹脂絶縁層30と開口40から露出するパッド20上にシード層52が形成される。図2Fに示されるように、シード層52上にめっきレジスト60が形成される。めっきレジスト60は、めっきバンプ50(図1)を形成するための開口62を有する。開口62は開口40の上に形成される。
【0025】
図2Gに示されるように、めっきレジスト60から露出するシード層52上に電解めっき膜54が形成される。電解めっき膜54は開口40を充填する。電解めっき膜54の一部は開口40の上方に突出して形成される。開口40から突出する電解めっき膜54の一部は開口62の大部分を充填する。
【0026】
図2Hに示されるように、めっきレジスト60が除去される。その後、電解めっき膜54から露出するシード層52が除去される。電解めっき膜54上にはんだ膜56が形成される。実施形態のプリント配線板2(図1)が得られる。
【0027】
実施形態の製造方法によると、最上の樹脂絶縁層30が、エポキシ系樹脂とポリマー系樹脂と無機フィラーと着色のための顔料とを含む熱硬化性樹脂組成物によって形成される。上記の熱硬化性樹脂組成物は、光硬化型のソルダーレジストに比べて、デスミア処理に用いられるアルカリ性過マンガン酸溶液によるダメージを受けにくい。そのため、アルカリ性過マンガン酸溶液を用いるデスミア処理が行われる場合であっても、開口40の形状にも影響が少ない。従って、安定した性能のプリント配線板2が得られる。
【0028】
上記の通り、最上の樹脂絶縁層30はアルカリ性過マンガン酸溶液によるダメージを受けにくいが、最上の樹脂絶縁層30に含まれるポリマー系樹脂はエポキシ系樹脂に比べてアルカリ性過マンガン酸溶液によって比較的除去され易い特性を有する。しかし、実施形態では、エポキシ系樹脂とポリマー系樹脂は、エポキシ系樹脂(海)の割合が多く、ポリマー系樹脂(島)の割合が少ない海島構造を形成する。そのため、デスミア処理で一部のポリマー系樹脂が除去されることにより、開口40の側壁と最上の樹脂絶縁層30の上面にアンカーが形成される。その後形成されるシード層52(図2E)と最上の樹脂絶縁層30の高い密着性が実現される。
【0029】
[実施形態の第1改変例]
第1改変例では、得られるプリント配線板2は実施形態と同じである。第1改変例では製造方法の一部が実施形態と異なる。第1改変例では、樹脂絶縁層10とパッド20上に熱硬化性樹脂組成物層30aとプラスチックフィルム32とが形成される(図2B参照)。熱硬化性樹脂組成物層30aが熱硬化され、最上の樹脂絶縁層30が形成される。
【0030】
図3に示されるように、その後、プラスチックフィルム32が除去されない状態で、プラスチックフィルム32の上から、プラスチックフィルム32を介して最上の樹脂絶縁層30にレーザーLが照射される。プラスチックフィルム32と最上の樹脂絶縁層30に、パッド20を露出する開口40が形成される。第1改変例では、レーザーLはUVレーザーよりもエネルギーの大きい炭酸ガスレーザーである。プラスチックフィルム32が除去されない状態で開口40が形成されるため、プラスチックフィルム32の除去後に開口40が形成される場合に比べて樹脂残渣の飛散が少ない。
【0031】
その後、プラスチックフィルム32が除去される。最上の樹脂絶縁層30が露出する。デスミア処理が行われる。その後、図2Eに示されるように、最上の樹脂絶縁層30と開口40から露出するパッド20上にシード層52が形成される。これ以降の工程は、実施形態の図2F図2Hが示す工程と同様である。
【0032】
[第1改変例の別例]
第1改変例の別例では、開口40(図3)の形成後に、プラスチックフィルム32が除去されない状態でデスミア処理が行われる。デスミア処理の後でプラスチックフィルム32が除去される。デスミア処理以降の工程は第1改変例と同様である。
【0033】
[実施形態の第2改変例]
第2改変例では、最上の樹脂絶縁層30を形成する熱硬化性樹脂組成物に含まれる顔料が緑色以外の色の顔料である。例えば顔料は青色、赤色、黒色等である。この場合も導体部分が視認され易くなり、実装の際の作業者の負担が軽減され得る。
【符号の説明】
【0034】
2:プリント配線板
10:樹脂絶縁層
20:パッド
30:最上の樹脂絶縁層
32:プラスチックフィルム
40:開口
50:めっきバンプ
L:レーザー
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図3