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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083614
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】熱電変換モジュール
(51)【国際特許分類】
   H10N 10/17 20230101AFI20230608BHJP
【FI】
H10N10/17 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072559
(22)【出願日】2023-04-26
(62)【分割の表示】P 2019520662の分割
【原出願日】2018-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2018096911
(32)【優先日】2018-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【弁理士】
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100202142
【弁理士】
【氏名又は名称】北 倫子
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】菅野 勉
(72)【発明者】
【氏名】玉置 洋正
(72)【発明者】
【氏名】金子 由利子
(72)【発明者】
【氏名】上原 美穂
(57)【要約】
【課題】複数の熱電変換モジュールのうちの一部のモジュールが高温に晒されて故障した場合であっても、熱発電システムの継続利用が可能な熱電変換モジュールを提供する。
【解決手段】本開示の熱発電システムの使用方法において、低融点導体の融点以上の温度雰囲気において、複数の熱電変換モジュールのうちの少なくとも1つに具備される低融点導体が溶融し、溶融した低融点導体によって、複数の熱電変換モジュールのうちの少なくとも1つに具備される一対の外部端子を短絡させ、溶融した低融点導体によって、複数の熱電変換モジュールのうちの他の少なくとも1つを作動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の熱電変換モジュールが電気的に直列接続されている熱発電システムの使用方法であって、
前記複数の熱電変換モジュールの各々は、
電気的に直列接続された複数の熱電変換素子対、
電力の入力または出力を行うための一対の外部端子、および
前記複数の熱電変換モジュールの各々の耐熱温度と略等しい融点を有する低融点導体、
を具備し、
前記低融点導体の少なくとも一部は、前記一対の外部端子の間に位置し、
前記低融点導体は、前記低融点導体の融点よりも低い温度雰囲気において、前記一対の外部端子の少なくとも一方とは電気的に絶縁されており、
前記低融点導体の融点以上の温度雰囲気において、前記複数の熱電変換モジュールのうちの少なくとも1つに具備される前記低融点導体が溶融し、
溶融した前記低融点導体によって、前記複数の熱電変換モジュールのうちの少なくとも1つに具備される前記一対の外部端子を短絡させ、
溶融した前記低融点導体によって、前記複数の熱電変換モジュールのうちの他の少なくとも1つを作動させる、
熱発電システムの使用方法。
【請求項2】
前記複数の熱電変換素子対、前記一対の外部端子、および前記低融点導体は、高温熱源側の基板上に設けられている、
請求項1に記載の熱発電システムの使用方法。
【請求項3】
前記複数の熱電変換素子対の各々は、p型熱電変換素子およびn型熱電変換素子を有し、
前記低融点導体は、前記p型熱電変換素子または前記n型熱電変換素子の耐熱温度と略等しい融点を有し、
前記低融点導体の融点は、少なくとも以下の数式(I)または数式(II)を充足し、
Tp×0.90≦Tm≦Tp×1.1 (I)
Tn×0.90≦Tm≦Tn×1.1 (II)
ここで、Tmは前記融点であり、Tpは前記p型熱電変換素子の耐熱温度であり、Tnは前記n型熱電変換素子の耐熱温度である、
請求項1に記載の熱発電システムの使用方法。
【請求項4】
前記一対の外部端子の一方は、前記複数の熱電変換素子対の一端側にあるp型熱電変換素子に電気的に接続する第1接続部を有し、
前記一対の外部端子の他方は、前記複数の熱電変換素子対の他端側にあるn型熱電変換素子に電気的に接続する第2接続部を有する、
請求項2に記載の熱発電システムの使用方法。
【請求項5】
前記第1接続部および前記第2接続部は、前記基板の外側領域によって囲まれた内側領域に位置し、
前記外側領域は、前記基板の面内における最も外側に設けられた複数の前記p型熱電変換素子および複数の前記n型熱電変換素子が存在する領域を含み、
前記低融点導体は、前記基板の前記外側領域によって囲まれた内側領域に設けられる、
請求項4に記載の熱発電システムの使用方法。
【請求項6】
前記複数の熱電変換モジュールの各々は、前記一対の外部端子の間に設けられた他の低融点導体をさらに備える、
請求項1から5のいずれか1項に記載の熱発電システムの使用方法。
【請求項7】
前記耐熱温度は、前記複数の熱電変換素子対のうちの少なくとも1つの熱膨張に起因して、前記複数の熱電変換素子対の直列接続が切断するときの温度である、
請求項1から6のいずれか1項に記載の熱発電システムの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は熱電変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
熱電変換素子(Thermoelectric conversion element)は、熱を電力に、または電力を熱に変換することができる素子である。ゼーベック効果を示す熱電材料から形成した熱電変換素子は、比較的低温(例えば200℃以下)の熱源から熱エネルギーを得て電力に変換することができる。例えば、このような熱電変換素子を利用した熱発電技術によれば、従来、蒸気、温水、排気ガスなどの形態で未利用のまま周囲環境に捨てられていた熱エネルギーを回収して有効に活用することが可能になる。
【0003】
一般の熱電変換素子は、キャリアの電気的極性が互いに異なるp型熱電変換素子およびn型熱電変換素子の対、いわゆる「π型構造」を有する。その構造は、例えば非特許文献1に開示されている。「π型構造」の熱電変換素子では、p型熱電変換素子とn型熱電変換素子とが電気的に直列に、かつ熱的に並列に接続される。本明細書では、p型熱電変換素子およびn型熱電変換素子の対を「熱電変換素子対」と呼ぶこととする。複数の熱電変換素子対のそれぞれを互いに電気的に直列接続することにより熱電変換モジュールが構成される。熱電変換モジュールは、例えば数十個程度の熱電変換素子対を備える。熱エネルギーを電力に変換することにより、熱電変換モジュールから例えば数mV~数Vの電圧が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-9779号公報
【特許文献2】特開2016-35882号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】G. JEFFREY SNYDER and ERIC S. TOBERER, “Complex thermoelectric materials”, Nature Materials, Vol. 7, No. 2, 2008, pp. 105-114
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
より多くの発電量を得るために、複数の熱電変換モジュールを電気的に直列接続して熱発電システムを構成することがある。この熱発電システムでは、複数の熱電変換モジュールの一部が故障すると、複数の熱電変換モジュールが直列接続されているため、熱発電システム全体としての電気的導通が途絶えてしまう。このような場合であっても、熱発電システムの継続利用が望まれている。
【0007】
本開示の例示的な実施形態は、複数の熱電変換モジュールのうちの一部のモジュールが高温に晒されて故障した場合であっても、熱発電システムの継続利用が可能な熱電変換モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の熱電変換モジュールは、基板、前記基板上に設けられた、電気的に直列接続された複数の熱電変換素子対、前記基板上に設けられた、電力の入力または出力を行うための一対の外部端子、および低融点導体、を具備し、ここで、前記複数の熱電変換素子対の各々は、p型熱電変換素子およびn型熱電変換素子を有し、前記低融点導体は、前記p型熱電変換素子または前記n型熱電変換素子の耐熱温度と略等しい融点を有し、前記一対の外部端子の一方は、前記複数の熱電変換素子対の一端側にあるp型熱電変換素子に電気的に接続する第1接続部を有し、前記一対の外部端子の他方は、前記複数の熱電変換素子対の他端側にあるn型熱電変換素子に電気的に接続する第2接続部を有し、前記第1接続部および前記第2接続部は、前記基板の外側領域によって囲まれた内側領域に位置し、前記外側領域は、前記基板の面内における最も外側に設けられた複数の前記p型熱電変換素子および複数の前記n型熱電変換素子が存在する領域を含み、前記低融点導体は、前記基板の前記外側領域によって囲まれた内側領域に設けられ、かつ、前記低融点導体の少なくとも一部は、前記基板の法線方向から見たときに前記一対の外部端子の間に位置し、前記低融点導体は、前記一対の外部端子の少なくとも一方とは電気的に絶縁されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示の例示的な実施形態によれば、複数の熱電変換モジュールのうちの一部のモジュールが高温に晒されて故障した場合であっても、故障していない熱電変換モジュールを利用することによって熱発電システムの継続利用が可能な熱電変換モジュールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、例示的な実施形態による熱電変換モジュール100の構成を模式的に示す斜投影図である。
図2図2は、例示的な実施形態による熱電変換モジュール100の構成を模式的に示す平面図である。
図3図3は、一対の外部端子40、それに電気的に接続されるp型熱電変換素子21Pおよびn型熱電変換素子21Nを拡大して示す模式図である。
図4A図4Aは、基板10Hに設けられた低融点導体60を拡大して示す模式図である。
図4B図4Bは、基板10Hに設けられた低融点導体60を拡大して示す模式図である。
図5図5は、一対の外部端子40の間に設けられた支持体61によって支持された低融点導体60を示す模式図である。
図6図6は、溶融した低融点導体60により一対の外部端子40が短絡した状態を示す模式図である。
図7図7は、溶融した低融点導体60をガイドする、基板10Hに設けた溝70を示す模式図である。
図8A図8Aは、従来の熱電変換モジュール200の典型的な構成を模式的に示す斜投影図である。
図8B図8Bは、従来の熱電変換モジュール200の構成を模式的に示す平面図である。
図9図9は、一対の外部端子40を短絡させるスイッチSWを実装した熱電変換モジュール200の構成を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施形態を説明する前に、本開示の基礎となった本願発明者らの知見を説明する。
【0012】
図8Aは、従来の熱電変換モジュール200の典型的な構成を模式的に示している。図8Bは、基板の法線方向(図面のz方向)から熱電変換モジュール200を見たときの、低温熱源側の基板10C上の複数の熱電変換素子対20の配置・配線の様子を模式的に示している。従来の熱電変換モジュール200の構成は、例えば非特許文献1に開示されているとおりである。図面が煩雑になることを避けるために、図8Aにおいて高温熱源側の基板10Hの一部を省略している。
【0013】
熱電変換モジュール200は、高温熱源側の基板10H、低温熱源側の基板10C、両基板に挟持された複数の熱電変換素子対20および一対の外部端子40を備える。以降、高温熱源側の基板10Hおよび低温熱源側の基板10Cを、それぞれ単に基板10Hおよび基板10Cと表記する場合がある。これらの基板の少なくとも表面は、絶縁体材料で形成される。熱電変換素子対20は、p型熱電変換素子21Pおよびn型熱電変換素子21Nを有する。例えば、複数のp型熱電変換素子21Pおよび複数のn型熱電変換素子21Nは、低温熱源側の基板10Cに格子状に配置される。複数の熱電変換素子対20は、基板10Hに設けられた配線30Hおよび基板10Cに設けられた配線30Cによって、互いに電気的に直列接続される。p型熱電変換素子21Pおよびn型熱電変換素子21Nは、例えばはんだまたは接着剤を用いて配線30H、30Cに接合される。
【0014】
一対の外部端子40は、熱電変換モジュール200に電力の入力または出力を行うための端子である。一対の外部端子40は、互いに直列接続された複数の熱電変換素子対20に電気的に接続される。一対の外部端子40は、複数の熱電変換素子対20の配置および配線の効率を考慮して、図8Aに示すように典型的には基板10Cの隅に配置される。
【0015】
基板10Hを加熱して基板10Cを冷却する、つまり基板10Hを加熱して基板10Cを非加熱とすることにより、熱電変換素子対20のp型熱電変換素子21Pおよびn型熱電変換素子21Nにおいて温度差が生じる。ゼーベック効果によって起電力が発生する。熱電変換モジュール200は、熱エネルギーを電力に変換する。熱電変換モジュール200の内部で発生した電力は、一対の外部端子40から外部に取り出すことができる。
【0016】
一対の外部端子40から熱電変換モジュール200に電流を注入すると、今度はペルチェ効果により、例えば、一方の基板10Cの表面では吸熱が起こり、他方の基板10Hの表面では放熱が起こる。熱電変換モジュール200は、電力を熱エネルギーに変換する。このように、熱電変換モジュール200は、電力を用いた冷却・加熱を行うこともできる。
【0017】
例えば冷却機能の故障によって、熱電変換モジュール200は、正常動作時よりも高温状態になり得る。その場合、熱膨張により、特に熱電変換素子と配線の間の接合部でひび割れが生じ易くなる。これは、材料の熱膨張係数または材料の間での熱膨張係数の違いに起因すると考えられる。複数の熱電変換素子対20のうちの1つでもこのように故障すると、熱電変換モジュール200は電気的に断線状態となる。その結果、熱電変換モジュール200は機能しなくなってしまう。
【0018】
複数の熱電変換モジュール200を用いて例えば熱発電システムを構成することができる。熱発電システムにおいて、複数の熱電変換モジュール同士は、典型的には電気的に直列接続される。より多くの熱電変換モジュールを接続することにより、より多くの発電量が得られる。
【0019】
複数の熱電変換モジュール200のうちのどれか1つにおいて断線が生じたとする。その場合、例え残りの熱電変換モジュール200では断線が生じていなくても、熱発電システム全体としての電気的導通が途絶えてしまう。例えば、熱電変換モジュール200が規定温度以上の高温に晒された場合には、熱発電システムは機能しなくなる。
【0020】
上記の問題を解決するために、一対の外部端子40を短絡させることにより、システム全体の電気的導通を維持する技術が考案されている。特許文献1は、高温状態のときにだけ電気導通部を用いて電流導入端子を短絡する技術を開示している。熱電変換モジュールが高温状態になると、内部の接合材が溶融する。その結果、基板が沈み込むことによって熱電変換モジュールの厚さが減少する。この現象を利用して、高温状態に達したときにだけ、電流導入端子は、電気導通部に電気的に接触することによって短絡する。特許文献2は、高温で融解する可溶導体の融点以上の温度雰囲気において動作する温度短絡素子を開示している。可溶導体の融点以上の温度雰囲気において可溶導体は溶融して凝固することにより、隣接する2つの電極は短絡する。
【0021】
上述したとおり、従来の熱電変換モジュール200の構成では、一対の外部端子40は、モジュールの外側領域50の特に隅に位置している。本明細書において、外側領域50は、基板の全領域の中の、格子状に配置された複数の熱電変換素子対20のうちの最も外側に配置された熱電変換素子対20の群が存在する破線で示す領域を指す。
【0022】
図9は、一対の外部端子40を短絡させることが可能なスイッチSWを実装した熱電変換モジュール200の構成を模式的に示している。スイッチSWは、例えば特許文献2と同様に可溶導体であり得る。一対の外部端子40の間の熱電変換素子対20をスイッチSWに置き換えることにより、図9に示す構成が得られる。この構成では、一対の外部端子40の間にスイッチSWは配置される。このように単純に置き換えた場合、スイッチSWは、必然的に基板10Cの外側領域50に配置されることとなる。
【0023】
実際、熱電変換モジュール200の側面からも放熱が起こるので、外側領域50は基板10Cの中心付近よりも高温になりにくい。そのため、例えば冷却機能の故障によって、熱電変換モジュール200の中心付近は、複数の熱電変換素子対20の電気的な接続が切断する温度にまで達する。その場合でも、外側領域50はその温度にまで達しない可能性がある。その結果、従来の構成にスイッチSWを設けるだけでは、一対の外部端子40を短絡させるスイッチSWは正常に機能しない可能性が高い。また、従来の構成では、一対の外部端子40は離れている。そのため、単純にその端子の間にスイッチSWを設けるだけでは、端子間を短絡させるには不十分であると考えられる。
【0024】
さらに、従来の構成において、低温熱源側の基板10CにスイッチSWを設けても、それを機能させるだけの十分な熱量が伝わらないという問題がある。非特許文献1に示されるように、一対の外部端子40は、一般的に低温熱源側の基板10Cに設けられる。その理由の1つは、高温熱源側の基板10Hに外部端子を設けると、それがヒートシンクとして機能し、そこから放熱が起こり易くなるためである。
【0025】
熱電変換モジュールが高温に晒された場合において、一対の外部端子の間をより正確に短絡させる技術が望まれる。本願発明者らは、高温熱源側の基板の外側領域によって囲まれた内側領域に低融点導体を設けることを上記の知見に基づいて見出し、本開示に至った。
【0026】
<例示的な実施形態>
以下、添付の図面を参照しながら、本開示による熱電変換モジュールの実施形態を説明する。
【0027】
図1は、本実施形態による熱電変換モジュール100の構成を模式的に示している。図面が煩雑になることを避けるために、図1において低温熱源側の基板10Cの一部を省略している。図2は、基板10Hの法線方向(図面のz方向)から熱電変換モジュール100を見たときの、高温熱源側の基板10H上の複数の熱電変換素子対20の配置・配線の様子を模式的に示している。本明細書では、高温熱源側および低温熱源側の2枚の基板10H、10Cを備える熱電変換モジュール100を例に、本開示の実施形態を説明する。ただし、低温熱源側の基板10Cを有しない熱電変換モジュールも知られている。そのようなモジュールは、「ハーフスケルトンタイプ」と呼ばれることがある。ハーフスケルトンタイプの熱電変換モジュールも本開示の範疇である。以降、上述した従来の構成と重複する説明は省略する。
【0028】
熱電変換モジュール100は、高温熱源側の基板10H、低温熱源側の基板10C、複数の熱電変換素子対20、一対の外部端子40および低融点導体60を備える。高温熱源側の基板10Hおよび低温熱源側の基板10Cの材料は、少なくともそれらの表面が電気的絶縁性を有していさえすれば特に限定されない。ただし、熱伝導率が高く、耐熱性の高い材料が好ましい。例えば、材料として酸化アルミニウムを好適に用いることができる。
【0029】
複数の熱電変換素子対20、より具体的には複数のp型熱電変換素子21Pおよび複数のn型熱電変換素子21Nは、典型的には、高温熱源側の基板10Hに格子状に配置される。基板10C、10Hのx方向のサイズは、例えば1cm~6cmである。y方向のサイズは、例えば1cm~6cmである。p型熱電変換素子21Pおよびn型熱電変換素子21Nの各々のx方向のサイズは、例えば1.0mm~3.0mmである。y方向のサイズは、例えば1.0mm~3.0mmである。z方向の高さは、例えば1.0mm~3.0mm程度である。複数の熱電変換素子対20の配置・配線は、図示する例に限定されない点に留意されたい。
【0030】
p型熱電変換素子21Pおよびn型熱電変換素子21Nのそれぞれは、少なくとも熱電変換材料を含む。熱電変換材料の種類は特に限定されない。例えば、使用目的の温度に応じて熱電変換材料を選択することができる。例として、室温から200℃程度の温度域で熱電変換モジュール100を使用する場合にはBi-Te系材料が好ましい。200℃から500℃程度の温度域で熱電変換モジュール100を使用する場合にはPb-Te系材料、Co-Sb系材料、Zn-Sb系材料、またはMg-Sb系材料が好ましい。500℃から1000℃程度の温度域で熱電変換モジュール100を使用する場合にはSi-Ge系材料が好ましい。
【0031】
図3は、一対の外部端子40、それに電気的に接続されるp型熱電変換素子21Pおよびn型熱電変換素子21Nを拡大して示している。一対の外部端子40は、図2に示すように、高温熱源側の基板10Hに設けられる。一対の外部端子40は、複数の熱電変換素子対20において発生する電力を外部に取り出すための端子である。一対の外部端子40は、間隔wを隔てて基板10Hに近接して配置される。例えば、間隔wは、熱電変換素子対20におけるp型熱電変換素子21Pとn型熱電変換素子21Nの間隔に等しい。
【0032】
一対の外部端子40の一方は、p型熱電変換素子21Pとの接触面を有する第1接続部42を有する。第1接続部42は、互いに直列接続された複数の熱電変換素子対20の一端側にあるp型熱電変換素子21Pに電気的に接続する。一対の外部端子40の他方は、n型熱電変換素子21Nとの接触面を有する第2接続部43を有する。第2接続部43は、複数の熱電変換素子対20の他端側にあるn型熱電変換素子21Nに電気的に接続する。図2に示すように、第1接続部42および第2接続部43は、基板10Hの外側領域50によって囲まれた内側領域51に位置する。さらに、第1接続部42および第2接続部43は、基板10Hの中心付近において互いに近接している。基板10Hの中心は、略矩形である基板の対角線の交点を指す。ただし、第1接続部42および第2接続部43は、基板10Hの内側領域51にあればよく、必ずしも中央付近に位置している必要はない。
【0033】
配線30H、配線30Cおよび一対の外部端子40の材料は、特に限定されない。ただし、電気伝導率が高く、耐熱性の高い材料が好ましい。例えば、材料として銅または銀配線を用いることができる。配線30H、配線30Cおよび一対の外部端子40の線幅は、熱電変換モジュール100に流れ得る電流量に基づいて適宜決定される。
【0034】
低融点導体60は、基板10Hの内側領域51に設けられる。低融点導体60の少なくとも一部は、基板10Hの法線方向(図2のz方向)から見たときに一対の外部端子40の間に位置し得る。例えば、低融点導体60は、図2に示すように一対の外部端子40の間に位置する。低融点導体60は、基板10Hの中心付近に設けることが好ましい。これにより、熱電変換モジュール100が高温に晒された場合、熱が低融点導体60により良く伝わる。その結果、一対の外部端子40の間をより正確に短絡させることが可能となる。
【0035】
図4A、4Bは、基板10Hに設けられた低融点導体60を拡大して示している。図5は、一対の外部端子40の間に設けられた支持体61によって支持された低融点導体60を示している。低融点導体60の形状は、例えばドーム型または角柱である。低融点導体60の融点よりも低い温度雰囲気において、低融点導体60は、一対の外部端子40の少なくとも一方とは電気的に絶縁される。例えば、図示するように、低融点導体60と一対の外部端子40の間に空隙を設けることにより、低融点導体60を電気的に絶縁することができる。または、低融点導体60と一対の外部端子40の一方とは接触した状態で、低融点導体60と他方の間に空隙を設けてもよい。いずれの場合も、一対の外部端子40は短絡しない。このように、低融点導体60は、モジュール動作、すなわち、電流の入力または出力には影響を与えない。熱電変換モジュール100は、低融点導体60の融点以下の温度雰囲気において、従来の熱電変換モジュール200と同様に動作する。
【0036】
低融点導体60を電気的に絶縁する方法として、図5に示すように、一対の外部端子40の間に支持体61を設けてもよい。支持体61に例えば板状の低融点導体60を設けることにより、低融点導体60を電気的に絶縁しても構わない。この場合、低融点導体60の少なくとも一部は、基板10Hの法線方向(図2のz方向)から見たときに一対の外部端子40の間に位置し、残りは一対の外部端子40に重なる。または、低融点導体60と一対の外部端子40の間に空隙ではなく絶縁膜を挟むことによって、低融点導体60を電気的に絶縁しても構わない。
【0037】
低融点導体60は、p型熱電変換素子21Pまたはn型熱電変換素子21Nの耐熱温度と略等しい融点を有する。より詳細には、低融点導体60の融点は、少なくとも以下の数式(I)または数式(II)を充足する。
Tp×0.90≦Tm≦Tp×1.1 (I)
Tn×0.90≦Tm≦Tn×1.1 (II)
ここで、Tmは低融点導体60の融点である。Tpはp型熱電変換素子21Pの耐熱温度である。Tnはn型熱電変換素子21Nの耐熱温度である。耐熱温度は、複数の熱電変換素子対20のうちの少なくとも1つの熱膨張に起因して、複数の熱電変換素子対20の直列接続が切断する温度である。
【0038】
低融点導体60の融点は、熱電変換モジュール100の通常使用時に想定される最高到達温度よりも高い温度である必要がある。そのため、低融点導体60の融点は、モジュール破損が生じ得る耐熱温度と同程度であることが好ましい。低融点導体60は、例えば低融点金属である。例えば、熱電変換素子の材料としてBi-Te系材料を用いる場合を考える。その場合、通常は約100℃以下の温度域で熱電変換モジュール100は使用されることが多く、200℃以上になると破損が生じ易い。従って、低融点導体60として、例えばIn-Sn合金またはIn-Bi合金が適している。In-Sn合金の融点は、InとSnの混合比の調整によって117℃から232℃までの範囲で調整可能である。In-Bi合金の融点は、InとBiの混合比の調整によって72℃から271℃までの範囲で調整可能である。
【0039】
例えば、使用する熱電変換素子を変えることにより、熱電変換モジュール100の耐熱性を高め、より高温での使用も可能となる。その場合、低融点導体60として、例えばSn-Sb合金またはSn-Cu合金が適している。Sn-Sb合金の融点は、SnとSbの混合比の調整によって、232℃から630℃までの範囲で調整可能である。Sn-Cu合金の融点は、SnとCuの混合比の調整によって、223℃から1083℃までの範囲で調整可能である。
【0040】
ある一態様において、低融点導体60はIn-Sn合金である。その融点は、200℃以上232℃以下である。p型熱電変換素子21Pおよびn型熱電変換素子21Nの各々は、Bi-Te系材料から形成される。
【0041】
図6は、溶融した低融点導体60により一対の外部端子40が短絡した状態を示している。
【0042】
低融点導体60の融点以上の温度雰囲気では、溶融した低融点導体60によって一対の外部端子40は短絡する。例えば、低温熱源側の冷却機能が故障すると、熱電変換モジュール100内に通常使用時よりもより多くの熱がこもり得る。そのため、耐熱限界の温度近くまでモジュール温度が上昇し得る。そうすると、低融点導体60の融点は、耐熱温度と同程度であるので、低融点導体60は溶融して拡散し得る。溶融した低融点導体60は、一対の外部端子40の両方に電気的に接触し、その結果、一対の外部端子40は短絡することとなる。低融点導体60は、液体または固体状態のいずれにおいても導電性を有する。そのため、一旦溶融した後の低融点導体60の状態は、モジュール内の温度に依存して固体または液体であり得る。熱発電システムでは、破損した熱電変換モジュール100はもはや機能しなくなるが、互いに直列接続された複数の熱電変換モジュール100の電気的導通は確保される。このように、残りの熱電変換モジュール100が破損していない限りにおいて、熱発電システムを継続して利用することが可能となる。
【0043】
本実施形態によれば、基板10Hの内側領域51に低融点導体60を設け、かつ、一対の外部端子40を近接して配置することにより、熱電変換モジュール100の側面からの放熱の影響を低減させることが可能となる。その結果、熱電変換モジュール100は、モジュール温度が耐熱限界近くまで上昇した場合、従来の熱電変換モジュール200と比べてより正確に動作する。
【0044】
図7は、溶融した低融点導体60をガイドする、基板10Hに設けた溝70を示している。
【0045】
基板10Hは、溶融した低融点導体60をガイドする溝70を有していてもよい。その場合、低融点導体60の少なくとも一部は、溝70に設けられ得る。溝70を設けることによって、低融点導体60が溶融したときに拡散する範囲を、一対の外部端子40の間を短絡させるのに必要十分な範囲に限定することができる。これにより、熱電変換モジュール100をさらに正確に動作させることができる。
【0046】
本実施形態では、単体の低融点導体60を基板10Hに設ける構成を説明した。ただし、本開示はこれに限定されない。一対の外部端子40の間に1個またはそれ以上の他の低融点導体(不図示)をさらに設けるようにしても構わない。これにより、1個の低融点導体が上手く機能しない場合でも、他の低融点導体が機能することで、一対の外部端子40の間をより正確に短絡させることができる。
【0047】
熱電変換モジュール100は、低融点導体60以外は、従来の熱電変換モジュール200と同じ要素で構成することができる。そのために、熱電変換モジュール100の製造には公知の手法を広く用いることができる。低融点導体60は、例えばはんだ付けまたはプリント配線の手法を用いることによって実装される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本開示による熱電変換モジュールは、熱エネルギーと電力との相互変換を行う熱電変換装置に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0049】
10H、10C :基板
20 :熱電変換素子対
21P :p型熱電変換素子
21N :n型熱電変換素子
30H、30C :配線
40 :一対の外部端子
42 :第1接続部
43 :第2接続部
50 :外側領域
51 :内側領域
60 :低融点導体
61 :支持体
70 :溝
100 :熱電変換モジュール
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9