(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008366
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】焼却炉洗浄方法
(51)【国際特許分類】
F23J 1/00 20060101AFI20230112BHJP
F23J 3/02 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
F23J1/00 Z
F23J3/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111884
(22)【出願日】2021-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】314014737
【氏名又は名称】アクアテクノESCO事業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100138955
【弁理士】
【氏名又は名称】末次 渉
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正志
(72)【発明者】
【氏名】滝浪 暁
【テーマコード(参考)】
3K161
3K261
【Fターム(参考)】
3K161AA23
3K161CA01
3K161DA02
3K161EA01
3K161LA02
3K161LA14
3K161LA41
3K261HA10
(57)【要約】
【課題】既設の焼却炉においても適用でき、効果的にクリンカを除去することが可能な焼却炉洗浄方法を提供する。
【解決手段】焼却炉洗浄方法は、焼却炉の開口箇所を塞ぐ工程と、焼却炉に攪拌装置30を配置する工程と、焼却炉に微細気泡発生装置40を配置する工程と、焼却炉にクリンカ溶解剤含有液を充填する工程と、微細気泡発生装置30及び攪拌装置40を駆動させて、焼却炉の内壁のクリンカを除去する工程と、を備える。焼却炉洗浄方法は、既設の焼却炉においても適用でき、効果的にクリンカを除去することが可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却炉の開口箇所を塞ぐ工程と、
前記焼却炉に攪拌装置を配置する工程と、
前記焼却炉に微細気泡発生装置を配置する工程と、
前記焼却炉にクリンカ溶解剤含有液を充填する工程と、
前記微細気泡発生装置及び前記攪拌装置を駆動させて、前記焼却炉の内壁のクリンカを除去する工程と、を備える、
ことを特徴とする焼却炉洗浄方法。
【請求項2】
前記攪拌装置を前記焼却炉の底部に配置する、
ことを特徴とする請求項1に記載の焼却炉洗浄方法。
【請求項3】
前記微細気泡発生装置を前記焼却炉の底部に配置する、
ことを特徴とする請求項1に記載の焼却炉洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却炉洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物処理施設では、焼却炉を利用し、集められた一般廃棄物や産業廃棄物の焼却処理が行われている。廃棄物の焼却処理においては、焼却炉内にクリンカが生成し、焼却炉の内壁等に張り付いていく。クリンカは、局部的な高温で灰が溶融し、これに金属やグラスウール、プラスチック等の不燃物が巻き込まれて大きくなり、焼却炉を構成する耐火材に張り付いていく。
【0003】
このため、定期的に焼却炉内に張り付いたクリンカの除去が行われている。一般的に、クリンカの除去は、焼却炉内に足場を組み、作業者がブラスト処理や棒等の器具を利用し、手作業によって行われている。
【0004】
そのほか、クリンカに穴を穿設し、この穴に膨張破砕剤を配置してクリンカを破砕する方法(例えば、特許文献1)や、クリンカを除去する噴射媒体を噴射するクリンカ除去装置を備える焼却炉(例えば、特許文献2)、焼却炉内に流水を発生させる装置を配置して、クリンカの生成を予防するとともに、流水が堆積したクリンカに接触し、ヒートショックによりクリンカを破壊させ剥がれ落とす方法(特許文献3)など、種々のクリンカを除去する手段が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61-11596号公報
【特許文献2】特開2010-243122号公報
【特許文献3】特開2008-82660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法では、クリンカごとに穴の穿設、穴への膨張破砕剤の配置が必要となり、効率的とは言い難い。また、特許文献2、3では、クリンカ除去装置を組み込んだ焼却炉が必要となるため、既設の焼却炉に使用することができない。
【0007】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、既設の焼却炉においても適用でき、効果的にクリンカを除去することが可能な焼却炉洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る焼却炉洗浄方法は、
焼却炉の開口箇所を塞ぐ工程と、
前記焼却炉に攪拌装置を配置する工程と、
前記焼却炉に微細気泡発生装置を配置する工程と、
前記焼却炉にクリンカ溶解剤含有液を充填する工程と、
前記微細気泡発生装置及び前記攪拌装置を駆動させて、前記焼却炉の内壁のクリンカを除去する工程と、を備える、
ことを特徴とする。
【0009】
また、前記攪拌装置を前記焼却炉の底部に配置することが好ましい。
【0010】
また、前記微細気泡発生装置を前記焼却炉の底部に配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、既設の焼却炉においても適用でき、効果的にクリンカを除去することが可能な焼却炉洗浄方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施の形態に係る焼却炉の洗浄方法は、焼却炉の開口箇所を塞ぐ工程(閉塞工程)と、焼却炉に微細気泡発生装置を配置する工程(微細気泡発生装置配置工程)と、焼却炉に攪拌装置を配置する工程(攪拌装置配置工程)と、焼却炉にクリンカ溶解剤含有液を充填する工程(クリンカ溶解剤含有液充填工程)と、微細気泡発生装置及び攪拌装置を駆動させて、焼却炉の内壁のクリンカを除去する工程(クリンカ除去工程)と、を備える。
【0014】
以下、焼却炉として、ゴミ焼却施設で広く利用されているストーカ式焼却炉を例にとり、説明する。ここでは、
図1に示すように、ストーカ式焼却炉10は、廃棄物が投入されるホッパー11、廃棄物を燃焼室へ供給する供給フィーダ12、燃焼室13、ストーカ14、燃焼ガスを送る風箱15、16、17、灰シュート18、ボイラ19、落下灰コンベア20、灰押出装置21、灰ピット22、風箱15、16、17、灰シュート18と落下灰コンベア20とを接続する接続管23を備えている。
【0015】
閉塞工程では、後述のクリンカ溶解剤含有液を充填した際に、焼却炉の開口箇所からクリンカ溶解剤含有液が漏れないように塞ぐ工程である。閉塞方法は、それぞれの開口箇所に応じた閉塞手段で行えばよい。例えば、遮蔽板やパッキン等の閉塞部材を開口箇所に配置して閉塞する手法や、目地材を充填、硬化させて閉塞する手段など、焼却炉の構造、開口箇所に応じて適宜選択して適用すればよい。ストーカ式焼却炉10の開口箇所としては、廃棄物が供給フィーダ12によって燃焼室13内に送り込まれる廃棄物供給箇所、風箱15、16、17の下部、灰シュート18の下部などがあり、これらの開口箇所を遮蔽板C1、C2で閉塞している例を示している。なお、ここでは、風箱15、16、17と落下灰コンベア20とを接続する接続管23を取り外し、風箱15、16、17と落下灰コンベア20との間に遮蔽板C2を配置することで閉塞している。また、その他にも、燃焼室13に二次燃焼ガスを供給する供給口などの開口箇所があれば、それらの開口箇所についても適宜閉塞を行うようにする。
【0016】
攪拌装置配置工程では、焼却炉の内部に攪拌装置30を配置する。攪拌装置30として、焼却炉内にてクリンカ溶解剤含有液を十分に攪拌可能であれば、どのような方式のものを用いてもよく、モーター等の駆動源によって、プロペラ翼やディスクタービン翼、傾斜パドル翼などの攪拌翼を回転させる一般的な攪拌装置30を用いることができる。
【0017】
ここでは、攪拌装置30は、焼却炉の底面に一つ配置されているが、攪拌装置30の配置位置、配置数は、焼却炉内に充填されるクリンカ溶解剤含有液を十分に攪拌させることができるよう、また、焼却炉の内部構造、使用する攪拌装置の使用などに応じて設定すればよい。
【0018】
微細気泡発生装置配置工程では、焼却炉の内部に微細気泡発生装置40を配置する。微細気泡発生装置40は、微細気泡を発生させることができれば、超音波方式、旋回流方式、加圧溶解方式、微細孔方式など、どのような方式のものでもよい。また、発生させる微細気泡は、100μm以下のマイクロバブルでも、1μm以下のナノバブルでもよい。微細気泡発生装置40は、焼却炉内のどの箇所に配置してもよいが、配置位置として、例えば、焼却炉の底部や側壁の下部が挙げられる。
【0019】
クリンカ溶解剤含有液充填工程では、焼却炉内にクリンカ溶解剤含有液を充填する。クリンカ溶解剤含有液は、生成しているクリンカが埋まる高さまで充填すればよい。ここでは、クリンカ溶解剤含有液をホッパー11から充填している。クリンカ溶解剤含有液は、焼却炉内壁に生成したクリンカと化学的に反応し、クリンカを分解可能なものであればよい。焼却炉では、焼却する廃棄物によって種々の成分を含有するクリンカが生成し、例えば、SiO2がベースとなったシリカ成分クリンカや、炭酸水素カルシウムや塩化カルシウムがベースとなったカルシウム成分クリンカ、炭酸水素マグネシウムや塩化マグネシウムがベースとなったマグネシウム成分クリンカなどがある。したがって、クリンカ溶解剤含有液として、これらの成分を軟化させ、混在する他のクリンカを焼却炉内壁から剥離、除去可能なものを用いればよい。例えば、クリンカ溶解剤含有液として、SiO2、Na2O、B2O3、Ag2O、Al2O3、MgO、K2CO3などが水に溶解している水溶液が挙げられるほか、循環冷却水に用いられる市販の処理液又は処理剤を水に溶解した液を使用してもよい。
【0020】
クリンカ除去工程では、焼却炉内に配置した攪拌装置30及び微細気泡発生装置40を駆動させる。攪拌装置30によって、微細気泡発生装置40から発生する微細気泡及びクリンカ溶解剤が焼却炉内を循環し、効率的にクリンカが除去されていく。
【0021】
クリンカ溶解剤含有液により、クリンカが除去される。微細気泡を発生させていることにより、微細気泡が細かな隙間に入り込んで汚れに付着して取り除いたり、水中に生じた汚れを浮上分離させたりする界面活性作用や、微細気泡が破壊してその衝撃で周辺の汚れに対して作用させる衝撃圧力作用を生じさせることができる。クリンカ溶解剤含有液、攪拌、及び、微細気泡による効果が相まって、効果的なクリンカの分解、除去が実現できる。
【0022】
クリンカを除去した後、微細気泡発生装置40及び攪拌装置30の稼働を停止させる。そして、焼却炉の開口箇所の閉塞に用いた遮蔽板C2を撤去することで、除去したクリンカを含んだクリンカ溶解剤含有液を灰シュート18や風箱15、16、17から落下させ、落下灰コンベア20、灰押出装置21、灰ピット22を通じて排出する。そして、遮蔽板C1、微細気泡発生装置40及び攪拌装置30を撤去する。
【0023】
本実施の焼却炉洗浄方法では、化学的にクリンカを分解でき、焼却炉を洗浄することができる。焼却炉内に足場を組んで作業者が手作業でクリンカを除去するものではないため、作業者の負担、危険な作業を減らすことができるとともに、人手が不要になるため、低コストで焼却炉の洗浄が可能である。また、既設の焼却炉に対しても適用することが可能である。
【符号の説明】
【0024】
10 ストーカ式焼却炉
30 攪拌装置
40 微細気泡発生装置
C1 遮蔽板
C2 遮蔽板