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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083669
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/50 20060101AFI20230609BHJP
   H02K 3/52 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
H02K3/50 A
H02K3/52 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197491
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石上 孝
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 祐
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC16
5H604PB03
5H604QB03
5H604QB14
(57)【要約】
【課題】人手による煩雑な結線作業や専用の結線板を必要とすることなく、電気回路の並列数の変更に対応することができるモータを提供する。
【解決手段】複数の分割コアと、複数の分割コアに巻かれた複数のコイルと、複数の配線用溝と複数の端子接続用孔とが形成された環状部材と、配線用溝に配置される複数の接続用導体及び複数の入力用導体と、を備え、複数のコイル、複数の接続用導体及び複数の入力用導体を電気的に接続してなる電気回路を有するモータであって、複数の接続用導体及び複数の入力用導体は、それぞれ端子を有すると共に、端子が端子接続用孔に共締めによって固定されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円周方向に配列された複数の分割コアと、
前記複数の分割コアにそれぞれ巻かれた複数のコイルと、
複数の配線用溝と複数の端子接続用孔とが形成された環状部材と、
前記配線用溝に配置される複数の接続用導体及び複数の入力用導体と、
を備え、
前記複数のコイル、前記複数の接続用導体及び前記複数の入力用導体を電気的に接続してなる電気回路を有するモータであって、
前記複数の接続用導体及び前記複数の入力用導体は、それぞれ端子を有すると共に、前記端子が前記端子接続用孔に共締めによって固定されている
モータ。
【請求項2】
前記端子は、ボルトによって共締めされている
請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記端子は、ボルトとナットによって共締めされている
請求項1に記載のモータ。
【請求項4】
前記端子は、リベットによって共締めされている
請求項1に記載のモータ。
【請求項5】
前記端子は丸型端子である
請求項1に記載のモータ。
【請求項6】
前記接続用導体はコイル間接続用導体を含み、
前記コイル間接続用導体は、絶縁ケーブルと、前記絶縁ケーブルの両端に接続された端子とによって構成されている
請求項1に記載のモータ。
【請求項7】
前記接続用導体はコイル間接続用導体を含み、
前記コイル間接続用導体は、金属の一体成形品によって構成されている
請求項1に記載のモータ。
【請求項8】
前記コイルは、平角エナメル線によって構成されている
請求項1に記載のモータ。
【請求項9】
前記コイルは、丸断面のエナメル線によって構成されている
請求項1に記載のモータ。
【請求項10】
前記接続用導体は、前記コイルの端末に熱かしめ又は溶接によって接合されたコイル端末接続用導体を含む
請求項1に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化を抑制するために二酸化炭素の排出量を削減する技術の開発が求められている。このため、モータの高効率化及び高出力化に大きな期待が寄せられている。産業分野で使われる電力の約70%、家庭で使われる電力の約40%は、モータによって消費されている。このため、モータ1台あたりの効率を数%向上させるだけで、数十万kW級の発電所に相当する省エネルギー効果が期待でき、年間数百万トンもの二酸化炭素の削減に寄与できると言われている。一方、近年では、上記同様に二酸化炭素の排出量を削減する目的から、電気自動車の普及が目覚ましく、内燃機関に代替する出力を実現するために、モータの小型化及び高出力化の要求が一段と高まっている。
【0003】
従来のモータのなかには、ステータのコアを円周方向に分割した構成を採用したものが知られている(たとえば、特許文献1を参照)。この種のモータでは、分割コアにコイルを巻線することで1つの磁極が形成される。その場合、モータの磁極数が同じでも、コイルを含む電気回路(モータ回路)における並列回路の数を変更すると、モータの出力が変わる。つまり、並列回路数を変更することで、出力の異なるモータが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008―259259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般にモータの電気回路は、直列接続されるコイルの数をMとし、直列接続のM個のコイルを並列接続する数(以下、「並列数」という。)をNとすると、M直列N並列の構成となる。このようなモータの電気回路においては、並列数(N及びMの値)を変更したいという要望がある。具体例を挙げると、モータを駆動源とするエレベーターの巻上機においては、巻上機の能力に応じてモータの出力性能を切り替えるために、電気回路の並列数を変更したいという要望がある。
【0006】
電気回路の並列数は、各コイルの端末の被覆を剥離する作業と、コイルの端末に接続端子を用いて被膜付きのケーブルを圧着する作業とを作業者の手作業で実施した後、そのケーブルの両端をどこに接続するかによって変えることができる。ただし、この方法では、電気回路の並列数に応じて作業者がコイルの端末とケーブルとの接続位置を変更したりケーブルの配置を変更したりするなどの煩雑な結線作業が必要になる。また、別の方法として、樹脂製の部材に接続用の導体などを組み付けた結線板を使用する方法が考えられるが、この方法では電気回路の並列数に対応した専用の結線板を用意する必要がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、人手による煩雑な結線作業や専用の結線板を必要とすることなく、電気回路の並列数の変更に対応することができるモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、たとえば、特許請求の範囲に記載された構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一つを挙げるならば、円周方向に配列された複数の分割コアと、複数の分割コアにそれぞれ巻かれた複数のコイルと、複数の配線用溝と複数の端子接続用孔とが形成された環状部材と、配線用溝に配置される複数の接続用導体及び複数の入力用導体と、を備え、複数のコイル、複数の接続用導体及び複数の入力用導体を電気的に接続してなる電気回路を有するモータである。複数の接続用導体及び複数の入力用導体は、それぞれ端子を有すると共に、端子が端子接続用孔に共締めによって固定されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、人手による煩雑な結線作業や専用の結線板を必要とすることなく、電気回路の並列数の変更に対応することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係るモータの構造を示す概略断面図である。
図2】分割コアの構造を示す斜視図である。
図3】分割コアにコイルを巻いた状態を示す斜視図である。
図4】コイルの巻線形態の一例を示す斜視図である。
図5】第1実施形態に係るステータの構成を示す斜視図である。
図6】第1実施形態に係るモータにおいて、ステータに結線板を組み付けた状態を示す斜視図である。
図7】第1実施形態における環状部材の構成を示す斜視図である。
図8図7に示す環状部材の平面図である。
図9】第1実施形態におけるコイル端末接続用導体の構成を示す斜視図である。
図10】第1実施形態における中性点接続用導体の構成を示す斜視図である。
図11】第1実施形態におけるコイル間接続用導体の構成を示す斜視図である。
図12】第1実施形態における入力用導体の構成を示す斜視図である。
図13】第1実施形態において、環状部材にコイル端末接続用導体のみを取り付けた状態を示す平面図である。
図14】第1実施形態において、環状部材に中性点接続用導体のみを取り付けた状態を示す平面図である。
図15】第1実施形態において、環状部材にコイル間接続用導体のみを取り付けた状態を示す平面図である。
図16】第1実施形態において、環状部材に入力用導体のみを取り付けた状態を示す平面図である。
図17】6直列2並列の場合の結線板の構成を示す平面図である。
図18】コイル端末とコイル端末接続用導体とを熱かしめによって接合した状態を示す斜視図である。
図19】6直列2並列の場合のモータの電気回路を示す図である。
図20】モータの電気回路を3直列4並列にする場合に使用される中性点接続用導体の構成を示す斜視図である。
図21】第1実施形態において、環状部材に中性点接続用導体のみを取り付けた状態を示す平面図である。
図22】第1実施形態において、環状部材に入力用導体のみを取り付けた状態を示す平面図である。
図23】3直列4並列の場合の結線板の構成を示す平面図である。
図24】3直列4並列の場合のモータの電気回路を示す図である。
図25】第2実施形態に係るモータの要部を拡大した斜視図である。
図26】第3実施形態における環状部材の構成を示す平面図である。
図27】第3実施形態において、環状部材にコイル端末接続用導体のみを取り付けた状態を示す平面図である。
図28】第3実施形態におけるコイル間接続用導体の構成を示す斜視図である。
図29】第3実施形態において、環状部材にコイル間接続用導体のみを取り付けた状態を示す平面図である。
図30】第3実施形態において、環状部材に中性点接続用導体のみを取り付けた状態を示す平面図である。
図31】第3実施形態において、環状部材に入力用導体のみを取り付けた状態を示す平面図である。
図32】第3実施形態における6直列2並列の場合の結線板の構成を示す平面図である。
図33】第4実施形態に係るモータの要部を拡大した断面図である。
図34】第5実施形態に係るモータの要部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本明細書および図面において、実質的に同一の機能または構成を有する要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るモータの構造を示す概略断面図である。
図1に示すように、モータ100は、ステータ1と、ロータ3と、ステータハウジング10と、結線板26と、を備えている。ステータ1は、分割コア4(図2参照)と、コイル6と、を有し、ロータ3は、永久磁石2を有している。モータ100は、モータ100の回転中心軸Jから見て、ロータ3の一部がステータ1よりも径方向外側に配置された、いわゆる外転型モータである。また、モータ100は、分割コア4ごとにコイル6を巻いた、いわゆる集中巻モータである。
【0013】
ロータ3は、円筒状に形成されている。ロータ3は、ステータ1の外周側にベアリング(図示せず)によって回転可能に支持されている。ロータ3の内周面には複数の永久磁石2が貼り付けられている。本実施形態においては、一例として、モータ100の磁極数が36である場合について説明する。
【0014】
図2は、分割コアの構造を示す斜視図である。
図2に示すように、分割コア4は、ティース部4aと連結部4bとを一体に有する。分割コア4は、たとえば、厚さ0.1mm~0.5mm程度の電磁鋼板を打抜き、かしめ、溶接、樹脂による接着などにより所定枚数だけ積層して構成される。電磁鋼板の表面は通電しないように絶縁コートされる。ティース部4aは、コイル6が巻かれる部分である。連結部4bは、分割コア4同士を連結するための部分である。
【0015】
連結部4bには、突条部4cと凹溝4dと貫通孔4eとが形成されている。突条部4cと凹溝4dは、分割コア4の厚み方向に沿って形成されている。貫通孔4eは、分割コア4を厚み方向に貫通する状態で形成されている。ステータ1のコアは、複数の分割コア4を円周方向に配列して構成される。その際、円周方向で隣り合う2つの分割コア4は、一方の分割コア4の突条部4cを他方の分割コア4の凹溝4dに嵌合させることにより、互いに連結される。
【0016】
また、分割コア4には、図3に示すように、絶縁材料からなるボビン5が組み付けられている。分割コア4のティース部4a(図2)にはボビン5を介してコイル6が巻かれ、これによって1つの磁極7が構成されている。ボビン5を構成する絶縁材料には、たとえば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、LCP(液晶ポリマー)などの樹脂を用いることができる。
【0017】
コイル6は、平角エナメル線、もしくは丸断面のエナメル線によって構成される。コイル6を平角エナメル線によって構成した場合は、円周方向で隣り合う分割コア4間に形成されるスロット内の導体の密度(占積率)を高めることができる。また、コイル6を丸断面のエナメル線によって構成した場合は、コイル6の端末9を曲げ成形する際に、丸断面のエナメル線がいずれの方向にも容易に曲がるため、コイル6の端末9を曲げ成形によって容易に位置決めすることができる。
【0018】
コイル6の端末9は、エナメル線の絶縁被膜を除去することで形成される。コイル6を平角エナメル線によって構成した場合は、図示しないグラインダーや金型を用いて、エナメル線の絶縁皮膜を除去することができる。また、コイル6を丸断面のエナメル線によって構成した場合は、図示しない回転式のカッターを用いて、エナメル線の絶縁皮膜を除去することができる。そして、いずれの場合も、コイル6の端末9とこれに対応する接続用導体(後述)とを所定の接合手段によって接続することができる。
【0019】
図4は、コイルの巻線形態の一例を示す斜視図である。
図4に示すように、コイル6は、互いに隣り合う3つの分割コア4に連続して巻かれている。言い換えると、3つの分割コア4には、コイル6を構成する1本のエナメル線が所定の巻線ターン数ずつ巻かれている。つまり、3つの分割コア4と1対1で対応する3つのコイル6は、1本のエナメル線によって構成されている。そして、コイル6の一方の端末9は、図4の左側の分割コア4上に上向きに突出して配置され、コイル6の他方の端末9は、図4の右側の分割コア4上に上向きに突出して配置されている。このようにコイル6を巻線することにより、モータ100の電気回路においては、3つのコイル6が直列に接続された状態になる。
【0020】
図5は、第1実施形態に係るステータの構成を示す斜視図である。
図5においては、複数(本形態例では36個)の磁極7を円環状に組み付けることにより、ステータ1が構成されている。1つの磁極7は、1つの分割コア4と1つのコイル6との組み合わせによって構成される。このため、ステータ1の円周方向には36個の分割コア4が配列されている。36個の分割コア4は、上述した突条部4cと凹溝4dの嵌合により、円環状に組み付けられている。また、各々の分割コア4は、上下一対のリング部材8a,8bに挟まれた状態で、複数のボルト11の締め付けにより固定されている。ボルト11の雄ネジ部分は、分割コア4に設けられた貫通孔4e(図2)に挿入されている。また、ボルト11の雄ネジ部分は、リング部材8bに設けた雌ネジ(図示せず)に噛み合っている。
【0021】
図6は、第1実施形態に係るモータにおいて、ステータに結線板を組み付けた状態を示す斜視図である。
結線板26は、絶縁材料からなる環状部材12(図7)と、この環状部材12に取り付けられる複数の接続用導体及び複数の入力用導体とによって構成される。接続用導体及び入力用導体については後段で詳しく説明する。
環状部材12は、たとえば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、LCP(液晶ポリマー)などの樹脂によって構成される。ただし、環状部材12は、環状部材12全体を絶縁材料で構成する以外にも、たとえば、環状部材12の外形を導体で形成し、その導体の表面を絶縁コーティングすることにより、接続用導体や入力用導体との絶縁性を確保してもよい。以下、結線板26の構成要素について詳しく説明する。
【0022】
図7は、第1実施形態における環状部材の構成を示す斜視図であり、図8は、図7に示す環状部材の平面図である。
図7に示すように、環状部材12の上面側には、複数の第1配線用溝14と、複数の端子接続用孔16と、第2配線用溝18と、第3配線用溝20と、第4配線用溝22とが形成されている。一方、環状部材12の下面側には、複数の凹部40が形成されている。凹部40は、ボルト11(図5)と環状部材12との干渉を避けるために形成されている。
【0023】
第1配線用溝14は、平面視L字形に形成されている。複数の第1配線用溝14は、環状部材12の最外周部に形成されている。また、複数の第1配線用溝14は、環状部材12の円周方向で近接して隣り合う2つの第1配線用溝14が対をなすように形成されている。
【0024】
端子接続用孔16は、平面視円形に形成されている。端子接続用孔16は、環状部材12の最外周部に形成されている。また、端子接続用孔16は、第1配線用溝14の底面と同一平面をなす凹み部41に形成されている。凹み部41は、平面視三角形(山形)に形成されている。本実施形態において、端子接続用孔16はネジ孔である。
【0025】
第2配線用溝18、第3配線用溝20及び第4配線用溝22は、同心円状に形成されている。第2配線用溝18は、環状部材12の径方向で凹み部41に隣接した位置に形成されている。第3配線用溝20は、第2配線用溝18と第4配線用溝22との間に形成されている。第4配線用溝22は、環状部材12の最内周部に形成されている。また、第3配線用溝20と第4配線用溝22との間には仕切り部42が設けられている。仕切り部42には複数の導体引き出し部42a(図7)が形成されている。導体引き出し部42aは、第4配線用溝22に配置される入力用導体21(図12)を環状部材12の径方向外側に引き出すために凹状に形成されている。
【0026】
続いて、接続用導体について図9図11を用いて説明する。
接続用導体には、コイル端末接続用導体13a,13b(図9)と、中性点接続用導体17(図10)と、コイル間接続用導体19(図11)とがある。コイル端末接続用導体13a,13bは、コイル6の端末9を接続するための導体である。中性点接続用導体17は、コイル6を中性点に接続するための導体である。コイル間接続用導体19は、コイル6間を接続するための導体である。以下、各々の接続用導体について詳しく説明する。
【0027】
図9に示すように、コイル端末接続用導体13aはL字形に形成され、コイル端末接続用導体13bもL字形に形成されている。ただし、コイル端末接続用導体13aの長さは、コイル端末接続用導体13bの長さよりも長くなっている。コイル端末接続用導体13a,13bは、金属材料によって構成されている。コイル端末接続用導体13a,13bは、銅などの導体板をプレス加工(打ち抜き加工及び曲げ加工)により成形することで得られる金属の一体成形品である。コイル端末接続用導体13aの一端には丸型端子15aが形成され、コイル端末接続用導体13aの他端には熱かしめ用端子23aが形成されている。同様に、コイル端末接続用導体13bの一端には丸型端子15bが形成され、コイル端末接続用導体13bの他端には熱かしめ用端子23bが形成されている。丸型端子とは、円形の孔を有する端子である。
【0028】
中性点接続用導体17は、図10に示すように、円弧状(C字形)に形成されている。中性点接続用導体17は、金属の一体成形品によって構成されている。中性点接続用導体17には6つの丸型端子28a,28b,28c,28d,28e,28fが形成されている。中性点接続用導体17は、銅などの導体板をプレス加工(打ち抜き加工及び曲げ加工)により成形することで得られる。中性点接続用導体17の表面は、丸型端子28a~28fの部分を除いて、樹脂等の絶縁被膜により覆われている。中性点接続用導体17は、モータの電気回路を6直列2並列にする場合に使用される。
【0029】
コイル間接続用導体19は、図11に示すように、被膜付きの多芯ケーブルからなる絶縁ケーブル24と、この絶縁ケーブル24の両端に接続された丸型端子30a,30bとによって構成されている。丸型端子30a,30bは、たとえば機械かしめや溶接等によって絶縁ケーブル24の端部に電気的かつ機械的に接続されている。
【0030】
次に、入力用導体について図12を用いて説明する。
図12に示すように、入力用導体21は、被膜付きの多芯ケーブル37と、この多芯ケーブル37の端部に接続された丸型端子31とによって構成されている。丸型端子31は、たとえば機械かしめや溶接等によって多芯ケーブル37の端部に電気的かつ機械的に接続されている。
【0031】
図13は、第1実施形態において、環状部材12にコイル端末接続用導体13a,13bのみを取り付けた状態を示す平面図である。
図13に示すように、環状部材12には合計24個のコイル端末接続用導体13a,13bが取り付けられている。コイル端末接続用導体13a,13bは、それぞれに対応する第1配線用溝14に配置されている。コイル端末接続用導体13aの丸型端子15aは端子接続用孔16と同心円状に配置され、コイル端末接続用導体13aの熱かしめ用端子23aは環状部材12の外周縁から径方向外側に突出する状態で配置されている。同様に、コイル端末接続用導体13bの丸型端子15bは端子接続用孔16と同心円状に配置され、コイル端末接続用導体13bの熱かしめ用端子23bは環状部材12の外周縁から径方向外側に突出する状態に配置されている。なお、丸型端子を端子接続用孔と同心円状に配置するとは、厳密な意味での同心円に限らず、丸型端子の孔が端子接続用孔と重なり合う状態を含む。
【0032】
図14は、第1実施形態において、環状部材12に中性点接続用導体17のみを取り付けた状態を示す平面図である。
図14に示すように、中性点接続用導体17は、第2配線用溝18に配置されている。中性点接続用導体17が有する6つの丸型端子28a,28b,28c,28d,28e,28fは、それぞれに対応する端子接続用孔16と同心円状に配置されている。
【0033】
図15は、第1実施形態において、環状部材12にコイル間接続用導体19のみを取り付けた状態を示す平面図である。モータの電気回路を6直列2並列の構成にする場合は、6つのコイル間接続用導体19を使用する。以降の説明では、6つのコイル間接続用導体19をそれぞれ異なる符号19a,19b,19c,19d,19e,19fで区別する。ただし、6つのコイル間接続用導体19a~19fを区別する必要がない場合は、コイル間接続用導体19と総称する。
【0034】
図15に示すように、6つのコイル間接続用導体19a,19b,19c,19d,19e,19fは、第3配線用溝20に配置されている。また、コイル間接続用導体19a,19b,19cとコイル間接続用導体19d,19e,19fは、環状部材12の円周方向で異なる位置に配置されている。具体的には、コイル間接続用導体19aとコイル間接続用導体19dは、環状部材12の円周方向で180°位置をずらして配置されている。同様に、コイル間接続用導体19bとコイル間接続用導体19eは、環状部材12の円周方向で180°位置をずらして配置され、コイル間接続用導体19cとコイル間接続用導体19fも、環状部材12の円周方向で180°位置をずらして配置されている。
【0035】
また、コイル間接続用導体19a,19b,19cは、環状部材12の円周方向で互いに部分的に重なり合って配置され、コイル間接続用導体19d,19e,19fも、環状部材12の円周方向で互いに部分的に重なり合って配置されている。各々のコイル間接続用導体19a,19b,19c,19d,19e,19fの丸型端子30aは、それぞれに対応する端子接続用孔16と同心円状に配置され、各々のコイル間接続用導体19a,19b,19c,19d,19e,19fの丸型端子30bも、それぞれに対応する端子接続用孔16と同心円状に配置されている。
【0036】
環状部材12の円周方向においては、コイル間接続用導体19aの丸型端子30aとコイル間接続用導体19cの丸型端子30bとが隣り合って配置されると共に、コイル間接続用導体19dの丸型端子30aとコイル間接続用導体19fの丸型端子30bとが隣り合って配置されている。また、環状部材12の円周方向においては、コイル間接続用導体19aの丸型端子30bとコイル間接続用導体19bの丸型端子30bとが隣り合って配置されると共に、コイル間接続用導体19bの丸型端子30aとコイル間接続用導体19cの丸型端子30aとが隣り合って配置されている。また、環状部材12の円周方向においては、コイル間接続用導体19dの丸型端子30bとコイル間接続用導体19eの丸型端子30bとが隣り合って配置されると共に、コイル間接続用導体19eの丸型端子30aとコイル間接続用導体19fの丸型端子30aとが隣り合って配置されている。また、環状部材12の円周方向においては、コイル間接続用導体19aの丸型端子30bとコイル間接続用導体19fの丸型端子30aとが隣り合って配置されると共に、コイル間接続用導体19cの丸型端子30aとコイル間接続用導体19dの丸型端子30bとが隣り合って配置されている。
【0037】
図16は、第1実施形態において、環状部材12に入力用導体21のみを取り付けた状態を示す平面図である。モータの電気回路を6直列2並列の構成にする場合は、6つの入力用導体21を使用する。以降の説明では、6つの入力用導体21をそれぞれ異なる符号21a,21b,21c,21d,21e,21fで区別すると共に、各々の入力用導体21が有する丸型端子31をそれぞれ異なる符号31a,31b,31c,31d,31e,31fで区別する。ただし、6つの入力用導体21a~21fを区別する必要がない場合は入力用導体21と総称し、6つの丸型端子31a~31fを区別する必要がない場合は丸型端子31と総称する。
【0038】
図16に示すように、6つの入力用導体21a,21b,21c,21d,21e,21fは、第4配線用溝22に配置されている。入力用導体21a,21b,21cと入力用導体21d,21e,21fは、環状部材12の円周方向で異なる位置に配置されている。また、入力用導体21a,21b,21cは、環状部材12の円周方向で互いに部分的に重なり合って配置され、入力用導体21d,21e,21fも、環状部材12の円周方向で互いに部分的に重なり合って配置されている。各々の入力用導体21a,21b,21c,21d,21e,21fの丸型端子31a,31b,31c,31d,31e,31fは、それぞれに対応する端子接続用孔16と同心円状に配置されている。
【0039】
環状部材12の円周方向においては、入力用導体21aの丸型端子31aと入力用導体21bの丸型端子31bとが隣り合って配置されると共に、入力用導体21bの丸型端子31bと入力用導体21cの丸型端子31cとが隣り合って配置されている。また、環状部材12の円周方向においては、入力用導体21dの丸型端子31dと入力用導体21eの丸型端子31eとが隣り合って配置されると共に、入力用導体21eの丸型端子31eと入力用導体21fの丸型端子31fとが隣り合って配置されている。
【0040】
図17は、6直列2並列の場合の結線板26の構成を示す平面図である。
図17に示すように、結線板26は、上述したように環状部材12に接続用導体(コイル端末接続用導体13a,13b、中性点接続用導体17、コイル間接続用導体19)と入力用導体21とを取り付けることによって構成される。環状部材12に設けられた複数の端子接続用孔16(図7図8)には、それぞれボルト27が取り付けられている。ボルト27は、ネジ孔である端子接続用孔16にボルト27の雄ネジ部分を噛み合わせた状態で締め付けられている。
【0041】
ボルト27は、P1位置では、コイル端末接続用導体13aの端子と中性点接続用導体17の端子とを端子接続用孔16に共締めによって固定している。また、ボルト27は、P2位置では、コイル端末接続用導体13a,13bの端子とコイル間接続用導体19の端子とを端子接続用孔16に共締めによって固定しており、P3位置では、コイル端末接続用導体13bの端子と入力用導体21の端子とを端子接続用孔16に共締めによって固定している。共締めとは、複数の端子を共に締め付けることをいい、より具体的には、複数の端子を重ね合わせて締め付けることをいう。
【0042】
さらに詳述すると、P1位置では、中性点接続用導体17の丸型端子28a,28b,28c,28d,28e,28fとこれに対応するコイル端末接続用導体13aの丸型端子15aとが、ボルト27によって共締めされている。また、P2位置では、コイル端末接続用導体13aの丸型端子15aとコイル間接続用導体19の丸型端子30bとが、ボルト27によって共締めされると共に、コイル端末接続用導体13bの丸型端子15bとコイル間接続用導体19の丸型端子30aとが、ボルト27によって共締めされている。また、P3位置では、入力用導体21(21a,21b,21c,21d,21e,21f)の丸型端子31(31a,31b,31c,31d,31e,31f)とこれに対応するコイル端末接続用導体13bの丸型端子15bとが、ボルト27によって共締めされている。
【0043】
上記構成からなる結線板26は、図1に示すステータハウジング10の上に実装される。その際、結線板26のベース部材となる環状部材12は、ステータハウジング10に接着等により固定される。また、リング部材8aに取り付けられている複数のボルト11(図5)は、環状部材12の下面側に形成されている複数の凹部40(図7)内に配置される。また、図6及び図18に示すように、各々のコイル端末接続用導体13a,13bの熱かしめ用端子23a,23bには、それぞれに対応するコイル6の端末9がヒュージング(熱かしめ)によって接合される。この場合、コイル6を丸断面のエナメル線によって構成すると、熱かしめ用端子23a,23bによりコイル6の端末9を加圧した際に、熱かしめ用端子23a,23bと端末9との接触状態が点接触となり、良好なヒュージングを行うことができる。
【0044】
このように結線板26を用いて複数のコイル6を電気的に接続することにより、モータ100の電気回路は、図19に示すように6直列2並列の構成になる。
図19から分かるように、モータ100は、U相コイルとV相コイルとW相コイルとを備える3相モータである。各相のコイルは12個のコイル6によって構成されている。このため、3相モータからなるモータ100は、合計36個のコイル6を有している。各相のコイルには、それぞれに対応する入力用導体21を介して交流電圧が印加される。また、各相のコイルは、中性点接続用導体17によって接続されている。U相コイルに属する12個のコイル6のうち、6つのコイル6はコイル間接続用導体19を介して直列に接続され、他の6つのコイル6もコイル間接続用導体19を介して直列に接続されている。そして、直列接続された6つのコイル6同士が並列に接続されている。すなわち、U相コイルは6直列2並列の構成になっている。この点はV相コイル及びW相コイルについても同様である。
【0045】
続いて、モータの電気回路におけるコイルの並列数を変更する方法について説明する。
まず、上記図19に示す電気回路は6直列2並列の構成になっているため、コイルの並列数は2になる。これに対し、モータ100の電気回路を6直列2並列から3直列4並列に切り替えると、コイルの並列数は6直列2並列の場合と比べて2倍、つまり4になる。
電気回路の各相の入力用導体21に同じ電圧を印加した場合、モータ100が有する磁極7の数が同じでも、コイルの並列数の違いにより、各々のコイル6に流れる電流が変化する。たとえば、各磁極7のコイル6の抵抗値(導体面積と巻線ターン数)が同じであれば、3直列4並列の電気回路で各コイル6に流れる電流は、6直列2並列の電気回路の場合に比べて4倍になる。つまり、同じ磁極数のモータであっても、コイルの並列数を変更することで、異なる出力を得ることができる。
【0046】
モータ100の電気回路を6直列2並列から3直列4並列に切り替える場合は、環状部材12とコイル端末接続用導体13a,13bは、6直列2並列の場合と同じものを使用するが、コイル間接続用導体19は使用しない。このため、電気回路の切り替えに際して、環状部材12の着脱等は不要であるが、環状部材12からコイル間接続用導体19(19a~19f)を取り外す必要がある。つまり、3直列4並列の場合は、環状部材12の第3配線用溝20に接続用導体を配置しない。
【0047】
また、モータ100の電気回路を6直列2並列から3直列4並列に切り替える場合は、上記図10に示す中性点接続用導体17の代わりに、図20に示す中性点接続用導体32を使用する。中性点接続用導体32は、円弧状(C字形)に形成されている。中性点接続用導体32は、金属の一体成形品によって構成されている。中性点接続用導体32には12個の丸型端子33a,33b,33c,33d,33e,33f,33g,33h,33i,33j,33k,33lが形成されている。中性点接続用導体32は、銅などの導体板をプレス加工(打ち抜き加工及び曲げ加工)により成形することで得られる。中性点接続用導体32の表面は、丸型端子33a~33lの部分を除いて、樹脂等の絶縁被膜により覆われている。
【0048】
図21は、第1実施形態において、環状部材12に中性点接続用導体32のみを取り付けた状態を示す平面図である。
図21に示すように、中性点接続用導体32は、第2配線用溝18に配置されている。中性点接続用導体32が有する12個の丸型端子33a,33b,33c,33d,33e,33f,33g,33h,33i,33j,33k,33lは、それぞれに対応する端子接続用孔16と同心円状に配置されている。
【0049】
また、モータ100の電気回路を6直列2並列から3直列4並列に切り替える場合は、12個の入力用導体21を使用する。つまり、3直列4並列の場合は、直列2並列の場合に比べて入力用導体21の使用数を2倍に増やす。
【0050】
図22は、第1実施形態において、環状部材12に入力用導体21のみを取り付けた状態を示す平面図である。
以降の説明では、12個の入力用導体21をそれぞれ異なる符号21a,21b,21c,21d,21e,21f,21g,21h,21i,21j,21k,21lで区別すると共に、各々の入力用導体21が有する丸型端子31をそれぞれ異なる符号31a,31b,31c,31d,31e,31f,31g,31h,31i,31j,31k,31lで区別する。ただし、12個の入力用導体21a~21lを区別する必要がない場合は入力用導体21と総称し、12個の丸型端子31a~31lを区別する必要がない場合は丸型端子31と総称する。
【0051】
図22に示すように、12個の入力用導体21a,21b,21c,21d,21e,21f,21g,21h,21i,21j,21k,21lは、第4配線用溝22に配置されている。各々の入力用導体21a,21b,21c,21d,21e,21f,21g,21h,21i,21j,21k,21lの丸型端子31a,31b,31c,31d,31e,31f,31g,31h,31i,31j,31k,31lは、それぞれに対応する端子接続用孔16と同心円状に配置されている。12個の丸型端子31a~31lは、環状部材12の円周方向において、丸型端子31aから丸型端子31lに向かって図22の時計回り方向に順に配置されている。
【0052】
なお、環状部材12にコイル端末接続用導体13a,13bのみを取り付けた状態は、6直列2並列の場合(図13)と同様であるため説明を省略する。
【0053】
図23は、3直列4並列の場合の結線板26の構成を示す平面図である。
図23に示すように、結線板26は、上述したように環状部材12に接続用導体(コイル端末接続用導体13a,13b、中性点接続用導体32)と入力用導体21とを取り付けることによって構成される。環状部材12に設けられた複数の端子接続用孔16(図7図8)には、それぞれボルト27が取り付けられている。ボルト27は、ネジ孔である端子接続用孔16にボルト27の雄ネジ部分を噛み合わせた状態で締め付けられている。
【0054】
ボルト27は、P1位置では、コイル端末接続用導体13aの端子と中性点接続用導体32の端子とを端子接続用孔16に共締めによって固定している。また、ボルト27は、P3位置では、コイル端末接続用導体13bの端子と入力用導体21の端子とを端子接続用孔16に共締めによって固定している。
【0055】
さらに詳述すると、P1位置では、中性点接続用導体32の丸型端子33a,33b,33c,33d,33e,33f,33g,33h,33i,33j,33k,33lとこれに対応するコイル端末接続用導体13aの丸型端子15aとが、ボルト27によって共締めされている。また、P3位置では、入力用導体21(21a,21b,21c,21d,21e,21f,21g,21h,21i,21j,21k,21l)の丸型端子31(31a,31b,31c,31d,31e,31f,31g,31h,31i,31j,31k,31l)とこれに対応するコイル端末接続用導体13bの丸型端子15bとが、ボルト27によって共締めされている。
【0056】
このように結線板26を用いて複数のコイル6を電気的に接続することにより、モータ100の電気回路は、図24に示すように3直列4並列の構成になる。
図24から分かるように、モータ100は、U相コイルとV相コイルとW相コイルとを備える3相モータであって、各相のコイルは12個のコイル6によって構成されている。各相のコイルには、それぞれに対応する入力用導体21を介して交流電圧が印加される。また、各相のコイルは、中性点接続用導体32によって接続されている。U相コイルに属する12個のコイル6は、上記図4に示すように3つのコイル6を一つの組として直列に接続され、この直列接続された3つのコイル6同士が並列に接続されている。すなわち、U相コイルは3直列4並列の構成になっている。この点はV相コイル及びW相コイルについても同様である。
【0057】
なお、モータ100の電気回路を3直列4並列から6直列2並列に切り替える場合は、図20に示す中性点接続用導体32の代わりに、図10に示す中性点接続用導体17を使用すると共に、環状部材12の第3配線用溝20にコイル間接続用導体19を配置し、かつ、入力用導体21の使用数を12個から6個に減らせばよい。
【0058】
以上説明したとおり、第1実施形態に係るモータ100においては、結線板26の主要部品である環状部材12とコイル端末接続用導体13a,13bを兼用して、電気回路の構成を6直列2並列から3直列4並列に、又は、3直列4並列から6直列2並列に切り替えることができる。そして、電気回路の切り替えにより、コイルの並列数を変更することができる。また、第1実施形態においては、接続用導体(コイル端末接続用導体13a,13b、中性点接続用導体17,32、コイル間接続用導体19)の端子と入力用導体21の端子を、端子接続用孔16に共締めによって固定している。このため、人手による煩雑な結線作業や専用の結線板を必要とすることなく、電気回路の並列数の変更に対応することができる。
【0059】
また、第1実施形態においては、接続用導体(コイル端末接続用導体13a,13b、中性点接続用導体17,32、コイル間接続用導体19)の端子と入力用導体21の端子を、ボルト27によって共締めしている。これにより、接続用導体(コイル端末接続用導体13a,13b、中性点接続用導体17、コイル間接続用導体19)の着脱作業や入力用導体21の着脱作業を容易に行うことができる。
【0060】
また、第1実施形態においては、コイル6の端末9にコイル端末接続用導体13a,13bの熱かしめ用端子23a,23bを熱かしめによって接合している。これにより、コイル6の端末9の絶縁皮膜を除去することなく、コイル6の端末9とコイル端末接続用導体13a,13bとを電気的に接続することができる。また、絶縁皮膜の除去工程を省くことで、皮膜剥離装置と工程を廃止し、低コストで短時間のモータ生産を実現することができる。
【0061】
また、第1実施形態においては、接続用導体(コイル端末接続用導体13a,13b、中性点接続用導体17,32、コイル間接続用導体19)の端子と入力用導体21の端子をそれぞれ丸型端子によって構成している。このため、端子同士をボルト27によって共締めする際に、各端子の孔にボルト27を挿入することにより、端子の位置ずれを抑制しながら端子を共締めすることができる。
【0062】
また、第1実施形態においては、コイル間接続用導体19を絶縁ケーブル24と丸型端子30a,30bとによって構成しているため、環状部材12の端子接続用孔16とコイル間接続用導体19の丸型端子30a,30bとを容易に位置合わせすることができる。
【0063】
<第2実施形態>
図25は、第2実施形態に係るモータの要部を拡大した斜視図である。
第2実施形態に係るモータは、上記第1実施形態と比較して、コイル6の端末9とコイル端末接続用導体13a,13bとの接合構造が異なる。コイル6は、コイル端末接続用導体13a,13bの端子25a,25bとコイル6の端末9との位置合わせや突き当てが容易な平角エナメル線によって構成することが望ましい。なお、平角エナメル線によってコイル6を構成する場合は、複数のコイル6を繋いで巻線することが困難になる。このため、図25においては、各々のコイル6を単独で巻線し、円周方向に連続する3つのコイルの端末同士を2箇所で溶接する構造を採用している。コイル6の端末9は上向きに曲げられている。これに対し、コイル端末接続用導体13aの端子25aは、コイル6の端末9と同様に上向きに曲げられ、コイル端末接続用導体13bの端子26bも、コイル6の端末9と同様に上向きに曲げられている。そして、コイル端末接続用導体13aの端子25aとこれに対応するコイル6の端末9は、溶接によって接合されている。端子25aと端末9は、たとえばTig溶接、レーザ溶接などで接合される。同様に、コイル端末接続用導体13bの端子25bとこれに対応するコイル6の端末9も、溶接によって接合されている。
【0064】
このように第2実施形態においては、コイル6の端末9にコイル端末接続用導体13a,13bの端子25a,25bを溶接によって接合している。これにより、コイル6を平角エナメル線によって構成した場合に、コイル6の端末9とコイル端末接続用導体13a,13bとの電気的な接続を確実に行うことができる。
なお、溶接以外の接合方法としては、たとえば超音波接合なども考えられる。
【0065】
<第3実施形態>
図26は、第3実施形態における環状部材の構成を示す平面図である。
図26に示すように、環状部材12は、基本的に第1実施形態の構成(図8)と同様である。具体的には、環状部材12の上面側には、複数の第1配線用溝14と、複数の端子接続用孔16と、第2配線用溝18と、第3配線用溝20と、第4配線用溝22とが形成されている。第1配線用溝14は、環状部材12の最外周部に、平面視L字形に形成されている。端子接続用孔16は、環状部材12の最外周部に、平面視円形に形成されている。第2配線用溝18、第3配線用溝20及び第4配線用溝22は、同心円状に形成されている。また、第3配線用溝20と第4配線用溝22との間には仕切り部42が設けられている。
【0066】
図27は、第3実施形態において、環状部材12にコイル端末接続用導体13a,13bのみを取り付けた状態を示す平面図である。
図27に示すように、環状部材12には合計24個のコイル端末接続用導体13a,13bが取り付けられている。コイル端末接続用導体13a,13bは、それぞれに対応する第1配線用溝14に配置されている。コイル端末接続用導体13aの丸型端子15aは端子接続用孔16と同心円状に配置され、コイル端末接続用導体13aの熱かしめ用端子23aは環状部材12の円周方向に突出する状態で配置されている。同様に、コイル端末接続用導体13bの丸型端子15bは端子接続用孔16と同心円状に配置され、コイル端末接続用導体13bの熱かしめ用端子23bは環状部材12の円周方向に突出する状態に配置されている。また、環状部材12の円周方向で隣り合うコイル端末接続用導体13a,13bの熱かしめ用端子23a,23bは、互いに対向する状態に配置されている。
【0067】
図28は、第3実施形態におけるコイル間接続用導体29の構成を示す斜視図である。
図28に示すように、コイル間接続用導体29は、第1実施形態で使用したコイル間接続用導体19の代替品となるもので、円弧状に形成されている。コイル間接続用導体29は、金属の一体成形品によって構成されている。コイル間接続用導体29の一端には丸型端子34aが形成され、コイル間接続用導体29の他端には丸型端子34bが形成されている。コイル間接続用導体29は、銅などの導体板をプレス加工(打ち抜き加工及び曲げ加工)により成形することで得られる。コイル間接続用導体29の表面は、丸型端子34a,34bの部分を除いて、樹脂等の絶縁被膜により覆われている。
【0068】
図29は、第3実施形態において、環状部材12にコイル間接続用導体29のみを取り付けた状態を示す平面図である。モータの電気回路を6直列2並列の構成にする場合は、6つのコイル間接続用導体29を使用する。以降の説明では、6つのコイル間接続用導体29をそれぞれ異なる符号29a,29b,29c,29d,29e,29fで区別する。ただし、6つのコイル間接続用導体29a~29fを区別する必要がない場合は、コイル間接続用導体29と総称する。
【0069】
図29に示すように、6つのコイル間接続用導体29a,29b,29c,29d,29e,29fは、第3配線用溝20に配置されている。6つのコイル間接続用導体29a,29b,29c,29d,29e,29fは、次に述べるとおり、第1実施形態における6つのコイル間接続用導体19a,19b,19c,19d,19e,19fと同様に配置されている。コイル間接続用導体29a,29b,29cとコイル間接続用導体29d,29e,29fは、環状部材12の円周方向で異なる位置に配置されている。具体的には、コイル間接続用導体29aとコイル間接続用導体29dは、環状部材12の円周方向で180°位置をずらして配置されている。同様に、コイル間接続用導体29bとコイル間接続用導体29eは、環状部材12の円周方向で180°位置をずらして配置され、コイル間接続用導体29cとコイル間接続用導体29fも、環状部材12の円周方向で180°位置をずらして配置されている。
【0070】
また、コイル間接続用導体29a,29b,29cは、環状部材12の円周方向で互いに部分的に重なり合って配置され、コイル間接続用導体29d,29e,29fも、環状部材12の円周方向で互いに部分的に重なり合って配置されている。各々のコイル間接続用導体29a,29b,29c,29d,29e,29fの丸型端子34aは、それぞれに対応する端子接続用孔16と同心円状に配置され、各々のコイル間接続用導体29a,29b,29c,29d,29e,29fの丸型端子34bも、それぞれに対応する端子接続用孔16と同心円状に配置され
【0071】
環状部材12の円周方向においては、コイル間接続用導体29aの丸型端子34aとコイル間接続用導体29cの丸型端子34bとが隣り合って配置されると共に、コイル間接続用導体29dの丸型端子34aとコイル間接続用導体29fの丸型端子34bとが隣り合って配置されている。また、環状部材12の円周方向においては、コイル間接続用導体29aの丸型端子34bとコイル間接続用導体29bの丸型端子34bとが隣り合って配置されると共に、コイル間接続用導体29bの丸型端子34aとコイル間接続用導体29cの丸型端子34aとが隣り合って配置されている。また、環状部材12の円周方向においては、コイル間接続用導体29dの丸型端子34bとコイル間接続用導体29eの丸型端子34bとが隣り合って配置されると共に、コイル間接続用導体29eの丸型端子34aとコイル間接続用導体29fの丸型端子34aとが隣り合って配置されている。また、環状部材12の円周方向においては、コイル間接続用導体29aの丸型端子34bとコイル間接続用導体29fの丸型端子34aとが隣り合って配置されると共に、コイル間接続用導体29cの丸型端子34aとコイル間接続用導体29dの丸型端子34bとが隣り合って配置されている。
【0072】
図30は、第3実施形態において、環状部材12に中性点接続用導体17のみを取り付けた状態を示す平面図である。中性点接続用導体17の構成は、第1実施形態の場合(図10)と同じである。
図30に示すように、中性点接続用導体17は、第2配線用溝18に配置されている。中性点接続用導体17が有する6つの丸型端子28a,28b,28c,28d,28e,28fは、それぞれに対応する端子接続用孔16と同心円状に配置されている。
【0073】
図31は、第3実施形態において、環状部材12に入力用導体21のみを取り付けた状態を示す平面図である。入力用導体21の構成は、第1実施形態の場合(図12)と同じである。
モータの電気回路を6直列2並列の構成にする場合は、6つの入力用導体21を使用する。以降の説明では、6つの入力用導体21をそれぞれ異なる符号21a,21b,21c,21d,21e,21fで区別すると共に、各々の入力用導体21が有する丸型端子31をそれぞれ異なる符号31a,31b,31c,31d,31e,31fで区別する。ただし、6つの入力用導体21a~21fを区別する必要がない場合は入力用導体21と総称し、6つの丸型端子31a~31fを区別する必要がない場合は丸型端子31と総称する。
【0074】
図31に示すように、6つの入力用導体21a,21b,21c,21d,21e,21fは、第4配線用溝22に配置されている。入力用導体21a,21b,21cと入力用導体21d,21e,21fは、環状部材12の円周方向で異なる位置に配置されている。また、入力用導体21a,21b,21cは、環状部材12の円周方向で互いに部分的に重なり合って配置され、入力用導体21d,21e,21fも、環状部材12の円周方向で互いに部分的に重なり合って配置されている。各々の入力用導体21a,21b,21c,21d,21e,21fの丸型端子31a,31b,31c,31d,31e,31fは、それぞれに対応する端子接続用孔16と同心円状に配置されている。
【0075】
環状部材12の円周方向においては、入力用導体21aの丸型端子31aと入力用導体21bの丸型端子31bとが隣り合って配置されると共に、入力用導体21bの丸型端子31bと入力用導体21cの丸型端子31cとが隣り合って配置されている。また、環状部材12の円周方向においては、入力用導体21dの丸型端子31dと入力用導体21eの丸型端子31eとが隣り合って配置されると共に、入力用導体21eの丸型端子31eと入力用導体21fの丸型端子31fとが隣り合って配置されている。
【0076】
図32は、第3実施形態における6直列2並列の場合の結線板26の構成を示す平面図である。
図32に示すように、結線板26は、上述したように環状部材12に接続用導体(コイル端末接続用導体13a,13b、中性点接続用導体17、コイル間接続用導体29)と入力用導体21とを取り付けることによって構成される。環状部材12に設けられた複数の端子接続用孔16(図7図8)には、それぞれボルト27が取り付けられている。ボルト27は、ネジ孔である端子接続用孔16にボルト27の雄ネジ部分を噛み合わせた状態で締め付けられている。
【0077】
ボルト27は、P1位置では、コイル端末接続用導体13aの端子と中性点接続用導体17の端子とを端子接続用孔16に共締めによって固定している。また、ボルト27は、P2位置では、コイル端末接続用導体13a,13bの端子とコイル間接続用導体29の端子とを端子接続用孔16に共締めによって固定しており、P3位置では、コイル端末接続用導体13bの端子と入力用導体21の端子とを端子接続用孔16に共締めによって固定している。
【0078】
さらに詳述すると、P1位置では、中性点接続用導体17の丸型端子28a,28b,28c,28d,28e,28fとこれに対応するコイル端末接続用導体13aの丸型端子15aとが、ボルト27によって共締めされている。また、P2位置では、コイル端末接続用導体13aの丸型端子15aとコイル間接続用導体29の丸型端子34bとが、ボルト27によって共締めされると共に、コイル端末接続用導体13bの丸型端子15bとコイル間接続用導体29の丸型端子34aとが、ボルト27によって共締めされている。また、P3位置では、入力用導体21(21a,21b,21c,21d,21e,21f)の丸型端子31(31a,31b,31c,31d,31e,31f)とこれに対応するコイル端末接続用導体13bの丸型端子15bとが、ボルト27によって共締めされている。
【0079】
上記構成からなる結線板26は、図1に示すステータハウジング10の上に実装される。また、コイル端末接続用導体13a,13bの熱かしめ用端子23a,23bには、それぞれに対応するコイル6の端末9がヒュージング(熱かしめ)によって接合される。このように結線板26を用いて複数のコイル6を電気的に接続することにより、モータ100の電気回路は、図19に示すように6直列2並列の構成になる。また、モータ100の電気回路を6直列2並列から3直列4並列に切り替える場合は、上記第1実施形態の場合と同様に中性点接続用導体17の代わりに中性点接続用導体32を使用すると共に、入力用導体21の使用数を6個から12個に増やし、コイル間接続用導体29を不使用とすればよい。
【0080】
第3実施形態においては、コイル間接続用導体29を金属の一体成形品によって構成しているため、コイル間接続用導体29をプレス成形で大量生産し、安価に製造することができる。
【0081】
<第4実施形態>
第4実施形態においては、上記第1実施形態と比較して、環状部材12の端子接続用孔16の構造と、端子接続用孔16における端子の共締め構造が異なっている。以下、具体例を挙げて説明する。
図33は、第4実施形態に係るモータの要部を拡大した断面図である。
図33において、環状部材12の端子接続用孔16は貫通孔になっている。端子接続用孔16の部分には、コイル端末接続用導体13aの丸型端子15aを下側、中性点接続用導体17の丸型端子28aを上側として、丸型端子15aと丸型端子28aが重なり合って配置されている。丸型端子15aと丸型端子28aにはボルト27の雄ネジ部分が挿入されている。ボルト27の雄ネジ部分は、ナット35に噛み合っている。ナット35は、インサート成形などによって環状部材12と一体に構成してもよいし、環状部材12と別体に構成してもよい。丸型端子15aと丸型端子28aは、ボルト27とナット35によって共締めされている。これにより、丸型端子15aと丸型端子28aをより強固に共締めすることができる。また、ボルト27とナット35による端子の共締め構造は、図17に示すP1位置、P2位置、P3位置及びP4位置にもそれぞれ適用される。このため、接続用導体(コイル端末接続用導体13a,13b、中性点接続用導体17,32、コイル間接続用導体19)の着脱作業や入力用導体21の着脱作業を容易に行うことができる。
【0082】
<第5実施形態>
第5実施形態においては、上記第1実施形態と比較して、環状部材12の端子接続用孔16の構造と、端子接続用孔16における端子の共締め構造が異なっている。以下、具体例を挙げて説明する。
図34は、第5実施形態に係るモータの要部を拡大した断面図である。
図34において、環状部材12の端子接続用孔16は貫通孔になっている。端子接続用孔16の部分には、コイル端末接続用導体13aの丸型端子15aを下側、中性点接続用導体17の丸型端子28aを上側として、丸型端子15aと丸型端子28aが重なり合って配置されている。丸型端子15aと丸型端子28aにはリベット36の軸部が挿入されている。丸型端子15aと丸型端子28aは、リベット36によって共締めされている。これにより、丸型端子15aと丸型端子28aをより強固に共締めすることができる。また、リベット36による端子の共締め構造は、図17に示すP1位置、P2位置、P3位置及びP4位置にもそれぞれ適用される。
【0083】
<変形例等>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例を含む。たとえば、上述した実施形態では、本発明の内容を理解しやすいように詳細に説明しているが、本発明は、上述した実施形態で説明したすべての構成を必ずしも備えるものに限定されない。また、ある実施形態の構成の一部を、他の実施形態の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、これを削除し、または他の構成を追加し、あるいは他の構成に置換することも可能である。
【0084】
また、上記実施形態においては、接続用端子の端子と入力用端子の端子が、いずれも丸型端子である場合を例に挙げて説明したが、端子は丸型端子に限らず、たとえばU型端子やクワ型端子など、共締めに対応できる形状であればよい。
【0085】
また、上記実施形態においては、外転型の分割コア・集中巻モータを対象に説明したが、内転型の分割コア・集中巻モータでも同様の効果を得ることができる。
【0086】
また、モータの電気回路は磁極数36、6直列2並列、3直列4並列の例で説明したが、磁極数と並列数の組み合わせはこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0087】
4…分割コア、6…コイル、9…端末、12…環状部材、13a,13b…コイル端末接続用導体、14…第1配線用溝、15a,15b…丸型端子(端子)、16…端子接続用孔、17…中性点接続用導体、18…第2配線用溝、19…コイル間接続用導体、20…第3配線用溝、21…入力用導体、22…第4配線用溝、24…絶縁ケーブル、27…ボルト、28…丸型端子(端子)、29…コイル間接続用導体、30a,30b…丸型端子(端子)、31…丸型端子(端子)、32…中性点接続用導体、33…丸型端子(端子)、34a,34b…丸型端子(端子)、35…ナット、36…リベット、100…モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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図19
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図33
図34