(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083676
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】掘削機
(51)【国際特許分類】
E02D 23/08 20060101AFI20230609BHJP
【FI】
E02D23/08 C
E02D23/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197499
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000140694
【氏名又は名称】株式会社加藤建設
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 茂
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 達也
(72)【発明者】
【氏名】濱田 良幸
(72)【発明者】
【氏名】内山 敬二
(57)【要約】
【課題】ケーソンの刃口部の土砂の突き崩し作業と、突き崩し後の揚土作業とを両立可能とし、刃口部の土砂の突き崩しから揚土までの作業を効率化し得る掘削機を提供する。
【解決手段】本発明に係る掘削機1では、バケットシェル(第1、第2、第3バケットシェル61,62,63)の外側先端部に、それぞれ開位置において鉛直下方へ向かって基部60の吊り下げ中心Zとの水平距離D1,D2,D3が徐々に拡大する概ね末広状の刃部(第1、第2、第3刃部71,72,73)が突設されている。かかる構成により、第1、第2、第3刃部71,72,73によってケーソン3の刃口部30の土砂を突き崩しつつ、この突き崩した土砂をそのままかき寄せて集土し、各バケットシェル61,62,63によって揚土可能とした。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンによって鉛直方向に昇降可能に吊り下げられる基部と、
前記基部の中心を挟んで対向するようにそれぞれ対をなして設けられた第1バケットシェルと第2バケットシェルからなる少なくとも二対のバケットシェルを含み、それぞれが前記基部との接続部を回動支点として互いに離間する開位置と接近する閉位置との間で開閉可能に設けられると共に、それぞれが協働して前記閉位置において内側に土砂を収容する収容空間を構成する複数のバケットシェルと、
前記第1、第2バケットシェルの外側先端部にそれぞれ突設された第1刃部と第2刃部を含み、それぞれ前記開位置において鉛直下方へ向かって前記基部の吊り下げ中心との水平距離が徐々に拡大する概ね末広状を呈し、かつ前記閉位置において鉛直方向に互いに重なり合うように設けられた刃部と、
を備えた、
ことを特徴とする掘削機。
【請求項2】
請求項1に記載の掘削機であって、
前記第1バケットシェルは、前記閉位置において鉛直方向に延びる第1側壁部と、前記第1側壁部の先端部に当該第1側壁部に対して概ね直交するように設けられ、前記閉位置において水平方向に延びる第1底壁部と、を有し、
前記第2バケットシェルは、前記閉位置において鉛直方向に延びる第2側壁部と、前記第2側壁部の先端部に当該第2側壁部に対して概ね直交するように設けられ、前記閉位置において水平方向に延びる第2底壁部と、を有し、
前記第1、第2刃部は、それぞれ前記第1、第2底壁部に沿って設けられている、
ことを特徴とする掘削機。
【請求項3】
請求項2に記載の掘削機であって、
前記第1底壁部は、前記第2底壁部よりも内側で重なり合い、
前記第2側壁部と前記第2底壁部のなす角度は、前記第1側壁部と前記第1底壁部のなす角度よりも大きくなるように設定されている、
ことを特徴とする掘削機。
【請求項4】
請求項2に記載の掘削機であって、
前記第1底壁部は、前記第2底壁部よりも内側で重なり合い、
前記第2底壁部は、前記第1底壁部よりも長く設定されている、
ことを特徴とする掘削機。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の掘削機であって、
前記第1、第2バケットシェルを支持する複数の支持アームと、
前記複数の支持アームを支持する支持部と、
をさらに備え、
前記支持部は、前記クレーンに吊り下げられた第1ワイヤを介して支持され、
前記基部は、前記クレーンに吊り下げられた第2ワイヤを介して昇降可能に設けられていて、前記開位置にあるときは、前記支持部から最も離間して前記第1、第2バケットシェルの基端部を鉛直下方へ引き下げる一方、前記閉位置にあるときは、前記支持部に最も接近して前記第1、第2バケットシェルの基端部を鉛直上方へ引き上げる、
ことを特徴とする掘削機。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の掘削機であって、
前記複数のバケットシェルは、前記基部の中心を挟んで対向するように対をなして設けられた第3バケットシェルをさらに含み、
前記第3バケットシェルの外側先端部には、前記開位置において鉛直下方へ向かって前記基部の吊り下げ中心との水平距離が徐々に拡大する概ね末広状を呈し、かつ前記閉位置において鉛直方向に互いに重なり合う第3刃部が突設された、
ことを特徴とする掘削機。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の掘削機であって、
前記各底壁部は、当該各底壁部の延設方向に沿って延びるリブを有する、
ことを特徴とする掘削機。
【請求項8】
請求項3又は4に記載の掘削機であって、
前記第1底壁部の内側に、当該第1底壁部の延設方向に沿って延びる第1リブが設けられていて、
前記第2底壁部の外側に、当該第2底壁部の延設方向に沿って延びる第2リブが設けられている、
ことを特徴とする掘削機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば圧入式オープンケーソン工法やアーバンリング工法に係る立坑の沈下掘削において、ケーソンの刃口部を掘削すると共に、この掘削した土砂の揚土を行う掘削機に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーソンの刃口部を掘削する従来の掘削機としては、例えば以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
概略を説明すれば、この掘削機は、周方向に複数(4つ)の突き矢を有しており、この突き矢によりケーソンの刃口部の土砂を突き崩すものである。すなわち、当該掘削機によりケーソンの刃口部の土砂を突き崩し、この突き崩した土砂を別途クラムシェルバケットにより揚土することで、ケーソンの圧入沈設に供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の掘削機は、前記刃口部の突き崩しによって生じた土砂を集土及び揚土する機能を有していない。このため、かかる突き崩し後の揚土に際し、当該掘削機を揚土可能なクラムシェルバケットに置換したうえで、前記突き崩し後の土砂を集土及び揚土する必要がある。これにより、前記突き崩しから揚土までの作業が煩雑となってしまう点で改善の余地を残していた。
【0006】
本発明は、かかる技術的課題に着目して案出されたものであり、ケーソンの刃口部の土砂の突き崩し作業と、突き崩し後の揚土作業とを両立可能として、刃口部の土砂の突き崩しから揚土までの作業を効率化し得る掘削機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る掘削機は、その一態様として、クレーンによって鉛直方向に昇降可能に吊り下げられる基部と、前記基部の中心を挟んで対向するようにそれぞれ対をなして設けられた第1バケットシェルと第2バケットシェルからなる少なくとも二対のバケットシェルを含み、それぞれが前記基部との接続部を回動支点として互いに離間する開位置と接近する閉位置との間で開閉可能に設けられると共に、それぞれが協働して前記閉位置において内側に土砂を収容する収容空間を構成する複数のバケットシェルと、前記第1、第2バケットシェルの外側先端部にそれぞれ突設された第1刃部と第2刃部を含み、それぞれ前記開位置において鉛直下方へ向かって前記基部の吊り下げ中心との水平距離が徐々に拡大する概ね末広状を呈し、かつ前記閉位置において鉛直方向に互いに重なり合うように設けられた刃部と、を備えている。
【0008】
このように、本発明によれば、バケットシェルの外側先端部に、それぞれ開位置において鉛直下方へ向かって基部の吊り下げ中心との水平距離が徐々に拡大する概ね末広状の刃部が突設されている。このため、当該刃部によりケーソンの刃口部の土砂を突き崩しながら、この突き崩した土砂をそのままかき寄せて集土し、各バケットシェルによって揚土することができる。これにより、前記刃口部の土砂の突き崩しから揚土(排土)までの作業を掘削機のみで一貫して対応可能となり、前記従来のように前記突き崩し作業と前記揚土作業とで掘削機を交換する必要がなく、ケーソンの刃口部の土砂の突き崩しから揚土までの作業を効率化することができる。
【0009】
また、前記掘削機の別の態様として、前記第1バケットシェルは、前記閉位置において鉛直方向に延びる第1側壁部と、前記第1側壁部の先端部に当該第1側壁部に対して概ね直交するように設けられ、前記閉位置において水平方向に延びる第1底壁部と、を有し、前記第2バケットシェルは、前記閉位置において鉛直方向に延びる第2側壁部と、前記第2側壁部の先端部に当該第2側壁部に対して概ね直交するように設けられ、前記閉位置において水平方向に延びる第2底壁部と、を有し、前記第1、第2刃部は、それぞれ前記第1、第2底壁部に沿って設けられていることが望ましい。
【0010】
このように、各バケットシェルの側壁部と底壁部とが概ね直交するように構成されているため、各バケットシェルが開位置にあるときの掘削機の幅方向の寸法(掘削機の吊り下げ中心から各刃部の先端までの水平距離)を抑えつつ、ケーソンの刃口部の土砂の突き崩しを容易に行うことができる。また、各刃部は、各バケットシェルの底壁部に沿って設けられているため、前記突き崩し後の土砂を円滑に集土しつつ揚土することができる。
【0011】
また、前記掘削機のさらに別の態様として、前記第1底壁部は、前記第2底壁部よりも内側で重なり合い、前記第2側壁部と前記第2底壁部とのなす角度は、前記第1側壁部と前記第1底壁部とのなす角度よりも大きくなるように設定されていることが望ましい。
【0012】
このように、外側に位置する第2底壁部と第2側壁部とのなす角度が、内側に位置する第1底壁部と第1側壁部とのなす角度よりも大きくなるように設定されていることで、第1底壁部と第2底壁部とが干渉せずに適切に重なり合い、第1底壁部と第2底壁部とを密着させることが可能となる。これにより、前記突き崩し後の土砂を確実に効率よく集土しつつ揚土することができる。
【0013】
また、前記掘削機のさらに別の態様として、前記第1底壁部は、前記第2底壁部よりも内側で重なり合い、前記第2底壁部は、前記第1底壁部よりも長く設定されていることが望ましい。
【0014】
このように、外側に位置する第2底壁部が内側に位置する第1底壁部よりも長く設定されていることで、第1底壁部と第2底壁部とが適切に重なり合い、前記突き崩し後の土砂を確実に効率よく集土しつつ揚土することができる。
【0015】
また、前記掘削機のさらに別の態様として、前記第1、第2バケットシェルを支持する複数の支持アームと、前記複数の支持アームを支持する支持部と、をさらに備え、前記支持部は、前記クレーンに吊り下げられた第1ワイヤを介して支持され、前記基部は、前記クレーンに吊り下げられた第2ワイヤを介して昇降可能に設けられていて、前記開位置にあるときは、前記支持部から最も離間して前記第1、第2バケットシェルの基端部を鉛直下方へ引き下げる一方、前記閉位置にあるときは、前記支持部に最も接近して前記第1、第2バケットシェルの基端部を鉛直上方へ引き上げることが望ましい。
【0016】
このように、バケットシェルの開閉がワイヤ(第2ワイヤ)により行われるため、バケットシェルを電動モータや油圧シリンダによって開閉する場合と比べて、掘削機の構造が簡素化され、コストの低減化を図りつつ耐久性の向上を図ることができる。
【0017】
また、前記掘削機のさらに別の態様として、前記複数のバケットシェルは、前記基部の中心を挟んで対向するように対をなして設けられた第3バケットシェルをさらに含み、前記第3バケットシェルの外側先端部に、前記開位置において鉛直下方へ向かって前記基部の吊り下げ中心との水平距離が徐々に拡大する概ね末広状を呈し、かつ前記閉位置において鉛直方向に互いに重なり合う第3刃部が突設されていることが望ましい。
【0018】
このように、三対のバケットシェルが設けられていることで、当該バケットシェルに設けられる刃部の数量が増加し、掘削機の回転方向位置が変化しても各刃部のいずれかがケーソンの刃口部の土砂に当接し易くなり、当該刃口部の土砂の良好な突き崩しに供する。
【0019】
また、前記掘削機のさらに別の態様として、前記各底壁部は、当該各底壁部の延設方向に沿って延びるリブを有することが望ましい。
【0020】
このように、各底壁部の延設方向に沿ってリブが設けられていることにより、当該各底壁部の剛性が向上し、比較的硬質な地盤であってもケーソンの刃口部の土砂の良好な突き崩しに供する。
【0021】
また、前記掘削機のさらに別の態様として、前記第1底壁部の内側に、当該第1底壁部の延設方向に沿って延びる第1リブが設けられていて、前記第2底壁部の外側に、当該第2底壁部の延設方向に沿って延びる第2リブが設けられていることが望ましい。
【0022】
このように、第1底壁部の内側に当該第1底壁部の延設方向に沿って延びる第1リブが設けられていて、第2底壁部の外側に当該第2底壁部の延設方向に沿って延びる第2リブが設けられていることで、重なり合う底壁部間において各リブが相手側の底壁部と干渉せず、第1底壁部と第2底壁部とを密着させて重ね合わせることが可能となる。これにより、前記突き崩し後の土砂を確実に効率よく集土しつつ揚土することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、各バケットシェルの外側先端部に設けた概ね末広状の刃部によりケーソンの刃口部の土砂を突き崩しながら、この突き崩した土砂をそのままかき寄せて集土して、各バケットシェルによって揚土することができる。これにより、ケーソンの刃口部の土砂の突き崩しから揚土(排土)までの作業を掘削機のみで一貫して対応可能となり、前記従来のように前記突き崩し作業と前記揚土作業とで掘削機を交換する必要がなく、ケーソンの刃口部の土砂の突き崩しから揚土までの作業を効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る掘削機と当該掘削機を吊るすクローラクレーンの概略図である。
【
図2】本発明に係る掘削機の開状態を示す斜視図である。
【
図4】
図3の側面図であって、(a)は
図3のA方向から見た矢視図、(b)は
図3のB方向から見た矢視図、(c)は
図3のC方向から見た矢視図である。
【
図5】本発明に係る掘削機の閉状態を示す側面図であって、(a)は
図3のA方向から見た閉状態の矢視図、(b)は
図3のB方向から見た閉状態の矢視図、(c)は
図3のC方向から見た閉状態の矢視図である。
【
図6】本発明に係る掘削機の斜視図であって、(a)はシェルバケットが開位置にある状態、(b)はシェルバケットが中間位置にある状態、(c)はシェルバケットが閉位置にある状態を示している。
【
図7】
図1に示す掘削機による掘削状態を示す概略図であって、(a)は刃口部の土砂を突き崩す前の状態、(b)は刃口部の土砂を突き崩した後の状態、(c)は突き崩した土砂を集土した状態を示している。
【
図8】本発明に係る掘削機の変形例を示し、(a)は掘削機の平面図、(b)は掘削機の側面図である。
【
図9】従来の掘削機による掘削状態を示す概略図であって、(a)は刃口部の土砂を突き崩す前の状態、(b)は刃口部の土砂を突き崩した後の状態、(c)は突き崩した土砂を集土した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る掘削機の実施形態を、図面に基づいて詳述する。なお、下記の実施形態では、本発明を、圧入式オープンケーソン工法に適用したものを例示する。
【0026】
(掘削機の構成)
掘削機1は、
図1に示すように、地上に配置されたクローラクレーン21のジブ22に支持される第1ワイヤW1を介して鉛直方向に昇降可能に吊り下げられていて、地中に圧入・沈設される筒状のケーソン3の刃口部30の掘削に供する。具体的には、掘削機1は、
図2に示すように、第1ワイヤW1が接続され、クローラクレーン21のジブ22に吊り下げられる支持部4と、支持部4に複数の支持アーム5を介して支持され、ケーソン3の刃口部30の掘削に供するバケットシェル6と、を有する。
【0027】
支持部4は、
図2、
図3に示すように、平面視が概ね正六角形状をなす六角板状を呈し、上部中央位置に設けられた第1ワイヤ接続部41に、第1ワイヤW1が接続される。また、支持部4の側辺部42には、それぞれ支持アーム5が回動可能に接続される。さらに、支持部4には、第1ワイヤ接続部41と隣接する位置に、第2ワイヤW2が貫通する一対の第2ワイヤ貫通孔43が鉛直方向に沿って形成されている。
【0028】
複数の支持アーム5は、いずれも同一形状を有し、それぞれ軽量化のために中間部が肉抜きされた概ね矩形枠状に形成されている。そして、これら複数の支持アーム5は、それぞれ長手方向の一端部がリンクピン(図示外)を介して支持部4の側辺部42に相対回動可能に接続され、他端部がリンクピン(図示外)を介してバケットシェル6(後述する第1バケットシェル61、第2バケットシェル62及び第3バケットシェル63)の基端側の外側面に設けられた被支持部613,623,633に接続されている。
【0029】
バケットシェル6は、
図2、
図4、
図5等に示すように、基部60により接続される三対のバケットシェルである第1バケットシェル61、第2バケットシェル62及び第3バケットシェル63により構成される。換言すれば、第1バケットシェル61、第2バケットシェル62及び第3バケットシェル63は、それぞれ基部60の中心(吊り下げ中心Z)を挟んで対向する一対のバケットシェルによって構成される。そして、このバケットシェル6は、第1バケットシェル61、第2バケットシェル62及び第3バケットシェル63が協働して開閉することにより、後述するケーソン3の刃口部30の掘削、及び当該掘削後の揚土(排土)に供する。
【0030】
基部60は、
図2、
図3に示すように、平面視が概ね正六角形状をなす六角柱状を呈し、上部中央位置に設けられた第2ワイヤ接続部601にプーリ64が回転可能に支持されていて、このプーリ64に第2ワイヤW2が巻き掛けられている。このプーリ64に巻き掛けられた第2ワイヤW2は、一端が、支持部4に設けられた一対の第2ワイヤ貫通孔43,43のうち一方の第2ワイヤ貫通孔43を貫通し、地上に配置されたクローラクレーン21のジブ22に接続される一方、他端が、他方の第2ワイヤ貫通孔43を介して支持部4に固定されている。これにより、上記プーリ64に巻き掛けられた第2ワイヤW2の一端を巻き上げることにより基部60が上昇する一方、第2ワイヤW2の一端を巻き下げることにより基部60が下降するようになっている。また、基部60の側辺部602には、第1バケットシェル61、第2バケットシェル62及び第3バケットシェル63が開閉可能に接続されている。
【0031】
ここで、基部60の最下降位置は、後述する第1バケットシェル61、第2バケットシェル62及び第3バケットシェル63の各底壁部612,622,632とケーソン3の刃口部30とが概ね平行となるような位置に設定されていることが望ましい。かかる構成により、後述するケーソン3の刃口部30の突き崩しに際して、当該ケーソン3の刃口部30の土砂を第1刃部71、第2刃部72及び第3刃部73によって最も効率的に突き崩すことが可能となる。
【0032】
第1バケットシェル61、第2バケットシェル62及び第3バケットシェル63は、基部60の各側辺部602に吊り下げ中心Zを挟んで対向するように対をなして配置されていて、それぞれの基端部610,620,630がリンクピン(図示外)を介して基部60の側辺部602の下部に相対回動可能に接続されている。そして、第1バケットシェル61、第2バケットシェル62及び第3バケットシェル63は、それぞれ基部60との接続部に相当する基端部610,620,630を回動支点として互いに離間する開位置(
図6(a)参照)と接近する閉位置(
図6(c)参照)との間で開閉可能に設けられると共に、それぞれが協働して前記閉位置において内側に土砂を収容する収容空間を構成する。
【0033】
また、第1バケットシェル61、第2バケットシェル62及び第3バケットシェル63は、例えば
図5に示すように、前記閉位置で鉛直方向に延びる第1側壁部611、第2側壁部621及び第3側壁部631と、前記閉位置で概ね水平方向に延び、前記各側壁部611,621,631と共に前記収容空間を形成する第1底壁部612、第2底壁部622及び第3底壁部632と、を有する。第1側壁部611、第2側壁部621及び第3側壁部631は、
図3に示すように、前記閉位置で内側(奥行方向)に延びる一対の側面部611a,621a,631aと、これら両側面部611a,621a,631a同士を繋ぐ背面部611b,621b,631bと、で構成される。ここで、第1、第2、第3側壁部611,621,631と第1、第2、第3底壁部612,622,632とは、概ね直交するように形成されている。
【0034】
そして、かかる構成を有するバケットシェル6は、特に
図6に示すように、第2ワイヤW2を介して昇降可能に吊り下げられた基部60が鉛直方向に昇降することで、当該基部60の昇降移動に伴って基部60と第1バケットシェル61、第2バケットシェル62及び第3バケットシェル63とが連動可能に構成されている。具体的には、バケットシェル6は、
図6(a)に示すように、基部60が最も下降した状態で開位置となり、第1側壁部611、第2側壁部621及び第3側壁部631が外方へ向かって鉛直斜め上方に指向して、第1バケットシェル61、第2バケットシェル62及び第3バケットシェル63が最大に開口した状態となる(
図4参照)。そして、この状態から、
図6(b)に示すように、基部60の上昇に伴って第1バケットシェル61、第2バケットシェル62及び第3バケットシェル63が閉作動する。やがて、
図6(c)に示すように、基部60が最も上昇した状態で閉位置となり、第1側壁部611、第2側壁部621及び第3側壁部631がそれぞれ外側に向かって鉛直下方に指向し、第1バケットシェル61、第2バケットシェル62及び第3バケットシェル63が全閉となり、前記収容空間が閉塞された状態となる(
図5参照)。
【0035】
さらに、バケットシェル6は、前記閉位置において、それぞれ隣接する第1バケットシェル61、第2バケットシェル62及び第3バケットシェル63の両側面部611a,621a,631a同士が概ね隙間なく当接するように構成されている。これにより、隣接する第1バケットシェル61、第2バケットシェル62及び第3バケットシェル63の各側面部611a,621a,631aの間からの、前記収容空間に収容された土砂の脱落が抑制されている。
【0036】
また、第1底壁部612、第2底壁部622及び第3底壁部632の先端部には、
図4、
図5に示すように、ケーソン3の刃口部30の突き崩しに供する刃部である第1刃部71、第2刃部72及び第3刃部73が、底壁部612,622,632に沿って突設されている。これら第1刃部71、第2刃部72及び第3刃部73は、第1バケットシェル61、第2バケットシェル62及び第3バケットシェル63の開位置において鉛直下方へ向かって基部60の吊り下げ中心Zとの水平距離が徐々に拡大する概ね末広状となるように形成されている。また、第1刃部71、第2刃部72及び第3刃部73は、それぞれ第1底壁部612、第2底壁部622及び第3底壁部632の延出方向(長手方向)の断面において先端側に向かって厚さ幅が徐々に小さくなる先細り状であって、先端が鋭利状となるように形成されている。
【0037】
ここで、第1刃部71、第2刃部72及び第3刃部73を含め、第1底壁部612、第2底壁部622及び第3底壁部632は、
図5に示すように、それぞれ閉位置において鉛直方向に重なり合うように構成されていて、前記閉位置における前記収容空間に収容された土砂の脱落が抑制されている。具体的には、
図4、
図5に示すように、第1刃部71を含む第1底壁部612は、第2刃部72を含む第2底壁部622よりも内側で重なり合い、また、第2刃部72を含む第2底壁部622は、第3刃部73を含む第3底壁部632よりも内側で重なり合うように構成されている。
【0038】
また、第1底壁部612、第2底壁部622及び第3底壁部632は、
図4に示すように、外側に重なる底壁部ほど、第1側壁部611、第2側壁部621及び第3側壁部631(背面部611b,621b,631b)となす角度θ1,θ2,θ3が大きくなるように設定されている。具体的には、第2側壁部621(背面部621b)と第2底壁部622のなす角度θ2は、第1側壁部611(背面部611b)と第1底壁部612のなす角度θ1よりも大きくなるように設定されている。同様に、第3側壁部631(背面部631b)と第3底壁部632のなす角度θ3は、第2側壁部621(背面部621b)と第2底壁部622のなす角度θ2よりも大きくなるように設定されている。
【0039】
また、第1底壁部612、第2底壁部622及び第3底壁部632は、
図4に示すように、外側に重なる底壁部ほど、その長さL1,L2,L3が大きくなるように設定されている。具体的には、第2底壁部622の長さL2は、第1底壁部612の長さL1よりも長くなるように設定されている。同様に、第3底壁部632の長さL3は、第2底壁部622の長さL2よりも長くなるように設定されている。そして、かかる寸法関係から、第1刃部71、第2刃部72及び第3刃部73は、外側に重なる刃部ほど、吊り下げ中心Zまでの水平距離D1,D2,D3が大きくなるように設定されている。具体的には、第2刃部72から吊り下げ中心Zまでの水平距離D2は、第1刃部71から吊り下げ中心Zまでの水平距離D1よりも長くなるように設定されている。同様に、第3刃部73から吊り下げ中心Zまでの水平距離D3は、第2刃部72から吊り下げ中心Zまでの水平距離D2よりも長くなるように設定されている。
【0040】
また、第1底壁部612、第2底壁部622及び第3底壁部632には、
図3、
図4に示すように、互いに平行に延びる一対のリブであって横断面が概ね矩形状の第1リブ81、第2リブ82及び第3リブ83が、第1底壁部612、第2底壁部622及び第3底壁部632の延出方向(長手方向)のほぼ全域に亘って一体に設けられている。ここで、最も内側に重なる第1底壁部612には、当該第2底壁部612の内側面(閉位置における上側面)に第1リブ81が設けられている。一方、中間位置で重なる第2底壁部622、及び最も外側で重なる第3底壁部632には、それぞれ外側面(閉位置における下側面)に第2リブ82、第3リブ83が設けられている。なお、この第2、第3底壁部622,632の外側面に設けられる第2、第3リブ82,83については、第2、第3刃部72,73と連続するように一体に形成されている。
【0041】
(掘削機の掘削態様)
まず、
図7(a)に示すように、開位置の状態で、掘削機1をケーソン3の刃口部30の近傍まで下降させて、第1刃部71、第2刃部72又は第3刃部73のうちケーソン3の刃口部30に対向する刃部(本実施形態では第3刃部73)の先端部をケーソン3の刃口部30の土砂Sに当接させる。続いて、
図7(b)に示すように、第3刃部73により、ケーソン3の刃口部30の土砂を突き崩しつつ、第2ワイヤW2を引き込むことにより、
図7(c)に示すように、掘削機1のバケットシェル6を閉位置の状態に移行させ、第3刃部73により突き崩した土砂Sをそのままかき寄せて集土する。その後、第1ワイヤW1を引き上げることにより、集土した土砂Sを揚土(排土)する。
【0042】
(本実施形態の作用効果)
以下、本実施形態に係る掘削機1の特徴的な作用効果について具体的に説明する。
【0043】
図9に示すように、前記従来の掘削機11の場合、ケーソン3の刃口部30の突き崩しによって生じた土砂を集土及び揚土する機能を有していない。このため、前記従来の掘削機11によりケーソン3の刃口部30の土砂を突き崩す場合には、
図9(a)に示すように、ケーソン3の刃口部30と対向する掘削機11の刃部70をケーソン3の刃口部30の土砂に当接させて、
図9(b)に示すように、当該掘削機11の刃部70によってケーソン3の刃口部30の土砂を突き崩した後、
図9(c)に示すように、当該掘削機11を揚土可能なクラムシェルバケット12に置換したうえで、前記突き崩し後の土砂を集土及び揚土する必要がある。これにより、前記突き崩しから前記揚土までの作業が煩雑となってしまう点で改善の余地を残していた。
【0044】
これに対し、本実施形態では、バケットシェル(第1、第2、第3バケットシェル61,62,63)の外側先端部に、それぞれ開位置において鉛直下方へ向かって基部60の吊り下げ中心Zとの水平距離が徐々に拡大する概ね末広状の刃部(第1、第2、第3刃部71,72,73)が延設されている。このため、第1、第2、第3刃部71,72,73によりケーソン3の刃口部30の土砂を突き崩しつつ、この突き崩した土砂をそのままかき寄せて集土し、各バケットシェル61,62,63により揚土することができる。これにより、ケーソン3の刃口部30の土砂の突き崩しから揚土までの作業を掘削機1のみで一貫して対応することが可能となり、前記従来のように前記突き崩し作業と前記揚土作業の間に掘削機を交換する必要がなく、ケーソン3の刃口部30の土砂の突き崩しから揚土までの作業を効率化することができる。
【0045】
また、本実施形態では、第1側壁部611、第2側壁部621及び第3側壁部631と、第1底壁部612、第2底壁部622及び第3底壁部632とが概ね直交する構成となっている。これにより、開位置の状態における掘削機1の幅寸法(第1、第2、第3刃部71,72,73から吊り下げ中心Zまでの水平距離D1,D2,D3)の拡大を抑えつつ、ケーソン3の刃口部30の土砂の突き崩しを容易に行うことができる。また、各刃部71,72,73は、各底壁部612,622,632を延長するかたちで設けられていることで、前記突き崩し後の土砂を円滑に集土しつつ揚土することができる。
【0046】
また、本実施形態では、第1底壁部612よりも外側に位置する第2底壁部622と第2側壁部621のなす角度θ2が、内側に位置する第1底壁部612と第1側壁部611のなす角度θ1よりも相対的に大きく設定されている。このため、第1底壁部612と第2底壁部622とが干渉することなく適切に重なり合い、第1底壁部612と第2底壁部622とを密着させることが可能となる。これにより、前記突き崩し後の土砂を確実に効率よく集土しつつ揚土することができる。なお、第2底壁部622よりも外側に位置する第3底壁部632についても同様である。
【0047】
また、本実施形態では、第1底壁部612よりも外側に位置する第2底壁部622の長さL2が、内側に位置する第1底壁部612の長さL1よりも相対的に長く設定されている。このため、第1底壁部612と第2底壁部622とが適切に重なり合い、前記突き崩し後の土砂を確実に効率よく集土しつつ揚土することができる。なお、第2底壁部622よりも外側に位置する第3底壁部632についても同様である。
【0048】
また、本実施形態では、バケットシェル6の開閉が、第2ワイヤW2により行われる。このため、バケットシェル6を電動モータや油圧シリンダによって開閉する場合と比べて、掘削機1の構造が簡素化され、コストの低減化を図りつつ耐久性の向上を図ることができる。
【0049】
また、本実施形態では、三対のバケットシェル(第1、第2、第3バケットシェル61,62,63)が設けられている。このため、バケットシェルの数量が二対以下に設定された掘削機と比べて、各底壁部612,622,632に延設される各刃部(第1、第2、第3刃部71,72,73)の数量が増加することとなる。これにより、掘削機1の回転方向位置(位相)が変化しても各刃部(第1、第2、第3刃部71,72,73)のいずれかがケーソン3の刃口部30の土砂に当接し易くなり、当該刃口部30の土砂の良好な突き崩しに供する。
【0050】
また、本実施形態では、第1底壁部612、第2底壁部622及び第3底壁部632の延設方向に沿ってリブ(第1、第2、第3リブ81,82,83)が設けられている。このため、当該第1底壁部612、第2底壁部622及び第3底壁部632の剛性が向上し、比較的硬質な地盤であってもケーソン3の刃口部30の土砂の良好な突き崩しに供する。
【0051】
また、本実施形態では、第1底壁部612の内側に当該第1底壁部612の延設方向に沿って延びる第1リブ81が設けられると共に、第2底壁部622の外側に当該第2底壁部622の延設方向に沿って延びる第2リブ82が設けられている。このため、重なり合う第1底壁部612と第2底壁部622の間で第1リブ81と第2リブ82が干渉するおそれがなく、第1底壁部612と第2底壁部622とを密着させて重ね合わせることが可能となる。これにより、前記突き崩し後の土砂を確実に効率よく集土しつつ揚土することができる。
【0052】
(変形例)
本発明は、前記実施形態において例示した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適用対象の仕様等に応じて自由に変更することができる。
【0053】
特に、本発明に係る掘削機のバケットシェル及び刃部は、前記実施形態で例示した三対のバケットシェル(第1、第2、第3バケットシェル61,62,63)に設けた6つの刃部(第1、第2、第3刃部71,72,73)に限定されるものではなく、掘削機の仕様等に応じて任意に変更可能である。よって、本発明に係る掘削機のバケットシェル及び刃部については、例えば
図8に示すように、バケットシェルを、回転方向に90°間隔で配置した二対のバケットシェル(第1、第2バケットシェル61,62)で構成すると共に、刃部を、第1、第2底壁部612,622の先端から突設してなる4つの刃部(第1、第2刃部71,72)で構成してもよい。
【0054】
また、前記実施形態では、第1、第2、第3刃部71,72,73を、第1第1、第2、第3底壁部612,622,632の延設方向に沿って形成した態様を例示したが、本発明は当該態様に限定されるものではない。換言すれば、本発明は、第1、第2、第3刃部71,72,73が、第1、第2、第3バケットシェル61,62,63の開位置において鉛直下方へ向かって基部60の吊り下げ中心Zとの水平距離が徐々に拡大する概ね末広状となっていればよく、必ずしも第1、第2、第3底壁部612,622,632が上記末広状に形成されている必要はない。
【0055】
また、前記実施形態では、各バケットシェル61,62,63を概ね矩形状(いわゆる箱状)に構成した態様を例示したが、当該各バケットシェル61,62,63の形態についても、必ずしも各側壁部611,621,631と各底壁部612,622,632とが明確に区別される態様には限定されない。換言すれば、各バケットシェル61,62,63の形態は、例えば曲面状など、各側壁部611,621,631と各底壁部612,622,632の区別がない態様であってもよい。
【0056】
また、前記実施形態では、第2ワイヤW2を介してバケットシェル6の開閉を行うロープ式の態様を例示したが、当該バケットシェル6を開閉する動力源は、前記ロープ式に限られず、例えば、油圧シリンダによりバケットシェル6の開閉を行う油圧式や、電動モータによりバケットシェル6の開閉を行う電動式など、掘削機1の仕様等に応じていかなる動力源を採用してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…掘削機
21…クローラクレーン
22…ジブ
3…ケーソン
30…刃口部
4…支持部
5…支持アーム
6…バケットシェル
61…第1バケットシェル
62…第2バケットシェル
63…第3バケットシェル
611…第1側壁部
621…第2側壁部
631…第3側壁部
612…第1底壁部
622…第2底壁部
632…第3底壁部
71…第1刃部
72…第2刃部
73…第3刃部
81…第1リブ(リブ)
82…第2リブ(リブ)
83…第3リブ(リブ)
θ1…第1側壁部と第1底壁部のなす角度
θ2…第2側壁部と第2底壁部のなす角度
θ3…第3側壁部と第3底壁部のなす角度
L1…第1底壁部の長さ
L2…第2底壁部の長さ
L3…第3底壁部の長さ
W1…第1ワイヤ
W2…第2ワイヤ
Z…吊り下げ中心