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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083681
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】被覆めっき鋼板、及び塗装めっき鋼板
(51)【国際特許分類】
   C23C 28/00 20060101AFI20230609BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20230609BHJP
   B32B 15/18 20060101ALI20230609BHJP
   C09D 5/08 20060101ALI20230609BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20230609BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20230609BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230609BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
C23C28/00 A
B32B15/08
B32B15/18
C09D5/08
C09D201/00
C09D7/65
C09D7/63
C09D175/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197515
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】521426338
【氏名又は名称】パーカー サーフェス テクノロジー アジア パシフィック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モーラコット ワッタナチャイヤポン
(72)【発明者】
【氏名】シャンヤー ワットシャラナンタデージ
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
4K044
【Fターム(参考)】
4F100AB03
4F100AB03A
4F100AB10
4F100AB10B
4F100AB18
4F100AB18C
4F100AH03
4F100AH03C
4F100AK01
4F100AK01C
4F100AK51
4F100AK51C
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA14
4F100CA14C
4F100DD32
4F100DD32C
4F100DE01C
4F100DE04
4F100DE04C
4F100EH46
4F100EH61
4F100EH71
4F100EH71B
4F100GB32
4F100GB41
4F100JB16
4F100JB16C
4F100YY00C
4J038BA021
4J038CG171
4J038DA161
4J038DD022
4J038DG001
4J038EA011
4J038JB35
4J038KA05
4J038KA21
4J038MA06
4J038MA07
4J038MA09
4J038NA03
4J038PA18
4J038PA19
4J038PC02
4K044AA02
4K044BA10
4K044BA21
4K044BB03
4K044BB04
4K044BC02
4K044CA11
4K044CA16
4K044CA53
(57)【要約】
【課題】樹脂層に付いた傷を自己修復する機能が高い被覆めっき鋼板及び塗膜に付いた傷を自己修復する機能が高い塗装めっき鋼板を提供する。
【解決手段】鋼板と、めっき層と、樹脂層と、をこの順に備えた、被覆めっき鋼板であって、前記めっき層は、Znを含むめっき層であり、前記樹脂層は、被膜形成樹脂と、ポリカプロラクトン熱可塑性樹脂からなるカプセルの内部に水難溶性防錆剤を含有したポリカプロラクトンカプセルと、を含む、被覆めっき鋼板、により課題を解決する。また、当該被覆めっき鋼板の表面上に塗膜を有する塗装めっき鋼板により課題を解決する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板と、めっき層と、樹脂層と、をこの順に備えた、被覆めっき鋼板であって、
前記めっき層は、Znを含むめっき層であり、
前記樹脂層は、被膜形成樹脂と、ポリカプロラクトン熱可塑性樹脂からなるカプセルの内部に水難溶性防錆剤を含有したポリカプロラクトンカプセルと、を含む、被覆めっき鋼板。
【請求項2】
前記Znを含むめっき層は、溶融亜鉛めっき層、又はAl、Zn、及びMgを含む三元型めっき層である、請求項1の被覆めっき鋼板。
【請求項3】
前記防錆剤はアゾール系防錆剤を含む、請求項1又は2に記載の被覆めっき鋼板。
【請求項4】
前記防錆剤はベンゾトリアゾールを含む、請求項1又は2に記載の被覆めっき鋼板。
【請求項5】
前記ポリカプロラクトン熱可塑性樹脂の数平均分子量は、5,000以上100,000以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の被覆めっき鋼板。
【請求項6】
前記ポリカプロラクトンカプセルの平均粒子径が、0.5μm以上10.0μm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の被覆めっき鋼板。
【請求項7】
前記被膜形成樹脂はウレタン樹脂を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の被覆めっき鋼板。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の被覆めっき鋼板の表面上に塗膜を有する塗装めっき鋼板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆めっき鋼板に関し、詳細には自己修復性を有する樹脂層が設けられた、被覆めっき鋼板に関する。また、前記被覆めっき鋼板の表面上に塗膜が設けられた、塗装めっき鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
建材、自動車用の材料、家電製品用の材料等の用途に、溶融亜鉛めっき鋼板が古くから用いられており、また近年では、Al、Zn及びMgを有する三元型めっき層を有する鋼板、などが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、自動車ボディなどの表面を保護する保護層として、ハードコート処理を行った樹脂フィルムが用いられてきた。しかしながら、樹脂フィルム表面に一旦傷がついてしまうと、復元することは不可能であることから、樹脂フィルムに自己修復性を持たせる技術が検討されている。
【0004】
例えば特許文献2には、ポリカプロラクトン(以下、明細書中でPCLとも称する。)熱可塑性樹脂粒子が、ポリウレタン熱硬化性樹脂のマトリクス中に分散して存在することで、自己修復性を有するポリマーコーティングを形成できる、ことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-003896号公報
【特許文献2】米国特許第8987352号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら本発明者らが検討したところ、特許文献2に記載の技術では、自己修復力が十分ではない場合があることが判明した。本発明は、自己修復性に優れたコーティング層を有する被覆めっき鋼板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく検討を重ね、PCL熱可塑性樹脂からなるカプセルの内部に疎水性防錆剤を含有させることで、自己修復性に優れたコーティングを形成できことを見出し、当該PCLカプセルを樹脂層に含有させることで、本発明を完成させた。本発明は以下のものを含む。
【0008】
[1]鋼板と、めっき層と、樹脂層と、をこの順に備えた、被覆めっき鋼板であって、
前記めっき層は、Znを含むめっき層であり、
前記樹脂層は、被膜形成樹脂と、ポリカプロラクトン熱可塑性樹脂からなるカプセルの内部に水難溶性防錆剤を含有したポリカプロラクトンカプセルと、を含む、被覆めっき鋼板。
[2]前記Znを含むめっき層は、溶融亜鉛めっき層、又はAl、Zn、及びMgを含む三元型めっき層である、[1]の被覆めっき鋼板。
[3]前記防錆剤はアゾール系防錆剤を含む、[1]又は[2]に記載の被覆めっき鋼板。
[4]前記防錆剤はベンゾトリアゾールを含む、[1]又は[2]に記載の被覆めっき鋼板。
[5]前記ポリカプロラクトン熱可塑性樹脂の数平均分子量は、5,000以上100,000以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の被覆めっき鋼板。
[6]前記ポリカプロラクトンカプセルの平均粒子径が、0.5μm以上10.0μm以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の被覆めっき鋼板。
[7]前記被膜形成樹脂はウレタン樹脂を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の被覆めっき鋼板。
[8][1]~[6]のいずれかに記載の被覆めっき鋼板の表面上に塗膜を有する塗装めっき鋼板。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、自己修復する機能が高い樹脂層を有する被覆めっき鋼板及び塗装めっき鋼板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】PCLカプセル1を含む樹脂層を有する55%Al-Znめっき鋼板に、SST試験を行った後のコーティング表面の写真である(図面代用写真)。
図2】PCLカプセル2を含む樹脂層を有する55%Al-Znめっき鋼板に、SST試験を行った後のコーティング表面の写真である(図面代用写真)。
図3】PCLカプセル3を含む樹脂層を有する55%Al-Znめっき鋼板に、SST試験を行った後のコーティング表面の写真である(図面代用写真)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態を詳細に説明する。本明細書において、数値範囲を表す「X以上Y以下」や「X~Y」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0012】
本発明の一形態は、鋼板と、めっき層と、樹脂層と、をこの順に備えた被覆めっき鋼板であり、樹脂層に被膜形成樹脂とPCLカプセルとを含むことで、めっき層に付いた傷を自己修復する機能が高い被覆めっき鋼板を提供することができる。更に、上記被覆めっき鋼板上に塗膜を備えることで、めっき層に付いた傷を自己修復する機能が高い塗装めっき鋼板を提供することができる。
【0013】
<鋼板>
本形態における鋼板は、公知の鋼板が適宜用いられ、特に限定されることはない。
【0014】
<めっき層>
本形態におけるめっき層は、Znを含むめっき層である。Znを含むめっき層としては、溶融亜鉛めっき層、合金化溶融亜鉛めっき層、電気亜鉛めっき層、Al及びZnを含む二元型めっき層、Zn及びNiを含む二元型めっき層、Al、Zn、及びMgを含む三元型めっき層、などが挙げられる。このうち、溶融亜鉛めっき層、Al及びZnを含む二元型めっき層、及びAl、Zn、及びMgを含む三元型めっき層、から選択されることが、めっき層の自己修復性能の観点から、好ましい。
【0015】
溶融亜鉛めっきは、めっき層組成において、亜鉛の含有量が75質量%以上のものをいい、80質量%以上であってもよい。その他の成分としては、希土類に属する金属、アルカリ土類に属する金属、Si、Ni、Crなどが挙げられる。
Al及びZnを含む二元型めっき層は、これらの成分を含有するめっき層であればよく、これら2種の成分のみからなってもよく、その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、希土類に属する金属、アルカリ土類に属する金属、Si、Ni、Crなどが
挙げられる。
Al、Zn、及びMgを含む三元型めっき層は、これらの成分を含有するめっき層であればよく、これら3種の成分のみからなってもよく、その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、希土類に属する金属、アルカリ土類に属する金属、Si、Ni、Crなどが挙げられる。
【0016】
Al及びZnを含む二元型めっき層において、Alの含有量は通常5質量%以上75質量%以下であり、耐食性の観点からは、20質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
Al及びZnを含む二元型めっき層において、Znの含有量は、通常25質量%以上90質量以下であり、30質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
【0017】
Al、Zn、及びMgを含む三元型めっき層において、Alの含有量は通常1質量%以上75質量%以下であり、耐食性の観点からは、10質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
Al、Zn、及びMgを含む三元型めっき層において、Mgの含有量は通常0質量%より大きく6質量%以下であり、耐食性の観点からは、0.5質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
Al、Zn、及びMgを含む三元型めっき層において、Znの含有量は、めっき層における上記成分以外となり、特に限定されることはなく、通常20質量%以上99質量以下であり、30質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
【0018】
<樹脂層>
本形態における樹脂層は、被膜形成樹脂と、水難溶性防錆剤を含有したPLCカプセルと、を含み、樹脂層が水難溶性防錆剤を含有したPLCカプセルを含むことで、自己修復性に優れた樹脂層とすることができる。
被膜形成樹脂は、めっき鋼板の表面に被膜を形成することが可能な樹脂であれば特に限定されず、典型的には(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、フェノール樹脂などが用いられる。このうちウレタン樹脂を用いることが、耐食性の観点から好ましい。
また樹脂層は、被膜形成樹脂及びPLCカプセル以外に、ポリシロキサン化合物、ケイ酸塩、ジルコニウム化合物及びチタニウム化合物からなる群から選択される1種又は2種以上を更に含んでいてもよい。
【0019】
<PCLカプセル>
樹脂層に含まれるPCLカプセルは、PCL熱可塑性樹脂からなるカプセルの内部に防錆剤を含有する。PCLカプセルは、PCL熱可塑性樹脂がシェルとなり、その内部に防錆剤を含んだ粒子である。
【0020】
PCL熱可塑性樹脂は、ε-カプロラクトンの開環重合により得られる。PCL熱可塑性樹脂の数平均分子量は特に限定されないが、通常1,000以上、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上であり、また通常100,000以下であり、好ましくは80,000以下であり、より好ましくは60,000以下である。数平均分子量は、GPC(ゲル浸透カラムクロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレンで換算した値である。
PCLの数平均分子量が上記範囲であることで、PCLカプセルの強度が適切となり、気密性が高くなるため、内部防錆剤の薬液中への漏洩を防ぐことができ、好ましい。
【0021】
PCLカプセルの平均粒子径は特に限定されないが、通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上であり、また通常10μm以下、好ましくは8μm以下であり、より好ま
しくは5μm以下であり、特に好ましくは2μm以下である。なお、平均粒子径は、電子顕微鏡による観察において、任意に選択した20個以上の粒子の粒子径をそれぞれ測定し、その平均として算出できる。なお、球状でない粒子の場合、その長径を粒子径とする。
PCLカプセルの平均粒子径が上記範囲であることで、被膜中の傷部周辺でのPCLマイクロカプセル粒子の存在確率が高くなり、PCLマイクロカプセルによる自己修復力が発揮されやすくなるため、好ましい。
【0022】
PCLカプセルの内部に含有される防錆剤は特に限定されず、アミン系防錆剤、アゾール系防錆剤、亜硝酸系防錆剤、アンモニウム系防錆剤、などの水難溶性の防錆剤が挙げられる。なお、水難溶性とは25℃の100gの水に対して溶解井戸が2g以下のものをいう。
【0023】
水難溶性の防錆剤としては、溶解度が上記範囲である公知のものを用いることができるが、アゾール系防錆剤が好ましい。アゾール系防錆剤としては、例えば、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、セレナゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、テトラゾール、1,2,3,4-チアトリアゾール等のアゾール類;これらの誘導体;これらのアミン塩;これらの金属塩などが挙げられる。このうち、ベンゾトリアゾール(BTA)がより好ましい。
【0024】
PCLカプセル中に含有される防錆剤の量は特に限定されないが、通常1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、また通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
【0025】
PCLカプセル中には、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の物質を含有してもよい。他の物質としては、界面活性剤、酸化防止剤、消泡剤などがあげられる。
【0026】
PCLカプセルの製造方法は、公知の方法により製造することができる。具体的には、以下の方法を挙げることができる。
PCLと防錆剤とを有機溶剤中に溶解させたPCL溶液と、樹脂を溶解した樹脂水溶液と、を準備する。PCL溶液と樹脂水溶液とを混合し、撹拌した後、有機溶剤を除去することで、PLCカプセル水分散物を得ることができる。PLCカプセル水分散物は被膜形成樹脂又は塗膜形成樹脂に配合することで、被膜形成樹脂組成物又は塗膜形成樹脂組成物とすることができる。
【0027】
有機溶剤は、PCLを溶解させることができれば特に限定されず、ケトン系有機溶剤、エーテル系有機溶剤、炭化水素系有機溶剤などが挙げられ、典型的にはジクロロメタンが用いられる。
樹脂も特に限定されず、ウレア樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられ、典型的にはPVAが用いられる。PVAを用いる場合、その重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、通常10,000以上であり、50,000以上であることが好ましく、また通常300,000以下であり、150,000以下であることが好ましい。
PCL溶液と樹脂水溶液とを撹拌する際の温度は特に限定されないが、常温(25℃)であることが好ましい。
【0028】
樹脂層中のPCLカプセルの含有量は、被膜形成樹脂100質量部に対し通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上であり、また通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である
【0029】
<被覆めっき鋼板の製造方法>
本形態の被覆めっき鋼板は、鋼板にめっき処理を行うことでめっき層を形成し、更にめっき層の上に樹脂層を形成することで製造できる。
【0030】
鋼板をめっき処理する方法としては、例えば鋼板を溶融めっき浴に浸漬して引き上げ、乾燥させる方法が挙げられる。また、蒸着によりめっき処理を行ってもよく、電着によりめっき処理を行ってもよい。
【0031】
めっき層上に樹脂層を形成する前に、めっき層の表面に対し、脱脂処理や酸洗処理を行ってもよく、また各処理の後に水洗を行ってもよく、水洗の後に乾燥を行ってもよい。
また、脱脂処理や酸洗処理を行った後に、化成処理を行ってもよく、脱脂処理や酸洗処理を行わず化成処理を行ってもよい。化成処理の種類は特に限定されず、クロメート化成処理、リン酸亜鉛化成処理工程、ビスマス置換めっき工程、リン鉄化成処理工程、ジルコニウム化成処理工程、チタン化成処理工程、ハフニウム化成処理工程、などを1種、又は2種以上を行うことができる。
【0032】
樹脂層は、樹脂層形成用組成物を調製し、該組成物によりめっき鋼板を処理することで形成できる。該組成物によるめっき鋼板の処理は、ロールコート法、スプレー法、浸漬法、電解法、エアーナイフ法、など公知の処理方法により、該組成物をめっき鋼板表面又は表面上に塗布する。塗布後、硬化させることで、樹脂層を得ることができる。硬化の方法は特段限定されず、公知の方法を用いることができ、使用する樹脂に適した方法で硬化すればよい。
該樹脂層形成用組成物の調製は、水系の被膜形成樹脂を用いる場合、純水に水系被膜形成樹脂及びPCLカプセルを加え、水中で分散させることで行うことができる。該組成物中には、無機顔料、架橋剤、界面活性剤など、必要に応じてその他の成分を含有させてもよい。
【0033】
更に、上記被覆めっき鋼板の表面上に、塗膜を形成してもよい。塗膜を形成する塗料としては、例えば油性塗料、各種樹脂塗料、錆止めペイント、防汚塗料、粉体塗料、電着塗料、水系塗料、溶剤塗料などの公知の塗料が挙げられる。
塗料を用いて被覆めっき鋼板を処理することで塗膜を形成することができる。塗料による被覆めっき鋼板の処理は、転がし塗り、電着塗装(例えば、カチオン電着塗装、アニオン電着塗装等)、スプレー塗装、ホットスプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電(粉体)塗装、ローラーコーティング、カーテンフローコーティング、ハケ塗り、バーコーティング、流動浸漬法等の公知の処理方法により、塗料を被覆めっき鋼板の表面上に塗布する。塗料による被覆めっき鋼板の処理は、同一又は異なる各種塗料を用いて、1の処理を行ってもよく、2以上の処理を行ってもよい。
塗膜の厚さは特に限定されず、通常10μm~100μmの範囲内であるが、これに限られない。
【0034】
塗布後、乾燥させることで、塗膜を得ることができる。乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、減圧乾燥、対流型熱乾燥(例えば、自然対流型熱乾燥、強制対流型熱乾燥)、輻射型乾燥(例えば、近赤外線乾燥、遠赤外線乾燥)、紫外線硬化乾燥、電子線硬化乾燥、ベーポキュア、焼付乾燥等の乾燥方法が挙げられる。なお、これらの乾燥方法は、1つ実施してもよいし、2以上を組み合わせて実施してもよい。
【実施例0035】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により
、その範囲が限定されるものではない。
【0036】
<めっき鋼板>
めっき鋼板としては、55%Al-Znめっき鋼板を準備した。
【0037】
<PCLカプセル1の調製>
PCL熱可塑性樹脂(数平均分子量45,000)とBTA(Merck社製)とを用い、以下の手順でPCLカプセルを準備した。
PCL5g、BTA0.5gを、ジクロロメタン15g中に投入し、PCL及びBTAをジクロロメタン中に溶解させた。
次に、PVA(Mw:85,000~120,000)1gを水50gに加えて溶解させた水溶液を、上記ジクロロメタン中に投入し、常温で1時間撹拌した。
その後、50℃に加熱してジクロロメタンを除去し、BTAを約9質量%内包した、粒子径1.0~5.0μmであるPCLカプセル1の水分散物を得た。
【0038】
<PCLカプセル2の調製>
PCL熱可塑性樹脂(数平均分子量10,000)とBTAとを用い、PCLカプセル1と同様の手順で、BTAを1.6質量%内包した、粒子径0.8~2.0μmであるPCLカプセル2の水分散物を得た。
【0039】
<PCLカプセル3の調製>
BTAを用いなかったこと以外は、PCLカプセル1と同様の手順でPCLカプセル3の水分散物を得た。
【0040】
<樹脂層形成用組成物の調製、及び被覆めっき鋼板の調製>
PCLカプセル1~3を、ウレタン樹脂(ハイドランHW-350 DIC社製)100質量部(固形分質量)に対し5質量部配合した水系樹脂層形成用組成物に、55%Al-Znめっき鋼板(被覆めっき鋼板1~3)を浸漬し、引き上げた後乾燥させることで、それぞれ被覆めっき鋼板1~3を得た。
【0041】
得られた被覆めっき鋼板1~3に対し、塩水噴霧試験法(JIS-Z-2371:2015)に基づき、中性塩水噴霧を120時間行った後、被覆めっき鋼板表面に発生した白錆を、顕微鏡により観察した。被覆めっき鋼板1~3に係る結果を図1~3に示す。
【0042】
<塗装めっき鋼板の調製>
上記被覆めっき鋼板1~3を、塗料(Vニット#500、大日本塗料株式会社製)をバーコーティングにて乾燥膜厚が20μmとなるように塗布し、PMT(素材最高到達温度)220℃にて焼き付けた。それぞれ塗装めっき鋼板1~3を得た。
【0043】
得られた塗装めっき鋼板に対し、塩水噴霧試験法(JIS-Z-2371:2015)に基づき、中性塩水噴霧を240時間行った後、鋼板のクロスカット部からの塗膜錆幅(片側最大錆幅)を測定した。結果を表1に示す。
なお、評価基準は、以下のとおりとする。
A:0.1mm未満
B:0.1mm以上0.3mm未満
C:0.3mm以上
【0044】
【表1】
【0045】
実施例の結果より、Znを含むめっきを有するめっき鋼板に、PCLカプセルを含む樹脂層を設けることで、塗膜に付いた傷を自己修復する機能が高い塗装めっき鋼板を提供できることができる。Znを含むめっきとしては、Al及びZnを含むめっきのみならず、Zn及びNiを含む二元型めっき層、Al、Zn、及びMgを含む三元型めっき層、などであっても同様に、塗膜に付いた傷を自己修復する機能が高い塗装めっき鋼板となることは、当業者であれば、当然に理解することができる。
図1
図2
図3