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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083682
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】歩行促進装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/04 20060101AFI20230609BHJP
【FI】
A61H3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197516
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100177644
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 和樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 英一
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA24
4C046AA47
4C046BB08
4C046CC01
4C046DD08
4C046DD14
4C046DD16
4C046DD26
4C046DD33
4C046EE17
4C046EE25
(57)【要約】
【課題】両腕を交互に振りながら歩行することができる歩行促進装置を提供する。
【解決手段】
歩行促進装置1は、使用者90よりも前方に配置され、使用者90の歩行を促す。歩行促進装置1は、左右方向に離間して配置され、走行面GLに沿って転動する一対の車輪10と、一対の車輪10の間に設けられ、一対の車輪10を支持する連動機構部11と、連動機構部11から上方に延設され、使用者90が把持して連動機構部11との接続部分を中心として前後方向に交互に揺動させる一対のポール部12と、連動機構部11から後下側に向かって延設され、走行面GLに接触する補助部13と、を備え、連動機構部11は、一対のポール部12を交互に揺動させる動作を、一対の車輪10を交互に前転させる動作に変換する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者よりも前方に配置され、前記使用者の歩行を促す歩行促進装置であって、
左右方向に離間して配置され、走行面に沿って転動する一対の車輪と、
一対の前記車輪の間に設けられ、一対の前記車輪を支持する連動機構部と、
前記連動機構部から上方に延設され、前記使用者が把持して前記連動機構部との接続部分を中心として前後方向に交互に揺動させる一対のポール部と、
前記連動機構部から後下側に向かって延設され、前記走行面に接触する補助部と、を備え、
前記連動機構部は、一対の前記ポール部を交互に揺動させる動作を、一対の前記車輪を交互に前転させる動作に変換することを特徴とする歩行促進装置。
【請求項2】
前記連動機構部は、
前記補助部を支持する固定部と、
前記固定部と一対の前記車輪との間に架け渡されるように左右方向に延設され、前記固定部に軸周りに回転可能に支持され、一対の前記ポール部の下端部が固定されている一対の車軸部と、
一対の前記車軸部と一対の前記車輪との間に介設され、前記ポール部および前記車軸部の前方への回動を前記車輪に伝達し、前記ポール部および前記車軸部の後方への回動を前記車輪に伝達しない一対の回転規制部と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の歩行促進装置。
【請求項3】
前記連動機構部は、
前記補助部を支持する固定部と、
前記固定部から左右方向の外側に向かって延設され、前記固定部に軸周りに回転可能に支持され、一対の前記ポール部の下端部が固定されている一対の伝達軸部と、
前記固定部と一対の前記車輪との間に架け渡されるように左右方向に延設され、前記固定部に軸周りに回転可能に支持されている一対の車軸部と、
一対の前記伝達軸部と一対の前記車軸部との間に介設され、一対の前記伝達軸部の回転速度を変速して一対の前記車軸部に伝達する一対の変速部と、
一対の前記車軸部と一対の前記車輪との間に介設され、前記ポール部の前後いずれか一方への回動に伴う前記車軸部の前方への回動を前記車輪に伝達し、前記ポール部の前後いずれか他方への回動に伴う前記車軸部の後方への回動を前記車輪に伝達しない一対の回転規制部と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の歩行促進装置。
【請求項4】
前記固定部は、一方の前記車軸部または一方の前記伝達軸部と、他方の前記車軸部または他方の前記伝達軸部と、の回転方向を互いに逆向きにする反転伝達部を有していることを特徴とする請求項2または3に記載の歩行促進装置。
【請求項5】
前記連動機構部は、
前記補助部を支持する固定部と、
前記固定部と一対の前記車輪との間に架け渡されるように左右方向に延設され、前記固定部に軸周りに回転可能に支持され、一対の前記ポール部の下端部が接続されている一対の車軸部と、
一対の前記車軸部と一対の前記ポール部との間に介設され、前記ポール部の前方への回動を前記車軸部および前記車輪に伝達し、前記ポール部の後方への回動を前記車軸部および前記車輪に伝達しない一対の回転規制部と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の歩行促進装置。
【請求項6】
前記連動機構部は、
前記補助部を支持する固定部と、
前記固定部から左右方向の外側に向かって延設され、前記固定部に軸周りに回転可能に支持され、一対の前記ポール部の下端部が接続されている一対の伝達軸部と、
前記固定部と一対の前記車輪との間に架け渡されるように左右方向に延設され、前記固定部に軸周りに回転可能に支持されている一対の車軸部と、
一対の前記伝達軸部と一対の前記車軸部との間に介設され、一対の前記伝達軸部の回転速度を変速して一対の前記車軸部に伝達する一対の変速部と、
一対の前記伝達軸部と一対の前記ポール部との間に介設され、前記ポール部の前後いずれか一方への回動を前記伝達軸部に伝達して前記車軸部および前記車輪を前方へ回動させ、前記ポール部の前後いずれか他方への回動を前記伝達軸部に伝達しない一対の回転規制部と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の歩行促進装置。
【請求項7】
前記補助部は、
前記連動機構部から後下側に向かって延設されている補助アームと、
前記補助アームの下端部に回転可能に支持され、前記走行面に沿って転動する補助輪と、
前記補助輪の上方に離間して配置され、一対の前記ポール部を後方に回動させることで前記補助輪に押し付けられるブレーキパッドと、を有していることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の歩行促進装置。
【請求項8】
一対の前記車輪の上部を互いに内側に倒されたキャンバー角、または一対の前記車輪の前部を互いに内側に傾けたトー角が設定されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の歩行促進装置。
【請求項9】
一対の前記ポール部の揺動回数を計測して表示するカウンタを更に備えていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の歩行促進装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の歩行を促す歩行促進装置に関する。
【背景技術】
【0002】
使用者がグリップを把持し、使用者の脇を走行させる歩行支援装置が知られている(特許文献1)。歩行支援装置では、基部フレームの前後に2つの前輪と1つの後輪とが取り付けられ、基部フレーム2の前部には1本の操作フレームが立設されている。
操作フレームの上部には使用者が把持するグリップが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-190030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、人は両腕を交互に大きく振りながら歩行することで、歩行中における左右方向の揺れを抑制することができる。つまり、両腕の振りを大きくすることで人の歩行は安定する(体幹安定性が向上する)。
【0005】
しかしながら、上記した歩行支援装置を使用する使用者は、片手でグリップを把持し続け、歩行支援装置を押し出す(または引き摺る)ようにして走行させながら歩行しなければならなかった。このため、使用者は、両腕を振って歩行することができなかった。したがって、上記した歩行支援装置を使用したとしても、安定した歩行に必要な体の動かし方やバランス感覚が改善されることがなく、使用者の運動機能が回復する可能性は低かった。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮し、両腕を交互に振りながら歩行することができる歩行促進装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、使用者よりも前方に配置され、前記使用者の歩行を促す歩行促進装置であって、左右方向に離間して配置され、走行面に沿って転動する一対の車輪と、一対の前記車輪の間に設けられ、一対の前記車輪を支持する連動機構部と、前記連動機構部から上方に延設され、前記使用者が把持して前記連動機構部との接続部分を中心として前後方向に交互に揺動させる一対のポール部と、前記連動機構部から後下側に向かって延設され、前記走行面に接触する補助部と、を備え、前記連動機構部は、一対の前記ポール部を交互に揺動させる動作を、一対の前記車輪を交互に前転させる動作に変換する。
【0008】
この場合、前記連動機構部は、前記補助部を支持する固定部と、前記固定部と一対の前記車輪との間に架け渡されるように左右方向に延設され、前記固定部に軸周りに回転可能に支持され、一対の前記ポール部の下端部が固定されている一対の車軸部と、一対の前記車軸部と一対の前記車輪との間に介設され、前記ポール部および前記車軸部の前方への回動を前記車輪に伝達し、前記ポール部および前記車軸部の後方への回動を前記車輪に伝達しない一対の回転規制部と、を有してもよい。
【0009】
この場合、前記連動機構部は、前記補助部を支持する固定部と、前記固定部から左右方向の外側に向かって延設され、前記固定部に軸周りに回転可能に支持され、一対の前記ポール部の下端部が固定されている一対の伝達軸部と、前記固定部と一対の前記車輪との間に架け渡されるように左右方向に延設され、前記固定部に軸周りに回転可能に支持されている一対の車軸部と、一対の前記伝達軸部と一対の前記車軸部との間に介設され、一対の前記伝達軸部の回転速度を変速して一対の前記車軸部に伝達する一対の変速部と、一対の前記車軸部と一対の前記車輪との間に介設され、前記ポール部の前後いずれか一方への回動に伴う前記車軸部の前方への回動を前記車輪に伝達し、前記ポール部の前後いずれか他方への回動に伴う前記車軸部の後方への回動を前記車輪に伝達しない一対の回転規制部と、を有してもよい。
【0010】
この場合、前記固定部は、一方の前記車軸部または一方の前記伝達軸部と、他方の前記車軸部または他方の前記伝達軸部と、の回転方向を互いに逆向きにする反転伝達部を有してもよい。
【0011】
この場合、前記連動機構部は、前記補助部を支持する固定部と、前記固定部と一対の前記車輪との間に架け渡されるように左右方向に延設され、前記固定部に軸周りに回転可能に支持され、一対の前記ポール部の下端部が接続されている一対の車軸部と、一対の前記車軸部と一対の前記ポール部との間に介設され、前記ポール部の前方への回動を前記車軸部および前記車輪に伝達し、前記ポール部の後方への回動を前記車軸部および前記車輪に伝達しない一対の回転規制部と、を有しもよい。
【0012】
この場合、前記連動機構部は、前記補助部を支持する固定部と、前記固定部から左右方向の外側に向かって延設され、前記固定部に軸周りに回転可能に支持され、一対の前記ポール部の下端部が接続されている一対の伝達軸部と、前記固定部と一対の前記車輪との間に架け渡されるように左右方向に延設され、前記固定部に軸周りに回転可能に支持されている一対の車軸部と、一対の前記伝達軸部と一対の前記車軸部との間に介設され、一対の前記伝達軸部の回転速度を変速して一対の前記車軸部に伝達する一対の変速部と、一対の前記伝達軸部と一対の前記ポール部との間に介設され、前記ポール部の前後いずれか一方への回動を前記伝達軸部に伝達して前記車軸部および前記車輪を前方へ回動させ、前記ポール部の前後いずれか他方への回動を前記伝達軸部に伝達しない一対の回転規制部と、を有してもよい。
【0013】
この場合、前記補助部は、前記連動機構部から後下側に向かって延設されている補助アームと、前記補助アームの下端部に回転可能に支持され、前記走行面に沿って転動する補助輪と、前記補助輪の上方に離間して配置され、一対の前記ポール部を後方に回動させることで前記補助輪に押し付けられるブレーキパッドと、を有してもよい。
【0014】
この場合、一対の前記車輪の上部を互いに内側に倒されたキャンバー角、または一対の前記車輪の前部を互いに内側に傾けたトー角が設定されてもよい。
【0015】
この場合、一対の前記ポール部の揺動回数を計測して表示するカウンタを更に備えてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、両腕を交互に振りながら歩行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る歩行促進装置および使用者を示す側面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る歩行促進装置を示す背面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る歩行促進装置を示す平面図である。
図4図3のIV-IV断面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る歩行促進装置の使用方法を説明する側面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る歩行促進装置の使用方法を説明する背面図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る歩行促進装置の使用方法を説明する側面図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る歩行促進装置の使用方法を説明する背面図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る歩行促進装置を示す平面図である。
図10】本発明の第3実施形態に係る歩行促進装置を示す背面図である。
図11】本発明の第4実施形態に係る歩行促進装置を示す背面図である。
図12】本発明の第1実施形態の第1変形例に係る歩行促進装置を示す平面図である。
図13】本発明の第1実施形態の第2変形例に係る歩行促進装置を示す背面図である。
図14】本発明の第1実施形態の第3変形例に係る歩行促進装置を示す背面図である。
図15】本発明の第1実施形態の第4変形例に係る歩行促進装置を示す平面図である。
図16】本発明の第1実施形態の第5変形例に係る歩行促進装置を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、図面に示すFr、Rr、L、R、U、Dは、前、後、左、右、上、下を示している。本明細書では方向や位置を示す用語を用いるが、それらの用語は説明の便宜のために用いるものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、本明細書で用いる方向や位置は、使用者から見た方向や位置としている。
【0019】
[第1実施形態:歩行促進装置]
図1ないし図4を参照して、第1実施形態に係る歩行促進装置1について説明する。図1は歩行促進装置1および使用者90を示す側面図である。図2は歩行促進装置1を示す背面図である。図3は歩行促進装置1を示す平面図である。図4は、図3のIV-IV断面図である。
【0020】
図1に示すように、歩行促進装置1は、使用者90よりも前方に配置され、使用者90の歩行を促すものである。具体的には、歩行促進装置1は、例えば、高齢者等の脚力が衰えた者や下肢(脚92)等に障害をもつ者(使用者90)が歩行訓練を行うために使用される。また、健常者がレクリエーションとして歩行促進装置1を使用することもできる。なお、歩行促進装置1は、屋内または屋外で使用することができる。
【0021】
図1ないし図3に示すように、歩行促進装置1は、一対の車輪10と、連動機構部11と、一対のポール部12と、補助部13と、を備えている。なお、一対の車輪10および一対のポール部12は、それぞれ、左右対称となる構造であるため、以下の説明では、主に1つの部材について説明する。
【0022】
<車輪>
一対の車輪10は、左右方向に離間した位置で前後方向に転動するように略垂直に立設し、互いに略平行に配置されている。一対の車輪10の間隔は、例えば、正面から見て使用者90が一対の車輪10の間に収まる程度とされている。車輪10は、円筒状に形成されたハブ14と、ハブ14の外側で円環状を成すリム(図示せず)に嵌め込まれたタイヤ15と、を含んでいる。なお、図示は省略するが、ハブ14とリムの間には複数のスポークが架設されている。また、例えば、ハブ14、リムおよびスポークは金属製であり、タイヤ15は合成ゴム製である。
【0023】
ハブ14は、正面から見て、タイヤ15よりも左右方向に幅広く、タイヤ15よりも内側に突き出している。タイヤ15は、ハブ14と同心円状に形成され、走行面GLに接地する。車輪10は、ハブ14の軸心周りに回転し、走行面GLに沿って転動する。
【0024】
<連動機構部>
連動機構部11は、一対の車輪10の間に設けられ、一対の車輪10を支持している。連動機構部11は、固定部20と、一対の車軸部21と、一対の回転規制部22と、を有している。固定部20、車軸部21および回転規制部22は、主に金属材料で形成されている。なお、一対の車軸部21および一対の回転規制部22は、それぞれ、左右対称となる構造であるため、以下の説明では、主に1つの部材について説明する。
【0025】
(固定部)
固定部20は、中空となる略円柱状に形成され、一対の車輪10の間の略中央に配置されている。固定部20の後下側面には、後述する補助部13が支持されている。固定部20の左右両端面には、後述する一対の車軸部21を回転可能に支持する軸受け(図示せず)が設けられている。
【0026】
(反転伝達部)
図2および図3に示すように、固定部20の内部には、一対の第1ベベルギヤ24と第2ベベルギヤ25とを有する反転伝達部23が設けられている。一対の第1ベベルギヤ24は、一対の車軸部21の内側端部に固定されている。第2ベベルギヤ25は、固定部20の天面から下方に延びた支軸25Aに回転可能に支持され、一対の第1ベベルギヤ24に噛み合っている。3つのベベルギヤ24,25は、一方の車軸部21の回転方向を逆転させて他方の車軸部21に伝達する。つまり、反転伝達部23は、一方の車軸部21と他方の車軸部21との回転方向を互いに逆向きにする。
【0027】
(車軸部)
車軸部21は、左右方向に細長い円筒状に形成されている。一対の車軸部21は、固定部20と一対の車輪10との間に架け渡されるように左右方向に延設されている。車軸部21(の内側端部)は、固定部20(の軸受け部)に軸周りに回転可能に支持されている。車軸部21の外側端部には、車輪10のハブ14が回転可能に支持されている。
【0028】
(回転規制部)
図2および図3に示すように、一対の回転規制部22は、一対の車軸部21と一対の車輪10との間に介設されている。図4に示すように、回転規制部22は、内歯車26と爪部27とを有するフリーホイール機構である。内歯車26は、車輪10のハブ14の内部に嵌め込まれ、車輪10(ハブ14)と一体となって同一軸まわりに回転する。内歯車26は、内側に図4で時計回りに傾いた複数の歯を有している。爪部27は、板バネ等の弾性体28を介して車軸部21の外側端部に接続されている。爪部27は、弾性体28に付勢されて内歯車26の歯に噛み合っている。爪部27は、弾性体28を圧縮しながら前方(図4で反時計回り)に回転する内歯車26の歯を乗り越えることができ、内歯車26(車輪10)の前方への回転(前転)を許容する。また、爪部27は、後方(図4で時計回り)に回転しようとする内歯車26の歯に食い込み、内歯車26(車輪10)の後方への回転(後転)を規制する。車軸部21に着目して換言すると、回転規制部22は、車軸部21の前方への回動(前転)を車輪10に伝達し、車軸部21の後方への回動(後転)を車輪10に伝達しない。
【0029】
<ポール部>
図1ないし図3に示すように、一対のポール部12は、上下方向に細長い円筒状に形成され、連動機構部11(一対の車軸部21)から上向(上斜め後方)に延設されている。一対のポール部12は左右方向に離間して配置され、一対のポール部12の間隔は例えば、使用者90の肩幅程度とされている。ポール部12の下端部には円環状のホルダー16が固定され、ポール部12の下端部はホルダー16を介して車軸部21に固定されている。ポール部12の上部には、使用者90が把持するグリップ17(例えば合成樹脂製)が固定されている。使用者90は、一対のグリップ17を把持し、一対のポール部12を車軸部21(連動機構部11との接続部分)を中心として前後方向に交互に揺動させる。なお、ポール部12は、例えば、複数に分割された部位を入れ子式として長さを変更可能に構成されてもよい(図示せず)。
【0030】
<補助部>
補助部13は、連動機構部11(固定部20)から後下側に向かって延設され、走行面GLに接触している。補助部13は、補助アーム30と、補助輪31と、ブレーキパッド32と、を有している。
【0031】
補助アーム30は、細長い円筒状に形成され、固定部20から後下側に向かって延設されている。補助アーム30の先端部(下端部)には、ハウジング33が固定されている。補助輪31は、車輪10よりも十分に小径とされ、ハウジング33の内側に配置されている。補助輪31は、支軸31Aを介してハウジング33に回転可能に支持され、走行面GLに沿って転動する。支軸31Aはハウジング33に上下方向に移動可能に支持され、バネ等によって下方に付勢されている(図示せず)。ブレーキパッド32は、ハウジング33の天面に固定され、補助輪31の上方に離間して配置されている。使用者90が一対のポール部12を後方に回動させる(手前に引き倒す)と、バネ等の付勢力に抗してハウジング33が下方に移動し、ブレーキパッド32が補助輪31に押し付けられる。これにより、補助輪31の回転が規制される。
【0032】
[歩行促進装置の使用方法]
図5ないし図8を参照して、歩行促進装置1の使用方法(歩行訓練)について説明する。図5および図7は歩行促進装置1の使用方法を説明する側面図である。図6および図8は歩行促進装置1の使用方法を説明する背面図である。
【0033】
なお、使用者90は、歩行促進装置1の後方で、一対の車輪10の間に立ち、両手で一対のポール部12のグリップ17を把持しているものとする(図1参照)。また、歩行促進装置1の初期状態として、一対のポール部12は、走行面GLに対して略同じ傾斜角度で使用者90に把持されている(図1参照)。また、本明細書では、左右対称となる一対の部材について、左方に位置する部材には符号「L」を追加し、右方に位置する部材には符号「R」を追加し、左右両方に共通する説明では符号に算用数字のみを付している。また、使用者90の左側の腕91を左腕91Lと呼び、右側の腕91を右腕91Rと呼ぶこととする。これと同様に、使用者90の左側の脚92を左脚92Lと、右側の脚92を右脚92Rと呼ぶこととする。
【0034】
例えば、図5および図6に示すように、使用者90は、右腕91Rを後方(手前)に引いてポール部12Rを後方に回動させ、左腕91Lを前方へ押し出してポール部12Lを前方に回動させる。また、使用者90は、右腕91Rを後方に引くことに連動して、右脚92Rを前方に踏み出す。
【0035】
上記のように一対のポール部12を互いに逆方向に振り動かすと、図6に示すように、車軸部21Lはポール部12Lと共に前方へ回動し、車軸部21Rはポール部12Rと共に後方へ回動する。左方の回転規制部22Lは、ポール部12Lおよび車軸部21Lの前方への回動を左方の車輪10Lに伝達する。つまり、車輪10Lは、車軸部21Lと一体となって前転する。右方の回転規制部22Rは、ポール部12Rおよび車軸部21Rの後方への回動を右方の車輪10Rに伝達しない。つまり、車軸部21R(ポール部12R)は、車輪10Rに対して後方へ空転し、車輪10Rを回転させない。
【0036】
また、反転伝達部23は、右方の車軸部21Rの後方への回動を、左方の車軸部21Lの前方への回動に変換する。つまり、右方の車軸部21Rの後方へのモーメントが、前方へのモーメントに変換されて左方の車軸部21Lに伝達される。これにより、左方の車軸部21Lを前転させるトルクが概ね2倍に増幅される。
【0037】
以上のように、ポール部12Rを後方に引き、ポール部12Lを前方に押し出すと、押し出したポール部12L側の車輪10Lのみに駆動力(前転する力)が作用し、歩行促進装置1全体を前進させる。なお、右方の車輪10Rには駆動力が作用しないが、左方の車輪10Lが走行面GL上を前転することによって、歩行促進装置1全体が前進するため、右方の車輪10Rおよび補助輪31も走行面GL上を前転する。
【0038】
次に、図7および図8に示すように、使用者90は、左腕91Lを後方に引いてポール部12Lを後方に回動させ、右腕91Rを前方へ押し出してポール部12Rを前方に回動させる。また、使用者90は、左腕91Lを後方に引くことに連動して、左脚92Lを前方に踏み出す。
【0039】
上記のように一対のポール部12を互いに逆方向に振り動かすと、図8に示すように、車軸部21Lはポール部12Lと共に後方へ回動し、車軸部21Rはポール部12Rと共に前方へ回動する。右方の回転規制部22Rは、車軸部21R等の前転を右方の車輪10Rに伝達し、車輪10Rを前転させる。左方の回転規制部22Lは、車軸部21L等を空転させ、車軸部21L等の後転を左方の車輪10Lに伝達せず、車輪10Rを回転させない。
【0040】
また、反転伝達部23は、左方の車軸部21Lの後方への回動を、右方の車軸部21Rの前方への回動に変換し、右方の車軸部21Rを前転させるトルクを概ね2倍に増幅する。
【0041】
以上のように、ポール部12Lを後方に引き、ポール部12Rを前方に押し出すと、押し出したポール部12R側の車輪10Rのみに駆動力が作用し、歩行促進装置1全体を前進させる。
【0042】
以降、使用者90は、両腕91で一対のポール部12を交互に揺動させながら、両脚92を交互に踏み出して前進する。このように、使用者90は、一対のポール部12を交互に揺動させる結果、両腕91を交互に振りながら歩行することになる。なお、歩行を停止する場合、使用者90は、両腕91で一対のポール部12を後方に引く。すると、補助部13のハウジング33が下方に移動し、ブレーキパッド32が補助輪31に押し付けられ、補助輪31の回転を規制する。これにより、走行面GL上を転動する補助輪31が停止し、歩行促進装置1に制動力が作用する。
【0043】
以上説明した第1実施形態に係る歩行促進装置1では、使用者90によって把持されて前後方向に交互に揺動される一対のポール部12が設けられ、連動機構部11が、一対のポール部12を交互に揺動させる動作を、一対の車輪10を交互に前転させる動作に変換する構成とした。この構成によれば、使用者90は一対のポール部12(グリップ17)を把持した両腕91を交互に振りながら歩行することができる。これにより、使用者90は安定して歩行することができる(体幹安定性を向上させることができる)。また、使用者90の腕91の振りに連動して車輪10が前転するため、使用者90は、歩行促進装置1の移動について意識することなく、歩行に集中することができる。これにより、安定した歩行に必要な体の動かし方やバランス感覚を養うことができ、使用者90の運動機能の回復を期待することができる。
【0044】
また、第1実施形態に係る歩行促進装置1では、反転伝達部23が一方の車軸部21と他方の車軸部21との回転方向を互いに逆向きにする構成とした。この構成によれば、例えば、使用者90が右方のポール部12R(車軸部21R)を空転方向(後方)に回動させる力によって、左方の車軸部21L(車輪10L)を前転させることができる。これにより、左方のポール部12Lのみを前方に回動させた場合に比べて、左方の車軸部21L(車輪10L)を前転させるトルクを倍増させることができる。他の考え方として、1つのポール部12を回動させる力を約半分にすることができるため、使用者90は小さな力で大きく腕91を振りながら歩行することが可能になる。また、歩行促進装置1によれば、反転伝達部23によって左右一対のポール部12が連動するため、使用者90対し、タイミング良く左右一対のポール部12の押し引きを促すことができる。これにより、使用者90は意識せずとも、タイミング良く左右の腕91を振りながら歩行することができ、安定した歩行に必要な体の動かし方やバランス感覚を養うことができる。
【0045】
また、第1実施形態に係る歩行促進装置1によれば、補助輪31が走行面GL上を転がるため、走行面GLとの摩擦による抵抗を減少させることができ、円滑に歩行することができる。また、使用者90は一対のポール部12を後方に引くことでブレーキパッド32を補助輪31に押し付け、補助輪31の転動を規制することができる。これにより、使用者90は安全に歩行を停止することができる。
【0046】
[第2実施形態]
次に、図9を参照して、第2実施形態に係る歩行促進装置2について説明する。図9は歩行促進装置2を示す平面図である。なお、以下の説明では、上記した第1実施形態に係る歩行促進装置1と同一または対応する構成には同一の符号を付し、同様の説明は省略する。
【0047】
第1実施形態に係る歩行促進装置1では、ポール部12が車輪10から延びた車軸部21に固定されているため、ポール部12と車軸部21(車輪10)との回転角度が同一となっていた。このため、一度のポール部12の操作あたりに歩行促進装置1が前進する距離が限定され、例えば、大柄で歩幅が大きな使用者90にとっては歩行し難いことがあった。そこで、第2実施形態に係る歩行促進装置2では、一度のポール部12の回動操作あたりに歩行促進装置1が前進する距離を増加させる機構を備えている。
【0048】
歩行促進装置2の連動機構部41は、固定部20と、一対の伝達軸部42と、一対の車軸部21と、一対の変速部43と、一対の回転規制部22と、を有している。なお、一対の伝達軸部42および一対の変速部43は、左右対称となる構造であるため、以下の説明では、主に1つの部材について説明する。
【0049】
(固定部、車軸部、回転規制部)
固定部20は、反転伝達部23を内設した固定本体部20Aと、固定本体部20Aの前面から略U字状に屈曲するように延びた一対の車軸支持部20Bと、を有している。車軸部21は、固定部20の車軸支持部20Bと車輪10との間に架け渡されるように左右方向に延設されている。車軸部21(の内側端部)は、車軸支持部20Bを貫通し、車軸支持部20Bに軸周りに回転可能に支持されている。回転規制部22は、車軸部21と車輪10との間に介設されている。
【0050】
(伝達軸部)
伝達軸部42は、例えば金属材料で左右方向に細長い円筒状に形成されている。一対の伝達軸部42は、一対の車軸部21よりも後方で、一対の車軸部21と略平行に配置されている。一対の伝達軸部42は、固定部20の固定本体部20Aから左右方向の外側に向かって延設されている。伝達軸部42(の内側端部)は、固定本体部20A(の軸受け部)に軸周りに回転可能に支持されている。伝達軸部42の内側端部には、反転伝達部23の第1ベベルギヤ24が固定されている。反転伝達部23は、一方の伝達軸部42と他方の伝達軸部42との回転方向を互いに逆向きにする。一対の伝達軸部42には、ホルダー16を介して一対のポール部12の下端部が固定されている。
【0051】
(変速部)
一対の変速部43は、一対の伝達軸部42と一対の車軸部21との間に介設されている。具体的には、変速部43は、車軸部21に固定された第1ギヤ44と、伝達軸部42に固定された第2ギヤ45と、を有している。第1ギヤ44および第2ギヤ45は、互いに噛み合う平歯車である。第2ギヤ45は、U字状の車軸支持部20Bの内側に配置されており、第1ギヤ44よりも小径で歯数が少なくなっている。このため、変速部43は、伝達軸部42の回転速度を増速して車軸部21に伝達する。これにより、車軸部21の回転角度が、伝達軸部42(ポール部12)の回転角度よりも増加する。なお、変速部43は2つのギヤ44,45で構成されているため、伝達軸部42と車軸部21との回転方向は互いに逆向きになる。
【0052】
[歩行促進装置の使用方法]
歩行促進装置2の基本的な操作方法(使用方法)は、第1実施形態に係る歩行促進装置1と同様であるが、歩行促進装置2では、押し出したポール部12側の車輪10が駆動されず、後方に引いたポール部12側の車輪10のみが駆動される。
【0053】
例えば、使用者90がポール部12Rを後方に回動させ、ポール部12Lを前方に回動させた場合、伝達軸部42Rはポール部12Rと共に後方へ回動し、車軸部21Rは変速部43Rによって増速された回転力を受けて前方へ回動する。回転規制部22Rは車軸部21Rの前方への回動を車輪10Rに伝達し、車輪10Rは車軸部21Rと一体となって前転する。一方、伝達軸部42Lはポール部12Lと共に前方へ回動し、車軸部21Lは変速部43Lによって増速された回転力を受けて後方へ回動する。回転規制部22Lは、車輪10Lに対して車軸部21Lを空転させ、車輪10Lに回動(駆動力)を伝達しない。また、反転伝達部23は、伝達軸部42Lの前方への回動を、車軸部21Rの後方への回動に変換し、伝達軸部42Rを前転させるトルクを概ね2倍に増幅する。
【0054】
以上のように、ポール部12Rを後方に引き、ポール部12Lを前方に押し出すと、後方に引いたポール部12R側の車輪10Rのみに駆動力が作用し、歩行促進装置2全体を前進させる。以降、使用者90は、両腕91で一対のポール部12を交互に揺動させながら、両脚92を交互に踏み出して前進する。
【0055】
以上説明した第2実施形態に係る歩行促進装置2では、変速部43が伝達軸部42の回転速度を増速して車軸部21に伝達する構成とした。この構成によれば、ポール部12の回動量(回動角度)を変えずに、ポール部12の1回の回動操作あたりの車輪10の回転数、つまり、歩行促進装置2の移動距離を増加させることができる。これにより、例えば、歩幅が大きな使用者90の歩行に対応することができる。
【0056】
なお、第2実施形態に係る歩行促進装置2では、変速部43が伝達軸部42の回転速度を増速していたが、本発明はこれに限定されない。変速部43は、伝達軸部42の回転速度を変速して車軸部21に伝達することができればよく、増速とは逆に、減速するように各ギヤ44,45の歯数等を設定してもよい(図示せず)。変速部43を減速設定とすることで、ポール部12の1回の回動動作あたりの歩行促進装置2の移動距離を減少させることができ、例えば、歩幅が小さな使用者90に対応することができる。また、小さな力(トルク)でポール部12を揺動させることができるため、腕91の力が弱い使用者90であっても歩行促進装置2を使用することができる。なお、各ギヤ44,45の減速比(増速または減速)は、使用者90の体格や好み合わせて自由に設定変更することができる。
【0057】
また、第2実施形態に係る歩行促進装置2では、変速部43が2つのギヤ44,45で構成されていたが、これに限らず、3つ以上の歯車で構成されてもよい(図示せず)。例えば、中間歯車が第1ギヤ44と第2ギヤ45との間に介設され(図示せず)、第1実施形態に係る歩行促進装置1と同様に、後方に引いたポール部12側の車輪10が駆動されず、押し出したポール部12側の車輪10のみが駆動される構成としてもよい。また、他にも、変速部43は、2つのギヤ44,45に代えて、軸周りに回転する2つのプーリーと、2つのプーリーに架け渡されたベルトと、で構成されてもよい(図示せず)。
【0058】
また、第2実施形態に係る歩行促進装置2では、車軸部21(車軸支持部20B)が伝達軸部42(固定本体部20A)の前方に配置されていたが、本発明はこれに限定されない。車軸部21(車軸支持部20B)は、伝達軸部42(固定本体部20A)の後方に配置されてもよいし、上方または下方に配置されてもよい(図示せず)。
【0059】
なお、第1~第2実施形態に係る歩行促進装置1~2では、使用者90が両腕91を積極的に振ることができることを想定していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、一方の腕91が不自由な使用者90の場合、一方の腕91を一方のポール部12に添えるだけとし(回動力を与えない)、他方の腕91で他方のポール部12のみを揺動させてもよい。この場合、1つの車軸部21を前転させるトルクは、倍増されず、他方のポール部12を回動させるトルクに比例する。
【0060】
[第3実施形態]
次に、図10を参照して、第3実施形態に係る歩行促進装置3について説明する。図10は歩行促進装置3を示す背面図である。なお、以下の説明では、上記した第1~第2実施形態に係る歩行促進装置1~2と同一または対応する構成には同一の符号を付し、同様の説明は省略する。
【0061】
上記した第1~第2実施形態に係る歩行促進装置1~2では、回転規制部22が、ポール部12の前後いずれか一方への回動に伴う車軸部21の前方への回動を車輪10に伝達し、ポール部12の前後いずれか他方への回動に伴う車軸部21の後方への回動を車輪10に伝達しない構成とした。これに対し、第3実施形態に係る歩行促進装置3では、反転伝達部23が省略され、一対の車軸部21が互いに独立して回転するように固定部20に支持されている点で、第1~第2実施形態に係る歩行促進装置1~2と相違する。
【0062】
[歩行促進装置の使用方法]
歩行促進装置3の基本的な操作方法(使用方法)は、第1実施形態に係る歩行促進装置1と同様であるが、歩行促進装置3では、ポール部12を後方に引く力が車輪10(車軸部21)を回転させる力とならず、ポール部12を押し出す力のみが車輪10(車軸部21)を回転させる。
【0063】
例えば、使用者90がポール部12Rを後方に回動させ、ポール部12Lを前方に回動させた場合、車軸部21Rはポール部12Rと共に後方へ回動し、回転規制部22Rは車輪10Rに対して車軸部21Rを空転させ、車輪10Rに駆動力を伝達しない。一方、車軸部21Lはポール部12Lと共に前方へ回動し、回転規制部22Lは車軸部21Lの前方への回動を車輪10Lに伝達し、車輪10Lは車軸部21Lと一体となって前転する。
【0064】
以上のように、ポール部12Rを後方に引き、ポール部12Lを前方に押し出すと、前方へ押し出したポール部12L側の車輪10Rのみに駆動力が作用し、歩行促進装置3全体を前進させる。以降、使用者90は、両腕91で一対のポール部12を交互に揺動させながら、両脚92を交互に踏み出して前進する。
【0065】
以上説明した第3実施形態に係る歩行促進装置3によれば、反転伝達部23が省略されているため、固定部20は補助部13および車軸部21を支持する単純な構造になり、製造コストを低減することができる。また、使用者90が一対のポール部12を把持した両腕91を交互に振りながら歩行することができ、体幹安定性を向上させることができる等、第1実施形態に係る歩行促進装置1と同様の効果を得ることができる。また、反転伝達部23が省略されることで、一対のポール部12が互いに独立して回動するため、使用者90は、一方のポール部12を動かし、他方のポール部12を固定した状態で歩行することもできる。これにより、使用者90の左右の腕91(上肢)に能力差がある場合等、他方の腕91の動きが充分でなくとも、一方の腕91の動きを活用することで、歩行に必要な体の動かし方やバランス感覚を養うことができる。なお、図示は省略するが、上記した第2実施形態に係る歩行促進装置2において反転伝達部23が省略されてもよい。
【0066】
[第4実施形態]
次に、図11を参照して、第4実施形態に係る歩行促進装置4について説明する。図11は歩行促進装置4を示す背面図である。なお、以下の説明では、上記した第3実施形態に係る歩行促進装置3と同一または対応する構成には同一の符号を付し、同様の説明は省略する。
【0067】
第4実施形態に係る歩行促進装置4では、反転伝達部23が省略され、ポール部12が回転規制部22を介して車軸部21に接続されている点で、第3実施形態に係る歩行促進装置3と相違する。
【0068】
車軸部21の外側端部は、車輪10の軸心(ハブ14)に固定されている。回転規制部22は、車軸部21とポール部12との間に介設されている。回転規制部22の内歯車26は、ポール部12のホルダー16の内部に嵌め込まれ、ホルダー16と一体となって同一軸まわりに回動する。爪部27は、弾性体28に付勢されて内歯車26の歯に噛み合うように車軸部21に接続されている。一対の回転規制部22は、ポール部12の前方への回動を車軸部21および車輪10に伝達し、ポール部12の後方への回動を車軸部21および車輪10に伝達しない。
【0069】
[歩行促進装置の使用方法]
歩行促進装置4の基本的な操作方法(使用方法)は、第3実施形態に係る歩行促進装置3と同様である。
【0070】
例えば、使用者90がポール部12Rを後方に回動させ、ポール部12Lを前方に回動させた場合、回転規制部22Rは車軸部21Rに対してポール部12Rを空転させ、車軸部21R(車輪10R)に駆動力を伝達しない。一方、回転規制部22Lはポール部12Lの前方への回動を車軸部21Lに伝達し、車輪10Lは車軸部21Lと一体となって前転する。
【0071】
以上のように、ポール部12Rを後方に引き、ポール部12Lを前方に押し出すと、前方へ押し出したポール部12L側の車輪10Rのみに駆動力が作用し、歩行促進装置4全体を前進させる。以降、使用者90は、両腕91で一対のポール部12を交互に揺動させながら、両脚92を交互に踏み出して前進する。
【0072】
以上説明した第4実施形態に係る歩行促進装置4によれば、使用者90が一対のポール部12を把持した両腕91を交互に振りながら歩行することができ、体幹安定性を向上させることができる等、第1実施形態に係る歩行促進装置1と同様の効果を得ることができる。なお、図示は省略するが、上記した第2実施形態に係る歩行促進装置2において反転伝達部23が省略され、回転規制部22が伝達軸部42とポール部12との間に介設され、ポール部12が回転規制部22を介して伝達軸部42に接続されてもよい。この場合、回転規制部22は、ポール部12の前後いずれか一方への回動を伝達軸部42に伝達して車軸部21および車輪10を前方へ回動させ、ポール部12の前後いずれか他方への回動を伝達軸部42に伝達しない。また、変速部43は、伝達軸部42と車軸部21との回転方向を一致させるように構成される。
【0073】
[その他の変形例]
次に、図12ないし図16を参照して、第1~第4実施形態に係る歩行促進装置1~4の各種の変形例について説明する。図12は第1変形例に係る歩行促進装置1を示す平面図である。図13は第2変形例に係る歩行促進装置1を示す背面図である。図14は第3変形例に係る歩行促進装置1を示す背面図である。図15は第4変形例に係る歩行促進装置1を示す平面図である。図16は第5変形例に係る歩行促進装置1を示す背面図である。なお、図12ないし図16では、各種の変形例の特徴が第1実施形態に係る歩行促進装置1に適用された場合を示しているが、これに限らず、各種の変形例(第1変形例を除く)の特徴が第2~第4実施形態に係る歩行促進装置2~4に適用されてもよい。また、各種の変形例が互いに組み合わされてもよい。
【0074】
<第1変形例>
第1~第2実施形態に係る歩行促進装置1~2では、反転伝達部23が3つのベベルギヤ24,25で構成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図12に示すように、反転伝達部23が、前後方向に並んだ一対の平歯車50で構成されてもよい(第1変形例)。一対の平歯車50は、一対の車軸部21の内側端部に固定されている。この場合、一対の車輪10は、互いに前後方向にずれた位置に配置される。なお、この反転伝達部23が第2実施形態に係る歩行促進装置2に適用されてもよい(図示せず)。
【0075】
<第2変形例>
第1~第4実施形態に係る歩行促進装置1~4では、補助部13が補助輪31やブレーキパッド32等を有していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図13に示すように、補助輪31やブレーキパッド32等が省略され、補助部13は補助アーム30のみで構成されてもよい(第2変形例)。この場合、補助アーム30の先端部(下端部)が走行面GLに接触し、歩行促進装置1は補助アーム30の先端部を引きずりながら前進する。補助アーム30の先端部は、走行面GLとの摩擦を低減するために、半球状に丸められることが好ましい。また、一対のポール部12を後方に引くことで補助アーム30の先端部が走行面GLに押し付けられ、歩行促進装置1は停止する。
【0076】
<第3変形例>
第1~第4実施形態に係る歩行促進装置1~4では、一対の車輪10が略垂直に立設されていたが(キャンバー角α=0度)、本発明はこれに限定されない。例えば、図14に示すように、一対の車輪10の上部を互いに内側に倒されたキャンバー角αが設定されてもよい(第3変形例)。このように、一対の車輪10のキャンバー角αを所謂ネガティブキャンバーとすることで、歩行促進装置1の横揺れや旋回時の転倒等を抑制することができる。なお、必要であれば、一対の車輪10のキャンバー角αを所謂ポジティブキャンバーとしてもよい(図示せず)。
【0077】
<第4変形例>
第1~第4実施形態に係る歩行促進装置1~4では、一対の車輪10が互いに略平行に配置されていたが(トー角β=0度)、本発明はこれに限定されない。例えば、図15に示すように、一対の車輪10の前部を互いに内側に傾けたトー角βが設定されてもよい(第4変形例)。このように、一対の車輪10のトー角βを所謂トーインとすることで、歩行促進装置1の直進安定性を向上させることができる。なお、必要であれば、一対の車輪10のトー角βを所謂トーアウトとしてもよい(図示せず)。
【0078】
<第5変形例>
第5変形例に係る歩行促進装置1として、一対のポール部12の揺動回数を計測して表示するカウンタ51を備えてもよい。例えば、図16に示すように、カウンタ51(の表示部)は、固定部20の上面に固定されている。カウンタ51は、例えば、第2ベベルギヤ25が往復回動する毎にポール部12の揺動回数、つまり使用者90が腕91を振った回数を示す数字をカウントアップする。このように、カウンタ51を設けることで、使用者90は腕91を振った回数を認識することができ、歩行訓練のモチベーションの維持または向上を図ることができる。
【0079】
なお、第1~第4実施形態(各種の変形例を含む。)に係る歩行促進装置1~4では、回転規制部22が、所謂フリーホイール機構であったが、これに限らず、カムクラッチ等のワンウェイクラッチであってもよい(図示せず)。
【0080】
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係る歩行促進装置における一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明は技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよく、特許請求の範囲は技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様を含んでいる。
【符号の説明】
【0081】
1,2,3,4 歩行促進装置
10 車輪
11,41 連動機構部
12 ポール部
13 補助部
20 固定部
21 車軸部
22 回転規制部
23 反転伝達部
30 補助アーム
31 補助輪
32 ブレーキパッド
42 伝達軸部
43 変速部
51 カウンタ
90 使用者
GL 走行面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16