(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083702
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】軽石の処理方法、及び軽石の投棄方法
(51)【国際特許分類】
B09B 1/00 20060101AFI20230609BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20230609BHJP
【FI】
B09B1/00 H
B63B35/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197541
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】500372717
【氏名又は名称】学校法人福岡工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】久保 裕也
(72)【発明者】
【氏名】下條 光浩
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA50
4D004BB01
4D004CA50
4D004CB50
(57)【要約】
【課題】低コストかつ簡易な方法により、水面に浮遊する軽石の浮遊性を喪失させて海洋投棄することが可能な軽石の処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】軽石Fを処理室2に投入した状態で、真空ポンプ3により処理室2を大気圧よりも低い第1の圧力まで減圧することで、軽石Fの空隙内の空気が外部に放出される。その後、処理室2を第1の圧力よりも高い第2の圧力まで復圧すると、軽石Fの空隙に水が浸入して軽石Fの見かけ上の比重が水よりも大きくなる。見かけ上の比重が大きくなった軽石Fを船舶で外洋まで運搬し、所定の領海範囲に海洋投棄する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧装置が接続された処理室に多孔質体からなる軽石を投入する工程と、
前記処理室に貯留された貯留水の水面上に前記軽石が浮遊している状態で前記減圧装置を駆動して、前記処理室を大気圧よりも低い第1の圧力まで減圧する工程と、
前記第1の圧力まで減圧する工程の後に、前記処理室に大気を投入して前記第1の圧力よりも高い第2の圧力まで復圧する工程と、を備える
軽石の処理方法。
【請求項2】
減圧装置が接続された空虚空間からなる処理室に多孔質体からなる軽石を投入する工程と、
前記処理室内に前記軽石が堆積した状態で前記減圧装置を駆動して、前記処理室を大気圧よりも低い第1の圧力まで減圧する工程と、
前記第1の圧力まで減圧する工程の後に、前記処理室に大気を含む所定量の水を投入して前記第1の圧力よりも高い第2の圧力まで復圧する工程と、を備える
軽石の処理方法。
【請求項3】
前記処理室を前記第1の圧力よりも高い第2の圧力まで復圧する工程は、
前記第1の圧力まで減圧する工程の後に、前記減圧装置の駆動を停止する工程を有する
請求項1または請求項2に記載の軽石の処理方法。
【請求項4】
減圧装置が接続された処理室に多孔質体からなる軽石を投入する工程と、
前記処理室に貯留された貯留水の水面上に前記軽石が浮遊している状態で前記減圧装置を駆動して、前記処理室を大気圧よりも低い第1の圧力まで減圧する工程と、
前記第1の圧力まで減圧する工程の後に、前記処理室に大気を投入して前記第1の圧力よりも高い第2の圧力まで復圧する工程と、
前記処理室の前記軽石を船舶により海洋に運搬して海洋投棄する工程と、を備える
軽石の投棄方法。
【請求項5】
減圧装置が接続された空虚空間からなる処理室に多孔質体からなる軽石を投入する工程と、
前記処理室に前記軽石が堆積した状態で前記減圧装置を駆動して、前記処理室を大気圧よりも低い第1の圧力まで減圧する工程と、
前記第1の圧力まで減圧する工程の後に、前記処理室に大気を含む所定量の水を投入して前記第1の圧力よりも高い第2の圧力まで復圧する工程と、
前記処理室の前記軽石を船舶により海洋に運搬して海洋投棄する工程と、を備える
軽石の投棄方法。
【請求項6】
前記処理室内の前記軽石を海洋に投棄する工程は、
前記船舶を所定の領海域内で航行させ、前記軽石の投棄場所を順次変えながら投棄する工程を有する
請求項4または請求項5に記載の軽石の投棄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽石の処理方法、及び軽石の投棄方法に関する。詳しくは、低コストかつ簡易な方法により、水面に浮遊する軽石の浮遊性を喪失させて海洋投棄することができる軽石の処理方法、及び軽石の投棄方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
我が国は世界でも有数の火山国として知られており、陸上だけでなく海底にも多くの火山が存在する。海底火山の場合、周囲に存在する多量の海水によって高い水圧がかかることから、陸上にある火山に比べ噴火の規模が小さくなる。しかし、深海ではなく浅い海底で噴火する場合は、海水の圧力が少ないことから、陸上の火山と同様の規模の噴火を引き起こすことがある。
【0003】
火山から放出される火山噴出物にはさまざまなものがあり、主として気体で放出される火山ガス、液体で放出される溶岩、或いは固体で放出される火山砕せつ物がある。このうち火山砕せつ物の代表的なものとしては、火山岩塊、火山礫、火山灰、及び軽石などがある。
【0004】
火山砕せつ物のなかでも軽石は、水や二酸化炭素、火山ガスを含んだ溶岩が急速に冷却・減圧された結果、溶岩に溶解していた水や二酸化炭素などが炭酸飲料のように気泡として発生した状態で固化することで、多数の空隙が形成された多孔質体である。そのため軽石は、見かけ上の比重が水より軽いものも多く、空隙に海水が浸入して比重が重くなるまで海底に沈まないという特性がある。
【0005】
近年では、小笠原諸島の海底火山噴火の影響により、南西諸島、或いは太平洋側の沿岸地域を中心に大量の軽石が海岸周辺に漂着して大きな問題になっている。これら軽石を除去するために、例えば非特許文献1に示すように、堆積土砂を吸い上げるポンプを重機に取り付けて海面の軽石を吸引する試みが行われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「軽石ポンプ吸引して除去実験 効果は? 1分間で6万立方メートル吸い上げ」、[online]、2021年11月16日、沖縄タイムス+プラス、[2021年12月3日検索]、インターネット〈URL:https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/864004〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、軽石は次々に外洋から漂着するとともに、回収した膨大な量の軽石の活用法や埋立処分法も決まっていないのが現状である。一方で漂流する軽石を放置することは、船舶を利用する海上交通や漁業に大きな影響を与えていることから、早急な対応が求められている。
【0008】
軽石の現実的な用途はセメントや砂であるが、海底火山から噴出し海面を浮遊する軽石は海水を含んでいるため、NaClを十分に除去しないと鉄骨の腐食や塩害を引き起こす原因となる。また、陸上への埋立処分についても検討されているが、埋立処分のための土地の確保を含め膨大なコストを要するとともに、国土の狭い我が国においては埋立処分地の残余年数にも限界があり、軽石の陸上処理は必ずしも合理的な方策ではない。
【0009】
そのため、回収後の軽石の処理コストを考慮すると、海洋投棄が最も効率的と考えられるが、前記したように軽石は見かけ上の比重が水よりも軽いため海洋投棄も容易なことではない。一方で、海面を浮遊する軽石同士の接触により空隙が破壊され、軽石の空隙に水が浸入することで、いずれは海底に沈むと考えられる。しかしながら、空隙内に海水が浸入するまでには1~2年程度を要するため、長期の間、海面に浮遊する軽石をそのまま放置することは現実的ではない。
【0010】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、低コストかつ簡易な方法により、水面に浮遊する軽石の浮遊性を喪失させて海洋投棄することができる軽石の処理方法、及び軽石の投棄方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するために、本発明の軽石の処理方法は、減圧装置が接続された処理室に多孔質体からなる軽石を投入する工程と、前記処理室に貯留された貯留水の水面上に前記軽石が浮遊している状態で前記減圧装置を駆動して、前記処理室を大気圧よりも低い第1の圧力まで減圧する工程と、前記第1の圧力まで減圧する工程の後に、前記処理室に大気を投入して前記第1の圧力よりも高い第2の圧力まで復圧する工程とを備える。
【0012】
ここで、減圧装置が接続された処理室に多孔質体からなる軽石を投入する工程を備えることにより、軽石を処理するための事前準備が完了する。
【0013】
また、処理室に貯留された貯留水の水面上に軽石が浮遊している状態で減圧装置を駆動して、処理室を大気圧よりも低い第1の圧力まで減圧する工程を備えることにより、処理室を減圧することで軽石の空隙内の気体が外部に放出されやすくなる。
【0014】
また、第1の圧力まで減圧する工程の後に、処理室に大気を投入して第1の圧力よりも高い第2の圧力まで復圧する工程を備えることにより、気体が放出された軽石の空隙内に貯留水が浸入しやすくなる。このとき、軽石の見かけ上の比重が貯留水の比重に対して大きくなるため軽石の浮遊性が喪失され、貯留水の水面に浮遊する軽石は貯留水内へと沈降させることができる。そして、貯留水に沈降した軽石はそのまま海洋投棄することで、軽石を海底まで沈降させることができる。
【0015】
前記の目的を達成するために、本発明の軽石の処理方法は、減圧装置が接続された空虚空間からなる処理室に多孔質体からなる軽石を投入する工程と、前記処理室内に前記軽石が堆積した状態で前記減圧装置を駆動して、前記処理室を大気圧よりも低い第1の圧力まで減圧する工程と、前記第1の圧力まで減圧する工程の後に、前記処理室に大気を含む所定量の水を投入して前記第1の圧力よりも高い第2の圧力まで復圧する工程とを備える。
【0016】
ここで、減圧装置が接続された空虚空間からなる処理室に多孔質体からなる軽石を投入する工程を備えることにより、軽石を処理するための事前準備が完了する。
【0017】
また、減圧装置を駆動して、処理室を大気圧よりも低い第1の圧力まで減圧する工程を備えることにより、処理室を減圧することで軽石の空隙内の気体が外部に放出されやすくなる。このとき、処理室内には軽石のみが存在するため、軽石の空隙内の空気が全方位的に放出される。従って、処理室内に貯留された水面上を浮遊する軽石に比べて、より効果的に軽石の空隙内部の空気を外部へと放出させることができる。
【0018】
また、第1の圧力まで減圧する工程の後に、処理室に大気を含む所定量の水を投入して第1の圧力よりも高い第2の圧力まで復圧する工程を備えることにより、気体が放出された軽石の空隙内に投入された水が浸入しやすくなる。このとき、軽石の見かけ上の比重が投入された水の比重に対して大きくなるため軽石の浮遊性が喪失し、処理室内に貯留された貯留水の水面から貯留水内へと沈降させることができる。そして、貯留水に沈降した軽石はそのまま海洋投棄することで、軽石を海底まで沈降させることができる。
【0019】
また、処理室を第1の圧力よりも高い第2の圧力まで復圧する工程は、第1の圧力まで減圧する工程の後に、減圧装置の駆動を停止する工程を有する場合には、減圧されている処理室内の気圧を直ちに第1の圧力よりも高い第2の圧力まで復圧し、軽石を速やかに貯留水内へと沈降させることができる。
【0020】
前記の目的を達成するために、本発明の軽石の投棄方法は、減圧装置が接続された処理室に多孔質体からなる軽石を投入する工程と、前記処理室に貯留された貯留水の水面上に前記軽石が浮遊している状態で前記減圧装置を駆動して、前記処理室を大気圧よりも低い第1の圧力まで減圧する工程と、前記第1の圧力まで減圧する工程の後に、前記処理室に大気を投入して前記第1の圧力よりも高い第2の圧力まで復圧する工程と、前記処理室の前記軽石を船舶により海洋に運搬して海洋投棄する工程とを備える。
【0021】
ここで、減圧装置が接続された処理室に多孔質体からなる軽石を投入する工程を備えることにより、軽石を処理するための事前準備が完了する。
【0022】
また、処理室に貯留された貯留水の水面上に軽石が浮遊している状態で減圧装置を駆動して、処理室を大気圧よりも低い第1の圧力まで減圧する工程を備えることにより、処理室を減圧することで軽石の空隙内の気体が外部に放出されやすくなる。
【0023】
また、第1の圧力まで減圧する工程の後に、処理室に大気を投入して第1の圧力よりも高い第2の圧力まで復圧する工程を備えることにより、気体が放出された軽石の空隙内に貯留水が浸入しやすくなる。このとき、軽石の見かけ上の比重が貯留水の比重に対して大きくなるため軽石の浮遊性が喪失され、貯留水の水面に浮遊する軽石は貯留水内へと沈降させることができる。
【0024】
また、処理室の軽石を船舶により海洋に運搬して海洋投棄する工程を備えることにより、浮遊性を喪失した軽石をそのまま海洋投棄することで、軽石を海底まで沈降させることができる。
【0025】
前記の目的を達成するために、本発明の軽石の投棄方法は、減圧装置が接続された空虚空間からなる処理室に多孔質体からなる軽石を投入する工程と、前記処理室に前記軽石が堆積した状態で前記減圧装置を駆動して、前記処理室を大気圧よりも低い第1の圧力まで減圧する工程と、前記第1の圧力まで減圧する工程の後に、前記処理室に大気を含む所定量の水を投入して前記第1の圧力よりも高い第2の圧力まで復圧する工程と、前記処理室の前記軽石を船舶により海洋に運搬して海洋投棄する工程とを備える。
【0026】
ここで、減圧装置が接続された空虚空間からなる処理室に多孔質体からなる軽石を投入する工程を備えることにより、軽石を処理するための事前準備が完了する。
【0027】
また、処理室に軽石が堆積した状態で減圧装置を駆動して、処理室を大気圧よりも低い第1の圧力まで減圧する工程を備えることにより、処理室を減圧することで軽石の空隙内の気体が外部に放出されやすくなる。このとき、処理室内には軽石のみが存在するため、軽石の空隙内の空気が全方位的に放出される。従って、処理室内に貯留された水面上を浮遊する軽石に比べて、より効果的に軽石の空隙内部の空気を外部へと放出させることができる。
【0028】
また、第1の圧力まで減圧する工程の後に、処理室に大気を含む所定量の水を投入して第1の圧力よりも高い第2の圧力まで復圧する工程を備えることにより、気体が放出された軽石の空隙内に投入された水が浸入しやすくなる。このとき軽石の見かけ上の比重が、投入された水の比重に対して大きくなるため軽石の浮遊性が喪失され、処理室内に貯留された貯留水の水面から貯留水内へと沈降させることができる。
【0029】
また、処理室の軽石を船舶により海洋に運搬して海洋投棄する工程を備えることにより、浮遊性を喪失した軽石をそのまま海洋投棄することで、軽石を海底まで沈降させることができる。
【0030】
また、処理室内の軽石を海洋に投棄する工程は、船舶を所定の領海域内で航行させ、軽石の投棄場所を順次変えながら投棄する工程を有する場合には、特定の領海内に集中して軽石が投棄されることを防止して、海域の環境負荷を低減することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る軽石の処理方法、及び軽石の投棄方法は、低コストかつ簡易な方法により、水面に浮遊する軽石の浮遊性を喪失させて海洋投棄することができるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る軽石の処理方法を示す図であり、(a)は処理室内を減圧している状態、(b)は処理室内を大気圧近くまで復圧している状態を示す。
【
図2】本発明の第2の実施形態に係る軽石の処理方法を示す図であり、(a)は処理室内を減圧している状態、(b)は処理室内を大気圧近くまで復圧している状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態に係る軽石の処理方法、及び軽石の投棄方法について図面等を用いて詳細に説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の説明において「軽石」とは、主に海底火山から放出される火山噴出物のうち火山砕せつ物の一つであり、多数の空隙が形成され乾燥状態で水の比重よりも見かけ上の比重が軽い多孔質体をいう。
【0034】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態に係る軽石の処理方法に用いる処理装置1の外観を示す図である。処理装置1は、処理室2と処理室2の内部を減圧処理する減圧装置としての真空ポンプ3から主に構成されている。
【0035】
処理室2には一端が大気開放された第1の連通路4が第1のバルブ5を介して接続され、第1のバルブ5の開閉操作により処理室2への大気の流入を制御することが可能となっている。また、処理室2と真空ポンプ3とは第2の連通路6により接続されている。第2の連通路は第2のバルブ7が設置されており、第2のバルブ7は真空ポンプ3の駆動状態に応じて開閉制御され、処理室2の空気を外部に排気して処理室2を減圧することが可能となっている。
【0036】
ここで、必ずしも、減圧装置として真空ポンプ3に限定されるものではなく、アスピレーター等、処理室2の空気を外部に強制的に排気させることができる機器であれば特に限定されるものではない。
【0037】
次に、処理装置1を用いた軽石の処理方法について説明する。
【0038】
<処理室への軽石の投入>
処理装置1は、例えば軽石を回収する船舶(以下、「回収船」という。)や陸上の処理場等に設置される。海面から海水とともに回収された軽石Fは、回収装置(図示しない)に一時的に貯留され、回収装置から処理室2に海水とともに投入される。
【0039】
なお、処理室2への軽石Fの投入は、例えば第1の連通路4に吸引装置を設けておき、第1の連通路4から海面に浮遊する軽石Fを海水とともに吸引して、直接、処理室2に投入するようにしてもよい。この場合、軽石Fの回収作業と、軽石Fの処理室への投入作業を一度に行うことができるため、作業効率を高めることができる。
【0040】
図1(a)は、軽石Fが海水とともに処理室2に投入された直後の様子を示す図である。前記した通り、軽石Fは多数の空隙が形成されており、空隙の内部には火山ガスを含む空気が充填されているため、貯留水が空隙内に浸入することができず、見かけ上の比重が水よりも軽くなる。そのため、大気圧下においては処理室2に貯留された海水(貯留水)の水面に浮遊した状態となっている。
【0041】
<処理室の減圧>
図1(a)に示すように、第1のバルブ5を「閉」側に制御して第1の連通路4から処理室2への大気の流入を遮断した状態で、第2のバルブ7を「開」側に制御して真空ポンプ3を駆動する。真空ポンプ3の駆動により、処理室2の空気が第2の連通路6を通じて外部に排気され、処理室2は大気圧よりも低い第1の圧力まで減圧された状態となる。このとき、軽石Fの空隙内に充填されている空気が外部に放出される。
【0042】
ここで、減圧状態を保持する時間としては、例えば大気圧に対して20%程度の減圧を行う場合には、減圧状態を約5分間程度保持することで、処理室2の貯留水に浮遊する大半の軽石Fの空隙内から空気が放出される。なお、大気圧に対する減圧率については、処理室2の容積や処理する軽石Fの量に応じて適宜変更することができるものとする。
【0043】
<処理室の復圧>
処理室2の減圧状態を所定時間継続し、軽石Fから出る気泡の量がある程度少なくなった状態を目安として真空ポンプ3を停止する。そして、
図1(b)に示すように、第1のバルブ5を「開」側、第2のバルブ7を「閉」側にそれぞれ制御して、第1の連通路4から大気を流入させ、処理室2を第1の圧力よりも高く、大気圧以下の第2の圧力まで復圧する。処理室2が第2の圧力まで復圧すると、貯留水が軽石Fの空隙内部に浸入することで軽石Fの見かけ上の比重が大きくなり、
図1(b)に示すように軽石Fを貯留水内へと沈降させることができる。
【0044】
[第2の実施形態]
次に
図2を用いて本発明の第2の実施形態に係る軽石の処理方法に用いる処理装置1aについて説明する。なお、以下の説明においては、第1の実施形態と共通する構成については共通の符号を付するとともに、重複する説明については省略する。
【0045】
第2の実施形態に係る軽石の処理方法に用いる処理装置1aは、第1の連通路4の一端側が、一定量の水が貯留された貯留水タンク(図示しない)に接続されている以外は、第1の実施形態における処理装置1と基本的には同一である。
【0046】
ここで、必ずしも、第1の連通路4の一端側は貯留水タンクに接続されている必要はない。第1の連通路4を通じて一定量の水を処理室2に供給させることができればよく、例えば海、川、湖等の水中に接続されていてもよい。
【0047】
次に、処理装置1aを用いた軽石の処理方法について説明する。
【0048】
<処理室への軽石の投入>
海面から回収された軽石Fは、回収された海水とともに一時的に回収装置(図示しない)に貯留され、回収装置から軽石Fだけを取り出して処理室2に投入される。処理室2に投入された軽石Fは処理室2の底面に堆積する。
【0049】
<処理室の減圧>
処理室2の底面に軽石Fが堆積した状態で、
図2(a)に示すように、第1のバルブ5を「閉」側に制御して第1の連通路4から処理室2への大気の流入を遮断するとともに、第2のバルブ7を「開」側に制御して真空ポンプ3を駆動する。真空ポンプ3の駆動により、処理室2の空気が第2の連通路6を通じて外部に排気され、処理室2は大気圧よりも低い第1の圧力まで減圧された状態となる。
【0050】
このように、第2の実施形態においては、減圧時に処理室2には貯留水が存在せず、軽石Fのみが存在する。そのため、水面上に軽石Fが浮遊した状態で処理室2を減圧する第1の実施形態に比べて、軽石Fの空隙内の空気が全方位的に放出されるため、減圧による空隙内の空気の放出効果をより高めることができる。
【0051】
<処理室の復圧>
処理室2の減圧状態を所定時間継続し、軽石Fから出る気泡の量がある程度少なくなった状態を目安として真空ポンプ3を停止する。そして、第1のバルブ5を「開」側、第2のバルブ7を「閉」側にそれぞれ制御して、貯留水タンクに接続された第1の連通路4から大気とともに貯留水タンクの水を処理室2に流入させ、処理室2を第1の圧力よりも高く大気圧以下の第2の圧力まで復圧する。
【0052】
このとき、減圧処理により軽石Fの空隙内の空気は放出された状態であるため、処理室2から流入した水は軽石Fの空隙へと浸入する。そして、軽石Fの空隙内部に水が浸入することで軽石Fの見かけ上の比重が大きくなり、
図2(b)に示すように処理室2に貯留された貯留水内へと沈降させることができる。
【0053】
[実施例]
本発明の第1の実施形態に係る軽石の処理方法の実施例を
図3に示す。実施例においては、所定の容積のボトルに400mlの水とともに200gの軽石を投入した。投入直後は水面上に軽石が浮遊している様子が確認できる(
図3の紙面に向かって右側の状態)。
【0054】
次に、真空ポンプでボトル内を0.02MPa程度まで減圧し、その状態を5分間維持した。その間、水面からは多数の気泡が浮上し、ボトル内の減圧処理により、軽石の空隙内の空気が放出されていることが確認できた。
【0055】
減圧処理後に真空ポンプを停止し、ボトル内を略大気圧まで復圧したところ、軽石の全てがボトルの底面に沈降することが確認できた(
図3の紙面に向かって左側の状態)。
【0056】
以上のように、軽石の浮遊性を喪失させることで海洋投棄が可能となるため、陸上での埋立処分の必要がない。なお、海洋投棄に際しては、沿岸領域に広がる浅瀬部分は生物量が豊富であるため、大量の軽石を海洋投棄すると生態系への影響が懸念される。一方、我が国においては排他的経済水域内に広大な外洋を有するため、例えば船舶で沿岸地域から離れた外洋まで航行し、外洋における所定領海内で投棄位置を順次変えながら分散して海洋投棄することで海域の環境負荷を低減することができる。
【0057】
以上、本発明を適用した軽石の処理方法、及び軽石の投棄方法においては、低コストかつ簡易な方法により、水面に浮遊する軽石の浮遊性を喪失させて海洋投棄することができるものとなっている。
【符号の説明】
【0058】
1、1a 処理装置
2 処理室
3 真空ポンプ
4 第1の連通路
5 第1のバルブ
6 第2の連通路
7 第2のバルブ
F 軽石