(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083716
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】燃料電池活性化システムと燃料電池活性化システムの運転方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/043 20160101AFI20230609BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20230609BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20230609BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20230609BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20230609BHJP
【FI】
H01M8/043
H01M8/04746
H01M8/04858
H01M8/04 Z
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197566
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】杉本 和彦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 隆宏
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H126EE11
5H127AA06
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA56
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127BB39
5H127DA19
5H127DC02
5H127DC22
5H127DC29
5H127DC47
(57)【要約】
【課題】本開示は、活性化時におけるカソードの水素濃度を低く保つことができ、カソードの水素を適切に処理することができる燃料電池活性化システムと燃料電池活性化システムの運転方法を提供する。
【解決手段】本開示における燃料電池システムは、単セルを複数積層して構成された燃料電池スタックと、水素ガス供給手段と、酸素含有ガス供給手段と、複数の単セルのそれぞれに対して個別に対応するように設けられた複数の負荷と、制御器と、を備える。燃料電池スタックを活性化する時に、単セルのそれぞれと、それぞれの単セルに対応する負荷とを、閉回路が形成されるように電気的に接続して、水素ガス供給手段によってアノードへ水素ガスを供給している状態で、カソードへの酸素含有ガスの供給と停止とを交互に繰り返すように酸素含有ガス供給手段を動作させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜と前記電解質膜の一方の主面に配置されるアノードと他方の主面に配置されるカソードとで構成される単セルを、複数積層して構成された燃料電池スタックと、
前記アノードに水素ガスを供給できるように、前記燃料電池スタックに接続された水素ガス供給手段と、
前記カソードに酸素含有ガスを供給できるように、前記燃料電池スタックに接続された酸素含有ガス供給手段と、
前記複数の単セルのそれぞれに対して個別に対応するように設けられ、一端が対応する前記単セルの前記アノードに電気的に接続されるとともに他端が対応する前記単セルの前記カソードに電気的に接続される複数の負荷と、
制御器と、を備えた燃料電池活性化システムであって、
前記制御器は、前記燃料電池スタックを活性化する時に、前記単セルのそれぞれと、それぞれの前記単セルに対応する前記負荷とを、閉回路が形成されるように電気的に接続して、前記水素ガス供給手段によって前記アノードへ水素ガスを供給している状態で、前記カソードへの酸素含有ガスの供給と停止とを交互に繰り返すように前記酸素含有ガス供給手段を動作させることを特徴とする燃料電池活性化システム。
【請求項2】
電解質膜と前記電解質膜の一方の主面に配置されるアノードと他方の主面に配置されるカソードとで構成される単セルを、複数積層して構成された燃料電池スタックと、
前記アノードに水素ガスを供給できるように、前記燃料電池スタックに接続された水素ガス供給手段と、
前記カソードに酸素含有ガスを供給できるように、前記燃料電池スタックに接続された酸素含有ガス供給手段と、
前記複数の単セルのそれぞれに対して個別に対応するように設けられ、一端が対応する前記単セルの前記アノードに電気的に接続されるとともに他端が対応する前記単セルの前記カソードに電気的に接続される複数の負荷と、
を備えた燃料電池活性化システムの運転方法であって、
前記燃料電池スタックを活性化する時に、前記単セルのそれぞれと、それぞれの前記単セルに対応する前記負荷とを、閉回路が形成されるように電気的に接続して、前記水素ガス供給手段によって前記アノードへ水素ガスを供給している状態で、前記カソードへの酸素含有ガスの供給と停止とを交互に繰り返すように前記酸素含有ガス供給手段を動作させることを特徴とする燃料電池活性化システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池活性化システムと燃料電池活性化システムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、燃料電池の活性化方法を開示する。この燃料電池の活性化方法は、電解質膜をアノードとカソードとで挟んだ燃料電池のアノードに水素ガスを供給した状態で、カソードに酸素含有ガスと不活性ガスとを交互に繰返し供給して、アノードとカソードとの間の電極間電位を低電位から規定発電電位まで繰返し変動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、複数のセルを積層して構成された燃料電池スタック活性化時におけるカソードの水素濃度を低く保つことができ、カソードの水素を適切に処理することができる燃料電池活性化システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における燃料電池活性化システは、燃料電池スタックと、水素ガス供給手段と、酸素含有ガス供給手段と、複数の負荷と、制御器と、を備えている。
【0006】
ここで、燃料電池スタックは、電解質膜と電解質膜の一方の主面に配置されるアノードと他方の主面に配置されるカソードとで構成される単セルを、複数積層して構成されたものである。
【0007】
水素ガス供給手段は、アノードに水素ガスを供給できるように、燃料電池スタックに接続されたものである。
【0008】
酸素含有ガス供給手段は、カソードに酸素含有ガスを供給できるように、燃料電池スタックに接続されたものである。
【0009】
複数の負荷は、複数の単セルのそれぞれに対して個別に対応するように設けられ、一端が対応する単セルのアノードに電気的に接続されるとともに他端が対応する単セルのカソードに電気的に接続されたものである。
【0010】
制御器は、燃料電池スタックを活性化する時に、単セルのそれぞれと、それぞれの単セルに対応する負荷とを、閉回路が形成されるように電気的に接続して、水素ガス供給手段によってアノードへ水素ガスを供給している状態で、カソードへの酸素含有ガスの供給と停止とを交互に繰り返すように酸素含有ガス供給手段を動作させるのである。
【発明の効果】
【0011】
本開示における燃料電池活性化システムは、燃料電池スタックを活性化する時に、複数のセルを積層して構成された燃料電池スタックのセル毎に電子負荷を接続し、かつ、アノードへ水素ガスを供給した状態で、カソードへの酸素含有ガスの供給と停止を繰り返すことにより、活性化時におけるカソードの水素濃度を低く保つことができ、カソードの水素
を適切に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1における燃料電池活性化システムの概略構成図
【
図2】実施の形態1における燃料電池スタックの外観斜視図
【
図3】実施の形態1における燃料電池スタックをアノードガス供給マニホールドの中心軸とアノードガス排出マニホールドの中心軸を含む平面で切断した概略断面図
【
図4】実施の形態1における燃料電池スタックと電子負荷装置との接続を示す概略構成図
【
図5】実施の形態1における燃料電池活性化システムの動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、燃料電池スタックは電極からの不純物の除去や高分子電解質膜のイオン伝導性の向上を図る処理を施すことで燃料電池スタックの初期運転時に所望の性能を発揮させる、燃料電池スタックの活性化を行う状況であった。
【0014】
そして、燃料電池スタックの活性化処理の低コスト化を図ることを課題として、アノードに水素ガスを供給した状態で、カソードに酸素含有ガスと不活性ガスとを交互に繰返し供給して、アノードとカソードとの間の電極間電位を低電位から規定発電電位まで繰返し変動させるという製品設計をするのが一般的であった。
【0015】
そうした状況下において、発明者らは、電極間電位を低電位から規定発電電位まで繰返し変動させる中で規定発電電位から低電位まで下げる時間が長いということをヒントにして、規定発電電位から低電位まで下げる時間を短くするという着想を得た。
【0016】
そして、発明者らは、その着想を実現するには、積層された複数のセルと負荷との間に閉回路を形成してアノードへの水素ガスの供給を継続しながらカソードへの酸素含有ガスの供給と停止を繰り返すと、閉回路が形成されたセルの内で、カソードに酸素が存在するセルと存在しないセルとが共存した時に、カソードに酸素が存在するセルの電気エネルギーがカソードに酸素が存在しないセルに供給されることで、カソードに酸素が存在しないセルにおいて、アノードに存在する水素が電解質膜を経由してカソードに移動して、カソードの水素濃度が高くなるという課題があることを発見した。
【0017】
そして、アノードからカソードへの水素ガスの移動を抑制しながら、アノードとカソードとの間の電極間電位を低電位から規定発電電位まで繰り返して、活性化時におけるカソードの水素濃度を低く保ち、カソードの水素を適切に処理するという課題があることを発見し、その課題を解決するために、本課題の主題を構成するに至った。
【0018】
そこで、本開示は、複数のセルを積層して構成された燃料電池スタックのセル毎に電子負荷を接続し、かつ、アノードへ水素ガスを供給した状態で、カソードへの酸素含有ガスの供給と停止を繰り返す燃料電池活性化システムと燃料電池活性化システムの運転方法を提供する。
【0019】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0020】
なお、添付図面及び以下の説明は、当事者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより、特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していな
い。
【0021】
(実施の形態1)
以下、
図1から
図4を用いて、実施の形態1を説明する。
【0022】
[1-1.構成]
図1は、実施の形態1における燃料電池活性化システム200の概略構成図である。
【0023】
図2は、実施の形態1における燃料電池スタックの外観斜視図である。
図2には、互いに直交するX,Y,Z方向に沿った矢印が表されている。X方向およびY方向は、水平方向に沿った方向であり、Z方向は、鉛直上向きの方向である。
【0024】
図3は、実施の形態1における燃料電池スタックをアノードガス供給マニホールドの中心軸とアノードガス排出マニホールドの中心軸を含む平面で切断した概略断面図である。
【0025】
図4は、実施の形態1における燃料電池スタックと電子負荷装置との接続を示す概略構成図である。
【0026】
図1に示すように、燃料電池活性化システム200は、燃料電池スタック101と、水素ガス供給手段131と、酸素含有ガス供給手段132と、電子負荷装置126と、制御器151と、を備える。さらに、開閉弁133~136と、アノード経路141~144と、カソード経路145~148と、を備える。
【0027】
図2に示すように、燃料電池スタック101は、セル105をY方向(セル105の厚み方向であり、セル105の主面に垂直な方向)に沿って積層させた積層体106と、一対の集電板107,108と、一対の端板109,110と、アノードガス供給マニホールド115と、アノードガス排出マニホールド116と、カソードガス供給マニホールド119と、カソードガス排出マニホールド120と、を有する。
【0028】
図3に示すように、セル105は、電解質膜-電極接合体102と、電解質膜-電極接合体102を両側から挟むように配置された一対のアノードセパレータ103,カソードセパレータ104と、を備える。そして、複数のセル105をY方向(セル105の厚み方向であり、セル105の主面に垂直な方向)に積層させて積層体106を構成する。
【0029】
電解質膜-電極接合体102は、電解質膜と、電解質膜の一方の主面に配置されたアノード(電極)と、電解質膜の他方の主面に配置されたカソード(電極)と、を有する。電解質膜は、例えば、プロトン伝導性を有する固体高分子膜である。セル105は、アノードに水素ガスが供給されカソードに酸素含有ガスが供給されることによって発電する。セル105単体を単セルとも呼ぶ。
【0030】
一対の集電板107,108は、Y方向(セル105の積層方向)において、積層体106を両側から挟むように配置される。一対の端板109,110は、Y方向(セル105と集電板107,108の積層方向)において、集電板107,108にそれぞれ外側から接して配置される。
【0031】
アノードガス供給マニホールド115は、端板109と、集電板107と、積層体106と、を貫通する。アノードガス供給マニホールド115は、端板109上に、アノードガス入口117を形成する。
【0032】
アノードガス入口117は、アノードガス供給マニホールド115の端部となる開口部
である。燃料電池スタック101には、アノードガス入口117を通じてアノードに水素ガスが供給される。
【0033】
アノードガス排出マニホールド116は、端板109と、集電板107と、積層体106と、を貫通する。アノードガス排出マニホールド116は、端板109上に、アノードガス出口118を形成する。
【0034】
アノードガス出口118は、アノードガス排出マニホールド116の端部となる開口部である。燃料電池スタック101からは、アノードガス出口118を通じて、アノードに供給された水素ガスの内で、アノードで消費されなかった水素ガスが排出される。
【0035】
図3では、燃料電池スタック101をアノードガス供給マニホールド115の中心軸とアノードガス排出マニホールド116の中心軸とを含む平面で切断した断面を示しているが、カソードガス供給マニホールド119とカソードガス排出マニホールド120とカソードガス入口121とカソードガス出口122とが示されていない。
【0036】
しかしながら、燃料電池スタック101をカソードガス供給マニホールド119の中心軸とカソードガス排出マニホールド120の中心軸とを含む平面で切断した断面は、
図3において、アノードガス供給マニホールド115をカソードガス供給マニホールド119に、アノードガス排出マニホールド116をカソードガス排出マニホールド120に、アノードガス入口117をカソードガス入口121に、アノードガス出口118をカソードガス出口122に、それぞれ置き換えた構成に相当する。
【0037】
カソードガス供給マニホールド119は、端板109と、集電板107と、積層体106と、を貫通する。カソードガス供給マニホールド119は、端板109上に、カソードガス入口121を形成する。
【0038】
カソードガス入口121は、カソードガス供給マニホールド119の端部となる開口部である。燃料電池スタック101には、カソードガス入口121を通じてカソードに酸素含有ガスが供給される。
【0039】
カソードガス排出マニホールド120は、端板109と、集電板107と、積層体106と、を貫通する。カソードガス排出マニホールド120は、端板109上に、カソードガス出口122を形成する。
【0040】
カソードガス出口122は、カソードガス排出マニホールド120の端部となる開口部である。燃料電池スタック101からは、カソードガス出口122を通じて、カソードに供給された酸素含有ガスの内で、カソードで消費されなかった酸素含有ガスと、カソードにおいて電気化学反応で生成された水と、が排出される。
【0041】
水素ガス供給手段131は、アノード経路141、開閉弁133、アノード経路142を介して、燃料電池スタック101のアノードガス入口117と連通する。
【0042】
燃料電池スタック101のアノードガス出口118は、アノード経路143、開閉弁134、アノード経路144を介して、燃料電池スタック101の外部と連通する。
【0043】
酸素含有ガス供給手段132は、カソード経路145、開閉弁135、カソード経路146を介して、燃料電池スタック101のカソードガス入口121と連通する。
【0044】
燃料電池スタック101のカソードガス出口122は、カソード経路147、開閉弁1
36、カソード経路148を介して、燃料電池スタック101の外部と連通する。
【0045】
水素ガス供給手段131は、燃料電池スタック101のアノードに水素ガスを供給するためのもので、制御器151によって制御される。水素ガス供給手段131は、水素ガスを貯蔵するボンベと、水素ガスを指示値に応じて供給するマスフローコントローラと、で構成される。
【0046】
酸素含有ガス供給手段132は、燃料電池スタック101のカソードに酸素含有ガスを供給するためのもので、制御器151によって制御される。酸素含有ガス供給手段132は、空気ブロアで構成される。
【0047】
図4に示すように、電子負荷装置126は、複数の開閉器127と、複数の電子負荷128と、で構成される。
【0048】
電子負荷装置126は、燃料電池スタック101と接続される。
【0049】
開閉器127と、電子負荷128とは、燃料電池スタック101の複数のセル105のそれぞれに対して個別に対応するように設けられる。すなわち、一つのセル105に対して一つの開閉器127と、一つの電子負荷128とが対応するように設けられ、複数のセル105に対して同数の開閉器127と、同数の電子負荷128とが対応するように設けられる。
【0050】
そして、一組のセル105と開閉器127と電子負荷128とは、電気的に直列に接続される。すなわち、セル105のアノードセパレータ103と電子負荷128の一端とが電気的に接続され、電子負荷128の他端と開閉器127の一端とが電気的に接続され、開閉器127の他端とセル105のカソードセパレータ104とが電気的に接続される。
【0051】
開閉器127は、両端の接続部の間の電気的な閉(短絡)と開(開放)とを切り替える機能を有し、制御器151によって制御される。
【0052】
開閉器127が閉の時、一組のセル105と開閉器127と電子負荷128とは、閉回路が形成されるように電気的に接続される。また、開閉器127が開の時、一組のセル105と開閉器127と電子負荷128とは、閉回路が形成されない。
【0053】
電子負荷128は、セル105から電流を取り出すもので、本実施の形態においては、抵抗値が1mΩの電気抵抗素子を用いる。
【0054】
制御器151は、水素ガス供給手段131が供給する水素ガスの供給量を制御できるように、水素ガス供給手段131と接続されている。また、制御器151は、酸素含有ガス供給手段132が供給する酸素含有ガスの供給量を制御できるように、酸素含有ガス供給手段132と接続されている。
【0055】
また、制御器151は、ガスの開閉を制御できるように、開閉弁133,134,135,136と接続されている。また、制御器151は、セル105と電子負荷128との電気的な接続を制御できるように、電子負荷装置126の複数の開閉器127とそれぞれ接続されている。また、制御器151は、時間を管理するためのタイマー機能と、繰り返し数を管理するためのカウンター機能とを有している。
【0056】
[1-2.動作]
以上のように構成された燃料電池活性化システム200において、
図1から
図5に基づ
いて、その動作、作用を以下に説明する。
【0057】
図5は、実施の形態1における燃料電池活性化システム200の動作を示すフローチャートである。
【0058】
燃料電池スタック101の活性化に先立ち、燃料電池活性化システム200は停止状態とする。すなわち、制御器151は、開閉弁133,134,135,136は閉、水素ガス供給手段131は停止、酸素含有ガス供給手段132は停止、電子負荷装置126の複数の開閉器127は全て閉とする。また、制御器151は、カウンターの繰り返し数をゼロと設定する(S001)。
【0059】
まず、制御器151は、アノードガス供給側の開閉弁133とアノードガス排出側の開閉弁134とを開とし、水素ガス供給手段131を作動させて所定流量の水素ガスを燃料電池スタック101に供給し、複数の開閉器127を全て開とする(S002)。本実施の形態では、所定流量を毎分5リットルに設定する。
【0060】
水素ガス供給手段131から供給された水素ガスは、アノード経路141、開閉弁133、アノード経路142、アノードガス入口117を経由して燃料電池スタック101のアノードに供給される。
【0061】
この時、燃料電池スタック101のアノードに供給された水素ガスは消費されず、アノードガス出口118、アノード経路143、開閉弁134、アノード経路144を経由して燃料電池スタック101の外部に排出され、適切に処理される。
【0062】
次に、制御器151は、所定時間待機する(S003)。本実施の形態では、所定時間を1分に設定する。
【0063】
次に、制御器151は、カソードガス供給側の開閉弁135とカソードガス排出側の開閉弁136とを開とし、酸素含有ガス供給手段132を作動させて所定流量の酸素含有ガスを燃料電池スタック101に供給する(S004)。本実施の形態では、所定流量を毎分10リットルに設定する。
【0064】
酸素含有ガス供給手段132から供給された酸素含有ガスは、カソード経路145、開閉弁135、カソード経路146、カソードガス入口121を経由して燃料電池スタック101のカソードに供給される。
【0065】
この時、燃料電池スタック101のアノードに供給された水素ガスの一部はアノードで消費され、残りのアノードで消費されない水素ガスは、アノードガス出口118、アノード経路143、開閉弁134、アノード経路144を経由して燃料電池スタック101の外部に排出され、適切に処理される。
【0066】
また、燃料電池スタック101のカソードに供給された酸素含有ガスの一部はカソードで消費され、残りのカソードで消費されなかった酸素含有ガスとカソードにおいて電気化学反応で生成された水とは、カソードガス出口122、カソード経路147、開閉弁136、カソード経路148を経由して燃料電池スタック101の外部に排出され、適切に処理される。
【0067】
そして、セル105のアノードの電位を基準としたカソードの相対電位(以降カソード電位と呼ぶ)は高くなり、本実施の形態では、セル105のカソード電位は全てのセル105において、S004を実行してから5秒以内に規定発電電位と設定した700mV以
上となる。
【0068】
次に、制御器151は、所定時間待機する(S005)。本実施の形態では、所定時間を30秒に設定する。
【0069】
次に、制御器151は、開閉弁135と開閉弁136とを閉とし、酸素含有ガス供給手段132を停止させ、酸素含有ガスの供給を停止する(S006)。この時、セル105のカソードに酸素含有ガスは供給されず、酸素は開閉弁135と開閉弁136との間で密閉される。
【0070】
そして、カソードにおいて酸素が残留する間は、燃料電池スタック101のアノードに供給された水素ガスの一部はアノードで消費され、残りのアノードで消費されない水素ガスは、アノードガス出口118、アノード経路143、開閉弁134、アノード経路144を経由して燃料電池スタック101の外部に排出され、適切に処理される。
【0071】
そして、カソードで酸素が消費され、カソードにおいて全ての酸素が消費された後は、燃料電池スタック101のアノードに供給された水素ガスは消費されず、アノードガス出口118、アノード経路143、開閉弁134、アノード経路144を経由して燃料電池スタック101の外部に排出され、適切に処理される。
【0072】
また、カソードにおいて酸素が残留する間は、燃料電池スタック101のカソードに供給された酸素含有ガスの一部はカソードで消費され、残りのカソードで消費されなかった酸素含有ガスとカソードにおいて電気化学反応で生成された水とは、カソードガス出口122、カソード経路147、開閉弁136、カソード経路148を経由して燃料電池スタック101の外部に排出され、適切に処理される。
【0073】
そして、カソードで酸素が消費され、カソードにおいて全ての酸素が消費された後は、燃料電池スタック101のカソードに供給された酸素含有ガスは消費されず、カソードガス出口122、カソード経路147、開閉弁136、カソード経路148を経由して燃料電池スタック101の外部に排出され、適切に処理される。
【0074】
そして、セル105のカソード電位は低くなり、本実施の形態では、セル105のカソード電位は全てのセル105において、S006を実行してから5秒以内に低電位と設定した100mV以下となる。
【0075】
次に、制御器151は、所定時間待機する(S007)。本実施の形態では、所定時間を30秒に設定する。
【0076】
次に、制御器151は、カウンターの繰り返し数に1を加える(S008)。
【0077】
次に、制御器151は、カウンターの繰り返し数が、あらかじめ設定した繰返し数である100に等しいかどうかを確認する(S009)。
【0078】
そして、カウンターの繰り返し数が100になるまで、S009をNo側に分岐して、S004に戻る。
【0079】
やがて、S009において、カウンターの繰り返し数が100になると、S009をYes側に分岐する。
【0080】
そして、燃料電池活性化システム200は、停止状態とする。すなわち、制御器151
は、開閉弁133,134,135,136は閉、水素ガス供給手段131は停止、酸素含有ガス供給手段132は停止、電子負荷装置126の複数の開閉器127は全て閉とする。また、制御器151は、カウンターの繰り返し数をゼロと設定する(S010)。
【0081】
これにより燃料電池活性化システム200の動作は終了する。
【0082】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態における燃料電池活性化システム200は、燃料電池スタック101と、水素ガス供給手段131と、酸素含有ガス供給手段132と、複数の電子負荷128と、制御器151と、を備える。
【0083】
ここで、燃料電池スタック101は、電解質膜と電解質膜の一方の主面に配置されるアノードと他方の主面に配置されるカソードとで構成される単セル105を、複数積層して構成されたものである。
【0084】
また、水素ガス供給手段131は、アノードに水素ガスを供給できるように、燃料電池スタック101に接続されたものである。
【0085】
また、酸素含有ガス供給手段132は、カソードに酸素含有ガスを供給できるように、燃料電池スタック101に接続されたものである。
【0086】
また、複数の電子負荷128は、複数の単セル105のそれぞれに対して個別に対応するように設けられ、一端が対応する単セル105のアノードに電気的に接続されるとともに他端が対応する単セル105のカソードに電気的に接続されたものである。
【0087】
また、制御器151は、単セル105のアノードへの水素ガスの供給と、単セル105のカソードへの酸素含有ガスの供給と、単セル105と複数の電子負荷128との間の閉回路の形成と、を制御するためのものである。
【0088】
そして、本開示における燃料電池活性化システム200の特徴は、制御器151が、燃料電池スタック101を活性化する時に、単セル105のそれぞれと、それぞれの単セル105に対応する負荷128とを、閉回路が形成されるように電気的に接続して、水素ガス供給手段131によってアノードへ水素ガスを供給している状態で、カソードへの酸素含有ガスの供給と停止とを交互に繰り返すように酸素含有ガス供給手段132を動作させる、ことである。
【0089】
これにより、活性化時にアノードからカソードへの水素ガスの移動を抑制しながら、アノードとカソードとの間の電極間電位を低電位から規定発電電位まで繰り返すことができる。そのため、活性化時におけるカソードの水素濃度を低く保つことができ、カソードの水素を適切に処理することができる。
【0090】
また、本実施の形態における燃料電池活性化システム200の運転方法は、燃料電池スタック101と、水素ガス供給手段131と、酸素含有ガス供給手段132と、複数の電子負荷128と、を備える燃料電池活性化システム200の運転方法である。
【0091】
ここで、燃料電池スタック101は、電解質膜と電解質膜の一方の主面に配置されるアノードと他方の主面に配置されるカソードとで構成される単セル105を、複数積層して構成されたものである。
【0092】
また、水素ガス供給手段131は、アノードに水素ガスを供給できるように、燃料電池
スタック101に接続されたものである。
【0093】
また、酸素含有ガス供給手段132は、カソードに酸素含有ガスを供給できるように、燃料電池スタック101に接続されたものである。
【0094】
また、複数の電子負荷128は、複数の単セル105のそれぞれに対して個別に対応するように設けられ、一端が対応する単セル105のアノードに電気的に接続されるとともに他端が対応する単セル105のカソードに電気的に接続されたものである。
【0095】
そして、本開示における燃料電池活性化システム200の運転方法の特徴は、燃料電池スタック101を活性化する時に、単セル105のそれぞれと、それぞれの単セル105に対応する負荷128とを、閉回路が形成されるように電気的に接続して、水素ガス供給手段131によってアノードへ水素ガスを供給している状態で、カソードへの酸素含有ガスの供給と停止とを交互に繰り返すように酸素含有ガス供給手段132を動作させる、ことである。
【0096】
これにより、活性化時にアノードからカソードへの水素ガスの移動を抑制しながら、アノードとカソードとの間の電極間電位を低電位から規定発電電位まで繰り返すことができる。そのため、活性化時におけるカソードの水素濃度を低く保つことができ、カソードの水素を適切に処理することができる。
【0097】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。
【0098】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0099】
実施の形態1では、燃料電池活性化システム200の制御器151は、アノードとカソードとの間の電極間電位を低電位から規定発電電位まで繰り返す繰返し数があらかじめ設定した繰返し数に等しくなることにより活性化の終了としたが、繰り返し数により活性化の終了を判断することに限定されず、終了時に所望の発電性能を満足するものであればよい。
【0100】
ただし、繰り返し数により活性化の終了を判断すれば、新たに手段を追加する必要がなく、燃料電池活性化システム200を安価な構成とすることができる。
【0101】
実施の形態1では、燃料電池活性化システム200の制御器151は、開閉弁135と開閉弁136とを開とし、酸素含有ガス供給手段132を作動させ、所定流量の酸素含有ガスを供給する時間をあらかじめ設定した所定時間としたが、経過時間により規定発電電位の終了を判断することに限定されず、終了時に所望の規定発電電位を満足するものであればよい。
【0102】
ただし、経過時間により規定発電電位の終了を判断すれば、新たに手段を追加する必要がなく、燃料電池活性化システム200を安価な構成とすることができる。
【0103】
実施の形態1では、燃料電池活性化システム200の制御器151は、開閉弁135と開閉弁136とを閉とし、酸素含有ガス供給手段132を停止させ、酸素含有ガスの供給を停止する時間をあらかじめ設定した所定時間としたが、経過時間により低電位の終了を判断することに限定されず、終了時に所望の低電位を満足するものであればよい。
【0104】
ただし、経過時間により低電位の終了を判断すれば、新たに手段を追加する必要がなくなり、燃料電池活性化システム200を安価な構成とすることができる。
【0105】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本開示は、固体高分子形電解質を用いた燃料電池に適用可能である。具体的には、燃料電池車や定置型燃料電池等の燃料電池などに、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0107】
101 燃料電池スタック
102 電解質膜-電極接合体
103 アノードセパレータ
104 カソードセパレータ
105 セル
106 積層体
107,108 集電板
109,110 端板
115 アノードガス供給マニホールド
116 アノードガス排出マニホールド
117 アノードガス入口
118 アノードガス出口
119 カソードガス供給マニホールド
120 カソードガス排出マニホールド
121 カソードガス入口
122 カソードガス出口
126 電子負荷装置
127 開閉器
128 電子負荷
131 水素ガス供給手段
132 酸素含有ガス供給手段
133,134,135,136 開閉弁
141,142,143,144 アノード経路
145,146,147,148 カソード経路
151 制御器
200 燃料電池活性化システム