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  • 特開-タイヤ用ゴム組成物、及び、タイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083736
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物、及び、タイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20230609BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20230609BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20230609BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230609BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
C08L7/00
C08L9/00
C08L15/00
C08K3/013
B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197602
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】上西 和也
(72)【発明者】
【氏名】鹿久保 隆志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑樹
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA03
3D131BA02
3D131BA05
3D131BA12
3D131BC01
3D131BC02
3D131BC33
3D131BC39
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC091
4J002AC112
4J002BB181
4J002BB241
4J002DA036
4J002DJ016
4J002FD016
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】タイヤにしたときに低発熱性及び耐摩耗性に優れるタイヤ用ゴム組成物、及び、上記タイヤ用ゴム組成物を用いて製造されたタイヤを提供する。
【解決手段】ジエン系ゴム100質量部と、カーボンブラック及びシリカからなる群より選択される少なくとも1種の充填剤10~100質量部と、隣り合う炭素原子に水酸基を有する共役ジエン系重合体である変性共役ジエン系重合体0.1~50質量部とを含有する、タイヤ用ゴム組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100質量部と、カーボンブラック及びシリカからなる群より選択される少なくとも1種の充填剤10~100質量部と、隣り合う炭素原子に水酸基を有する共役ジエン系重合体である変性共役ジエン系重合体0.1~50質量部とを含有する、タイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記充填剤の窒素吸着比表面積が、60~160m/gである、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記変性共役ジエン系重合体の重量平均分子量が、10,000~5,000,000である、請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記ジエン系ゴム100質量部が、天然ゴム又はスチレンブタジエンゴムを50質量部以上含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物を用いて製造された、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及び、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーボンブラック及びシリカを含有するタイヤ用ゴム組成物が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-28902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、環境問題に伴い、タイヤの発熱性の低減が求められている。また、求められる安全レベルの向上に伴い、タイヤの耐摩耗性の向上も求められている。
このようななか、本発明者らが特許文献1に記載のタイヤ用ゴム組成物について検討したところ、将来のさらなる要求まで考慮した場合、発熱性及び耐摩耗性のさらなる向上が望ましいことが明らかになった。
【0005】
そこで、本発明は、上記実情を鑑みて、タイヤにしたときに低発熱性及び耐摩耗性に優れるタイヤ用ゴム組成物、及び、上記タイヤ用ゴム組成物を用いて製造されたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、隣り合う炭素原子に水酸基を有する共役ジエン系重合体である変性共役ジエン系重合体を配合することで、上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0007】
(1) ジエン系ゴム100質量部と、カーボンブラック及びシリカからなる群より選択される少なくとも1種の充填剤10~100質量部と、隣り合う炭素原子に水酸基を有する共役ジエン系重合体である変性共役ジエン系重合体0.1~50質量部とを含有する、タイヤ用ゴム組成物。
(2) 上記充填剤の窒素吸着比表面積が、60~160m/gである、上記(1)に記載のタイヤ用ゴム組成物。
(3) 上記変性共役ジエン系重合体の重量平均分子量が、10,000~5,000,000である、上記(1)又は(2)に記載のタイヤ用ゴム組成物。
(4) 上記ジエン系ゴム100質量部が、天然ゴム又はスチレンブタジエンゴムを50質量部以上含む、上記(1)~(3)のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
(5) 上記(1)~(4)のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物を用いて製造された、タイヤ。
【発明の効果】
【0008】
以下に示すように、本発明によれば、タイヤにしたときに低発熱性及び耐摩耗性に優れるタイヤ用ゴム組成物、及び、上記タイヤ用ゴム組成物を用いて製造されたタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のタイヤの実施態様の一例を表す部分断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明のタイヤ用ゴム組成物、及び、上記タイヤ用ゴム組成物を用いて製造されたタイヤについて説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、各成分は、1種を単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上を併用する場合、その成分について含有量とは、特段の断りが無い限り、合計の含有量を指す。
また、タイヤにしたときの低発熱性を単に「低発熱性」とも言う。また、タイヤにしたときの耐摩耗性を単に「耐摩耗性」とも言う。また、タイヤにしたときの剛性を単に「剛性」とも言う。
また、低発熱性、耐摩耗性、剛性に優れることを「本発明の効果等が優れる」とも言う。
【0011】
[I]タイヤ用ゴム組成物
本発明のタイヤ用ゴム組成物(以下、「本発明の組成物」とも言う)は、
ジエン系ゴム100質量部と、カーボンブラック及びシリカからなる群より選択される少なくとも1種の充填剤10~100質量部と、隣り合う炭素原子に水酸基を有する共役ジエン系重合体である変性共役ジエン系重合体0.1~50質量部とを含有する、タイヤ用ゴム組成物である。
【0012】
上述のとおり、本発明の組成物が含有する変性共役ジエン系重合体は、隣り合う炭素原子に水酸基を有する。そのため、隣り合う水酸基同士が相互作用するとともに、重合体間でも水酸基同士が相互作用して、極めて強い相互作用が形成されるものと考えられる。さらには、上記水酸基は充填剤とも相互作用するものと考えられる。そのため、本発明の組成物を用いてタイヤを製造した場合、上記変性共役ジエン系重合体と充填剤とは極めて強く密なネットワークを形成し、結果として、優れた耐摩耗性を示すものと考えられる。また、ネットワークの形成によって運動性が抑えられ、エネルギーロス(発熱性)も抑えられるものと考えられる。
【0013】
以下、本発明の組成物が含有する各成分について説明する。
【0014】
[1]ジエン系ゴム
本発明の組成物が含有するジエン系ゴムは特に限定されない。
本発明の組成物は1種のジエン系ゴムを含有するのでも2種以上のジエン系ゴムを含有するのでもよい。ジエン系ゴムは未変性であることが好ましい。
なお、上記ジエン系ゴムには、後述する変性共役ジエン系重合体は含まれない。
【0015】
[具体例]
上記ジエン系ゴムの具体例としては、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体ゴム、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br-IIR、Cl-IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合体ゴムとしては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレン共重合ゴムなどが挙げられる。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、NR、SBRが好ましい。
【0016】
上記ジエン系ゴムがNR又はSBRを含有する場合、その含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。上限は特に制限されず、100質量%である。
【0017】
[分子量]
上記ジエン系ゴムの数平均分子量(Mn)は特に限定されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、50,000~2,500,000であることが好ましく、100,000~1,500,000であることがより好ましく、150,000~1,000,000であることがさらに好ましい。
上記ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、100,000~5,000,000であることが好ましく、200,000~3,000,000であることがより好ましく、300,000~2,000,000であることがさらに好ましい。
【0018】
なお、本明細書において、Mn及びMwは、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる標準ポリスチレン換算値とする。
・溶媒:テトラヒドロフラン
・検出器:RI検出器
【0019】
[2]充填剤
本発明の組成物は、カーボンブラック及びシリカからなる群より選択される少なくとも1種の充填剤を含有する。
【0020】
[カーボンブラック]
本発明の組成物は、本発明の効果等がより優れる理由から、充填剤としてカーボンブラックを含有するのが好ましい。
上記カーボンブラックは、1種のカーボンブラックを単独で用いても、2種以上のカーボンブラックを併用してもよい。
上記カーボンブラックは特に限定されず、例えば、SAF-HS、SAF、ISAF-HS、ISAF、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF-HS、HAF、HAF-LS、FEF、GPF、SRF等の各種グレードのものを使用することができる。
【0021】
本発明の組成物において、カーボンブラックの含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、1~100質量部であることが好ましく、5~70質量部であることがより好ましい。
【0022】
[シリカ]
本発明の組成物は、本発明の効果等がより優れる理由から、充填剤としてシリカを含有するのが好ましい。
上記シリカは特に制限されず、従来公知の任意のシリカを用いることができる。
上記シリカとしては、例えば、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻土などが挙げられる。上記シリカは、1種のシリカを単独で用いても、2種以上のシリカを併用してもよい。
【0023】
上記シリカのセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)吸着比表面積(以下、「CTAB吸着比表面積」を単に「CTAB」とも言う)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、100~300m/gであることが好ましく、150~200m/gであることがより好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面へのCTAB吸着量をJIS K6217-3:2001「第3部:比表面積の求め方-CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0024】
本発明の組成物において、シリカの含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、10~100質量部であることが好ましく、20~80質量部であることがより好ましい。
【0025】
[窒素吸着比表面積]
上記充填剤(上記カーボンブラック及び/又は上記シリカ)の窒素吸着比表面積(NSA)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、60~160m/gであることが好ましい。
ここで、窒素吸着比表面積(NSA)は、充填剤への窒素吸着量をJIS K6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0026】
[含有量]
本発明の組成物において、上記充填剤の含有量(2種以上の充填剤を含有する場合は合計の含有量)は、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、10~100質量部である。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、20~90質量部であることが好ましい。
【0027】
[3]変性共役ジエン系重合体
本発明の組成物は、隣り合う炭素原子に水酸基を有する共役ジエン系重合体である変性共役ジエン系重合体(以下、単に「変性共役ジエン系重合体」とも言う)を含有する。
【0028】
[共役ジエン系重合体]
共役ジエン系重合体とは、共役ジエンを単量体として用いて得られた重合体を意図する。ただし、共役ジエン系重合体は、共役ジエンを単量体として用いて得られた重合体と同じ構造を有すれば、実際に共役ジエンを用いて得られた重合体でなくても構わない。例えば、天然ゴムは、イソプレンを単量体として用いて得られた重合体と同じ構造を有するため、共役ジエン系重合体に該当する。
【0029】
〔共役ジエン〕
上記共役ジエンは特に限定されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、ブタジエン(特に、1,3-ブタジエン)、又は、イソプレンであることが好ましい。
すなわち、上記共役ジエンは、本発明の効果等がより優れる理由から、ブタジエン系重合体、又は、イソプレン系重合体であることが好ましい。
【0030】
〔具体例〕
上記共役ジエン系重合体の具体例としては、ポリブタジエン(ブタジエンゴム)(BR)、ポリイソプレン(イソプレンゴム)(IR)、天然ゴム(NR)、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(ニトリルゴム)(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br-IIR、Cl-IIR)、クロロプレンゴム(CR)等が挙げられる。上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合体としては、スチレン-ブタジエン共重合体(スチレンブタジエンゴム)(SBR)、スチレン-イソプレン共重合体(スチレンイソプレン共重合体ゴム)などが挙げられる。
【0031】
〔好適な態様〕
上記共役ジエン系重合体は、本発明の効果等がより優れる理由から、ブタジエン系重合体(特に、ポリブタジエン)、イソプレン系重合体(特に、ポリイソプレン、天然ゴム)、又は、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体(特に、スチレン-ブタジエン共重合体)であることが好ましく、ブタジエン系重合体(特に、ポリブタジエン)であることがより好ましい。
【0032】
上記共役ジエン系重合体の共役ジエン含有量は特に限定されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、10モル%以上であることが好ましく、30モル%以上であることがより好ましく、50モル%以上であることがさらに好ましく、70モル%以上であることが特に好ましく、90モル%以上であることが最も好ましい。上限は特に限定されず、100モル%である。
なお、共役ジエン含有量とは、共役ジエン系重合体を構成する全ての単量体単位のうち共役ジエンに由来する単位(以下、「共役ジエン単位」とも言う)が占める割合である。
【0033】
[水酸基]
上述のとおり、変性共役ジエン系重合体は、隣り合う炭素原子に水酸基を有する。
変性共役ジエン系重合体は、本発明の効果等がより優れる理由から、共役ジエンに由来する単位(共役ジエン単位)として、隣り合う炭素原子に水酸基を有するのが好ましく、なかでも、後述する式(A3)で表される単位、又は、後述する式(B3)で表される単位として、隣り合う炭素原子に水酸基を有するのがより好ましい。
【0034】
[変性率]
変性共役ジエン系重合体の変性率は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、0.1~99モル%であることが好ましく、1.0~50モル%であることがより好ましく、3.0~50モル%であることがさらに好ましく、5.0~20モル%であることが特に好ましい。
ここで、変性率とは、変性共役ジエン系重合体中の全共役ジエン単位のうち、隣り合う炭素原子に水酸基を有する共役ジエン単位(例えば、後述する式(A3)で表される単位、又は、後述する式(B3)で表される単位)が占める割合である。
【0035】
[分子量]
変性共役ジエン系重合体の数平均分子量(Mn)は特に限定されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、5,000~5,000,000であることが好ましく、50,000~2,500,000であることがより好ましく、100,000~1,000,000であることがさらに好ましい。
【0036】
変性共役ジエン系重合体の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、10,000~10,000,000であることが好ましく、100,000~5,000,000であることがより好ましく、200,000~2,000,000であることがさらに好ましい。
【0037】
変性共役ジエン系重合体の分子量分布(PDI)は特に限定されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましい。分子量分布の下限は特に限定されないが、通常、1.0以上である。
【0038】
[好適な態様]
変性共役ジエン系重合体は、本発明の効果等がより優れる理由から、下記式(A1)~(A3)、(B1)~(B3)又は(C)で表される単位を有する(ただし、式(A3)及び式(B3)の少なくとも一方を必ず有する)共役ジエン系重合体(以下、「特定変性共役ジエン系重合体」とも言う)であることが好ましい。
ここで、(A1)~(A3)で表される単位、及び、(B1)~(B3)で表される単位は、いずれも共役ジエンに由来する単位(共役ジエン単位)である。また、式(A2)で表される単位は式(A1)がエポキシ化したものに相当し、式(A3)で表される単位は式(A2)が開環したものに相当する。また、式(B2)で表される単位は式(B1)がエポキシ化したものに相当し、式(B3)で表される単位は式(B2)が開環したものに相当する。
また、式(C)で表される単位は芳香族ビニル(例えば、スチレン)に由来する単位である。
【0039】
【化1】
【0040】
式(A1)~(A3)、(B1)~(B3)、(C)中、Rは、水素原子、又は、脂肪族炭化水素基を表す。複数存在するRは同一であっても異なってもよい。式(C)中、Arは芳香族炭化水素基を表す。
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。上記脂肪族炭化水素基の具体例としては、直鎖状または分岐状のアルキル基(特に、炭素数1~30)、直鎖状または分岐状のアルケニル基(特に、炭素数2~30)、直鎖状または分岐状のアルキニル基(特に、炭素数2~30)などが挙げられる。
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などの炭素数6~18の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0041】
式(A1)~(A3)、(B1)~(B3)、(C)中、a1~a3、b1~b3、cは、各単位の割合(モル%)を表す。
a1は、本発明の効果等がより優れる理由から、1~99.9モル%であることが好ましく、50~99モル%であることがより好ましく、70~97モル%であることがさらに好ましく、80~95モル%であることが特に好ましい。
b1は、本発明の効果等がより優れる理由から、1~99.9モル%であることが好ましく、50~99モル%であることがより好ましく、70~97モル%であることがさらに好ましく、80~95モル%であることが特に好ましい。
a1+b1は、本発明の効果等がより優れる理由から、1~99.9モル%であることが好ましく、50~99モル%であることがより好ましく、70~97モル%であることがさらに好ましく、80~95モル%であることが特に好ましい。
a2は、本発明の効果等がより優れる理由から、0~99モル%であることが好ましく、0~50モル%であることがより好ましく、0~30モル%であることがさらに好ましく、0~10モル%であることが特に好ましい。
b2は、本発明の効果等がより優れる理由から、0~99モル%であることが好ましく、0~50モル%であることがより好ましく、0~30モル%であることがさらに好ましく、0~10モル%であることが特に好ましい。
a1+b2は、本発明の効果等がより優れる理由から、0~99モル%であることが好ましく、0~50モル%であることがより好ましく、0~30モル%であることがさらに好ましく、0~10モル%であることが特に好ましい。
a3は、本発明の効果等がより優れる理由から、0.1~99モル%であることが好ましく、1.0~50モル%であることがより好ましく、3.0~30モル%であることがさらに好ましく、5.0~20モル%であることがさらに好ましい。
b3は、本発明の効果等がより優れる理由から、0.1~99モル%であることが好ましく、1.0~50モル%であることがより好ましく、3.0~30モル%であることがさらに好ましく、5.0~20モル%であることがさらに好ましい。
a3+b3は、本発明の効果等がより優れる理由から、0.1~99モル%であることが好ましく、1.0~50モル%であることがより好ましく、3.0~30モル%であることがさらに好ましく、5.0~20モル%であることがさらに好ましい。
cは、本発明の効果等がより優れる理由から、0~90モル%であることが好ましく、0~50モル%であることがより好ましく、0~30モル%であることがさらに好ましく、0~25モル%であることが特に好ましい。
【0042】
[製造方法]
変性共役ジエン系ゴムを製造する方法は、特に制限されないが、得られる変性共役ジエン系ゴムについて本発明の効果等がより優れる理由から、以下の工程を備える方法(以下、「本発明の方法」とも言う)であることが好ましい。以下、得られる変性共役ジエン系ゴムについて本発明の効果等がより優れることを単に「本発明の効果等がより優れる」とも言う。
(1)エポキシ化工程
共役ジエン系重合体と過酸化物とを反応させることで、上記共役ジエン系重合体の炭素-炭素二重結合をエポキシ化して、エポキシ化共役ジエン系重合体を得る工程
(2)開環工程
エポキシ化工程で得られたエポキシ化共役ジエン系重合体と水とを反応させることで、上記エポキシ化共役ジエン系重合体のエポキシ環(オキシラン環)を開環して、隣り合う炭素原子に水酸基を有する共役ジエン系重合体である変性共役ジエン系重合体を得る工程
【0043】
以下に、共役ジエン系重合体として1,4-cisポリブタジエン(1,4-cis BR)を用いた場合の一態様について、構造式を用いて説明する。
【0044】
まず、1,4-cisポリブタジエン(下記)と過酸化物とを反応させる。
【0045】
【化2】
【0046】
これによって、1,4-cisポリブタジエンの炭素-炭素二重結合の少なくとも一部をエポキシ化して、エポキシ化1,4-cisポリブタジエン(下記)を得る(エポキシ化工程)。
【0047】
【化3】
【0048】
次に、エポキシ化工程で得られたエポキシ化1,4-cisポリブタジエンと水とを反応させる。これによって、上記エポキシ化1,4-cisポリブタジエンのエポキシ環の少なくとも一部を開環して、隣り合う炭素原子に水酸基を有する1,4-cisポリブタジエン(変性1,4-cisポリブタジエン)(下記)を得る(開環工程)。
【0049】
【化4】
【0050】
以下、各工程について詳述する。
【0051】
〔エポキシ化工程〕
エポキシ化工程は、共役ジエン系重合体と過酸化物とを反応させることで、上記共役ジエン系重合体の炭素-炭素二重結合をエポキシ化して、エポキシ化共役ジエン系重合体を得る工程である。
エポキシ化共役ジエン系重合体は、共役ジエン系重合体中の共役ジエンに由来する単位(共役ジエン単位)の炭素-炭素二重結合(C=C)の少なくとも一部がエポキシ化された(エポキシ環になった)ものである。
【0052】
<共役ジエン系重合体>
エポキシ化工程で用いられる共役ジエン系重合体の定義、具体例及び好適な態様は、上述した変性共役ジエン系重合体の共役ジエン系重合体と同じである。また、エポキシ化工程で用いられる共役ジエン系重合体の分子量の好適な態様は、上述した変性共役ジエン系重合体と同じである。
【0053】
<過酸化物>
エポキシ化工程で用いられる過酸化物は特に限定されない。
【0054】
(具体例)
上記過酸化物としては、無機過酸化物及び有機過酸化物が挙げられる。
上記無機過酸化物としては、例えば、過酸化水素水;過硫酸、過硫酸水素ナトリウム、過硫酸水素カリウム等の過硫酸化合物等が挙げられる。
上記有機過酸化物としては、例えば、t-ブチルハイドロペルオキシド、m-クロロ過安息香酸(mCPBA)、過ギ酸、過酢酸、過プロピオン酸等が挙げられる。
【0055】
(好適な態様)
上記過酸化物は、本発明の効果等がより優れる理由から、有機過酸化物であることが好ましく、m-クロロ過安息香酸(mCPBA)であることがより好ましい。
【0056】
(使用量)
上記過酸化物の使用量は特に限定されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述した共役ジエン系重合体の使用量に対して、10~200質量%であることが好ましく、50~100質量%であることがより好ましい。
【0057】
<エポキシ化工程の手順>
エポキシ化工程の手順は特に限定されず、例えば、共役ジエン系重合体と過酸化物とを混合・攪拌してから反応物を回収する方法等が挙げられる。
【0058】
<エポキシ化共役ジエン系重合体>
エポキシ化工程で得られるエポキシ化共役ジエン系重合体は、共役ジエン系重合体中の共役ジエンに由来する単位(共役ジエン単位)の炭素-炭素二重結合(C=C)の少なくとも一部がエポキシ化された(エポキシ環になった)ものである。
【0059】
(エポキシ化率)
上記エポキシ化共役ジエン系重合体のエポキシ化率は特に限定されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、0.1~99モル%であることが好ましく、1.0~50モル%であることがより好ましく、3.0~30モル%であることがさらに好ましく、5.0~20モル%であることがさらに好ましい。
ここで、エポキシ化率とは、エポキシ工程で使用された共役ジエン系重合体中の共役ジエン単位(例えば、ブタジエン単位)の炭素-炭素二重結合のうち、エポキシ化された(エポキシ環になった)割合である。例えば、エポキシ化工程で使用された共役ジエン系重合体中に共役ジエン単位の炭素-炭素二重結合が100個存在して、そのうち10個がエポキシ化された場合、エポキシ化共役ジエン系重合体のエポキシ化率は10モル%である。
【0060】
(分子量)
上記エポキシ化共役ジエン系重合体の分子量の好適な態様は、上述した変性共役ジエン系重合体と同じである。
【0061】
〔開環工程〕
開環工程は、上述したエポキシ化工程で得られたエポキシ化共役ジエン系重合体と水とを反応させることで、上記エポキシ化共役ジエン系重合体のエポキシ環を開環して、隣り合う炭素原子に水酸基を有する共役ジエン系重合体である変性共役ジエン系重合体を得る工程である。
エポキシ環を開環することで、エポキシ環を構成していた2つの炭素原子(隣り合う炭素原子)に水酸基が導入される。
すなわち、開環工程で得られる変性共役ジエン系重合体は、エポキシ化共役ジエン系重合体中のエポキシ環の少なくとも一部が開環して、開環されたエポキシ環を構成していた2つの炭素原子(隣り合う炭素原子)に水酸基が導入されたものである。
なお、開環されたエポキシ環を構成していた2つの炭素原子(隣り合う炭素原子)の一部に水酸基以外の基(例えばアルコキシ基)が導入される場合がある。
【0062】
開環工程では、本発明の効果等がより優れる理由から、エポキシ環を活性化するための触媒を用いるのが好ましい。
【0063】
<エポキシ化共役ジエン系重合体>
開環工程で用いられるエポキシ化共役ジエン系重合体は、上述したエポキシ化工程で得られたエポキシ化共役ジエン系重合体である。エポキシ化共役ジエン系重合体については上述のとおりである。
【0064】
<触媒>
上述のとおり、開環工程では、本発明の効果等がより優れる理由から、エポキシ環を活性化するための触媒を用いるのが好ましい。
【0065】
(具体例)
上記触媒の具体例としては、プロトン酸(塩酸や硫酸)、ルイス酸(塩化アルミ等)等が挙げられる。上記触媒に併せて、水酸化物など塩基を加えるのが好ましい。
【0066】
(好適な態様)
上記触媒は、本発明の効果等がより優れる理由から、ヒドラジニウムであることが好ましく、硫酸ヒドラジニウムであることがより好ましい。
【0067】
(使用量)
上記触媒の使用量は特に限定されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したエポキシ化共役ジエン系重合体の使用量に対して、1~100質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましい。
【0068】
<開環工程の手順>
開環工程の手順は特に限定されず、例えば、エポキシ化共役ジエン系重合体と水と触媒等とを混合・攪拌してから反応物を回収する方法等が挙げられる。
【0069】
<変性共役ジエン系重合体>
開環工程で得られる変性共役ジエン系重合体は、エポキシ化共役ジエン系重合体中のエポキシ環の少なくとも一部が開環して、開環されたエポキシ環を構成していた2つの炭素原子(隣り合う炭素原子)に水酸基が導入されたものである。
【0070】
(開環率)
開環率は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、10モル%以上であることが好ましく、30モル%以上であることがより好ましく、50モル%以上であることがさらに好ましく、60モル%以上であることがよりさらに好ましく、70モル%以上であることが特に好ましく、90モル%以上であることが最も好ましい。開環率の上限は特に制限されず、100モル%である。
ここで、開環率とは、開環工程で使用されたエポキシ化共役ジエン系重合体中のエポキシ環のうち、開環した割合である。例えば、開環工程で使用されたエポキシ化共役ジエン系重合体中にエポキシ環が10個存在して、全てが開環した場合、変性共役ジエン系重合体の開環率は100モル%である。
【0071】
(エポキシ環残存率)
エポキシ環残存率は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、90モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましく、50モル%以下であることがさらに好ましく、40モル%以下であることがよりさらに好ましく、30モル%以下であることが特に好ましく、10モル%以下であることが最も好ましい。エポキシ環残存率の下限は特に制限されず、0%である。
ここで、エポキシ環残存率とは、開環工程で使用されたエポキシ化共役ジエン系重合体中のエポキシ環のうち、開環しなかった割合である。例えば、開環工程で使用されたエポキシ化共役ジエン系重合体中にエポキシ環が10個存在して、全てが開環した場合、変性共役ジエン系重合体のエポキシ環残存率は0モル%である。
【0072】
(ジオール化率)
ジオール化率は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、1モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることがさらに好ましく、60モル%以上であることが特に好ましく、70モル%以上であることが最も好ましい。ジオール化率の上限は特に制限されず、100モル%である。
ここで、ジオール化率とは、開環工程で使用されたエポキシ化共役ジエン系重合体の開環したエポキシ環のうち、開環されたエポキシ環を構成していた2つの炭素原子(隣り合う炭素原子)に水酸基が導入された割合である。例えば、開環工程で使用されたエポキシ化共役ジエン系重合体中にエポキシ環が10個存在して、全てが開環し、そのうち6個のエポキシ環を構成していた隣り合う炭素原子(合計12個の炭素原子)に水酸基が導入された場合、ジオール化率は60%である。
【0073】
[含有量]
本発明の組成物において、変性共役ジエン系重合体の含有量は、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、0.1~50質量部である。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、1~40質量部であることが好ましく、3~30質量部であることがより好ましく、7~20質量部であることがさらに好ましい。
【0074】
[4]任意成分
本発明の組成物は、必要に応じて、その効果や目的を損なわない範囲でさらに他の成分(任意成分)を含有することができる。
上記任意成分としては、例えば、カーボンブラック及びシリカ以外の充填剤、シランカップリング剤、テルペン樹脂(例えば、芳香族変性テルペン樹脂)、熱膨張性マイクロカプセル、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加工助剤、オイル、液状ポリマー、熱硬化性樹脂、加硫剤(例えば、硫黄)、加硫促進剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤などが挙げられる。
【0075】
[5]製造方法
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、その具体例としては、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど)を用いて、混練する方法などが挙げられる。本発明の組成物が硫黄又は加硫促進剤を含有する場合は、硫黄及び加硫促進剤以外の成分を先に高温(好ましくは100~160℃)で混合し、冷却してから、硫黄又は加硫促進剤を混合するのが好ましい。
また、本発明の組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
【0076】
[II]タイヤ
本発明のタイヤは、上述した本発明の組成物を用いて製造されたタイヤである。本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましく、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。なかでも、本発明の組成物をタイヤトレッド(キャップトレッド)に用いた(配置した)空気入りタイヤであることが好ましい。
図1に、本発明のタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図を示すが、本発明のタイヤは図1に示す態様に限定されるものではない。
【0077】
図1において、符号1はビード部を表し、符号2はサイドウォール部を表し、符号3はタイヤトレッド部を表す。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
また、タイヤトレッド部3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
また、ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
なお、タイヤトレッド部3は上述した本発明の組成物により形成されている。
【0078】
本発明のタイヤは、例えば、従来公知の方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、通常のまたは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
【実施例0079】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
[変性共役ジエン系重合体の製造]
以下のとおり、変性共役ジエン系重合体1~2を製造した。製造した変性共役ジエン系重合体1~2は、隣り合う炭素原子に水酸基を有するポリブタジエンであるため、上述した変性共役ジエン系重合体に該当する。
【0081】
〔変性共役ジエン系重合体1〕
【0082】
<エポキシ化工程>
ポリブタジエン(1,4-cis BR、Mn=199,000、Mw=490,000、PDI=2.5、50.4g)の塩化メチレン(関東化学製、500mL)溶液に、m-クロロ過安息香酸(mCPBA)(関東化学製、25%水分含有、1.04g)の塩化メチレン溶液(20mL)を室温で滴下し、室温で24時間攪拌した。得られた溶液をメタノール(関東化学製、5.0L)中に滴下し、固体成分を取り分けた。その固体成分をテトラヒドロフラン(THF)(関東化学製、400mL)に溶解させ、メタノールに滴下する再沈殿精製操作を行い、白色固体(50.1g)を得た。
得られた白色固体についてH-NMR測定(CDCl)を行ったところ、2.9ppmにエポキシ環由来のHシグナルが観測され、ポリブタジエンの炭素-炭素二重結合がエポキシ化することで、エポキシ化率0.5モル%のエポキシ化ポリブタジエン(Mn=219,000、Mw=479,000、PDI=2.2)が得られたことが分かった。
【0083】
<開環工程>
上述したエポキシ化工程で得られたエポキシ化ポリブタジエン(5.05g)をトルエン(関東化学製、100mL)に溶解した。得られた溶液に硫酸ヒドラジニウム(関東化学製、6.08g)の水(80mL)溶液を加え、還流条件で120時間攪拌した。その後、得られた溶液をメタノール(400mL)に滴下し、メタノール可溶成分と不溶成分に分離した。そのメタノール不溶成分にTHF(50mL)を加え、THF不溶成分を取り除いた後、THF可溶成分をメタノール(400mL)に滴下し、淡黄色のポリマー成分を4.66g得た。
得られた淡黄色のポリマー成分について13C-NMR測定を行ったところ、60ppm近辺のエポキシ環由来の13Cシグナルが消失し、73ppmに水酸基を有する隣り合う炭素原子に由来する13Cシグナルが観測され(70ppm近辺の水酸基を有する単独の炭素原子(隣り合わない炭素原子)に由来する13Cシグナルは観測されなかった)、エポキシ化ポリブタジエンの全てのエポキシ環が開環することで、隣り合う炭素原子に水酸基を有するポリブタジエンである変性ポリブタジエン(開環率:100モル%、ジオール化率:100モル%、変性率:0.5モル%)(Mn=175,000、Mw=396,000、PDI=2.3)が得られたことが分かった。得られた変性ポリブタジエンは上述した特定変性共役ジエン系重合体に該当する。ここで、式(A1)及び式(A3)中のRは全て水素であり、a1は99.5モル%であり、a3は0.5モル%である。
【0084】
〔変性共役ジエン系重合体2〕
【0085】
<エポキシ化工程>
ポリブタジエン(1,4-cis BR、Mn=199,000、Mw=490,000、PDI=2.5、10.2g)の塩化メチレン(関東化学製、150mL)溶液に、m-クロロ過安息香酸(mCPBA)(関東化学製、25%水分含有、7.0g)の塩化メチレン溶液(100mL)を室温で滴下し、室温で24時間攪拌した。得られた溶液をメタノール(関東化学製、1.5L)中に滴下し、固体成分を取り分けた。その固体成分をテトラヒドロフラン(THF)(関東化学製、200mL)に溶解させ、メタノールに滴下する再沈殿精製操作を行い、白色固体(10.4g)を得た。
得られた白色固体についてH-NMR測定(CDCl)を行ったところ、2.9ppmにエポキシ環由来のHシグナルが観測され、ポリブタジエンの炭素-炭素二重結合がエポキシ化することで、エポキシ化率16モル%のエポキシ化ポリブタジエン(Mn=205,000、Mw=495,000、PDI=2.4)が得られたことが分かった。
【0086】
<開環工程>
上述したエポキシ化工程で得られたエポキシ化ポリブタジエン(10.3g)をトルエン(関東化学製、150mL)に溶解した。得られた溶液に硫酸ヒドラジニウム(関東化学製、5.2g)の水(80mL)溶液を加え、還流条件で48時間攪拌した。その後、得られた溶液の不溶成分を取り出し、その不溶成分に水(100mL)を加え、室温で攪拌し、無機成分を取り除いた。この作業を2回繰り返した。その不溶成分を乾燥し、THFに不溶の淡黄色固体成分(10.3g)を得た。
得られた淡黄色固体成分について固体13C-NMR(CPMAS)測定を行ったところ、60ppm近辺のエポキシ環由来の13Cシグナルが消失し、73ppmに水酸基を有する隣り合う炭素原子に由来する13Cシグナルが観測され(70ppm近辺の水酸基を有する単独の炭素原子(隣り合わない炭素原子)に由来する13Cシグナルは観測されなかった)、エポキシ化ポリブタジエンの全てのエポキシ環が開環することで、隣り合う炭素原子に水酸基を有するポリブタジエンである変性ポリブタジエン(開環率:100モル%、ジオール化率:50モル%以上、変性率:8~16モル%)(Mn=205,000、Mw=495,000、PDI=2.4)が得られたことが分かった。得られた変性ポリブタジエンは上述した特定変性共役ジエン系重合体に該当する。ここで、式(A1)及び式(A3)中のRは全て水素であり、a1は84モル%であり、a3は8~16モル%である。
【0087】
[タイヤ用ゴム組成物の調製]
下記表1~4に示される成分を同表に示される割合(質量部)で配合した。具体的には、まず、下記表1~4に示される成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーを用いて150℃付近に温度を上げてから、5分間混合した後に放出し、室温まで冷却してマスターバッチを得た。さらに、上記バンバリーミキサーを用いて、得られたマスターバッチに硫黄及び加硫促進剤を混合し、タイヤ用ゴム組成物を得た。
【0088】
[評価]
得られた各タイヤ用ゴム組成物(未加硫)を、金型(15cm×15cm×0.2cm)中、160℃で15分間プレス加硫して、加硫ゴムシートを作製した。そして、得られた各加硫ゴムシートについて以下の評価を行った。
【0089】
〔M100〕
得られた加硫ゴムシートについて、JIS K6251:2010に準拠し、JIS3号ダンベル型試験片(厚さ2mm)を打ち抜き、温度20℃、引張り速度500mm/分の条件で100%モジュラス(100%変形時の応力)を測定した。
結果を表1~表4に示す。結果は、表1については比較例1-1を100とする指数で表し、表2については比較例2-1を100とする指数で表し、表3については比較例3-1を100とする指数で表し、表4については比較例4-1を100とする指数で表した。指数が大きいほど剛性に優れることを意味する。
【0090】
〔tanδ(60℃)〕
得られた加硫ゴムシートについて、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所社製)を用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件下で、温度60℃の損失正接tanδ(60℃)を測定した。
結果を表1~4に示す。結果は、表1については比較例1-1を100とする指数で表し、表2については比較例2-1を100とする指数で表し、表3については比較例3-1を100とする指数で表し、表4については比較例4-1を100とする指数で表した。指数が小さいほど低発熱性に優れることを意味する。指数が99以下であることが好ましい。
【0091】
〔ランボーン摩耗〕
得られた加硫ゴムシートについて、JIS K6264-1、2:2005に準拠し、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所製)を用いて、温度20℃、スリップ率50%の条件で摩耗量を測定した。そして下記式から耐摩耗性指数を算出した。
結果を表1~4に示す。指数が大きいほど摩耗量が小さく、耐摩耗性に優れることを意味する。指数が101以上であることが好ましい。
表1:耐摩耗性指数=(比較例1-1の摩耗量/各加硫ゴムシートの摩耗量)×100
表2:耐摩耗性指数=(比較例2-1の摩耗量/各加硫ゴムシートの摩耗量)×100
表3:耐摩耗性指数=(比較例3-1の摩耗量/各加硫ゴムシートの摩耗量)×100
表4:耐摩耗性指数=(比較例4-1の摩耗量/各加硫ゴムシートの摩耗量)×100
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
【表4】
【0096】
表1~2中の各成分の詳細は以下のとおりである。
・NR:天然ゴム(RSS#3)
・変性共役ジエン系重合体1~2:上述のとおり製造した変性共役ジエン系重合体1~2
・比較変性共役ジエン系重合体:片末端水酸基変性液状ポリブタジエン(R-45HT、重量平均分子量:2800、出光興産社製)
・比較共役ジエン系重合体:ポリブタジエン(Nipol BR1220、重量平均分子量:50万、日本ゼオン社製)
・CB(HAF):カーボンブラック(東海カーボン(株)製、シースト300、NSA:81m/g)
・亜鉛華:正同化学工業(株)製 酸化亜鉛 3種
・ステアリン酸:ステアリン酸コバルト(DIC社製)
・オイル:エキストラクト4号S(昭和シェル石油社製)
・加硫促進剤DZ:大内新興化学工業(株)製 ノクセラーDZ
・硫黄:アクゾノーベル(株)製 クリステックスHS OT 20
【0097】
表3~4中の各成分の詳細は以下のとおりである。
・SBR:スチレンブタジエンゴム(日本ゼオン製:Nipol 1502)
・変性共役ジエン系重合体2:上述のとおり合成した変性共役ジエン系重合体2
・比較変性共役ジエン系重合体:片末端水酸基変性液状ポリブタジエン(R-45HT、重量平均分子量:2800、出光興産社製)
・CB(HAF):カーボンブラック(東海カーボン(株)製、シースト300、NSA:81m/g)
・シリカ:シリカ(UNITED SILICA INDUSTRIAL製、ULTRASIL VN-3G)
・亜鉛華:正同化学工業(株)製 酸化亜鉛 3種
・ステアリン酸:ステアリン酸コバルト(DIC社製)
・シランカップリング剤:エボニックデグッサジャパン製 Si69
・加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製 ノクセラーC
・硫黄:四国化成工業製 ミュークロンOT-20
【0098】
表1~4から分かるように、変性共役ジエン系重合体を含有する実施例1-1~1-6、実施例2-1~2-3、実施例3-1~3-3及び実施例4-1~4-3は、優れた低発熱性及び耐摩耗性を示した。なかでも、ジエン系ゴム100質量部に対する変性共役ジエン系重合体の含有量が3質量部以上である実施例1-2~1-3、実施例1-5~1-6、実施例2-2~2-3、実施例3-2~3-3及び実施例4-2~4-3は、より優れた低発熱性、剛性及び耐摩耗性を示した。そのなかでも、ジエン系ゴム100質量部に対する変性共役ジエン系重合体の含有量が7質量部以上である実施例1-3、実施例2-3、実施例3-3及び実施例4-3は、さらに優れた低発熱性、剛性及び耐摩耗性を示した。
実施例1-2と実施例1-5との対比(変性共役ジエン系重合体の種類のみが異なる態様同士の対比)から、変性共役ジエン系重合体の変性率が5モル%以上である実施例1-5は、より優れた低発熱性、剛性及び耐摩耗性を示した。同様に、実施例1-3と実施例1-6との対比(変性共役ジエン系重合体の種類のみが異なる態様同士の対比)から、変性共役ジエン系重合体の変性率が5モル%以上である実施例1-6は、より優れた低発熱性、剛性及び耐摩耗性を示した。
【0099】
一方、変性共役ジエン系重合体を含有しない比較例1-1~1-3、比較例2-1、比較例3-1~3-2及び比較例4-1は、低発熱性及び耐摩耗性が不十分であった。
【符号の説明】
【0100】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 タイヤトレッド部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 リムクッション
図1